IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社オートネットワーク技術研究所の特許一覧 ▶ 住友電装株式会社の特許一覧 ▶ 住友電気工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-コネクタカバー 図1
  • 特開-コネクタカバー 図2
  • 特開-コネクタカバー 図3
  • 特開-コネクタカバー 図4
  • 特開-コネクタカバー 図5
  • 特開-コネクタカバー 図6
  • 特開-コネクタカバー 図7
  • 特開-コネクタカバー 図8
  • 特開-コネクタカバー 図9
  • 特開-コネクタカバー 図10
  • 特開-コネクタカバー 図11
  • 特開-コネクタカバー 図12
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176631
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コネクタカバー
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/58 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01R13/58
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095348
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萬 知紘
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA14
5E021FC03
5E021GA06
(57)【要約】
【課題】構造が複雑化するのを回避しつつ、配線部材の保持構造を設けることが可能なコネクタカバーを提供する。
【解決手段】コネクタカバー10は、保持部材80、受け部材90および配線部材20を備えている。配線部材20は、絶縁性のシート部21と、シート部21に並列に固定される複数本の電線22と、を有している。保持部材80は、受け部材90に向けて突出する孔開けピン83を有している。受け部材90は、シート部21に対向する内面から反対側の外面にかけて貫設されたピン受け部95を有している。孔開けピン83は、シート部21を貫通して保持し且つピン受け部95に挿入されるピン本体83Aと、ピン本体83Aから突出して受け部材90の外面に接触可能に対向する係止部83Bと、を有している。
【選択図】図11
【特許請求の範囲】
【請求項1】
保持部材と、受け部材と、前記保持部材と前記受け部材との間に配置される配線部材と、を備え、
前記配線部材は、絶縁性のシート部と、前記シート部に並列に固定される複数本の電線と、を有し、
前記保持部材は、前記受け部材に向けて突出する孔開けピンを有し、
前記受け部材は、前記シート部に対向する内面から反対側の外面にかけて貫設されたピン受け部を有し、
前記孔開けピンは、前記シート部を貫通して保持し且つ前記ピン受け部に挿入されるピン本体と、前記ピン本体から突出して前記受け部材の前記外面に接触可能に対向する係止部と、を有している、コネクタカバー。
【請求項2】
前記ピン受け部は、前記受け部材の前記内面に、前記孔開けピンとの間に前記シート部をすり切る内周縁を有している、請求項1に記載のコネクタカバー。
【請求項3】
前記係止部は、前記ピン受け部への挿入方向の先端側に向けて縮径する斜面と、前記先端側に配置される端面と、前記斜面と前記端面とを鈍角に連ねる角部と、を有している、請求項2に記載のコネクタカバー。
【請求項4】
前記孔開けピンは、割り溝を介して径方向に弾性変形可能な複数の分割ピンを有している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタカバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタカバーに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、曲げ部を有する複数本の電線と、曲げ部を保持する電線カバーと、電線カバーに取り付けられる筒状部材と、を備えた構造を開示している。各電線は、電線カバーから筒状部材にかけて挿通される。
特許文献2は、電線カバーと、電線カバーに取り付けられるコルゲートチューブと、電線カバーからコルゲートチューブにかけて挿通される複数本の電線と、を備えた構造を開示している。
特許文献3は、複数本の電線と、各電線を並列に固定する絶縁性のシート部と、を備えた配線部材を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2023-14774号公報
【特許文献2】特開2023-10275号公報
【特許文献3】特開2020-24787号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば、特許文献1,2に開示された電線カバーの内部には、特許文献3に開示された配線部材のシート部を配置させることも可能である。仮に、シート部が電線カバーの内部に配置される場合に、電線カバーの内部にシート部を固定する構造を設けると、電線カバーの構造が複雑化する懸念がある。
