(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017665
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】犬用ガムの製造方法
(51)【国際特許分類】
A23K 50/42 20160101AFI20240201BHJP
A23K 10/26 20160101ALI20240201BHJP
【FI】
A23K50/42
A23K10/26
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120468
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】522302323
【氏名又は名称】前田 茂寿
(74)【代理人】
【識別番号】100125645
【弁理士】
【氏名又は名称】是枝 洋介
(74)【代理人】
【識別番号】100145609
【弁理士】
【氏名又は名称】楠屋 宏行
(74)【代理人】
【識別番号】100149490
【弁理士】
【氏名又は名称】羽柴 拓司
(72)【発明者】
【氏名】前田 茂寿
【テーマコード(参考)】
2B005
2B150
【Fターム(参考)】
2B005AA02
2B150AA06
2B150AE09
2B150AE25
2B150AE26
2B150BA01
2B150BA02
2B150BD01
2B150BD06
2B150BE02
2B150BE04
2B150BE10
2B150CD04
(57)【要約】
【課題】犬が噛み切って飲み込むことが可能であると共に、コラーゲンの吸収も可能であり、且つ製造容易で長期保存も可能な犬用ガムの製造方法の提供を課題とする。
【解決手段】牛皮30に対して洗浄、漂白を行う洗浄漂白工程Aと、牛皮30を湯の中で加熱する加熱工程Bと、牛皮30に対してグリセリンを添加するグリセリン添加工程Cと、グリセリン添加工程Cの前後に、牛皮30を所定の大きさに裁断する裁断工程Dと、グリセリン添加工程Cと裁断工程Dとが完了した後の牛皮30を乾燥させる乾燥工程Eと、を少なくとも備え、加熱工程Bにおいては、80度以上の温度の湯の中で2分~10分程度の時間をかけて牛皮30を加熱し、グリセリン添加工程Cにおいては、牛皮30の100重量部に対してグリセリンを20重量部~30重量部添加し、乾燥工程Eおいては、乾燥後の牛皮30の水分量が30%以下となるように乾燥を行う犬用ガムの製造方法である。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
毛抜きや皮下脂の除去等の前処理を行った表皮を有する牛皮に対して洗浄、漂白を行う洗浄漂白工程と、前記洗浄漂白工程後の牛皮を湯の中で加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の牛皮に対してグリセリンを添加するグリセリン添加工程と、前記グリセリン添加工程の前後に、牛皮を所定の大きさに裁断する裁断工程と、前記グリセリン添加工程と前記裁断工程とが完了した後の牛皮を乾燥させる乾燥工程と、を少なくとも備え、前記加熱工程においては、80度以上の温度の湯の中で2分~10分程度の時間をかけて牛皮を加熱し、前記グリセリン添加工程においては、牛皮100重量部に対してグリセリンを20重量部~30重量部添加し、前記乾燥工程おいては、乾燥後の牛皮の水分量が30%以下となるように乾燥を行うことを特徴とする犬用ガムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、犬が噛み切って飲み込むことが可能な犬用ガムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、犬の歯磨き用やストレス解消用、顎の鍛錬用などとして、多数の犬用ガムが開発されている。このような犬用ガムを示す従来技術として、例えば、下記特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記特許文献1は、牛皮を使用した犬用ガムに関する発明で、うまみに溢れ、容易に製造可能な犬用ガムを提供できるというメリットがある。
しかしながら、上記特許文献1に示すような従来の牛皮を使用した犬用ガムにおいては、床皮を粉砕、混合、成型、乾燥、裁断等して製造するものが一般的であったことから、製造工程が複雑で製造コストがかかると共に、製造される犬用ガムが硬く、犬が噛み切って飲み込むことができないという問題があった。
【0005】
