(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176668
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】複合材の分解処理方法、及び再生ポリオールの製造方法
(51)【国際特許分類】
C08J 11/26 20060101AFI20241212BHJP
C08J 11/28 20060101ALI20241212BHJP
C08G 18/82 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
C08J11/26
C08J11/28 ZAB
C08G18/82
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095398
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000119232
【氏名又は名称】株式会社イノアックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110000497
【氏名又は名称】弁理士法人グランダム特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】野口 敬仁
【テーマコード(参考)】
4F401
4J034
【Fターム(参考)】
4F401AA22
4F401AA26
4F401AD01
4F401AD06
4F401BA06
4F401CA27
4F401CA68
4F401CA75
4F401DC10
4F401EA65
4F401EA66
4F401EA67
4F401EA77
4J034LA01
4J034LA06
4J034LA16
4J034LB06
4J034LB07
(57)【要約】
【課題】ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理するとともに、分解処理液に含まれるアミン化合物を低減可能な技術を提供する。
【解決手段】ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材の分解処理方法であって、前記ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、前記ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、前記ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる、複合材の分解処理方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材の分解処理方法であって、
前記ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、
前記ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、前記ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる、複合材の分解処理方法。
【請求項2】
複合材の分解処理液中において、前記ジカルボン酸と前記アミン化合物との反応生成物を沈降させる、請求項1に記載の複合材の分解処理方法。
【請求項3】
前記ポリエステル部を分解し、かつ、前記ポリウレタン部も分解する分解剤を用いる、請求項1又は請求項2に記載の複合材の分解処理方法。
【請求項4】
前記分解剤として、オクチル酸カリウム、ジエタノールアミン、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロウンデセンの塩からなる群より選ばれる1種以上を用いる、請求項3に記載の複合材の分解処理方法。
【請求項5】
ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理し、得られたポリオールを回収することで再生ポリオールを製造する再生ポリオールの製造方法であって、
前記ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、
前記ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、前記ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる、再生ポリオールの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、複合材の分解処理方法、及び再生ポリオールの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、ポリウレタンフォームから再生ポリオールを製造する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来、ポリウレタンの分解処理については検討されているが、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材の分解処理については十分な検討がなされていない。また、ポリウレタンの分解によって生成されるアミン化合物を、分解処理液から除去する技術が望まれている。
【0005】
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理するとともに、分解処理液に含まれるアミン化合物を低減可能な技術を提供することを目的とする。本開示は、以下の形態として実現することが可能である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[1]
ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材の分解処理方法であって、
前記ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、
前記ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、前記ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる、複合材の分解処理方法。
[2]
複合材の分解処理液中において、前記ジカルボン酸と前記アミン化合物との反応生成物を沈降させる、[1]に記載の複合材の分解処理方法。
[3]
前記ポリエステル部を分解し、かつ、前記ポリウレタン部も分解する分解剤を用いる、[1]又は[2]に記載の複合材の分解処理方法。