【0005】
そこで、本開示は、構造が複雑化するのを回避しつつ、配線部材の保持構造を設けることが可能なコネクタカバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のコネクタカバーは、保持部材と、受け部材と、前記保持部材と前記受け部材との間に配置される配線部材と、を備え、前記配線部材は、絶縁性のシート部と、前記シート部に並列に固定される複数本の電線と、を有し、前記保持部材は、前記受け部材に向けて突出する孔開けピンを有し、前記受け部材は、前記シート部に対向する内面から反対側の外面にかけて貫設されたピン受け部を有し、前記孔開けピンは、前記シート部を貫通して保持し且つ前記ピン受け部に挿入されるピン本体と、前記ピン本体から突出して前記受け部材の前記外面に接触可能に対向する係止部と、を有している、コネクタカバーである。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、構造が複雑化するのを回避しつつ、配線部材の保持構造を設けることが可能なコネクタカバーを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタにおいて、配線部材を除く各部材の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタの斜視図である。
図3図3は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタの背面図である。
図4図4は、実施形態1のコネクタカバーにおいて、孔開けピンが配線部材のシート部を貫通した部分を拡大して示す斜視図である。
図5図5は、実施形態1のコネクタカバーにおける配線部材の平面図である。
図6図6は、実施形態1のコネクタカバーにおける端子金具の断面図である。
図7図7は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタにおいて、第1部材の第1収容室に端子金具が収容され、収容された端子金具に第1配線部材の導体が接続された状態を示す平面図である。
図8図8は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタにおいて、図7に示す状態から第2部材の第2収容室に端子金具が収容され、収容された端子金具に第2配線部材の導体が接続された状態を示す平面図である。
図9図9は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタにおいて、図8に示す状態から第3部材が装着された状態を示す平面図である。
図10図10は、実施形態1のコネクタカバーを含むコネクタにおいて、図9に示す状態から保持部材が受け部材に装着された状態を示す平面図である。
図11図11は、実施形態1のコネクタカバーにおいて、孔開けピンのピン本体がシート部を貫通してピン受け部に挿入され、係止部が受け部材の受け本体の下面に接触可能に対向して配置された状態を示す断面図である。
図12図12は、実施形態1のコネクタカバーにおける孔開けピンを拡大して示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタカバーは、
(1)保持部材と、受け部材と、前記保持部材と前記受け部材との間に配置される配線部材と、を備え、前記配線部材は、絶縁性のシート部と、前記シート部に並列に固定される複数本の電線と、を有し、前記保持部材は、前記受け部材に向けて突出する孔開けピンを有し、前記受け部材は、前記シート部に対向する内面から反対側の外面にかけて貫設されたピン受け部を有し、前記孔開けピンは、前記シート部を貫通して保持し且つ前記ピン受け部に挿入されるピン本体と、前記ピン本体から突出して前記受け部材の前記外面に接触可能に対向する係止部と、を有している。
【0010】
孔開けピンがシート部を貫通して保持することで、配線部材が保持部材と受け部材との間に保持される。また、孔開けピンの係止部が受け部材の外面に接触可能に対向することで、保持部材が受け部材から開く方向に変位することが規制される。孔開けピンが配線部材を保持する機能と受け部材からの保持部材の離脱を規制する機能とを兼備するため、それぞれの機能が保持部材の別々の部位に設けられる場合と比較し、保持部材ひいてはコネクタカバーの構造を簡素化することができる。
【0011】
(2)上記(1)に記載のコネクタカバーにおいて、前記ピン受け部は、前記受け部材の前記内面に、前記孔開けピンとの間に前記シート部をすり切る内周縁を有していることが好ましい。
【0012】
ピン受け部が孔開けピンを受け、ピン受け部の内周縁と孔開けピンとの間にシート部をすり切ることで、シート部が孔開けされると同時に、孔開けピンがシート部を貫通することができる。よって、孔開けピンがシート部を貫通して保持する形態を適正に実現することができる。
【0013】
