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特開2024-1766553次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176655
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法
(51)【国際特許分類】
   G09B 29/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G09B29/00 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095379
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002299
【氏名又は名称】清水建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】生富 直孝
【テーマコード(参考)】
2C032
【Fターム(参考)】
2C032HB12
2C032HB22
2C032HC08
(57)【要約】
【課題】都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減可能な3次元地図更新システムを提供する。
【解決手段】対象空間を表す3次元モデルに基づいて、点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成手段10と、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両22が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成手段12と、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出手段14と、前記差分検出手段14による検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新手段16とを備え、前記点群地図作成手段10は、前記更新手段16により更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成するようにする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新システムであって、
前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成手段と、
前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成手段と、
前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出手段と、
前記差分検出手段による検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新手段とを備え、
前記点群地図作成手段は、前記更新手段により更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成することを特徴とする3次元地図更新システム。
【請求項2】
対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新方法であって、
前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成ステップと、
前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成ステップと、
前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出ステップと、
前記差分検出ステップによる検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新ステップとを有し、
前記点群地図作成ステップは、前記更新ステップにより更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成することを特徴とする3次元地図更新方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空間の点群データを活用した3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、自動運転車両の関連技術として、様々な自己位置推定技術の開発が進められている。特に、一般道での自動運転走行を安定させるためには、GPSやカメラのみによる自己位置推定では、センサの特性上、都心部などで所定の精度を確保するのが難しいため、LiDAR(Light Detection and Ranging)センサの照射点群と、空間を点群データ化した地図(以下、点群地図という。)をマッチングさせて自己位置推定を行うのがよいとされている。
【0003】
点群地図を作成する従来の方法として、専用の計測車両を使用する方法が知られている。しかし、この方法は、運用コストが高いため、データの更新頻度を高めることが難しい。また、建物の形状を表す3D(3次元)データを点群と地図に変換する方法もあるが、基となる3Dデータが現実空間と同期されている必要があり、建設工事中のエリア等、完成していない建物が存在する場合は適用が難しい。さらに工事中のエリアは工事の進捗によって空間構成が常に変化していくため、上記の点群地図作成方法ではデータの更新頻度が追い付かず、自己位置推定が機能しなくなってしまう可能性がある。
【0004】
一方、空間の点群データの密度から平面を検出して、建物の内装を含む空間の3次元図面を自動的に作成する技術が知られている(例えば、特許文献1を参照)。この技術は、(1)オフィス空間の図面化に特化または限定されている、(2)毎回新規データを作成するため、状態の変化を捉えるものではない、(3)図面化の度に全空間を計算する、といった特徴がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-101927号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の特許文献1に示される技術は、対象空間や計算コストの面から、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの定期的な更新メンテナンスに使用することが難しい。このため、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減可能な技術が求められていた。
