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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176680
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】醗酵処理装置
(51)【国際特許分類】
   B09B 3/60 20220101AFI20241212BHJP
   C05F 9/02 20060101ALI20241212BHJP
   C05F 3/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B09B3/60 ZAB
C05F9/02
C05F3/06
【審査請求】有
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095417
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】591196625
【氏名又は名称】株式会社晃伸製機
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】角谷 博規
(72)【発明者】
【氏名】角谷 一範
【テーマコード(参考)】
4D004
4H061
【Fターム(参考)】
4D004AA03
4D004AB01
4D004BA04
4D004CA19
4D004CA42
4D004CB01
4D004CB43
4D004CC02
4D004DA02
4H061AA03
4H061CC35
4H061CC55
4H061EE02
4H061EE03
4H061GG48
4H061GG67
(57)【要約】
【課題】送気管内に溜まった水分を排出可能な醗酵処理装置の提供。
【解決手段】本発明の醗酵処理装置1は、有機性廃棄物Wが載せられる載置面21と、載置面21に設けられる溝部22とを有する床部2と、溝部22内に配設される筒状をなし、一端33側から空気が供給され、かつ有機性廃棄物Wに向けて空気を噴出する複数の噴出口32を含む送気管3と、送気管3の一端33側から空気を供給する空気供給部4とを備える醗酵処理装置1であって、送気管3の一端33側と空気供給部4とを繋ぐように配設され、かつ空気供給部4から供給された空気を送気管3へ送る筒状の中継管5と、中継管5の何れかの位置に設けられ、送気管3内に溜まった水を外部へ排出させる排出口7と、排出口7を閉塞する閉状態と、排出口7を開放する開状態とに切り替え可能な切替弁8とを備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物が載せられる載置面と、前記載置面に設けられる溝部とを有する床部と、
前記溝部内に配設される筒状をなし、一端側から空気が供給され、かつ前記有機性廃棄物に向けて空気を噴出する複数の噴出口を含む送気管と、
前記送気管の前記一端側から空気を供給する空気供給部とを備える醗酵処理装置であって、
前記送気管の前記一端側と前記空気供給部とを繋ぐように配設され、かつ前記空気供給部から供給された空気を前記送気管へ送る筒状の中継管と、
前記中継管の何れかの位置に設けられ、前記送気管内に溜まった水を外部へ排出させる排出口と、
前記排出口を閉塞する閉状態と、前記排出口を開放する開状態とに切り替え可能な切替弁とを備える醗酵処理装置。
【請求項2】
前記切替弁は、前記空気供給部の稼働時に閉状態となり、かつ前記空気供給部の停止時に開状態となるように、切り替えられる請求項1に記載の醗酵処理装置。
【請求項3】
前記排出口の下方に設けられ、前記排出口から排出された水が溜められる貯留槽を備える請求項1又は請求項2に記載の醗酵処理装置。
【請求項4】
前記送気管は、前記中継管側に向かって下るように傾斜した状態で前記溝部内に配設される請求項1又は請求項2に記載の醗酵処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、醗酵処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
