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特開2024-176671ウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176671
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01F 23/2375 20220101AFI20241212BHJP
   B01F 23/80 20220101ALI20241212BHJP
   B01F 101/21 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/24 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/22 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/06 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/14 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/44 20220101ALN20241212BHJP
   B01F 101/16 20220101ALN20241212BHJP
【FI】
B01F23/2375
B01F23/80
B01F101:21
B01F101:24
B01F101:22
B01F101:06
B01F101:14
B01F101:44
B01F101:16
【審査請求】未請求
【請求項の数】2
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095402
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一輝
【テーマコード(参考)】
4G035
【Fターム(参考)】
4G035AB15
4G035AC26
(57)【要約】
【課題】分野を問わずに利用可能で長期保存が可能なウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法を提供する。
【解決手段】本開示のウルトラファインバブル液Uは、溶媒中に、ウルトラファインバブルと、界面活性剤と、を含むウルトラファインバブル液Uであって、界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lであり、界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液Uである。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶媒中に、ウルトラファインバブルと、界面活性剤と、を含むウルトラファインバブル液であって、
前記界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lであり、
前記界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、
前記陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液。
【請求項2】
溶媒中にウルトラファインバブルを生成してウルトラファインバブル含有液体を製造する工程と、
界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lになるように前記ウルトラファインバブル含有液体に前記界面活性剤を添加してウルトラファインバブル液を製造する工程と、を含み、
前記界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、
前記陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
直径100μm以下の微細気泡であるファインバブルは、洗浄効果、触媒効果、殺菌・消毒効果、脱臭効果、微粒子吸着効果、生体活性化効果、および摩擦力低減効果を有しており、それらの効果を利用して、多くの分野で利用されている。ファインバブルの中でも、直径1μm未満の超微細気泡は、国際標準化機構(ISO)の規格によりウルトラファインバブルと称される。ウルトラファインバブルは、直径が1μm以上のマイクロバブルとは異なり、水中に長期間にわたって滞在することを特徴としている。また、ウルトラファインバブルは、電荷を帯びていることから、洗浄や薬品を使用せずとも高い洗浄力を発揮する。また、ウルトラファインバブルが有する高機能な触媒効果、および殺菌・消毒効果などから、医療・薬品分野、および食品・飲料水分野での応用も期待されている。
【0003】