【0007】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減可能な3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記した課題を解決し、目的を達成するために、本発明に係る3次元地図更新システムは、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新システムであって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成手段と、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成手段と、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段による検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新手段とを備え、前記点群地図作成手段は、前記更新手段により更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成することを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係る3次元地図更新方法は、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新方法であって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成ステップと、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成ステップと、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出ステップと、前記差分検出ステップによる検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新ステップとを有し、前記点群地図作成ステップは、前記更新ステップにより更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る3次元地図更新システムによれば、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新システムであって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成手段と、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成手段と、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段による検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新手段とを備え、前記点群地図作成手段は、前記更新手段により更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成するので、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減することができるという効果を奏する。
【0011】
また、本発明に係る3次元地図更新方法によれば、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新方法であって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成ステップと、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成ステップと、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出ステップと、前記差分検出ステップによる検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新ステップとを有し、前記点群地図作成ステップは、前記更新ステップにより更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成するので、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本発明に係る3次元地図更新システムの実施の形態を示す概略構成図である。
図2図2は、本発明に係る3次元地図更新方法の実施の形態を示す概略手順図である。
図3図3は、点群の差分検出の説明図である。
図4図4は、新設パターンと誤認識する例を示す図である。
図5図5は、3Dモデル化の第1ステップの説明図である。
図6図6は、3Dモデル化の第2ステップの説明図である。
図7図7は、幾何学モデル照合の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明に係る3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0014】
図1に示すように、本発明の実施の形態に係る3次元地図更新システム100は、ある地域の都市レベルの空間S(対象空間)の地形を表した3次元地図を更新するシステムであって、点群地図作成手段10と、ログ点群地図生成手段12と、差分検出手段14と、更新手段16と、記憶手段18と、これらを制御する制御手段20とを備えたコンピュータを含んで構成される。3次元地図は、3次元地形を3次元の点群データで表した地図(点群地図)である。図2に、3次元地図更新システム100を用いた地図更新方法の概略処理手順を示す。
【0015】
点群地図作成手段10は、空間Sの3次元形状を表す3Dモデル(3次元モデル)に基づいて、作成点群地図(点群地図)を作成するものである。また、点群地図作成手段10は、後述する更新手段16により更新された3Dモデルに基づいて、作成点群地図を作成する。3Dモデルは、3次元形状をCADデータなどでポリゴン化したモデルであり、予め作成して記憶手段18に登録されているものとする。作成点群地図の生成には、例えば、3Dモデルを構成するデータを、点群データに変換する方法を用いることができる。作成した作成点群地図は、記憶手段18に登録されるとともに、後述する自動運転車両22に搭載される。
【0016】
ログ点群地図生成手段12は、作成点群地図に基づいて自動運転車両22が空間S内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、ログデータに基づいてログ点群地図(点群地図)を生成するものである。ログデータは、現実の空間S内を走行した際に取得される点群データを含んで構成される。生成したログ点群地図は、記憶手段18に登録される。
