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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176641
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ロボットアーム
(51)【国際特許分類】
   B25J 17/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B25J17/02 D
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095364
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002369
【氏名又は名称】セイコーエプソン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100179475
【弁理士】
【氏名又は名称】仲井 智至
(74)【代理人】
【識別番号】100216253
【弁理士】
【氏名又は名称】松岡 宏紀
(74)【代理人】
【識別番号】100225901
【弁理士】
【氏名又は名称】今村 真之
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼原 大地
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707BS12
3C707BS15
3C707BS26
3C707BT05
3C707CX03
3C707CY29
3C707CY30
3C707CY37
3C707HS27
3C707HT02
3C707HT24
3C707HT26
3C707HT31
3C707KV01
(57)【要約】
【課題】ベアリングの破損や損傷を抑制することのできるロボットアームを提供する。
【解決手段】ロボットアームは、内部で連通する第1挿入孔および第2挿入孔を有する第1アームと、前記第1挿入孔に挿入されているベアリングケースと、前記ベアリングケースを貫通して前記第1挿入孔に挿入されている第1歯車と、前記ベアリングケース内に配置され、前記第1歯車が前記第1アームに対して第1回転軸まわりに回転するように支持し、前記第1回転軸に沿って離間して配置された第1ベアリングおよび第2ベアリングと、前記第2挿入孔に挿入され、前記第1アーム内で前記第1歯車と噛み合っている第2歯車と、を有する。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部で連通する第1挿入孔および第2挿入孔を有する第1アームと、
前記第1挿入孔に挿入されているベアリングケースと、
前記ベアリングケースを貫通して前記第1挿入孔に挿入されている第1歯車と、
前記ベアリングケース内に配置され、前記第1歯車が前記第1アームに対して第1回転軸まわりに回転するように支持し、前記第1回転軸に沿って離間して配置された第1ベアリングおよび第2ベアリングと、
前記第2挿入孔に挿入され、前記第1アーム内で前記第1歯車と噛み合っている第2歯車と、を有することを特徴とするロボットアーム。
【請求項2】
前記ベアリングケース、前記第1歯車、前記第1ベアリングおよび前記第2ベアリングがユニット化されている請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項3】
前記第1挿入孔は、載置面を有し、
前記載置面に前記ベアリングケースが載置されている請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項4】
前記ベアリングケースは、第1部分と、前記第1部分よりも前記第2歯車側に位置し、前記第1部分よりも幅が小さい第2部分と、前記第1部分と前記第2部分との境界部に位置する段差面である被載置面と、を有し、
前記被載置面が前記載置面に載置されている請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項5】
前記載置面と前記ベアリングケースとの間に介在し、前記載置面と前記ベアリングケースとの離間距離を調整する調整部材を有する請求項3に記載のロボットアーム。
【請求項6】
前記ベアリングケースに収容され、前記第1ベアリングおよび前記第2ベアリングを前記第1回転軸に沿う方向に予圧する予圧機構を有する請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項7】
前記予圧機構は、前記第1ベアリングを前記第1回転軸に沿う方向に予圧する予圧部材と、前記第1ベアリングと前記第2ベアリングとの間に配置され、前記第1ベアリングが前記予圧部材から受ける力を前記第2ベアリングに伝達する予圧伝達部材と、を有する請求項6に記載のロボットアーム。
【請求項8】
前記第1挿入孔は、前記第2歯車側に向けて幅が漸減し、前記ベアリングケースを誘導するガイド部を有する請求項1に記載のロボットアーム。
