(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176626
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】卵風味向上剤
(51)【国際特許分類】
A23L 27/00 20160101AFI20241212BHJP
A23L 15/00 20160101ALI20241212BHJP
A23G 3/00 20060101ALI20241212BHJP
A23L 9/10 20160101ALN20241212BHJP
A23L 9/20 20160101ALN20241212BHJP
A21D 2/18 20060101ALN20241212BHJP
A21D 13/80 20170101ALN20241212BHJP
A23G 3/42 20060101ALN20241212BHJP
A23L 35/00 20160101ALN20241212BHJP
【FI】
A23L27/00 Z
A23L15/00 Z
A23G3/00
A23L15/00 D
A23L9/10
A23L9/20
A21D2/18
A21D13/80
A23G3/42
A23L35/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095337
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】519127797
【氏名又は名称】三菱商事ライフサイエンス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】下田 芙雪
【テーマコード(参考)】
4B014
4B025
4B032
4B036
4B042
4B047
【Fターム(参考)】
4B014GB11
4B014GG02
4B014GG07
4B014GG10
4B014GG11
4B014GK03
4B014GL10
4B014GL11
4B014GP02
4B014GP14
4B025LB18
4B025LG26
4B025LG28
4B025LG52
4B025LG53
4B032DB40
4B032DG02
4B032DK12
4B032DK15
4B032DK42
4B032DK48
4B032DL06
4B032DP02
4B036LC01
4B036LE03
4B036LF19
4B036LH10
4B036LH41
4B036LH44
4B036LK01
4B036LP01
4B042AC01
4B042AD30
4B042AD40
4B042AE03
4B042AG07
4B042AH09
4B042AK08
4B042AK17
4B042AP04
4B047LB08
4B047LE07
4B047LF06
4B047LF09
4B047LF10
4B047LG23
4B047LG25
4B047LG52
4B047LG59
4B047LP05
(57)【要約】
【課題】マルチトール、マルトトリイトールを有効成分とする、卵含有加熱食品の卵風味向上剤
【解決手段】卵を原材料として使用する食品の原料に、マルチトールを含有する組成物を含有させ加熱したところ、卵の風味が向上した食品が得られることを見出し、本発明を完成した。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトールを含有する、卵含有食品の卵風味向上剤。
【請求項2】
さらにマルトトリイトールを含有する、請求項1に記載の卵含有食品の卵風味向上剤。
【請求項3】
食品中の卵の固形分1質量部に対し、マルチトールを固形分として0.01から1.5質量部となるように使用する、請求項1に記載の卵風味向上剤。
【請求項4】
食品中の卵の固形分1質量部に対し、マルチトールを固形分として0.01から1.5質量部となるように含有させる、卵含有食品の卵風味向上方法。
【請求項5】