例えば、洗浄分野で利用されるウルトラファインバブルとして、特開2020-94088号公報(下記特許文献1)に記載の洗浄溶液が知られている。この洗浄溶液は、ウルトラファインバブルと、界面活性剤と、を含む洗浄溶液であって、前記ウルトラファインバブルの粒子径が50nm以上200nm以下であり、その濃度が、108Particles/mL以上であり、前記界面活性剤の濃度が、臨界ミセル濃度の1/10倍以上1倍未満であり、前記ウルトラファインバブルの表面が前記界面活性剤で被覆されている、ことを特徴とする洗浄溶液である。界面活性剤は、分子内に親水基と疎水基を併せ持つ両親媒性の化学物質であり、一般的に、洗浄の際は、まず汚染物質に湿潤・浸透してその除去を促し、ミセルと呼ばれる自己組織体で汚染を可溶化・乳化(除去)し、その後分散剤として汚染の再付着を防止する働きを持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2020-94088号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記の洗浄溶液では、界面活性剤の濃度が臨界ミセル濃度の1/10倍以上1倍未満となっており、洗浄分野での利用を前提としたものとなっているため、他の分野では利用できないことが考えられる。特に医療分野においては界面活性剤の添加量がより少ない方が好ましく、洗浄分野以外で利用するにはさらなる検討が求められている。一方、界面活性剤の濃度を低くしすぎると、ウルトラファインバブルの安定性が低下し、長期保存の面では不利になる。
【0006】
本開示は上記のような事情に基づいて完成されたものであって、分野を問わずに利用可能で長期保存が可能なウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示のウルトラファインバブル液は、溶媒中に、ウルトラファインバブルと、界面活性剤と、を含むウルトラファインバブル液であって、前記界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lであり、前記界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、前記陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、分野を問わずに利用可能で長期保存が可能なウルトラファインバブル液およびウルトラファインバブル液の製造方法を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、ウルトラファインバブル液生成装置を示す説明図である。
図2図2は、界面活性剤の系統の違いによるUFB濃度変化量の経時変化を示したグラフである。
図3図3は、カチオン系界面活性剤の違いによるUFB濃度変化量の経時変化を示したグラフである。
図4図4は、塩化ベンザルコニウムの添加量の違いによる高濃度UFB濃度変化量の経時変化を示したグラフである。
図5図5は、塩化ベンザルコニウムの添加量の違いによる低濃度UFB濃度変化量の経時変化を示したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
(1)本開示のウルトラファインバブル液は、溶媒中に、ウルトラファインバブルと、界面活性剤と、を含むウルトラファインバブル液であって、前記界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lであり、前記界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、前記陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液である。
【0011】
ウルトラファインバブルは長期間液体中に分散するが、凝集などにより経時変化で徐々に減少することが知られている。液体の状態で製品化し流通しても経時変化による減少で製造時の品質を担保できないという課題がある。ウルトラファインバブルはゼータ電位を帯びたコロイド状粒子であることが分かっており、およそ-5~-50mVの電荷を有しているため、電荷による界面活性剤の吸着が可能である。よって、ウルトラファインバブルの表面を界面活性剤で被覆することにより、疎水的なウルトラファインバブルの表面が親水的になり、これによりウルトラファインバブルの安定性を向上できると考えられる。
【0012】
これについて検討して本願発明者はウルトラファインバブル含有液体を製造し、そこに陽イオン性界面活性剤である塩化ベンザルコニウムの濃度が20μmol/Lから70μmol/Lになるように添加することでウルトラファインバブルを長期保存できることを見出した。具体的には、通常1週間で10%以下にまで減少したウルトラファインバブル濃度が、塩化ベンザルコニウムを用いることにより3か月後においても90%以上残存することを見出した。その理由としては、以下のように考えられる。
1.ゼータ電位がマイナスであるウルトラファインバブルに対して、プラスの官能基を持つ陽イオン性界面活性剤が選択的に吸着を行った。
2.界面活性剤が吸着することにより、気体/液体界面の不安定な状態から、気体/固体/液体となり、界面活性剤による殻のようなものが形成されたことによって、ウルトラファインバブル同士がより凝集しにくくなった。
