(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176661
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両のインストルメントパネル
(51)【国際特許分類】
B60K 37/20 20240101AFI20241212BHJP
【FI】
B60K37/00 G
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095387
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000003218
【氏名又は名称】株式会社豊田自動織機
(74)【代理人】
【識別番号】110000947
【氏名又は名称】弁理士法人あーく事務所
(72)【発明者】
【氏名】柳 象斌
(72)【発明者】
【氏名】メスキタ ダ シルバ マテウス
(72)【発明者】
【氏名】北村 景丸
(72)【発明者】
【氏名】加藤 充洋
(72)【発明者】
【氏名】國方 亮
(72)【発明者】
【氏名】望月 大嗣
【テーマコード(参考)】
3D344
【Fターム(参考)】
3D344AA08
3D344AB01
3D344AC02
3D344AC13
3D344AD13
(57)【要約】
【課題】インストルメントパネルの内部への液体の滴下を抑制することができる車両のインストルメントパネルを提供する。
【解決手段】インストルメントパネル1に、当該インストルメントパネル1の開口12の位置に対して車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に延在する溝15と、該溝15に液体が流れ込み該液体が当該溝15から溢れた場合に、当該液体の開口12に向かう流れを規制する第1段差部16および第2段差部17とを備えさせる。これにより、インストルメントパネル1の内部に液体が滴下するといったことが抑制されるため、遮液板や防滴シートを配設する必要なしに、開口12の下方に配設されている対象部品に液体が滴下してしまうといったことを抑制できる。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のインストルメントパネルにおいて、
当該インストルメントパネルに設けられている開口の位置に対して少なくとも車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に延在する溝と、
前記溝に液体が流れ込み該液体が当該溝から溢れた場合に、当該液体の前記開口に向かう流れを規制する規制部と、
を備えていることを特徴とする車両のインストルメントパネル。
【請求項2】
請求項1記載の車両のインストルメントパネルにおいて、
前記溝の下側には、当該溝から溢れた前記液体を車幅方向に対して交差する方向に案内するように傾斜した液体案内部が設けられており、
前記規制部は、前記液体案内部における前記開口寄りの位置に連続し且つ上方に延在することにより前記液体案内部を流れる前記液体の前記開口に向かう流れを規制する第1段差部を含んで構成されていることを特徴とする車両のインストルメントパネル。
【請求項3】
請求項1または2記載の車両のインストルメントパネルにおいて、
前記規制部は、前記開口の縁部から上方に延在することにより当該インストルメントパネルの上面を流れる前記液体の前記開口に向かう流れを規制する第2段差部を含んで構成されていることを特徴とする車両のインストルメントパネル。
【請求項4】
請求項1または2記載の車両のインストルメントパネルにおいて、
当該インストルメントパネルは、インストルメントパネル本体と、該インストルメントパネル本体の上側に組み付けられたインストルメントパネルカバーとを備えており、
前記開口は、前記インストルメントパネル本体に形成されており、
前記溝は、前記インストルメントパネルカバーに一体成形されており、
前記規制部は、前記インストルメントパネル本体に一体成形されていることを特徴とする車両のインストルメントパネル。
【請求項5】
請求項1または2記載の車両のインストルメントパネルにおいて、
前記開口はスピーカが嵌め込まれて取り付けられるスピーカ取付開口であることを特徴とする車両のインストルメントパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は車両のインストルメントパネルに係る。特に、本発明は、インストルメントパネル上で液体を零してしまった場合に当該インストルメントパネルの内部への液体の滴下を抑制するための対策に関する。尚、一般に、狭義のインストルメントパネルは、運転席の前方の計器ユニットを意味するが、本明細書におけるインストルメントパネルは、車両のキャビンの前部にて車幅方向の一端から他端までの間に配置されている部品(ダッシュボードと呼ばれる部分も含む)を意味するもの(広義のインストルメントパネル)とする。