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特開2024-176672ウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファイバブル液の収容方法
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  • 特開-ウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファイバブル液の収容方法 図1
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  • 特開-ウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファイバブル液の収容方法 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176672
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファイバブル液の収容方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B65D83/14 100
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095403
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】堀内 一輝
【テーマコード(参考)】
3E014
【Fターム(参考)】
3E014PA01
3E014PC01
3E014PC03
3E014PC06
3E014PC08
3E014PD30
3E014PE26
3E014PE30
3E014PF06
(57)【要約】
【課題】気泡の濃度の減少を抑制できるウルトラファインバブル液の収容構造を提供する。
【解決手段】直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液Uと、ウルトラファインバブル液Uを内側に収容する第1収容部60と、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を、52%以上となるように調整する湿度調整部90と、を備える、ウルトラファインバブル液Uの収容構造100。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液と、
前記ウルトラファインバブル液を内側に収容する第1収容部と、
前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する湿度調整部と、を備える、ウルトラファインバブル液の収容構造。
【請求項2】
前記第1収容部を内側に収容する第2収容部を備え、
前記第1収容部の前記外側面と前記第2収容部との間には、隙間が設けられている、請求項1に記載のウルトラファインバブル液の収容構造。
【請求項3】
前記湿度調整部は、前記隙間に配されている、請求項2に記載のウルトラファインバブル液の収容構造。
【請求項4】
前記湿度調整部は、前記第1収容部の前記外側面における相対湿度を、98%以下となるように調整する、請求項1または請求項2に記載のウルトラファインバブル液の収容構造。
【請求項5】
前記第1収容部の前記外側面における温度を、1度以上35度以下となるように調整する温度調整部を備える、請求項1または請求項2に記載のウルトラファインバブル液の収容構造。
【請求項6】
直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液を第1収容部の内側に収容し、
前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する、ウルトラファインバブル液の収容方法。
【請求項7】
前記第1収容部の前記外側面における相対湿度を、98%以下となるように調整する、請求項6に記載のウルトラファインバブル液の収容方法。
【請求項8】
前記第1収容部の前記外側面における温度を、1度以上35度以下となるように調整する、請求項6または請求項7に記載のウルトラファインバブル液の収容方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファイバブル液の収容方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)を含む液体(ウルトラファインバブル液)が、多様な分野において注目されており、当該液体を生成する技術が提案されている。例えば、特許文献1には、微小気泡発生装置内に保持された多孔質アルミナからなる複数の気泡発生管に、ポンプにより圧送した液体を流し、その管外にガスボンベから送出された気体を送り込んで、管内に1μm以下の気泡が吹き込まれた液体を生成すること、が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-170278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