3.界面活性剤は鎖状になっており、プラスの官能基の反対側は水中でたなびいている状態となる。この界面活性剤が物理的な障壁となり、ウルトラファインバブル同士の接触を抑えることができ、凝集を抑制することができた。
4.ウルトラファインバブルに吸着しきれなかった界面活性剤(遊離界面活性剤)が過剰であると、さらに吸着を誘発してしまい、ウルトラファインバブルの凝集を促進してしまう。界面活性剤の添加量を最小限にすることにより、前記現象を抑えることができた。
【0013】
上記のように界面活性剤を添加する手法においては、環境配慮、医療、ヘルスケアといった異物の混入を嫌う分野で添加量が増えることによるリスクが発生する。その点、本願発明者は塩化ベンザルコニウムの濃度が20μmol/Lから70μmol/Lという最小限の添加量でウルトラファインバブルの長期保存が可能であることを見出した。これにより、環境配慮、医療、ヘルスケアの分野においても異物混入リスクを低減させ、分野を問わずに利用可能で長期保存が可能なウルトラファインバブル液を提供できる。
【0014】
(2)本開示のウルトラファインバブル液の製造方法は、溶媒中にウルトラファインバブルを生成してウルトラファインバブル含有液体を製造する工程と、界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lになるように前記ウルトラファインバブル含有液体に前記界面活性剤を添加してウルトラファインバブル液を製造する工程と、を含み、前記界面活性剤は、アンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤であり、前記陽イオン性界面活性剤は、塩化ベンザルコニウムである、ウルトラファインバブル液の製造方法である。
【0015】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の実施形態を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0016】
(1)全体構成
本開示の実施形態を図1によって説明する。ウルトラファインバブル液生成装置1は、液体(例えば純水等の水)中にウルトラファインバブルを発生させ、ウルトラファインバブル液を生成する装置である。
【0017】
図1に示すように、ウルトラファインバブル液生成装置1は、多数の細孔を有する多孔質のエレメント33を有し、エレメント33の一方の側に配された第1タンク3と、エレメント33の他方の側に配された第2タンク5と、第1タンク3にガス(例えば窒素ガス)を供給するガス供給部9と、第1タンク3に液体を供給する液体供給部11と、を備えている。
【0018】
<第1タンク>
第1タンク3は、液体及びガスを貯留し、内部を加圧できるように構成されている。つまり、後述する、液体の供給や流出、気体の流入部分以外は、液体や気体が流出しないような気密構造となっている。第1タンク3内には、内部の圧力(気圧)を検出するために、第1圧力センサ29が配置されている。
【0019】
第1タンク3の側壁15には、ガス供給部9から供給されるガスを内部に取り入れるためのガス導入口17が設けられている。第1タンク3の上部19には、液体供給部11から供給される液体を内部に取り入れるための液体導入口21が設けられている。なお、ガス導入口17は、第1タンク3に液体が入れられた場合に、その液面よりも上方の位置に配置されている。
【0020】
<ガス供給部>
ガス供給部9は、ガスが充填されたガスボンベ43と、ガスボンベ43とガス導入口17とを接続する第1パイプ45と、第1パイプ45の流路を開閉する第1開閉弁47と、ガスボンベ43内の圧力を検出する第3圧力センサ49と、を備えている。ガス供給部9から第1タンク3に供給されるガスとしては、例えば、空気、水蒸気、水素(H、D、T)、希ガス(He、Ne、Kr、Xe、Rn、Ar)、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アンモニア、塩素、塩化水素ガス、ジシアン、二酸化硫黄、ヨウ化水素、ホスフィン、酸化窒素(NO、NO、NO、NO、N、N、N、N、N)、炭化水素(メタン、エタン等のアルカンやパラフィン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン等)、フッ化ガス(F、HF、CF、C、C、C、CHF、SF、NF、SiF)、塩化ガス(ClO、CCl、HCl、NOCl、CHCl、COCl)、臭化ガス(Br、HBr)、アルコール類、アミン類、アルデヒド類、エステル類、エーテル類、ケトン類、テルペン類、ラクトン類、チオール類、香料、及び精油等のうち1種又は2種以上の気体を採用することができる。
【0021】
<液体供給部>
液体供給部11は、液体導入口21に接続して液体を第1タンク3側に供給する第2パイプ51と、第2パイプ51の流路を開閉する第2開閉弁53とを備えている。なお、図示しないが、第2パイプ51の上流側には、例えば液体を蓄えるタンク等が配置されている。液体供給部11から第1タンク3に供給される液体としては、例えば、水(純水、超純水、精製水、水道水)、エタノール等のアルコール、又は過酸化水素水からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液体を採用することができる。