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば特許文献1に開示されているように、車両のインストルメントパネルの内部には、車両に搭載された各種電装部品に給電を行ったり制御信号を送信したりするためのワイヤハーネスや該ワイヤハーネスが接続されるワイヤハーネスコネクタ(以下、単にコネクタと呼ぶ)が配設されている。特許文献1には、上下に2分割した上部インストルメントパネル部と下部インストルメントパネル部との間にワイヤハーネスを配設した構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一般にインストルメントパネルには、スピーカを取り付けるための開口等といった種々の開口が設けられている。前述した如くインストルメントパネルの内部にはワイヤハーネスやコネクタ(以下、これらを対象部品と呼ぶ場合もある)が配設されているため、前記開口の下方にも対象部品が配設される場合がある。
【0005】
このような構成において、乗員がインストルメントパネル上で液体を零してしまった場合(例えば水の入ったコップやペットボトルを倒してしまった場合)、この液体がインストルメントパネルの上面を流れることになる。この液体はインストルメントパネルの上面の傾斜に沿って流れることになり、その傾斜の途中に前記開口が存在する場合、この液体が開口に流れ込み、該開口を通って対象部品に滴下してしまう虞がある。このため、対象部品に対する被液防止対策が求められている。尚、被液防止対策が求められる対象部品としては前述したワイヤハーネスやコネクタに限定されるものではなく、被液によって不具合を生じる可能性のある各種の部品が挙げられる。
【0006】
対象部品に対する被液防止対策として、対象部品の上側に個別に遮液板を配設したり防滴シートを配設したりすることが考えられる。つまり、新たに遮液板や防滴シートを作製し、それをインストルメントパネルの内部における対象部品の上方に位置させるようにインストルメントパネル等に組み付けるようにするものである。
【0007】
しかしながら、これらの対策は、部品点数の増加、組立作業工数の増加、車体重量の大幅な増加、コストの高騰等といった種々の課題を招くことになってしまう。
【0008】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、前記の課題(遮液板や防滴シートを配設した場合の課題)を招くことを回避するべく、インストルメントパネルの内部への液体の滴下を抑制することができる車両のインストルメントパネルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記の目的を達成するための本発明の解決手段は、車両のインストルメントパネルを前提とする。そして、このインストルメントパネルは、開口の位置に対して少なくとも車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に延在する溝と、前記溝に液体が流れ込み該液体が当該溝から溢れた場合に、当該液体の前記開口に向かう流れを規制する規制部とを備えていることを特徴とする。
【0010】
この特定事項により、仮に乗員がインストルメントパネル上で液体(例えば水)を零してしまった場合、この液体はインストルメントパネルの上面を流れることになる。そして、この液体がインストルメントパネルの溝に達すると、当該液体は溝に沿って流れる。つまり、液体は、開口の位置に対して車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に流れることになる(例えば車体前後方向に沿って流れることになる)。この際、零れた液体の量が比較的多く、溝から溢れた場合には、この液体は規制部によって開口に向かう流れが規制されることになる。このため、液体が開口に流れ込むことは抑制され、開口を通ってインストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことが抑制される。仮に、インストルメントパネルの内部であって開口の下方に、被液を防止したい対象部品(ワイヤハーネスやコネクタ)が配設されていたとしても、この対象部品に液体が滴下してしまうといったことは抑制される。前述した如く、対象部品に対する被液防止対策として、対象部品の上側に個別に遮液板を配設したり防滴シートを配設したりする場合には、新たに遮液板や防滴シートを作製し、それをインストルメントパネルの内部における対象部品の上方に位置させるようにインストルメントパネル等に組み付ける必要がある。これに対し、本解決手段では、インストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことが抑制されるため、これら遮液板や防滴シートを配設する必要がない。つまり、本解決手段では、部品点数の増加や組立作業工数の増加を招くことなく、また、車体重量の大幅な増加やコストの高騰を招くことなしに、対象部品に液体が滴下してしまうといったことを抑制できる。
【0011】
また、前記溝の下側には、当該溝から溢れた前記液体を車幅方向に対して交差する方向に案内するように傾斜した液体案内部が設けられており、前記規制部は、前記液体案内部における前記開口寄りの位置に連続し且つ上方に延在することにより前記液体案内部を流れる前記液体の前記開口に向かう流れを規制する第1段差部を含んで構成されている。