生成されたウルトラファインバブル液は、ウルトラファインバブルが消泡したり、複数のウルトラファインバブルが凝集したりすること等により、単位体積当たりのウルトラファインバブルの個数(気泡の濃度)が時間の経過とともに減少することがある。ウルトラファインバブル液において、期待される効果や効能を発揮することや、品質を担保するためには、気泡の濃度の減少を抑制することが望ましい。
【0005】
本開示は上記のような事情に基づいて完成された技術であって、気泡の濃度の減少を抑制できるウルトラファインバブル液の収容構造、及びウルトラファインバブル液の収容方法を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液と、前記ウルトラファインバブル液を内側に収容する第1収容部と、前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する湿度調整部と、を備える、ウルトラファインバブル液の収容構造である。
【0007】
また、本開示は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液を第1収容部の内側に収容し、前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する、ウルトラファインバブル液の収容方法である。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、気泡の濃度の減少を抑制できるウルトラファインバブル液の収容構造、及びルトラファインバブル液の収容方法の提供が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】実施形態1において、ウルトラファインバブル液の生成装置を示す説明図
図2】ウルトラファインバブル液の収容構造を示す模式図
図3】実施例9から11、及び比較例10において、経過日数に対する保持率を示すグラフ
図4】実施形態2に係るウルトラファインバブル液の収容構造を示す斜視図
【発明を実施するための形態】
【0010】
最初に本開示の実施形態を列挙して説明する。
(1)本開示のウルトラファインバブル液の収容構造は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液と、前記ウルトラファインバブル液を内側に収容する第1収容部と、前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する湿度調整部と、を備える。
【0011】
(2)(1)に記載のウルトラファインバブル液の収容構造は、前記第1収容部を内側に収容する第2収容部を備え、前記第1収容部の前記外側面と前記第2収容部との間には、隙間が設けられていてもよい。
【0012】
(3)(1)または(2)に記載のウルトラファインバブル液の収容構造において、前記湿度調整部は、前記隙間に配されていてもよい。
【0013】
(4)(1)から(3)のいずれかに記載のウルトラファインバブル液の収容構造において、前記湿度調整部は、前記第1収容部の前記外側面における相対湿度を、98%以下となるように調整してもよい。
【0014】
(5)(1)から(4)のいずれかに記載のウルトラファインバブル液の収容構造は、前記第1収容部の前記外側面における温度を、1度以上35度以下となるように調整する温度調整部を備えていてもよい。
【0015】
(6)また、本開示のウルトラファインバブル液の収容方法は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液を第1収容部の内側に収容し、前記第1収容部の外側面における相対湿度を、52%以上となるように調整する。
【0016】
(7)(6)に記載のウルトラファインバブル液の収容方法において、前記第1収容部の前記外側面における相対湿度を、98%以下となるように調整してもよい。
【0017】
(8)(6)または(7)に記載のウルトラファインバブル液の収容方法において、前記第1収容部の前記外側面における温度を、1度以上35度以下となるように調整してもよい。
【0018】
<実施形態1>
本開示の実施形態1を図1から図3によって説明する。本開示は以下の例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0019】
