IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 三菱重工業株式会社の特許一覧

<>
  • 特開-熱回収利用システム 図1
  • 特開-熱回収利用システム 図2
  • 特開-熱回収利用システム 図3
  • 特開-熱回収利用システム 図4
  • 特開-熱回収利用システム 図5
  • 特開-熱回収利用システム 図6
  • 特開-熱回収利用システム 図7
  • 特開-熱回収利用システム 図8
  • 特開-熱回収利用システム 図9
  • 特開-熱回収利用システム 図10
  • 特開-熱回収利用システム 図11
  • 特開-熱回収利用システム 図12
  • 特開-熱回収利用システム 図13
  • 特開-熱回収利用システム 図14
  • 特開-熱回収利用システム 図15
  • 特開-熱回収利用システム 図16
  • 特開-熱回収利用システム 図17
  • 特開-熱回収利用システム 図18
  • 特開-熱回収利用システム 図19
  • 特開-熱回収利用システム 図20
  • 特開-熱回収利用システム 図21
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176664
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】熱回収利用システム
(51)【国際特許分類】
   F22B 3/04 20060101AFI20241212BHJP
   F22B 33/14 20060101ALI20241212BHJP
   F22B 33/18 20060101ALI20241212BHJP
   F22B 1/02 20060101ALI20241212BHJP
   F22G 5/12 20060101ALI20241212BHJP
   F22B 1/18 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 53/62 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 53/78 20060101ALI20241212BHJP
   B01D 53/14 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
F22B3/04 ZAB
F22B33/14
F22B33/18
F22B1/02 Z
F22G5/12 A
F22G5/12 Z
F22B1/18 D
B01D53/62
B01D53/78
B01D53/14 200
【審査請求】未請求
【請求項の数】22
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095392
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】上地 英之
(72)【発明者】
【氏名】辻内 達也
(72)【発明者】
【氏名】吉川 雅司
(72)【発明者】
【氏名】平田 琢也
(72)【発明者】
【氏名】ファン カンスン
(72)【発明者】
【氏名】木村 新太郎
【テーマコード(参考)】
4D002
4D020
【Fターム(参考)】
4D002AA09
4D002AC10
4D002BA02
4D002DA02
4D002DA03
4D002DA05
4D002DA12
4D002DA32
4D002EA08
4D002HA08
4D020AA03
4D020BA01
4D020BA02
4D020BA08
4D020BA16
4D020BA19
4D020BB03
4D020BC01
4D020CC09
(57)【要約】      (修正有)
【課題】効率良く熱を回収しながら、より多くの高温高圧の蒸気を利用可能な熱回収利用システムを提供する。
【解決手段】熱回収利用システムは、第1媒体が循環する循環ライン4と、液体状態の前記第1媒体を熱源媒体との熱交換により加熱するための第1熱交換器2と、第1熱交換器で加熱された液体状態の前記第1媒体が導かれる高圧フラッシュタンク6と、高圧フラッシュタンクから液体状態の第1媒体が導かれる少なくとも1つの低圧フラッシュタンク8と、高圧フラッシュタンクで発生した第1媒体の蒸気を熱利用設備に導くための蒸気供給ライン10と、前記低圧フラッシュタンクで発生した第1媒体の蒸気を、高圧フラッシュタンクからの第1媒体の蒸気に合流させるための蒸気合流ライン12と、蒸気合流ラインに設けられ、前記低圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気をそれぞれ昇圧するための少なくとも1つの低圧段圧縮機14とを備える。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1媒体が循環する循環ラインと、
前記循環ラインを流れる液体状態の前記第1媒体を熱源媒体との熱交換により加熱するための第1熱交換器と、
前記循環ラインに設けられ、前記第1熱交換器で加熱された液体状態の前記第1媒体が導かれる高圧フラッシュタンクと、
前記循環ラインに設けられ、前記高圧フラッシュタンクから液体状態の第1媒体が導かれる少なくとも1つの低圧フラッシュタンクと、
前記高圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を熱利用設備に導くための蒸気供給ラインと、
前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を、前記蒸気供給ラインを流れる前記高圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気に合流させるための蒸気合流ラインと、
前記蒸気合流ラインに設けられ、前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気をそれぞれ昇圧するための少なくとも1つの低圧段圧縮機と、
を備える熱回収利用システム。
【請求項2】
前記第1熱交換器において、前記第1媒体及び前記熱源媒体が相変化せずに熱交換するように構成された
請求項1に記載の熱回収利用システム。
【請求項3】
前記蒸気供給ラインからの前記第1媒体の蒸気を受け取って熱源として利用するように構成された熱利用設備を備える
請求項1又は2に記載の熱回収利用システム。
【請求項4】
前記熱利用設備は、前記第1媒体との熱交換により被加熱媒体を加熱するように構成された
請求項3に記載の熱回収利用システム。
【請求項5】
前記熱利用設備において、前記被加熱媒体及び前記第1媒体が相変化しながら熱交換するように構成された
請求項4に記載の熱回収利用システム。
【請求項6】
前記熱利用設備で熱源として利用された前記第1媒体を前記循環ラインに戻すための戻しラインを備え、
前記戻しラインは、前記循環ラインのうち、前記高圧フラッシュタンクよりも下流側、かつ、前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクのうち最も下流側に位置する最下流低圧フラッシュタンクよりも上流側の位置に、又は、前記最下流低圧フラッシュタンクに前記第1媒体を戻すように構成された
請求項3に記載の熱回収利用システム。
【請求項7】
前記蒸気供給ラインに設けられ、前記高圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気を昇圧するための高圧段圧縮機を備える
請求項1又は2に記載の熱回収利用システム。
【請求項8】
前記少なくとも1つの低圧段圧縮機と前記高圧段圧縮機との間に設けられ、前記少なくとも1つの低圧段圧縮機で昇圧された前記第1媒体の蒸気を冷却するための冷却部を備える
請求項7に記載の熱回収利用システム。
【請求項9】
前記冷却部は、前記循環ラインからの液体状態の前記第1媒体を前記第1媒体の蒸気に噴霧するように構成された
請求項8に記載の熱回収利用システム。
【請求項10】
前記冷却部は、前記循環ラインからの液体状態の前記第1媒体との熱交換により前記第1媒体の蒸気を冷却するように構成された
請求項8に記載の熱回収利用システム。
【請求項11】
前記冷却部は、前記高圧フラッシュタンク内の液体状態の前記第1媒体との熱交換により前記第1媒体の蒸気を冷却するように構成された
請求項8に記載の熱回収利用システム。
【請求項12】
排ガス生成設備からの排ガスが導かれるダクト、及び、前記ダクト内に設けられて前記排ガスとの熱交換により第2媒体を加熱して蒸気を生成するための少なくとも1つの第2熱交換器と、を含む排熱回収ボイラを備え、
前記第1熱交換器は、前記ダクト内にて前記少なくとも1つの第2熱交換器よりも前記排ガスの流れにおける下流側に設けられるとともに、前記熱源媒体としての前記排ガスとの熱交換により前記第1媒体を加熱するように構成された
請求項1又は2に記載の熱回収利用システム。
【請求項13】
前記循環ラインのうち前記第1熱交換器よりも下流側かつ前記高圧フラッシュタンクよりも上流側の部位から分岐して、前記部位を流れる前記第1媒体の一部を前記第2媒体として前記少なくとも1つの第2熱交換器の何れかに導くための分岐ラインを備える
請求項12に記載の熱回収利用システム。
【請求項14】
前記少なくとも1つの第2熱交換器は、圧力が互いに異なる蒸気を生成するための複数の蒸発器を含み、
前記分岐ラインは、前記循環ラインの前記部位を流れる前記第1媒体の一部を、前記複数の蒸発器のうち前記ダクト内にて前記排ガスの流れにおける最も下流側に設けられた蒸発器に導くように構成された
請求項13に記載の熱回収利用システム。
【請求項15】
前記排熱回収ボイラで生成された前記第2媒体の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービンを備える
請求項12に記載の熱回収利用システム。
【請求項16】
前記蒸気タービンから前記第2媒体の蒸気が排出されるタービン出口ラインを備え、
前記タービン出口ラインは、前記蒸気供給ラインに接続される
請求項15に記載の熱回収利用システム。
【請求項17】
吸収剤を含む吸収液を用いてガス中の二酸化炭素を吸収するための吸収部と、二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して再生するための再生部と、を含む二酸化炭素回収設備を備え、
前記蒸気供給ラインは、前記熱利用設備としての前記再生部に前記第1媒体の蒸気を供給するように構成された
請求項1又は2に記載の熱回収利用システム。
【請求項18】
前記熱源媒体は、二酸化炭素を含み、
前記二酸化炭素回収設備は、前記第1熱交換器で前記第1媒体を加熱した後の前記熱源媒体に含まれる二酸化炭素を回収するように構成された
請求項17に記載の熱回収利用システム。
【請求項19】
二酸化炭素含有ガスを発生させるように構成された二酸化炭素含有ガス発生設備を備え、