(3)上記(2)に記載のコネクタカバーにおいて、前記係止部は、前記ピン受け部への挿入方向の先端側に向けて縮径する斜面と、前記先端側に配置される端面と、前記斜面と前記端面とを鈍角に連ねる角部と、を有していることが好ましい。
【0014】
上記(3)の構成は、係止部の角部とピン受け部の内周縁との間にシート部を挟み込んだ状態ですり切ることができるので、シート部を孔開けする精度を向上させることができる。
【0015】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタカバーにおいて、前記孔開けピンは、割り溝を介して径方向に弾性変形可能な複数の分割ピンを有していることが好ましい。
【0016】
各分割ピンは、ピン受け部への挿入過程で弾性変形し、ピン受け部への挿入完了時に弾性復帰することができる。各分割ピンが弾性復帰することによって、係止部が受け部材の外面に接触可能に対向して配置される。このため、ピン本体がピン受け部に円滑に挿入されるとともに、受け部材に対する係止部の係止代を十分に確保することができる。
【0017】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0018】
<実施形態1>
実施形態1のコネクタカバー10は、図2および図3に示すコネクタ100に設けられている。コネクタ100は、コネクタカバー10と、端子金具40と、端子金具40を収容するハウジング60と、を具備して構成される。コネクタカバー10は、端子金具40に接続される配線部材20と、配線部材20を保護し、且つハウジング60に保持される、保持部材80および受け部材90と、を備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、コネクタ100が図示しない相手コネクタと嵌合する側を前側とする。上下方向は、図1および図2の上下方向を基準とする。図1および図2において、矢印X、YおよびZは、それぞれ、前方、右方および上方を表している。これらの方向は、コネクタ100が図示しない車両等に搭載された状態における方向の基準に必ずしも一致しない。
【0019】
(配線部材)
図5に示すように、配線部材20は、シート部21と、シート部21に固定される複数本の電線22と、を有している。シート部21は、絶縁性の材料からなり、例えば、不織布によって構成されている。電線22としては、芯線等の導体23の外周を絶縁性の被覆24で覆った被覆電線を例示することができる。
【0020】
複数本の電線22は、シート部21の一面(本実施形態1の場合は下面)に対して左右方向に並んだ状態で固定されている。各電線22は、シート部21の一面に対し、例えば、溶着手段によって固定されている。溶着手段としては、超音波溶着、加熱加圧溶着、高周波溶着等の公知の溶着手段を採用することができる。配線部材20は、全体として可撓性を有し、高さ寸法が抑えられた平面視矩形の扁平な形状をなしている。
【0021】
各電線22の前端部は、シート部21から前方に突出して配置される。また、各電線22の前端部は、被覆24の皮剥ぎによって導体23を露出させている(以下、各電線22の前端部で露出する導体を「露出導体23」と称する。)。
【0022】
本実施形態1の場合、図3に示すように、配線部材20は、コネクタ100の内部において、下段に配置される第1配線部材20Aと、上段に配置される第2配線部材20Bと、を有している。シート部21に固定される各電線22の本数は、第1配線部材20Aと第2配線部材20Bとで異なる。具体的には、第1配線部材20Aは、シート部21の左右中央部において電線22を固定しない部分を含み、その分、第2配線部材20Bよりも各電線22の本数が少なくなっている。もっとも、各電線22の本数は、第1配線部材20Aと第2配線部材20Bとで同じであっても良く、あるいは、上記とは逆に、第1配線部材20Aのほうが第2配線部材20Bよりも多くなっていても良い。
【0023】
(端子金具)
図6に示すように、端子金具40は、接続部材41と、接続部材41に対して離間位置と接続位置との間をスライド可能に装着されるスライド部材42と、を有して構成される。接続部材41およびスライド部材42は、互いに別体である。接続部材41およびスライド部材42は、いずれも導電性の金属板を曲げ加工等して形成される。
【0024】
接続部材41は、筒状、例えば、角筒状の接続本体43を有している。接続本体43は、前方から図示しない相手端子金具を受けて電気的に接続される。また、接続部材41は、接続本体43から後方に延びる図示しない接触部を有している。
【0025】
スライド部材42は、筒状、例えば、角筒状の箱部45を有している。接続部材41の接触部は、箱部45に挿入される。スライド部材42は、箱部45の内部に、図示しない押圧部を有している。スライド部材42が離間位置にあるときに、配線部材20の電線22の露出導体23が接続部材41に挿入される。露出導体23は、接続部材41に接触せず、接触部から離れて配置される。その状態で、スライド部材42が前方に押し込まれ、接続位置に至ることができる。スライド部材42が接続位置にあるときに、押圧部が接触部を押圧し、接触部が露出導体23に接触する。これにより、配線部材20の電線22は、端子金具40に電気的および機械的に接続される。