[4]
前記分解剤として、オクチル酸カリウム、ジエタノールアミン、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロウンデセンの塩からなる群より選ばれる1種以上を用いる、[3]に記載の複合材の分解処理方法。
[5]
ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理し、得られたポリオールを回収することで再生ポリオールを製造する再生ポリオールの製造方法であって、
前記ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、
前記ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、前記ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる、再生ポリオールの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理するとともに、分解処理液に含まれるアミン化合物を低減可能な技術を提供できる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本開示を詳しく説明する。なお、本明細書において、数値範囲について「-」を用いた記載では、特に断りがない限り、下限値及び上限値を含むものとする。例えば、「10-20」という記載では、下限値である「10」、上限値である「20」のいずれも含むものとする。すなわち、「10-20」は、「10以上20以下」と同じ意味である。また、本明細書において、各数値範囲の上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0009】
1.複合材の分解処理方法
複合材の分解処理方法は、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材の分解処理方法である。複合材の分解処理方法は、ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる。
【0010】
1.1 複合材
複合材は、ポリエステル部とポリウレタン部を備える。複合材の形状、ポリエステル部とポリウレタン部の構成は特に限定されない。例えば、複合材は、ポリウレタン部の表面に、層状のポリエステル部が設けられた構成であってもよく、ポリエステル部の表面に、層状のポリウレタン部が設けられた構成であってもよい。複合材は、層状のポリエステル部と、層状のポリウレタン部とを備えた積層体であってもよい。ポリエステル部及び/又はポリウレタン部が層状の構成では、切断等の手段によってポリエステル部とポリウレタン部を分離しにくく、本開示の技術が特に有効である。
複合材は、例えば、製品の製造過程で排出される端材、又は、破棄される予定の使用済みの製品等であってもよい。
【0011】
複合材における、ポリエステル部とポリウレタン部の質量比率は特に限定されない。ポリエステル部とポリウレタン部の質量比率(ポリエステル部:ポリウレタン部)は、ジカルボン酸の生成量を確保しつつ、再生ポリオールを十分に得る観点から、好ましくは1:99-80:20であり、より好ましくは2:98-60:40であり、更に好ましくは5:95-30:70である。
【0012】
ポリエステル部を構成するポリエステルは、芳香族ポリエステル及び脂肪族ポリエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。芳香族ポリエステルは、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリプロピレンテレフタレート(PPT)、及びポリブチレンテレフタラート(PBT)からなる群より選ばれた少なくとも1種以上が好ましい。
【0013】
ポリウレタン部を構成するポリウレタンは、フォームであってもよく、非フォームであってもよい。ポリウレタンフォームは、軟質ポリウレタンフォーム、半硬質ポリウレタンフォーム、及び硬質ポリウレタンフォームのいずれであってもよい。ポリウレタンとしては、ポリエーテルポリオールを原料とするポリエーテル系ポリウレタン、ポリエステルポリオールを原料とするポリエステル系ポリウレタン、ポリカーボネート系ポリウレタン等が挙げられる。これらの中でも、原料由来のポリオールと同じ再生ポリオールを好適に得られる点から、ポリエーテル系ポリウレタンが好ましい。
【0014】
1.2 分解剤
複合材の分解処理には、分解剤を用いることが好ましい。なお、複合材自体に分解剤として作用する化合物が含まれている場合や、処理雰囲気中の水分が分解剤として作用する場合等には、分解剤は必ずしも添加しなくてもよい。
【0015】
分解剤は、ポリエステル部を分解し、かつ、ポリウレタン部も分解する分解剤であることが好ましい。ポリエステル部を分解する分解剤は、エステル結合の分解反応に作用する性質を有する。ポリウレタン部を分解する分解剤は、ウレタン結合の分解反応に作用する性質を有する。エステル結合の分解反応であり、かつ、ウレタン結合の分解反応である反応としては、例えば、加水分解、アミノリシス、グリコリシスが挙げられる。分解剤は、これらの反応において、分解触媒として作用してもよく、自身が反応物として作用してもよい。分解剤は、1種のみを用いてもよく、2種以上を用いてもよい。
【0016】
本願発明者は、鋭意検討し、複合材において、ポリエステル部を分解する分解剤が、ポリウレタン部を分解する作用を有することを見出した。なお、ポリウレタン部を分解する分解剤は、必ずしもポリエステル部を分解する作用を有しない。すなわち、ポリエステル部を分解し、かつ、ポリウレタン部も分解する分解剤としては、エステル結合を加水分解する作用を有する分解剤、又は、エステル交換反応を起こす分解剤が好適である。
このような分解剤としては、オクチル酸カリウム、ジエタノールアミン、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ジアザビシクロウンデセン、及びジアザビシクロウンデセンの塩からなる群より選ばれる1種以上が挙げられる。なお、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノールは、下記式(1)で表される化合物である。
【化1】
【0017】
分解剤の添加量は、特に限定されない。分解剤の添加量は、複合材100質量部に対して、0.1質量部以上200質量部以下であることが好ましく、0.4質量部以上100質量部以下であることがより好ましく、0.8質量部以上50質量部以下であることが更に好ましい。
【0018】
