(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176665
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】実装装置および実装装置が備えるボンディングヘッドの変位検出方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/60 20060101AFI20241212BHJP
H01L 21/52 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095395
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】519294332
【氏名又は名称】株式会社新川
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】永口 悠二
(72)【発明者】
【氏名】瀬山 耕平
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5F044KK01
5F044PP16
5F044PP17
5F047AA17
5F047FA08
5F047FA71
(57)【要約】
【課題】実装装置において、ボンディングヘッドの進退方向の変位量と回動方向の変位量を精確に検出することができる実装装置等を提供する。
【解決手段】実装装置は、円筒側面を有するボンディングヘッドと、ボンディングヘッドを支持する支持部材と、ボンディングヘッドをその軸方向へ進退させる第1アクチュエータと、ボンディングヘッドをその軸周りに回動させる第2アクチュエータと、ボンディングヘッドの軸方向の変位を検出するための、上記円筒側面に設けられた第1スケールと、ボンディングヘッドの軸周りの変位を検出するための、上記円筒側面に設けられた第2スケールと、第1スケールを読取り、ボンディングヘッドの軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する第1センサヘッドと、第2スケールを読取り、ボンディングヘッドの軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する、上記支持部材に支持された第2センサヘッドとを備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
円筒側面を有するボンディングヘッドと、
前記ボンディングヘッドを、前記円筒側面における中心軸に沿う軸方向に進退可能であると共に前記中心軸の軸周りに回動可能であるように支持する支持部材と、
前記ボンディングヘッドを前記軸方向に進退させる第1アクチュエータと、
前記中心軸とは一致しない出力軸を有し、前記ボンディングヘッドを前記軸周りに回動させる第2アクチュエータと、
前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位を検出するための、前記円筒側面に設けられた第1スケールと、
前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位を検出するための、前記円筒側面に設けられた第2スケールと、
前記第1スケールを読取り、前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する第1センサヘッドと、
前記第2スケールを読取り、前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する、前記支持部材に支持された第2センサヘッドと
を備える実装装置。
【請求項2】
前記第1スケールと前記第2スケールは、前記円筒側面において隣接して配置されている請求項1に記載の実装装置。
【請求項3】
前記第1スケールは、複数の第1線分によって形成されており、
前記第2スケールは、複数の第2線分によって形成されており、
前記複数の第1線分のそれぞれの長さは、前記複数の第2線分のうちの両端の線分の間隔に等しく、前記複数の第2線分のそれぞれの長さは、前記複数の第1線分のうちの両端の線分の間隔に等しい請求項2に記載の実装装置。
【請求項4】
前記第1スケールと前記第2スケールは、一体的に成形されて前記円筒側面に装着されている請求項2または3に記載の実装装置。
【請求項5】
実装装置が備えるボンディングヘッドの変位検出方法であって、
円筒側面を有する前記ボンディングヘッドを、前記ボンディングヘッドを支持する支持部材に対して、前記円筒側面における中心軸の軸周りに前記中心軸とは一致しない出力軸を有する第2アクチュエータを用いて変位させた場合に、前記支持部材に支持された第2センサヘッドが、前記円筒側面に設けられた第2スケールを読み取って、前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する第2出力ステップと、
