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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176636
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コネクタ
(51)【国際特許分類】
   H01R 13/56 20060101AFI20241212BHJP
   H01R 4/48 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01R13/56
H01R4/48 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095353
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(71)【出願人】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】萬 知紘
【テーマコード(参考)】
5E021
【Fターム(参考)】
5E021FA05
5E021FA09
5E021FA16
5E021FB08
5E021FB20
5E021FC02
5E021FC40
5E021GA04
(57)【要約】
【課題】電気的な信頼性を確保することが可能なコネクタを提供する。
【解決手段】コネクタ10は、被覆24から前方に露出する露出導体23を有している電線22と、露出導体23の前部に接続される端子金具40と、端子金具40を収容する収容室(第1収容室64および第2収容室71)を有するハウジング60と、ハウジング60に保持されるガイド部材90と、を備える。露出導体23の後部は、ハウジング60の後方に配置される。ガイド部材90は、ハウジング60の後方に、露出導体23の後部を収容し、且つ露出導体23の前部を収容室にガイドするガイド孔92Dを有している。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被覆から前方に露出する露出導体を有している電線と、
前記露出導体の前部に接続される端子金具と、
前記端子金具を収容する収容室を有するハウジングと、
前記ハウジングに保持されるガイド部材と、を備え、
前記露出導体の後部は、前記ハウジングの後方に配置され、
前記ガイド部材は、前記ハウジングの後方に、前記露出導体の後部を収容し、且つ前記露出導体の前部を前記収容室にガイドするガイド孔を有している、コネクタ。
【請求項2】
前記端子金具は、前記露出導体が挿入される接続部材と、前記接続部材に対し、前記露出導体が前記接続部材に接触しない離間位置と前記接続部材に接触する接続位置との間をスライド可能に装着されるスライド部材と、を備える、請求項1に記載のコネクタ。
【請求項3】
前記ガイド部材は、前記スライド部材を前記離間位置から前記接続位置に押し込む押圧面を有している、請求項2に記載のコネクタ。
【請求項4】
前記電線は、絶縁性のシート部に複数並列に固定され、
前記露出導体は、前記シート部よりも前方に配置され、
前記ガイド部材は、前記シート部に対面する対向面を有している、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のコネクタ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、端子本体と称される接続部材と、接続部材に装着されるスライド部材と、を備えた端子金具を開示している。端子金具は、ハウジングに収容される。接続部材には、電線の前端部における被覆から露出する露出導体(芯線)が挿入される。スライド部材は、接続部材に対し、露出導体が接続部材の接触部(接触面)から離れた離間位置と接触部に接触する接続位置との間をスライド可能とされている。
【0003】
端子金具と電線との接続作業の一例を説明すると、まず端子金具がハウジングに収容され、ハウジングの後面に治具が当てられる。その状態で、電線の露出導体が治具に形成された誘い込み部によってガイドされつつスライド部材から接続部材へと挿入される。続いて、治具が離脱させられ、スライド部材が離間位置から接続位置へと押し込まれる。これにより、電線の露出導体が接続部材の接触部に接触可能な状態になる。
【0004】
特許文献2は、曲げ部を有する複数本の電線と、曲げ部を保持する電線カバーと、電線カバーに取り付けられる筒状部材と、を備えた構造を開示している。各電線は、電線カバーから筒状部材にかけて挿通される。
特許文献3は、電線カバーと、電線カバーに取り付けられるコルゲートチューブと、電線カバーからコルゲートチューブにかけて挿通される複数本の電線と、を備えた構造を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2019-145208号公報
【特許文献2】特開2023-14774号公報