1.3 分解処理の一例
複合材の分解処理方法は、ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる。
【0019】
ポリウレタンは、分解処理によって、ポリオールとアミン化合物に分解される。アミン化合物としては、ポリウレタンの原料イソシアネート由来のアミン化合物、その誘導体等が挙げられる。すなわち、例えば、原料イソシアネートとして、MDI(ジフェニルメタンジイソシアネート)が用いられている場合には、アミン化合物として、MDA(メチレンジアニリン)、その誘導体等が生成する。
【0020】
ポリエステルは、分解処理によって、ジカルボン酸とジオールに分解される。例えば、ポリエステルがポリエチレンテレフタレートである場合には、テレフタル酸とエチレングリコールに分解される。ジカルボン酸は、アミン化合物の除去剤として作用する。ジオールは、ポリウレタンの分解剤として作用する。また、ジオールは、ウレタン結合を生成することが可能なため、再生原料としても利用され得る。よって、ポリエステルの分解生成物は、ポリウレタンフォームの分解生成物を再利用する際に、再利用への悪影響が極めて少ない。
【0021】
通常、アミン化合物とジカルボン酸を混合すると、アミン化合物とジカルボン酸の塩が生成される。ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させるためには、例えば、複合材の分解処理液中で、ジカルボン酸とアミン化合物を混合すればよい。すなわち、ポリウレタン部が分解するとともに、ポリエステル部が分解する処理条件下で複合材を分解すれば、複合材の分解処理液中でジカルボン酸とアミン化合物が混ざり合い、アミン化合物とジカルボン酸の塩を生成できる。なお、アミン化合物とジカルボン酸を反応させて得られる反応生成物は、アミン化合物とジカルボン酸の塩に限られず、アミド化合物等であってもよい。
【0022】
複合材の分解処理方法の一例としては、容器に、複合材と、必要に応じて分解剤とを入れて、所定の処理温度に保持する。処理温度は、120℃以上250℃以下が好ましく、170℃以上230℃以下がより好ましい。そして、容器内に複合材の分解処理液を滞留させ、複合材の分解処理液中で、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸とを混合し、ジカルボン酸とアミン化合物を反応させる。
【0023】
複合材の分解処理方法は、生成したポリオール(再生ポリオール)と、ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物を分離し易い点から、複合材の分解処理液中において、ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物を沈降させるとよい。「ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物を沈降させる」とは、ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物の少なくとも一部を沈降させることを意味する。ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物が沈降したことは、複合材を分解処理して沈殿物を除いた分解処理液の全アミン価が、ポリウレタンフォーム部のみを分解処理して沈殿物を除いた分解処理液の全アミン価よりも低くなっていることにより確認できる。
【0024】
分解処理液は、単相の状態で得られてもよく、ポリオールを少なくとも含有する上相と、アミン化合物を少なくとも含有する下相とに相分離した状態で得られてもよい。分解処理液が相分離した状態であれば、ポリウレタン部由来のポリオールと、ジカルボン酸とアミン化合物の反応生成物とを分離し易く、好ましい。なお、ポリウレタン樹脂の分解物を相分離した状態で得るためには、分解剤の種類や、分解剤の量等を適宜調整すればよい。
【0025】
複合材の分解処理液は、再生原料として用いてもよいし、一部又は全部を廃棄物として適宜処分してもよい。アミン化合物には、例えば、MDA等の発がん性物質等が含まれ得る。本実施形態の複合材の分解処理方法によれば、分解処理液中のアミン化合物を反応生成物として分離し易い。このため、再生原料として用いる場合であっても、廃棄物として処分する場合であっても、アミン化合物を除去し易く、取り扱い時の安全性を向上できる。また、分解処理液から再生ポリオールを回収する場合には、再生ポリオールのアミン価を低減でき、再生ポリオールの反応性を好適にコントロールできる。
【0026】
2.再生ポリオールの製造方法
再生ポリオールの製造方法は、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理し、得られたポリオールを回収することで再生ポリオールを製造する。再生ポリオールの製造方法は、ポリウレタン部を分解してポリオールを生成させるとともに、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させる。
再生ポリオールの製造方法において、複合材、分解剤、分解処理の一例については、「1.複合材の分解処理方法」の欄における「1.1 複合材」、「1.2 分解剤」、「1.3 分解処理の一例」の説明をそのまま適用し、その記載は省略する。
【0027】
再生ポリオールの製造方法は、上述のように複合材を分解処理し、得られたポリオールを回収する。回収したポリオールは、公知の手法により精製し、また、そのまま再生ポリオールとして利用できる。
【0028】
ポリオールの回収方法は特に限定されない。ジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物は、通常、分解処理液中で固形物として存在するから、例えば、分解処理液を濾過することによって、ポリオールをジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物から分離し、回収できる。また、分解処理液を相分離した状態として、ポリオールを少なくとも含有する上相のみを汲み取り、または、デカントして回収してもよい。このようにすれば、沈殿して、下相内に存在するジカルボン酸とアミン化合物との反応生成物と、ポリオールとを好適に分離できる。
【0029】
3.本実施形態の作用効果