【0012】
これにより、溝から溢れた液体は、液体案内部に沿って、車幅方向に対して交差する方向に案内されることになる。この際、液体案内部における開口寄りの位置に連続して第1段差部(規制部)が備えられているため、この液体案内部に沿って流れる液体が開口に向かう流れとなることは当該第1段差部によって規制される。このため、開口を通ってインストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことが抑制される。
【0013】
また、前記規制部は、前記開口の縁部から上方に延在することにより当該インストルメントパネルの上面を流れる前記液体の前記開口に向かう流れを規制する第2段差部を含んで構成されている。
【0014】
これにより、例えば前記溝から溢れるなどしてインストルメントパネルの上面を液体が流れる状況となったとしても、開口の縁部には第2段差部(規制部)が備えられているため、このインストルメントパネルの上面を流れる液体が開口に向かう流れとなることは当該第2段差部によって規制される。この場合にも、開口を通ってインストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことが抑制される。
【0015】
また、インストルメントパネルは、インストルメントパネル本体と、該インストルメントパネル本体の上側に組み付けられたインストルメントパネルカバーとを備えており、前記開口は、前記インストルメントパネル本体に形成されており、前記溝は、前記インストルメントパネルカバーに一体成形されており、前記規制部は、前記インストルメントパネル本体に一体成形されている。
【0016】
このようにインストルメントパネルが複数の部材で構成されている場合に、各部材それぞれに、液体が開口に流れ込むことを抑制するための機能部(インストルメントパネルカバーにおける溝およびインストルメントパネル本体における規制部)を備えさせるようにしたことにより、各部材の成形を容易にしながらも、液体を開口に流れ込ませない機能を効果的に発揮させることができる。
【0017】
また、前記開口はスピーカが嵌め込まれて取り付けられるスピーカ取付開口である。
【0018】
スピーカ取付開口は、インストルメントパネルに設けられる各種開口の中でも比較的大型の開口である。このため、インストルメントパネル上で液体を零してしまった場合、この液体がスピーカ取付開口に流れ込むことが懸念されるが、本解決手段では、このスピーカ取付開口に液体が流れ込むことを抑制するための前記溝および前記規制部を備えさせていることにより、該スピーカ取付開口に液体が流れ込むことを抑制でき、このスピーカ取付開口を通ってインストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことを抑制できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、インストルメントパネルに、当該インストルメントパネルの開口の位置に対して少なくとも車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に延在する溝と、該溝に液体が流れ込み該液体が当該溝から溢れた場合に、当該液体の開口に向かう流れを規制する規制部とを備えさせている。これにより、インストルメントパネルの内部に液体が滴下するといったことが抑制されるため、遮液板や防滴シートを配設する必要がない。つまり、本発明では、部品点数の増加や組立作業工数の増加を招くことなく、また、車体重量の大幅な増加やコストの高騰を招くことなしに、開口の下方に対象部品が配設されている場合に当該対象部品に液体が滴下してしまうといったことを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】実施形態に係る車両のインストルメントパネルの周辺を車両後方から見た図である。
【
図2】
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
【
図3】インストルメントパネルにおけるスピーカ取付部の周辺を示す斜視図である。
【
図4】
図3におけるIV-IV線に沿った断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。本実施形態は、車両のインストルメントパネルにおける車幅方向の両側それぞれにスピーカが配設された構成に対して本発明を適用した場合について説明する。
【0022】
図1は、本実施形態に係る車両のインストルメントパネル1の周辺を車両後方から見た図である。
図1における矢印UPは上方向を示し、矢印RHは車幅方向の右側を示し、矢印LHは車幅方向の左側を示している。
【0023】
図1に示すように、運転席および助手席の前方には、インストルメントパネル1が配設されている。インストルメントパネル1は、運転席および助手席の前方を覆う内装部材であり、例えば、基材、緩衝材、表皮材等を積層して構成されている。このインストルメントパネル1の中央部にはセンタクラスタ2が配設されている。センタクラスタ2には、カーナビゲーション用のディスプレイ21や各種スイッチ類が配設されている。また、インストルメントパネル1における車幅方向の右寄りの位置にはステアリングホイール3が配設されている。