請求項1~3のいずれか1項に記載の剤を用いる卵含有食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は卵風味向上剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、鳥インフルエンザの発生等により卵の供給量が制限されることが増えており、卵の代替技術が求められる風潮がある。卵の代替技術としては、卵そのものを代替する方法がある。たとえば、大豆乳化組成物に糖類、デンプン、香辛料、油脂、酸化防止剤及び凝固剤等を合わせ、加工した卵黄代替組成物で、卵の風味を付与する方法があげられる(特許文献1参照)。卵を使用せずに卵風味を再現できれば、卵アレルギー対策ともなるため好ましいが、卵風味を再現することは難しい。その他、茹卵に卵黄および糖アルコールを特定量配合して茹卵特有のコク味を増強したタマゴサラダおよびタマゴサラダ用調味液が知られている(特許文献2)。しかし、該方法は、卵の供給制限による卵の使用量の制限された状態の対策となるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-013397号公報
【特許文献2】特開2012-090542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、卵を使用した食品、特に加熱食品の物性、風味を損なうことなく簡便に卵の風味を向上する卵風味向上剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は第一に、マルチトールを含有する、卵含有食品の卵風味向上剤である。
第二に、さらにマルトトリイトールを含有する、第一に記載の卵含有食品の卵風味向上剤。
第三に、食品中の卵の固形分1質量部に対し、マルチトールを固形分として0.01から1.5質量部となるように使用する、第一に記載の卵風味向上剤である。
第四に、食品中の卵の固形分1質量部に対し、マルチトールを固形分として0.01から1.5質量部となるように含有させる、卵含有食品の卵風味向上方法である。
第五に、第一から第三のいずれかに記載の剤を用いる卵含有食品の製造方法
【発明の効果】
【0006】
本発明の構成をとることにより、通常の食品における卵風味の向上のみならず、卵の含有量が通常より低減された食品において、通常の卵の含有量の食品と同等の卵風味を有する食品も得ることが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0007】
本発明の卵風味向上剤は、マルチトールまたはマルチトールを含有する組成物である。マルチトールは広く食品に用いられる糖質であり、マルトースを水素化し、ホルミル基をヒドロキシメチル基とすることで得られる。本発明において、マルチトールは、高純度結晶マルチトール、粉末マルチトール等、純度、性状の制限なく用いることができる。本発明の卵風味向上剤は、マルチトール以外の糖質、たとえばマルトトリイトールを含有してもよい。このような組成物としては、例えば、還元麦芽糖水飴などのほか、マルチトールを成分として含有する還元澱粉糖化物等があげられる。還元澱粉糖化物としては、マルチトールを含有するものであればいずれでもよいが、ソルビトール等の単糖の水素化物の含有量が少ないものが好ましい。
【0008】
本発明の卵風味向上剤を、卵を含有する飲食品に添加、配合することで該食品の卵風味を向上することができる。該方法は、卵含有食品の卵風味向上方法として用い得る。本発明における卵風味とは、卵が有する油、蛋白質の混ざった甘い風味、加熱により生じる香ばしい香り、コク、油脂感など卵が有する特有の風味を意味する。
【0009】
本発明における卵含有食品とは卵が主要な原材料である食品であり、好ましくは製造中に加熱工程を有する卵含有加熱食品が挙げられる。例えば、スポンジケーキ、マフィン、カステラなどのように、原材料に小麦粉を含有し、焼成されるもの、カスタードのように原材料に小麦粉を含有し、加熱によりペースト状とするもの、卵焼きやプレーンオムレツのようにほぼ卵のみを原料とし、直接加熱により凝固形成されるもの、茶碗蒸し、卵豆腐のようにほぼ卵のみを原料とし、蒸気加熱により凝固形成されるものなどが挙げられる。なお、凝固の程度は問わず、半熟状でもしっかり加熱した状態でも構わない。
【0010】
本発明における卵含有食品の原料である卵は加熱凝固前の鶏卵であれば種類は問わず使用が可能である。全卵のほか、卵黄、卵白のように部分的に使用してもよいし、液卵、乾燥卵など加工の形態を問わない。本発明が用いられる卵含有食品中の卵含有量は、通常の含有量であってもよいが、通常より低減されていてもよい。
【0011】
