(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176644
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両
(51)【国際特許分類】
F02D 45/00 20060101AFI20241212BHJP
F02B 29/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F02D45/00 368Z
F02B29/04 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095367
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】北岡 樹
(72)【発明者】
【氏名】中村 嘉寿
【テーマコード(参考)】
3G384
【Fターム(参考)】
3G384BA41
3G384DA42
3G384FA11B
3G384FA85B
3G384FA86B
(57)【要約】
【課題】エンジン周辺構造を簡素化し得る技術を提供する。
【解決手段】前記車両は、前記車両を駆動するエンジンと、前記エンジン内に圧縮空気を供給する過給機と、前記エンジンと前記過給機との間に配置されるとともに、前記圧縮空気を冷却するインタクーラと、前記インタクーラを通過した前記圧縮空気の温度を検出する温度センサと、前記インタクーラの冷却性能を監視する監視装置とを備える。前記監視装置は、前記車両の車速、外気温、大気圧、及び、前記過給機による過給圧のデータを用いて、前記インタクーラの正常時の放熱量を推定し、前記外気温、前記大気圧、前記過給圧、前記温度センサによる検出温度、エンジン回転数、及び、エンジン負荷のデータを用いて、前記インタクーラの実際の放熱量を算出し、前記実際の放熱量が前記正常時の放熱量を下回るときに、前記インタクーラの冷却性能に異常が生じていると判断する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両であって、
前記車両を駆動するエンジンと、
前記エンジン内に圧縮空気を供給する過給機と、
前記エンジンと前記過給機との間に配置されるとともに、前記圧縮空気を冷却するインタクーラと、
前記インタクーラを通過した前記圧縮空気の温度を検出する温度センサと、
前記インタクーラの冷却性能を監視する監視装置と、
を備え、
前記監視装置は、
前記車両の車速、外気温、大気圧、及び、前記過給機による過給圧のデータを用いて、前記インタクーラの正常時の放熱量を推定し、
前記外気温、前記大気圧、前記過給圧、前記温度センサによる検出温度、エンジン回転数、及び、エンジン負荷のデータを用いて、前記インタクーラの実際の放熱量を算出し、
前記実際の放熱量が前記正常時の放熱量を下回るときに、前記インタクーラの冷却性能に異常が生じていると判断する、
車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書が開示する技術は、車両に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、エンジンを有する車両のエンジン周辺構造が記載されている。当該車両は、エンジンに加え、過給機と、インタクーラと、を備える。インタクーラは、過給機によって圧縮された空気を冷却する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した車両では、インタクーラの冷却性能が正常に機能しない場合、過給機の圧縮により高温となった空気が、そのままエンジン内に流入するおそれがある。この場合、異常燃焼の発生を回避するため、点火タイミングを遅延させる制御が作動することで、エンジンのエミッションが悪化し得る。そのため、インタクーラを備える車両では、インタクーラの冷却性能を常時監視し、その異常を検出する必要がある。しかしながら、インタクーラの入口温度及び出口温度の両方を検出する温度センサを設ける場合、エンジン周辺構造が比較的大型化や複雑化し得る。本明細書は、このような問題を回避又は抑制し得る技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書が開示する技術は、車両に具現化される。前記車両は、前記車両を駆動するエンジンと、前記エンジン内に圧縮空気を供給する過給機と、前記エンジンと前記過給機との間に配置されるとともに、前記圧縮空気を冷却するインタクーラと、前記インタクーラを通過した前記圧縮空気の温度を検出する温度センサと、前記インタクーラの冷却性能を監視する監視装置とを備える。前記監視装置は、前記車両の車速、外気温、大気圧、及び、前記過給機による過給圧のデータを用いて、前記インタクーラの正常時の放熱量を推定し、前記外気温、前記大気圧、前記過給圧、前記温度センサによる検出温度、エンジン回転数、及び、エンジン負荷のデータを用いて、前記インタクーラの実際の放熱量を算出し、前記実際の放熱量が前記正常時の放熱量を下回るときに、前記インタクーラの冷却性能に異常が生じていると判断する。
【0006】
上記した構成では、車速、外気温、大気圧、及び、過給圧のデータからインタクーラの正常時の放熱量が推定されるとともに、外気温、大気圧、過給圧、インタクーラの出口温度、エンジン回転数、及びエンジン負荷のデータからインタクーラの実際の放熱量が算出される。そして、これらの放熱量を比較することで、インタクーラの冷却性能について異常の有無が判断される。従って、インタクーラの出口温度に加えて、入口温度を検出する温度センサをさらに設ける必要がない。結果として、車両のエンジン周辺構造は、比較的に簡素化される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図2】監視装置が実行する異常判定処理の一連の手順を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照して、実施例の車両10について説明する。