図1は、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)を液体に生じさせてウルトラファインバブル液Uを生成する生成装置1を示している。生成装置1は、第1タンク10と、第1タンク10の底面10A側に接続された第2タンク20と、第1タンク10に気体を供給する気体供給部30と、第1タンク10に液体を供給する液体供給部40と、気体と液体の供給等を制御する制御部50と、を備えている。第1タンク10及び第2タンク20は、気密状態を保ちつつ気体や液体を一時的に貯留可能な筐体とされている。第1タンク10及び第2タンク20には、内部の圧力を検出可能な圧力検出部11,21がそれぞれ設けられている。
【0020】
気体供給部30は、第1タンク10に接続した管であって気体の流路となる管の開閉を行う気体開閉弁32と、当該気体供給部30の圧力を検出する圧力検出部31と、を備える。気体供給部30から第1タンク10に供給される気体としては、例えば、空気、水蒸気、水素(H、D、T)、希ガス(He、Ne、Kr、Xe、Rn、Ar)、酸素、オゾン、一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、アンモニア、塩素、塩化水素ガス、ジシアン、二酸化硫黄、ヨウ化水素、ホスフィン、酸化窒素(NO、NO、NO、NO、N、N、N、N、N)、炭化水素(メタン、エタン等のアルカンやパラフィン;エチレン、プロピレン等のアルケン;アセチレン等のアルキン等)、フッ化ガス(F、HF、CF、C、C、C、CHF、SF、NF、SiF)、塩化ガス(ClO、CCl、HCl、NOCl、CHCl、COCl)、臭化ガス(Br、HBr)、アルコール類、アミン類、アルデヒド類、エステル類、エーテル類、ケトン類、テルペン類、ラクトン類、チオール類、香料、及び精油等のうち1種又は2種以上の気体を採用することができる。
【0021】
液体供給部40は、第1タンク10に接続した管であって液体の流路となる管の開閉を行う液体開閉弁41を備える。液体供給部40から第1タンク10に供給される液体としては、例えば、水(純水、超純水、精製水、水道水)、エタノール等のアルコール、又は過酸化水素水からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液体を採用することができる。
【0022】
第2タンク20は、第1タンク10の底面10Aを貫通し第1タンク10の内部に連通した管状の連通管22と、連通管22の下部に設けられたエレメント(細孔体)24と、連通管22の途中部分に設けられた噴射弁23と、を備える。連通管22は、第1タンク10に貯留した気体と液体とをエレメント24に流通させる。噴射弁23は、連通管22を流通する気体と液体の流路の開閉を行う。
【0023】
制御部50は、第1タンク10、第2タンク20、気体供給部30、及び液体供給部40に電気的に接続されており、圧力検出部11,21,31で検出した圧力等に基づいて、気体開閉弁32、液体開閉弁41及び噴射弁23の開閉を制御する。
【0024】
エレメント24は、筒状をなすセラミックとされ、その全体に多数の細孔が連なるように形成されている。エレメント24は、連通管22の下部に取り付けられており、連通管22を流通する気体と液体とが当該エレメント24の内部24Aに流れ込むことが可能な構成とされている。エレメント24を構成するセラミックは、例えば、アルミナ、窒化アルミニウム、酸化ケイ素(一酸化ケイ素、二酸化ケイ素(シリカ))、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ジルコニア、チタニア、ムライト、マグネシア、セリア、ドープセリア、アルミナセメント、リン酸カルシウム、ガラス、チタン酸バリウム、フェライト、ステアタイト、フォルステライト、炭化ケイ素、ゼオライト、シリカガラス、ケイ酸塩ガラス、及びシラスガラスからなる群より選択される1種又は2種以上の材料を焼結してなる焼結体とされる。その中でも、セラミックとしては、アルミナを焼結してなる焼結体が好ましい。
【0025】
ウルトラファインバブル液Uを生成する生成工程では、まず、気体供給部30から第1タンク10に気体を供給して、第1タンク10と第2タンク20の内部に当該気体を充満させておく。そして、液体開閉弁41、気体開閉弁32、及び噴射弁23を閉じた後に、液体開閉弁41を開いて第1タンク10に液体を供給する。その後、液体開閉弁41を閉じ、気体開閉弁32を開いて第1タンク10に気体を供給する。このとき、気体開閉弁32の開閉を調整することで、第1タンク10の内部の圧力が大気圧よりも高い圧力(例えば0.5MPa)となるように気体を供給する。これにより、第1タンク10の内部には、気体と液体とが加圧されて貯留した状態となる。一方、第2タンク20の内部の圧力が、加圧後の第1タンク10の内部の圧力よりも低くなるように調整しておく。
【0026】
この状態で噴射弁23を開くと、第1タンク10に貯留した気体と液体とが、連通管22を流通してエレメント24の内部24Aに流れ込み、エレメント24の内部24Aから外部に噴射する。このとき、エレメント24の内部24Aに流れ込んだ気体と液体とは、エレメント24の複数の細孔を通過してエレメント24の外部に噴射することで、当該気体を包含する気泡と当該液体とが混合したウルトラファインバブル液Uとして第2タンク20に貯留する。ウルトラファインバブル液Uは、第2タンク20に設けられた取出口19から外部に取り出すことができる。