【請求項9】
前記第1アームに対して前記第1回転軸まわりに回動するように連結されている第2アームを有し、
前記第2アームは、前記第1回転軸に沿う方向からの平面視で、前記ベアリングケースと重なる位置に前記ベアリングケースよりも大きな貫通孔を有する請求項1に記載のロボットアーム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロボットアームに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ベースと、ベースに連結されたロボットアームと、を有する6軸構成の垂直多関節ロボットが開示されている。また、ロボットアームは、ベースに対して第1回動軸まわりに回動可能に連結されたショルダ部と、ショルダ部に対して第2回動軸まわりに回動可能に連結された下アームと、下アームに対して第3回動軸まわりに回動可能に連結された第1上アームと、第1上アームに対して第4回動軸まわりに回動可能に連結された第2上アームと、第2上アームに対して第5回動軸まわりに回動可能に連結された手首部と、手首部に対して第6回動軸まわりに回動可能に連結されたフランジと、を有する。
【0003】
また、手首部には、第5回動軸まわりに回転する入力傘歯車と、入力傘歯車と噛み合い第6回動軸まわりに回転する出力傘歯車と、が配置されている。また、入力傘歯車および出力傘歯車は、それぞれ、ベアリングを介して手首部に軸受けされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2022-070647号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、このような構成の垂直多関節ロボットでは、出力傘歯車との歯当たり調整を行うために入力傘歯車を第5回動軸に沿う方向に移動させると、ベアリングがずれたり、入力傘歯車や第2上アームに接触したりし、破損または損傷するおそれがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のロボットアームは、内部で連通する第1挿入孔および第2挿入孔を有する第1アームと、
前記第1挿入孔に挿入されているベアリングケースと、
前記ベアリングケースを貫通して前記第1挿入孔に挿入されている第1歯車と、
前記ベアリングケース内に配置され、前記第1歯車が前記第1アームに対して第1回転軸まわりに回転するように支持し、前記第1回転軸に沿って離間して配置された第1ベアリングおよび第2ベアリングと、
前記第2挿入孔に挿入され、前記第1アーム内で前記第1歯車と噛み合っている第2歯車と、を有する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す図である。
図2】アームの内部を示す断面図である。
図3】アームの内部を示す断面図である。
図4】アームから入力傘歯車ユニットを取り外した様子を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、ロボットアームの好適な実施形態を添付図面に基づいて説明する。
【0009】
図1は、好適な実施形態に係るロボットシステムの全体構成を示す図である。図2は、アームの内部を示す断面図である。図3は、アームの内部を示す断面図である。図4は、アームから入力傘歯車ユニットを取り外した様子を示す断面図である。
【0010】
図1に示すロボットシステム1は、ロボット2と、ロボット2の駆動を制御するロボットコントローラー10と、を有する。
【0011】
また、ロボット2は、6つの駆動軸を有する垂直多関節ロボットである。ロボット2は、床に固定された基台21と、基台21に接続されたロボットアーム22と、を有する。
【0012】
また、ロボットアーム22は、基台21に接続され、基台21に対して回動軸J1まわりに回動するアーム221と、アーム221に接続され、アーム221に対して回動軸J2まわりに回動するアーム222と、アーム222に接続され、アーム222に対して回動軸J3まわりに回動するアーム223と、アーム223に接続され、アーム223に対して回動軸J4まわりに回動する第2アームとしてのアーム224と、アーム224に接続され、アーム224に対して第1回転軸としての回動軸J5まわりに回動する第1アームとしてのアーム225と、アーム225に接続され、アーム225に対して回動軸J6まわりに回動するアーム226と、を有している。そして、アーム226の先端部にエンドエフェクター24が接続されている。
【0013】
また、ロボット2は、アーム221を基台21に対して回動軸J1まわりに回動させる駆動機構231と、アーム222をアーム221に対して回動軸J2まわりに回動させる駆動機構232と、アーム223をアーム222に対して回動軸J3まわりに回動させる駆動機構233と、アーム224をアーム223に対して回動軸J4まわりに回動させる駆動機構234と、アーム225をアーム224に対して回動軸J5まわりに回動させる駆動機構235と、アーム226をアーム225に対して回動軸J6まわりに回動させる駆動機構236と、を有する。