前記第1熱交換器は、前記熱源媒体としての前記二酸化炭素含有ガスとの熱交換により前記第1媒体を加熱するように構成され、
前記二酸化炭素回収設備は、前記第1熱交換器で前記第1媒体を加熱した後の前記二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を回収するように構成された
請求項17に記載の熱回収利用システム。
【請求項20】
前記二酸化炭素含有ガス発生設備は、燃料を燃焼させることで二酸化炭素を含む燃焼排ガスを発生するように構成された燃焼装置を含む
請求項19に記載の熱回収利用システム。
【請求項21】
炭素含有燃料ガスを生成するように構成された燃料ガス生成設備を備え、
前記燃焼装置は、前記燃料ガス生成設備で生成された前記炭素含有燃料ガスを前記燃料として用いるように構成された
請求項20に記載の熱回収利用システム。
【請求項22】
前記燃料ガス生成設備は、高炉を含む製鉄設備を含み、
前記燃焼装置は、前記製鉄設備から排出された前記炭素含有燃料ガスを前記燃料として用いるように構成された
請求項21に記載の熱回収利用システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱回収利用システムに関する。
【背景技術】
【0002】
熱源媒体(排ガス等)で加熱された液体からフラッシュ蒸気を生成することで、効率良く排熱を回収する技術が提案されている。
【0003】
特許文献1には、ガスタービンからの排ガスとの熱交換により加熱された液体(水)を複数のフラッシュタンクに順次導き、該複数のフラッシュタンクにて圧力がそれぞれ異なるフラッシュ蒸気を順次発生させて利用することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2021-85608号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱源媒体との熱交換により加熱された液体が導かれる複数のフラッシュタンクのうち、後段のフラッシュタンクで得られるフラッシュ蒸気の温度及び圧力は、前段のフラッシュタンクで得られるフラッシュ蒸気の温度及び圧力よりも低いため、高温又は高圧で利用可能なフラッシュ蒸気の量は限定される。そこで、効率良く熱を回収しながら、高温・高圧の蒸気をより多く得ることが望まれる。
【0006】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温高圧の蒸気を利用可能な熱回収利用システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の少なくとも一実施形態に係る熱回収利用システムは、
第1媒体が循環する循環ラインと、
前記循環ラインを流れる液体状態の前記第1媒体を熱源媒体との熱交換により加熱するための第1熱交換器と、
前記循環ラインに設けられ、前記第1熱交換器で加熱された液体状態の前記第1媒体が導かれる高圧フラッシュタンクと、
前記循環ラインに設けられ、前記高圧フラッシュタンクから液体状態の第1媒体が導かれる少なくとも1つの低圧フラッシュタンクと、
前記高圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を熱利用設備に導くための蒸気供給ラインと、
前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を、前記蒸気供給ラインを流れる前記高圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気に合流させるための蒸気合流ラインと、
前記蒸気合流ラインに設けられ、前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気をそれぞれ昇圧するための少なくとも1つの低圧段圧縮機と、
を備える。
【発明の効果】
【0008】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温高圧の蒸気を利用可能な熱回収利用システムが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図2】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図3】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図4】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図5】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図6】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図7】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図8】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図9】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図10】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図11】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図12】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図13】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図14】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図15】一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。
図16】第1熱交換器における熱源媒体及び第1媒体の温度及び熱交換量の一例を示すグラフである。
図17】熱利用設備における被加熱媒体及び第1媒体の温度及び熱交換量の一例を示すグラフである。
図18】一般的な熱回収利用システムの概略図である。
図19】一般的な熱回収利用システムにおける第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーとの関係の一例を示すグラフである。
図20図1に示す熱回収利用システム1における第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーとの関係の一例を示すグラフである。
図21図6に示す熱回収利用システム1における第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーの関係の一例を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0011】
(熱回収利用システムの構成)
図1図15は、それぞれ、一実施形態に係る熱回収利用システムの概略構成図である。図1図15に示すように、幾つかの実施形態に係る熱回収利用システム1は、第1媒体(例えば水)が循環する循環ライン4と、循環ライン4を流れる第1媒体を加熱するための第1熱交換器2と、循環ライン4にそれぞれ設けられる高圧フラッシュタンク6及び少なくとも1つの低圧フラッシュタンク8と、を備える。
【0012】
第1熱交換器2は、循環ライン4を流れる液体状態の第1媒体を熱源媒体との熱交換により加熱するように構成される。熱源媒体として、比較的高温の流体を用いることができる。熱源媒体として、例えば、燃焼装置からの燃焼排ガス、高温で化学反応した後の反応ガス、蒸留設備における凝縮器で凝縮するガス、温泉水、又は、太陽熱で加熱した温水等を用いることができる。
【0013】
例えば図9図13に示すように、第1熱交換器2には、排ガス生成設備50からの排ガスが熱源媒体として供給されるようになっていてもよい。排ガス生成設備50は、例えば、ガスタービン、ボイラ、ガスエンジン、燃料電池(固体酸化物形燃料電池(SOFC)等)、溶鉱炉、燃料を燃焼させる熱処理炉、窯業用の窯、又は、ゴミ焼却炉を含んでいてもよい。
【0014】
高圧フラッシュタンク6は、循環ライン4において第1熱交換器2の下流側に設けられる。第1熱交換器で加熱された液体状態の第1媒体は、循環ライン4を介して高圧フラッシュタンク6に導かれる。高圧フラッシュタンク6の入口側における循環ライン4には、高圧フラッシュタンク6に導かれる第1媒体を減圧させるための減圧弁5が設けられていてもよい。
【0015】
高圧フラッシュタンク6は、第1媒体をフラッシュさせて(即ち減圧沸騰させて)蒸気(フラッシュ蒸気;飽和蒸気)を発生させるように構成される。高圧フラッシュタンク6で生成された第1媒体のフラッシュ蒸気は、蒸気供給ライン10を介して、熱利用設備18に供給されるようになっている。蒸気供給ライン10は、高圧フラッシュタンク6の頂部に接続されていてもよい。
【0016】
高圧フラッシュタンク6では、第1媒体のフラッシュ蒸気が生成されるとともに、高圧フラッシュタンク6内の圧力における飽和温度Tsat_Hの第1媒体の液体が発生する。この第1媒体の液体は、高圧フラッシュタンク6の底部に貯留され、循環ライン4を介して後述の低圧フラッシュタンク8に導かれるようになっている。
【0017】
低圧フラッシュタンク8は、循環ライン4において高圧フラッシュタンク6の下流側に設けられる。高圧フラッシュタンク6と低圧フラッシュタンク8とは、循環ライン4を構成する接続ライン4aを介して接続される。高圧フラッシュタンク6内の第1媒体の液体は、接続ライン4aを介して、高圧フラッシュタンク6の底部から抜き出されて低圧フラッシュタンク8に導かれる。接続ライン4aには、低圧フラッシュタンク8に導かれる第1媒体を減圧させるための減圧弁7aが設けられていてもよい。
【0018】
低圧フラッシュタンク8は、第1媒体をフラッシュさせて(即ち減圧沸騰させて)蒸気(フラッシュ蒸気;飽和蒸気)を発生させるように構成される。低圧フラッシュタンク8では、高圧フラッシュタンク6で生じるフラッシュ蒸気よりも低圧のフラッシュ蒸気が生成される。低圧フラッシュタンク8で生成された第1媒体のフラッシュ蒸気は、合流ライン12を介して、蒸気供給ライン10を流れる第1媒体の蒸気(高圧フラッシュタンク6からの蒸気)に合流するようになっている。合流ライン12の一端は低圧フラッシュタンク8の頂部に接続され、他端は蒸気供給ライン10に接続されていてもよい。
【0019】
低圧フラッシュタンク8では、第1媒体のフラッシュ蒸気が生成されるとともに、低圧フラッシュタンク8内の圧力における飽和温度Tsat_Lの第1媒体の液体が発生する。この第1媒体の液体は、低圧フラッシュタンク8の底部に貯留され、循環ライン4を介して第1熱交換器2に送られるようになっている。循環ライン4には、低圧フラッシュタンク8からの液体状態の第1媒体を第1熱交換器2に向けて圧送するためのポンプ9が設けられていてもよい。
