(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176649
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】空中移動システム
(51)【国際特許分類】
B64U 20/80 20230101AFI20241212BHJP
B64U 50/19 20230101ALI20241212BHJP
B64U 50/33 20230101ALI20241212BHJP
B64U 70/80 20230101ALI20241212BHJP
B64U 70/95 20230101ALI20241212BHJP
B64U 80/25 20230101ALI20241212BHJP
【FI】
B64U20/80
B64U50/19
B64U50/33
B64U70/80
B64U70/95
B64U80/25
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095373
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】523220488
【氏名又は名称】日置 雄一
(74)【代理人】
【識別番号】100084375
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 康夫
(74)【代理人】
【識別番号】100142077
【弁理士】
【氏名又は名称】板谷 真之
(72)【発明者】
【氏名】日置 雄一
(57)【要約】
【課題】太陽光を遮るために太陽と対象物の間に入るための適格な制御を行い、安定して日陰を提供することが可能な空中移動システムを提供する。
【解決手段】空中移動システム100は、空中移動体10と、空中移動体10の動作を制御する制御部20とを備え、空中移動体10は、浮遊力発生源30と、太陽の光を遮蔽する遮蔽部40と、対象物の位置方向と太陽の位置方向を特定するための情報を取得するセンサ51,52と、を備え、制御部20は、センサからの情報をもとに対象物と太陽の間となる位置方向を特定する位置方向特定手段を備え、位置方向特定手段により特定された位置方向に空中移動体10が移動するように浮遊力発生源30を制御し、遮蔽部40により対象物から太陽の光を遮り日陰を提供する。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
空中移動体と、前記空中移動体の動作を制御する制御部とを備えた空中移動システムにおいて、
前記空中移動体は、
当該空中移動体を浮遊させる浮遊力発生源と、
太陽の光を遮蔽する遮蔽部と、
対象物の位置方向と太陽の位置方向を特定するための情報を取得するセンサと、を備え、
前記制御部は、
前記センサからの情報をもとに前記対象物と前記太陽の間となる位置方向を特定する位置方向特定手段を備え、
前記位置方向特定手段により特定された位置方向に前記空中移動体が移動するように前記浮遊力発生源を制御し、前記遮蔽部により前記対象物から前記太陽の光を遮り日陰を提供することを特徴とする空中移動システム。
【請求項2】
前記浮遊力発生源は、前記空中移動体の外周部に設けられ、
前記遮蔽部は、前記浮遊力発生源の内周側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の空中移動システム。
【請求項3】
前記空中移動体は、その高度を調整するための情報を取得するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサからの情報をもとに前記空中移動体の高度を設定する高度設定手段を備え、前記高度設定手段により設定された高度に前記空中移動体を移動させることを特徴とする請求項2に記載の空中移動システム。
【請求項4】
前記空中移動体は、障害物へ衝突することを回避するための情報を取得するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサからの情報をもとに前記空中移動体が障害物へ衝突することを回避するように前記空中移動体を移動させることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項5】
前記空中移動体は、当該空中移動体が落下し、又は障害物に衝突した場合でもその衝撃を緩和させるための衝撃緩和機構を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項6】
前記空中移動体は、当該空中移動体や前記対象物の安全を確保するための情報を取得するセンサを備え、
前記制御部は、前記センサからの情報を解析し、前記空中移動体の墜落や衝突、故障、その他トラブルを防ぐための危機回避制御を行い、
前記空中移動体は、前記危機回避制御を行う旨を前記対象物に伝えるための情報発信部を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項7】
前記空中移動体の電力を補うための発電機構を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項8】
前記空中移動体は、当該空中移動体により太陽光を遮蔽する前記対象物がより冷却されるために前記対象物に冷却物を当てる冷却物送出機能を備えることを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項9】
前記空中移動体は、前記制御部による制御を外部から行う場合に、前記空中移動体の制御指示を外部から受信する受信部を備え、
前記制御部は、前記受信部が受信した外部からの制御指示内容をもとに前記空中移動体を制御することを特徴とする請求項2又は請求項3に記載の空中移動システム。
【請求項10】
前記空中移動体が離発着する離発着場と、前記離発着場の下部に前記対象物が入ることができる空間とを有したステーションを備え、
前記制御部は、前記空中移動体が前記ステーションの離発着場で待機している際に、前記空中移動体を利用する予定の前記対象物が前記ステーションに入ったことを検知することを特徴とする請求項9に記載の空中移動システム。
【請求項11】
前記制御部は、前記対象物が前記空中移動体の利用を終了する目的で前記ステーションに入った際に、前記対象物が前記ステーションに入ったことを検知することを特徴とする請求項10に記載の空中移動システム。
【請求項12】
前記空中移動体が前記ステーションの離発着場で待機している際に、前記ステーションの送電機構から受電して動力源部の充電をする充電機構を備えることを特徴とする請求項10に記載の空中移動システム。
【請求項13】
前記制御部は、前記空中移動体が前記ステーションにて離発着する際に、前記ステーションの位置情報を検知することを特徴とする請求項10に記載の空中移動システム。
【請求項14】
前記受信部は、前記空中移動体が前記ステーションにて離発着する際にステーションから送信された離発着指示を受信し、
前記制御部は、前記受信部が受信したステーションから送信された離発着指示をもとに前記空中移動体を離発着することを特徴とする請求項10に記載の空中移動システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、人などの対象物から太陽の光を遮り日陰を提供する空中移動システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来からこの種のシステムとして、傘部と空中移動機構(クワッドコプターと言われるドローン)を組み合わせたシステムが知られている(例えば特許文献1,2,3参照)。また、蛇腹状の傘を設けた自律移動飛行体が知られている(特許文献4参照)。また、無人航空機によって傘を保持し、車に乗り降りする際に稼働するシステムが知られている(特許文献5参照)。また、浮遊体から被遮光体の位置と距離を計測し、所定距離位置に浮遊体が近づくように制御して被遮光体を太陽光から遮る太陽光遮光装置が知られている(特許文献6参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-048025号公報
【特許文献2】特開2020-50338号公報
【特許文献3】特開2022-027784号公報
【特許文献4】特許第6670064号公報
【特許文献5】特表2020-510577号公報
【特許文献6】特開2008-212421号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、特許文献1~5に示されるシステムや装置は、傘部が太陽と人の間に入る制御を行うことは示されておらず、太陽光を防ぎ日傘として機能するものではない。また、特許文献6に示される装置は、対象物(被遮光体)と太陽の両方の位置方向をリアルタイムで計測し把握するものではなく、従って、浮遊体が被遮光体と太陽の間に入るために適格な制御を行えるものではない。
【0005】
本発明は、上記課題を解決するものであり、太陽光を遮るために太陽と対象物の間に入るための適格な制御を行い、安定して日陰を提供することが可能な空中移動システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、空中移動体と、前記空中移動体の動作を制御する制御部とを備えた空中移動システムにおいて、前記空中移動体は、当該空中移動体を浮遊させる浮遊力発生源と、太陽の光を遮蔽する遮蔽部と、対象物の位置方向と太陽の位置方向を特定するための情報を取得するセンサと、を備え、前記制御部は、前記センサからの情報をもとに前記対象物と前記太陽の間となる位置方向を特定する位置方向特定手段を備え、前記位置方向特定手段により特定された位置方向に前記空中移動体が移動するように前記浮遊力発生源を制御し、前記遮蔽部により前記対象物から前記太陽の光を遮り日陰を提供することを特徴とするものである。
【0007】
また、上記空中移動システムにおいて、浮遊力発生源は、空中移動体の外周部に設けられ、遮蔽部は、浮遊力発生源の内周側に設けられていることが好ましい。
【0008】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、その高度を調整するための情報を取得するセンサを備え、制御部は、前記センサからの情報をもとに空中移動体の高度を設定する高度設定手段を備え、高度設定手段により設定された高度に空中移動体を移動させることが好ましい。
【0009】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、障害物へ衝突することを回避するための情報を取得するセンサを備え、制御部は、前記センサからの情報をもとに空中移動体が障害物へ衝突することを回避するように空中移動体を移動させることが好ましい。
【0010】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、当該空中移動体が落下し、又は障害物に衝突した場合でもその衝撃を緩和させるための衝撃緩和機構を備えることが好ましい。