前記ボンディングヘッドを、前記支持部材に対して、前記中心軸に沿う軸方向へ第1アクチュエータを用いて変位させた場合に、第1センサヘッドが、前記円筒側面に設けられた第1スケールを読み取って、前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する第1出力ステップと
を有する変位検出方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、実装装置および実装装置が備えるボンディングヘッドの変位検出方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばダイボンダなど半導体チップの製造時に利用される実装装置においては、先端部に半導体チップを吸着したボンディングヘッドの位置を制御して、ステージ上に設置されたリードフレームのダイパッドへ精度よく載置する必要がある。そのために、ダイパッドに対するボンディングヘッドや吸着した半導体チップの位置を精確に計測する技術などが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
半導体チップをリードフレームへ載置する直前の相対的な位置関係を精確に計測できても、半導体チップを吸着するボンディングヘッドを精度よく変位させることができなければ、半導体チップをリードフレームの目標位置へ正しく載置することができない。特に、半導体チップをリードフレームへ載置する直前の段階において、ボンディングヘッドを直接的に駆動して変位させるような場合には、特に精度よくその変位量を検出したい。このような要請は、半導体チップを基板の目標位置に実装するフリップチップボンダであっても同様である。
【0005】
一般的な実装装置においてボンディングヘッドは、リンク機構やギア列を介して回動されるため、アクチュエータの出力軸とボンディングヘッドの回動軸が一致していない。また、ボンディングヘッドを直動させる駆動機構と回動させる駆動機構は、ボンディングヘッドに対して積み重ねるように階層的に構造化される場合もある。そのため、アクチュエータの出力軸の回転量を検出してボンディングヘッドの回動量を算出しようとすると、動力伝達機構のあそびや階層構造による累積誤差等により、必ずしも精確な値を得ることができなかった。
【0006】
本発明は、このような問題を解決するためになされたものであり、ボンディングヘッドの進退方向の変位量と回動方向の変位量を精確に検出することができる実装装置等を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の態様における実装装置は、円筒側面を有するボンディングヘッドと、前記ボンディングヘッドを、前記円筒側面における中心軸に沿う軸方向に進退可能であると共に前記中心軸の軸周りに回動可能であるように支持する支持部材と、前記ボンディングヘッドを前記軸方向へ進退させる第1アクチュエータと、前記中心軸とは一致しない出力軸を有し、前記ボンディングヘッドを前記軸周りに回動させる第2アクチュエータと、前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位を検出するための、前記円筒側面に設けられた第1スケールと、前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位を検出するための、前記円筒側面に設けられた第2スケールと、前記第1スケールを読取り、前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する第1センサヘッドと、前記第2スケールを読取り、前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する、前記支持部材に支持された第2センサヘッドとを備える。
【0008】
また、本発明の第2の態様における変位検出方法は、実装装置が備えるボンディングヘッドの変位検出方法であって、円筒側面を有する前記ボンディングヘッドを、前記ボンディングヘッドを支持する支持部材に対して、前記円筒側面における中心軸の軸周りに前記中心軸とは一致しない出力軸を有する第2アクチュエータを用いて変位させた場合に、前記支持部材に支持された第2センサヘッドが、前記円筒側面に設けられた第2スケールを読み取って、前記ボンディングヘッドの前記軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する第2出力ステップと、前記ボンディングヘッドを、前記支持部材に対して、前記中心軸に沿う軸方向へ第1アクチュエータを用いて変位させた場合に、第1センサヘッドが、前記円筒側面に設けられた第1スケールを読み取って、前記ボンディングヘッドの前記軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する第1出力ステップとを有する。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、ボンディングヘッドの進退方向の変位量と回動方向の変位量を精確に検出することができる実装装置等を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態に係るフリップチップボンダの要部を模式的に示す斜視図である。