【0027】
ウルトラファインバブル液Uには、直径がナノメートルオーダーとされる気泡(ウルトラファインバブル)が生じている。ナノメートルオーダーとは、1nm以上999nm以下の範囲の値とする。このような気泡の直径は、例えば、エレメント24の細孔の孔径を変更すること等により調整可能とされる。エレメント24の細孔の孔径は、例えば、当該エレメント24を構成するセラミックの材料の粒径(例えば、アルミナの粒径)を変更すること等により調整可能とされる。
【0028】
ウルトラファインバブルは、上記した水(純水、超純水、精製水、水道水)、エタノール等のアルコール、又は過酸化水素水からなる群から選択される少なくとも1種又は2種以上の液体以外にも、種々の製品等に含有させることができる。このような製品等としては、例えば、美容液、化粧水、美容パック、乳液、育毛剤、発毛剤、ヘアケア用品、身体洗浄剤(クレンジング、洗顔料、シャンプー、ボディソープ等)、香水、香料等の化粧品;飲料類、酒類、調味料類、スープ類、レトルト食品(液体状の食品等)、サプリメント等の食品;注射用水、生理食塩水、細胞外液補充液、人工膠質液、人工血液、輸血液、血液製剤、緩衝液(酢酸緩衝液、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、クエン酸リン酸緩衝液(マッキルベイン緩衝液)、ホウ酸緩衝液、酒石酸緩衝液、トリス緩衝液、リン酸緩衝生理食塩水等)、身体洗浄液(洗眼液、鼻洗浄液、胃洗浄液、肺洗浄液、腸洗浄液等)、コンタクトレンズ洗浄液、点眼薬、注射製剤、注射液(DDS製剤、ワクチン、低分子医薬品、中分子医薬品、高分子医薬品、遺伝子医薬品)、ネブライザー薬液、液体呼吸用液体等の医療用品;培養液(グルコース含有培養液、アルブミン含有培養液、抗体含有液体培養液、ビタミン含有培養液、血清含有培養液、血漿含有培養液等)等のバイオ用品;アルコール類、有機溶媒(ヘキサン、アセトン、ガソリン、灯油、軽油、その他炭化水素類)、重水等のその他製品等を挙げることができる。このような製品等へのウルトラファインバブルの適用は、例えば、生成装置1により生成されたウルトラファインバブル液Uを上記製品等に添加したり、液体供給部40から供給される液体を上記製品等としたりすることで行うことができる。尚、本開示において、ウルトラファインバブル液Uとしては、上記製品等であってウルトラファインバブルを含む液体のことを指すこととしてもよい(即ち、後述する収容構造100において、第1収容部60の内側には、上記製品等であってウルトラファインバブルを含む液体が収容されていてもよい)。
【0029】
図2では、ウルトラファインバブル液Uを収容する収容容器(収容構造)100を示している。収容容器100は、例えば、試薬容器、実験用バイアル瓶、医薬品容器、培養液容器、食品容器、飲料容器、又は化粧品容器等の容器として使用される。
【0030】
収容容器100は、生成装置1により生成されたウルトラファインバブル液Uと、ウルトラファインバブル液Uを内側に収容する第1収容部60と、第1収容部60を内側に収容する第2収容部70と、蓋部80と、を備える。収容容器100は、第1収容部60と第2収容部70とにより構成される二重構造をなしている。第1収容部60、及び第2収容部70は、それぞれ、互いに離間した本体部61,71と、本体部61,71の上方に配され、互いに接した当接部62,72と、を備える。各当接部62,72の上部63,73には、蓋部80が取り付けられている。第1収容部60及び第2収容部70は、第1収容部60の上部63の内側に配された開口64が、蓋部80の取り付け、又は取り外しによって開閉される。開口64が蓋部80によって閉じられると、第1収容部60の内側の空間及び第2収容部70の内側の空間が、密閉される。
【0031】
第1収容部60及び第2収容部70の材料としては、特に限定されないが、例えば、合成樹脂(ポリプロピレン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリエチレンテレフタラート、ポリテトラフルオロエチレン、ポリスチレン、ゴム、ブチルゴム等)、セラミック(アルミナ、チタニア、ジルコニア等)、ガラス、石英、アルマイト、酸化鉄、酸化銅、酸化銀、紙類からなる群より選択される1種又は2種以上の材料を用いることができる。第1収容部60及び第2収容部70の材料は、同一の材料でもよく、異なる材料でもよい。
【0032】