【0026】
(ハウジング)
図1に示すように、ハウジング60は、第1部材61、第2部材62および第3部材63によって構成される。第1部材61、第2部材62および第3部材63は、この順に下側から積層状態に配置される。第1部材61、第2部材62および第3部材63は、いずれも合成樹脂製である。
【0027】
図1に示すように、第1部材61は、ロアハウジングとして構成される。第1部材61は、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第1部材61は、上面側に、左右方向に一列に並んで配置された複数の第1収容室64を有している。各第1収容室64は、第1部材61において、前後方向に延び、後方に開放されている。端子金具40は、第1収容室64に後方から挿入されて収容される。図1に示すように、第1部材61は、ハウジング60の前面部分を構成する前壁65を有している。前壁65は、各第1収容室64および後述する各第2収容室71の各々の前面開口と連通する、複数の端子挿通孔66を有している。各端子挿通孔66は、上下二段で且つ左右方向に複数並んで開口している。図示しない相手端子金具は、ハウジング60の前方から端子挿通孔66を通して端子金具40に接続される。
【0028】
図7に示すように、第1部材61は、各第1収容室64の前部の上面を閉塞する平板状の第1覆い部67を有している。端子金具40の接続部材41は、第1収容室64の前部に収容され、第1覆い部67によって上方への抜け出しが規制される。第1部材61は、各第1収容室64の後部の上面を開放する第1露出面68を有している。端子金具40のスライド部材42は、第1収容室64の後部に収容され、第1露出面68によって上方に露出して配置される。第1露出面68に露出したスライド部材42の一部(図6の突起47を参照)が前方へ押圧されることにより、スライド部材42が離間位置から接続位置へと移動させられる。図1に示すように、第1部材61は、左右両側の端部に、一対の第1ハウジングロック部69を有している。
【0029】
第2部材62は、インナハウジングとして構成される。図1および図8に示すように、第2部材62は、第1部材61よりも一回り小さい平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第2部材62の下面は、第1部材61の上面を覆い、第1露出面68を閉塞する。第2部材62は、上面側に、左右方向に一列に並んで配置された複数の第2収容室71を有している。各第2収容室71は、第2部材62において、前後方向に延び、後方に開放されている。端子金具40は、第2収容室71に後方から挿入されて収容される。第2部材62は、各第2収容室71の前部の上面を閉塞する平板状の第2覆い部72を有し、各第2収容室71の後部の上面を開放する第2露出面73を有している。第2覆い部72および第2露出面73の各々の機能は、上記した第1覆い部67および第1露出面68と同様である。第2部材62は、左右両側の端部に、一対の第2ハウジングロック部74を有している。各第2ハウジングロック部74が各第1ハウジングロック部69に内側から係止されることにより、第2部材62が第1部材61に保持される。
【0030】
第3部材63は、アッパハウジングとして構成される。図1および図9に示すように、第3部材63は、第1部材61よりも一回り大きい平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第3部材63の下面は、第2部材62の上面を覆い、第2露出面73を閉塞する。第3部材63は、下面の後端部に、複数のハウジング溝部75(図3を参照)を連設させている。各ハウジング溝部75は、各第2収容室71と対応する位置に、左右方向に一列に並んで配置されている。各ハウジング溝部75は、断面U字形をなし、下向きに開口している。各ハウジング溝部75は、第1部材61、第2部材62および第3部材63が積層状態にあるときに、第1部材61および第2部材62の各々の後方に配置される。第2配線部材20Bの各電線22は、各ハウジング溝部75に下方から挿入される。
【0031】
図2に示すように、第3部材63は、上面の左右中央部に、弾性変形可能なロックアーム76を有している。ロックアーム76は、相手コネクタを係止し、コネクタ100と相手コネクタとを嵌合状態に保持する。第3部材63は、左右両側の端部に、一対の第3ハウジングロック部77を有している。各第3ハウジングロック部77が各第1ハウジングロック部69に外側から係止されることにより、第3部材63が第1部材61および第2部材62に対して積層状態に保持される。第3部材63は、左右両側の端部で且つ各第3ハウジングロック部77の後方である後端部に、一対の係止突部78を有している。各係止突部78は、上下方向に延びる角柱状をなし、第1部材61、第2部材62および第3部材63が積層状態にあるときに、第1部材61および第2部材62の各々の後方に配置される。各係止突部78が保持部材80および受け部材90に係止されることにより、第3部材63ひいてはハウジング60が保持部材80および受け部材90に保持(連結)される。