【
図2】フリップチップボンダのシステム構成図である。
【
図3】ボンディングヘッドと2つのセンサヘッドを模式的に示す斜視図である。
【
図5】ボンディングヘッドを直接的に変位させる場合における演算処理部の処理手順を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、特許請求の範囲に係る発明を以下の実施形態に限定するものではない。また、実施形態で説明する構成の全てが課題を解決するための手段として必須であるとは限らない。
【0012】
図1は、本実施形態に係るフリップチップボンダ100の要部を模式的に示す斜視図である。フリップチップボンダ100は、位置制御装置が組み込まれた実装装置の一例であり、一方の面に電極が形成された半導体チップ310を基板330の電極に実装するボンディング装置である。なお、
図1に示すフリップチップボンダ100の斜視図は、ボンディングヘッド110を直接的に変位させる場合の位置制御に関連する要素を限定的かつ模式的に示す図であり、フリップチップボンダ100がその機能を発揮するために必須な構成の全てを示すものではない。また、実装装置は、フリップチップボンダに限らず、半導体チップをリードフレームのダイパッドへ載置して接着するダイボンダであってもよい。
【0013】
フリップチップボンダ100は、主に、ボンディングヘッド110、ホルダベース120、直動機構部130、回動機構部140、ホルダブロック150、センサプレート160を備える。ボンディングヘッド110は、先端部に半導体チップ310を吸着し、ステージ220に載置された基板330の実装領域320に載置し、加圧/加熱して接着する。本実施形態におけるボンディングヘッド110は、全体的に円筒形状をなし、その円筒側面における中心軸Acは、図示するようにZ軸に平行である。なお、本実施形態においては図示するようにZ軸方向は垂直方向(高さ方向)であり、X軸方向とY軸方向は平面方向であって、それぞれが互いに直交する方向に定められている。
【0014】
ホルダベース120は、ホルダブロック150を介してボンディングヘッド110を支持する支持部材である。ホルダベース120は、直動機構部130および回動機構部140も直接的または間接的に支持する。また、ホルダベース120は、ステージ220の上部空間において、
図1には不図示のホルダアクチュエータの駆動により、図示する白抜き矢印に示すように垂直方向および平面方向へ全体移動させることができる。このような全体移動制御により、ホルダベース120は、例えば、チップ供給装置で半導体チップ310を吸着したボンディングヘッド110を載置対象となる実装領域320の上部まで移動させることができる。なお、ホルダベース120の全体移動中においてボンディングヘッド110は、ホルダベース120に対して相対的に静止した状態を保つことが望ましい。
【0015】
直動機構部130は、ボンディングヘッド110を中心軸Acに沿う軸方向(図の矢印に示すz方向)へ設定された微小距離の範囲(例えば基準位置に対して±0.5mm)で進退させるための進退微動機構である。直動機構部130は、例えばモータである第1アクチュエータ131と、第1アクチュエータ131の出力を伝達する伝達機構とを含む。伝達機構は、例えばラックとピニオンギアを含むギア列とによって構成される。
【0016】
回動機構部140は、ボンディングヘッド110を中心軸Acの軸周り(図の矢印に示すθ方向)に設定された微小角度の範囲(例えば基準角度に対して±5度)で回動させるための回動微動機構である。回動機構部140は、例えばモータである第2アクチュエータ141と、第2アクチュエータ141の出力を伝達する伝達機構とを含む。伝達機構は、例えばレバークランク機構とギア列によって構成される。なお、第1アクチュエータ131、第2アクチュエータ141は、伝達機構を省略したボイスコイルモータ、エアシリンダ、油圧シリンダ、リニアモータ等によりボンディングヘッド110を軸方向もしくは軸周りに駆動するものであってもよい。
【0017】
ホルダブロック150は、ホルダベース120に取り付けられると共に、ボンディングヘッド110が中心軸A
cに沿う軸方向へ進退できるように、かつ中心軸A
cの軸周りに回動できるように、ボンディングヘッド110を支持して案内するガイド部材である。ホルダブロック150は、ホルダベース120と一体的に形成されていてもよい。ホルダブロック150は、ボンディングヘッド110の円筒側面の一部を外部へ露出させるための開口窓151を有する。開口窓151は、
図1においては矩形枠で囲まれた形状をなすが、ホルダブロック150がボンディングヘッド110を支持して案内する機能を保つ限り、いかなる形状であっても構わない。
【0018】