【0022】
<連通パイプ、噴射弁>
第1タンク3の底部23には、液体供給口25を介して、下方に向かって垂直に延びるステンレス製の円筒形の連通パイプ27が設けられている。第1タンク3内の液体は、連通パイプ27を通って、第2タンク5側に供給される。連通パイプ27には噴射弁31が設けられており、連通パイプ27を通る液体及びガスの流量が調節可能となっている。連通パイプ27の下端部には、筒状をなすエレメント33が接続されている。以下、第1タンク3、連通パイプ27、エレメント33で構成される領域を、第1領域70という。
【0023】
<エレメント>
エレメント33は、下端側(先端側)が閉塞された筒状をなしている。エレメント33の上端は、連通パイプ27に外嵌し、ガラスシール(図示せず)により接合されて、連通パイプ27に隙間なく密着している。エレメント33は、セラミック(例えばアルミナ)を主成分とする多孔質の焼結体であって、焼結体全体には多数の細孔(液体の通過が可能な連通孔)が形成されている。なお、焼結体は、多数の細孔が同様な状態(例えば同様な平均細孔径)で存在する一層構造(すなわち対称構造)である。エレメント33を構成するセラミックは、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ケイ素(一酸化ケイ素、二酸化ケイ素(シリカ))、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタニア、ムライト、マグネシア、セリア、ドープセリア、アルミナセメント、リン酸カルシウム、ガラス、チタン酸バリウム、フェライト、ステアタイト、フォルステライト、炭化ケイ素、ゼオライト、シリカガラス、ケイ酸塩ガラス、及びシラスガラスからなる群より選択される1種又は2種以上の材料を焼結してなる焼結体とされる。その中でも、セラミックとしては、アルミナを焼結してなる焼結体が好ましい。
【0024】
<第2タンク>
第2タンク5は、液体を貯留することができるように構成されている。第2タンク5内には、内部の圧力(気圧)を検出するために、第2圧力センサ41が配置されている。また、第2タンク5には、その側壁37の下部に、液体を第2タンク5から外部に取り出すための液体取出口39が設けられている。
【0025】
<液体取出部>
液体取出口39には、液体取出部13が接続されている。液体取出部13は、液体を外部に取り出すための第3パイプ55と、第3パイプ55の流路を開閉する第3開閉弁57とを備えている。
【0026】
<差圧付与部>
差圧付与部10は、気密構造の第1タンク3、ガス供給部9、液体供給部11、及び噴射弁31によって構成されている。差圧付与部10は、エレメント33の一方の側(第1タンク3側)と他方の側(第2タンク5側)との間に差圧を付与する。
【0027】
<制御部>
ウルトラファインバブル液生成装置1は、制御部60を備えており、差圧付与部10がコンピュータ等によって制御されるように構成されている。具体的には、第1タンク3内に供給される液体の供給量や流量、第1タンク3内の圧力等の計測値に基づいて、制御部60が、第1開閉弁47や第2開閉弁53、噴射弁31等の開閉動作を行い、液体の供給量や第1タンク3内の圧力をあらかじめ設定された値となるように制御する。
【0028】
(2)ウルトラファインバブル液Uの製造方法
ウルトラファインバブル液Uを生成する生成工程では、まず、ガス供給部9から第1タンク3にガスを供給して、第1タンク3と第2タンク5の内部に当該ガスを充満させておく。そして、第2開閉弁53、第1開閉弁47、及び噴射弁31を閉じた後に、第2開閉弁53を開いて第1タンク3に液体(溶媒)を供給する。その後、第2開閉弁53を閉じ、第1開閉弁47を開いて第1タンク3にガスを供給する。このとき、第1開閉弁47の開閉を調整することで、第1タンク3の内部の圧力が大気圧よりも高い圧力(例えば0.5MPa)となるように気体を供給する。これにより、第1タンク3の内部には、ガスと液体とが加圧されて貯留した状態となる。一方、第2タンク5の内部の圧力が、加圧後の第1タンク3の内部の圧力よりも低くなるように調整しておく。
【0029】
この状態で噴射弁31を開くと、第1タンク3に貯留したガスと液体とが、連通パイプ27を流通してエレメント33の内部に流れ込み、エレメント33の内部から外部に噴射する。このとき、エレメント33の内部に流れ込んだガスと液体とは、エレメント33の複数の細孔を通過してエレメント33の外部に噴射することで、当該ガスを包含する気泡と当該液体とが混合したウルトラファインバブル含有液体U1として第2タンク5に貯留する。ウルトラファインバブル含有液体U1は、第2タンク5に設けられた取出口13から容器Cに取り出すことができる。この後、界面活性剤の濃度が20μmol/Lから70μmol/Lになるようにウルトラファインバブル含有液体U1に界面活性剤SをマイクロピペットMPで添加してウルトラファインバブル液Uを製造する(図1参照)。界面活性剤Sがアンモニウム塩の陽イオン性界面活性剤である場合、陽イオン性界面活性剤は塩化ベンザルコニウムとしてもよい。これにより、ウルトラファインバブルの表面が界面活性剤Sで被覆され、長期保存が可能となる。