【0011】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、当該空中移動体や対象物の安全を確保するための情報を取得するセンサを備え、制御部は、前記センサからの情報を解析し、空中移動体の墜落や衝突、故障、その他トラブルを防ぐための危機回避制御を行い、空中移動体は、危機回避制御を行う旨を対象物に伝えるための情報発信部を備えることが好ましい。
【0012】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体の電力を補うための発電機構を備えることが好ましい。
【0013】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、当該空中移動体により太陽光を遮蔽する対象物がより冷却されるために対象物に冷却物を当てる冷却物送出機能を備えることが好ましい。
【0014】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体は、制御部による制御を外部から行う場合に、空中移動体の制御指示を外部から受信する受信部を備え、制御部は、前記受信部が受信した外部からの制御指示内容をもとに空中移動体を制御することが好ましい。
【0015】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体が離発着する離発着場と、離発着場の下部に対象物が入ることができる空間とを有したステーションを備え、制御部は、空中移動体が前記ステーションの離発着場で待機している際に、空中移動体を利用する予定の対象物が前記ステーションに入ったことを検知することが好ましい。
【0016】
また、上記空中移動システムにおいて、制御部は、対象物が空中移動体の利用を終了する目的で前記ステーションに入った際に、対象物が前記ステーションに入ったことを検知することが好ましい。
【0017】
また、上記空中移動システムにおいて、空中移動体が前記ステーションの離発着場で待機している際に、前記ステーションの送電機構から受電して動力源部の充電をする充電機構を備えることが好ましい。
【0018】
また、上記空中移動システムにおいて、制御部は、空中移動体が前記ステーションにて離発着する際に、前記ステーションの位置情報を検知することが好ましい。
【0019】
また、上記空中移動システムにおいて、受信部は、空中移動体が前記ステーションにて離発着する際にステーションから送信された離発着指示を受信し、制御部は、受信部が受信したステーションから送信された離発着指示をもとに空中移動体を離発着することが好ましい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、対象物の位置方向と太陽の位置方向を同時にリアルタイムで計測し、対象物と太陽の間となる位置方向を特定して、その特定された位置方向に空中移動体が移動するように制御するので、空中移動体が常時、太陽と対象物の間に入り、安定して日陰を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】本発明の一実施形態に係る空中移動システムの斜視図。
【
図2】空中移動システムの空中移動体が飛行中の状態の斜視図。
【
図3】(a)は空中移動体の側面図、(b)はその上面図。
【
図4】(a)(b)は空中移動体のフレーム部の例を示す上面図。
【
図5】(a)(b)は空中移動体に落下・衝突時の衝撃緩和ガードを設けた例を示す側面図。
【
図7】(a)(b)(c)は空中移動体の浮遊力発生源の構成例を示す側面図。
【
図8】空中移動体のプロペラ部の構成と作用を示す側面図。
【
図9】空中移動体のプロペラ部の構成例を示す平面図。
【
図10】(a)(b)は空中移動体の遮蔽部の構成例を示す側面図。
【
図12】(a)は空中移動体の遮蔽部を示す平面図、(b)(c)は遮蔽部の側面図。
【
図13】(a)(b)は空中移動体の遮蔽部の構成例を示す平面図、(c)はその側面図。
【
図14】(a)(b)は空中移動体の機体と遮蔽部の接続部構造を示す側面図。
【
図15】(a)(b)は空中移動体の機体と遮蔽部の接続部構造の詳細を示す側面図。
【
図16】(a)(b)は空中移動体の遮蔽部の姿勢による作用を示す側面図。
【
図17】(a)(b)は空中移動体の人を検知するセンサの例を示す側面図。
【
図18】空中移動体の太陽を検知するセンサの例を示す側面図。
【
図19】(a)(b)は空中移動体の人と太陽を検知するセンサの取り付け例を示す側面図。
【
図20】(a)(b)は空中移動体が人と太陽の間に入った状態を示す側面図。
【
図21】(a)(b)は人と太陽を検知するセンサによる機体の水平制御方法1の画像座標図。
【
図22】(a)(b)は人と太陽を検知するセンサの取り付け例を示す側面図。
【
図23】人と太陽を検知するセンサによる機体の水平制御方法2の説明図。
【
図24】(a)(b)は人と太陽を検知するセンサの取り付け例を示す側面図。
【
図25】人と太陽を検知するセンサによる機体の水平制御方法3の説明図。
【
図26】人と太陽を検知するセンサによる機体の水平制御方法4の説明図。
【
図27】機体に高度を検知するセンサを付けた例を示す側面図。
【
図29】(a)(b)は障害物を検知するセンサによる作用を説明する図。
【
図30】(a)(b)は障害物を検知するセンサによる作用を説明する図。
【
図31】空中移動システムの制御部の例を示す構成図。
【
図32】空中移動システムによる利用者への送風を行う例を示す側面図。
【
図33】空中移動システムによる利用者への送風を行う他例を示す側面図。
【
図34】(a)(b)(c)(d)は空中移動システムにおける機体の離発着をするためのステーションの構成例を示す図。
【
図35】(a)(b)はステーションの構成例を示す図。
【
図36】(a)(b)(c)はステーションの他の構成例を示す図。
【
図38】(a)(b)はステーションの他の構成例を示す図。
【
図40】(a)(b)はステーションを使わない場合の機体の離発着の例を示す図。
【
図41】(a)(b)はステーションを使わない場合の機体の離発着の他例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(空中移動システム)
以下、本発明の一実施形態に係る空中移動システムについて図面を参照して説明する。
図1は、空中移動システム100を示す。同図において、空中移動システム100は、ドローンに相当する空中移動体10と、空中移動体10の動作を制御する制御部20とを備え、空中移動体10は、空中移動体10を浮遊させる浮遊力発生源30と、太陽の光を遮蔽する遮蔽部40と、対象物(被遮蔽体、例えば利用者である人)の位置方向を特定するための情報を取得するセンサ51(人検知センサ)と、太陽の位置方向を特定するための情報を取得するセンサ52(太陽検知センサ)を備えている。
【0023】
空中移動体10(本機又は機体とも言う)は、機体を成すフレーム部11を備え、浮遊力発生源30は、モータ部31とプロペラ部32を備える。制御部20、浮遊力発生源30、及び遮蔽部40は、フレーム部11に装備されている。制御部20は、バッテリー等の動力源部20Sを備える。制御部20と動力源部20Sは、機体の設計により独立して設けられていてもよい。制御部20は、センサ51,52からの情報をもとに対象物と太陽の間となる位置方向を特定する位置方向特定手段(詳細は後述)を備え、これにより特定された位置方向に空中移動体10が移動するように浮遊力発生源30を制御し、遮蔽部40により対象物から太陽の光を遮り日陰を提供する。各部の詳細は後述する。なお、本明細書において、「位置方向」とは、「位置・方向」と同義であり、「位置及び/又は方向」の概念を含む。
【0024】
図2は、空中移動システム100が稼働して飛行中の状態を示す。同図において、飛行中の空中移動体10は、太陽101と対象物すなわち被遮蔽体としての人102との間に位置するように自動制御される。空中移動体10の機体及び遮蔽部40による影103が地面にでき、人102は日陰に居る状態になる。
【0025】
(空中移動体の基本構造)
図3(a)(b)は、空中移動システム100における空中移動体10の側面及び上面を示す。同図において、人検知センサ51は機体の下にあって人を検知する。太陽検知センサ52は、機体の上にあって太陽を検知する。制御部20は、ボックス内に動力源部20Sとともに内装される。なお、動力源部20Sはボックス内に内装されることなく別個に設けられてもよい。浮遊力発生源30は、空中移動体10のフレーム部11の外周部に設けられ、遮蔽部40は機体の下にあって浮遊力発生源30の内周側に設けられている。
【0026】
(フレーム部)
図4(a)(b)は空中移動体10のフレーム部11の例を示す。同図において、フレーム部11は、空中移動体10を構成する各部を設置できる機体であれば、その形状は任意であり、機体中央部に制御部20及び動力源部20Sが設けられ、機体中央部から同心円状に各方向に支柱が伸び、その先に浮遊力発生源30を成すモータ部31とプロペラ部32が設けられる。また、モータ部31、動力源部20S及び制御部20を繋ぐ配線部が雨などの水に濡れてショートしないように、フレーム部11はカバーの役割も果たすように構成される。制御部20は熱を持つことがあるため、冷却用ファンを設置するほか、雨などの水が入り込まないような位置に外部との貫通孔を設置し、冷却用ファンにより生じた風が外に排出されるように構成することが望ましい。
【0027】
フレーム部11の材料は、軽くて丈夫な樹脂やカーボンナノファイバーなどが考えれるが、上記形状を構成できる材料であれば任意であり、金属や木材や竹等であってもよい。また、フレーム部11の全体形状は、円状が一般的であるが、それに限られない。
図4(a)(b)に示すように、同心円状のフレームでも、四角形状のフレームでもよい。この場合、例えば進行方向や太陽がある方向を四角の角を向けることで、その方向はより日陰の範囲が広くなる。
【0028】
フレーム部11の大きさの目安は、遮蔽部40の大きさの150%程である。一般的には、遮蔽部40が直径100~200cmのため、フレーム部11の大きさは直径150~300cm程が考えられる。フレーム部11は折りたたんで収納することができる(詳細は後述)。
【0029】
図5(a)(b)は空中移動体10に落下・衝突時の衝撃緩和ガード(衝撃を緩和させるための衝撃緩和機構)を設けた例を示す。同図において、衝撃緩和ガードとして、プロペラ部32に網状のカバー12(衝撃緩和機構)が取り付けられ、人や障害物に衝突しても人や機体にダメージがないようにする。カバー12はプロペラ1つずつ覆うような形でもよいし、機体全体を覆ってもよい。また、網状のカバー12は、例えば、バネを用いて衝突や触れた際に沈みこんで衝撃を吸収する構造になっていてもよいし、衝撃であえて少しへこむ構造にして衝撃を吸収する構造にしてもよい。また、カバー12に弾力があるような材料やバネなどの衝撃吸収をする材料を付けてもよい。それらにより、衝突した際の人や機体への衝撃を和らげることができる。