【特許文献3】特開2023-10275号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記のように、誘い込み部が形成された治具を使用して、接続部材に露出導体を挿入する作業を行うと、治具の離脱後、ハウジングの後方に、露出導体の後部が露出したまま残ることになる。このため、露出導体の後部に異物等が干渉する懸念がある。これに対し、ハウジングに、特許文献2,3に開示された電線カバーを取り付けることで、露出導体の後部を電線カバーで保護することが可能となる。しかし、単に電線カバーがハウジングに取り付けられるだけでは、ハウジングの後方で隣接する露出導体の後部同士が接触する可能性を解消できず、ショートやリーク等の電気的な不具合の発生を抑制することが難しいといった問題がある。
【0007】
そこで、本開示は、電気的な信頼性を確保することが可能なコネクタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のコネクタは、被覆から前方に露出する露出導体を有している電線と、前記露出導体の前部に接続される端子金具と、前記端子金具を収容する収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに保持されるガイド部材と、を備え、前記露出導体の後部は、前記ハウジングの後方に配置され、前記ガイド部材は、前記ハウジングの後方に、前記露出導体の前部を前記収容室にガイドし、且つ前記露出導体の後部を収容するガイド孔を有している、コネクタである。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、電気的な信頼性を確保することが可能なコネクタを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施形態1のコネクタにおいて、配線部材を除く各部材の分解斜視図である。
図2図2は、実施形態1のコネクタの斜視図である。
図3図3は、実施形態1のコネクタを製造する過程の状態を示す斜視図である。
図4図4は、実施形態1のコネクタにおいて、スライド部材が接続部材に対して離間位置に配置され、電線の露出導体がガイド部材を介して端子金具に挿入された状態を、ハウジングおよびガイド部材を切断して示す部分断面図である。
図5図5は、実施形態1のコネクタにおいて、図4の状態からスライド部材がガイド部材の押圧面によって接続位置に押し込まれた状態を、ハウジングおよびガイド部材を切断して示す部分断面図である。
図6図6は、実施形態1のコネクタにおいて、孔開けピンが配線部材のシート部を貫通した部分を拡大して示す斜視図である。
図7図7は、実施形態1のコネクタにおける配線部材の平面図である。
図8図8は、実施形態1のコネクタにおける端子金具の断面図である。
図9図9は、実施形態1のコネクタにおけるガイド部材の正面図である。
図10図10は、実施形態1のコネクタにおけるガイド部材の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のコネクタは、
(1)被覆から前方に露出する露出導体を有している電線と、前記露出導体の前部に接続される端子金具と、前記端子金具を収容する収容室を有するハウジングと、前記ハウジングに保持されるガイド部材と、を備え、前記露出導体の後部は、前記ハウジングの後方に配置され、前記ガイド部材は、前記ハウジングの後方に、前記露出導体の後部を収容し、且つ前記露出導体の前部を前記収容室にガイドするガイド孔を有している。
【0012】
ハウジングの後方に配置された露出導体の後部は、ガイド部材のガイド孔に収容されるので、異物と接触することを回避できる。その結果、コネクタの電気的な信頼性を向上させることができる。また、ガイド部材のガイド孔が露出導体の前部を収容室にガイドする機能と露出導体の後部を保護する機能とを兼備するため、両機能が別々に設けられる場合と比較し、構成の簡素化を図ることができる。なお、ハウジングの後方は、ハウジングの後面よりも後方を意味する。
【0013】
(2)上記(1)に記載のコネクタにおいて、前記端子金具は、前記露出導体が挿入される接続部材と、前記接続部材に対し、前記露出導体が前記接続部材に接触しない離間位置と前記接続部材に接触する接続位置との間をスライド可能に装着されるスライド部材と、を備えることが好ましい。
【0014】
スライド部材が離間位置にあるときに、露出導体の前部がガイド孔からスライド部材を通して接続部材に挿入される。露出導体の前部を接続部材に挿入する作業を円滑に行うことができる。露出導体の前部が接続部材に挿入された後、スライド部材を接続位置にスライドさせることにより、露出導体の前部が接続部材と接触し、端子金具を電線に接続させることができる。
【0015】
(3)上記(2)に記載のコネクタにおいて、前記ガイド部材は、前記スライド部材を前記離間位置から前記接続位置に押し込む押圧面を有していることが好ましい。