【0014】
ロボットコントローラー10は、駆動機構231~236を独立して制御し、ロボット2に所定の作業を行わせる。ロボットコントローラー10は、例えば、コンピューターから構成され、情報を処理するプロセッサーと、プロセッサーに通信可能に接続されたメモリーと、外部インターフェースと、を有する。また、メモリーにはプロセッサーにより実行可能な各種プログラムが保存され、プロセッサーは、メモリーに記憶された各種プログラム等を読み込んで実行することができる。
【0015】
以上、ロボットシステム1について簡単に説明した。ただし、ロボットシステム1の構成については、特に限定されない。例えば、ロボット2としては、6軸ロボットの他にも、水平多関節ロボット(スカラロボット)、アームを2つ有する双腕ロボット等であってもよい。また、ロボット2は、床に固定されていなくてもよく、例えば、AMR(Autonomous Mobile Robot)、AGV(Automatic Guided Vehicle)等の無人搬送車に固定されていてもよい。
【0016】
次に、アーム225をアーム224に対して回動軸J5まわりに回動させる駆動機構235と、アーム226をアーム225に対して回動軸J6まわりに回動させる駆動機構236と、について図2ないし図4に基づいて詳細に説明する。なお、以下では、説明の便宜上、図2ないし図4の上側を「上」、下側を「下」とも言う。
【0017】
図2に示すように、アーム224は、その先端部が二股に分かれており、その間においてアーム225を回動軸J5の両側から両持ち支持している。そして、上側の先端部224aに駆動機構236が配置され、下側の先端部224bに駆動機構235が配置されている。このように、アーム225を両持ち支持することにより、アーム225の回動精度が向上すると共に、駆動機構235、駆動機構236の配置スペースを別々に確保することができる。
【0018】
また、アーム224は、筐体31と、筐体31に取り付けられたカバー32と、を有する。そして、筐体31の基端部がアーム223に回動可能に接続され、筐体31の先端部がアーム225に回動可能に接続されている。また、上側の先端部224aには、筐体31に回動軸J5と同心的な貫通孔311が形成されている。貫通孔311は、回動軸J5に沿う方向からの平面視で、アーム225に取り付けられた後述する入力傘歯車ユニット5と重なる位置に形成され、かつ、入力傘歯車ユニット5よりも大きい。そのため、貫通孔311を介してアーム225から入力傘歯車ユニット5を取り外すことができる。
【0019】
また、アーム225には、回動軸J5に沿う円筒状の第1挿入孔251と、回動軸J6に沿う円筒状の第2挿入孔252と、が形成されている。また、第1挿入孔251は、先端部224a側に開口し、中心軸が回動軸J5と一致している。また、第2挿入孔252は、アーム226側に開口し、中心軸が回動軸J6と一致している。また、第1挿入孔251と第2挿入孔252とは、その先端部同士がアーム225内において直交して繋がっている。そして、第1挿入孔251には入力傘歯車ユニット5が挿入されており、第2挿入孔252には出力傘歯車66が挿入されている。ただし、第1、第2挿入孔251、252は、円筒状に限定されず、例えば、その平面視が、四角形、六角形等の多角形、楕円形、異形等であってもよい。
【0020】
また、第1挿入孔251は、その内径が下側に向けて3段階に縮径しており、基端部251aと、基端部251aの下側に位置し、基端部251aよりも小径な中央部251bと、中央部251bの下側に位置し、中央部251bよりも小径な先端部251cと、を有する。また、基端部251aと中央部251bとの境界には、回動軸J5と直交する段差面で構成され、上側を向く載置面251dが形成されている。また、中央部251bと先端部251cとの境界部には、内径が下側つまり出力傘歯車66側に向けて漸減するテーパー状のガイド部251eが形成されている。なお、前記「径」は、第1、第2挿入孔251、252の平面視形状が円形以外の場合、「幅」と言い換えることができる。
【0021】
また、駆動機構235は、筐体31に固定されたエンコーダー内蔵型のモーター41と、モーター41の回転を減速する減速機42と、モーター41の出力軸に取り付けられたプーリー43と、減速機42に取り付けられたプーリー44と、プーリー43、44に回し掛けられている動力伝達ベルト45と、を有する。減速機42は、波動歯車装置であり、サーキュラスプライン422が筐体31に固定され、フレクスプライン423がアーム225に固定されている。また、ウェーブジェネレーター421にプーリー44が固定されている。
【0022】
このような構成によれば、モーター41の回転がプーリー43、動力伝達ベルト45およびプーリー44を介して減速機42のウェーブジェネレーター421に伝わり、ウェーブジェネレーター421が回転する。さらに、ウェーブジェネレーター421の回転に対して所定の減速比でフレクスプライン423が回転し、その結果、アーム225がアーム224に対して回動軸J5まわりに回動する。