【0030】
図6は衝撃緩和ガードとしての網状のカバー12の例を示す。このカバー12は機体の上部だけでなく、利用者がプロペラ部32に接触しないように機体の下にあることが好ましい。また、網目の細かさは、人の手が入らない程度であることが好ましい。
【0031】
(動力源部)
動力源部20Sは、例えばリチウムイオン電池に代表される二次電池が想定されるが、それ以外にも、一次電池、ガソリンや水素などに代表される燃料動力源等、動力になるもの全て対象となる。高温時に使用する場合、外気温の高騰によりバッテリーが熱を持ち、バッテリーが劣化し、又は発火する恐れがあることから、冷却能力があるケースに収納してもよい。冷却は例えばファンだけの構造以外に、エアコン構造であってもよいし、動力源部20Sのケースの一部に氷や保冷剤、ドライアイスなどを格納して冷却物質で冷却してもよい。また、ケースは魔法瓶のように2重構造で中間が真空となり高温な外部からの熱伝導を遮断する構造であってもよい。
【0032】
浮遊力発生源30のモータ部31は、プロペラ部32の大きさや翼数、傾きに応じたものを選択する。一般的にブラシレスモータは寿命、速度、加速度、効率、ノイズの少なさ、音の小ささがDCモータよりも優れているため、使用が見込まれるが、その限りではない。
【0033】
(モータ部)
図7(a)(b)(c)は、空中移動体10の浮遊力発生源30による移動方法の例を示す。
図7(a)は一般的なドローンの移動方式であり、モータ部31は、プロペラ部32が垂直方向に向くように固定さていて、水平方向(矢印方向)に移動する際は左右のモータ部回転数に差をつけ、機体を斜めにして移動させる。この方式に限られることなく、
図7(b)に示すように、モータ部31を固定ではなく、移動する方向に応じてモータ部31の角度を調整し、可変にすることで、機体を水平に保ったまま移動することができる。また、
図7(c)に示すように、垂直方向の位置調整用モータとは別に、水平移動用専用モータを設けることで、機体の水平姿勢を保ったまま移動することができる。この場合は最低4方向にモータが必要である。
【0034】
(プロペラ部)
図8及び
図9は空中移動体10のプロペラ部32の構成と作用を示す。これらの図において、プロペラ部32は、翼の枚数は少なくとも6枚以上、好ましくは12-16枚程度あることが望ましい。本機が発生させる風の流れは、
図8に示すようになる。プロペラは、上部周辺から風を集め、直下に噴射し反力を得る。そのため、機体の中心付近には図示のような無風部が発生する。6枚以上プロペラを設けることで機体中心部にプロペラが届かず、無風部が発生し(
図8の点線部内、
図9の丸部内)、そこに遮蔽部40(傘)を設置することが可能になる。機体サイズに対して中心の無風部を大きくするためにはプロペラの大きさを小さくする必要があるが、
図9に示すように機体の大きさに合っていないプロペラサイズ・枚数の場合、浮遊力や安定性に欠け、飛行を維持することができない。そのためプロペラサイズを小さくし、かつ図示のように枚数を増やす必要がある。それにより中心の無風部が広がるため、機体自体の大きさを小さくことが可能である。
【0035】
プロペラ部32は、空撮などに用いられる汎用的な無人航空機は2翼のものが一般的であるが、それに限らない。3翼や4翼、又はそれ以上でもよい。翼の数が増す程、発生させる風量が増し、強い浮遊力が得られる。ただし、その分、モータへの負荷が増すため、モータや制御とのバランスで選択する。また、プロペラの材料は金属や樹脂製が用いられる。金属製は重量があるため動力に負担がある一方、耐摩耗性が強いので交換頻度が減る。樹脂製はその逆である。また、回転により揚力を発生されられれば材料はそれらに限らず、例えば木材や竹などで構成されてもよい。
【0036】
(遮蔽部例1)
遮蔽部40は、
図9に示した丸部内に収まるように、機体の形状に合わせて丸型であることが望ましい。なお、丸部に多少重なっても、飛行効率は低下するが安定飛行に影響はない。また、中心部と端部が水平に近く、平面に近い方が望ましい。機体が移動する場合に、遮蔽部40が水平に近い方が、空気抵抗が小さくなるためである。なお、通常の傘のようにデザイン性を求めてもよい。
【0037】
遮蔽部40は、フレーム部11と一体化してもよい。フレーム部11は制御部20や動力源部20Sが格納されている胴体部からアームが伸びて、モータ部、プロペラ部を配置している。空気抵抗を減らすために胴体部は小さい面積にしているが、その胴体部を大きくして、傘の代わりにすることができる。
【0038】
図10(a)(b)及び
図11は、遮蔽部40(傘)の構成、作用を示す。
図10(a)(b)に示すように、遮蔽部40は機体の中心の無風部であれば、上部でも下部でも、又はその両方にあってもよいが、中心下部にあることがより好ましい。傘は表面積が大きくかつ軽いため、風にあおられやすく、その場合、機体の安定性に影響を及ぼすが、
図11に示すように、遮蔽部40が機体の下部のみにある場合は、機体のプロペラにより発生する強い風により、外からの風が傘にあたる量を低減し、傘が揺れたり機体が風にあおられることを低減する。
【0039】
遮蔽部40は、一般的な傘同様、骨があり、それにビニルやシート、布製のものを張り巡らせる場合もあれば、樹脂などの1材料で傘形状を構成する場合もある。また、前述の通り、
図9の丸部内に収まる必要があるが、骨は遮蔽部40の遠位に飛び出していてもよい。その骨は機体のプロペラが発生させる風に重なることになるが、骨自身が細く、風に当たる表面積が小さいため、傘や機体の安定性に影響を及ぼすものではないためである。飛び出ている場合、その部分に各種センサや光源などを装着することも可能である。
【0040】
傘の大きさは、100~150cm程度が望ましい。最低限の大きさとして30cm程度が考えられる。これは子供の肩幅や、人の頭の大きさを考慮したものである。最大の大きさに限度はなく、複数人用の傘、あるいはより高い高度を飛行させる必要があるのであれば、300-400cmあるいはそれ以上も考えられる。
【0041】
(遮蔽部例2)
遮蔽部40は、一部又は複数個所に穴が開いていても、空洞があってもよい。穴や空洞があることで日陰の濃さは低下するが、一方で空気抵抗を減らすことができる。人の位置を検知するセンサが、カメラや遠赤外線センサの場合、それらは遮蔽部40の下にある。そのため、配線や後述のセンサを設置する棒が、遮蔽部40の中心付近を通る必要があり、遮蔽部40の中心に空洞がある。カメラは無線で制御部20に情報を送ることもできるため、その場合は配線が不要となり、その機構は必要でなくなる。
【0042】
図12(a)(b)(c)は、遮蔽部40の構成例を示す。この例では、遮蔽部40の遠位側に範囲拡張部41を設置している。範囲拡張部41は、円周上に限らず、四角などの形状であってもよい。範囲拡張部41は
図9の丸部内よりも広い範囲に設定してもよい。範囲拡張部41は、遮蔽部40の端部より遠部にメッシュや格子状の網などにより構成され、前述の飛び出している骨と同様に下降気流に影響がないものとする。これらメッシュや網などは完全に太陽光を遮蔽することはできないが、太陽光を通す量を減らすことができる。そのために範囲拡張部41は、下降気流に影響がない範囲で遮蔽部40の遠位側に設けることが可能である。また、それらに各種センサや光源などを設置することも可能である。
【0043】
図13(a)(b)(c)は、遮蔽部40に重量物42を配置した例を示す。図示のように、重量物42は重心が偏らないように配置する。遮蔽部40である傘の端部あるいは骨部を伸ばして設置して重心を下げる。後述するフレーム部11と遮蔽部40の接続部が半固定になる場合、機体の振動や揺れにより遮蔽部40が揺れる場合があり、その際の傘の揺れを低減させるものである。揺れ低減の効果をより大きくするためには、重量物42は遮蔽部40のより遠位部に重心が傾かないように配置する。また、遮蔽部40から水平方向や垂直方向に傘の骨を伸ばし、その骨の端部に重量物42を設置することで、重心を下げ、安定させることができる。ただし重量物42を増やすことは、動力源部に負担を増加させるため、バランスを踏まえたうえでの設定となる。また、重量物42は、各種センサが代替してもよい。
【0044】
(機体フレーム部と遮蔽部の接続部)
図14(a)(b)は、フレーム部11と遮蔽部40の接続部が半固定の場合と半固定でない場合の作用を示す。遮蔽部40がフレーム部11に半固定の場合は、フレーム部11と遮蔽部40の間(接続部)に中間部材43がある。中間部材43はその一方がフレーム部11に接続され、他方が遮蔽部40に接続される。中間部材43を設けることで、
図14(a)に示すように、機体が傾いた際に遮蔽部40(傘)が傾かないので、機体が移動のために傾いても、傘は傾かないようにできる。傘が傾かないことで、利用者に提供できる日陰面積が変化しないという良さがある。また、強風にさらされた場合、傘がフレーム部11に完全固定されていると、傘が受けたあおりが全て機体に伝わり、機体があおられてしまうが、半固定の場合は、傘が揺れてあおりを吸収するため、機体があおられることを多少低減することができる。ただし、フレーム部11に対して遮蔽部40がほぼフリーの状態(半固定ではなく傘がプラプラ状態)である場合、風以外に移動時の加速度などの別の要因で傘が揺れやすくなることがあるため、中間部材43の材料や形状を調整することでフレーム部11と遮蔽部40との連動性を適切に調整することが好ましい。この調整は、中間部材の形状や材質の変更などにより可能である。
【0045】
接続部が半固定ではなく完全固定の場合や中間部材が硬い素材の場合は、
図14(b)に示すように、フレーム部11と遮蔽部40(傘)の動きは完全に連動し、機体の傾きと同じだけ傘が傾く。接続部は、上記のような中間部材43を設けず、フレーム部11と遮蔽部40とは一体化してもよい。
【0046】
図15(a)(b)は、フレーム部11と遮蔽部40の接続部に中間部材43がある例であり、
図15(a)は接続部を成す中間部材43を鎖状部材で構成した例である。接続部は、フレーム部11と遮蔽部40とにフック45を設け、そのフック45間を鎖により接続している。
図15(b)は中間部材43を中空状のチューブで構成した例を示す。チューブの中空部には配線44を通している。遮蔽部40の下側に配置される後述の人検知センサが、有線で制御部20と接続される場合、中間部材43は中空状のチューブであることが望ましく、そのチューブに配線44を通すことで、配線44を保護することができる。中間部材43は、配線44を通す場合は、中空状のチューブが望ましいが、それ以外の場合は、鎖や空洞なしの棒状部材など種々の構成を採用すればよい。中間部材43の材質は、金属やカーボンや木などの硬い素材や、軟性のある樹脂やシリコンなどを用いても、また適宜組み合わせて用いてもよく、フレーム部11と遮蔽部40の連動性を考慮して適宜設定すればよい。なお、センサにより取得した情報を無線で制御部20に送ることも可能であり、その場合、中間部材43は不要となる。
【0047】
(機体フレーム部と遮蔽部の接続部が完全固定、機械的制御)
