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特開2024-176632弁装置、弁装置の施工方法、及び弁装置の組立方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176632
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】弁装置、弁装置の施工方法、及び弁装置の組立方法
(51)【国際特許分類】
   F16K 3/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F16K3/00 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095349
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】396020361
【氏名又は名称】株式会社水道技術開発機構
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】嶋田 一博
【テーマコード(参考)】
3H053
【Fターム(参考)】
3H053AA02
3H053BA22
3H053BA34
3H053DA02
(57)【要約】
【課題】シール部材を適切に変形させることが可能な弁装置、弁装置の施工方法、弁装置の組立方法を提供する。
【解決手段】弁装置1の弁体3は、貫通孔K1の縁をシールするための第1シール部50と、拡径方向D3に変形可能な第2シール部51とを有する第1シール部材5と、第1シール部材5を支持する支持部材6と、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動可能な移動部材8と、を有する。移動部材8が弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動することで、移動部材8が第2シール部51を押圧して第2シール部51を拡径方向D3に変形させることが可能である。第1シール部材5における弁体3の挿入方向D2には、弁体3の上流と下流とに連通する連通路53が形成される。連通路53は、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動する移動部材8によって閉塞される。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体管に形成された貫通孔から前記流体管内に挿入可能な弁体を備え、
前記弁体は、
前記貫通孔の縁をシールするための第1シール部と、前記流体管の内壁をシールするために前記弁体の挿入方向に直交し且つ前記流体管の管径方向外側へ拡がる拡径方向に変形可能な第2シール部とを有する第1シール部材と、
前記第1シール部材を支持する支持部材と、
前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、
を有し、
前記移動部材が前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動することで、前記移動部材が前記第2シール部を押圧して前記第2シール部を前記拡径方向に変形させることが可能であり、
前記第1シール部材における前記弁体の挿入方向には、前記弁体の上流と下流とに連通する連通路が形成されており、前記連通路は、前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動する前記移動部材によって閉塞される、弁装置。
【請求項2】
前記第1シール部材は、前記流体管における前記弁体の挿入方向の内壁をシールするための第3シール部を有し、
前記支持部材は、前記第3シール部を前記弁体の挿入方向へ押圧する押圧部を有し、
前記押圧部は、前記移動部材によって押圧される前記第2シール部の内側部位が前記弁体の挿入方向に移動することを規制する第1規制面を有する、請求項1に記載の弁装置。
【請求項3】
前記第1シール部材は、前記押圧部に固定されている、請求項2に記載の弁装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記第2シール部の少なくとも一部を前記弁体の上流及び下流の両側から挟む一対の第2規制面を有し、前記一対の第2規制面は、前記第2シール部が前記弁体の上流及び下流へ向けて変形することを規制する、請求項1に記載の弁装置。
【請求項5】