【0016】
上記(3)の構成は、スライド部材を接続位置に押し込むための専用の治具を必要としないので、製造コストを抑えることができ、且つ組み立ての作業効率を高めることができる。また、ガイド部材がスライド部材を接続位置に押し込む機能をも兼備するため、構成のさらなる簡素化を図ることができる。
【0017】
(4)上記(1)から(3)のいずれかに記載のコネクタにおいて、前記電線は、絶縁性のシート部に複数並列に固定され、前記露出導体は、前記シート部よりも前方に配置され、前記ガイド部材は、前記シート部に対面する対向面を有していることが好ましい。
【0018】
ガイド部材がシート部に対面してシート部を保護する機能をも兼備するため、構成のいっそうの簡素化を図ることができる。また、上記(4)の構成は、シート部よりも前方に配置される、複数の露出導体の前部を、対応する接続部材に一括して挿入することができ、作業効率をより高めることができる。
【0019】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本発明はこの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0020】
<実施形態1>
実施形態1のコネクタ10は、配線部材20と、配線部材20に接続される端子金具40と、端子金具40を収容するハウジング60と、ハウジング60に保持される保持部材80およびガイド部材90と、を備えている。なお、以下の説明において、前後方向については、コネクタ10が図示しない相手コネクタと嵌合する側を前側とする。上下方向は、図1および図2の上下方向を基準とする。図1および図2において、矢印X、YおよびZは、それぞれ、前方、右方および上方を表している。これらの方向は、コネクタ10が図示しない車両等に搭載された状態における方向の基準に必ずしも一致しない。
【0021】
(配線部材)
図7に示すように、配線部材20は、シート部21と、シート部21に固定される複数本の電線22と、を有している。シート部21は、絶縁性の材料からなり、例えば、不織布によって構成されている。電線22としては、芯線等の導体23の外周を絶縁性の被覆24で覆った被覆電線を例示することができる。
【0022】
複数本の電線22は、シート部21の一面(本実施形態1の場合は下面)に対して左右方向に並んだ状態で固定されている。各電線22は、シート部21の一面に対し、例えば、溶着手段によって固定されている。溶着手段としては、超音波溶着、加熱加圧溶着、高周波溶着等の公知の溶着手段を採用することができる。配線部材20は、全体として可撓性を有し、高さ寸法が抑えられた、平面視矩形の扁平な形状をなしている。
【0023】
各電線22の前端部は、シート部21から前方に突出して配置される。また、各電線22の前端部は、被覆24の皮剥ぎによって導体23を露出させている(以下、各電線22の前端部で露出する導体を「露出導体23」と称する。)。
【0024】
本実施形態1の場合、図2に示すように、配線部材20は、コネクタ10の内部において、下段に配置される第1配線部材20Aと、上段に配置される第2配線部材20Bと、を有している。シート部21に固定される各電線22の本数は、第1配線部材20Aと第2配線部材20Bとで異なる。具体的には、第1配線部材20Aは、シート部21の左右中央部において電線22を固定しない部分を含み、その分、第2配線部材20Bよりも各電線22の本数が少なくなっている。もっとも、各電線22の本数は、第1配線部材20Aと第2配線部材20Bとで同じであっても良く、あるいは、上記とは逆に、第1配線部材20Aのほうが第2配線部材20Bよりも多くなっていても良い。
【0025】
(端子金具)
図8に示すように、端子金具40は、接続部材41と、接続部材41に対して離間位置と接続位置との間をスライド可能に装着されるスライド部材42と、を有して構成される。接続部材41およびスライド部材42は、互いに別体である。接続部材41およびスライド部材42は、いずれも導電性の金属板を曲げ加工等して形成される。
【0026】
接続部材41は、筒状、例えば、角筒状の接続本体43を有している。接続本体43は、前方から図示しない相手端子金具を受けて電気的に接続される。また、接続部材41は、接続本体43から後方に延びる図示しない接触部を有している。
【0027】
スライド部材42は、筒状、例えば、角筒状の箱部45を有している。接続部材41の接触部は、箱部45に挿入される。スライド部材42は、箱部45の内側に、図示しない押圧部を有している。スライド部材42が離間位置にあるときに、配線部材20の電線22の露出導体23が接続部材41に挿入される。露出導体23は、接続部材41に接触せず、接触部から離れて配置される。その状態で、スライド部材42が前方に押し込まれ、接続位置に至ることができる。スライド部材42が接続位置にあるときに、押圧部が接触部を押圧し、接触部が露出導体23に接触する。これにより、配線部材20の電線22は、端子金具40に電気的および機械的に接続される。