上記の遮蔽部例1で述べた通り、遮蔽部40(傘)がフレーム部11と一体化している場合、接続部は存在しない。また、接続部はあるが、その接続部がフレーム部11や遮蔽部40(傘)と完全固定されていてもよい。接続部にサーボモータ部やジンバルのように、機械的に向きや角度を変えられるようになっていてもよい。
【0048】
図16(a)(b)は遮蔽部40の姿勢による作用を示す。接続部で角度を変えられる場合、太陽が傾いているときに、同図(a)に示すように、遮蔽部40を太陽の傾きと垂直にすることで、同図(b)に比べて、より大きな日陰面積を利用者に提供できる。機体が移動時に傾いた場合も、傘は傾かないように水平を維持する制御もできる(
図14(a)参照)。それにより、移動時に受ける空気抵抗を減らすことができる。
【0049】
(人を検知するセンサ)
図17(a)(b)は人を検知するセンサ51の例を示す。この人検知センサ51は、人の位置方向を特定するための情報を取得するものであり、後述する水平制御方法1~3で使用される。このセンサ51としては、カメラセンサが一般的であるが、それに限られず、例えば、遠赤外線センサ(サーモグラフィ)を使用してもよい。このセンサ51は、人102(利用者)や人の頭、又は人の頭に設置されたマークを検知する。
図17(a)はカメラセンサが1つの場合であり、真ん中に配置することで360度統一の視野が得られる。
図17(b)はカメラセンサが複数の場合であり、頭だけでなく顔などの情報も得ることもできる。センサ51のレンズは魚眼レンズで広い範囲を捉えることが望ましい。
【0050】
利用者は帽子又はヘルメットをかぶり、それらに少なくとも1色以上の所定の色及び/又はマークを一つ又は複数配置し、それらを機械学習しておくことで、カメラセンサにより頭、所定の色及び/又はマークを容易に検知できる。また、帽子又はヘルメットを装着しない場合、利用者の服や姿、顔や頭を機械学習で識別し、利用者の頭を検知してもよい。
【0051】
人検知センサ51は、機体下側に最低1つ以上設ける。センサが1つの場合、機体の中心部に設けることが好ましいが、中心からずれていても問題ない。中心部にあれば視野が360度統一で取れる。中心からずらして配置することで、例えば人の顔など、頭以外の情報も取得しやすい。また、センサが複数の場合、各センサを中心や中心からずらしたところに配置することにより、相互に好ましい情報を得ることができる。センサ配置は、遮蔽部40でもフレーム部11でもよい。
【0052】
後述の水平制御方法4のように、利用者にGPS受信機を持たせて人の位置を特定してもよい。その場合、スマートフォンのGPS機能を用いる他、別途、GPS受信機を利用者に持たせてもよい。GPS受信機は、リモコン型や腕時計型、帽子型、ネックレス型、ポケットに入る小型のものであってもよい。
【0053】
また、カメラセンサや遠赤外線センサと、GPSを組み合わせて短所を補完し合ってもよい。カメラセンサや遠赤外線センサは、その撮影範囲内にて利用者の位置を正確に把握できるが、撮影範囲が限られていて利用者を見失う可能性がある。一方、GPS受信機は位置特定に数10センチ~数メートルの誤差を伴うものがあるが、測定範囲は無限大であるため、利用者を見失うことはない。また、人の頭部付近の温度が高いので、遠赤外線カメラによれば、頭部の識別が比較的容易である。
【0054】
(太陽を検知するセンサ)
太陽を検知するセンサ52は、太陽の位置方向を特定するための情報を取得するものであり、後述の水平制御方法1~4で使用され、最低1つ以上が機体の上面に上を向いて備え付けられる。このセンサ52は、カメラセンサや遠赤外線センサが好ましい。センサ52のレンズは魚眼レンズで広い範囲を捉えることが望ましい。太陽検知は、例えば機械学習を用いる。また、色検知の場合もあり、この場合、一番白に近い色が太陽になる。また、太陽の丸型をエッジ検出等で検知する場合もある。
【0055】
図18は、太陽検知センサ52として光センサを用いた例である。光センサは明るさを数値で出力するが、球面上に複数個備え付けることにより、太陽光に対し垂直に位置しているセンサ(太陽の方を最も向いているセンサ)が最も数値が大きくなり、太陽の位置を特定することができる。また、センサごとに光量の違いの差を顕著にするために、
図18の右図に示すように、センサごとに仕切りを設けてもよい。仕切りを設けると、隣センサとの数値差が大きくなるため、よりピンポイントで判別しやすくなる。仕切りを設ける場合、土台は球体状でなく平面でも同様の効果が得られる。また、各センサの数値を計算することで太陽の正確な位置方向を捉えてもよい。例えば、太陽が垂直に当たる場合のセンサの出力値が200であったとして、最も大きな数値の2つの隣り合うセンサの出力値が180であった場合、太陽は2つの隣り合うセンサの丁度中間の方向に存在すると判断できる。
【0056】
また、カメラセンサと遠赤外線センサを併用することもできる。カメラセンサだけの場合、例えばビルの窓で太陽が反射した場合、2個の太陽らしきものが同時に検知されることがある。そのとき、遠赤外線センサを併用すると、直接見えている太陽の方が、温度が高いため、太陽を特定することができる。一方、遠赤外線センサだけの場合は、例えば太陽が一時的に雲に隠れた場合、高い温度の場所を計測できなくなってしまうが、カメラセンサであれば機械学習によりおおよその場所を検知することができる。
【0057】
また、同じセンサを複数個用いてもよい。例えば3つのカメラセンサを異なる視野の向きに備え付けることで、視野を広げることができる。また、上記以外の方法として、磁気センサにより機体が向いている方位(東西南北)を計測し、GPSなどにより自身の場所を特定し、さらに日にちと時間の情報から、機体に対する太陽の位置を計算で算出してもよい。
【0058】
(人と太陽を検知するセンサと水平制御方法1)
図19(a)(b)は、空中移動体10への人と太陽を検知するセンサ51,52の取り付け例を示す。前述の人と太陽を検知するセンサ51,52は、それぞれフレーム部11の中心付近の下側と上側に取り付けられている。各センサは、
図19(a)では、フレーム部11に固定された棒状部材54の先端に固定され、
図19(b)では、フレーム部11や制御部20のボックスに直接固定されている。
【0059】
図20(a)(b)は、空中移動体10が人と太陽の間に入った状態を示す。空中移動体10は、太陽と利用者の間に入って利用者に日陰を提供する制御を行う。この制御は制御部20によって自動で行われる。すなわち、制御部20は、人と太陽を検知するセンサ51,52からの情報をもとに位置方向特定手段として機能して人と太陽の間となる位置方向を特定し、これにより特定された位置方向に本機が移動するように浮遊力発生源30を制御する。
【0060】
具体的には、本機が太陽と利用者の間に入るということは、人検知センサ51に映る利用者(対象物)の位置が、太陽の座標位置の対角位置に来ればよい。すなわち、本機が太陽と人の間に入り人に日陰をもたらす際の、
図20(b)の角度aと角度bはイコール(a=b)である。
【0061】
図21(a)(b)は、制御部20による本機の水平制御方法1を説明するための図である。
図21(a)は太陽検知センサ52で捉えた太陽の位置を座標分布化したもので、
図21(b)は人検知センサ51で捉えた対象物(人)の位置を座標分布化したものである。
図21(a)の斜線部Sが太陽とし、
図21(b)のグレー枠M1が現在識別された対象物(人)とする。
【0062】
本機が太陽と対象物の間に入るためには、太陽の座標と対角位置座標に対象物が来るように本機を配置すればよい。ここに、
図21(a)のSの太陽中心部の座標が(5,6)であるので、その対角位置を目標として、
図21(b)の黒枠M2(太陽と対角位置)の座標(-5,-6)に人の中心部が配置されればよい。この場合、x軸方向に-4(-1→-5)、y軸方向に-7(1→-6)移動させる。対象物の現在位置が目標位置と異なる場合、対象物が太陽の対角位置座標に来るように本機を移動させる。ただし、太陽検知センサ52と人検知センサ51の高さ位置の違いにより、正確には対角値ではないため、対象物目標位置を補正してもよい。上記制御を繰り返すことにより、本機は太陽と対象物の間に入り続け、利用者に日陰を提供し続ける。
【0063】
(人と太陽を検知するセンサと水平制御方法2)
図22(a)(b)は、人と太陽を検知するセンサの取り付け例を示す。機体の中心付近に機体と垂直方向で機体を貫く棒55があり、その棒55の両端部に各センサが固定されている。人検知センサ51は下方向に、太陽検知センサ52は上方向にある。棒55は、ジンバル又はサーボモータ56で2軸(x、y軸)に傾く。
図22(a)に示す初期状態では、棒55は垂直で、人検知センサ51は真下を、太陽検知センサ52は真上を向いている。
図22(b)に示す制御中では、ジンバル又はサーボモータ56で棒55と各センサが斜めになっている。
【0064】
図23は、人と太陽を検知するセンサによる本機の水平制御方法2を説明する図であり、以下、時系列に説明する。
(1)制御開始時の棒55の初期状態は垂直である。
(2)初めに、人検知センサ51が人を検知し、センサの中心に人が入るように(カメラセンサの場合にはカメラ画像の真ん中に人が来るように)、棒55の向きを調整する。
(3)次に、太陽検知センサ52で太陽の位置を認識し、太陽がセンサの真ん中に来るように本機を動かす。そのためには本機を左に動かす。
(4)本機を動かしている間も棒55が常に人を真ん中に捉えるように棒55の向きを調整する。
(5)すると、本機は徐々に太陽と人の間に入り、入ったときは人検知センサ51は人を真ん中に、太陽検知センサ52も太陽を真ん中に捉えている状態になる。その状態のとき、本機は移動しない。なお、上記(2)の人検知センサと(3)の太陽検知センサとの順番は逆でも同様の効果を発揮する。
【0065】
(人と太陽を検知するセンサと水平制御方法3)
図24(a)(b)は、人と太陽を検知するセンサの取り付け例を示す。人と太陽を検知するセンサ51,52は、それぞれ機体の真ん中付近の下側と上側に取り付けられている。各センサはジンバル又はサーボモータ56の先に取り付けられており、それぞれ独立して2軸(x、y軸)に傾く。
図24(a)に示す初期状態では、ジンバル又はサーボモータ56は零ポジション(人検知センサ51は真下を、太陽検知センサ52は真上を向いている)にある。
図24(b)は制御中に各センサがジンバル又はサーボモータ56で斜めになっている。
【0066】
図25は、人と太陽を検知するセンサによる本機の水平制御方法3を説明する図であり、以下、時系列に説明する。
(1)初期状態は、人検知センサ51は真下を、太陽検知センサ52は真上を向いている。
(2)次に、人検知センサ51で人を検知し、人が真ん中に入るように、ジンバル又はサーボモータ56を制御する。このとき、ジンバル又はサーボモータ56の傾き角度を記憶する。
(3)太陽検知センサ52で太陽の位置を検知する。このとき、太陽検知センサ52は一度、太陽が真ん中に入るようにジンバル又はサーボモータ56を動かす。