前記移動部材は、前記第1シール部材とは別個に形成された第2シール部材を有し、前記第2シール部材が前記連通路を閉塞する、請求項1に記載の弁装置。
【請求項6】
前記第1シール部材の前記弁体の挿入方向の端部に、前記弁体の上流と下流及び前記弁体の挿入方向の三方向に開く開口が形成されており、前記開口が前記連通路を形成している、請求項5に記載の弁装置。
【請求項7】
前記第2シール部の少なくとも一部は、前記第1シール部よりも硬い、請求項1に記載の弁装置。
【請求項8】
流体管に形成された貫通孔から前記流体管内に弁体を不断流状態で挿入させる弁装置の施工方法であって、
前記弁体は、
前記貫通孔の縁をシールするための第1シール部と、前記流体管の内壁をシールするために前記弁体の挿入方向に直交し且つ前記流体管の管径方向の外側へ拡がる拡径方向に変形可能な第2シール部とを有する第1シール部材と、
前記第1シール部材を支持する支持部材と、
前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、を有し、
前記第1シール部材における前記弁体の挿入方向には、前記弁体の上流と下流とに連通する連通路が形成されており、
前記方法は、
前記弁体を前記流体管内に挿入させて、前記第1シール部を前記貫通孔の縁に密着させることと、
前記移動部材を前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動させ、前記移動部材で前記第2シール部を押圧して前記第2シール部を前記拡径方向に変形させることと、
前記第2シール部の変形の後、更に前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動する前記移動部材によって前記連通路を閉塞することと、
を含む、弁装置の施工方法。
【請求項9】
流体管に形成された貫通孔から前記流体管内に挿入可能な弁体を備える弁装置の組立方法であって、
前記貫通孔の縁をシールするための第1シール部と、前記流体管の内壁をシールするために前記弁体の挿入方向に直交し且つ前記流体管の管径方向の外側へ拡がる拡径方向に変形可能な第2シール部とを有する第1シール部材を支持部材に支持させることと、
前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動可能な移動部材を前記支持部材の内部に挿入することと、
前記移動部材が前記支持部材から抜けることを抑制する固定部材を前記支持部材に取り付けることと、
を含む、弁装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、水道管等の流体管に用いる弁装置、弁装置の施工方法、及び弁装置の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
既設の水道管等の流体管に用いる弁装置の一例として、流体管に形成された貫通孔から流体管内に弁体を挿入又は引き出すことにより流体管の管路を開閉する弁装置が開示されている。弁体は、弁体の挿入方向(下方)に沿って移動可能な支持部材と、支持部材で支持されるシール部材とを有する。シール部材は、貫通孔をシールするための環状の第1シール部と、流体管の径方向外側に変形可能で流体管の内壁をシールするためのU字状の第2シール部とを有する。
【0003】
弁体の閉動作については、次の記載がある。支持部材が下方に移動してシール部材が流体管の下方の内壁に押し付けられる。更に支持部材が下方に強制的に下降すると、U字状の第2シール部が鉛直方向に圧縮されるので、第2シール部の左右両側部が横方向(流体管の径方向)に強制的に膨らんで拡径し、第2シール部が流体管の内壁をシールする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6-159526号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の通り、第2シール部で流体管の内壁を的確にシールさせるためには、第2シール部を流体管の管径方向の外側に適切に変形させる必要がある。弁体の挿入方向に進む力を利用するために、第2シール部を流体管の管径方向の外側へ変形させにくい場合がある。また、シールのために第2シール部を変形させるのに必要な力が水圧の影響を受ける場合があり、第2シール部を流体管の管径方向の外側へ変形させにくい場合がある。
【0006】