【0017】
自動運転車両22は、自律走行運転が可能な車両であり、レーザセンサ24、衛星測位センサ26、走行制御装置28などを備える。自動運転車両22は、周囲の画像を取得するカメラなどの撮像装置を備えてもよい。
【0018】
レーザセンサ24は、周囲にレーザを発して周囲の物体から反射されたレーザを検知することで、レーザが反射された物体の位置を示す点群データ(3次元座標)を取得する。取得した点群データはログデータとして走行制御装置28に送られる。レーザセンサ24には、水平方向および垂直方向の所定の角度範囲内にレーザを照射して点群データを高精度に取得するLiDARを用いる。LiDARで点群データを取得することにより、自動運転車両22の周囲の地形の3次元形状を検出することができる。
【0019】
衛星測位センサ26は、GPS等の衛星電波を用いて自動運転車両22の自己位置を計測する。計測した自己位置のデータはログデータとして走行制御装置28に送られる。自己位置を高精度に計測するために、空間Sを走行する際にレーザセンサ24により新たに得られた点群データと、作成点群地図とのスキャンマッチングによる結果に基づいて、計測した自己位置を補正してもよい。
【0020】
走行制御装置28は、コンピュータにより構成され、走行経路設定部30、記憶部32、制御部34などを備える。走行経路設定部30は、自動運転車両22が自律走行する経路を設定する部分である。経路は、記憶部32に記憶された作成点群地図における走行可能領域に基づいて設定される。走行可能領域は、車両が走行可能な道路などの領域である。記憶部32は、作成点群地図などの地図データ、自律走行運転に必要なデータ、レーザセンサ24、衛星測位センサ26などで取得したデータ(ログデータ)を記憶する。制御部34は、走行経路設定部30で設定された経路に基づいて、自動運転車両22の進行方向や速度を制御する。これにより、自動運転車両22は、設定された経路に沿って空間S内を走行可能である。走行中はログデータを取得して記憶部32に記憶する。記憶部32に記憶されたログデータ等は、制御手段20を介して記憶手段18に格納される。なお、走行制御装置28は、自動運転車両22に搭載しない代わりに、遠隔の管理室のサーバ等に搭載し、サーバ等からネットワーク回線を介して自動運転車両22の動作を制御してもよい。
【0021】
差分検出手段14は、記憶手段18に記憶された作成点群地図とログ点群地図を比較して、その差分を検出するものである。具体的には、作成点群地図には存在して、実際の空間Sには存在しないもの(以下、除却パターンという。)や、作成点群地図には存在しないが、実際の空間Sには存在するもの(以下、新設パターンという。)を抽出するために、点群地図を重ね合わせて差分を検出する。除却パターンの例としては、解体による建物・仮設物の除却、樹木の剪定等が挙げられる。新設パターンの例としては、新設建物、工事区画等が挙げられる。
【0022】
除却パターンの場合は、図3(1)に示すように、作成点群地図を基準としてログ点群地図を重ね合わせる。その際に、図3(2)、(3)に示すように、作成点群地図の各点からログ点群地図の各点への最短距離を算出し作成点群地図の各点に値を持たせる。また、新設パターンの場合は、除却パターンとは逆にログ点群地図を基準として作成点群地図を重ね合わせて差分を検出する。
【0023】
更新手段16は、差分検出手段14による検出結果に基づいて、3Dモデルを更新するものである。この更新手段は、地図更新の必要性判定部36と、点群データの3Dモデル化部38を有する。これらについて、以下に説明する。
【0024】
地図更新の必要性判定部36は、差分検出手段14によって差分検出を行った際の最短距離の値を基に、地図更新の必要性判定を行うものである。基本の判定基準としては、算出した最短距離の値が大きいものを更新対象とする。例えば、最短距離の値が0.4m以上といった閾値を設定して判定を行う。この際、図2のように最終的に3Dモデルにフィードバックする都合上、建物1棟、植栽1本等、ポリゴンデータの単位に揃えて地図更新の要否の判定を実施することが望ましい。ポリゴンデータの単位ではなく、各点の閾値のみを判定基準とした場合、図3のように建物の高層部分のようなログ点群地図で捉えられない範囲は、全て地図から削除する対象になってしまい、基の3Dモデルが現実とは違う形状になってしまう可能性がある。また、新設パターンと誤認識してしまうパターンとしては、車線上に存在する車両や路肩に駐停車している車両といった一時的な障害物がログ点群地図に存在するパターンが挙げられる。図4の例では、車両を新築建物と誤認識してしまうおそれがある。したがって、地図更新の判定を正しく行うためには、点群地図へ属性を付加してポリゴンデータの単位で点群をクラスタリングする必要がある。
【0025】
作成点群地図に属性を付与する方法としては、基となる3Dデータの属性を継承することが考えられる。これは、建物3Dモデルを点群化する場合に各点に1対1対応する情報を格納したテキストファイルを作成しておく手法や、点群自体が持つ色情報に属性を意味づけする手法によって実現することができる。
【0026】
ログ点群地図に属性を付与する方法としては、隣接点群間の距離を閾値として幾何学的なクラスタリングを行い、クラスタリング結果の点群形状から属性を推定する手法を用いることができる。例えば、複数の車両形状(セダン、SUV、トラック等)の点群パターンを検証データとして事前に作成しておく。その後、ログ点群地図のクラスタリング結果と検証データを比較して、合致率から最適な属性を付与してもよい。
【0027】
また、必要に応じて画像データによる物体検出技術(例えば、YOLOなど)によって得られた属性情報を付与してもよい。その場合は、更新対象の候補になる地物の画像が必要になるため、自動運転車両22に搭載されているカメラ(センシング用、ドライブレコーダ用など)や、街路や敷地の監視カメラの情報を利用することができる。
【0028】
点群データの3Dモデル化部38は、地図更新の必要性判定部36による判定の結果、基となる3Dモデルに追加するべき地物があると判定された場合に、検出した点群データの差分を3Dモデル化する処理を行うものである。点群データの差分を3Dモデル化する作業は、次の2つのステップ(第1、第2ステップ)で行うことができる。
【0029】