(4)太陽のあるべき位置は、太陽検知センサ52が人検知センサ51のサーボの角度と対角にあるときに太陽検知センサ52の中心に太陽が入る場所であるため、現状ある太陽の位置とあるべき位置の差分を算出し、差分がなくなるように本機を動かす。ここでは、太陽検知センサ52は人検知センサ51と対角を向いた状態でセンサの真ん中で太陽を検知すべきであるので、本機を左に動かす。
(5)本機を動かしている間も、ジンバル又はサーボモータ56は常に人を真ん中に捉えるように向きを調整する。
(6)すると、徐々に本機は太陽と人の間に入り、入ったときは人検知センサ51も人を真ん中に、太陽検知センサ52も太陽を真ん中に捉えている状態になる。その状態では、本機は移動しない。ここでは、人検知センサ51と太陽検知センサ52の角度が対角になるときに、本機があるべき位置になる(A=B)。なお、太陽検知センサ52と人検知センサ51の役割は逆でもよい。
【0067】
(人と太陽を検知するセンサと水平制御方法4)
図26は、人と太陽を検知するセンサによる本機の水平制御方法4を説明する図である。太陽検知センサ52は、機体の上部に上方向を向いてあり、固定されていてもよいし、ジンバル又はサーボモータ56で2軸(x,y軸)に傾いてもよい。本機と人が、GPS受信器57a,57bを有している。本機は高度を計測するための高度センサ58(
図27参照)を有している。人(利用者)の身長Em、本機の高度Dmとする。
【0068】
以下、水平制御方法4を時系列に説明すると、
(1)太陽検知センサ52で太陽の角度を特定する。
(2)本機と人が所持しているGPS受信器57a,57bの差分により水平距離を算出する。
(3)本機が持っている高度センサ58と事前に入力した利用者の身長情報の差分により、本機と利用者の高度差(D-E)を算出する。
(4)上記(2)(3)で得た情報により本機と利用者を結ぶ線の角度Cを求める。
(5)本機があるべき位置(人と太陽の間)は、太陽の角度と角度Cが対角になる位置である。二つの角度が近づく方に本機を動かす。
(6)対角になったら本機を止める。
【0069】
(水平制御その他)
上記の水平制御方法1,2,3,4の案を組み合わせてもよい。例えば、人検知センサは3案のようにサーボモータで動き、太陽検知センサは1案のように固定する。人は動くので画角から外れやすいからサーボモータで動かして常にセンサの真ん中に入れた方が見失わない可能性は高い。一方、太陽は時間ごとにゆっくりしか動かないので、見失う可能性は低く、固定していても十分な可能性がある。例えば、2案の棒を用いるが、棒の先端にさらにジンバル又はサーボモータが付き、センサが棒から独立して動けるようにすることもできる。360°カメラを1つ用いて、1つのセンサで太陽位置と人の位置の両方を検知してもよい。
【0070】
水平制御方法1~4の案に共通して、本機があるべき目標位置(人と太陽の間)から離れているほど、速いスピードで移動することができ、より早くあるべき目標位置に到達することができる。また、目標位置に達してはいないが、そこに近づいてきた段階で、移動制御を零にするか、逆方向に制御してもよい。それにより、あるべき目標位置に到達した際に急激に止まるのではなく、小さな動きで静かに止まることができる。
【0071】
人の中心は通常は頭部とするが、それに限らず、少し太陽の位置方向に中心をずらすこともできる。そうすることで、日の傾きが大きい午前中や夕方に、足元は太陽に照らされて暑いといったことを防ぐことができる。
【0072】
(高度を検知するセンサ)
高度を計測するセンサ(高度を調整するための情報を取得するセンサ)として、超音波センサ、赤外線センサ、レーザーセンサ、気圧センサ、加速度センサがある。それらの内、地面から距離を計測するセンサは、超音波センサ、赤外線センサ、レーザーセンサであり、一般的な空撮用無人航空機などには中心部下部に取り付けられ、離着陸やホバリング制御に使用される。これらのセンサは測定精度が高く、誤差は数cm以下である。一方、欠点として、センサと地面の間に人や障害物が入り込むと、地面からの距離を計測できなくなる。そのため、距離計測のセンサは1箇所ではなく、複数個所に設置することが望ましい。複数個のセンサで地面からの距離を計測することにより、地面との計測結果として確からしい計測結果を選別して制御に使用することができる。ただし、人混みなどでは、全てのセンサが遮られてしまうこともあるため、気圧センサや加速度センサ等の他原理のセンサと組み合わせることで、より高い精度で高度を求めることができる。
【0073】
図27は、高度を検知するセンサを複数個付けた例である。フレーム部11や遮蔽部40の複数箇所に高度センサ58を付け、地面からの距離を計測する。センサと地面の間に障害物が入ると、地面からの高度を計測できないが、複数設置することで、その問題は解消される。
【0074】
気圧センサは大気圧の重量により高度を計測することができるため、センサの下に人が入り込んでも計測値に影響しない利点がある。一方、数10センチ単位で計測誤差があるため、気圧センサ単独では地面からの距離計測として精度が高くない。より精度を高めたい場合は他のセンサと組み合わせることができる。
【0075】
加速度センサも有効である。加速度センサから得られた加速度に対して2回積分をすると変位(位置)を算出できるため、理論上は高度を計測できるが、連続測定結果を積み重ねる計測手法のため、計測値に僅かでも誤差があると、その誤差を積み上げていき、時間の経過とともに精度が悪化していく。より精度を高めたい場合は他のセンサと組み合わせることができる。
【0076】
また、前述のカメラセンサや遠赤外線カメラによる人検知センサで高度を計測することもできる。このセンサが検知する人の大きさと角度によって、高度を計測する。おおよその高度は計測できるが数10センチ単位で計測誤差が生じるため、これだけでは地面からの距離計測として精度が高くない。より精度を高めたい場合は他のセンサと組み合わせることができる。これらのセンサを単独、又は複数組み合わせることで高度を計測することができる。
【0077】
(高度制御)
制御部20は、高度センサ58からの情報をもとに高度設定手段として機能して本機の高度を設定し、この設定された高度に本機を移動させる。本機が保つ高度は、基本設定(3~5m程度が目安)をすることができるが、利用者や管理者が使用前に設定するほか、使用中に利用者が変更することもできる。使用中に変更する場合は、利用者はスマホやリモコンで制御部20に指示を送る。また、太陽の角度によって自動で高度を調整してもよい。
【0078】
図28は、本機の高度制御による作用を示す。同図において、朝や夕方の太陽の位置に角度がついているとき、本機の高度が高すぎると(1の状態)、日陰を利用者にもたらすことはできず、本機が太陽と対象物の間に入るためには、対象物から遠くの位置に移動する必要があり、対象物から離れすぎてしまう(2の状態)。そこで、その際は自動で高度を下げ、対象物からより近い位置で制御できるようにする(3の状態)。これにより、本機が(1)と同じ位置でも日陰をもたらすことができる。
【0079】
高度の下限値の目安としては、人に当たるリスクを考慮し2m程が目安になる。高度の上限の設定は無くてもよいが、前述の水平制御方法1~3の案のように、人検知センサがカメラや遠赤外線カメラの場合、高くなるほどセンサで捉えられる人の大きさが小さくなり検知しにくくなるため、検知性能の観点から設定することが望ましい。ただし、水平制御方法4の案のように、GPSを用いて検知する場合は、そのような問題はない。また、本機が高くなると周囲から入り込む光量が増えるため、提供する日陰の濃さが薄くなり、利用者が感じる涼しさは低減するため、日陰の濃淡の観点から高さ上限を設定してもよい。
【0080】
また、設定された高度の範囲内で、高度は周辺環境に応じて自動で調整することもできる。例えば、周囲に人が多い場合である。周囲に人が多いと誤検知のリスクが増えることを考慮して高度を下げて、センサが検知できる人の大きさを大きくして人検知の精度を上げることが考えられる。また、その逆に高度を上げることで、周囲の人が感じる、本機の圧迫感や飛行音に対する不快感を低減することもできる。
また、例えば、利用者の移動速度が速い場合によって高度を調整する場合もある。人検知センサが、カメラ又は遠赤外線センサの場合、利用者の移動速度が速いと、センサの画角から出てしまい、人検知ができなくなってしまうリスクが考えられる。それを防ぐために高度を上げ、センサの画角を広げることで、人検知ができなくなるリスクを減らすことができる。
また、例えば、他人が同エリアで使用する同機種の別個体との接触リスクを減らすために、機種によってあらかじめ高度を変更することができる。例えば、同エリアにある2機の高度がどちらも5mであれば接触回避の制御(後述)をする必要があるが、片方が5mでもう片方が6mであれば、接触回避をする必要がなくなる。
【0081】
(障害物検知(水平方向、上方向))
周辺環境や障害物検知のセンサ(障害物へ衝突することを回避するための情報を取得するセンサ)として、距離を計測する超音波センサ、赤外線センサ、レーザーセンサがあり、また、カメラセンサや遠赤外線センサ(サーモグラフィ)がある。これらのセンサを空中移動体10に水平向きに配置することで、障害物の検知に用いることが考えられる。
【0082】
図29(a)(b)及び
図30(a)(b)は、障害物を検知するセンサによる作用を示す。これらの図において、障害物検知センサ59が、水平向きの場合、少なくとも1つ以上取り付ける。1つの場合、本機が進む方向とセンサが向いている方向は常に同じである必要があり、本機はセンサを配置している部位を進行方向に向けて移動する必要がある(本機の「前」を決める必要がある)。一方、全周囲にセンサを装着することで、本機は向きを指定する必要がなくなる(本機の「前」を決める必要がない)。また、機体の上向きに配置することもできる。それにより、例えば木などの、機体の上に位置する可能性がある障害物を検知することができる。また、障害物検知センサ59はサーボモータやジンバルを利用して適宜向きを調整することができる。それにより少ないセンサ数でもより広範囲を検知することができる。
【0083】
(その他の外部情報を取得するセンサ、情報発信部、記録部・送信部・受信部)
外部情報を取得するセンサは、前述の人検知や太陽検知、高度検知や障害物検知以外の用途でも用いてもよい。例えば、カメラセンサや遠赤外線センサ(サーモグラフィ)、光センサ、加速度センサ、気圧センサ、GPS受信器、磁気センサ以外にも、降雨センサ、温度・湿度センサ、傾斜センサ、音センサ、風速・風向き検知センサ、圧力センサ、マイクなど、外部情報を取得するあらゆるセンサがある。それらから得た外部情報は、本機や対象物の安全を確保するための情報であって、制御部20は、これら情報を受けて解析し、空中移動体10の墜落や衝突、故障、その他トラブルを防ぐための危機回避制御を行う。これら情報は、遠隔オペレーションや外部情報データ蓄積などに用いることもできる。
【0084】