【0023】
以上、駆動機構235について説明したが、駆動機構235の構成は、特に限定されない。
【0024】
駆動機構236は、第1挿入孔251に挿入され、載置面251dに載置された入力傘歯車ユニット5を有する。図3に示すように、入力傘歯車ユニット5は、載置面251dに載置されたベアリングケース51と、ベアリングケース51に予圧された状態で収容されたベアリング52と、ベアリングケース51を貫通し、ベアリング52を介してベアリングケース51に軸受けされた第1歯車である入力傘歯車53と、を有する。
【0025】
ベアリングケース51は、第1挿入孔251の形状に合う円筒状である。また、ベアリングケース51は、基体511と、基体511の上側に位置し、基体511に固定された蓋体512と、を有する。そして、ベアリングケース51の内部にベアリング52および入力傘歯車53を収容するための収容空間が形成されている。ただし、ベアリングケース51の形状は、円筒状に限定されず、第1挿入孔251の形状に合わせて決定することができる。
【0026】
また、基体511は、その外径が下側に向けて3段階に縮径しており、第1部分である基端部511aと、基端部511aの下側に位置し、基端部511aよりも小径な第2部分である中央部511bと、中央部511bの下側に位置し、中央部511bよりも小径な先端部511cと、を有する。また、基端部511aと中央部511bとの境界部には、回動軸J5と直交する段差面で構成され、下側を向く被載置面511dが形成されている。また、先端部511cには、収容空間内に突出するフランジ511eが形成されている。一方、蓋体512は、基体511の上側に位置し、図示しないネジによって基端部511aに締結、固定されている。これら基体511および蓋体512は、例えば、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属材料で構成されている。
【0027】
以上のようなベアリングケース51は、基体511側から第1挿入孔251に挿入され、被載置面511dが載置面251dに載置される。これにより、アーム225へのベアリングケース51の取り付けが容易となる。また、この際、被載置面511dが載置面251dに載置されるよりも早く、ベアリングケース51の先端部511cが第1挿入孔251のガイド部251eによって先端部251cに案内されるため、第1挿入孔251へのベアリングケース51の挿入が容易となる。ベアリングケース51は、載置面251dに載置された状態で、複数のネジNによってアーム225に締結、固定されている。ベアリングケース51がアーム225に固定された状態では、入力傘歯車53は、回動軸J5まわりに回転する。なお、ベアリングケース51をアーム225に固定する固定部材としては、特に限定されない。
【0028】
ベアリング52は、収容空間に配置されている。つまり、ベアリング52は、ベアリングケース51に収容されている。また、ベアリング52は、第1ベアリング521と、第2ベアリング522と、を有する。また、これら第1、第2ベアリング521、522は、回動軸J5に沿って離間して配置されている。第1、第2ベアリング521、522を離間して配置することで、入力傘歯車53が離間した2点で支持されるため、入力傘歯車53の回転が安定する。
【0029】
また、第1ベアリング521は、アンギュラ玉軸受けであり、基体511の内周面に支持された第1外輪521aと、入力傘歯車53が挿入された第1内輪521bと、第1外輪521aと第1内輪521bとの間に配置された第1回転体としてのボール521cと、を有する。同様に、第2ベアリング522は、アンギュラ玉軸受けであり、基体511の内周面に支持された第2外輪522aと、入力傘歯車53が挿入された第2内輪522bと、第2外輪522aと第2内輪522bとの間に配置された第2回転体としてのボール522cと、を有する。
【0030】
入力傘歯車53は、ベアリングケース51を貫通し、第1、第2ベアリング521、522を介してベアリングケース51に軸受けされたシャフト531と、シャフト531の先端部に配置され、ベアリングケース51の下側に位置する歯車部532と、を有する。また、歯車部532は、第1挿入孔251の先端部に位置し、第2挿入孔252に臨んでいる。
【0031】
入力傘歯車ユニット5は、さらに、第1、第2ベアリング521、522を予圧する予圧機構59を有する。予圧機構59は、第1ベアリング521と蓋体512との間に配置された予圧部材54と、第1ベアリング521と第2ベアリング522との間に配置された予圧伝達部材55と、を有する。予圧部材54は、環状(リング状)のスペーサーシムであり、蓋体512と第1ベアリング521の第1外輪521aとの間に挟み込まれている。一方、予圧伝達部材55は、入力傘歯車53が挿通された筒状のスペーサーであり、第1ベアリング521の第1内輪521bと第2ベアリング522の第2内輪522bとの間に配置されている。また、第2ベアリング522の第2外輪522aは、フランジ511eに当接し、それ以上の変位が規制されている。