【0028】
(ハウジング)
図1に示すように、ハウジング60は、第1部材61、第2部材62および第3部材63によって構成される。第1部材61、第2部材62および第3部材63は、この順に下側から積層状態に配置される。第1部材61、第2部材62および第3部材63は、いずれも合成樹脂製である。
【0029】
第1部材61は、ロアハウジングとして構成される。第1部材61は、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第1部材61は、上面側に、左右方向に一列に並んで配置された複数の第1収容室64を有している。図4および図5に示すように、第1収容室64は、下段の端子金具40を収容する収容室であって、第1部材61において、前後方向に延び、後方に開放されている。第1部材61は、ハウジング60の前面部分を構成する前壁65を有している。前壁65は、各第1収容室64および後述する各第2収容室71の各々の前面開口と連通する、複数の端子挿通孔66を有している。図1に示すように、各端子挿通孔66は、上下二段で且つ左右方向に複数並んで開口している。図示しない相手端子金具は、ハウジング60の前方から端子挿通孔66を通して端子金具40に接続される。
【0030】
第1部材61は、各第1収容室64の前部の上面を閉塞する平板状の第1覆い部67を有している。端子金具40の接続部材41は、第1収容室64の前部に収容され、第1覆い部67によって上方への抜け出しが規制される。第1部材61は、各第1収容室64の後部の上面を開放する第1露出面68を有している。端子金具40のスライド部材42は、第1収容室64の後部に収容され、第1露出面68によって上方に露出して配置される。第1露出面68に露出したスライド部材42に形成された突起47(図8を参照)が前方へ押圧されることにより、スライド部材42が離間位置から接続位置へと移動可能となる。しかし、本実施形態1の場合、スライド部材42は、後述するように、突起47が押圧されず、ガイド部材90によって接続位置へと移動させられる。また、第1部材61は、左右両側の端部に、一対の第1ハウジングロック部69を有している。
【0031】
第2部材62は、インナハウジングとして構成される。図1および図3に示すように、第2部材62は、第1部材61よりも一回り小さい平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第2部材62の下面は、第1部材61の上面を覆い、第1露出面68を閉塞する。第2部材62は、上面側に、左右方向に一列に並んで配置された複数の第2収容室71を有している。各第2収容室71は、上段の各端子金具40を収容する収容室であって、第2部材62において、前後方向に延び、後方に開放されている。第2部材62は、各第2収容室71の前部の上面を閉塞する平板状の第2覆い部72を有し、各第2収容室71の後部の上面を開放する第2露出面73を有している。第2覆い部72および第2露出面73の各々の機能は、上記した第1覆い部67および第1露出面68と同様である。
【0032】
図1に示すように、第2部材62は、左右両側の端部に、一対の第2ハウジングロック部74(図1は1つのみ図示)を有している。各第2ハウジングロック部74が各第1ハウジングロック部69に内側から係止されることにより、第2部材62が第1部材61に保持される(図3を参照)。
【0033】
第3部材63は、アッパハウジングとして構成される。図1および図2に示すように、第3部材63は、第1部材61よりも一回り大きい平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。第3部材63の下面は、第2部材62の上面を覆い、第2露出面73を閉塞する。
【0034】
第3部材63は、上面の左右中央部に、弾性変形可能なロックアーム76を有している。ロックアーム76は、相手コネクタを係止し、コネクタ10と相手コネクタとを嵌合状態に保持する。第3部材63は、左右両側の端部に、一対の第3ハウジングロック部77を有している。各第3ハウジングロック部77が各第1ハウジングロック部69に外側から係止されることにより、第3部材63が第1部材61および第2部材62に対して積層状態に保持される(図2を参照)。第3部材63は、左右両側の端部で且つ各第3ハウジングロック部77の後方である後端部に、一対の係止部78を有している。各係止部78は、上下方向に延びる角柱状をなし、第1部材61、第2部材62および第3部材63が積層状態にあるときに、第1部材61および第2部材62の各々の後方に配置される。各係止部78が保持部材80およびガイド部材90に係止されることにより、第3部材63ひいてはハウジング60が保持部材80およびガイド部材90に保持(連結)される。
【0035】
(ガイド部材)