【0032】
(受け部材)
受け部材90は、ロアカバーとして構成される。受け部材90は、合成樹脂製であって、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。図7に示すように、受け部材90は、第1部材61の後方に第1部材61と並んで配置される。図1に示すように、受け部材90は、平板状の受け本体91を有している。受け部材90は、受け本体91の前端部に、複数のカバー溝部92を連設させている。各カバー溝部92は、各第1収容室64と対応する位置に、左右方向に一列に並んで配置されている。各カバー溝部92は、断面U字形をなし、上向きに開口している。図3および図7に示すように、第1配線部材20Aの各電線22は、各カバー溝部92に上方から挿入される。なお、各カバー溝部92と各ハウジング溝部75とは、幅方向に関して互いに位置ずれしている。
【0033】
図7に示すように、受け部材90は、受け本体91の前端部で且つ各カバー溝部92を挟んだ左右両側の端部に、一対の第1受容部93を有している。各第1受容部93は、断面矩形の凹状をなし、上方に開放されている。各係止突部78の下部は、各第1受容部93に上方から位置決め状態で嵌合される(図9を参照)。
【0034】
図1に示すように、受け部材90は、受け本体91の上面における各カバー溝部92および各第1受容部93の各々の後方に、配線部材20と対向する平坦な対向面94を有している。受け部材90は、受け本体91の左右両側の端部で且つ各第1受容部93の後方に、一対のピン受け部95を有している。各ピン受け部95は、断面円形の孔であって、受け本体91を上下方向(厚み方向)に貫通し、受け本体91の対向面94および下面に開口している。各ピン受け部95における対向面94に開口する内周縁は、エッジ状をなし、後述する孔開けピン83との間でシート部21をすり切ることが可能なすり切り縁96として構成される。また、受け部材90は、受け本体91の左右両側の端部に、一対の第1カバーロック部97を連設させている。
【0035】
(保持部材)
保持部材80は、アッパカバーとして構成される。保持部材80は、合成樹脂製であって、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。図10に示すように、保持部材80は、第3部材63の後方に第3部材63と並んで配置される。図3に示すように、保持部材80は、第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bを挟んで、受け部材90に対向して配置される。図1に示すように、保持部材80は、平板状の保持本体81を有している。保持部材80は、保持本体81の左右両側から前方に突出する一対の第2受容部82を有している。各第2受容部82は、矩形枠状をなしている。各係止突部78の上部は、各第2受容部82に下方から位置決め状態で嵌合される(図10を参照)。
【0036】
保持本体81の下面は、平坦に形成されている。図3に示すように、保持部材80は、保持本体81の下面における各第2受容部82の後方に、一対の孔開けピン83を突設させている。各孔開けピン83は、ピン本体83Aと、ピン本体83Aの下端(先端)に連なって径方向外側に張り出す係止部83Bと、を有している。
【0037】
ピン本体83Aは、保持本体81の下面から下方に同径で延びる形状であって、ピン受け部95に適合して挿入される。図12に示すように、係止部83Bは、径方向外側から見て台形状をなしている。係止部83Bは、外面に、ピン本体83Aの下端側から径方向外側に張り出す係止面83Cと、孔開けピン83の下端面(先端面)を構成する端面83Dと、係止面83Cの外周縁から端面83Dの外周縁にかけて縮径しつつ延びる斜面83Eと、を有している。係止面83Cは、ピン受け部95の内径より大きい外径を有している。係止面83Cは、ピン本体83Aの外周面に曲面状に連なり、径方向に水平に配置されるか、あるいは、径方向外側へ行くにしたがって上向きに傾斜して配置される。端面83Dは、底面視円形をなし、ピン本体83Aの外径に等しい外径を有している。端面83Dは、径方向外側へ行くにしたがって上向きに傾斜して配置される。孔開けピン83は、端面83Dと斜面83Eとの間に、これら端面83Dと斜面83Eとを鈍角に連ねるエッジ状の角部83Fを有している。
【0038】
孔開けピン83は、径方向中央部に、割り溝83Gを有している。割り溝83Gは、前後方向に延び、ピン本体83Aの外周面および斜面83Eの各々の左右中央部に開口している。そして、割り溝83Gは、上下方向に延び、係止面83Cおよび端面83Dの各々の左右中央部に開口している。割り溝83Gは、端面83Dに開口する下端からピン本体83Aの上下途中部位にかけて、左右幅を次第に狭めるように形成されている。孔開けピン83は、割り溝83Gを介した左右両側に、一対の分割ピン83Hを有している。斜面83E、係止面83Cおよび端面83Dは、各分割ピン83Hの下端部(先端部)に形成されている。各分割ピン83Hは、割り溝83Gの溝幅を狭める径方向(本実施形態1の場合は左右方向)に弾性変形可能とされている。