【0032】
予圧部材54は、蓋体512によって第1外輪521aに押し当てられ、第1外輪521aを下方に押圧する。また、第1外輪521aが予圧部材54から受けた力は、第1内輪521bから予圧伝達部材55を介して第2内輪522bに伝わり、第2内輪522bを下方に押圧する。これにより、第1、第2ベアリング521、522が均等に予圧される。予圧部材54の厚さが厚いほど、第1外輪521aを押圧する力が大きくなり、その分、第1、第2ベアリング521、522の予圧が大きくなる。そのため、予圧部材54の厚さを調整することで、第1、第2ベアリング521、522を所望の力で予圧することができる。これにより、第1、第2ベアリング521、522の回転精度や剛性が向上する。
【0033】
なお、予圧部材54の厚さを調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、厚さの異なる複数の予圧部材54を準備し、その中から1つを選択して用いることで、予圧部材54の厚さを調整してもよい。また、厚さが同じ複数の予圧部材54を準備し、使用する枚数を選択することで、予圧部材54の厚さを調整してもよい。これらの方法によれば、簡単に、予圧部材54の厚さを調整することができる。なお、予圧部材54は、スペーサーシムに限定されず、例えば、ウェーブワッシャーであってもよい。この場合、ネジNを締め込んでウェーブワッシャーを押し潰すように弾性変形させることで、予圧部材54の厚さを調整することができる。
【0034】
以上、入力傘歯車ユニット5について説明した。このように、本実施形態では、ベアリングケース51、ベアリング52、入力傘歯車53および予圧機構59が入力傘歯車ユニット5としてユニット化されている。そのため、これらを一括してアーム225に取り付けたり、アーム225から取り外したりすることができ、ロボット2の組み立てや調整が容易となる。また、アーム225に取り付ける前に第1、第2ベアリング521、522の予圧を調整することができ、当該作業が容易となる。
【0035】
なお、入力傘歯車ユニット5の構成は、特に限定されない。例えば、ベアリングケース51が基体511と蓋体512とで構成されているが、これに限定されず、3つ以上の部材が連結した構成であってもよい。また、基体511と蓋体512とがネジ止めされているが、これらを固定する方法は、特に限定されない。また、ベアリングの数は、2つに限定されず、3つ以上であってもよい。また、第1ベアリング521および第2ベアリング522は、アンギュラ玉軸受けでなくてもよく、例えば、アンギュラコロ軸受けであってもよい。また、図示では、第1ベアリング521が第2ベアリング522よりも大きいが、これに限定されず、第1ベアリング521が第2ベアリング522よりも小さくてもよいし、同じであってもよい。
【0036】
図2に示すように、駆動機構236は、さらに、エンコーダー内蔵型のモーター61と、モーター61の出力軸に取り付けられたプーリー63と、入力傘歯車53に取り付けられたプーリー64と、プーリー63とプーリー64とに回し掛けられている動力伝達ベルト65と、を有する。また、駆動機構236は、さらに、アーム226に接続された第2歯車である出力傘歯車66を有する。出力傘歯車66は、第2挿入孔252に挿入されており、ベアリングを介してアーム225に軸受けされたシャフト661と、シャフト661の先端部に配置され、アーム225内において歯車部532と噛み合う歯車部662と、を有する。このような出力傘歯車66の回転軸は、回動軸J6と一致している。
【0037】
このような構成の駆動機構236では、モーター61の回転がプーリー63、動力伝達ベルト65およびプーリー64を介して入力傘歯車53に伝わり、入力傘歯車53が回転する。さらに、入力傘歯車53の回転が出力傘歯車66に伝わり、出力傘歯車66に接続されているアーム226が回動軸J6まわりに回動する。
【0038】
図3に示すように、駆動機構236は、さらに、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整するための調整部材7を有する。調整部材7は、環状(リング状)のスペーサーシムであり、載置面251dと被載置面511dとの間に挟み込まれている。調整部材7は、載置面251dと被載置面511dとの回動軸J5に沿う離間距離を調整する部材である。調整部材7の厚さが厚いほど、入力傘歯車ユニット5がアーム225に対して上側に変位し、その分、入力傘歯車53と出力傘歯車66との噛み合わせが浅くなる。そのため、調整部材7の厚さを調整することで、入力傘歯車53の位置を定め、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整することができる。これにより、回転運動の伝達精度の向上、騒音の低減、長寿命化等を図ることができる。
【0039】