本開示は、シール部材を適切に変形させることが可能な弁装置、弁装置の施工方法、弁装置の組立方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の弁装置は、流体管に形成された貫通孔から前記流体管内に挿入可能な弁体を備え、前記弁体は、前記貫通孔の縁をシールするための第1シール部と、前記流体管の内壁をシールするために前記弁体の挿入方向に直交し且つ前記流体管の管径方向外側へ拡がる拡径方向に変形可能な第2シール部とを有する第1シール部材と、前記第1シール部材を支持する支持部材と、前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動可能な移動部材と、を有し、前記移動部材が前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動することで、前記移動部材が前記第2シール部を押圧して前記第2シール部を前記拡径方向に変形させることが可能であり、前記第1シール部材における前記弁体の挿入方向には、前記弁体の上流と下流とに連通する連通路が形成されており、前記連通路は、前記弁体の挿入方向に前記支持部材に対して相対的に移動する前記移動部材によって閉塞される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】第1実施形態の流体管Kに設けられた弁装置1を示す、管軸方向D1と平行な視線で見た一部破断断面図である。
図2】第1実施形態の流体管Kに設けられた弁装置1を示す、側面視の一部破断断面図である。
図3】第1実施形態の流体管Kに設けられた弁装置1を示す、管軸方向と平行な視線で見た、弁体の中心を通る一部破断断面図である。
図4】弁体3を構成する第1シール部材5、支持部材6、第2シール部材7、移動部材8及び固定部材9を組み立てる様子を示す斜視図である。
図5】弁体3を構成する第1シール部材5、支持部材6、第2シール部材7、移動部材8及び固定部材9を組み立てる様子を示す、弁体の挿入方向に平行な視線で見た平面図である。
図6】弁体3を構成する第1シール部材5、支持部材6、第2シール部材7、移動部材8及び固定部材9を組み立てる様子を示す、流体管の管軸方向に平行な視線で見た正面図である。
図7】弁体3を構成する第1シール部材5、支持部材6、第2シール部材7、移動部材8及び固定部材9を組み立てる様子を示す側面図である。
図8】弁体3を構成する第1シール部材5、支持部材6、第2シール部材7、移動部材8及び固定部材9を組み立てる様子を示す底面図である。
図9】弁体3の挿入工程を示す図3に対応する断面図である。
図10】弁体3の挿入工程を示す図3に対応する断面図である。
図11】弁体3の挿入工程を示す図3に対応する断面図である。
図12】第2実施形態について、図10に対応する断面図である。
図13】変形例の弁体3を示す、弁体3の挿入方向及び流体管Kの管軸方向D1を通る断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[第1実施形態]
以下、本開示の第1実施形態の流体管Kに用いられる弁装置1及び弁装置1の施工方法、弁装置1の組立方法について説明する。
【0010】
図1及び図2に示すように、弁装置1は、既設管(水道管)の流体管Kに装着可能な弁箱2と、弁箱2に収容される弁体3と、弁箱2の内面と流体管Kの外周面との隙間を密封する弁箱パッキン4と、を有する。不断流状態で流体管Kに穿孔装置で貫通孔K1が形成され、貫通孔K1から弁体3が流体管K内に挿入されることで、弁装置1が流体管Kに設置される。貫通孔K1は流体管Kの内径よりも小さい。
【0011】
弁箱2は、金属材で形成されており、流体管Kに外嵌めされる割りT字管であり、流体管Kの所定箇所の外周面を水密に取り囲んでいる。また、弁箱2は、上下二つ割り構造を有し、上側部材2A及び下側部材2Bとで構成されている。上側部材2A及び下側部材2Bは、流体管Kの管周方向の端部が固定具S1によって接合されている。第1実施形態では、固定具S1として、ボルトとナットとからなる固定具S1を採用しているが、これに代えて溶接で接合することも可能である。
【0012】
弁箱パッキン4は、ゴムなどの弾性材により形成されており、上側部材2Aと流体管Kの外周面との間であって、流体管Kに形成される貫通孔K1を包囲する位置に環状に配置されている。
【0013】
弁体3は、弁軸30の操作に応じて昇降自在に構成され、流体管K内を流れる水の流路を遮断する。図3は、弁体3が上昇して開位置にある状態を示しており、弁体3が下降して閉位置に移行することにより流路が遮断される。弁箱2の上方は弁蓋21によって閉塞されており、弁軸30は弁蓋21により支持されている。