まず、第1ステップでは、図5に示すように、追加が必要な地物から差分検出された点群データをメッシュ化し、3Dモデル(厳密にはメッシュ(ポリゴン))に変換する。変換には、例えば、Ball pivoting AlgorithmやPoisson surface reconstructionといった既知の技術を利用することができる。ここで、精緻な3Dモデルが生成された場合は、追加地物用の3Dモデルとして採用する。しかしながら、前述の変換技術を適用しただけではメッシュに欠落などが発生し、不完全な3Dモデルが生成される場合がある。このような場合には、次の第2ステップへ処理を進める。
【0030】
次の第2ステップでは、図6に示すように、第1ステップで生成された不完全な3Dモデルを幾何学モデルリストと照合し、幾何的な補正3Dモデルによって補完する。幾何学モデルリストは、システム上に保存された球、円錐、円柱などといった幾何学的な3Dモデル(幾何学モデル)のデータセットである。補正3Dモデルは、図7に示すように、不完全な3Dモデルを鉛直方向に見たときの最大半径の変化量が閾値より大きい箇所を断面として複数ブロックに分割し、各ブロックに対して形状が近しい幾何学モデルを選択して合成した3Dモデルである。
【0031】
最大半径の変化量の閾値の定め方については、より精緻に3Dモデルを生成するためには閾値を小さい値に設定すればよい。閾値の上限は点群地図に要求される精度によって異なるが、基本的には点群データとして活用する場合に要求される精度と同程度であればよい。例えば、ある自動運転システムで自己位置の推定を行うために使われる点群データは、専用車両から得られた点群スキャンデータをダウンサンプリングしたものを使用している。その際に水平方向におよそ30cm間隔になるように点群を間引くので閾値も30cmとするといった決め方をしてもよい。
【0032】
このようにして3Dモデル化した点群データの差分は、基となる3Dモデルに追加される。これにより、3Dモデルは更新される。更新された3Dモデルは記憶手段18に登録される。
【0033】
記憶手段18は、更新前後の3Dモデル、作成点群地図、ログ点群地図などの各種データや、自動運転車両22で取得したデータなどを記憶するものである。
【0034】
上記構成の動作および作用について説明する。
図2に示すように、空間Sの3Dモデルから作成した作成点群地図を利用して自動運転車両22による自動走行を実施し、その時のログデータからログ点群地図を生成する。ログ点群地図と作成点群地図の差分を検出し、この検出結果に基づいてフィードバックを行い、3Dモデルを更新する。
【0035】
このように、都市レベルの空間Sの経時的な変化を日々の走行中に抽出して3Dモデルを更新することにより、3Dモデルの定期的な管理・メンテナンスを効率的に行うことができる。この3Dモデルから作成点群地図を作成することで、現実の空間Sを常に再現した地図環境を整備することができる。
【0036】
本実施の形態によれば、専用車両ではなく実際に走行している車両のログデータを使用するので、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかる計測作業コストを低減することができる。また、高頻度な環境変化に対応可能であることから、メンテナンス性が向上する。行政当局が地図更新を実施するのを待たずに現況を再現した地図に更新することができる。
【0037】
以上説明したように、本発明に係る3次元地図更新システムによれば、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新システムであって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成手段と、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成手段と、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出手段と、前記差分検出手段による検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新手段とを備え、前記点群地図作成手段は、前記更新手段により更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成するので、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減することができる。
【0038】
また、本発明に係る3次元地図更新方法によれば、対象空間の3次元地形を3次元の点群で表した点群地図である3次元地図を更新する3次元地図更新方法であって、前記対象空間を表す3次元モデルに基づいて、前記点群地図である作成点群地図を作成する点群地図作成ステップと、前記作成点群地図に基づいて自動運転車両が前記対象空間内の走行可能領域を走行した際のログデータを取得し、前記ログデータに基づいて前記点群地図であるログ点群地図を生成するログ点群地図生成ステップと、前記作成点群地図と前記ログ点群地図を比較して、その差分を検出する差分検出ステップと、前記差分検出ステップによる検出結果に基づいて、前記3次元モデルを更新する更新ステップとを有し、前記点群地図作成ステップは、前記更新ステップにより更新された前記3次元モデルに基づいて、前記作成点群地図を作成するので、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減することができる。
【0039】
なお、2015年9月の国連サミットにおいて採択された17の国際目標として「持続可能な開発目標(Sustainable Development Goals:SDGs)」がある。本実施の形態に係る3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法は、このSDGsの17の目標のうち、例えば「11.住み続けられるまちづくりを」の目標などの達成に貢献し得る。
【産業上の利用可能性】
【0040】
以上のように、本発明に係る3次元地図更新システムおよび3次元地図更新方法は、自動運転車両などに搭載される3次元地図の更新に有用であり、特に、都市レベルの空間に対応する3次元地図データの更新にかかるコストを低減するのに適している。
【符号の説明】
【0041】
10 点群地図作成手段
12 ログ点群地図生成手段
14 差分検出手段
16 更新手段
18 記憶手段
20 制御手段
22 自動運転車両
24 レーザセンサ
26 衛星測位センサ
28 走行制御装置
30 走行経路設定部
32 記憶部
34 制御部
36 地図更新の必要性判定部
38 点群データの3Dモデル化部
100 3次元地図更新システム
S 空間(対象空間)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7