【0039】
図10に示すように、保持部材80は、保持本体81の左右両側の端部に、一対の第2カバーロック部85を連設させている。各第2カバーロック部85が各第1カバーロック部97に係止されることにより、保持部材80が受け部材90に連結状態に保持される。
【0040】
(コネクタカバーの作用)
以下、コネクタ100の組み立て手順の一例を説明する。なお、コネクタ100の組み立ては、例えば、自動機を用いて自動的に行うことができる。
【0041】
まず、各端子金具40が第1部材61の各第1収容室64に収容される。このとき、スライド部材42は接続部材41に対して離間位置に配置される。そして、第1部材61の後方に受け部材90が配置され、第1配線部材20Aの各電線22が各端子金具40に後方から挿入される。各電線22は第1部材61の各カバー溝部92に位置決めされる。各電線22の露出導体23は端子金具40の内部にスライド部材42から接続部材41にわたって配置される。各電線22が各電線22に共通のシート部21に固定されているので、シート部21を前方に移動させることで、各電線22を各端子金具40に一括して同時に挿入することができる。その状態から、各端子金具40のスライド部材42が第1露出面68を介して接続位置に移動させられる(図7を参照)。これにより、各端子金具40が第1配線部材20Aの各電線22に接続される。なお、本実施形態1の場合、各電線22は、シート部21の下面に固定されている。
【0042】
続いて、第2部材62が第1部材61の上方から第1部材61に装着されて係止される。第1露出面68は第2部材62によって覆われる。上記同様、各端子金具40が第2部材62の各第2収容室71に収容され、さらに第2配線部材20Bの各電線22が各端子金具40に挿入される。そして、各端子金具40のスライド部材42が第2露出面73を介して接続位置に移動させられる(図8を参照)。
【0043】
続いて、第3部材63が第2部材62の上方から第1部材61に装着されて係止される。第2露出面73は第3部材63によって覆われる(図9を参照)。これにより、ハウジング60の組み立てが完成する。第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bの各々のシート部21は、ハウジング60の後方で且つ第1部材61の対向面94に支持可能に配置される。
【0044】
続いて、保持部材80が受け部材90の上方から受け部材90に装着されて係止される(図10を参照)。受け部材90の装着過程において、孔開けピン83の端面83Dがシート部21に接触し、各分割ピン83Hが割り溝83Gを狭める方向に変形する。さらに、受け部材90の装着が進み、孔開けピン83の斜面83Eがシート部21を摺動し、シート部21が受け部材90の対向面94に押圧される。シート部21は、孔開けピン83の斜面83Eとピン受け部95のすり切り縁96との間に強固に挟み込まれる。さらなる保持部材80の下降によって、シート部21が孔開けピン83の角部83Fとピン受け部95のすり切り縁96との間にすり切られ、孔開けされると同時に、孔開けピン83がシート部21を貫通する。本実施形態1の場合、孔開けピン83は、第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bの各々のシート部21を同時に貫通する。これにより、各シート部21は各孔開けピン83に上下方向に並んで保持される。図4に示すように、シート部21に形成された孔の直径は、当該孔を貫通する孔開けピン83の直径に等しくなる。なお、図4は、便宜上、第2配線部材20Bを省略し、孔開けピン83が第1配線部材20Aを貫通する状態のみを図示している。
【0045】
孔開けピン83がシート部21を貫通してピン受け部95に挿入された状態で、各分割ピン83Hが弾性復帰し、係止部83Bが受け部材90の下方に抜ける。図11に示すように、係止部83Bの係止面83Cが受け部材90の受け本体91の下面(外面)に接触可能に対向して配置される。こうして各孔開けピン83の係止部83Bが受け部材90に係止されることにより、保持部材80および受け部材90が、各シート部21を挟んで状態で、互いに開く方向に変位することを規制された状態に強固に保持(連結)される。
【0046】
上記のとおり、電線22の露出導体23は、端子金具40に対して接続部材41の内部で押圧部に押圧されて保持される。端子金具40が露出導体23を保持する保持力は、露出導体23が一般端子におけるバレルによって圧着される場合に比べて弱い傾向にある。その点、本実施形態1の場合、例えば、シート部21に対してハウジング60から後方への引張力が作用しても、各孔開けピン83がシート部21を貫通して保持しているため、引張力に抗することができる。このため、シート部21が引張力に応じて後退することを回避でき、端子金具40に対するシート部21の位置を一定に維持することができる。その結果、配線部材20の各電線22が各端子金具40に接続される状態を維持することができる。