畜糞や生ゴミ等の有機性廃棄物を攪拌装置で攪拌しながら醗酵させることで、有機肥料(堆肥等)を製造することが行われている。近年、このような醗酵の効率を高めるために、有機性廃棄物の含水率を予め低くすること等を目的とした一次醗酵処理を行うことが主流となっている(例えば、特許文献1)。
【0003】
一次醗酵処理では、水分を多く含んだ状態の有機性廃棄物を、専用の堆積槽に堆積させ、その状態の有機性廃棄物に対して、下側から空気を強制的に供給することが行われる。なお、一次醗酵処理では、撹拌装置等による有機性廃棄物の攪拌や切り返しは行われず、堆積槽に堆積させたままの状態で、必要に応じて乾物資材を混ぜつつ有機性廃棄物の醗酵が行われる。堆積槽の床には、複数の噴出口を有する送気管が配設されており、送気管に対してブロアから空気が供給されると、各噴出口から空気が有機性廃棄物に向かって噴出するため、有機性廃棄物内に空気が効率的に供給される。
【0004】
このように有機性廃棄物に対して空気が供給されると、有機性廃棄物中における好気性微生物の醗酵分解が促進されると共に、その醗酵分解に伴った熱(醗酵熱)が大量に発生する。一次醗酵処理では、このように発生した熱(醗酵熱)や、強制的に供給した空気等の作用によって、有機性廃棄物中の水分量を減らすことができる。なお、一次醗酵処理は、一般的に、一週間乃至十日程度行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-127110号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一次醗酵処理の最中に、ブロアが停止されて、噴出口からの空気の噴き出しが停止される場合がある。このような場合に、堆積された有機性廃棄物中に含まれる水分が下側へ移動し、その移動した水分の一部が、噴出口から送気管内に入り込んで、送気管内に溜まることがあった。送気管内に水分が溜まった状態でブロアが稼働すると、送気管内の水分が、送気管内を流れる空気に押されて噴出口から噴き出し、有機性廃棄物に戻されてしまう。このように送気管内に溜まった水分が有機性廃棄物に戻されると醗酵効率が低下する等して、有機性廃棄物の水分量を減らすのに時間がかかってしまうことがあった。
【0007】
本発明の目的は、送気管内に溜まった水分を排出可能な醗酵処理装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するための手段は、以下の通りである。即ち、
<1> 有機性廃棄物が載せられる載置面と、前記載置面に設けられる溝部とを有する床部と、前記溝部内に配設される筒状をなし、一端側から空気が供給され、かつ前記有機性廃棄物に向けて空気を噴出する複数の噴出口を含む送気管と、前記送気管の前記一端側から空気を供給する空気供給部とを備える醗酵処理装置であって、前記送気管の前記一端側と前記空気供給部とを繋ぐように配設され、かつ前記空気供給部から供給された空気を前記送気管へ送る筒状の中継管と、前記中継管の何れかの位置に設けられ、前記送気管内に溜まった水を外部へ排出させる排出口と、前記排出口を閉塞する閉状態と、前記排出口を開放する開状態とに切り替え可能な切替弁とを備える醗酵処理装置。
【0009】
<2> 前記切替弁は、前記空気供給部の稼働時に閉状態となり、かつ前記空気供給部の停止時に開状態となるように、切り替えられる前記<1>に記載の醗酵処理装置。
【0010】
<3> 前記排出口の下方に設けられ、前記排出口から排出された水が溜められる貯留槽を備える前記<1>又は<2>に記載の醗酵処理装置。
【0011】
<4> 前記送気管は、前記中継管側に向かって下るように傾斜した状態で前記溝部内に配設される前記<1>~<3>の何れか1つに記載の醗酵処理装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、送気管内に溜まった水分を排出可能な醗酵処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】実施形態1に係る醗酵処理装置の正面側の断面構成を模式的に表した説明図
図2】実施形態1に係る醗酵処理装置の側面側の断面構成を模式的に表した説明図
図3】醗酵処理装置における空気供給機構を模式的に表した上面図
図4】醗酵処理装置の奥側部分の構成を模式的に表した上面図
図5】空気供給部が停止した状態の醗酵処理装置において、有機性廃棄物に含まれる水分が、送気管内に入り込んだ状態を模式的に表した説明図