【0020】
上述の合流ライン12には、低圧フラッシュタンク8からの第1媒体の蒸気を昇圧するための低圧段圧縮機14が設けられる。すなわち、低圧フラッシュタンク8で生じた第1媒体のフラッシュ蒸気は、低圧段圧縮機14で昇圧され、これにより昇温されてから、蒸気供給ライン10に流入する。蒸気供給ライン10に流入した低圧フラッシュタンク8からの第1媒体のフラッシュ蒸気は、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気とともに熱利用設備18に供給される。低圧段圧縮機14は、低圧フラッシュタンク8からの第1媒体の蒸気を、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気と同等の圧力まで昇圧するように構成されていてもよい。
【0021】
熱回収利用システム1は、1つ又は複数の上述の低圧フラッシュタンク8を備えていてもよい。図1図4及び図9図13に示す例示的な実施形態では、熱回収利用システム1は、1つの低圧フラッシュタンク8を備えている。図5図8に示す例示的な実施形態では、熱回収利用システム1は、複数の低圧フラッシュタンク8_1、…、8_i、…、8_n(ただしnは2以上の整数;以下、低圧フラッシュタンク8_1~8_nの各々を低圧フラッシュタンク8と総称する)を備えている。
【0022】
図5図8に示すように、複数の低圧フラッシュタンク8_1~8_nは、循環ライン4において上流側からこの順番に設けられている。即ち、複数の低圧フラッシュタンク8は、循環ライン4において最も上流側に位置する低圧フラッシュタンク8_1と、最も下流側に位置する低圧フラッシュタンク8_nと、を含む。
【0023】
複数の低圧フラッシュタンク8_1~8_nのうち、低圧フラッシュタンク8_iと低圧フラッシュタンク8_(i+1)とは、循環ライン4を構成する接続ライン4b_iを介して接続される。接続ライン4b_iには、低圧フラッシュタンク8に導かれる第1媒体を減圧させるための減圧弁7b_i(以下、減圧弁7b_1~7b_(n-1)の各々を減圧弁7bと総称する)が設けられていてもよい。
【0024】
各々の低圧フラッシュタンク8は、第1媒体をフラッシュさせて(即ち減圧沸騰させて)蒸気(フラッシュ蒸気;飽和蒸気)を発生させるように構成される。下流段の低圧フラッシュタンク8(例えば低圧フラッシュタンク8_i)では、上流段の低圧フラッシュタンク8(例えば低圧フラッシュタンク8_(i-1))で生じるフラッシュ蒸気よりも低圧のフラッシュ蒸気が生成される。各々の低圧フラッシュタンク8で生成された第1媒体のフラッシュ蒸気は、合流ライン12を介して、蒸気供給ライン10を流れる第1媒体の蒸気(高圧フラッシュタンク6からの蒸気)に合流するようになっている。ここで、合流ライン12は、低圧フラッシュタンク8_1~8_nの頂部に接続される支流ライン12_1~12_nを含んでもよい。図5図8に示す例示的な実施形態では、低圧フラッシュタンク8_1~8_nで生成された第1媒体のフラッシュ蒸気は、支流ライン12_1~12_nをそれぞれ介して合流ライン12に導かれるようになっている。
【0025】
低圧フラッシュタンク8_1~8_nでは、第1媒体のフラッシュ蒸気が生成されるとともに、低圧フラッシュタンク8_1~8_n内の圧力における飽和温度Tsat_L1~Tsat_Ln(Tsat_L1>Tsat_Li>Tsat_Ln)の第1媒体の液体が発生する。この第1媒体の液体は、低圧フラッシュタンク8_1~8_nの底部に貯留される。低圧フラッシュタンク8_i内の第1媒体の液体は、接続ライン4b_iを介して、低圧フラッシュタンク8_iの底部から抜き出されて低圧フラッシュタンク8_(i+1)に導かれる。また、循環ライン4にて最下流側に位置する低圧フラッシュタンク8_n内の第1媒体の液体は、循環ライン4を介して第1熱交換器2に送られる。
【0026】
図5図8に示すように、合流ライン12には、低圧フラッシュタンク8_1~8_nからの第1媒体の蒸気をそれぞれ昇圧するための低圧段圧縮機14_1~14_n(以下、低圧段圧縮機14と総称する。)が設けられる。すなわち、低圧フラッシュタンク8_1~8_nで生じた第1媒体のフラッシュ蒸気は、低圧段圧縮機14_1~14_nで昇圧され、これにより昇温されてから、蒸気供給ライン10に流入する。蒸気供給ライン10に流入した低圧フラッシュタンク8_1~8_nからの第1媒体のフラッシュ蒸気は、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気とともに熱利用設備18に供給される。
【0027】
図5又は図7に示すように、複数の低圧段圧縮機14_1~14_nは、合流ライン12に対して直列に設けられていてもよい。この場合、複数の低圧段圧縮機14_1~14_nのそれぞれの圧縮機の圧力比を小さくすることができる。各々の低圧段圧縮機14_iは、低圧フラッシュタンク8_iからの第1媒体の蒸気を、上流段の低圧フラッシュタンク8_(i-1)からの第1媒体の蒸気と同等の圧力まで昇圧するように構成されていてもよい。
【0028】
あるいは、図6又は図8に示すように、複数の低圧段圧縮機14_1~14_nは、合流ライン12に対して並列に設けられていてもよい。複数の低圧段圧縮機14_1~14_nは、低圧フラッシュタンク8_1~8_nからの第1媒体の蒸気を、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気と同等の圧力まで昇圧するように構成されていてもよい。
【0029】
熱利用設備18は、蒸気供給ライン10からの第1媒体の蒸気を受け取って熱源として利用するように構成される。熱利用設備18は、第1媒体との熱交換により被加熱媒体を加熱するように構成されていてもよい。
【0030】
熱利用設備18は、例えば、水蒸気発生器、化学物質(アンモニア、アルコール(メタノール、エタノール、等)、炭化水素(プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、等)の反応器・蒸発器・蒸留塔、石油の蒸発器・蒸留塔、二酸化炭素(CO)回収設備の吸収剤の再生設備、食品工場における食品の加熱装置(煮る、蒸す、加熱殺菌、等)を含んでいてもよい。なお、図9、10、14及び15に示す例示的な実施形態では、熱利用設備18は、二酸化炭素回収設備30を含む。
【0031】
熱利用設備18で熱源として利用された第1媒体は、戻しライン16を介して循環ラインに16戻されるようになっていてもよい。
【0032】
上述の実施形態に係る熱回収利用システム1によれば、第1熱交換器2で熱源媒体との熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8で順次フラッシュさせて蒸気(フラッシュ蒸気)を発生させるようにしたので、フラッシュタンクを一段のみ設ける場合に比べ、第1媒体がより低温になるまで蒸気を取り出すことができる。また、低圧フラッシュタンク8で発生させた比較的低温・低圧の蒸気を低圧段圧縮機14で圧縮するようにしたので、このように圧縮した蒸気を、高圧フラッシュタンク6で発生した蒸気とともに、高温・高圧の蒸気として利用することができる。よって、上述の実施形態に係る構成では、比較的小さな圧縮機動力により、より多くの高温・高圧の蒸気を生成して利用することができる。
【0033】
このことについて図を用いて説明する。図18は、フラッシュタンクを一段のみ設けた熱回収利用システム100の概略図である。図18において、実施形態に係る熱回収利用システム1と同じ要素については同じ符号を付して示している。図19は、図18に示す熱回収利用システム100における第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーとの関係の一例を示すグラフである。図20は、図1に示す熱回収利用システム1(高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8を含む)における第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーとの関係の一例を示すグラフである。
【0034】
図19及び図20に示す例では、第1熱交換器2において、熱源媒体(排ガス等)及び第1媒体(水等)の両方が相変化せずに熱交換するものとする。また、第1媒体の第1熱交換器2の入口及び出口における温度をそれぞれT1及びT2とし、第1熱交換器2の各位置における熱源媒体と第1媒体との温度差がTd(例えば10℃)であるとする。なお、この場合、熱源媒体の第1熱交換器2の入口及び出口における温度はそれぞれ(T2+Td)及び(T1+Td)である。図19及び図20において、熱源媒体の第1熱交換器2の入口における温度は(T2+Td)で共通である。
【0035】
図18に示す熱回収利用システム100では、図19のグラフに示すように、第1熱交換器2でT2まで加熱された第1媒体がフラッシュタンク106に導かれ、フラッシュタンク106で飽和温度Tsat_H(=T1)の第1媒体の蒸気及び液体が発生する。熱利用設備18では飽和温度Tsat_Hの第1媒体の蒸気が利用され、飽和温度Tsat_H(=T1)の第1媒体の液体は第1熱交換器2に戻る。したがって、この熱回収利用システム100において回収及び利用される熱量HR_Hは図19に示す面積で表される。また、熱源媒体の第1熱交換器2の出口における温度は(Tsat_H+Td)である。
【0036】
一方、図1に示す一実施形態に係る熱回収利用システム1では、図20のグラフに示すように、第1熱交換器2でT2まで加熱された第1媒体が高圧フラッシュタンク6に導かれ、高圧フラッシュタンク6で飽和温度Tsat_Hの第1媒体の蒸気及び液体が発生する。ここで、図20におけるTsat_Hは、図19におけるT1に等しい。高圧フラッシュタンク6でのフラッシュ蒸気の生成を介して回収及び利用される熱量HR_Hは図20に示す面積で表され、これは図19の熱量HR_Hの面積と等しい。また、高圧フラッシュタンク6で発生した飽和温度Tsat_Hの第1媒体の液体は、低圧フラッシュタンク8に導かれ、低圧フラッシュタンク8でさらに低温の飽和温度Tsat_L(=T1)の第1媒体の蒸気及び液体が発生する。低圧フラッシュタンク8でのフラッシュ蒸気の生成を介して回収及び利用される熱量HR_Lは図20に示す面積で表される。図20におけるTsat_L(=T1)は、図19におけるT1よりも低い。また、飽和温度Tsat_L(=T1)の第1媒体の蒸気を低圧段圧縮機14で昇圧して飽和温度をTsat_Hまで昇温するために必要な圧縮機動力をP_Lとする。そうすると、熱回収利用システム1において利用可能な熱量は、HR_H、HR_L及びP_Lの総和となる。この面積は、図18の熱回収利用システム100で利用可能な熱量(図19の熱量HR_H)よりも大きい。また、熱源媒体の第1熱交換器2の出口における温度は(Tsat_L+Td)であり、図18の場合に比べて、熱源媒体の温度がより低温になるまで、熱源媒体の熱を回収することができる。比較的小さな圧縮機動力P_Lを加えることにより、P_Lだけでなく、図18の熱回収利用システム100では捨てていた熱源媒体の熱HR_Lも温度Tsat_Hの熱として有効に活用することができるのである。更に、低圧フラッシュタンク8で温度が低下した液体の第1媒体を第1熱交換器2に送るので、第1熱交換器2で熱源媒体の熱を低温まで回収することが可能になるのである。