なお、調整部材7の厚さを調整する方法としては、特に限定されないが、例えば、厚さの異なる複数の調整部材7を準備し、その中から1つを選択して用いることで、調整部材7の厚さを調整してもよい。また、厚さが同じ複数の調整部材7を準備し、使用する枚数を選択することで、調整部材7の厚さを調整してもよい。これらの方法によれば、簡単に、調整部材7の厚さを調整することができる。なお、調整部材7は、スペーサーシムに限定されず、例えば、ウェーブワッシャーであってもよい。この場合、ネジNを締め込んでウェーブワッシャーを押し潰すように弾性変形させることで、調整部材7の厚さを調整することができる。
【0040】
以上のような駆動機構236によれば、予圧部材54の厚さを変更することで、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシの変動を生じさせることなく、第1、第2ベアリング521、522の予圧だけを調整することができる。また、調整部材7の厚さを調整することで、第1、第2ベアリング521、522の予圧の変動を生じさせることなく、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシだけを調整することができる。つまり、第1、第2ベアリング521、522の予圧の調整と、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシの調整と、をそれぞれ独立して行うことができる。
【0041】
特に、本実施形態では、ベアリングケース51、ベアリング52、入力傘歯車53および予圧機構59が入力傘歯車ユニット5としてユニット化されている。そのため、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整する際、図4に示すように、入力傘歯車ユニット5をアーム225から取り外すだけで、調整部材7の交換を行うことができる。さらに、入力傘歯車ユニット5をアーム225から取り外しても、それに影響を受けることなく、第1、第2ベアリング521、522の予圧が一定に保たれる。したがって、予圧の変動を招くことなく、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシの調整を行うことができる。
【0042】
また、前述したように、筐体31に形成された貫通孔311を介して入力傘歯車ユニット5をアーム225から取り外すことができる。そのため、アーム224とアーム225とを連結させたまま調整部材7を交換することができる。したがって、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシの調整を容易に行うことができる。
【0043】
また、第1、第2ベアリング521、522が共にベアリングケース51内に配置されている。そのため、第1、第2ベアリング521、522がベアリングケース51で保護される。したがって、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整する際、調整部材7の交換のためにアーム225に対して入力傘歯車ユニット5の着脱を繰り返しても、第1、第2ベアリング521、522がアーム224、アーム225等に直接ぶつかることがなく、第1、第2ベアリング521、522の損傷や破壊を効果的に抑制することができる。
【0044】
以上、ロボットシステム1について説明した。このようなロボットシステム1が有するロボットアーム22は、前述したように、内部で連通する第1挿入孔251および第2挿入孔252を有する第1アームであるアーム225と、第1挿入孔251に挿入されているベアリングケース51と、ベアリングケース51を貫通して第1挿入孔251に挿入されている第1歯車である入力傘歯車53と、ベアリングケース51内に配置され、入力傘歯車53がアーム225に対して第1回転軸である回動軸J5まわりに回転するように支持し、回動軸J5に沿って離間して配置された第1ベアリング521および第2ベアリング522と、第2挿入孔252に挿入され、アーム225内で入力傘歯車53と噛み合っている第2歯車である出力傘歯車66と、を有する。このような構成によれば、第1、第2ベアリング521、522をベアリングケース51で保護することができる。そのため、例えば、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整するために入力傘歯車53を回動軸J5に沿って変位させても、その際、第1、第2ベアリング521、522がアーム224、アーム225等に直接ぶつかることがなく、第1、第2ベアリング521、522の損傷や破壊を効果的に抑制することができる。
【0045】
また、前述したように、ベアリングケース51、入力傘歯車53、第1ベアリング521および第2ベアリング522が入力傘歯車ユニット5としてユニット化されている。これにより、これらのアーム225への取り付け、アーム225からの取り外しが容易となる。また、アーム225に取り付ける前に第1、第2ベアリング521、522の予圧を調整することができ、当該作業が容易となる。
【0046】