【0024】
インストルメントパネル1の上面における左右両端近傍の位置には、スピーカユニット4,4が配設されている。以下、このスピーカユニット4の配設位置周辺の構成について説明する。
図2は、
図1におけるII-II線に沿った断面図である。
図2における矢印UPは上方向を示し、矢印FRは車両前方を示し、矢印RRは車両後方を示している。
【0025】
図2に示す断面部分にあっては、車両の構成部材として、フロントウインドシールド5と、カウル6と、前記インストルメントパネル1と、前記スピーカユニット4と、スピーカカバー7と、ワイヤハーネス8(図中の四角で示す領域内にワイヤハーネス8が配設されている)とが現れている。
【0026】
フロントウインドシールド5は、車室に対して車両前方に配置されている。カウル6は、車幅方向に延びるように形成され、フロントウインドシールド5の下端部を支持している。インストルメントパネル1の内部空間Sには、車両に搭載された各種電装部品に給電を行ったり制御信号を送信したりするためのワイヤハーネス8や該ワイヤハーネス8が接続されるコネクタが配設されている。特に、電気自動車やプラグインハイブリッド自動車の場合、ワイヤハーネス8としては、高電圧用のものが使用される場合がある。
【0027】
インストルメントパネル1は、スピーカ取付部11を備えている。スピーカ取付部11は、インストルメントパネル1の前端部に配置され、車幅方向の両端部にそれぞれ設けられている。右側および左側の各スピーカ取付部11は、ほぼ左右対称に構成されている。
【0028】
スピーカ取付部11には開口(以下、スピーカ取付開口という場合もある)12が形成され、この開口(スピーカ取付開口)12にスピーカユニット4が嵌め込まれて、該スピーカユニット4がインストルメントパネル1に取り付けられている。スピーカユニット4の上側にはスピーカ取付部11の全体を覆うようにスピーカカバー7が設けられている。スピーカカバー7は、グリル(図示省略)を有している。また、ワイヤハーネス8やコネクタ(対象部品)は、開口12の下方に配設されている。
【0029】
次に、本実施形態の特徴である、インストルメントパネル1におけるスピーカ取付部11の周辺の構成について説明する。
図3は、インストルメントパネル1におけるスピーカ取付部11の周辺を示す斜視図である。また、
図4は、
図3におけるIV-IV線に沿った断面図である。これらの図における矢印UPは上方向を示し、矢印RHは車幅方向の右側を示し、矢印LHは車幅方向の左側を示している。
図3は、車幅方向の右側に位置するスピーカ取付部11においてスピーカカバー7を取り外した状態を示している。このため、この
図3では、スピーカ取付部11の開口12が見える状態となっている。
【0030】
図3に示すように、インストルメントパネル1は、それぞれ樹脂製のインストルメントパネル本体(以下、インパネ本体と呼ぶ)13と、該インパネ本体13の上側に組み付けられた(例えばクリップ止めによって組み付けられた)インストルメントパネルカバー(以下、インパネカバーと呼ぶ)14とを備えている。具体的に、インパネカバー14は、インパネ本体13の上側におけるスピーカカバー7が組み付けられる位置よりも車幅方向内側に配設されている。また、スピーカカバー7がインパネ本体13の上側に組み付けられた状態にあっては、このスピーカカバー7の上面とインパネカバー14の上面とが面一となる構成となっている(
図1を参照)。
【0031】
前述したように、スピーカユニットを取り付けるための開口の下方にワイヤハーネスやコネクタ(対象部品)が配設された構成にあっては、乗員がインストルメントパネル上で液体を零してしまった場合(例えば水の入ったコップやペットボトルを倒してしまった場合)、この液体がインストルメントパネルの上面を流れることになる。この液体はインストルメントパネルの上面の傾斜に沿って流れることになり、その傾斜の途中に開口が存在する場合、この液体が開口に流れ込み、該開口を通って対象部品に滴下してしまう虞がある。このため、対象部品に対する被液防止対策が求められている。この対象部品に対する被液防止対策として、対象部品の上側に個別に遮液板を配設したり防滴シートを配設したりすることが考えられる。つまり、新たに遮液板や防滴シートを作製し、それをインストルメントパネルの内部における対象部品の上方に位置させるようにインストルメントパネル等に組み付けるようにするものである。しかしながら、これらの対策は、部品点数の増加、組立作業工数の増加、車体重量の大幅な増加、コストの高騰等といった種々の課題を招くことになってしまう。
【0032】
本実施形態は、インパネ本体13やインパネカバー14に、液体が開口12に流れ込むことを抑制するための機能部を備えさせることによって、前記の課題(遮液板や防滴シートを配設した場合の課題)を招くことを回避するべく、インストルメントパネル1の内部への液体の滴下(対象部品への滴下)を抑制することができるようにしている。具体的には、インパネカバー14に溝15を一体形成し、インパネ本体13に規制部としての第1段差部16および第2段差部17を一体成形した構成としている。以下、具体的に説明する。