ガイド部材90は、ロアカバーとして構成される。ガイド部材90は、合成樹脂製であって、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。図3に示すように、ガイド部材90は、第1部材61の後方に第1部材61と並んで配置される。図1に示すように、ガイド部材90は、平板状の受け部91と、受け部91の前端部に連設されるガイド本体92と、を有している。
【0036】
ガイド本体92は、正面視で左右方向に長い矩形状をなし、上方に立設されてガイド部材90の前壁部分を構成する壁部92Aを有している。また、ガイド本体92は、各第1収容室64および各第2収容室71と対応する位置に、複数のガイド筒部92Bを有している。
【0037】
図1および図9に示すように、各ガイド筒部92Bは、四角筒状の外形形状をなし、壁部92Aから前方に、上下二段で且つ左右方向に複数並んで、突出している。各ガイド筒部92Bは、それぞれ対応する第1収容室64または第2収容室71に嵌合可能な大きさで構成される(図5を参照)。各ガイド筒部92Bの前面(突出方向の先端面)は、後述するように、スライド部材42の後端を押圧可能な押圧面92Cとして構成される。本実施形態1の場合、押圧面92Cは、上下方向および左右方向に沿って垂直に配置されている。
【0038】
ガイド本体92は、各ガイド筒部92Bと対応する位置に、壁部92Aからガイド筒部92Bにかけて前後方向に貫通する、複数のガイド孔92Dを有している。電線22の露出導体23は、ガイド孔92Dに後方から挿入され、前部を、端子金具40の内部に配置させる。
【0039】
ガイド孔92Dは、図4図5および図10に示すように、円形の断面形状(開口形状)をなし、壁部92Aの後面から前方に一定の径寸法で延びる挿入口部92Eと、挿入口部92Eの前端からガイド筒部92Bの前面に向けて、ガイド筒部92Bの内部を、次第に縮径して延びる誘い込み部92Fと、を有している。挿入口部92Eの径寸法は、電線22の被覆24の径寸法よりも大きい。誘い込み部92Fの前端における最小径寸法は、電線22の被覆24の径寸法と同じか、あるいは被覆24の径寸法よりも小さく、露出導体23の径寸法よりも少し大きい。
【0040】
また、ガイド部材90は、図1に示すように、受け部91の前端部で且つガイド本体92を挟んだ左右両側の端部に、一対の第1受容部93を有している。各第1受容部93は、断面矩形の凹状をなし、上方に開放されている。各係止部78の下部は、各第1受容部93に上方から位置決め状態で嵌合される。
【0041】
図1に示すように、ガイド部材90は、受け部91の上面におけるガイド本体92および各第1受容部93の各々の後方に、配線部材20のシート部21と対面する平坦な対向面94を有している。第1配線部材20Aのシート部21の下面は、対向面94に面接触状態に支持され得る。
【0042】
ガイド部材90は、受け部91の左右両側の端部で且つ各第1受容部93の後方に、一対のピン受け部95を有している。各ピン受け部95は、断面円形の孔であって、受け部91を上下方向(厚み方向)に貫通し、受け部91の対向面94および下面に開口している。各ピン受け部95における対向面94に開口する内周縁は、エッジ状をなし、後述する孔開けピン83との間でシート部21をすり切ることが可能とされている。また、ガイド部材90は、図9および図10に示すように、受け部91の左右両側の端部に、一対の第1カバーロック部97を連設させている。
【0043】
(保持部材)
保持部材80は、アッパカバーとして構成される。保持部材80は、合成樹脂製であって、平面視矩形状をなし、左右方向に長く形成されている。保持部材80は、第3部材63の後方に第3部材63と並んで配置される。保持部材80は、第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bを挟んで、ガイド部材90に対向して配置される。図1に示すように、保持部材80は、平板状の保持本体81を有している。保持部材80は、保持本体81の左右両側から前方に突出する一対の第2受容部82を有している。各第2受容部82は、矩形枠状をなしている。各係止部78の上部は、各第2受容部82に下方から位置決め状態で嵌合される(図2を参照)。
【0044】
保持本体81の下面は、平坦に形成されている。図6に示すように、保持部材80は、保持本体81の下面における各第2受容部82の後方に、一対の孔開けピン83(図6は1つのみ図示)を突設させている。各孔開けピン83は、円柱状をなしている。保持部材80は、保持本体81の左右両側の端部に、一対の第2カバーロック部85を連設させている。各第2カバーロック部85が各第1カバーロック部97に係止されることにより、保持部材80がガイド部材90に連結状態に保持される(図2を参照)。
【0045】
(コネクタの作用)
以下、コネクタ10の組み立て手順の一例を説明する。なお、コネクタ10の組み立ては、例えば、自動機を用いて自動的に行うことができる。