【0037】
このように、上述の実施形態に係る構成では、比較的小さな圧縮機動力により、より多くの高温・高圧の蒸気を生成して利用することができる。すなわち、上述の実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0038】
また、図21は、図6に示す熱回収利用システム1(高圧フラッシュタンク6及び複数(ここでは3つ)の低圧フラッシュタンク8_1~8_3を含む)における第1熱媒体及び熱源媒体の温度とエントロピーの関係の一例を示すグラフである。
【0039】
図6に示す熱回収利用システム1では、図21のグラフに示すように、第1熱交換器2でT2まで加熱された第1媒体が高圧フラッシュタンク6に導かれ、高圧フラッシュタンク6で飽和温度Tsat_Hの第1媒体の蒸気及び液体が発生する。高圧フラッシュタンク6でのフラッシュ蒸気の生成を介して回収及び利用される熱量HR_Hは図21に示す面積で表され、これは図19及び図20の熱量HR_Hの面積と等しい。また、高圧フラッシュタンク6で発生した飽和温度Tsat_Hの第1媒体の液体は、低圧フラッシュタンク8_1~8_3に順次導かれ、低圧フラッシュタンク8_1~8_3でさらに低温の飽和温度Tsat_L1、Tsat_L2及びTsat_L3(=T1)の第1媒体の蒸気及び液体が発生する。低圧フラッシュタンク8_1~8_3でのフラッシュ蒸気の生成を介して回収及び利用される熱量HR_L1、熱量HR_L2及び熱量HR_L3は図21に示す面積で表される。また、飽和温度Tsat_L1、Tsat_L2及びTsat_L3(=T1)の第1媒体の蒸気を低圧段圧縮機14_1~14_3で昇圧して飽和温度をTsat_Hまで昇温するために必要な圧縮機動力をP_L1、P_L2及びP_L3とする。そうすると、熱回収利用システム1において利用可能な熱量は、HR_H、HR_L1、HR_L2、HR_L3、P_L1、P_L2及びP_L3の総和となる。この面積は、図18の熱回収利用システム100で利用可能な熱量(図19の熱量HR_H)よりも大きい。また、図21における圧縮機動力P_L1、P_L2及びP_L3の面積の和は、図20における圧縮機動力P_Lの面積よりも小さい。よって、複数の低圧フラッシュタンク8を含む熱回収利用システム1を用いることで、より小さな圧縮機動力で多くの熱を回収及び利用できることがわかる。更に、図5図6の熱回収利用システム1では、図1の熱回収利用システム1よりも圧力が低い低圧フラッシュタンク8_n(図21ではn=3)で温度が低下した液体の第1媒体を第1熱交換器2に送るので、第1熱交換器2で熱源媒体の熱を図1の熱回収利用システム1よりも低温まで回収することが可能になるのである。なお、このような効果は、図7図8のように、高圧フラッシュタンク6で発生した蒸気を更に昇圧する高圧段圧縮機20を備える場合にも得ることができる。また、低圧段圧縮機14_1~14_nや高圧段圧縮機20が直列に設けられている場合(例えば、図5図7)、低圧段圧縮機14_1~14_nや高圧段圧縮機20が並列に設けられている場合(例えば、図6図8)のいずれの場合にもこのような効果を得ることができる。
【0040】
幾つかの実施形態では、第1熱交換器2において、第1媒体及び熱源媒体が相変化せずに熱交換するように構成される。
【0041】
ここで、図16は、第1熱交換器2における熱源媒体及び第1媒体の温度及び熱交換量の一例を示すグラフである。図16のグラフにおいて、実線は、第1熱交換器2にて第1媒体が相変化しない場合(即ち液体のままの場合)の温度変化を示し、破線は、第1熱交換器2にて第1媒体が相変化する場合(即ち液体から気体に変化する場合)の温度変化を示す。また、図16のグラフにおいて、一点鎖線は、第1熱交換器2にて熱源媒体が相変化しない場合(例えば排ガス等が気体のままの場合)の温度変化を示す。
【0042】
図16に示すように、熱源媒体及び第1媒体が相変化しない場合、第1熱交換器2の入口から出口に至るまで熱源媒体と第1媒体との温度差Td1が小さく保たれるため、熱利用効率が良く、高温の熱を有効に利用することができる。一方、熱源媒体が相変化しないが第1媒体が相変化する場合には、第1熱交換器2の位置に応じて熱源媒体と第1媒体との温度差Td2が大きくなり、熱利用効率が低下する。
【0043】
この点、上述の実施形態によれば、第1熱交換器2において第1媒体及び熱源媒体が相変化せずに熱交換するようにしたので、第1媒体又は熱源媒体の何れか一方が相変化せず他方が相変化しながら熱交換する場合に比べ、熱源媒体と第1媒体との温度差を低減することができる。よって、熱源媒体の熱の利用効率を高めることができる。
【0044】
幾つかの実施形態では、熱利用設備18において、被加熱媒体及び第1媒体が相変化しながら熱交換するように構成される。
【0045】
ここで、図17は、熱利用設備18における被加熱媒体及び第1媒体の温度及び熱交換量の一例を示すグラフである。図17のグラフにおいて、実線は、熱利用設備18にて第1媒体が相変化する場合(即ち蒸気が凝縮する場合)の温度変化を示し、破線は、熱利用設備18にて第1媒体が相変化しない場合(即ち蒸気のままの場合)の温度変化を示す。また、図17のグラフにおいて、二点鎖線は、熱利用設備18にて被加熱媒体が相変化する場合(例えば液体が蒸発する場合等)の温度変化を示す。
【0046】
図17に示すように、被加熱媒体及び第1媒体が相変化する場合、熱利用設備18の入口から出口に至るまで第1媒体と被加熱媒体との温度差Td3が小さく保たれるため、熱利用効率が良く、高温の熱を有効に利用することができる。一方、第1媒体が相変化しないが被加熱媒体が相変化する場合には、熱利用設備18の位置に応じて第1媒体と被加熱媒体との温度差Td4が大きくなり、熱利用効率が低下する。
【0047】
この点、上述の実施形態によれば、熱利用設備18において被加熱媒体及び第1媒体が相変化しながら熱交換するようにしたので、被加熱媒体又は第1媒体の何れか一方が相変化し他方が相変化せずに熱交換する場合に比べ、第1媒体と被加熱媒体との温度差を低減することができる。よって、熱源媒体の熱の利用効率を高めることができる。
【0048】
幾つかの実施形態では、熱利用設備18からの第1媒体を循環ライン4に戻すための戻しライン16は、循環ライン4のうち、高圧フラッシュタンク6よりも下流側、かつ、少なくとも1つの低圧フラッシュタンク8のうち最も下流側に位置する最下流低圧フラッシュタンク8よりも上流側の位置に、又は、最下流低圧フラッシュタンク8に前記第1媒体を戻すように構成される。ここで、熱回収利用システム1が1つの低圧フラッシュタンク8を有する場合、1つの低圧フラッシュタンク8が最下流低圧フラッシュタンクである。熱回収利用システム1が複数の低圧フラッシュタンク8_1~8_nを有する場合、最も下流側に位置する低圧フラッシュタンク8_nが最下流低圧フラッシュタンクである。
【0049】
図1図5図6図9図15に示す例示的な実施形態では、戻しライン16は、循環ライン4のうち、高圧フラッシュタンク6よりも下流側、かつ、最下流低圧フラッシュタンク8(又は8_n)よりも上流側の位置に設けられる接続ライン4aに、第1媒体を戻すように構成される。図2に示す例示的な実施形態では、戻しライン16は、最下流低圧フラッシュタンク8に第1媒体を戻すように構成される。
【0050】
上述の実施形態では、熱利用設備18で熱源として利用された第1媒体を循環ライン4に戻し、低圧フラッシュタンク8で再度フラッシュさせて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成し、該蒸気を低圧段圧縮機14で昇圧して熱利用設備18に供給する。すなわち、上述の実施形態によれば、熱利用設備18で熱源として利用された後の比較的高温・高圧の第1媒体を低圧フラッシュタンク8に導くことで該第1媒体に残っている熱をさらに利用する。これにより、熱利用設備18の出口の第1媒体を直接第1熱交換器2に送る場合に比べて、第1熱交換器2の入口における第1媒体の温度が低下するため、熱源媒体がより低温になるまで熱源媒体の熱を回収することができる。よって、上述の実施形態によれば、より効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0051】
幾つかの実施形態では、熱利用設備18からの第1媒体の温度をTTUDとしたとき、フラッシュタンク(高圧フラッシュタンク6又は低圧フラッシュタンク8)内の圧力における飽和温度が上述の温度TTUDよりも高いフラッシュタンクと、飽和温度が上述の温度TTUD以下のフラッシュタンクとの間の循環ライン4の部位(接続ライン4aまたは 4b)に、戻しライン16を介して熱利用設備18からの第1媒体を循環ライン4に戻してもよい。
【0052】
例えば、熱回収利用システム1が複数の低圧フラッシュタンク8を含む場合、高圧フラッシュタンク6内の圧力における飽和温度をTsat_Hとし、複数の低圧フラッシュタンク8_1~8_n内の圧力における飽和温度をそれぞれTsat_L1~Tsat_Lnとしたとき、Tsat_H>TTUD≧Tsat_L1であるとする。この場合、戻しライン16は、熱利用設備18からの第1媒体を、高圧フラッシュタンク6と、ひとつ、または、複数の低圧フラッシュタンク8の内、循環ライン4の最も上流に設けられた1段目の低圧フラッシュタンク8_1との間の循環ライン4の部位(接続ライン4a)に戻すように構成されると、Tsat_L1以上の温度を持つ熱利用設備18からの第1媒体を有効に用いて、低圧フラッシュタンク8で発生する蒸気の内、最も高い圧力、飽和温度の蒸気を発生することができ、より効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができ、好適である(図5及び図6参照)。
【0053】
幾つかの実施形態では、例えば図3図4図7及び図8に示すように、熱回収利用システム1は、蒸気供給ライン10に設けられ、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気を昇圧するための高圧段圧縮機20を備える。図3図4及び図7に示すように、高圧段圧縮機20は、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気を、合流ライン12から蒸気供給ライン10に合流した第1媒体の蒸気とともに昇圧するように構成されていてもよい。あるいは、図8に示すように、高圧段圧縮機20は、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気を、合流ライン12から蒸気供給ライン10に合流する第1媒体の蒸気とは別に昇圧するように構成されていてもよい。