センサプレート160は、ボンディングヘッド110の円筒側面に対向し、開口窓151の少なくとも一部を覆うようにホルダブロック150へ設置される板状部材である。センサプレート160は、第1センサヘッド161と第2センサヘッド162を、それぞれのセンシング部がボンディングヘッド110の円筒側面と対向するように支持する。第1センサヘッド161は、ボンディングヘッド110の軸方向(進退方向)の変位に応じた第1検出信号を出力する。第2センサヘッド162は、ボンディングヘッド110の軸周り(回動方向)の変位に応じた第2検出信号を出力する。
図1においては、第1センサヘッド161と第2センサヘッド162は、開口窓151の内部に向かって突出するようにセンサプレート160に支持されている。
【0019】
第1センサヘッド161と第2センサヘッド162がこのようにセンサプレート160に配設されることにより、後述する変位算出部は、ホルダベース120に対するボンディングヘッド110の軸方向の変位量と軸周りの変位量を算出することができる。すなわち、第1センサヘッド161と第2センサヘッド162は、実質的に、ホルダベース120に支持されているといえる。
【0020】
図2は、フリップチップボンダ100のシステム構成図である。フリップチップボンダ100の制御システムは、主に、演算処理部170、ホルダアクチュエータ121、第1アクチュエータ131、第2アクチュエータ141、第1センサヘッド161、第2センサヘッド162によって構成される。演算処理部170は、フリップチップボンダ100の制御とプログラムの実行処理を行うプロセッサ(CPU:Central Processing Unit)である。プロセッサは、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)やGPU(Graphics Processing Unit)等の演算処理チップと連携する構成であってもよい。
【0021】
演算処理部170は、位置制御プログラムが指示する処理に応じて様々な演算を実行する機能演算部としての役割も担う。具体的には、演算処理部170は、変位算出部171、駆動制御部172として機能し得る。変位算出部171は、第1センサヘッド161が出力する第1検出信号を受信して、当該第1検出信号を処理することにより、ホルダベース120に対するボンディングヘッド110の軸方向(進退方向)の変位量を算出する。また、変位算出部171は、第2センサヘッド162が出力する第2検出信号を受信して、当該第2検出信号を処理することにより、ホルダベース120に対するボンディングヘッド110の軸周り(回動方向)の変位量を算出する。また、不図示の位置センサから位置検出信号を受信して、当該位置検出信号を処理することにより、ホルダベース120の基準位置における三次元座標を算出する。
【0022】
駆動制御部172は、微動制御において、半導体チップ310の載置対象である実装領域320へ当該半導体チップ310を到達させるために変位させるべき進退目標量を決定し、また、当該実装領域320へ正しい姿勢で載置させるために変位させるべき回動目標量を決定する。そして、駆動制御部172は、回動目標量と、変位算出部171が算出した軸周りの変位量とを逐次比較しつつ第2アクチュエータ141へ駆動信号を送信することにより、半導体チップ310を目標とする姿勢に調整する。さらに、駆動制御部172は、進退目標量と、変位算出部171が算出した軸方向の変位量とを逐次比較しつつ第1アクチュエータ131へ駆動信号を送信することにより、半導体チップ310を実装領域320の目標とする位置へ載置する。また、駆動制御部172は、全体移動制御において、ホルダベース120の移動目標位置を決定する。そして、駆動制御部172は、移動目標位置と、変位算出部171が算出したホルダベース120の三次元座標とを逐次比較しつつホルダアクチュエータ121へ駆動信号を送信することにより、ホルダベース120を移動目標位置へ到達させる。
【0023】
次に、本実施形態において採用する変位検出センサとその配置について説明する。
図3は、ボンディングヘッド110と2つのセンサヘッド(第1センサヘッド161、第2センサヘッド162)を模式的に示す斜視図である。なお、
図3において2つのセンサヘッドは、それぞれが対向するスケールフィルム113との関係が理解しやすいように、実際よりも離間して、かつこれらを支持するセンサプレート160を省いて描かれている。
【0024】
第1センサヘッド161は、対向するスケールフィルム113に描画された第1スケール113aと対で、ボンディングヘッド110の中心軸Acの軸方向(進退方向)の変位量を検出するz軸エンコーダを構成する。z軸エンコーダは、第1センサヘッド161から投光された投射光が第1スケール113aで反射した反射光をフォトダイオードで受光し、その強弱に基づいて生成される、軸方向の変位に応じた第1検出信号を出力する反射型リニアエンコーダである。
【0025】