コネクタ10の組み立てに先立ち、各端子金具40のスライド部材42は、接続部材41に対して離間位置に保持される。その状態で、各端子金具40が第1部材61の各第1収容室64に収容される。下段の各端子金具40のスライド部材42が離間位置にある状態は、第1露出面68を介して視認することができる。次いで、第2部材62が第1露出面68を覆うように第1部材61に装着されて係止される。そして、各端子金具40が第2部材62の各第2収容室71に収容される。上段の各端子金具40のスライド部材42が離間位置にある状態は、第2露出面73を介して視認することができる。
【0046】
次いで、ハウジング60(第1部材61および第2部材62)の後方にガイド部材90が配置される。各ガイド筒部92Bの押圧面92Cは、各端子金具40のスライド部材42の後端に接触可能に対向して配置される(図4を参照)。
【0047】
上記の状態で、各電線22の露出導体23の前部が各ガイド孔92Dの挿入口部92Eから誘い込み部92Fを経て各端子金具40に挿入される。各露出導体23の前部は、各ガイド孔92Dの誘い込み部92Fによってガイドされながら各端子金具40に挿入される。図4に示すように、各露出導体23の前部は、各端子金具40の内部において、スライド部材42から接続部材41にわたって配置される。各露出導体23の後部は、各ガイド孔92Dにおいて、挿入口部92Eの誘い込み部92Fに配置される。これにより、各露出導体23の後部は、ハウジング60の後方において、ガイド本体92に全周を覆われた状態で収容される。
【0048】
なお、各電線22は、既述したように、配線部材20の一部を構成し、シート部21の一面に並んで固定されている。このため、各電線22は、シート部21を移動させることで、各端子金具40に一括して挿入可能となる。
【0049】
次いで、ガイド部材90が第1部材61および第2部材62に対して近づくように前進させられる。すると、各ガイド筒部92Bの押圧面92Cが各スライド部材42の後端を一斉に押圧し、図4から図5にかけて示すように、各スライド部材42が各接続部材41に対して接続位置に向けてスライド移動させられる。これにより、各スライド部材42は、各接続部材41に対して接続位置に至ることができる。そして、各スライド部材42が接続位置に至ると同時に、ガイド部材90の移動が停止させられる(図3を参照)。図5に示すように、各ガイド筒部92Bは、各第1収容室64および各第2収容室71に嵌合状態で挿入される。各露出導体23の前部は、各端子金具40の内部において、各接続部材41に接触して電気的および機械的に接続される(図8を参照)。図5に示すように、各露出導体23の後部は、各ガイド孔92Dにおいて、挿入口部92Eから誘い込み部92Fにわたって配置される。よって、各露出導体23の後部は、ハウジング60の後方において、ガイド本体92に収容された状態を維持する。各露出導体23の後部が各ガイド孔92Dに個別に挿入されているため、各露出導体23の後部同士が接触してショートすることを回避することもできる。
【0050】
次いで、第3部材63が第2部材62の上方から第1部材61に装着されて係止される。第2露出面73は第3部材63によって覆われる。これにより、ハウジング60の組み立てが完成する。第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bの各々のシート部21は、ハウジング60の後方で且つ第1部材61の対向面94に支持可能に配置される。
【0051】
次いで、保持部材80がガイド部材90の上方からガイド部材90に装着されて係止される(図2を参照)。ガイド部材90の装着過程において、各孔開けピン83が第1配線部材20Aおよび第2配線部材20Bの各々のシート部21をガイド部材90の対向面94に押圧する。各シート部21は、各孔開けピン83と各ピン受け部95の内周縁との間に挟み込まれる。そして、保持部材80の下降とともに、各シート部21が各ピン受け部95の内周縁によってすり切られ、孔開けされると同時に、各孔開けピン83が各シート部21を貫通する。これにより、各シート部21は各孔開けピン83に上下方向に並んで保持された状態となる。シート部21に形成された孔の直径は、当該孔を貫通する孔開けピン83の直径に等しくなる(図6を参照)。なお、図6は、便宜上、第2配線部材20Bを省略しており、孔開けピン83が第1配線部材20Aを貫通する状態のみを図示している。
【0052】
上記のとおり、電線22の露出導体23は、端子金具40に対して接続部材41の内部で押圧部に押圧されて保持される。端子金具40が露出導体23を保持する保持力は、露出導体23が一般端子におけるバレルによって圧着される場合に比べて弱い傾向にある。その点、本実施形態1の場合、例えば、シート部21に対してハウジング60から後方への引張力が作用しても、各孔開けピン83がシート部21を貫通して保持しているため、引張力に抗することができる。このため、シート部21が引張力に応じて後退することを回避でき、端子金具40に対するシート部21の位置を一定に維持することができる。その結果、配線部材20の各電線22が各端子金具40に接続される状態を維持することができる。