図6】切替弁を開状態として、排出口から送気管等の内部の水分を外部へ排出する様子を模式的に表した説明図
図7】他の実施形態で使用される排気管の断面構成の一部を模式的に表した説明図
図8】他の実施形態で使用される排気管の一部を模式的に表した斜視図
【発明を実施するための形態】
【0014】
<実施形態1>
以下、本発明の実施形態1に係る醗酵処理装置1を、図1図6を参照しつつ説明する。図1は、実施形態1に係る醗酵処理装置1の正面側の断面構成を模式的に表した説明図であり、図2は、実施形態1に係る醗酵処理装置1の側面側の断面構成を模式的に表した説明図であり、図3は、醗酵処理装置1における空気供給機構6を模式的に表した上面図である。
【0015】
醗酵処理装置1は、一次醗酵処理を行う装置であり、有機性廃棄物Wの内部(堆積物の内部)に空気を間欠的に供給する。醗酵処理装置1で処理される有機性廃棄物Wとしては、例えば、畜糞(例えば、鶏糞、牛糞、豚糞、馬糞等)、生ゴミ等が挙げられる。
【0016】
有機性廃棄物Wの一次醗酵処理は、攪拌装置を備えた醗酵処理プラントで行う醗酵処理(二次醗酵)の前に、予め有機性廃棄物Wの水分量(含水率)を少なくするために行う処理であり、通常、約一週間程度行われる。本実施形態の醗酵処理装置1は、例えば、醗酵処理プラントの付近に設置されている。
【0017】
このような醗酵処理装置1は、図1及び図2に示されるように、主として、床部2、送気管3、空気供給部4、中継管5、排出口7、切替弁8を備えている。なお、空気供給機構6は、主として、送気管3、空気供給部4、中継管5等を備えている。
【0018】
床部2は、一次発酵槽(堆積槽)の床部であり、有機性廃棄物Wが載せられる載置面21と、載置面21に設けられる複数の溝部22とを有する。床部2の上面である載置面21は、概ね平坦であり、かつ平面視で矩形状(長方形状)をなしている。この載置面21上に、有機性廃棄物Wが堆積する形で載せられる。床部2(載置面21)の周縁には、壁部23が立設されている。壁部23は、一次醗酵槽の一部であり、所定の高さを備えている。このような壁部23は、載置面21上に載せられた有機性廃棄物Wが外部に広がらないように、その有機性廃棄物Wを三方から囲むように設けられている。図2の左側に示されるように、一次醗酵槽の手前側は、床部2(載置面21)上に壁部23が立設されておらず開放されており、その部分が、有機性廃棄物Wの搬入及び搬出を行うための出入口24となっている。なお、一次醗酵槽には、必要に応じて、床部2(載置面21)を上方から覆う屋根部(雨除け)が設けられてもよい。
【0019】
溝部22は、載置面21から下方に窪んだ凹部状をなしており、醗酵処理装置1の前後方向(図2の左右方向)に沿う形で設けられている。溝部22は、載置面21において複数設けられており、それらは、互いに間隔を保ちつつ平行に並ぶように設けられている。前記前後方向に延びた溝部22の一方の端部は、床部2の奥側に立設された壁部23側に配され、他方の端部は、床部2の手前側(出入口24側)に配されている。このような溝部22内に、収容する形で、送気管3が配設される。
【0020】
送気管3は、塩化ビニル等の合成樹脂からなる円筒状のパイプからなる本体部31と、その本体部31の周壁に設けられた複数の噴出口32とを備える。本実施形態の場合、送気管3は、複数あり、それぞれ1つずつ溝部22内に配設される。送気管3は、一端33が床部2よりも奥側(一次発酵槽の外側)に配され、かつ他端(他方の端部)34が床部2の手前側(出入口24側)に配される形で、溝部22内に収容されている。これらの送気管3は、それぞれ溝部22内に収容された状態において、互いに間隔を保ちつつ平行に並ぶように配置されている。なお、各送気管3(本体部31)の一端33は、奥側の壁部23の下方付近から外部に露出しつつ、それぞれ中継管5に接続されている。つまり、各送気管3と中継管5とは互いに連通している。なお、送気管3を収容する溝部22の一方の端部(壁部23側の端部)は、壁部23の下方付近において送気管3の一端33の周りに隙間が形成されないように閉塞されている。これに対して、各送気管3(本体部31)の他端34には、それぞれエンドキャップ(不図示)が嵌められている。なお、送気管3としては、例えば、土木排水用資材として市販されている有孔管を用いてもよい。