そこで、本発明は上記従来における問題点を解決し、犬が噛み切って飲み込むことが可能であると共に、コラーゲンの吸収も可能であり、且つ製造容易で長期保存も可能な犬用ガムの製造方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を達成するため、本発明の犬用ガムの製造方法は、毛抜きや皮下脂の除去等の前処理を行った表皮を有する牛皮に対して洗浄、漂白を行う洗浄漂白工程と、前記洗浄漂白工程後の牛皮を湯の中で加熱する加熱工程と、前記加熱工程後の牛皮に対してグリセリンを添加するグリセリン添加工程と、前記グリセリン添加工程の前後に、牛皮を所定の大きさに裁断する裁断工程と、前記グリセリン添加工程と前記裁断工程とが完了した後の牛皮を乾燥させる乾燥工程と、を少なくとも備え、前記加熱工程においては、80度以上の温度の湯の中で2分~10分程度の時間をかけて牛皮を加熱し、前記グリセリン添加工程においては、牛皮100重量部に対してグリセリンを20重量部~30重量部添加し、前記乾燥工程おいては、乾燥後の牛皮の水分量が30%以下となるように乾燥を行うことを第1の特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記第1の特徴による犬用ガムの製造方法によれば、洗浄漂白工程により牛皮の汚れを除去すると共に、牛皮を適切に漂白することができる。また、加熱工程を備えることで、牛皮に含まれる水分を適度に減らした状態でタンパク質を分解させてゼリー状にすることができると共に、大腸菌などの菌を死滅させることができる。また、加熱工程後にグリセリン添加工程を備えることで、犬が噛み切って飲み込むことができる程度に牛皮に保水力を持たせて柔らかい状態を維持させることができる。また、グリセリン添加工程の前後に裁断工程を備えることで、牛皮を適切な大きさ、形状にカットした状態で揃えることができる。更に、乾燥工程を備えることで、完成後の犬用ガムに含まれる水分量を腐食しない程度の水分量に調整することができる。
以上の各工程を備えることで、犬が噛み切って飲み込むことが可能であると共に、コラーゲンの吸収も可能であり、且つ長期保存可能な犬用ガムを製造することができる。また、牛皮を粉砕、混合、成型する工程が不要であることで、製造容易で製造コストの省コスト化が実現可能な犬用ガムの製造方法とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法で製造される犬用ガムを示す全体斜視図である。
【
図2】本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法の製造工程を示す図で、(a)は原材料となる牛皮を示す全体斜視図、(b)は製造工程のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、各図面を参照して、本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法を説明し、本発明の理解に供する。しかし、以下の説明は特許請求の範囲に記載の本発明を限定するものではない。
【0010】
本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法は、犬が噛み切って飲み込むことが可能であると共に、コラーゲンの吸収も可能で、且つ長期保存も可能な犬用ガムの製造方法である。
【0011】
まず
図1を参照して、本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法において製造される犬用ガム1を説明する。
図1に示すように、本発明の実施形態に係る犬用ガムの製造方法において製造される犬用ガム1は、所定の厚みを備えると共に、細長い直方体形状をなす犬用ガムである。
またこの犬用ガム1は、牛の表皮10と牛の真皮20とを備えたいわゆる牛の本皮で構成されるものである。
なお、犬用ガム1の厚みは3mm~10mm程度とすることが望ましい。また、犬用ガム1の長手方向の長さは15cm~18cm程度、短手方向の長さは8mm~1cm程度とすることが望ましい。
また、犬用ガム1の形状は、直方体形状に限るものではなく、例えば、細長い円柱形状など、他の形状としてもよい。
【0012】
次に
図2を参照して、本発明の実施形態に係る犬用ガム1の製造方法を説明する。
この犬用ガム1の製造方法は
図2(b)に示すように、洗浄漂白工程Aと、加熱工程Bと、裁断工程Cと、グリセリン添加工程Dと、乾燥工程Eとを少なくとも備える。
【0013】
前記洗浄漂白工程Aは、
図2(a)に示すように、石灰漬け毛抜き工程や皮下脂の除去工程(いわゆるフレッシング工程)などの前処理工程が完了した原材料となる牛皮30を洗浄し、漂白するための工程である。
具体的には、まずドラムの中に牛皮30と水を入れてドラムを回転させて水洗いを行う。これにより、牛皮30に付着しているゴミや汚れの除去を行う。
その後、ドラムの中に牛皮30の量に合わせた水と粉末状の塩化アンモニウムとを所定量加えた状態でドラムを回転させて洗浄を行う。これにより、前処理後のアルカリ性で膨潤した牛皮30を中和し、牛皮30に結合或いは沈着しているカルシウムを可溶化して溶出除去させて牛皮30を元の状態に戻すことが可能となる。なお、加える塩化アンモニウムの量は、牛皮30の100重量部に対して2重量部~3重量部程度とすることが望ましい。
その後、牛皮30が入ったドラムの中に所定量の水を入れてドラムを回転させて水洗いを行う。
【0014】
その後、ドラムの中に、牛皮30の量に合わせた液状の脱脂剤、液状の過酸化水素、粉末状の苛性ソーダを所定量入れてPHを10~12まで上げてアルカリ質にした状態でドラムを回転させて牛皮30の漂白を行う。なお、加える過酸化水素の量は、牛皮30の100重量部に対して1.5重量部~3重量部程度とすることが望ましい。