本実施形態の複合材の分解処理方法及び再生ポリオールの製造方法は、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材をそのまま分解処理することができる。従来、ポリウレタンを分解する技術と、ポリエステルを分解する技術はそれぞれ報告されているが、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材をそのまま分解する技術は知られていない。仮に、ポリエステル部とポリウレタン部を切断等の手段によって予め分離してから、それぞれ分解処理する場合には、ポリエステル部とポリウレタン部の分離に手間が掛かる。また、ポリエステル部とポリウレタン部を、完全に分離することは困難である。他方、本実施形態によれば、ポリエステル部とポリウレタン部の分離に掛かる手間を省くことができる。
【0030】
ポリオールに混入するアミン化合物は、ポリオールを再生ポリオール等として利用する際に、影響を及ぼす場合がある。このため、得られるポリオールのアミン価を低減することが望まれる。本実施形態の複合材の分解処理方法及び再生ポリオールの製造方法は、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸と、を反応させるから、得られるポリオールのアミン価を低減できる。
【実施例0031】
1.分解剤のスクリーニング
ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材として、層状のポリエステル部と、層状のポリウレタン部と、を備えた積層体を準備した。厚さ2.5mmの積層体を、30mm×30mmに切り出してサンプルとした。
<複合材>
ロジャースイノアック製PORON、品番SR-S、厚さ2.5mm
・ポリウレタン部 ポリエーテル系ポリウレタンフォーム
・ポリエステル部 ポリエチレンテレフタレートのシート
・ポリウレタン部:ポリエステル部=8:92(質量比)
・ポリウレタン部の原料と、複合材の原料全体を100質量部とした場合の配合割合
ポリオール ポリエーテルポリオール 56質量部
イソシアネート MDI 22質量部
その他の成分 14質量部
【0032】
アルミカップの容器に、表1に記載の分解剤を入れ、ポリエステル部を上にしてサンプルを入れた。分解剤の量は、サンプル100質量部に対して50質量部とした。200℃に加温したホットプレート上に、分解剤とサンプルの入った容器を載せ、5時間静置した。その後、室温に戻し、サンプルの分解状況を目視にて確認した。
【0033】
【0034】
2.分解剤のスクリーニングの結果
分解剤を、以下の基準で目視にて評価した。その結果を表1に併記する。
<ポリウレタン部の分解性>
「分解する」:ポリウレタン部の一部又は全部が残っていない。
「分解しない」:ポリウレタン部の全部が残っている。
<ポリエステル部の分解性>
「分解する」:ポリエステル部の一部又は全部が残っていない。
「分解しない」:ポリエステル部の全部が残っている。
<評価>
「可」:ポリウレタン部の分解性とポリエステル部の分解性がともに「分解する」である。
「不可」:ポリウレタン部の分解性とポリエステル部の分解性のいずれか「分解しない」である。
【0035】
表1に記載の分解剤のうち、オクチル酸カリウム、ジエタノールアミン、2-[[2-(ジメチルアミノ)エチル]メチルアミノ]エタノール、ジアザビシクロウンデセン(DBU)、及びジアザビシクロウンデセンの塩(DBU-フェノール塩)を用いた場合に、複合材を分解処理できることが分かった。
【0036】
3.複合材の分解処理及び再生ポリオールの製造
実施例は、「1.分解剤のスクリーニング」と同じ複合材を、40mm×40mmに切り出してサンプルとした。比較例は、複合材からポリウレタン部のみを、40mm×40mmに切り出してサンプルとした。すなわち、比較例の原料の配合割合は、サンプルの原料全体を100質量部とした場合に、ポリオール(ポリエーテルポリオール)61質量部、イソシアネート(MDI)24質量部、その他の成分 15質量部である。
【0037】
フラスコ中にジアザビシクロウンデセン(DBU)とサンプルを入れ、210℃に昇温し、5時間加熱した。ジアザビシクロウンデセンの量は、サンプル100質量部に対して1質量部とした。加熱後、温度を室温に戻し、分解生成物を濾過した。残渣として、黒色の固形物が得られた。この固形物には、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸との反応生成物が含まれる。また、濾液として、褐色の分解処理液を回収した。この分解処理液には、ポリウレタン部を分解して得られたポリオールが含まれる。すなわち、分解処理液として、再生ポリオールを製造できた。
【0038】
回収された分解処理液について、以下の分析を行った。その結果を、表2に記載する。
・全アミン価
JIS K 1557-4に準拠して測定した。
・水酸基価
JIS K 1557-1に準拠して測定した。
・酸価
JIS K 1557-5に準拠して測定した。
・粘度
JIS K1557-5 6.2.3項に準拠し、コーン・プレート回転粘度計を用いて、せん断速度0.1(1/s)で測定した。
・数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)にて測定されるポリスチレン換算の値である。
・MDA
分解処理液中のMDA量(ppm)を、液体クロマトグラフ質量分析計(LC-MC)によって測定した。
【0039】
【0040】
4.複合材の分解処理及び再生ポリオールの製造の結果
実施例の全アミン価は28.9KOHmg/gであった。これに対して、比較例の全アミン価は58.6KOHmg/gであった。実施例は、比較例よりも全アミン価が低いことが分かった。これは、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物と、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸との反応生成物が分離されたことによって、回収された分解処理液中のアミン化合物の量が低減したためと推察される。
【0041】
実施例の分解処理液中のMDA量は7631ppmであった。これに対して、比較例の分解処理液中のMDA量は19407ppmであった。実施例は、比較例よりもMDA量が少ないことが分かった。これは、ポリウレタン部が分解して生成するアミン化合物であるMDAと、ポリエステル部が分解して生成するジカルボン酸との反応生成物が分離されたことによって、回収された分解処理液中のMDAの量が低減したためと推察される。
【0042】
5.実施例の効果
本実施例によれば、ポリエステル部とポリウレタン部を備えた複合材を分解処理するとともに、分解処理液に含まれるアミン化合物を低減可能な技術を提供できた。
【0043】
本開示は上記で詳述した実施形態に限定されず、様々な変形又は変更が可能である。