図1に示すように、車両10は、エンジン12と、過給機14と、ブーストセンサ16と、インタクーラ18と、温度センサ20と、監視装置22と、を備える。
【0009】
エンジン12は、車両10を駆動する内燃機関である。エンジン12は、ガソリンエンジンである。
【0010】
過給機14は、エンジン内に圧縮空気を供給する。過給機14は、いわゆるターボチャージャであり、タービンとコンプレッサとを有する。過給機14は、吸気した排気ガスの流れをタービンにより回転運動に変換し、コンプレッサを回転させて圧縮空気を生成する。他の実施形態では、過給機14が、いわゆるスーパーチャージャであって、クランクシャフトの回転を動力とするものであってもよい。
【0011】
ブーストセンサ16は、過給機14に接続されており、過給機14が圧縮した空気の圧力(即ち過給圧)を計測する。ブーストセンサ16は、監視装置22と通信可能に接続されている。
【0012】
インタクーラ18は、エンジン12と過給機14との間に配置される。インタクーラ18は、過給機14の圧縮により高温になった圧縮空気を冷却する。
【0013】
温度センサ20は、エンジン12とインタクーラ18との間に配置される。温度センサ20は、インタクーラ18を通過した圧縮空気の温度(即ち、インタクーラ18の出口温度)を検出する。温度センサ20は、監視装置22と通信可能に接続されている。
【0014】
監視装置22は、インタクーラ18の冷却性能を監視する。監視装置22は、例えばプロセッサとメモリとを有する。監視装置22は、所定の時間毎に各種センサ等から様々なデータを取得する。そして、監視装置22は、それらのデータに基づいて、メモリに予め記憶されたプログラムに従って、インタクーラ18の冷却性能が正常/異常状態であるかを判断する異常判定処理を繰り返し実行する。監視装置22が取得する様々なデータには、車速、外気温、大気圧、ブーストセンサ16による過給圧(ブースタ圧とも称する)、温度センサ20による検出温度、エンジン回転数及びエンジン負荷等が含まれる。
【0015】
次いで、
図2を参照して、監視装置22が実行するインタクーラ18の異常判定処理の一例について説明する。
【0016】
ステップS12において、監視装置22は、エンジン回転数、ユーザによる要求エンジン負荷から要求吸気量(即ち、エンジン12に供給する空気量)を算出する。
【0017】
ステップS14において、監視装置22は、外気温センサ、大気圧センサ、及びブーストセンサ16の各検出データから、インタクーラ18に供給される圧縮空気の温度(即ちインタクーラ18の入口温度)を算出する。
【0018】
ステップS16において、監視装置22は、S12で算出した要求吸気量と、ステップS14で計算したインタクーラ18の入口温度と、温度センサ20によるインタクーラ18の出口温度とから、インタクーラ18の実際の放熱量Qrealを算出する。具体的には、実際の放熱量Qrealは、Qreal=m*C*ΔTにより算出される。ここで、mは、要求吸気量であり、Cは、比熱(一定値)であり、ΔTは、インタクーラ18の入口温度とインタクーラ18の出口温度との差分温度である。
【0019】
ステップS18において、監視装置22は、車速データから熱伝導率を算出する。一例ではあるが、監視装置22には、様々な車速に対してインタクーラ18の熱伝導率の標準値を記述するマップが記憶されており、監視装置22は、そのマップを用いて、現在の車速データからインタクーラ18が正常時のときの熱伝導率を導出する。
【0020】
ステップS20において、監視装置22は、外気温センサによる検出データと、ステップS14で計算したインタクーラ入口温度とから、対数平均温度差ΔTlmを算出する。
【0021】
ステップS22において、監視装置22は、ステップS18で算出した熱伝導率と、ステップS20で算出した対数平均温度差ΔTlmとから、インタクーラ18の正常時の放熱量Qestを算出する。具体的には、正常時の放熱量Qestは、Qest=U*A*ΔTlmにより算出される。ここで、Uは、総括熱伝達係数であって、即ちステップS18による熱伝導率である、Aは、伝達面積(一定値)である。
【0022】
ステップ24において、監視装置22は、ステップS18で算出した実際の放熱量Qrealが、ステップS22で算出した正常時の放熱量Qest以上であるのか否かを判断する。監視装置22は、実際の放熱量Qrealが正常時の放熱量Qest以上であるときに(ステップS24でYES)、ステップS26の処理に進み、インタクーラ18の冷却性能が正常であると判定する。実際の放熱量Qrealが正常時の放熱量Qestを下回るときに(ステップS24でNO)、ステップS28の処理に進み、インタクーラ18の冷却性能が異常であると判定する。
【0023】
以上により、監視装置22による一連の処理が終了する。このように、監視装置22は、車両10の車速、外気温、大気圧、及び、過給機14による過給圧のデータを用いて、インタクーラ18の正常時の放熱量Qestを推定する。また、監視装置22は、外気温、大気圧、過給圧、温度センサ20による検出温度(即ち、インタクーラ18の出口温度)、エンジン回転数、及び、エンジン負荷のデータを用いて、インタクーラ18の実際の放熱量Qrealを算出する。そして、監視装置22は、実際の放熱量Qrealが正常時の放熱量Qestを下回るときに、インタクーラ18の冷却性能に異常が生じていると判断する。このような構成によると、インタクーラ18の出口温度に加えて、入口温度を検出する温度センサをさらに設ける必要がない。結果として、車両10のエンジン12の周辺構造は、比較的に簡素化される。
【符号の説明】
【0024】
10:車両、12:エンジン、14:過給機、16:ブーストセンサ、18:インタクーラ、20:温度センサ、22:監視装置