【0047】
以上説明したように、本実施形態1によれば、保持部材80の孔開けピン83がシート部21を貫通して保持するため、シート部21に引張力等の外力が作用したときに、外力が各配線部材20の露出導体23と端子金具40との接続部分に伝わることを抑制することができる。その結果、シート部21を有する配線部材20を備えたコネクタ100であっても、電線22と端子金具40との接続信頼性を確保することができる。
【0048】
また、ピン受け部95が孔開けピン83を受け、ピン受け部95のすり切り縁96と孔開けピン83との間にシート部21をすり切ることで、シート部21が孔開けされると同時に、孔開けピン83がシート部21を貫通することができる。よって、孔開けピン83がシート部21を貫通して保持する形態を適正に実現することができる。
【0049】
また、本実施形態1の場合、第1部材61、第2部材62および第3部材63が第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bを間に挟みつつ順次下側から装着され、受け部材90および保持部材80も順次下側から装着されることで、コネクタ100が組み立てられる。このため、自動機等を利用し、コネクタ100の組み立て作業を効力良く行うことができる。
【0050】
また、本実施形態1の場合、孔開けピン83の係止部83Bが受け部材90の下面に接触可能に対向することで、保持部材80が受け部材90から開く方向に変位することが規制される。孔開けピン83が配線部材20を保持する機能と受け部材90からの保持部材80の離脱を規制する機能とを兼備するため、それぞれの機能が保持部材80の別々の部位に設けられる場合と比較し、保持部材80ひいてはコネクタカバー10の構造を簡素化することができる。
【0051】
また、係止部83Bの角部83Fとピン受け部95のすり切り縁96との間にシート部21を挟み込んだ状態ですり切ることができるので、シート部21を孔開けする精度を向上させることができる。
【0052】
さらに、孔開けピン83のピン受け部95への挿入過程で、各分割ピン83Hが割り溝83Gを狭める方向に弾性変形し、孔開けピン83のピン受け部95への挿入完了時に、各分割ピン83Hが弾性復帰することができる。各分割ピン83Hが弾性復帰することによって、係止部83Bが受け部材90の下面に接触可能に対向して配置される。このため、ピン本体83Aがピン受け部95に円滑に挿入されるとともに、受け部材90に対する係止部83Bの係止代を十分に確保することができる。
【0053】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、保持部材および受け部材は、いずれも、ハウジングの後方に、ハウジングと別体に保持(連結)されていた。これに対し、他の実施形態によれば、保持部材および受け部材の少なくとも一方は、ハウジングの後方に、ハウジングと一体に保持される構成であっても良い。
上記実施形態1の場合、配線部材は、第1配線部材および第2配線部材によって構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、配線部材は、第1配線部材および第2配線部材のいずれか一方のみで構成されるものであって良く、あるいは、第1配線部材および第2配線部材に加え、さらに別の配線部材を備えていても良い。
上記実施形態1の場合、端子金具は、接続部材に対してスライド部材が接続位置にスライド装着されて電線に接続される構成であった。これに対し、他の実施形態によれば、端子金具は、バレルによって電線に圧着される一般端子であっても良い。
上記実施形態1の場合、孔開けピンは、割り溝を介して弾性変形可能な一対の分割ピンを有していた。これに対し、他の実施形態によれば、孔開けピンは、割り溝を介して弾性変形可能な3つ以上の分割ピンを有していても良い。
【符号の説明】
【0054】
10…コネクタカバー
20…配線部材
20A…第1配線部材
20B…第2配線部材
21…シート部
22…電線
23…露出導体(導体)
24…被覆
40…端子金具
41…接続部材
42…スライド部材
43…接続本体
45…箱部
47…突起
60…ハウジング
61…第1部材
62…第2部材
63…第3部材
64…第1収容室
65…前壁
66…端子挿通孔
67…第1覆い部
68…第1露出面
69…第1ハウジングロック部
71…第2収容室
72…第2覆い部
73…第2露出面
74…第2ハウジングロック部
75…ハウジング溝部
76…ロックアーム
77…第3ハウジングロック部
78…係止突部
80…保持部材
81…保持本体
82…第2受容部
83…孔開けピン
83A…ピン本体
83B…係止部
83C…係止面
83D…端面
83E…斜面
83F…角部
83G…割り溝
83H…分割ピン
85…第2カバーロック部
90…受け部材
91…受け本体
92…カバー溝部
93…第1受容部
94…対向面
95…ピン受け部
96…すり切り縁
97…第1カバーロック部
100…コネクタ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12