第2センサヘッド162は、対向するスケールフィルム113に描画された第2スケール113bと対で、ボンディングヘッド110の中心軸Acの軸周り(回動方向)の変位量を検出するθ軸エンコーダを構成する。θ軸エンコーダは、第2センサヘッド162から投光された投射光が第2スケール113bで反射した反射光をフォトダイオードで受光し、その強弱に基づいて生成される、軸周りの変位に応じた第2検出信号を出力する反射型リニアエンコーダである。なお、本実施形態においては、z軸エンコーダもθ軸エンコーダも、このような反射型リニアエンコーダを採用するが、スケールとセンサヘッドを対向させて変位に応じた検出信号を出力する変位センサであれば、いずれの種類のセンサも採用し得る。例えば、スケールをマグネットで構成し、その変化をセンサヘッドに設けられた磁気センサで検出する磁気式エンコーダであってもよい。
【0026】
ボンディングヘッド110の側面の少なくとも一部は、中心軸Acから等距離の円弧によって形成される円筒側面110aによって構成されている。スケールフィルム113は、この円筒側面110aに直接的に貼着してもよいが、本実施形態においては装着の容易性を考慮して、スケールブロック112を介して間接的に装着する。
【0027】
スケールブロック112は、ボンディングヘッド110に取り付けられた場合に中心軸Acから等距離の円弧面となり、実質的にボンディングヘッド110の円筒側面となる外面112aを有する。スケールフィルム113は、この外面112aに貼着されている。したがって、スケールブロック112がボンディングヘッド110に取り付けられると、外面112aに貼着されたスケールフィルム113は、実質的にボンディングヘッド110の円筒側面設けられたことになる。すなわち、第1センサヘッド161は、第1スケール113aの変化を読み取ることにより、ボンディングヘッド110の進退方向の変位をダイレクトに検出することができ、第2センサヘッド162は、第2スケール113bの変化を読み取ることにより、ボンディングヘッド110の回動方向の変位をダイレクトに検出することができる。なお、ボンディングヘッド110が円筒側面を有さない場合であっても、あるいは円筒側面を有するもののスケールブロック112が当該円筒側面に装着されない場合であっても、ボンディングヘッド110に装着されたスケールブロック112の外面112aが、ボンディングヘッド110の回動軸となる中心軸Acから等距離の円弧面であれば、ボンディングヘッド110は実質的に円筒側面を有することになり、当該外面112aにスケールフィルム113が貼着されていればよい。
【0028】
実装装置においては、ボンディングヘッドの中心軸に回動用のアクチュエータ(本実施形態においては第2アクチュエータ141)の出力軸を一致させて、直接的にボンディングヘッドを回動させることが難しい。実際の設計においては、本実施形態のように、ボンディングヘッドの中心軸Acとは一致しない出力軸を有するアクチュエータとその出力を伝達する伝達機構とを組み合わせてボンディングヘッドを回動させる場合が多い。このように構成する場合、従来の実装装置においては、アクチュエータの出力軸の回転量をロータリエンコーダで検出し、換算式を用いてボンディングヘッドの回動量を算出していた。しかし、このようにボンディングヘッドの回動量を算出する場合には、伝達機構のあそびや取付け誤差により、必ずしも精確な値を得ることができなかった。直動機構部にアクチュエータを固定してその出力軸をボンディングヘッドの中心軸に一致させる試みもあるが、このように構成する場合には、回動機構部を直動機構部に積み重ねるように構造化するため、直動機構部の動作に伴う誤差も累積され、やはりボンディングヘッドの回動量を精確に得ることができなかった。
【0029】
このような従来技術に対して本実施形態のフリップチップボンダ100によれば、第1センサヘッド161も第2センサヘッド162も、間に駆動機構部を介さずに、実質的にホルダベース120に支持されており、また、第1スケール113aも第2スケール113bも、実質的にボンディングヘッド110の円筒側面に貼着されている。したがって、ボンディングヘッド110の軸方向の変位も軸周りの変位も直接的に検出することができ、従来の実装装置に比較して、より精度よくそれぞれの変位量を得ることができる。なお、本実施形態においては、変位算出部171は、第1検出信号および第2検出信号に基づいて軸方向の変位量および軸周りの変位量を算出するが、短時間当たりのそれぞれの検出信号の変化を観察することにより、ボンディングヘッド110の軸方向の速度および軸周りの角速度を算出してもよい。
【0030】
図4は、スケールフィルム113を模式的に示す図である。本実施形態において、第1スケール113aと第2スケール113bは、ひとつのフィルム上に隣接して描画されている。第1スケール113aは、ボンディングヘッド110の軸方向の変位を検出するためのスケールであるので、軸方向(進退方向)に対して直交する長さL
1の第1線分が、設定される分解能および進退方向の変位幅W
1に応じた本数ぶんだけ配列されている。変位幅W