【0021】
噴出口32は、載置面21に載せられた有機性廃棄物Wに向けて空気を噴出するものであり、本体部31の周壁に設けられた孔部からなる。噴出口32は、本体部31の周壁のうち、溝部22から露出する上側部分に設けられている。噴出口32は、1つの送気管3の本体部31に対して、複数個設けられている。複数の噴出口32は、本体部31の長手方向に沿って概ね等間隔で並ぶように設けられている。なお、送気管3としては、後述するように、溝部22から露出する本体部31の上側部分のみならず、本体部31の側面部分等の他の部分に、噴出口32が設けられていてもよい。また、噴出口32の形状は、本発明の目的を損なわない限り、特に制限はなく、平面視で円形状や楕円形状であってもよいし、四角形状等の多角形状であってもよい。
【0022】
このような送気管3について、他端34側が閉塞された状態で一端33側から空気が供給されると、各噴出口32から空気が噴出される。
【0023】
中継管5は、送気管3(本体部31)の一端33側と空気供給部4とを繋ぐように配設され、かつ空気供給部4から供給された空気を送気管3へ送る筒状の部材である。中継管5は、複数の送気管3と接続する長手状の第1中継部51と、第1中継部51と空気供給部4とを繋ぐ第2中継部52とを備える。本実施形態の場合、中継管5は、床部2の奥側に立設された一次発酵槽の壁部23の外側に配設されている。
【0024】
第1中継部51は、一次発酵槽の外側において、醗酵処理装置1の左右方向に沿って延びた長手状の筒状部材からなる。第1中継部51には、その長手方向において、複数の送気管3の一端33が、互いに略等間隔で並ぶように接続されている。第1中継部51の一端(一方の端部)53は、醗酵処理装置1を正面側から見た状態において、左側に配設されており、エンドキャップ(不図示)が嵌められることで閉塞されている。これに対して、第1中継部51の他端(他方の端部)54は、開口されており、その開口部分が、排出口7となっている。
【0025】
排出口7は、送気管3等に溜まった水を、外部に排出するために利用される。この排出口7は、第1中継部51の他端54側に設けられた切替弁8により、閉状態と、開状態とに切り替え可能な状態となっている。排出口7の閉状態は、排出口7が閉塞される状態である。また、排出口7の開状態は、排出口7が開放される状態である。切替弁8としては、手動で開状態及び閉状態の切り替えが行われる手動弁であってもよいし、電磁弁、電動弁等の電気で駆動する自動弁であってもよい。
【0026】
第2中継部52は、第1中継部51と空気供給部4とを繋ぐ筒状部材からなる。本実施形態の場合、第2中継部52は、全体的には、L字状に曲がった形をなしている。そのような第2中継部52の一端52aは、空気供給部4の空気供給口4aに接続され、第2中継部52の他端52bは、第1中継部51に接続されている。なお、本実施形態の場合、第2中継部52の他端52bは、第1中継部51の中央部付近に接続されている。
【0027】
図4は、醗酵処理装置1の奥側部分の構成を模式的に表した上面図である。なお、図4では、説明の便宜上、床部2の周縁に立設された壁部23が、二点鎖線で示されている。図4に示されるように、排出口7の下方には、排出口7から排出された水が溜められる排水槽9が設けられている。排水槽9は、一次発酵槽の外側にある地面(床面)が、掘り下げられる形で設けられており、排出口7から排出された水が、地面に沿って様々な方向に流れ出すこと(所謂、垂れ流し)が防止される。なお、図4に示される切替弁8は、閉状態であり、排出口7が閉塞されている。
【0028】
本実施形態の場合、中継管5の第1中継部51の下方に、排水溝10が設けられている。排水溝10は、一次発酵槽の外側にある地面(床面)が、掘り下げられる形で設けられている。排水溝10は、醗酵処理装置1の左右方向に沿って延びた形をなしており、その一端が排水槽9に接続されている。載置面21上の有機性廃棄物Wから滲み出した水分の多くは、床部2に設けられた溝部22に溜められる。
【0029】
空気供給部4は、モータで駆動する回転翼を備えたブロアからなり、吸引口から回転翼の動作で空気(外気)を吸引すると共に、吸引した空気に所定の圧力を付して空気供給口(送気口)4aから、中継管5(第2中継部52)を介して各送気管3に向けて空気を供給する。このようにして、空気供給部4は、送気管3の一端(一方の端部)33側から空気を供給する。