【0014】
図1~8に示すように、弁体3は、第1シール部材5と、支持部材6と、第2シール部材7と、移動部材8と、固定部材9とを有する。第1シール部材5及び第2シール部材7は、ゴムなどの弾性材により形成されている。支持部材6、移動部材8及び固定部材9は、金属材で形成されている。
【0015】
支持部材6は、第1シール部材5を支持する。移動部材8は、支持部材6に挿入されており、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動可能な部材である。第1実施形態では、移動部材8は、棒状部位80と、棒状部位80から径方向外側に突出する一対の突出片81とを有する。一対の突出片81は、後述する第2シール部51を内側から押圧するために設けられている。棒状部位80の基端(上端;弁体3の挿入方向D2の逆方向の端)には、弁軸30が接続され、ねじ加工された弁軸30の回転によってねじコマが螺合し移動部材8が昇降可能となる。棒状部位80の先端(下端;弁体3の挿入方向D2の端)には、第2シール部材7が設けられている。第2シール部材7は、第1シール部材5と別個に設けられたシール部材であり、弁体3の挿入方向D2と平行な視線で見て円形状に形成されている。
【0016】
固定部材9は、移動部材8が支持部材6から抜けることを抑制する部材である。移動部材8が挿入された支持部材6の後述する収容室63の一部を閉塞する(図4参照)。第1実施形態では、固定部材9は支持部材6に対してボルト等の締結具S2で固定されているが、固定部材9を支持部材6に固定する方法は適宜変更可能である。
【0017】
第1シール部材5は、貫通孔K1の縁をシールするための第1シール部50を有する。第1シール部50は、貫通孔K1の縁に沿った環状部位を有する。第1シール部50としての環状部位は、貫通孔K1よりも大きく形成されている。第1シール部50としての環状部位を貫通孔K1に強制的に挿入することによって第1シール部50が変形して貫通孔K1の縁に密着する。
【0018】
第1シール部材5は、流体管Kにおける拡径方向D3の内壁をシールするために拡径方向D3に変形可能な第2シール部51を有する。拡径方向D3は、弁体3の挿入方向D2に直交し且つ流体管Kの管径方向外側へ拡がる方向である。第2シール部51は、移動部材8に押圧されることにより拡径方向D3に膨らみ(変形し)、貫通孔K1の内径よりも大きくなることで流体管Kにおける拡径方向D3の内壁に密着する。第1実施形態では、第1シール部材5は、環状部位に連結されたU字部位を有する。具体的には、環状部位から下方(弁体3の挿入方向D2)にそれぞれ延びる一対の延在部を有し、一対の延在部の下端が連なってU字部位を形成している。第1実施形態では、U字部位のうち側方部位に第2シール部51が設けられている。
【0019】
第1シール部材5は、流体管Kにおける弁体3の挿入方向D2の内壁をシールするための第3シール部52を有する。第3シール部52は、第1シール部材5のU字部位の底部(弁体3の挿入方向D2の端部)に設けられている。第3シール部52は、支持部材6の押圧部64(後述)によって弁体3の挿入方向D2に押圧されることで、流体管Kにおける弁体3の挿入方向D2の内壁に密着する。
【0020】
第1シール部材5の中で、第1シール部50が最も柔らかい。これは、貫通孔K1への第1シール部50の圧入によって第1シール部50が貫通孔K1の縁に密着する必要があり、そのために、第1シール部50が相対的に柔らかい必要がある(ゴム硬度が低い)。これに対して、第2シール部51は、移動部材8に押圧されることで拡径方向D3に変形して流体管Kの内壁に密着する必要があり、ゴムが柔らかすぎると水圧に負けてゴムが逃げて流体管Kの内壁に密着しないおそれがある。よって、第2シール部51の少なくとも一部は第1シール部50よりも硬い。第1実施形態では、第1シール部材5はゴムであり、第1シール部材5の上部が柔らかいゴムであり、下部が硬いゴムである。上部のゴムと下部のゴムの界面は、第2シール部51を通っているが、適宜変更可能である。
【0021】
支持部材6は、第1シール部材5の環状部位の一部を収容する環状の第1溝60と、第1シール部材5のU字部位の一部を収容する第2溝61と、を有する。第1溝60は、弁体3の挿入方向D2に平行な弁体軸を中心として環状になるように支持部材6の外周に形成されている。第2溝61は、支持部材6の一対の側方部と底部に形成されている。