本体部61,71は、第1本体部61と、第1本体部61の外側に配され、第1本体部61よりも外形が一回り大きい第2本体部71と、を含む。第1本体部61の内側面61Aは、ウルトラファインバブル液Uに接している。第1本体部61の外側面61Bと、第2本体部71の内側面71Aとの間には、隙間Sが設けられている。第1本体部61は、円形状の底壁部61Cと、底壁部61Cの端部から立ち上がった円管状の側壁部61Dと、を備える。底壁部61Cの厚みは、側壁部61Dの厚みよりも厚くてもよい。隙間Sには、気体が充満している。この気体としては、特に限定されないが、空気、窒素、又は、アルゴン等を採用することができる。第2本体部71の外側面71Bは、収容容器100の外気に接している。
【0033】
収容容器100は、隙間Sに配された湿度調整部90と、第2本体部71の下側に配された温度調整部95と、を備える。湿度調整部90の形状、構成等は特に限定されないが、例えば、ゲル状体が通気性を有する袋体に収容されてなるものであってもよく、隙間Sに配されたゲル状体そのものであってもよい。湿度調整部90は、隙間Sに充満する気体を乾燥又は湿潤させることで、第1本体部61の外側面61Bにおける相対湿度を、所定範囲に調整する。「外側面61Bにおける相対湿度」とは、例えば、隙間Sに存在する気体の相対湿度としてもよく、外側面61Bから外側に向かって所定距離(例えば10mm)以内の範囲に存在する気体の相対湿度としてもよい。外側面61Bにおいて、湿度調整部90が調整する相対湿度の範囲としては、52%以上としてもよく、60%以上としてもよく、65%以上としてもよく、70%以上としてもよく、98%以下としてもよく、90%以下としてもよく、85%以下としてもよく、80%以下としてもよい。
【0034】
温度調整部95は、第2本体部71の外側面71Bに接している。第2本体部71は、温度調整部95上に載置されている。温度調整部95の形状、構成等は特に限定されないが、例えば、第2本体部71を加熱又は冷却する温調装置であってもよい。温度調整部95は、第2本体部71を加熱又は冷却し、これにより隙間Sに充満する気体が加熱又は冷却されることで、第1本体部61の外側面61Bにおける温度を、所定範囲に調整する。「外側面61Bにおける温度」とは、例えば、隙間Sに存在する気体の温度としてもよく、外側面61Bから外側に向かって所定距離(例えば10mm)以内の範囲に存在する気体の温度としてもよい。外側面61Bにおいて、温度調整部95が調整する温度の範囲としては、1度以上でもよく、3度以上でもよく、5度以上でもよく、35度以下でもよく、27度以下でもよく、20度以下でもよく、15度以下でもよい。
【0035】
ウルトラファインバブル液Uの収容方法は、ウルトラファインバブル液Uを第1収容部60の内側に収容する収容工程と、外側面61Bにおける相対湿度を、上記所定範囲(例えば52%以上98%以下)となるように調整する湿度調整工程と、含む。また、ウルトラファインバブル液Uの収容方法は、外側面61Bにおける温度を、上記所定範囲(例えば1度以上35度以下)となるように調整する温度調整工程を含む。
【0036】
収容工程では、上記生成工程において生成されたウルトラファインバブル液Uを、第1収容部60の開口64から注ぎ込み、蓋部80で開口64を閉じることで、第1収容部60を密閉してウルトラファインバブル液Uを収容する。湿度調整工程では、隙間Sに湿度調整部90を配することにより、外側面61Bにおける相対湿度を調整する。温度調整工程では、第2本体部71を温度調整部95に載置し、温度調整部95による加熱又は冷却を行うことにより、外側面61Bにおける温度を調整する。尚、各工程は、収容工程、湿度調整工程、温度調整工程の順で行われてもよく、他の順序(例えば、湿度調整工程、温度調整工程、収容工程の順)で行われてもよい。
【0037】
また、上記収容工程、湿度調整工程を行うことで、ウルトラファインバブル液Uの収容構造100を製造する製造方法としてもよい。この製造方法には、上記生成工程や温度調整工程が含まれていてもよい。
【0038】
続いて、本実施形態の効果について説明する。本実施形態では、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液Uと、ウルトラファインバブル液Uを内側に収容する第1収容部60と、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を、52%以上となるように調整する湿度調整部90と、を備える、ウルトラファインバブル液Uの収容構造100を示した。
【0039】
一般的に、ウルトラファインバブルは、負の電荷を有しており電気泳動する。従って、例えば、ウルトラファインバブル液Uを収容する収容体が正に帯電している場合、その内側に収容されたウルトラファインバブルが収容体の内側面に引き寄せられて付着し、凝集することにより、浮上して消失(消泡)する可能性がある。一方、収容体が負に帯電している場合、その内側に収容されたウルトラファインバブルが収容体の内側面から弾かれ、他のウルトラファインバブルと接触し(接触する確率が高まり)、凝集や消失する可能性がある。しかしながら、上記のようなウルトラファインバブル液Uの収容構造100によると、第1収容部60の外側面61Bにおける湿度を調整することで、第1収容部60に帯電する静電気の放電を促進することができる。これにより、ウルトラファインバブルが上記理由によって凝集したり消失したりすることを抑制し、ウルトラファインバブル液Uの気泡の濃度が減少することを抑制できる。