【0033】
インパネカバー14における車幅方向の外側端部には車体前後方向に沿って延在する溝15が形成されている。具体的に、インパネカバー14における車幅方向の外側端部には、略鉛直方向(車幅方向に対して略直交する方向)に延在する内側縦壁部15aと、該内側縦壁部15aの下端から車幅方向の外側に向けて所定寸法だけ延在する底板部15bと、該底板部15bにおける車幅方向の外側端から上方へ延在する外側縦壁部15cとを備えている。これら内側縦壁部15a、底板部15bおよび外側縦壁部15cによって囲まれた空間が、上側に開放し且つ車体前後方向に沿って所定寸法を有する溝15として形成されている。
【0034】
また、底板部15bの上面は、車室内側(運転席および助手席)に向かって所定角度をもって下側に向けて傾斜する傾斜面となっている。このため、溝15内に液体が流れ込んだ場合、この液体は車室内側に向けて流れ、溝15における車室内側の開放端から流れ出ることになる(
図3に示す破線の矢印Aを参照)。
【0035】
また、内側縦壁部15aおよび外側縦壁部15cの高さ寸法および底板部15bの幅寸法(車幅方向に沿う方向の寸法)によって規定される溝15の断面形状は、乗員がインストルメントパネル上で液体を零してしまった場合に想定される液体の量に鑑みて実験やシミュレーションによって適宜設定される。この溝15の断面形状としては、溝15の延在方向の全体に亘って均一であってもよいし、不均一であってもよい。
【0036】
尚、本実施形態にあっては、外側縦壁部15cの上端部には、車幅方向の外側に向かって僅かに延在するフランジ部15dが設けられている。
【0037】
インパネ本体13における前記溝15の下側には液体案内部18が設けられている。この液体案内部18は、零れた液体の量が比較的多く、溝15から溢れた場合に、この液体を受け止める機能を有している。また、この液体案内部18の上面は、車室内側(運転席および助手席)に向かって下側に向けて傾斜する傾斜面となっている。この傾斜面としては、車両前側に位置して比較的傾斜角度が小さい前側傾斜面18a、および、該前側傾斜面18aにおける車室内側の端部に連続し、比較的傾斜角度が大きい後側傾斜面18bを備えている。液体案内部18における傾斜面の構成としては、これに限定されるものではなく、全体に亘って均一な傾斜角度を有するものであってもよいし、傾斜角度が異なる3種類以上の傾斜面を備えたものであってもよい。
【0038】
このような液体案内部18が設けられているため、溝15から溢れて液体案内部18の上面に液体が流れ落ちた場合(
図3に示す破線の矢印Bを参照)、この液体は液体案内部18に沿って車室内側に向けて流れることになる(
図3に示す破線の矢印Cを参照)。
【0039】
また、インパネ本体13には、液体案内部18における車幅方向の外側の端部(開口寄りの位置)に連続して上方に延在する前記第1段差部16が設けられている。この第1段差部16は、液体案内部18を流れる液体が開口12に向かって流れることを規制する機能を有する。
【0040】
具体的に、この第1段差部16は、零れた液体の量が比較的多い状況であっても、液体案内部18に沿って流れる液体の液面が越えてしまう(第1段差部16の上端位置を越えてしまう)ことがない高さ寸法として実験やシミュレーションによって予め設定されている。具体的に、第1段差部16は、前記液体案内部18の前側傾斜面18aに対応する(前側傾斜面18aの外側に位置する)前側段差部16aと、前記液体案内部18の後側傾斜面18bに対応する(後側傾斜面18bの外側に位置する)後側段差部16bとを備えている。これら前側段差部16aおよび後側段差部16bそれぞれの高さ寸法は、零れた液体の量が比較的多い状況であっても、液体案内部18に沿って流れる液体の液面が越えてしまうことがない寸法に予め設定されている。
【0041】
また、インパネ本体13には、開口12における車室内側の縁部から上方に延在する前記第2段差部17が設けられている。この第2段差部17は、第1段差部16に対して車幅方向の外側に連続し、インストルメントパネル1の上面を流れる液体(
図3に示す破線の矢印Dを参照)が開口12に向かって流れることを規制する機能を有する。
【0042】
具体的に、この第2段差部17は、略車体前後方向に沿って延在する(車幅方向に対して略直交する方向に延在する)前後方向段差部17aと、該前後方向段差部17aにおける車室内側の端部に連続して略車幅方向に沿って延在する(車体前後方向に対して略直交する方向に延在する)左右方向段差部17bとを備えている。これら前後方向段差部17aおよび左右方向段差部17bそれぞれの高さ寸法は、零れた液体の量が比較的多い状況であっても、インストルメントパネル1の上面を流れる液体の液面が越えてしまう(第2段差部17の上端位置を越えてしまう)ことがない高さ寸法として実験やシミュレーションによって予め設定されている。
【0043】