【0022】
支持部材6は、後述する移動部材8を収容する収容室63を内部に有する。収容室63は、移動部材8が弁体3の挿入方向D2に移動可能な寸法を有する。収容室63は、拡径方向D3に開く一対の第1開口63a及び下方(弁体3の挿入方向D2)に開く第2開口63bを有している。一対の第1開口63a及び第2開口63bは、それぞれ第2溝61に通じている。図3,9~11に示すように、第1シール部材5のU字部位が第2溝61に収容された状態において、第2シール部51の内側部位51aは、弁体3の径方向外側から内側へ向けて収容室63に至るまで延びている。弁体3の挿入方向D2と平行な視線で見て、外力が作用していない自然状態において第2シール部51の内側部位51aは、移動部材8と重なる位置に配置されている。第2シール部51の内側部位51aは、弁体3の挿入方向D2に向かうにつれて(上方から下方に向かうにつれて)、弁体3の径方向外側から内側へ傾斜している。これにより、支持部材6が動かずに移動部材8の弁体3の挿入方向D2への移動によって、移動部材8の一対の突出片81が第2シール部51の内側部位51aに接触し、移動部材8が第2シール部51を拡径方向D3に押圧する。その結果、第2シール部51が拡径方向D3に変形する。
【0023】
支持部材6は、第3シール部52を弁体3の挿入方向D2(下方)へ押圧する押圧部64を有する。押圧部64における弁体3の挿入方向D2の反対側には、第1規制面65が設けられている。第1規制面65は、第2シール部51の内側部位51aに接触しており、移動部材8によって押圧される第2シール部51の内側部位51aが弁体3の挿入方向D2に移動することを規制する。具体的には、第1規制面65は、弁体3の挿入方向D2と平行な視線で見て、第2シール部51の内側部位51aと移動部材8の両方に重なる位置に配置されていることが好ましい。弁体3の挿入方向D2に押される第2シール部51の内側部位51aを適切に受けることができるからである。
【0024】
第1シール部材5の先端部(第3シール部52)は、支持部材6の押圧部64に固定されている。第3シール部52と押圧部64との固定は、ボルトによる固定、接着剤による固定などの任意の固定手段が採用できる。例えば、ボルトによる固定の場合、第3シール部を構成する円環状部位に上向きに突出するボルトを接着剤又は嵌合すること等で固定し、押圧部64に上下に貫通するボルト孔を開け、第3シール部の上向きボルトを押圧部64のボルト孔に下から通して固定することが挙げられる。第1実施形態の第1シール部材5のU字部位の下端部(第3シール部52)は、弁体3の開閉時に、流体管Kの上流から下流に向かう流体の圧力の影響を受けやすく、第1シール部材5の下端部(第3シール部52)が支持部材6から脱落しやすい。第3シール部52を支持部材6の押圧部64に固定することで、この脱落を抑制又は防止可能となる。
【0025】
支持部材6の一対の第1開口63aは、第2シール部51の一部が収容される。支持部材6は、一対の第2規制面66を有する(図4、7、8参照)。一対の第2規制面66は、一対の第1開口63aに配置された第2シール部51の少なくとも一部を弁体3の上流及び下流の両側から挟んでいる。一対の第2規制面66は、第2シール部51が弁体3の上流及び下流へ向けて変形することを規制する。これにより、第2シール部51を流体管Kの管径方向の外側(拡径方向D3)への変形が容易となる。
【0026】
第1シール部材5における弁体3の挿入方向D2には、弁体3の上流と下流とに連通する連通路53が形成されている。この連通路53は、移動部材8が、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動することによって閉塞される。第1実施形態では、第1シール部材5の弁体3の挿入方向D2の端部に、弁体3の上流と下流及び弁体3の挿入方向D2の三方向に開く第3開口54が形成されている。第3開口54が連通路53を形成している。第1シール部材5の第3開口54と支持部材6の第2開口63bとは連通している。移動部材8が弁体3の挿入方向D2に移動することで、移動部材8の棒状部位80の先端に設けられた第2シール部材7が第3開口54内及び第2開口63b内を進み、第2シール部材7が流体管Kにおける弁体3の挿入方向D2の内壁に密着し、連通路53が閉塞される。
【0027】
<弁装置の組立方法>