【0040】
ウルトラファインバブル液Uの収容構造100は、第1収容部60を内側に収容する第2収容部70を備え、第1収容部60の外側面61Bと第2収容部70との間には、隙間Sが設けられている。
【0041】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容構造100によると、第2収容部70に加わる振動や衝撃が第1収容部60に伝達し難くなるので、この振動等によってウルトラファインバブルが消失等し、ウルトラファインバブル液Uの気泡の濃度が減少することを抑制できる。また、振動等を緩衝してウルトラファインバブル液Uの保管や流通を実現可能な収容構造100とすることができる。さらに、第1収容部60が第2収容部70の内側に収容されていることで、第1収容部60の外側面61B付近の気体が流動することを抑制できるので、外側面61Bにおける相対湿度の調整が容易になる。
【0042】
湿度調整部90は、隙間Sに配されている。
【0043】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容構造100によると、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を容易に調整可能な構造とすることができる。また、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を湿度調整部90によって調整した状態で、ウルトラファインバブル液Uの保管や流通を容易に行うことが可能となる。
【0044】
湿度調整部90は、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を、98%以下となるように調整する。
【0045】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容構造100によると、ウルトラファインバブル液Uの気泡の濃度が減少することをより抑制できる。
【0046】
ウルトラファインバブル液Uの収容構造100は、第1収容部60の外側面61Bにおける温度を、1度以上35度以下となるように調整する温度調整部95を備えている。
【0047】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容構造100によると、ウルトラファインバブル液Uの粘度を低下させて、上記電気泳動や、ウルトラファインバブルのブラウン運動、さらには、ウルトラファインバブル液Uの対流を抑制することができる。また、ウルトラファインバブル液Uが凍結することを防ぐことが可能となる。これにより、ウルトラファインバブルが凝集したり消失したりすることを一層抑制できる。
【0048】
また、本実施形態では、直径がナノメートルオーダーとされる気泡を含むウルトラファインバブル液Uを第1収容部60の内側に収容し、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を、52%以上となるように調整する、ウルトラファインバブル液Uの収容方法を示した。
【0049】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容方法によると、第1収容部60の外側面61Bにおける湿度を調整することで、第1収容部60に帯電する静電気の放電を促進することができる。これにより、ウルトラファインバブルが上記電気泳動によって凝集したり消失したりすることを抑制し、ウルトラファインバブル液Uの気泡の濃度が減少することを抑制できる。
【0050】
ウルトラファインバブル液Uの収容方法において、第1収容部60の外側面61Bにおける相対湿度を、98%以下となるように調整する。
【0051】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容方法によると、ウルトラファインバブル液Uの気泡の濃度が減少することをより抑制できる。
【0052】
ウルトラファインバブル液Uの収容方法において、第1収容部60の外側面61Bにおける温度を、1度以上35度以下となるように調整する。
【0053】
このようなウルトラファインバブル液Uの収容方法によると、ウルトラファインバブル液Uの粘度を低下させて、上記電気泳動や、ウルトラファインバブルのブラウン運動、さらには、ウルトラファインバブル液Uの対流を抑制することができる。また、ウルトラファインバブル液Uが凍結することを防ぐことが可能となる。これにより、ウルトラファインバブルが凝集したり消失したりすることを一層抑制できる。
【実施例0054】