空中移動体10は、危機回避制御を行う旨を対象物に伝えるためのスピーカーや光源のような情報発信部を備えていてもよい。それにより利用者又は第三者に本機の状態や予定している動き、指示を伝えることができる。例えば、離陸する際、「離陸します」とアナウンスしてから離陸するほか、機体の一部又は複数個所に備え付けられた光源が強く点滅することで周囲に周知する。通常動作以外にも緊急対応時にも使用することができる。例えば動力源が少なくなり残りの飛行時間が少なくなった場合、飛行を終わらせる、あるいは基地に戻るよう指示するほか、強風などにより安定飛行が難しい場合、緊急着陸の案内を行う。また、スピーカーは遠隔オペレーションで利用者や周囲に直接口頭で指示をする場合にも用いられる。
【0085】
記録部・送信部は、上記センサにより取得したすべての情報あるいは選択した情報を記録・送信する。記録・送信は常に行う場合や一定周期で行う場合があり、設定変更が可能である。送受信には、例えば通常の無線ラジコンで用いられる電波によるものやwifi、bluetooth(登録商標)の無線通信手段の活用があるが、その他の無線通信手段であってもよい。また、記録部は機体にあっても、外部にあっても、両方にあってもよい。また、送信部から利用者のスマートフォンにその情報を送ることもできる。
【0086】
また、空中移動体10は、電波やwifi、bluetooth(登録商標)などの外部からの情報を受信する受信部23(後述の
図31)がある。受信部23は、本機の制御や情報発信などの指示を外部から受信することができる。例えば、離陸開始指示、着陸開始指示、各種センサからの情報取得・記録・送信指示、利用者や第三者へスピーカーや光源による情報発信指示などがある。
【0087】
上記すべてのセンサ、情報発信部、記録部、送信部、受信部は、制御部20と有線で接続されていてもよいが、電波やwifi、bluetooth(登録商標)に代表される無線通信を用いて制御部20に送受信してもよい。また、これらの設置場所は用途に応じて設置され、機体や遮蔽部40のどこに設置されてもよい。
【0088】
(制御部による制御1(緊急着陸、衝突回避、侵入禁止エリア回避制御))
上述は、基本動作(使用開始時の離陸、使用時の高度維持、利用者と太陽の間に移動、着陸)であり、それ以外にも以下の制御があってもよい。
【0089】
緊急着陸制御:
安定飛行を続けられないような突風が吹き、又はバッテリーの残量が一定以下に切れた場合、又は何らかの原因で制御不能に陥った場合等に、緊急着陸判断と緊急着陸制御をする。緊急着陸の場合、一定の速度で着陸するほか、前述の光源部やスピーカーで周囲に着陸の旨や離れる旨を周知する。緊急着陸以外にも、最も近くにあるステーション(後述)や開始場所、目的地への緊急帰還をする制御に切り替えることもある。
【0090】
衝突回避制御1:
前記の外部情報取得センサより得た外部情報により、本機が障害物(例えば建物の壁や木、信号機、看板等)に接触しそうな場合、接触を回避する。センサより設定範囲の内側に障害物を検知した場合、利用者への日陰提供は二の次とし、衝突回避の制御に切り替える。衝突回避の方法は、その場で止まり、又は一定距離(数m)強制的に衝突回避する方向に移動して止まり利用者が移動することを待つ。あるいは、進行方向に近い方角で衝突を回避できる場合は、その方向に移動する場合もある(例えば北に進んでおり、北に障害物があるが、北西は問題ない場合は、止まらずに北西方向に進む)。また、その旨を前記の光源やスピーカーにより利用者に知らせる。また、送信部から利用者のスマートフォン等に情報を送信する。
【0091】
他人が同エリアで使用する同機種の別個体と接触しそうになり、接触回避をする場合、上記の侵入禁止エリアや障害物の回避と同じ制御をすると、立ち行かない場合がある。例えば、1本の歩道を一方の本機が北→南、他方の本機が南→北に進んでいる場合、別個体を検知して止まったりすると、お互いその先に進めなくなる。そのため、水平方向だけでなく上下方向に移動する必要もある。ただ、その場合、どちらも同じような回避をする(例えば、どちらも上に逃げる)と、回避先で衝突してしまう可能性がある。そのため、どちらか一方だけが回避の動作をする。例えば、より北にいる本機、より東にいる本機が優先して回避をする。あるいは、それぞれが逆の方向に回避する(例えばより北にいる本機が上に移動し、より南にいる本機が下に移動する)。
【0092】
衝突回避制御2:
本機は屋外での使用になるが、屋外には本機が侵入してはいけない場所もある。例えば、遊園地の場合、メリーゴーランドなどのアトラクションに侵入してしまうと、本機がアトラクションに衝突したり巻き込まれたりする危険性があり、事故につながる恐れがある。それを防ぐために、本機の利用範囲のマップを作製し、侵入禁止のエリアを設定することができる。このマップに本機のGPSなどで得た位置情報から現在位置を当てはめることで、本機の現在位置が侵入禁止エリアではないことを識別できる。侵入禁止エリアに入り、又は近づいた場合の制御は、上記の衝突回避制御1の方法と同じでよい。
【0093】
(制御部による制御2、その他)
カメラセンサ等で利用者を検知できなくなった場合、本機の高度を上げることで、カメラセンサで捉えられる範囲を広げ、利用者を探すことができる。カメラセンサ等で利用者を検知できなくなった場合、その場での緊急着陸や、最も近くにあるステーション(後述)や開始場所、目的地への緊急帰還をすることができる。また、目的地が決められている場合、目的地を設定し、目的地と本機の位置情報を把握することで、目的地の方角の提示や、目的地の方角から大きくそれた場合の発信を行うことができる。また、バッテリー残量情報から、残りの飛行可能時間の発信を行うことができる。
【0094】
本機がステーション(後述)にて待機している際、省電力モードにすることができる(電源はオンのまま)。その場合、人検知センサと、そのセンサから得た情報の解析だけが稼働している。そして、ステーションに人が入り、本機の人検知センサが人を検知すると、省電力モードを解除し、飛行準備を行う。また、エンタテイメントに関する制御を行うことができる。例えば近くにあるアトラクションや観光地の紹介や案内案内、キャラクターによるコミュニケーション、電装によるデザイン(LEDを特定の色に光らせる等)などがある。
【0095】
手動操作システム:
空中移動体10を手動で操作をすることができる。手動操作は、利用者が行ってもよいし、機器管理者が行ってもよい。手動操作を行う媒体はスマホやリモコンを用いることが考えられる。例えば、ステーション(後述)を利用しない場合の離発着時、本機が制御不能の場合や本機が利用者を見失っている場合、緊急着陸をさせたい場合などに使用する。それ以外の場合でも、例えば、高度を好みによって調整できる。より高くすることで本機が発する音源を遠ざけ、不快感を減らせるほか、他の通行人とすれ違う場合に通行人の日傘と重ならないようにできる。一方、低くすることで、より太陽光を遮断し、日陰を濃くすることができる。利用開始前に手動操作を開始してもよいし、利用中に(自動制御中に)手動操作に切り替えてもよい。また、手動操作の後、再び自動制御に切り替えることができる。
【0096】
(制御部)
図31は、制御部20(機体制御部)の構成例を示し、この例では図の点線内が機体内にある。制御部20による制御の基本動作は、空中移動体10について使用開始時の離陸、使用時の高度維持・調整、利用者と太陽の間への移動、使用終了時の着陸である。それ以外に前述の外部情報取得センサからの情報取得や解析・それに応じた動作判断や指示を行うほか、それらセンサ情報や機体の情報、利用者情報などを記録・送信すること、スピーカーや光源を使用して周囲に周知すること、外部からの情報を処理することなど、先述のいずれか又は全てを行う。
【0097】
制御部20は、基本的に上記の制御を行う制御本体部21と、それらの指示とは関係なく常に機体が安定飛行を維持できるように自動で姿勢制御を行う姿勢制御部22とがある。機体には、外部からの指示を受信する受信部23、発信部24、各種センサ50などを備えている。制御本体部21は、上述した位置方向特定手段や高度設定手段として機能するためのハードウェア及びソフトウェアを備えている。姿勢制御部22は、制御情報を受け、各プロペラ部32のモータ部31に回転数を指示する。モータ部31がDCモータ部ではなくブラシレスモータの場合、姿勢制御部22にESCが配置される。
【0098】
本体の制御を行う制御部は、機体内(制御本体部21)にあっても、機体の外部(外部制御部26)にあっても、その両方にあってもよい。機体の外部に持つ場合、本機や各種センサ50の情報を送信部25により外部制御部26に送信し、外部制御部26で計算し、その結果を受けた本機の動きの指示を受信部27で受信して姿勢制御部22に情報伝達する。その場合、外部制御部26をより大型で高度なものにできるため、より複雑な計算ができる。例えば、複数のカメラセンサで得た機体周辺映像を、機械学習を用いて解析して制御指示をする場合などに有効である。
【0099】
本体の制御を行う制御部を機体内(制御本体部21)に持つ場合、外部との情報の送受信がないため、電波障害などによる制御不能の可能性を減らすことができる。
【0100】
本体の制御を行う制御部を機体内(制御本体部21)と機体外(外部制御部26)の両方に持つ場合、単純な指示は制御本体部21が行い、複雑なものは外部制御部26が行うことで、互いの良いところを活かし、欠点を補うことができる。なお、空中移動体10は、外部から制御することなく動作させることも可能であり、その場合、離着陸の際も移動中も、機体が備えるセンサで状況判断し、制御部20が単独で離着陸や動作判断を行う。
【0101】
(発電、蓄電システム)
空中移動体10の電力を補うための発電機構を備えていてもよい。発電機構としては、フレーム部11や遮蔽部40の一部又は全面にソーラーシートを設置することが考えられる。ソーラーシートであれば軽量で取り付けも簡単であるほか、特定形状に加工して貼り付けることもできる。また、ソーラーシート以外でも、発電可能なシート、塗料などでもよい。ソーラーシートで発電した電気をそのまま機体駆動バッテリーに充電してもよいし、専用の蓄電池に蓄電し、そこから駆動バッテリーに供給して充電して使用してもよい(UPS)。また、機体上部に風力発電用のプロペラを備え、発電、蓄電してもよい。その場合、風力発電用プロペラは風が吹いている方向や進行方向を向くことができる。
【0102】
(ミスト放射)
本機は、利用者の体感温度をさらに下げるために利用者(対象物)に冷却物を当てる冷却物送出機能を備えていてもよい。冷却物送出機能として機体からミストを放出する。その場合、機体に水タンクを積み、ミスト放射ノズルで放射する。ミスト放射のON/OFFやその強弱は、外部情報センサから得た外部情報から決めることができる。例えば、温度センサから得た温度が一定以上の場合は放射する、というものである。また、放射のON/OFFや放射の程度は、利用者が都度調整することもできる。利用者のスマホや利用者が持っているリモコンで指示を送ればよい。
【0103】