次に、乗員がインストルメントパネル1上で液体を零してしまった場合における液体の流れについて説明する。この場合、液体はインストルメントパネル1の上面(例えばインパネカバー14の上面)を流れることになる。そして、零れた液体の量が比較的少ない場合には、この液体が、インパネカバー14に設けられている溝15に達すると、当該液体は溝15に沿って流れることになる。つまり、液体は車室内側に向けて流れ、溝15における車室内側の開放端から流れ出ることになる(
図3に示す破線の矢印Aを参照)。
【0044】
一方、零れた液体の量が比較的多く、この液体が溝15から溢れて液体案内部18の上面に流れ落ちた場合(
図3に示す破線の矢印Bを参照)には、この液体は液体案内部18に沿って車室内側に向けて流れることになる(
図3に示す破線の矢印Cを参照)。そして、この際、液体案内部18における車幅方向の外側の端部(開口12寄りの位置)に連続して第1段差部16が設けられているため、液体案内部18を流れる液体が開口12に向かって流れることは規制される。
【0045】
また、液体案内部18に沿って流れた後、インパネ本体13の上面を液体が流れる状況となった場合(
図3に示す破線の矢印Dを参照)、開口12における車室内側の縁部には第2段差部17が設けられているため、インパネ本体13の上面を流れる液体が開口12に向かって流れることは規制されることになる。
【0046】
以上説明したように本実施形態では、インストルメントパネル1に、当該インストルメントパネル1の開口12の位置に対して車幅方向の一方側に寄った位置において車幅方向に対して交差する方向に延在する溝15と、該溝15に液体が流れ込み該液体が当該溝15から溢れた場合に、当該液体の開口12に向かう流れを規制する規制部としての第1段差部16および第2段差部17を備えさせている。これにより、インストルメントパネル1の内部に液体が滴下するといったことが抑制されるため、遮液板や防滴シートを配設する必要がない。つまり、本実施形態では、部品点数の増加や組立作業工数の増加を招くことがなく、また、車体重量の大幅な増加やコストの高騰を招くことなしに、開口12の下方に配設されている対象部品(ワイヤハーネス8やコネクタ)に液体が滴下してしまうといったことを抑制できる。
【0047】
また、本実施形態では、インパネカバー14に溝15を一体成形し、インパネ本体13に第1段差部16および第2段差部17を一体成形している。このように、インパネカバー14およびインパネ本体13それぞれに、液体が開口12に流れ込むことを抑制するための機能部を備えさせるようにしたことにより、インパネカバー14およびインパネ本体13それぞれの成形を容易にしながらも、液体を開口12に流れ込ませない機能を効果的に発揮させることができる。
【0048】
また、本実施形態では、液体を滴下させない対象とする開口をスピーカ取付開口12としている。このスピーカ取付開口12は、インストルメントパネル1に設けられる各種開口の中でも比較的大型の開口である。このため、インストルメントパネル1上で液体を零してしまった場合、この液体がスピーカ取付開口12に流れ込むことが懸念されるが、本実施形態では、このスピーカ取付開口12に液体が流れ込むことを抑制するための溝15および第1段差部16および第2段差部17を備えさせていることにより、該スピーカ取付開口12に液体が流れ込むことを抑制でき、このスピーカ取付開口12を通ってインストルメントパネル1の内部に液体が滴下するといったことを抑制できる。
【0049】
-他の実施形態-
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲および該範囲と均等の範囲で包含される全ての変形や応用が可能である。
【0050】
例えば、前記実施形態では、液体を滴下させない対象とする開口をスピーカ取付開口12とした場合を例に挙げて説明した。本発明はこれに限らず、その他の開口を、液体を滴下させない対象とする開口として適用することも可能である。
【0051】
また、前記実施形態では、開口(スピーカ取付開口)12に対して車幅方向の内側に溝15および第1段差部16を配設した構成としていた。本発明は、これに代えてまたはこれに加えて、開口12に対して車幅方向の外側に溝および第1段差部を配設した構成としてもよい。
【0052】
また、前記実施形態では、溝15が車体前後方向に沿って延在するものとしたが、この延在方向はこれに限らず、車体前後方向に対して所定角度だけ車幅方向に傾斜して延在するものとしてもよい。つまり、本発明でいう「車幅方向に対して交差する方向に延在する」ものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0053】
本発明は、インストルメントパネルの内部に配設されたワイヤハーネス等に対する被液を防止することができる車両のインストルメントパネルに適用可能である。
【符号の説明】
【0054】
1 インストルメントパネル
4 スピーカユニット
12 開口(スピーカ取付開口)
13 インストルメントパネル本体
14 インストルメントパネルカバー
15 溝
16 第1段差部(規制部)
17 第2段差部(規制部)
18 液体案内部