1は、上述のように基準位置に対して±0.5mmであれば1.0mmである。
【0031】
第2スケール113bは、ボンディングヘッド110の軸周りの変位を検出するためのスケールであるので、軸まわり(回動方向)に対して直交する長さL2の第2線分が、設定される分解能および回動方向の変位幅W2に応じた本数ぶんだけ配列されている。変位幅W2は、スケールフィルム113の貼着面である外面112aの曲率半径が例えば8mmであり、回動角が上述のように例えば基準角度に対して±5度であれば、2π×8×10/360mmである。
【0032】
ここで、第1スケール113aと第2スケール113bが隣接して配置される場合において、第1センサヘッド161から投光される投射光が変位幅W1の間のいずれの箇所に投光されている場合であっても、ボンディングヘッド110が回動された場合に第2センサヘッド162でその変位量を検出できるためには、第2線分の長さL2は、変位幅W1以上の長さを有する必要がある。同様に、第2センサヘッド162から投光される投射光が変位幅W2の間のいずれの箇所に投光されている場合であっても、ボンディングヘッド110が進退された場合に第1センサヘッド161でその変位量を検出できるためには、第1線分の長さL1は、変位幅W2以上の長さを有する必要がある。本実施形態においては、スケールフィルム113をできるだけ小さくする観点から、L1=W2、L2=W1に設定している。すなわち、複数の第1線分のそれぞれの長さL1は、複数の第2線分のうちの両端の線分の間隔W2に等しく、複数の第2線分のそれぞれの長さL2は、複数の第1線分のうちの両端の線分の間隔W1に等しい。
【0033】
なお、本実施形態においては、第1線分と第2線分を互いに精度よく直交させて描画するために、第1スケール113aと第2スケール113bをひとつのフィルム上に並べて配列したが、第1スケール113aと第2スケール113bの配置はこの例に限らない。第1スケール113aと第2スケール113bは、別々に形成されたものを外面112a上あるいは円筒側面110a上に、互いに向きを調整して貼着するようにしてもよい。また、第1センサヘッド161と第2センサヘッド162がそれぞれ別の支持部材によって支持されているような場合には、第1スケール113aと第2スケール113bを別々に、それぞれのセンサヘッド位置に対向するように設置してもよい。
【0034】
次に、ボンディングヘッド110を直接的に変位させる場合における演算処理部の処理手順について説明する。
図5は、当該処理手順を説明するフロー図である。図示するフローは、全体移動制御によりボンディングヘッド110が載置対象となる実装領域320の上部まで移動され、その後のボンディングヘッド110の進退目標量および回動目標量が決定された時点から開始する。
【0035】
駆動制御部172は、ステップS101で、第2アクチュエータ141へ駆動信号を送信し、ボンディングヘッド110を回動させる。変位算出部171は、ステップS102で、第2センサヘッド162が第2スケール113bを読み取って出力した第2検出信号を取得し、ステップS103で、当該第2検出信号から軸周りの変位量を算出する。
【0036】
変位算出部171は、ステップS104で、算出した変位量が決定された回動目標量に到達したか否かを判断する。到達していないと判断した場合には、ステップS101へ戻る。到達したと判断した場合には、駆動制御部172に第2アクチュエータ141への駆動信号の送信を停止させ、ステップS105へ進む。
【0037】
駆動制御部172は、ステップS105で、第1アクチュエータ131へ駆動信号を送信し、ボンディングヘッド110を進退させる。変位算出部171は、ステップS106で、第1センサヘッド161が第1スケール113aを読み取って出力した第1検出信号を取得し、ステップS107で、当該第1検出信号から軸方向の変位量を算出する。
【0038】
変位算出部171は、ステップS108で、算出した変位量が決定された進退目標量に到達したか否かを判断する。到達していないと判断した場合には、ステップS105へ戻る。到達したと判断した場合には、駆動制御部172に第1アクチュエータ131への駆動信号の送信を停止させ、半導体チップ310を載置対象となる実装領域320へ載置する処理を終了する。
【符号の説明】
【0039】
100…フリップチップボンダ、110…ボンディングヘッド、110a…円筒側面、112…スケールブロック、112a…外面、113…スケールフィルム、113a…第1スケール、113b…第2スケール、120…ホルダベース、121…ホルダアクチュエータ、130…直動機構部、131…第1アクチュエータ、140…回動機構部、141…第2アクチュエータ、150…ホルダブロック、151…開口窓、160…センサプレート、161…第1センサヘッド、162…第2センサヘッド、170…演算処理部、171…変位算出部、172…駆動制御部、220…ステージ、310…半導体チップ、320…実装領域、330…リードフレーム