【0030】
ウルトラファインバブル液Uには、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)が生じている。ナノメートルオーダーとは、1nm以上999nm以下の範囲の値とする。このような気泡の直径は、例えば、エレメント33の細孔の孔径を変更すること等により調整可能とされる。エレメント33の細孔の孔径は、例えば、当該エレメント33を構成するセラミックの材料の粒径(例えば、アルミナの粒径)を変更すること等により調整可能とされる。
【0031】
ウルトラファインバブルは、上記した水(純水、超純水、精製水、水道水)、エタノール等のアルコール、又は過酸化水素水からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液体以外にも、種々の製品等に含有させることができる。このような製品等としては、例えば、美容液、化粧水、美容パック、乳液、育毛剤、発毛剤、ヘアケア用品、身体洗浄剤(クレンジング、洗顔料、シャンプー、ボディソープ等)、香水、香料等の化粧品;飲料類、酒類、調味料類、スープ類、レトルト食品(液体状の食品等)、サプリメント等の食品;注射用水、生理食塩水、細胞外液補充液、人工膠質液、人工血液、輸血液、血液製剤、緩衝液(酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液(マッキルベイン緩衝液)、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等)、身体洗浄液(洗眼液、鼻洗浄液、胃洗浄液、肺洗浄液、腸洗浄液等)、コンタクトレンズ洗浄液、点眼薬、注射製剤、注射液(DDS製剤、ワクチン、低分子医薬品、中分子医薬品、高分子医薬品、遺伝子医薬品)、ネブライザー薬液、液体呼吸用液体等の医療用品;培養液(グルコース含有培養液、アルブミン含有培養液、抗体含有液体培養液、ビタミン含有培養液、血清含有培養液、血漿含有培養液等)等のバイオ用品;アルコール類、有機溶媒(ヘキサン、アセトン、ガソリン、灯油、軽油、その他炭化水素類)、重水等のその他製品等を挙げることができる。このような製品等へのウルトラファインバブルの適用は、例えば、生成装置1により生成されたウルトラファインバブル液Uを上記製品等に添加したり、液体供給部11から供給される液体を上記製品等としたりすることで行うことができる。尚、本開示において、ウルトラファインバブル液Uとしては、上記製品等であってウルトラファインバブルを含む液体のことを指すこととしてもよい。
【0032】
(3)評価方法
以下、ウルトラファインバブル液の濃度測定方法について説明する。
1.セラミック多孔体の微細孔に純水(2ml)をガス(0.5MPa)で加圧して微細気泡を発生させた溶液(UFB水)を得る。
2.UFB水をビーカーに入れ、UV照射により、滅菌を行った。これは、菌の繁殖による粒子濃度の増加を防ぐためである。
3.上記UFB水をガラスバイアル瓶に35ml取り分け、界面活性剤をマイクロピペットにて添加した。
4.添加後、60rpmで1分間回転撹拌した後、室温25℃、湿度50%の環境下で1時間静置した。
5.ナノサイト(登録商標)でUFB濃度を測定した。
6.室温25℃、湿度50%の環境下で静置し、任意時間後にナノサイトを測定した。
【0033】
(使用機器)
・ナノサイト:NanoSight NS-300
目的:液体中のナノ粒子の粒子径、粒子濃度を検出する装置
原理:レーザー回折を応用したナノ粒子トラッキング解析法で液中のナノ粒子の濃度、径を検出する装置
測定条件 周波数:405nm、CameraLevel:15、Number of captures:5、Capture duration:60、Detection Threshold:4
【0034】
(ウルトラファインバブルの発生方法)
・セラミック多孔体(素材:アルミナ、シリカ)多孔体の細孔径1500nm、気孔率31%
・純水を1パス2~5mlで発生。
・ガス印加圧:0.5MPa
・微細孔をガスと水を加圧して微細気泡を発生させた。
【0035】
(ガラスバイアル瓶)
・ビオラモねじ口バイアル
容量:30ml(満水時:40ml)
ガラス:硼珪酸ガラス-1(JR-1)、厚み:1.3mm(底面厚み:1.7mm)
キャップ:PP(天板部厚み:2mm)
パッキン:PPハイシート(PP、PE)、厚み1mm
ガラス部外径:32mm、内径:29.4mm
【0036】
(マイクロピペット)
・マイクロピペット(スマート)
容量:(μL):100~1000
最小可変容量(μL):0.1
(UV殺菌(ステリライザー))
型番:FV-209B
【0037】
(4)界面活性剤の選定:官能基の評価
(概要・目的)
UFBに適用可能な界面活性剤の種類を検証するため、UFB水に種々の界面活性剤を添加し、UFB濃度の経時変化を評価した。その結果を表1に示す。