以下、実施例に基づいて本技術を詳細に説明する。なお、本技術はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
【0055】
<実施例1から8、及び比較例1から9>
[ウルトラファインバブル液の調製]
生成装置の第1タンク(内部容量300ml)に、液体供給部から液体として純水2ml~5mlを供給した後、気体供給部から気体として窒素を0.5MPaの圧力で供給した。そして、噴射弁を開き、細孔径が1500nm(気孔率31%)とされるエレメント(アルミナ及びシリカの焼結体)から気体と液体とを噴射させ、ウルトラファインバブル液を得た。この工程を複数回繰り返して、第2タンクにウルトラファインバブル液を貯留させた。
【0056】
[ウルトラファインバブル液の収容容器への収容]
第2タンクから取り出したウルトラファインバブル液について、その気泡の濃度(初期濃度)を、ナノサイト(登録商標、マルバーン社製、ナノトラッキング粒子径測定装置、型番:NS300)を用いて測定した。ナノサイトは、直径が30nm以上999nm以下の気泡の濃度を測定可能である。そして、このウルトラファインバブル液を、ガラスバイアル瓶(第1収容部に相当)の内側に10ml注いで、ガラスバイアル瓶の開口をキャップ(蓋部に相当)で閉じた。このガラスバイアル瓶を、温湿度調整装置(第2収容部、湿度調整部、及び温度調整部に相当する構成を備える装置)の内側に収容し、ウルトラファインバブル液の収容構造とした。
【0057】
ガラスバイアル瓶としては、容量が13ml、側壁部の厚みが1.3mm、底壁部の厚みが1.7mm、材料が硼珪酸ガラス-1(JR-1)とされる、ビオラモねじ口バイアル(アズワン株式会社製。「ビオラモ」は登録商標)を使用した。キャップ(蓋部)としては、天板部の厚みが2mm、材料がポリプロピンとされるものを使用した。キャップの内側であって天板部とガラスバイアル瓶との間には、パッキンが配されている。このパッキンとしては、厚みが1mm、材料としてポリプロピレン、ポリエチレン、及びポリプロピレンがこの順で積層した円形状の積層体とされるものを使用した。
【0058】
温湿度調整装置としては、Bench-Top Type Temperature & Humidity Chamber(エスペック株式会社製、型番:SH-261)を使用した。この温湿度調整装置は、内側の空気(内側に収容したガラスバイアル瓶の外側面における気体)を所定の相対湿度及び温度に調整することが可能である。この温湿度調整装置の内側に、ガラスバイアル瓶と共に温湿度測定装置(株式会社ティアンドデイ製、データロガー、型番:TR-74Ui-S)を収容して、ガラスバイアル瓶の外側面における気体の相対湿度及び温度を測定した。
【0059】
[7日後の保持率の評価]
上記ウルトラファインバブル液の収容構造において、温湿度調整装置によって相対湿度及び温度を所定の値に調整し、7日が経過した後のウルトラファインバブル液の気泡の濃度を、ナノサイトを用いて測定した。そして、7日経過後の気泡の濃度を上記初期濃度で除して得られる値を、百分率で示した値である、保持率(%)を算出した。結果を、表1に示す。
【0060】
表1では、相対湿度、及び温度が任意の値に調整された収容容器ごとに、実施例1から8、及び比較例1から9として示している。例えば、実施例1では、ウルトラファインバブル液(初期濃度2.460×10個/ml)が収容されたガラスバイアル瓶を、相対湿度が56.9%、温度が25.2度に調整された温湿度調整装置の内側に収容し、その状態で7日経過後の気泡の濃度(1.495×10個/ml)を測定した結果、保持率が60.8%であったことを示している。尚、比較例9では、ウルトラファインバブル液が凍結したので、解凍後に気泡の濃度を測定した。
【0061】
【表1】
【0062】
実施例1から実施例8では、相対湿度が50%を超えており、温度が1度以上であり、7日経過後の保持率が50%以上であった。相対湿度が100%の場合(比較例8)や、ウルトラファインバブル液が凍結する温度の場合(比較例9)では、各実施例よりも保持率が低い。相対湿度が72.9%、温度が5.2度の場合(実施例4)や、相対湿度が80.0%、温度が10.0度の場合(実施例7)では、それぞれ、保持率が86.9%、87.2%となり、他の実施例や比較例よりも高い値となった。実施例8によると、相対湿度は96.0%以下が好ましい。例えば、比較例8では、保持率が50%未満である。各実施例によると、温度は39度以下が好ましい。例えば、比較例2から4では、保持率が50%未満である。
【0063】
<実施例9から11、及び比較例10>
[ウルトラファインバブル液の収容容器への収容]