その後、余分な薬品を除去するためにドラムの中に所定量の水を入れてドラムを回転させて牛皮30の水洗いを行う。
その後、ドラムの中に所定量の液状の硫酸を入れてドラムを回転させて水素を抜いてPHを中性にする。
その後、所定量の液状のカタラーゼをドラムの中に入れてドラムを回転させて過酸化水素を無害化させる。
その後、所定量の水をドラムの中に入れて水洗いを行う。
以上により、洗浄・漂白工程Bが終了となり、牛皮30が洗浄、漂白される。
【0015】
次に、前記加熱工程Bは、洗浄漂白工程Aを経た牛皮30に対して、牛皮30に含まれる水分を適度に減らした状態で繊維状のタンパク質を分解させてゼリー状にすると共に、大腸菌などの菌を確実に死滅させるための工程である。
具体的には、洗浄漂白工程Aを終えてドラムから取り出した牛皮30を所定の容器に入れた後、容器に湯を入れて80度以上の温度で加熱する。なお、加熱時間は、2分~3分程度とすることが望ましい。2分未満だと牛皮30のタンパク質が効果的に分解できず、3分を越えると牛皮30がゼラチン化して柔らかくなり過ぎる為である。
以上により、加熱工程Bが終了となり、適度な柔らかさを備えた牛皮30となる。
【0016】
次に、前記裁断工程Cは、適度な柔らかさを備えた牛皮30を所定の形状、大きさに切り揃えるための工程である。
具体的には、加熱工程Bを終えた牛皮30を裁断機により所定の形状、大きさにカットする。本実施形態においては、
図1に示すように、長手方向の長さが15cm~18cm程度、短手方向の長さが8mm~1cm程度の複数の細長い直方体形状にカットする。
以上により、牛皮30が所定の形状、大きさに切り揃えられる。
【0017】
次に、前記グリセリン添加工程Dは、加熱工程Bによって水分が抜けた牛皮30に対して、牛皮30が乾いた後でも柔らかい状態を維持できるように牛皮30に保水力を与えるための工程である。
具体的には、所定量のグリセリンを入れた容器の中に裁断工程Cを終えた牛皮30を入れて所定時間浸す。
なお、グリセリンの量は、牛皮30の100重量部に対して20重量部~30重量部とすることが望ましい。20重量部未満であると牛皮30に十分な保水力を与えることができず、30重量部を越えるとグリセリンが牛皮30に吸収されないからである。
以上により、牛皮30にグリセリンが吸収されて保水力が与えられる。
【0018】
次に、乾燥工程Eは、牛皮30から余分な水分を放出させるための工程である。
具体的には、グリセリン添加工程Dを終えた牛皮30を、水分含有量が30%以下となるまで自然乾燥させる。水分含有量が30%を超えると完成した犬用ガムに腐食が発生する為である。
勿論、乾燥工程Eとして、自然乾燥ではなく、乾燥機などの機械を用いて牛皮30を乾燥させる方法を用いてもよい。
以上により、牛皮30が目的の水分含有量となり、犬用ガムが完成となる。
【0019】
このような構成からなる犬用ガムの製造方法は、以下の効果を奏する。
【0020】
洗浄漂白工程Aを備えることで、牛皮30の汚れを除去すると共に、牛皮30を適切に漂白することができる。
また、加熱工程Bを備えることで、牛皮30に含まれる水分を適度に減らした状態でタンパク質を分解させてゼリー状にすることができると共に、大腸菌などの菌を確実に死滅させることができる。
また、加熱工程B後に裁断工程Cを備えることで、ある程度水分が抜けた状態にある牛皮30を裁断することができ、十分に水分を含んだ状態にある牛皮30を裁断する場合に比べて裁断し易く、作業効率を向上させることができる。加えて、牛皮30を適切な大きさ、形状にカットした状態で揃えることができる。
また、グリセリン添加工程Dを備えることで、犬用ガム1が完成して乾燥した状態となった後でも、犬が噛み切って飲み込むことができる程度に牛皮30に保水力を持たせて柔らかい状態を維持させることができる。
また、乾燥工程Eを備えることで、完成後の犬用ガムに含まれる水分量を腐食しない程度の水分量に調整することができる。
【0021】
更に、以上の洗浄漂白工程Aと、加熱工程Bと、裁断工程Cと、グリセリン添加工程Dと、乾燥工程Eの全てを備えることで、犬が噛み切って飲み込むことができると共に、コラーゲンの吸収も可能であり、且つ長期保存も可能な犬用ガム1の製造方法を実現することができる。
また、牛皮30を粉砕し、混合し、成型するなど、従来の一般的な犬用ガムの製造工程において存在していた工程などが不要であることで、製造容易で製造コストの省コスト化が実現可能な犬用ガム1の製造方法とすることができる。
【0022】
なお、本実施形態においては、グリセリン添加工程Dの前に裁断工程Cを行う構成としたが、必ずしもこのような構成に限るものではなく、グリセリン添加工程Dの後に裁断工程Cを行う構成としてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明によれば、犬が噛み切って飲み込むことが可能であると共に、コラーゲンの吸収も可能であり、且つ長期保存も可能な犬用ガムを製造することができることから、犬用ガムの製造方法の分野における産業上の利用性が高い。
【符号の説明】
【0024】
1 犬用ガム
10 表皮
20 真皮
30 牛皮
A 洗浄漂白工程
B 加熱工程
C 裁断工程
D グリセリン添加工程
E 乾燥工程