【0054】
上述の実施形態によれば、高圧フラッシュタンク6で生成された比較的高温・高圧の第1媒体のフラッシュ蒸気を高圧段圧縮機20で昇圧することで、熱利用設備18においてさらに温度及び圧力が高い蒸気(例えば、第1熱交換器2における熱源媒体の温度よりも高温の蒸気)を利用することができる。
【0055】
図3図4図7及び図8に示すように、高圧フラッシュタンク6からの第1媒体の蒸気を昇圧するための高圧段圧縮機20を備える場合、熱利用設備18からの第1媒体の温度TTUDが高圧フラッシュタンク6内の圧力における飽和温度Tsat_Hよりも高くなるように熱利用設備18で熱を利用し、循環ライン4の第1熱交換器2よりも下流で、かつ、高圧フラッシュタンク6よりも上流の部位と、熱利用設備18とを接続する戻しライン16を介して、熱利用設備18で熱利用後の第1媒体が循環ライン4に戻るように構成されていても良い。本構成によると、高い温度を持つ熱利用設備18からの第1媒体を有効に用いて、高圧フラッシュタンク6で、低圧フラッシュタンク8よりも高い圧力、飽和温度の蒸気を発生することができ、より効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができ、好適である。
【0056】
幾つかの実施形態では、図3図4及び図7に示すように、熱回収利用システム1は、低圧段圧縮機14と高圧段圧縮機20との間に設けられ、低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気を冷却するための冷却部22を備える。熱回収利用システム1が複数の低圧段圧縮機14を含む場合、冷却部22は、最も上流側の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14と高圧段圧縮機20との間に設けられる。
【0057】
上述の実施形態では、低圧段圧縮機14で圧縮された第1媒体の蒸気が冷却部22で冷却されてから高圧段圧縮機20に導入されるので、高圧段圧縮機20の圧縮機動力を低減することができる。よって、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。さらに、高圧段圧縮機20出口の第1媒体の蒸気の過熱度、温度を低減できるため、高圧段圧縮機20に安価な材料、安価なシールや軸受けを用いることが可能になる。一方、冷却部22で第1媒体は過熱状態の範囲で冷却され、飽和温度は有意に変化しない。従って、熱利用設備18で利用する熱が第1媒体の蒸気が凝縮する際の凝縮熱である場合、熱利用設備18で利用可能な熱量の減少は小さい。
【0058】
熱回収利用システム1が複数の低圧段圧縮機14を含む場合、熱回収利用システム1は、一対の低圧段圧縮機14の間に設けられ、一対の低圧段圧縮機14のうち下流側(低圧側)の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気を冷却するための冷却部28(図7における冷却部28_1、…、28_i、…;以下冷却部28と総称する。)を含んでいてもよい。
【0059】
上述の実施形態では、下流側の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14で圧縮された第1媒体の蒸気が冷却部28で冷却されてから上流側の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14に導入されるので、上流側の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14の圧縮機動力を低減することができる。よって、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0060】
冷却部22,28は、循環ライン4からの液体状態の第1媒体を、低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気に噴霧するように構成されていてもよい。このように、循環ライン4からの液体状態の第1媒体を噴霧、気化、気化熱を低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気から奪うことにより、低圧段圧縮機14で圧縮された第1媒体の蒸気を適切に冷却することができる。
【0061】
図3及び図7に示す例示的な実施形態では、冷却部22は、循環ライン4から液体状態の第1媒体を抜き出すように構成された冷却液ライン25と、冷却液ライン25からの液体状態の第1媒体を、低圧段圧縮機14で圧縮された第1媒体の蒸気に向けて噴霧するように構成されたスプレー24と、を含む。スプレー24は、図3及び図7に示すように蒸気供給ライン10と合流ライン12との合流点Jよりも下流側の位置(蒸気供給ライン10)に設けられていてもよく、あるいは合流点Jよりも上流側の位置(合流ライン12)に設けられていてもよい。
【0062】
図7に示す例示的な実施形態では、冷却部28は、上述の冷却液ライン25からの液体状態の第1媒体を、一対の低圧段圧縮機14のうち上流側の低圧フラッシュタンク8に対応する低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気に噴霧するように構成されたスプレー28を含む。
【0063】
あるいは、冷却部22,28は、循環ライン4からの液体状態の第1媒体との熱交換により、低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気を冷却するように構成されてもよい。このように、循環ライン4からの液体状態の第1媒体との熱交換により、低圧段圧縮機14で圧縮された第1媒体の蒸気を適切に冷却することができる。
【0064】
図4に示す例示的な実施形態では、冷却部22は、高圧フラッシュタンク6内の液体状態の第1媒体と、低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気を熱交換するように構成された熱交換部26を含む。
【0065】
上述の実施形態では、高圧フラッシュタンク6内の比較的高温の液体状態の第1媒体との熱交換により低圧段圧縮機14で昇圧された第1媒体の蒸気を冷却するようにしたので、第1媒体の蒸気の冷却し過ぎによる高圧段圧縮機20の入口での液滴の発生を抑制することができる。
【0066】
幾つかの実施形態では、例えば図10図15に示すように、熱回収利用システム1は、排ガス生成設備50からの排ガスの熱を回収するための排熱回収ボイラ(HRSG:Heat
Recovery Steam Generator)60を備える。排熱回収ボイラ60は、排ガスが導かれるダクト62と、ダクト62内に設けられて排ガスとの熱交換により第2媒体(水等)を加熱して蒸気を生成するための少なくとも1つの第2熱交換器を含む。なお、図示する実施形態では、少なくとも1つの第2熱交換器は、蒸発器66a、過熱器66b、節炭器66c、蒸発器68a及び/又は過熱器68bを含む。また、排熱回収ボイラ60は、蒸発器66a及び/又は68aで発生させた蒸気を一時的に収容するための蒸気ドラム67及び/又は69を備えていてもよい。排ガス生成設備50からの排ガスは、排ガス導入ライン52を介してダクト62に導かれるとともに、排出ライン54を介してダクト62から排出されるようになっている。
【0067】
幾つかの実施形態では、熱回収利用システム1の第1熱交換器2は、排熱回収ボイラ60のダクト62内にて少なくとも1つの第2熱交換器よりも排ガスの流れにおける下流側に設けられるとともに、熱源媒体としての排ガス生成設備50からの排ガスとの熱交換により第1媒体を加熱するように構成される。即ち、幾つかの実施形態では、第1熱交換器2は、排熱回収ボイラ60を構成する複数の熱交換器の1つであってもよい。図10図15に示す例示的な実施形態では、第1熱交換器2は、複数の第2熱交換器に供給される前の第2媒体を加熱するための節炭器64として機能するものである。
【0068】
上述の実施形態では、排熱回収ボイラ60において、排ガス生成設備50からの排ガスの熱を用いて第2熱交換器(蒸発器66a、過熱器66b、節炭器66c、蒸発器68a及び/又は過熱器68b)での熱交換により第2媒体の蒸気を生成するのに加え、第2熱交換器を通過して温度が低下した排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8に導いて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成することができる。よって、上述の実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0069】
幾つかの実施形態では、例えば図10図15に示すように、熱回収利用システム1は、循環ライン4のうち第1熱交換器2(排熱回収ボイラ60における節炭器64)よりも下流側かつ高圧フラッシュタンク6よりも上流側の部位から分岐して、該部位を流れる第1媒体の一部を第2媒体として上述の第2熱交換器の何れかに導くための分岐ライン56A及び/又は56Bを備える。図10図15に示す熱回収利用システム1は分岐ライン56Aを含み、該分岐ライン56Aは、第2熱交換器である蒸発器66a、過熱器66b及び/又は節炭器66cに第2媒体を導くように構成されている。図12図15に示す熱回収利用システム1は分岐ライン56Bをさらに含み、該分岐ライン56Bは、第2熱交換器である蒸発器68a及び/又は過熱器66bに第2媒体を導くように構成されている。
【0070】
なお、通常、第1媒体と第2媒体とは同一種類の物質であり、典型的には水である。図示するように、分岐ライン56A,56Bには、蒸発器66a,68aに供給される第2媒体の量を調節するためのバルブ57A,57Bが設けられていてもよい。
【0071】
上述の実施形態によれば、第1熱交換器2での排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体の一部を、分岐ライン56を介して第2媒体として排熱回収ボイラ60の第2熱交換器に導くことができる。すなわち、第1熱交換器2での比較的低温の排ガスとの熱交換により、高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8に導かれる第1媒体、及び、第2熱交換器に導かれる第2媒体を加熱することができる。よって、上述の実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0072】