上記実施例1等と同様、第2タンクから取り出し、初期濃度を測定したウルトラファインバブル液を、ガラスバイアル瓶の内側に10ml注いで、ガラスバイアル瓶の開口をキャップ(第1蓋部と呼ぶ)で閉じた。一方、ポリエチレン製であって容量が100mlであるプラスチックバイアル瓶(第2収容部に相当)の内側に、湿度調整部としてTEKIjuN(登録商標、シャープ株式会社製)ビーズ型を入れた。また、このプラスチックバイアル瓶のキャップ(第2蓋部と呼ぶ)の内側面に、第1蓋部の外側面を両面テープで接着した。この状態で、ガラスバイアル瓶がプラスチックバイアル瓶の内側に収容されるように、第2蓋部をプラスチックバイアル瓶に取り付けることで、ウルトラファインバブル液を収容した収容容器とした。ガラスバイアル瓶の外側面は、プラスチックバイアル瓶の内側面や湿度調整部に接していない。
【0064】
この収容容器を、常温(温度25度)にて保管し、上記実施例1等と同様の手順で、1日経過後の保持率、4日経過後の保持率、及び7日経過後の保持率を算出した。結果を、表2、及び図3に示す。尚、表2では、相対湿度が任意の値に調整された収容容器ごとに、実施例9から11、及び比較例10として示している。実施例9,11、及び比較例10では、それぞれ、相対湿度を70%、90%、50%に調整するTEKIjuNを使用した。実施例10では、TEKIjuNのうち、相対湿度を70%に調整するものと、90%に調整するものを混合して使用した。
【0065】
【表2】
【0066】
実施例9から11のように、相対湿度が50%を超えるように調整すれば、7日経過後であっても保持率が50%を超えた状態を維持可能なウルトラファインバブル液の収容容器とすることができる。各実施例は、比較例10に対し、1日経過後の時点での保持率がそれぞれ20%以上高い。また、実施例9から11のような収容容器とすれば、常温でもウルトラファインバブル液の気泡の濃度の低下を抑制できるので、ウルトラファインバブル液の保管や流通を実現可能な収容容器とすることができる。
【0067】
<実施形態2>
次に、本開示の実施形態2を図4によって説明する。尚、本実施形態では、上記実施形態と同じ部位には、同一の符号を用い、構造、作用及び効果について重複する説明は省略する。
【0068】
収容容器(収容構造)200は、生成装置により生成されたウルトラファインバブル液Uと、ウルトラファインバブル液Uを内側に収容する複数の第1収容部260と、複数の第1収容部260の上側に載置され、複数の第1収容部260の外側面における相対湿度を、所定範囲に調整する複数の湿度調整部90と、複数の第1収容部260及び複数の湿度調整部90を内側に収容する第2収容部270と、を備える。
【0069】
第1収容部260は、ボトル状の第1本体部261と、第1本体部261の上部に取り付けられて当該第1本体部261の上部開口を塞ぐことが可能な第1蓋部264と、を備える。第2収容部270は、上方が開口した箱状の第2本体部271と、一端が第2本体部271の上端部に取り付けられ、第2本体部271の上部開口を開閉可能とする第2蓋部274と、を備える。湿度調整部90は、第1収容部260と第2収容部270との間の隙間に配されている。湿度調整部90は、この隙間に充満する気体を乾燥又は湿潤させることで、複数の第1収容部260の外側面における相対湿度を、所定範囲に調整する。尚、湿度調整部90は、第1収容部260の側方や下方に配されていてもよい。
【0070】
<他の実施形態>
本開示は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されず、例えば次のような実施形態も本開示の技術的範囲に含まれ、さらに、下記以外にも要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施することができる。
【0071】
(1)湿度調整部の構成は適宜変更可能である。例えば、湿度調整部は、湿度調整剤がシート状に形成されてなるものや、水で湿らせた不織布でもよい。
【0072】
(2)温度調整部の構成は適宜変更可能である。温度調整部は、例えば、冷却装置により冷却される冷媒や、懐炉のような化学発熱体であってもよい。また、温度調整部は、第1収容部と第2収容部との間の隙間に配されていてもよい。
【0073】
(3)上記実施形態以外にも、第1収容部や第2収容部の形状は適宜変更可能である。各収容部の形状は、例えば、円柱状、四角柱状、六角柱状、不定形状等であってよい。
【0074】
(4)細孔体の形状は適宜変更可能である。上記実施形態では、細孔体は、筒状としたが、これに限られない。例えば、細孔体は、板状や球体状であってもよい。また、細孔体の細孔の形は適宜変更可能である。細孔の形は、例えば、細孔体の内外方向を貫通する貫通孔であってもよい。
【0075】
(5)ウルトラファインバブル液の生成装置や生成方法は、上記実施形態に限定されず、種々の生成装置や生成方法を採用することができる。
【符号の説明】
【0076】
60,260…第1収容部、61B…外側面、70,270…第2収容部、90…湿度調整部、95…温度調整部、100,200…収容容器(収容構造)、S…隙間、U…ウルトラファインバブル液
図1
図2
図3
図4