【0053】
以上説明したように、本実施形態1によれば、各露出導体23の後部がハウジング60の後方に配置され、ガイド部材90のガイド本体92がハウジング60の後方に各露出導体23の後部を収容し且つ各第1収容室64および各第2収容室71にガイドする各ガイド孔92Dを有している。このため、各露出導体23の後部は、ガイド本体92によって保護され、異物と接触することを回避できる。その結果、コネクタ10の電気的な信頼性を向上させることができる。また、各ガイド孔92Dが露出導体23の前部を第1収容室64および第2収容室71にガイドする機能と露出導体23の後部を保護する機能とを兼備するため、両機能が別々に設けられる場合と比較し、構成の簡素化を図ることができる。
【0054】
また、端子金具40が接続部材41と接続部材41に対して離間位置から接続位置へとスライド可能なスライド部材42とを有し、スライド部材42が離間位置にあるときに、各露出導体23の前部が各ガイド孔92Dからスライド部材42を通して接続部材41に挿入される。このため、各露出導体23の前部を接続部材41に挿入する作業を円滑に行うことができる。
【0055】
さらに、本実施形態1によれば、ガイド部材90の各押圧面92Cが各スライド部材42を離間位置から接続位置へと押し込むため、専用の治具を用いることなく、各スライド部材42を接続位置に至らすことができる。このため、コネクタ10を組み立てる際の作業効率を高めることができる。しかも、ガイド部材90が各スライド部材42を接続位置に押し込む機能をも兼備するため、構成のさらなる簡素化を図ることができる。さらに、ガイド部材90の対向面94が配線部材20のシート部21と対面してシート部21を保護する機能をも兼備するため、構成のいっそうの簡素化を図ることができる。
【0056】
[本開示の他の実施形態]
今回開示された上記実施形態1はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えるべきである。
上記実施形態1の場合、保持部材およびガイド部材は、いずれも、ハウジングの後方に、ハウジングと別体に保持(連結)されていた。これに対し、他の実施形態によれば、保持部材およびガイド部材の少なくとも一方は、ハウジングの後方に、ハウジングと一体に保持される構成であっても良い。
上記実施形態1の場合、配線部材は、第1配線部材および第2配線部材によって構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、配線部材は、第1配線部材および第2配線部材のいずれか一方のみで構成されるものであって良く、あるいは、第1配線部材および第2配線部材に加え、さらに別の配線部材を備えていても良い。また、配線部材は、シート部を有さず、全体が被覆電線で構成されていても良い。
上記実施形態1の場合、端子金具は、接続部材に対してスライド部材が接続位置にスライド装着されて電線に接続される構成であった。これに対し、他の実施形態によれば、端子金具は、バレルによって電線に圧着される一般端子であっても良い。
上記実施形態1の場合、ハウジングは、互いに別体の、第1部材、第2部材および第3部材によって構成されていた。これに対し、他の実施形態によれば、ハウジングは、第1部材、第2部材および第3部材のうち、例えば、第1部材および第2部材が一体となるように構成されていても良く、あるいは、第1部材、第2部材および第3部材がいずれも一体となるように構成されていても良い。
【符号の説明】
【0057】
10…コネクタ
20…配線部材
20A…第1配線部材
20B…第2配線部材
21…シート部
22…電線
23…露出導体(導体)
24…被覆
40…端子金具
41…接続部材
42…スライド部材
43…接続本体
45…箱部
47…突起
60…ハウジング
61…第1部材
62…第2部材
63…第3部材
64…第1収容室(収容室)
65…前壁
66…端子挿通孔
67…第1覆い部
68…第1露出面
69…第1ハウジングロック部
71…第2収容室(収容室)
72…第2覆い部
73…第2露出面
74…第2ハウジングロック部
76…ロックアーム
77…第3ハウジングロック部
78…係止部
80…保持部材
81…保持本体
82…第2受容部
83…孔開けピン
85…第2カバーロック部
90…ガイド部材
91…受け部
92…ガイド本体
92A…壁部
92B…ガイド筒部
92C…押圧面
92D…ガイド孔
92E…挿入口部
92F…誘い込み部
93…第1受容部
94…対向面
95…ピン受け部
97…第1カバーロック部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10