図4に示すように、第1シール部材5に支持部材6を挿入して、第1シール部材5を支持部材6に支持させる。次に、支持部材6の内部(収容室63)に移動部材8を挿入する。移動部材8の一対の突出片81が収容室63内の対のスリット63cに嵌るようにする。一対のスリット63cによって移動部材8が回転せずに支持部材6に対してスライド移動可能となる。次に、締結具S2を用いて固定部材9を支持部材6に取り付け、移動部材8が支持部材6から抜けないようにする。これにより、弁装置1の弁体3が完成する。
【0028】
<弁装置の止水機構(施工方法)>
上記弁装置の組立方法によって組み立てた弁体3を、図3に示すように、流体管K内に挿入させて、図9に示すように、第1シール部50を貫通孔K1の縁に密着させる。弁軸30の操作を継続すると、移動部材8が更に弁体3の挿入方向D2に進み、移動部材8が第1シール部材5及び支持部材6を押圧し、第3シール部52が流体管Kの底壁に押し付けられる。この時、流体管Kは閉塞されておらず、第2シール部51の側方2箇所の隙間と、連通路53が開放されており、流体の流れは止まっていない。
【0029】
更に弁軸30の操作を継続すると、支持部材6が停止した状態で移動部材8が支持部材6に対して相対的に下方に移動し、移動部材8が第2シール部51の内側部位51aを拡径方向D3及び弁体3の挿入方向D2に押圧する。第2シール部51の内側部位51aは支持部材6の押圧部64の第1規制面65によって弁体3の挿入方向D2への移動が規制されている。更に、第2シール部51の内側部位51aは、一対の第2規制面66によって弁体3の上流と下流の両方側から挟まれている。よって、第2シール部51が拡径方向D3に変形しやすく、図10に示すように、第2シール部51が拡径方向D3に変形し、弁体3の側方に存在した隙間が閉塞される。このとき、連通路53は解放された状態にある。第2シール部51による隙間の閉塞の際に、既に連通路53が閉塞されてしまっていると、第2シール部51は、流体の圧力にも抗して変形する必要があり、弁軸30の操作力が多大になるか、第2シール部51による隙間の閉塞が適切になされないおそれがある。しかし、第2シール部51による隙間の閉塞が完了するまでの間、連通路53が開放されるようにしているので、第2シール部51による隙間の閉塞が適切に実行可能となる。連通路53が閉塞されるタイミングは、移動部材8の棒状部位80の長さで調整可能である。
【0030】
第2シール部51による隙間の閉塞が完了した後、更に弁軸30の操作を継続すると、支持部材6が停止した状態で移動部材8が支持部材6に対して相対的に下方に移動し、図11に示すように、移動部材8に設けた第2シール部材7が連通路53を閉塞する。
【0031】
弁体3を開操作するときは、移動部材8が支持部材6に対して相対的に上方へ移動し、移動部材8に設けた第2シール部材7が連通路53を閉塞していた状態から解放する状態に移動する。さらに、弁体3の開操作を継続すると、第2シール部51が縮径する。この際に、第2シール部51の変形よりも連通路53が先に開くのでスムーズに開操作を行うことができる。
【0032】
[第2実施形態]
第2実施形態について、図12を用いて説明する。第2実施形態は、第1実施形態と比べて、連通路53が設けられておらず、そのために、移動部材8が連通路53を閉塞せず、第2シール部材7が設けられていない。それ以外の構成は、第1実施形態と同じである。
【0033】
第2実施形態の弁装置1の動作について説明する。上記弁装置1の組立方法によって組み立てた弁体3を流体管K内に挿入させて、第1シール部50を貫通孔K1の縁に密着させる。弁軸30の操作を継続すると、移動部材8が更に弁体3の挿入方向D2に進み、移動部材8が第1シール部材5及び支持部材6を押圧し、第3シール部52が流体管Kの底壁に押し付けられる。この時、流体管Kは閉塞されておらず、第2シール部51の側方2箇所の隙間が開放されており、流体の流れは止まっていない。更に弁軸30の操作を継続すると、図12に示すように、支持部材6が停止した状態で移動部材8が支持部材6に対して相対的に下方に移動し、移動部材8が第2シール部51の内側部位51aを拡径方向D3及び弁体3の挿入方向D2に押圧する。第2シール部51の内側部位51aは支持部材6の押圧部64の第1規制面65によって弁体3の挿入方向D2への移動が規制されている。更に、第2シール部51の内側部位51aは、一対の第2規制面66によって弁体3の上流と下流の両方側から挟まれている。よって、第2シール部51が拡径方向D3に変形しやすく、図10に示すように、第2シール部51が拡径方向D3に変形し、弁体3の側方に存在した隙間が閉塞される。