卵を使用した食品において、本発明の卵風味向上剤を添加、配合するにあたっては、固形分で卵1質量部に対し、マルチトールが0.01から1.5質量部となるように用いることが好ましく、さらに好ましくはマルチトールが0.03から1.5質量部となるように用いることができる。本発明の卵風味向上剤が、マルチトールとマルトトリイトールを含有する場合、マルチトール及びマルトトリイトールは固形分で卵1質量部に対し0.07から1.5質量部となる量使用することが好ましい。
【0012】
本発明の卵風味向上剤は卵含有加熱食品に用いる場合は加熱工程の前、すなわち加熱前の原材料を混合する際に卵をはじめとする他の原材料に含有させることが好ましい。
【0013】
さらに本発明の卵風味向上剤を用いることにより、通常の処方より卵の含有量を減らした配合の食品においても通常の処方の食品と同等の卵風味を食品に付与することができる。
【0014】
以下、本発明の実施例を説明するが、本発明は、これらの実施例に何ら限定されるものではない。
【0015】
(マルチトール組成物)
本発明の卵風味向上剤として、以下の表1に示すマルチトール含有組成物を用いた。なお、それぞれの組成物に含まれるソルビトール、マルチトール、マルトトリイトールの数値は、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって得られた各組成物のクロマトグラムのピーク面積から求めた。糖質の総質量に相当するピーク面積の全体の和を100とし、それぞれの糖質の質量に相当する各ピーク面積の割合を求めた。
【0016】
【0017】
比較例において以下の糖質を用いた。
ソルビトール:LTS-P(三菱商事ライフサイエンス社製)
砂糖:グラニュ糖ME(大日本明治製糖社製)
水飴:日食ハイマルトースシラップMC-55(日本食品化工社製)(固形分75%)
【0018】
鶏卵は、市販品の鶏卵を用い、全卵は卵を手攪拌によりほぐしたもの、卵黄は、市販卵を通常の調理における方法により分離した。また、その他の原料などは市販のものを用いた。
【実施例0019】
[プリンの調製]
表2の配合(質量部)で以下の手順によりプリンを調製した。
予め牛乳を50℃に加熱し、糖質を加え混合した。卵液に上記牛乳を加え、均一になるまで混合後、裏ごしをし、耐熱容器に20gずつ充填した。スチームオーブンにて、99℃、20分間加熱後取り出し、容器外周を冷水にて冷却し調製品、実施品、比較品を得た。
【0020】
【0021】
[バターケーキの調製]
表2の配合(質量部)で以下の手順によりバターケーキを調製した。
25℃でやわらかくしたバターをビーターミキサーにてペースト状にし、さらに糖質、卵を加え混合した。予めふるった薄力粉およびベーキングパウダーを加え混合し、長方形のパウンド型に充填し、170℃、25分焼成し、調製品、実施品、比較品を得た。
【0022】
【0023】
[カスタードの調製]
表4の配合(質量部)で以下の手順によりカスタードを調製した。
卵黄と砂糖の一部を混合し、予めふるった薄力粉およびコーンスターチを混合した。70℃に加熱した牛乳に糖質を加え均一にし、上記卵黄に少しずつ混合し、卵液を裏ごしした。銅鍋にて、Brix 50となるまで加熱し、耐熱袋に充填後、冷却し調製品、実施品、比較品を得た。
【0024】
【0025】
[卵焼きの調製]
表5の配合(質量部)で以下の手順により卵焼きを調製した。
全卵に、うす口しょうゆ、糖を入れ溶きほぐした。予熱した卵焼き用のフライパンに、卵液を25gずつ流しいれ、25g/分ずつ焼成しながら成型し、調製品、実施品、比較品を得た。
【0026】
【0027】
[茶わん蒸しの調製]
表6の配合(質量部)で以下の手順により茶わん蒸しを調製した。
顆粒の和風だし粉末:水=0.7:100にてだし汁を調整した。全卵、うす口醤油、糖質、出し汁を合わせ均一になるまで混合した。その後、耐熱容器に20gずつ充填し、スチームオーブンにて、99℃、20分間加熱後取り出し、容器外周を冷水にて冷却し調製品、実施品、比較品を得た。
【0028】
【0029】
[官能評価]
調製品、実施品、比較品に対し、卵の含有量が多い調整品(末尾が0の調整品)を基準に7段階で「卵の風味が強い」について官能評価を実施した。結果を表7~11に示す。各表のnはパネル数を示す。
【0030】
【0031】
【0032】
【0033】
【0034】
【0035】
実施品は同量の卵を含む調製品よりも卵風味が強いばかりでなく、卵風味向上剤を同量の卵で置き換えた調製品と同等、もしくはそれよりも強い卵の風味を有する。