放射は、例えば弱/中/強のように調整できてもよいし、一定周期で放射する(例えば5秒おきに1秒だけ放射)、というようなパルス式放射をしてもよい。また、ミストのノズルは複数個所に配置されていてもよく、各ノズルは様々な方向を向いていてもよい。また、ノズルの向きはサーボモータなどにより可変にしてもよい。これらにより、利用者が機体に対してどの場所にいても利用者をめがけて放射することができる。また、ミストは水タンクを積む必要があるため、機体の重量が増し、機体の稼働時間の減少につながる。それを防ぐために、水タンクの替わりにドライアイスを用いてもよい。ドライアイスは白い煙を発するが、これは小さい水の粒の集合体である。そのためミストと同様の効果が得られる。
【0104】
(利用者への送風)
空中移動システムは、利用者に適量の風を送り、より体感温度を下げる機能を備えてもよい。そのために、浮遊力を発生させるプロペラ部32による風の一部の風向を変えて利用者に風を送る。
図32は、非電気的なプロペラ35(風車のようなもの)を浮遊力発生の風の中に入れ、一部の風の向きを変える例を示す。プロペラ35は、内側、外側又は両方に配置していてもよい。
図33は、プロペラ35の支柱の向きを変えて風向きを変える機能をON/OFF変更できるようにした例を示す。この
図33には、OFF時のプロペラの位置(1)とON時のプロペラの位置(2)を示している。また、プロペラをモータで回転させ、利用者に風を送ることもできる。その際、プロペラの向きはサーボモータなどにより可変にしてもよい。
【0105】
(離発着ステーションの形状)
図34(a)(b)(c)(d)は、空中移動システム100における空中移動体10の離発着をするためのステーション60の構成例を示す。空中移動体10は、ステーション60にて離発着する際にステーション60から送信された離発着指示を受信部23,27で受信し、制御部20は、この受信部23,27が受信したステーション60から送信された離発着指示をもとに空中移動体10が離発着するように制御する。
【0106】
ステーション60は、その中に人が1人以上は入れるものである。その形状は円柱状が好ましいが、その限りではない。例えば、本機が四角状なら、ステーション60もそれに合わせて四角柱状にするなど、機体形状に合わせて設定するほか、ステーション60を設置する場所のスペースの都合やデザイン性を考慮して任意の形状にすればよい。
【0107】
ステーション60の1箇所又は複数個所に人の出入口61があり、人が使用開始時や使用後に出入りできる。人が入る穴が開いてるだけの簡単なものでよいが、出入口61にドアがあってもよい。また、ステーション60は色付きであっても透明であってもよく、透明な場合、出入口61が分かり難くなるため、出入口61の縁にマーキングを施して視認性を高め、出入口61を分かり易くすればよい。
【0108】
ステーション60の上面で本機が離着陸できるように、ステーション60は本機に合わせた大きさとする。遮蔽部40(傘)の外径がステーション60の径より小さく内側に入ってもよいし(
図34(a))、傘が機体の上部についている場合は、それに限らないので、ステーション60の径が傘外径より小さくてもよい(
図34(b))。
【0109】
ステーション60を本機に合わせた形状にして、プロペラと地面との距離を離すことで、地面からの風の跳ね返りによるダウンウォッシュ効果が起こることがなく、安定した離着陸が可能になる。また、一般的なドローンでダウンウォッシュ効果を避けるために、ドローンに脚(ランディングスキッド)が装着される場合があるが、本ステーション60で離着陸することで、脚を備える必要がない。脚は突起物になり、人にぶつかると怪我をする恐れがあるため、無い方が好ましい。
【0110】
本機が離着陸する部分は、本機が離着陸しやすいように、水平に近い方が好ましい。また、機体の下部に配置された人検知センサが、ステーション60内の利用者を検知できるように、少なくとも一部又は全体に空洞62がある(
図34(c)(d))。
【0111】
(離発着ステーションの形状、その他)
ステーションの寸法:
ステーションの幅は機体に合わせるが、機体より小さくてもよいし、機体より大きくてもよい。目安としては、100~250cm程である。高さは人の身長より高い必要があるため、2-2.5m程が望ましい。ただし、子供用の専用ステーションを用意する場合はそれに限らず、1.5m程であってもよい。上面の機体接地面は機体の着陸の衝撃を減らすように、緩衝材等が敷いてあってもよい。
【0112】
ステーション本体の色は透明であっても、有色であっても、その組み合わせであってもよい。透明な場合、外からもその様子を伺うことができ、また、ステーション内の利用者は閉塞感を感じ難くなる。一方、有色でデザイン性を施すことにより、エンタテイメント性を高めるほか、企業やスポンサーの宣伝に活用することができる。また、例えば出入口の縁のみにデザイン性を施し、利用者に出入口の場所を明確に提示してもよい。
【0113】
ステーションの材料は金属性、樹脂製、ガラス製、木製などが考えられるが、本ステーションの構造を再現できる材料であれば任意である。また、ステーション上面の本機と接する部分に、ワイヤレス充電用の送電パネル(送電機構)があってもよい。また、本機のステーション上面に接する部分に受電コイル部(充電機構)を設置してある場合、本機がステーションの離発着場で待機している際に、動力源部の自動充電をすることができる。それにより管理者は使用後に機体のバッテリーを交換する必要がなくなる。また、ステーションにキャスターが付いていてもよい。それにより、ステーションを運びやすくできて、ステーションの設置をし易くなる。また、ステーションは開くことができ、複数のステーションを重ねて保管することができる(詳細は後述)。
【0114】
(離発着ステーションのマーキング)
ステーションには次のようなマーキングがあってもよい。
図35(a)(b)は、ステーション60の上面の一部にステーションと同心円状のマーキングした例である。機体が本ステーション上に着陸する際、中心部に着陸することが望ましいが、上面の一部に同心円状にマーキングがあることで(a)、機体はその中心に位置を調整しながら正確に着陸することができる。マークは例えば丸状の1つのマークでもよいし、特定のマークを複数配置してもよい(b)。
【0115】
図36(a)(b)は、ステーション60の出入口付近の地面に特定のマーキングをした例である。離着陸時に、本機にステーションが近いことを知らせることができる。例えば、本機のカメラセンサが、このマークを検知した際は、移動速度を下げたり、高度を通常使用よりも高くしたりと、本機の制御のための1つのインプットにできる。このマークは出口付近だけであってもよいし(a)、ステーション周辺にあってもよい(b)。また、マークの形状は、例えば線形のものでもよいし、特定の形状を有するものであってもよい。また、
図36(c)に示すように、ステーションの側面にマーキングがあってもよい。これも同様、本機がステーションの位置を把握することができる。
【0116】
(離発着ステーション(情報発信部、稼働スイッチ、機体の制御設定)
ステーションに情報発信するスピーカーや光源などを配置していてもよい。これにより利用者や第三者に情報発信を行う。例えば、利用者にステーションの中に入り、真ん中に立つよう促したり、利用者に後述するボタンを押して使用を開始する手順を伝えたり、利用者や第三者に離陸・着陸の情報を知らせたり、利用者に後述する写真撮影の旨を伝えたりすることができる。また、空中移動体10が待機していない場合と待機している場合で発光色を変え、利用終了する人がどのステーションに入ればよいのか(どのステーションが空いているのか)が分かるようにしてもよい。
【0117】
空中移動体10の稼働スイッチをステーションの内側又は外側又は両方に有していてもよい。内側にある場合、利用者自らが、離陸準備ができた段階で押すことで、離陸指示をできる。外側にある場合、管理者が離陸の準備を確認した後に離陸指示をすることができる。外側にある場合、このスイッチはステーションに接していなくてもよい。このスイッチは押しボタンタイプや2値スイッチ、スロットル、タッチセンサ、タッチパネル等、スイッチになるようなものであればいかなるものであってもよい。また、スイッチに限らず、音声指示、ジェスチャー指示で離陸指示を行ってもよい。このスイッチ情報は機体に無線で送られる。送信手段として電波やwifi、bluetooth(登録商標)などがあげられるが、無線送信手段であればそれらに限らない。離陸指示を送ってから機体が稼働することにより、意図しない離陸を防ぐことができる。
【0118】
また、この稼働スイッチは機体の着陸時は、着陸支持スイッチにもなる。通常、機体は利用者がステーションに入ることで自動的に着陸態勢に入るが、制御の不具合等が原因でうまく着陸判断ができない場合もある。その際に利用者又は管理者が同スイッチを押すことで着陸支持を送り、機体は着陸する。
【0119】
機体の制御設定を行う機能を有していてもよい。制御設定内容は、例えば、機体の高度を低め(人から近い距離)か高め(人から遠い距離)にするか、頭部を中心に日陰を提供するか、少し太陽の位置方向に中心をずらすかなどがある。また、目的地が決まっている場合、その場所の登録をすることで目的地までの距離や時間、機体のバッテリー残量からどのくらいの速度で歩けばよいかなどの情報を提示することができる。制御設定の指示は、上記のようなスイッチ、タッチパネルなど、いかなる媒体で行ってもよい。これら媒体は、機体の内側にあっても外側にあってもよく、外側の場合はステーションと接していなくてもよい。
【0120】
(離発着ステーション(カメラ、GPS、電源))
ステーションの内側又は外側に、利用者や機体を撮影するカメラを設置していてもよい。カメラは利用者の位置把握目的で設置した場合、利用者が使用開始時(離陸前)や使用終了時(着陸後)に適切な場所にいない場合、適切な場所に移動するよう促すことができる。機体確認用に設置する場合、機体の着陸時に機体はマークを目印に着陸するが、その着陸位置を補正し、又は未使用時(ステーションの上に機体があるとき)の機体の有無確認などに使用できる。
【0121】
また、利用者の記念撮影用に設置してもよい。ここで撮影された画像又は動画は直ぐにプリントアウトされて販売してもよいが、利用者は離陸時のステーションと着陸時のステーションが異なる場所にあることが考えられ、その場合、元の場所に戻ってこない。そのため、データで販売する方が望ましい。例えば写真購入者は使用が終わったらステーション付近の電子パネルに表示された自身の写真を確認し、購入する場合はその場で支払い専用バーコードを入手し、そのバーコードを読み込むと写真をダウンロードすることができ、若しくは、専用アプリケーションを用い、アプリケーション内で閲覧・販売できるようにしてもよい。
【0122】
本機がステーションにて離発着する際に、制御部20はステーションの位置情報を検知するようにしている。機体がステーションの位置を把握するために、ステーションにGPSモジュールを配置していてもよい。例えば目的地(到達ステーション)が決まっている場合、その離陸前にそのステーションを設定しておけば、到達ステーションの方角や距離、到達時間を予測して教えてくれるほか、緊急着陸時に機体がGPSを頼りにステーションに戻り、自動で着陸することもできる。