【0034】
このように、支持部材6で第1シール部材5を弁体3の挿入方向D2に押圧することで、第2シール部51を拡径させ変形は起こしにくい。しかし、上記のように、支持部材6とは別個の移動部材8で押圧するので、第2シール部51の適切な変形が可能となる。
【0035】
<変形例>
(A)上記実施形態では、流体管Kは水道管であるが、これに限定されない。
【0036】
(B)上記実施形態では、第1シール部材5が、環状部位とU字部位とを結合した形状であり、支持部材6を弁体3の上流と下流に開放した形状(被覆していない形状)であるが、第1シール部材5の形状は適宜変更可能である。例えば、図13に示すように、第1シール部材5が、支持部材6を弁体3の上流と下流の両方から覆っていてもよい。
【0037】
(C)上記実施形態では、第1シール部50のゴム硬度が第2シール部51の少なくとも一部のゴム硬度よりも柔らかいが、これに限定されない。第1シール部50と第2シール部51の硬度が同じであってもよい。また、第1シール部材5の高硬度部位と低硬度部位の界面は適宜変更可能である。
【0038】
[1]
以上のように、特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように、弁装置1は、流体管Kに形成された貫通孔K1から流体管K内に挿入可能な弁体3を備え、弁体3は、貫通孔K1の縁をシールするための第1シール部50と、流体管Kの内壁をシールするために弁体3の挿入方向D2に直交し且つ流体管Kの管径方向外側へ拡がる拡径方向D3に変形可能な第2シール部51とを有する第1シール部材5と、第1シール部材5を支持する支持部材6と、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動可能な移動部材8と、を有し、移動部材8が弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動することで、移動部材8が第2シール部51を押圧して第2シール部51を拡径方向D3に変形させることが可能であり、第1シール部材5における弁体3の挿入方向D2には、弁体3の上流と下流とに連通する連通路53が形成されており、連通路53は、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動する移動部材8によって閉塞される、としてもよい。
【0039】
支持部材6で第1シール部材5を弁体3の挿入方向D2に押圧することで、第2シール部51を拡径させ変形は起こしにくい。しかし、上記のように、支持部材6とは別個の移動部材8で押圧するので、第2シール部51の適切な変形が可能となる。
また、移動部材8によって連通路53を閉塞するので、第2シール部51の拡径方向D3への変形を的確に先に実施した後で、連通路53を閉塞するタイミングの制御が可能となる。その結果、第2シール部51が閉塞する時点では、連通路53が閉塞されておらず開いた状態にすることで、流体の圧力が第2シール部51の閉塞を阻害することを回避でき、第2シール部51の閉塞に必要な力を低減可能となり、第2シール部51の適切な変形が可能となる。
【0040】
[2]
上記[1]に記載の弁装置1であって、第1シール部材5は、流体管Kにおける弁体3の挿入方向D2の内壁をシールするための第3シール部52を有し、支持部材6は、第3シール部52を弁体3の挿入方向D2へ押圧する押圧部64を有し、押圧部64は、移動部材8によって押圧される第2シール部51の内側部位51aが弁体3の挿入方向D2に移動することを規制する第1規制面65を有する、としてもよい。
この構成によれば、第2シール部51が弁体3の挿入方向D2に変形せずに拡径方向D3に変形しやすくなり、第2シール部51による流体管Kの内壁への密着をより適切に実現可能となる。
【0041】
[3]
上記[2]に記載の弁装置1であって、第1シール部材5は、押圧部64に固定されている、としてもよい。
この構成によれば、弁体3の開閉時に、流体管Kの上流から下流に向かう流体の圧力の影響を受けて、第1シール部材5が支持部材6から脱落することを回避可能となる。
【0042】
[4]
上記[1]~[3]のいずれかに記載の弁装置1であって、支持部材6は、第2シール部51の少なくとも一部を弁体3の上流及び下流の両側から挟む一対の第2規制面66を有し、一対の第2規制面66は、第2シール部51が弁体3の上流及び下流へ向けて変形することを規制する、としてもよい。