幾つかの実施形態では、例えば図12図15に示すように、少なくとも1つの第2熱交換器は、圧力が互いに異なる蒸気を生成するための複数の蒸発器66a,68aを含む。そして、分岐ライン56Bは、循環ライン4のうち第1熱交換器2(排熱回収ボイラ60における節炭器64)よりも下流側かつ高圧フラッシュタンク6よりも上流側の部位を流れる第1媒体の一部を、複数の蒸発器66a,68aのうちダクト62内にて排ガスの流れにおける最も下流側に設けられた蒸発器68aに導くように構成される。
【0073】
上述の実施形態によれば、第1熱交換器2での排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体の一部を、第2媒体として、分岐ライン56Bを介してダクト62内にて最も下流側に配置される蒸発器68aに導くことができる。すなわち、第1熱交換器2での比較的低温の排ガスとの熱交換により、高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8に導かれる第1媒体、及び、上述の蒸発器68aに導かれる第2媒体を加熱することができる。よって、上述の実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0074】
幾つかの実施形態に係る熱回収利用システム1は、例えば図10図15に示すように、排熱回収ボイラ60で生成された第2媒体の蒸気を利用するように構成された蒸気利用設備58を備える。
【0075】
幾つかの実施形態では、蒸気利用設備58は、第2媒体の蒸気との熱交換により被加熱媒体を加熱するように構成されていてもよい。図10に示すように、蒸気利用設備58からのドレン水は、循環ライン4を介して高圧フラッシュタンク6に供給されるようになっていてもよい。
【0076】
幾つかの実施形態では、例えば図11図15に示すように、蒸気利用設備58は、排熱回収ボイラ60で生成された第2媒体の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービン72を含んでもよい。蒸気タービン72は、発電機74を駆動するように構成されていてもよい。蒸気タービン72で仕事をした第2媒体の蒸気は、タービン出口ライン76を介して蒸気タービン72から排出されるようになっている。
【0077】
上述の実施形態によれば、排熱回収ボイラ60において、排ガス生成設備50からの排ガスの熱を用いて第2熱交換器での熱交換により蒸気タービン72駆動用の蒸気(第2媒体の蒸気)を生成するのに加え、第2熱交換器を通過して温度が低下した排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8に導いて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成することができる。よって、上述の実施形態によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0078】
幾つかの実施形態では、例えば図11図12図14及び図15に示すように、タービン出口ライン76は、蒸気供給ライン10に接続される。そして、タービン出口ライン76を流れる第2媒体の蒸気は、蒸気供給ライン10の第1媒体の蒸気と合流し、第1媒体の蒸気とともに、熱利用設備18に供給される。
【0079】
上述の実施形態によれば、高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8で生成された蒸気(フラッシュ蒸気)に加え、蒸気タービン72から排出された蒸気も蒸気供給ライン10を介して熱利用設備18に供給されるので、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0080】
なお、図12図15に示すように複数の蒸発器66a,68aを含む場合、蒸気タービン72の入口には、より高圧の蒸気が生成される蒸発器66aからの蒸気が供給されるようになっていてもよい。また、より低圧の蒸気が生成される蒸発器68aからの蒸気は、例えば図12図14及び図15に示すように、タービン出口ライン76に導かれて、蒸気タービン72から排出された蒸気に合流するようになっていてもよいし、あるいは、例えば図13に示すように、蒸気タービン72の中間段に供給されるようになっていてもよい。
【0081】
幾つかの実施形態では、例えば図13に示すように、蒸気タービン72から排出された蒸気は、タービン出口ライン76を介して復水器77に導かれるようになっていてもよい。復水器77で凝縮された液体状態の第2媒体は、排熱回収ボイラ60に戻されるようになっていてもよい。
【0082】
幾つかの実施形態では、例えば図9図10図14及び図15に示すように、熱利用設備18は、二酸化炭素回収設備30を備えている。二酸化炭素回収設備30は、吸収剤を含む吸収液を用いてガス中の二酸化炭素を吸収するための吸収部32(吸収塔)と、二酸化炭素を吸収した吸収液を加熱して再生するための再生部36(再生塔)と、を含む。吸収部32には、第1熱交換器2から排出された熱源媒体のガスが供給されるように構成される。
【0083】
吸収部32は、第1熱交換器2から排出されたガスと吸収液とを接触させて、吸収液にガス中の二酸化炭素を吸収させるように構成される。二酸化炭素を吸収した吸収液(二酸化炭素の含有量が比較的多いリッチ液)は、吸収部32の底部に貯留され、リッチ液ライン34を介して再生部36に導かれる。なお、吸収液と接触されたガスは、煙突33を介して外部に排出されるようになっていてもよい。
【0084】
再生部36は、吸収部32からの吸収液(リッチ液)を加熱して、該吸収液から二酸化炭素を放出させる。吸収液から放出された二酸化炭素ガスは、COガスライン44を介して再生部36から取り出され、EOR(Enhanced Oil Recovery)、各種化学物質や合成燃料の原料として利用されたり、地球温暖化抑制のため、貯留・固定されたりする。
【0085】
一方、再生部36で再生された吸収液(二酸化炭素の含有量が比較的少ないリーン液)は、再生部36の底部に貯留され、リーン液ライン38を介して吸収部32に戻される。リッチ液ライン34を流れるリッチ液は、熱交換器40にて、リーン液ライン38を流れるリーン液によって加熱されるようになっていてもよい。
【0086】
幾つかの実施形態では、再生部36は、高圧フラッシュタンク6及び低圧フラッシュタンク8で生成された第1媒体の蒸気を用いて、吸収液を加熱するように構成されてもよい。例えば、例えば図9図10図14及び図15に示すように、再生部36は、第1媒体の蒸気との熱交換により吸収液を加熱するように構成されたリボイラ42を含んでもよい。すなわち、この実施形態に係る熱回収利用システム1の熱利用設備18(二酸化炭素回収設備30)における被加熱媒体は、吸収液である。
【0087】
上述の実施形態によれば、比較的小さな圧縮機動力により生成された高温・高圧の第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備30において吸収液を再生するために利用することができる。
【0088】
なお、吸収液に含まれる二酸化炭素吸収剤の種類は特に限定されないが、例えば、モノエタノールアミン、ジエタノールアミンに代表されるアルカノールアミンや、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム及水酸化カルシウム等のアミン以外の各種アルカリ水溶液を使用することができる。
【0089】
幾つかの実施形態では、二酸化炭素回収設備30は、第1熱交換器2で第1媒体を加熱した後の熱源媒体に含まれる二酸化炭素を回収するように構成される。
【0090】
幾つかの実施形態では、例えば図9及び図10に示すように、熱回収利用システム1は、二酸化炭素含有ガスを発生させるように構成された二酸化炭素含有ガス発生設備51を備える。また、第1熱交換器2は、熱源媒体としての二酸化炭素含有ガスとの熱交換により循環ライン4を流れる第1媒体を加熱するように構成され、二酸化炭素回収設備30は、第1熱交換器2で第1媒体を加熱した後の二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を回収するように構成される。
二酸化炭素回収設備30で二酸化炭素含有ガスから二酸化炭素を回収するためには、二酸化炭素含有ガスを冷却し、低い温度(例えば40℃)とする必要がある。その際、低温の冷却排熱が発生し、有効活用が課題となる。冷却排熱は低温であるため、本課題の解決は困難である。一方、二酸化炭素回収設備30では、吸収液を加熱するリボイラ42で大きな熱量を消費し、その供給が課題となる。ここで、リボイラ42で必要な熱は、二酸化炭素含有ガスを冷却する際に発生する排熱よりも高い温度(例えば140℃)が必要であり、二酸化炭素含有ガスを冷却する際に発生する排熱を直接用いてリボイラ42で必要な熱を供給することはできない。本願発明を用いると、比較的小さな圧縮動力を用いることで、二酸化炭素含有ガスを冷却する際に発生する低温排熱を有効に活用して、リボイラ42で必要な熱を供給することが可能となり、上記課題を解決、エネルギー利用効率を高め、少ないエネルギー消費で二酸化炭素を回収することができる。
【0091】
二酸化炭素含有ガス発生設備51と、排出される二酸化炭素含有ガスの組合せは、例えば、原動機(ガスタービン、ガスエンジン、SOFC、等)とその排ガス、ボイラとその排ガス、改質炉と改質ガス、溶鉱炉と溶鉱炉副生ガス、燃料を燃焼させる熱処理炉とその排ガス、窯業用の窯とその排気ガス、ゴミ焼却炉とその排気ガス、等が挙げられる。上述の改質炉は、例えば水蒸気メタン改質(SMR: Steam Methane Reforming)、自己熱改質(ATR: Autothermal Reforming)、等を行う炉を含んでもよい。
【0092】
一実施形態では、例えば図14及び図15に示すように、二酸化炭素含有ガス発生設備51は、燃料を燃焼させることで二酸化炭素を含む燃焼排ガスを発生するように構成された燃焼装置82を含む。
【0093】
燃焼装置82は、例えば、原動機(ガスタービン、ガスエンジン、SOFC、等)や、各熱処理炉等を含んでもよい。
【0094】
図15に示す例示的な実施形態では、燃焼装置82は、空気を圧縮するための圧縮機90と、圧縮空気とともに燃料を燃焼させるための燃焼器92と、燃焼器92で発生した燃焼ガスによって駆動されるように構成されたタービン94と、を含む。ガスタービン88は、発電機96を駆動するように構成されていてもよい。
【0095】
幾つかの実施形態では、例えば図14及び図15に示すように、熱回収利用システム1は、炭素含有燃料ガスを生成するように構成された燃料ガス生成設備80を備え、燃焼装置82は、燃料ガス生成設備80で生成された炭素含有燃料ガスを燃料として用いるように構成される。
【0096】
図15に示す例示的な実施形態では、燃料ガス生成設備80は、高炉を含む製鉄設備84を含む。高炉では、鉄鉱石の還元反応により、一酸化炭素及び二酸化炭素を含むガスが生成され、排出される。燃焼装置82(図15に示す例ではガスタービン88)は、製鉄設備84から排出された炭素含有燃料ガス(一酸化炭素等)を燃料として用いるように構成される。