また、前述したように、第1挿入孔251は、載置面251dを有し、載置面251dにベアリングケース51が載置されている。これにより、アーム225へのベアリングケース51の取り付けが容易となる。
【0047】
また、前述したように、ベアリングケース51は、第1部分である基端部511aと、基端部511aよりも下側つまり出力傘歯車66側に位置し、基端部511aよりも幅が小さい第2部分である中央部511bと、基端部511aと中央部511bとの境界部に位置する段差面である被載置面511dと、を有し、被載置面511dが載置面251dに載置されている。これにより、アーム225へのベアリングケース51の取り付けが容易となる。
【0048】
また、前述したように、ロボットアーム22は、載置面251dとベアリングケース51との間に介在し、載置面251dとベアリングケース51との離間距離を調整する調整部材7を有する。これにより、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシを調整することができる。
【0049】
また、前述したように、ロボットアーム22は、ベアリングケース51に収容され、第1ベアリング521および第2ベアリング522を回動軸J5に沿う方向に予圧する予圧機構59を有する。予圧機構59によって第1、第2ベアリング521、522を適正に予圧することで、第1、第2ベアリング521、522の回転精度や剛性が向上する。
【0050】
また、前述したように、予圧機構59は、第1ベアリング521を回動軸J5に沿う方向に予圧する予圧部材54と、第1ベアリング521と第2ベアリング522との間に配置され、第1ベアリング521が予圧部材54から受ける力を第2ベアリング522に伝達する予圧伝達部材55と、を有する。これにより、第1、第2ベアリング521、522を均等に予圧することができる。
【0051】
また、前述したように、第1挿入孔251は、出力傘歯車66側に向けて幅がテーパー状に漸減し、ベアリングケース51を誘導するガイド部251eを有する。これにより、第1挿入孔251へのベアリングケース51の挿入が容易となる。
【0052】
また、前述したように、ロボットアーム22は、アーム225が回動軸J5まわりに回動するように連結されている第2アームであるアーム224を有する。そして、アーム224は、回動軸J5に沿う方向からの平面視で、ベアリングケース51と重なる位置にベアリングケース51よりも大きな貫通孔311を有する。そのため、アーム224とアーム225とを連結させたまま、貫通孔311を介してベアリングケース51をアーム225から取り外すことができる。したがって、入力傘歯車53と出力傘歯車66との歯当たりやバックラッシの調整を容易に行うことができる。
【0053】
以上、本発明のロボットアームを図示の実施形態に基づいて説明したが、本発明は、これに限定されるものではなく、各部の構成は、同様の機能を有する任意の構成のものに置換することができる。また、本発明に、他の任意の構成物が付加されていてもよい。
【0054】
また、前述した実施形態では、第1歯車が入力傘歯車53で、第2歯車が出力傘歯車66であったが、これに限定されず、第1歯車が出力傘歯車66で、第2歯車が入力傘歯車53であってもよい。つまり、出力傘歯車66が、ベアリングケース、ベアリングおよび予圧機構と共に出力傘歯車ユニットとしてユニット化されていてもよい。
【符号の説明】
【0055】
1…ロボットシステム、10…ロボットコントローラー、2…ロボット、21…基台、22…ロボットアーム、221…アーム、222…アーム、223…アーム、224…アーム、224a…先端部、224b…先端部、225…アーム、226…アーム、231…駆動機構、232…駆動機構、233…駆動機構、234…駆動機構、235…駆動機構、236…駆動機構、24…エンドエフェクター、251…第1挿入孔、251a…基端部、251b…中央部、251c…先端部、251d…載置面、251e…ガイド部、252…第2挿入孔、31…筐体、311…貫通孔、32…カバー、41…モーター、42…減速機、421…ウェーブジェネレーター、422…サーキュラスプライン、423…フレクスプライン、43…プーリー、44…プーリー、45…動力伝達ベルト、5…入力傘歯車ユニット、51…ベアリングケース、511…基体、511a…基端部、511b…中央部、511c…先端部、511d…被載置面、511e…フランジ、512…蓋体、52…ベアリング、521…第1ベアリング、521a…第1外輪、521b…第1内輪、521c…ボール、522…第2ベアリング、522a…第2外輪、522b…第2内輪、522c…ボール、53…入力傘歯車、531…シャフト、532…歯車部、54…予圧部材、55…予圧伝達部材、59…予圧機構、61…モーター、63…プーリー、64…プーリー、65…動力伝達ベルト、66…出力傘歯車、661…シャフト、662…歯車部、7…調整部材、J1…回動軸、J2…回動軸、J3…回動軸、J4…回動軸、J5…回動軸、J6…回動軸、N…ネジ
図1
図2
図3
図4