【表1】
表1によると、カチオン系である塩化ラウリルトリメチルアンモニウムのみ他の界面活性剤と比較して5倍以上長期保持することが可能であることが分かった。表1の比較例2から11においては、重量合わせにて界面活性剤を添加しており、実際に添加した重量を表2に示す。なお、経時変化初期は、分析装置の測定下限以下のUFBが会合し数密度が増加することがある。
【表2】
表1の結果をグラフで表したものが図2である。図2によると、比較例10と11が他の比較例に比べて高い保持率を示していることが分かる。
【0038】
(5)カチオン系界面活性剤の評価
(概要・目的)
界面活性剤をUFBに適用する際、最適なカチオン系界面活性剤の種類を検証する為、UFB水に種々の界面活性剤を添加し、UFB濃度の経時変化を評価した。その結果、表3に示すように、塩化ラウリルトリメチルアンモニウム、塩化セチルトリメチルアンモニウム、塩化ベンザルコニウムで3か月後においても50%以上、UFBを保持することができることを確認した。その中でも塩化ベンザルコニウムを40μmol/L(表3ではμMと表記)添加した際は、90%以上のUFB濃度が保持されることが確認された。
【表3】
なお、塩化ベンゼトニウムは固体であり、分散性が悪かったことが懸念される。塩化ラウリルトリメチルアミンと塩化セチルトリメチルアンモニウムは、更に添加量を増加したところに極値を持つことも想定されるが、添加量が増加することはネガ要素となる。
【0039】
(6)UFB濃度と界面活性剤添加量の検証
(概要・目的)
界面活性剤をUFBに適用する際、少量で効果を出すには塩化ベンザルコニウムが最適であることを見出した。一般的に界面活性剤の添加量は分散対象の総表面積に依存すると言われている。そこで、濃度の違う界面活性剤にて検証を行った。その結果、表4に示すように、塩化ベンザルコニウムを20.0~70.0μmol/L(表4ではμMと表記)添加した際には、3か月後においても50%以上、UFBを保持することができることを確認した。その中でも塩化ベンザルコニウムを40.0μmol/L添加した際は、90%以上のUFB濃度が保持されることが確認された。また、低UFB濃度サンプルにおいても急激にUFB濃度が増加していないことから、塩化ベンザルコニウムが凝集やミセル形成等によって誤計測されていないことが分かった。表4では塩化ベンザルコニウムの濃度が20μmol/Lから70μmol/LとなるようにすることでUFB濃度が保持されることを確認したが、塩化ベンザルコニウムの下限濃度は30μmol/Lとしてもよく、塩化ベンザルコニウムの上限濃度は60μmol/Lとしてもよく、50μmol/Lとしてもよい。
【表4】
表4の実施例2をグラフに表したものが図4であり、実施例3をグラフに表したものが図5である。なお、低濃度域はナノサイトの信頼範囲下限(1E+08以下)の為、測定ばらつきが増加する。この場合、10μMと他条件は有意差ありと断定できるが、20~70μMの有意差は議論できない(どの条件が極値かは断定できない)。
【0040】
(7)効果
過去の事例では、添加量が記載されていない、または多量に添加されているのに対し、実施例1から3では極微量の添加にてUFB保持力向上の効果を発揮することが分かった。それにより、医薬品のような、異物を嫌う分野においても適用することが可能である。
【0041】
また、実施例1から3に用いられた、塩化ベンザルコニウムは医薬品に用いられることのある界面活性剤であり、生体内でも安全であることが分かっている。塩化ベンザルコニウムにおいては添加量を20μM以上であればUFB濃度を問わず効果を発揮することが確認された。
【0042】
安全性の高い界面活性剤を極微量の添加で効果を発揮できるため、分野を問わずこの技術を適用することが可能であり、各種UFBプロダクトの可能性を広げる技術となる。
【0043】
(他の実施形態)
上記実施形態は、以下のように変更して実施することができる。上記実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0044】
・上記実施形態では、溶媒として純水を用いているが、超純水、精製水、水道水等の水を用いてもよいし、水以外にアルコール等を用いてもよい。
【0045】
・ウルトラファインバブル液の生成装置や生成方法は、上記実施形態に限定されず、種々の生成装置や生成方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0046】
1:ウルトラファインバブル液生成装置 3:第1タンク 5:第2タンク 9:ガス供給部 10:差圧付与部 11:液体供給部 13:液体取出部 15:側壁 17:ガス導入口 19:上部 21:液体導入口 23:底部 25:液体供給口 27:連通パイプ 29:第1圧力センサ 31:噴射弁 33:エレメント 37:側壁 39:液体取出口 41:第2圧力センサ 43:ガスボンベ 45:第1パイプ 47:第1開閉弁 49:第3圧力センサ 51:第2パイプ 53:第2開閉弁 55:第3パイプ 57:第3開閉弁 60:制御部 70:第1領域
図1
図2
図3
図4
図5