【0123】
前述のワイヤレス充電やカメラ、スイッチ、GPSモジュール、情報発信源を使用する際は電源が必要であるが、AC電源接続(コンセント)で電源を供給してもよいし、バッテリーから電源を供給してもよいし、両方備えていてもよい。ステーションをエンタテイメント施設などの特定場所に固定する場合は、AC電源で接続できるが、イベント会場などに単発的に設置する場合は、バッテリー駆動の方がよい。
【0124】
(離発着ステーション(高さ方向の伸縮性))
図37は、ステーションの構成例を示す。ステーション60は、高さ方向に伸縮可能であってもよい。それにより管理者が機体のバッテリー交換やメンテナンスをし易くなる。本機の使用頻度が高い場合(ある人が使用し終わり、直ぐに別の人が使用する場合)、先述のワイヤレス充電では充電完了に時間を費やすため不十分である。そのため、機体のバッテリー交換を実施する必要があるが、機体着陸時は人の手が届かない高いところに着陸する。そのため、人が脚立などに上って作業する必要があり、危険を伴うし不便である。そのため、ステーションが半分程度に高さ収縮する機能を有することにより、管理者は自分の胸の高さ位で機体のバッテリー交換をすることができる。それ以外にも機体は定期的にメンテナンスをする必要があるが、その際にもステーションの高さを下げて、その上でメンテナンスを行うことで利便性が向上する。
【0125】
ステーションの伸縮方法は、例えば油圧式、ギア駆動式等が挙げられるが、それに限らない。また、駆動は手動式であっても、電動式であってもよい。使用時のステーションの高さが2-2.5mであることから、1/2まで縮まれば1-1.25mであり、作業者が作業するのに十分な高さであるが、低身長作業者や機体上部の作業を考慮して1/3まで縮め、0.7-0.85mの高さまで下げられるようにしてもよい。
【0126】
(離発着ステーション(その他形状例))
図38(a)(b)は、開放型ステーションと支柱ステーションの構成例を示す。ステーション60は閉鎖的でなくてもよく、開放的なものでもよい。これにより利用者は閉塞感を感じることなく使用することができる。また、ステーションの中に熱がこもるのを防ぐことができる。この場合、ステーション上にある機体のカメラが画角として捉えている範囲を周囲の人に示すために、地面に丸型などの目印を付けてもよい。それにより、この中には利用者以外は入らないよう促すことができる。上面の少なくとも一部に空洞があり、各種機能を備えていてもよい。また、複数の柱でステーションを形成してもよい。これにより風通しが良くなるため、ステーション内に熱がこもらず、利用者の不快感を低減することができる。
【0127】
(機器の折り畳み、離発着ステーションの収納)
図39は、ステーションの折り畳み構成例を示す。本機を使わない時に、フレーム部を折り畳んで収納することができる。その場合、遮蔽部40を取り外すことができる。本機はフレーム部を折り畳んでもよい。また、遮蔽部40も折りたたむことができる。通常の傘のように折り畳むこともできるし、二つ折り、三つ折りのようにして、円形の遮蔽部の場合は扇型になるように折り畳むこともできる。ステーションを開いて、複数のステーションを重ねて収納することができる。ステーションが円柱型の場合、例えば観音開きにすることができる。
図39において、(1)は円柱型ステーションを上から見た図、(2)は観音開きにすることで、複数のステーションを重ねて収納することができることを示す。(3)は観音開きの別パターン、(4)は複数のステーションを重ねて収納するイメージ、(5)は観音開きの別パターンで重ねて収納するイメージを示す。
【0128】
(離発着ステーションの使用方法例)
(利用開始時)
・利用前は、ステーションの上に機体が設置されている状態である。
・利用者は使用する際、ステーションの中に入る。
・機体は利用者がステーションに入ったことを検知する。
・機体が省電力モードだった場合は、省電力モードを解除して離陸できる状態にする。
・機体制御設定パネルがある場合は、離陸指示前に設定を行い、機体に情報を送る。
・利用者又は管理者が利用開始スイッチを押し、ステーションが周囲に離陸を周知した後、離陸を開始する。この際、機体の位置調整はステーション上部のマーキング位置を目安にしてもよいし、利用者の位置を目安にしてもよい。
・一定の高度に達したら、機体またはステーションは利用者に向けて、ステーションの外に出るように促す。上記でステーションのマーキングを位置の目安にしていた場合は、利用者のマーキングがステーションのマーキングの外に出たことで、利用者がステーションから出たと認識し、位置調整の対象を利用者に移行する。
・ステーション周辺の地面にマーキングがある場合、これが検知できている間は、ステーションが近くあると認識し、高度を高いままに維持するが、見えなくなったら、設定された高度に調整する(高度を下げる)。この高度調整は、ステーションのGPS情報をもとに行ってもよい。
【0129】
(使用終了時)
・ステーション周辺の地面にマーキングがある場合やGPS情報がある場合、これが認識されたらステーションが近くあると認識し、高度を高くする(ステーションよりも高い高度にする)。
・利用者はステーションに入る。
・機体は、利用者がステーションの中に入ったことを検知し、位置制御の対象を利用者からステーション上面のマーキングに移行する。
・ステーション上部のマーキングの中心部に機体が来るように位置調整し、ゆっくりと着陸する。機体がいつまでも着陸態勢に入らない場合、機体がうまく利用者がステーションの中に入ったことを検知できていない可能性があるため、外部スイッチを押して外部から着陸支持を行ってもよい。
・着陸したらステーションはその旨を利用者に案内し、利用者は外にでる。
・管理者がバッテリーを交換する場合、ステーションを収縮させ、手の届く位置に機体を配置し、バッテリーを交換し、再度ステーションを伸ばし、又は、ステーションの送電機構から送電して動力源部の充電をする。
【0130】
(離発着ステーションを使わない離発着の例(屋根がある場所))
本例は、例えば、ステーションがない建物から別の建物に移動する場合を想定する。
図40(a)は利用開始の離陸時の例を示し、
図40(b)は利用終了の着陸時の例を示す。
(利用開始の離陸時:
図40(a))
・機体は、日を遮る屋根のある屋外に、地面に直接又は台などの上に置かれている。使用は、例えばスマートフォンで機体に利用開始の指示を出す(外部からの指示)。
・外部からの指示を受けた機体は制御システムを起動し、離陸を開始する。その際、約1m上昇した所で上昇を止め、その場で待機する(1)。
・利用者はスマートフォンで機体が動く方向(屋根の外)への移動を指示し、機体はその指示に従い、屋根の外に出る(2)。
・利用者は、機体が屋根の外に出たことを確認し、機体に所定の高さまで上昇することを指示する(3)。
・機体は、その指示を受け、所定の高さまで上昇する。上昇したら発信部によりその旨を利用者に知らせ、利用者は屋根のある場所から機体の下に移動し、利用を開始する。
【0131】
(利用終了の着陸時:
図40(b))
・利用者は屋根の下に入るが(1)、屋根の高さが、機体が維持する高度よりも高い場合は、そのまま入るが、低い場合は、水平方向に設置された障害物センサから得られる屋根との距離計測結果により、制御部20で衝突回避の判断をし、人への追従を止める(2)。
・その際、利用者はスマートフォンで使用終了の指示を機体に送り、機体は1m程の高度まで落とす(3)。
・利用者はスマートフォンで屋根の方向への移動を指示し、機体は屋根の下に入る(4)。
・利用者はスマートフォンで着陸の指示を出し、機体は着陸する(5)。
【0132】
(離発着ステーションを使わない離発着の例(屋根がない場所))
前記の離発着場に屋根がある場合は、利用者が利用前後にも日なたに出る必要がないように、離陸時と着陸時とで上述した所定の手順を取ったが、屋根の外で離着陸する場合はその限りではない。
【0133】
図41(a)は、屋根がない場所でステーションを使わない場合の、利用開始の離陸時の例を示す。離陸時は、利用者が利用開始の指示を送り、機体は指定の高度まで浮き(1)、自動で利用者の真上に移動する(2)。
【0134】
図41(b)は同上の場合の利用終了の着陸時の例を示す。着陸時は、最初に利用者が使用終了の指示を機体に送り、機体が追従を止めたところで、利用者は機体の真下から外れる(1)。その後、機体は、その真下に人がいないことを自動で判断し(又は利用者が着陸指示を送り)、着陸する(2)。
【0135】
(補足説明)
本発明の各種実施形態と上記特許文献1との相違点を補足する。特許文献1は、傘部を空中移動させる機構が示されているが、この傘の構造では、クワッドコプターのプロペラが浮遊力を得るために発生させた下向きの風が傘部に当たるため、自らが発生させた浮遊力と同等の力を自らが沈む方向に受けており、安定飛行はほぼ不可能である。
【0136】
特許文献2は、日傘として動作するシステムであるが、太陽を検知するセンサがなく、太陽と人の間に入る制御もなく、太陽が傾いている時は日陰を提供できない。また、浮遊力を得るために発生させた下向きの風が傘に当たり、安定飛行は不可能である。
【0137】
特許文献3では、周囲の障害物を検知するセンサや障害物をよける制御はないため、衝突をさけて安定飛行を続けることはできない。また、浮遊力を得るために発生させた下向きの風が傘に当たり、安定飛行は不可能である。
【0138】
特許文献4は、雨を検知して傘が開く自立移動飛行体であり、機体の中心部に傘はなく、中心に隙間があるので、人の頭を雨から防ぐことはできない。
【0139】
特許文献5は、車にUAVが搭載され、車に乗り降りする際に稼働され、飛行中に傘を開くものであり、傘が開いているときに、浮遊力を得るためにプロペラが発生させた下向きの風が傘に当たり、安定飛行は不可能である。
【0140】
特許文献6は、被遮光体の位置と距離を計測し、浮遊体が所定距離位置に近づくように制御しているが、被遮光体と太陽の両方の位置を計測しておらず、被遮光体と太陽の間に入る制御は成されていない。
【符号の説明】
【0141】
100 空中移動システム
101 太陽
102 人(対象物、利用者)
10 空中移動体(本機又は機体)
11 フレーム部
12 網状のカバー(衝撃緩和機構)
20 制御部
20S 動力源部
21 制御本体部(位置方向特定手段、高度設定手段)
22 姿勢制御部
23 受信部
24 発信部
25 送信部
26 外部制御部
27 受信部
30 浮遊力発生源
31 モータ部
32 プロペラ部
40 遮蔽部(傘)
41 範囲拡張部
42 重量物
43 中間部材
44 配線
45 フック
50 各種センサ
51 センサ(人検知センサ)
52 センサ(太陽検知センサ)
55 棒
56 ジンバル又はサーボモータ
57a,57b GPS受信器
58 高度センサ
59 障害物検知センサ
60 ステーション
61 出入口
S 斜線部(太陽)
M1 グレー枠(対象物(人))
M2 黒枠(太陽と対角位置)