【0097】
上述の実施形態によれば、燃料ガス生成設備80(例えば製鉄設備84)で生成された炭素含有燃料ガスを燃焼装置82(例えばガスタービン88)における燃料として利用することができ、二酸化炭素回収設備30において燃焼装置82からの燃焼排ガス(熱源媒体)に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該燃焼排ガス(熱源媒体)から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備30において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0098】
上記各実施形態に記載の内容は、例えば以下のように把握される。
【0099】
[1]本発明の少なくとも一実施形態に係る熱回収利用システム(1)は、
第1媒体が循環する循環ライン(4)と、
前記循環ラインを流れる液体状態の前記第1媒体を熱源媒体との熱交換により加熱するための第1熱交換器(2)と、
前記循環ラインに設けられ、前記第1熱交換器で加熱された液体状態の前記第1媒体が導かれる高圧フラッシュタンク(6)と、
前記循環ラインに設けられ、前記高圧フラッシュタンクから液体状態の第1媒体が導かれる少なくとも1つの低圧フラッシュタンク(8)と、
前記高圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を熱利用設備に導くための蒸気供給ライン(10)と、
前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクで発生した前記第1媒体の蒸気を、前記蒸気供給ラインを流れる前記高圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気に合流させるための蒸気合流ライン(12)と、
前記蒸気合流ラインに設けられ、前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気をそれぞれ昇圧するための少なくとも1つの低圧段圧縮機(14)と、
を備える。
【0100】
上記[1]の構成によれば、第1熱交換器で熱源媒体との熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクで順次フラッシュさせて蒸気(フラッシュ蒸気)を発生させるようにしたので、フラッシュタンクを一段のみ設ける場合に比べ、第1媒体がより低温になるまで蒸気を取り出すことができる。また、低圧フラッシュタンクで発生させた比較的低温・低圧の蒸気を圧縮機で圧縮するようにしたので、このように圧縮した蒸気を、高圧フラッシュタンクで発生した蒸気とともに、高温・高圧の蒸気として利用することができる。よって、上記[1]の構成では、比較的小さな圧縮機動力により、より多くの高温・高圧の蒸気を生成して利用することができる。すなわち、上記[1]の構成によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0101】
[2]幾つかの実施形態では、上記[1]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記第1熱交換器において、前記第1媒体及び前記熱源媒体が相変化せずに熱交換するように構成される。
【0102】
上記[2]の構成によれば、第1熱交換器において第1媒体及び熱源媒体が相変化せずに熱交換するようにしたので、第1媒体又は熱源媒体の何れか一方が相変化せず他方が相変化しながら熱交換する場合に比べ、熱源媒体と第1媒体との温度差を低減することができる。よって、熱源媒体の熱の利用効率を高めることができる。
【0103】
[3]幾つかの実施形態では、上記[1]又は[2]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記蒸気供給ラインからの前記第1媒体の蒸気を受け取って熱源として利用するように構成された熱利用設備(18)を備える。
【0104】
上記[3]の構成によれば、熱利用設備で蒸気供給ラインからの第1媒体の蒸気を受け取るようにしたので、上記[1]で述べたように効率良く熱を回収しながら、熱利用設備にてより多くの高温・高圧の蒸気を熱源として利用することができる。
【0105】
[4]幾つかの実施形態では、上記[3]の構成において、
前記熱利用設備は、前記第1媒体との熱交換により被加熱媒体を加熱するように構成される。
【0106】
上記[4]の構成によれば、熱利用設備において第1媒体との熱交換により被加熱媒体を加熱するようにしたので、上記[1]で述べたように効率良く熱を回収しながら、熱利用設備にてより多くの高温・高圧の蒸気を熱源として被加熱媒体を加熱することができる。
【0107】
[5]幾つかの実施形態では、上記[4]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記熱利用設備において、前記被加熱媒体及び前記第1媒体が相変化しながら熱交換するように構成される。
【0108】
上記[5]の構成によれば、熱利用設備において被加熱媒体及び第1媒体が相変化しながら熱交換するようにしたので、被加熱媒体又は第1媒体の何れか一方が相変化し他方が相変化せずに熱交換する場合に比べ、第1媒体と被加熱媒体との温度差を低減することができる。よって、熱源媒体の熱の利用効率を高めることができる。
【0109】
[6]幾つかの実施形態では、上記[3]乃至[5]の何れかの構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記熱利用設備で熱源として利用された前記第1媒体を前記循環ラインに戻すための戻しライン(16)を備え、
前記戻しラインは、前記循環ラインのうち、前記高圧フラッシュタンクよりも下流側、かつ、前記少なくとも1つの低圧フラッシュタンクのうち最も下流側に位置する最下流低圧フラッシュタンクよりも上流側の位置に、又は、前記最下流低圧フラッシュタンクに前記第1媒体を戻すように構成される。
【0110】
上記[6]の構成では、熱利用設備で熱源として利用された第1媒体を循環ラインに戻し、低圧フラッシュタンクで再度フラッシュさせて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成し、該蒸気を低圧段圧縮機で昇圧して熱利用設備に供給する。すなわち、上記[6]の構成によれば、熱利用設備で熱源として利用された後の比較的高温・高圧の第1媒体低圧フラッシュタンクに導くことで該第1媒体に残っている熱をさらに利用する。これにより、熱利用設備の出口の第1媒体を直接第1熱交換器に送る場合に比べて、第1熱交換器の入口における第1媒体の温度が低下するため、熱源媒体がより低温になるまで熱源媒体の熱を回収することができる。よって、上記[6]の構成によれば、より効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0111】
[7]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[6]の何れかの構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記蒸気供給ラインに設けられ、前記高圧フラッシュタンクからの前記第1媒体の蒸気を昇圧するための高圧段圧縮機(20)を備える。
【0112】
上記[7]の構成によれば、高圧フラッシュタンクで生成された比較的高温・高圧の第1媒体のフラッシュ蒸気を高圧段圧縮機で昇圧することで、熱利用設備においてさらに温度及び圧力が高い蒸気(例えば、第1熱交換器における熱源媒体の温度よりも高温の蒸気)を利用することができる。
【0113】
[8]幾つかの実施形態では、上記[7]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記少なくとも1つの低圧段圧縮機と前記高圧段圧縮機との間に設けられ、前記少なくとも1つの低圧段圧縮機で昇圧された前記第1媒体の蒸気を冷却するための冷却部(22)を備える。
【0114】
上記[8]の構成によれば、低圧段圧縮機で圧縮された第1媒体の蒸気が冷却部で冷却されてから高圧段圧縮機に導入されるので、高圧段圧縮機の圧縮機動力を低減することができる。よって、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0115】
[9]幾つかの実施形態では、上記[8]の構成において、
前記冷却部は、前記循環ラインからの液体状態の前記第1媒体を前記第1媒体の蒸気に噴霧するように構成される。
【0116】
上記[9]の構成によれば、循環ラインからの液体状態の第1媒体を噴霧することにより、低圧段圧縮機で圧縮された第1媒体の蒸気を適切に冷却することができる。
【0117】
[10]幾つかの実施形態では、上記[8]の構成において、
前記冷却部は、前記循環ラインからの液体状態の前記第1媒体との熱交換により前記第1媒体の蒸気を冷却するように構成される。
【0118】
上記[10]の構成によれば、循環ラインからの液体状態の第1媒体との熱交換により、低圧段圧縮機で圧縮された第1媒体の蒸気を適切に冷却することができる。
【0119】
[11]幾つかの実施形態では、上記[8]の構成において、
前記冷却部は、前記高圧フラッシュタンク内の液体状態の前記第1媒体との熱交換により前記第1媒体の蒸気を冷却するように構成される。
【0120】
上記[11]の構成によれば、高圧フラッシュタンク内の比較的高温の液体状態の第1媒体との熱交換により低圧段圧縮機で圧縮された第1媒体の蒸気を冷却するようにしたので、第1媒体の蒸気の冷却し過ぎによる高圧段圧縮機の入口での液滴の発生を抑制することができる。
【0121】
[12]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[11]の何れかの構成において、
前記熱回収利用システムは、
排ガス生成設備からの排ガスが導かれるダクト(62)、及び、前記ダクト内に設けられて前記排ガスとの熱交換により第2媒体を加熱して蒸気を生成するための少なくとも1つの第2熱交換器(例えば上述の蒸発器66a、過熱器66b、節炭器66c、蒸発器68a及び/又は過熱器68b)と、を含む排熱回収ボイラ(60)を備え、
前記第1熱交換器は、前記ダクト内にて前記少なくとも1つの第2熱交換器よりも前記排ガスの流れにおける下流側に設けられるとともに、前記熱源媒体としての前記排ガスとの熱交換により前記第1媒体を加熱するように構成される。
【0122】
上記[12]の構成では、排熱回収ボイラにおいて、排ガス生成設備からの排ガスの熱を用いて第2熱交換器での熱交換により第2媒体の蒸気を生成するのに加え、第2熱交換器を通過して温度が低下した排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクに導いて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成することができる。よって、上記[12]の構成によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0123】