この構成によれば、第2シール部51が弁体3の上流または下流へ変形せずに拡径方向D3に変形しやすくなり、第2シール部51による流体管Kの内壁への密着をより適切に実現可能となる。
【0043】
[5]
上記[1]~[4]のいずれかに記載の弁装置1であって、移動部材8は、第1シール部材5とは別個に形成された第2シール部材7を有し、第2シール部材7が連通路53を閉塞する、としてもよい。
この構成によれば、第1シール部材5と同一のシール部材を変形させるわけではないので、連通路53を閉塞しやすくなる。
【0044】
[6]
上記[5]に記載の弁装置1であって、第1シール部材5の弁体3の挿入方向D2の端部に、弁体3の上流と下流及び弁体3の挿入方向D2の三方向に開く開口(第3開口54)が形成されており、開口(第3開口54)が連通路53を形成している、としてもよい。
連通路53を閉塞するための好ましい一実施形態である。
【0045】
[7]
上記[1]~[6]のいずれかに記載の弁装置1であって、第2シール部51の少なくとも一部は、第1シール部50よりも硬い、としてもよい。
この構成によれば、第1シール部50によるシールと第2シール部51によるシールとを適切に実現可能となる。
【0046】
[8]
特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように、弁装置1の施工方法は、流体管Kに形成された貫通孔K1から流体管K内に弁体3を不断流状態で挿入させる弁装置1の施工方法であって、弁体3は、貫通孔K1の縁をシールするための第1シール部50と、流体管Kの内壁をシールするために弁体3の挿入方向D2に直交し且つ流体管Kの管径方向の外側へ拡がる拡径方向D3に変形可能な第2シール部51とを有する第1シール部材5と、第1シール部材5を支持する支持部材6と、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動可能な移動部材8と、を有し、第1シール部材5における弁体3の挿入方向D2には、弁体3の上流と下流とに連通する連通路53が形成されており、弁体3を流体管K内に挿入させて、第1シール部50を貫通孔K1の縁に密着させることと、移動部材8を弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動させ、移動部材8で第2シール部51を押圧して第2シール部51を拡径方向D3に変形させることと、第2シール部51の変形の後、更に弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動する移動部材8によって連通路53を閉塞することと、を含む、としてもよい。
【0047】
[9]
特に限定されないが、第1及び第2実施形態のように、弁装置1の組立方法は、流体管Kに形成された貫通孔K1から流体管K内に挿入可能な弁体3を備える弁装置1の組立方法であって、貫通孔K1の縁をシールするための第1シール部50と、流体管Kの内壁をシールするために弁体3の挿入方向D2に直交し且つ流体管Kの管径方向の外側へ拡がる拡径方向D3に変形可能な第2シール部51とを有する第1シール部材5を支持部材6に支持させることと、弁体3の挿入方向D2に支持部材6に対して相対的に移動可能な移動部材8を支持部材6の内部に挿入することと、移動部材8が支持部材6から抜けることを抑制する固定部材9を支持部材6に取り付けることと、を含む、としてもよい。
【0048】
以上、本開示の実施形態について図面に基づいて説明したが、具体的な構成は、これらの実施形態に限定されるものでないと考えられるべきである。本開示の範囲は、上記した実施形態の説明だけではなく特許請求の範囲によって示され、さらに特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【0049】
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0050】
1 :弁装置
3 :弁体
5 :第1シール部材
6 :支持部材
7 :第2シール部材
8 :移動部材
9 :固定部材
50 :第1シール部
51 :第2シール部
51a :内側部位
52 :第3シール部
53 :連通路
64 :押圧部
65 :第1規制面
66 :第2規制面
D2 :挿入方向
D3 :拡径方向
K :流体管
K1 :貫通孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13