[13]幾つかの実施形態では、上記[12]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記循環ラインのうち前記第1熱交換器よりも下流側かつ前記高圧フラッシュタンクよりも上流側の部位から分岐して、前記部位を流れる前記第1媒体の一部を前記第2媒体として前記少なくとも1つの第2熱交換器の何れかに導くための分岐ライン(56A、56B)を備える。
【0124】
上記[13]の構成によれば、第1熱交換器での排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体の一部を、分岐ラインを介して第2媒体として第2熱交換器に導くことができる。すなわち、第1熱交換器での比較的低温の排ガスとの熱交換により、高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクに導かれる第1媒体、及び、第2熱交換器に導かれる第2媒体を加熱することができる。よって、上記[13]の構成によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0125】
[14]幾つかの実施形態では、上記[13]の構成において、
前記少なくとも1つの第2熱交換器は、圧力が互いに異なる蒸気を生成するための複数の蒸発器(66a,68a)を含み、
前記分岐ラインは、前記循環ラインの前記部位を流れる前記第1媒体の一部を、前記複数の蒸発器のうち前記ダクト内にて前記排ガスの流れにおける最も下流側に設けられた蒸発器(68a)に導くように構成される。
【0126】
上記[14]の構成によれば、第1熱交換器での排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体の一部を、第2媒体として、分岐ラインを介してダクト内にて最も下流側に配置される蒸発器に導くことができる。すなわち、第1熱交換器での比較的低温の排ガスとの熱交換により、高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクに導かれる第1媒体、及び、上述の蒸発器に導かれる第2媒体を加熱することができる。よって、上記[14]の構成によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0127】
[15]幾つかの実施形態では、上記[12]乃至[14]の何れかの構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記排熱回収ボイラで生成された前記第2媒体の蒸気によって駆動されるように構成された蒸気タービン(72)を備える。
【0128】
上記[15]の構成によれば、排熱回収ボイラにおいて、排ガス生成設備からの排ガスの熱を用いて第2熱交換器での熱交換により蒸気タービン駆動用の蒸気(第2媒体の蒸気)を生成するのに加え、第2熱交換器を通過して温度が低下した排ガスとの熱交換により加熱された第1媒体を高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクに導いて蒸気(フラッシュ蒸気)を生成することができる。よって、上記[15]の構成によれば、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0129】
[16]幾つかの実施形態では、上記[15]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
前記蒸気タービンから前記第2媒体の蒸気が排出されるタービン出口ライン(76)を備え、
前記タービン出口ラインは、前記蒸気供給ラインに接続される。
【0130】
上記[16]の構成によれば、高圧フラッシュタンク及び低圧フラッシュタンクで生成された蒸気(フラッシュ蒸気)に加え、蒸気タービンから排出された蒸気も蒸気供給ラインを介して熱利用設備に供給されるので、効率良く熱を回収しながら、より多くの高温・高圧の蒸気を利用することができる。
【0131】
[17]幾つかの実施形態では、上記[1]乃至[16]の何れかの構成において、
前記熱回収利用システムは、
吸収剤を含む吸収液を用いてガス中の二酸化炭素を吸収するための吸収部(32)と、二酸化炭素を吸収した前記吸収液を加熱して再生するための再生部(36)と、を含む二酸化炭素回収設備(30)を備え、
前記蒸気供給ラインは、前記熱利用設備としての前記再生部に前記第1媒体の蒸気を供給するように構成される。
【0132】
上記[17]の構成によれば、比較的小さな圧縮機動力により生成された高温・高圧の第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収液を再生するために利用することができる。
【0133】
[18]幾つかの実施形態では、上記[17]の構成において、
前記熱源媒体は、二酸化炭素を含み、
前記二酸化炭素回収設備は、前記第1熱交換器で前記第1媒体を加熱した後の前記熱源媒体に含まれる二酸化炭素を回収するように構成される。
【0134】
上記[18]の構成によれば、二酸化炭素回収設備において熱源媒体に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該熱源媒体から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0135】
[19]幾つかの実施形態では、上記[17]又は[18]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
二酸化炭素含有ガスを発生させるように構成された二酸化炭素含有ガス発生設備(51)を備え、
前記第1熱交換器は、前記熱源媒体としての前記二酸化炭素含有ガスとの熱交換により前記第1媒体を加熱するように構成され、
前記二酸化炭素回収設備は、前記第1熱交換器で前記第1媒体を加熱した後の前記二酸化炭素含有ガスに含まれる二酸化炭素を回収するように構成される。
【0136】
上記[19]の構成によれば、二酸化炭素回収設備において二酸化炭素含有ガス発生設備からの二酸化炭素含有ガス(熱源媒体)に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該二酸化炭素含有ガス(熱源媒体)から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0137】
[20]幾つかの実施形態では、上記[19]の構成において、
前記二酸化炭素含有ガス発生設備は、燃料を燃焼させることで二酸化炭素を含む燃焼排ガスを発生するように構成された燃焼装置(82)を含む。
【0138】
上記[20]の構成によれば、二酸化炭素回収設備において燃焼装置からの燃焼排ガス(熱源媒体)に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該燃焼排ガス(熱源媒体)から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0139】
[21]幾つかの実施形態では、上記[20]の構成において、
前記熱回収利用システムは、
炭素含有燃料ガスを生成するように構成された燃料ガス生成設備(80)を備え、
前記燃焼装置は、前記燃料ガス生成設備で生成された前記炭素含有燃料ガスを前記燃料として用いるように構成される。
【0140】
上記[21]の構成によれば、燃料ガス生成設備で生成された炭素含有燃料ガスを燃焼装置における燃料として利用することができ、二酸化炭素回収設備において燃焼装置からの燃焼排ガス(熱源媒体)に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該燃焼排ガス(熱源媒体)から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0141】
[22]幾つかの実施形態では、上記[21]の構成において、
前記燃料ガス生成設備は、高炉を含む製鉄設備(84)を含み、
前記燃焼装置は、前記製鉄設備から排出された前記炭素含有燃料ガスを前記燃料として用いるように構成される。
【0142】
上記[22]の構成によれば、製鉄設備で生成された炭素含有燃料ガスを燃焼装置における燃料として利用することができ、二酸化炭素回収設備において燃焼装置からの燃焼排ガス(熱源媒体)に含まれる二酸化炭素を回収するとともに、該燃焼排ガス(熱源媒体)から回収した熱を用いて生成される第1媒体の蒸気を、二酸化炭素回収設備において吸収剤を再生するために利用することができる。
【0143】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
【0144】
本明細書において、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
また、本明細書において、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
また、本明細書において、一の構成要素を「備える」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【符号の説明】
【0145】
1 熱回収利用システム
2 第1熱交換器
4 循環ライン
4a 接続ライン
4b 接続ライン
5 減圧弁
6 高圧フラッシュタンク
7a 減圧弁
7b 減圧弁
8 低圧フラッシュタンク
9 ポンプ
10 蒸気供給ライン
12 合流ライン
14 低圧段圧縮機
16 戻しライン
18 熱利用設備
20 高圧段圧縮機
22 冷却部
24 スプレー
25 冷却液ライン
26 熱交換部
28 冷却部
30 二酸化炭素回収設備
32 吸収部
33 煙突
34 リッチ液ライン
36 再生部
38 リーン液ライン
40 熱交換器
42 リボイラ
44 COガスライン
50 排ガス生成設備
51 二酸化炭素含有ガス発生設備
52 排ガス導入ライン
54 排出ライン
56 分岐ライン
56A 分岐ライン
56B 分岐ライン
57A バルブ
57B バルブ
58 蒸気利用設備
60 排熱回収ボイラ
62 ダクト
64 節炭器
66a 蒸発器
66b 過熱器
66c 節炭器
67 蒸気ドラム
68a 蒸発器
68b 過熱器
72 蒸気タービン
74 発電機
76 タービン出口ライン
77 復水器
80 燃料ガス生成設備
82 燃焼装置
84 製鉄設備
88 ガスタービン
90 圧縮機
92 燃焼器
94 タービン
96 発電機
100 熱回収利用システム
106 フラッシュタンク
J 合流点
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20
図21