【0030】
空気供給部(ブロア)4は、外部に設置された電源(例えば、電圧200V)に、電線を介して電気的に接続されている。電線の途中には、空気供給部(ブロア)4をオンオフ制御するためのスイッチ(不図示)が設けられている。本実施形態の空気供給部4は、所定の高さに調整された設置台41上に固定されている。
【0031】
ここで、本実施形態の醗酵処理装置1を使用した有機性廃棄物Wの一次醗酵処理について説明する。先ず、図1及び図2に示されるように、有機性廃棄物Wが一次発酵槽の床部2の載置面21上に載せられる。この状態の有機性廃棄物Wは、比較的、多くの水分を含んでいる。このように載置面21上に堆積された有機性廃棄物Wに対して、その下側から、図3等に示される空気供給機構6を利用して、空気が供給される。空気供給機構6は、上述したように、送気管3、空気供給部4、中継管5等を備えており、空気供給部4を稼働させることで、送気管3の各噴出口から空気が有機性廃棄物Wに向かって噴出される。この際、中継管5が備える第1中継部51の端部(他端)54に設けられた切替弁8は、図3及び図4に示されるように、閉状態となっており、第1中継部51の端部(他端)54は閉塞されている。
【0032】
有機性廃棄物Wに対する空気の供給は、有機性廃棄物Wの温度や水分量等に応じて、間欠的に行われる。例えば、所定時間t1(例えば、1分~30分)の間、空気供給部4を稼働させて、有機性廃棄物Wに対して空気を供給し、その後、空気供給部4を停止して、所定時間t2(例えば、5分~60分)の間、有機性廃棄物Wに対する空気の供給が停止される。
【0033】
上記のように空気供給部4を停止した場合、床部2の溝部22内に設置された送気管3内に、有機性廃棄物Wに含まれる水分が、噴出口32から送気管3内に入り込んでしまうことがある。上述したように、有機性廃棄物Wから滲み出した水分の多くは、溝部22内に入って溜められるものの、一部の水分は、噴出口32から送気管3内に入り込んで、送送気管3内で溜まってしまう。図5は、空気供給部4が停止した状態の醗酵処理装置1において、有機性廃棄物Wに含まれる水分が、送気管3内に入り込んだ状態を模式的に表した説明図である。なお、図5には、図2に対応した醗酵処理装置1の断面構成が示されている。
【0034】
図5に示されるように、送気管3(本体部31)の各噴出口32は、上方を向く形で設けられているため、空気供給部4の停止時に、有機性廃棄物Wに含まれる水分Bの一部が、噴出口32から送気管3内に入り込んでしまうことがある。送気管3内に水分が溜まった状態で、空気供給部4を稼働させると、送気管3内に供給された空気に押されて水分が噴出口32から有機性廃棄物Wに向かって噴き出し、有機性廃棄物の醗酵効率を低下させてしまう。そのため、本実施形態では、空気供給部4を稼働させる前に、空気供給部4を停止させた状態において、切替弁8を開状態として排出口7を開放することで、排出口7から、送気管3や中継管5(第1中継管51等)に溜まった水分Bの排出が行われる。
【0035】
図6は、切替弁8を開状態として、排出口7から送気管3等の内部の水分Bを外部へ排出する様子を模式的に表した説明図である。図6には、図4に対応した醗酵処理装置1の奥側部分の構成が示されている。図6に示されるように、本実施形態の場合、切替弁8が備えるレバー81を、作業者が所定の向き(図6中の矢印)に手動で回転させることで、閉状態の切替弁8が開状態に切り替えられる。なお、そのレバー81を逆向きに回転させることで、開状態の切替弁8を閉状態に戻すことができる。
【0036】
このように、本実施形態の醗酵処理装置1では、空気供給部4の停止時に、切替弁8を開状態として、排出口7から、送気管3等の内部に溜まった水分Bを外部に排出することができる。このような排出口7からの水分Bの排出は、必要に応じて、適宜、行われる。また、空気供給部4が停止される度に、定期的に、排出口7からの水分Bの排出を行ってもよい。
【0037】
なお、本実施形態の醗酵処理装置1を使用した一次醗酵処理において、予め定められた滞留日数の後、有機性廃棄物Wに対する空気の供給が停止され、一次発酵槽内の有機性廃棄物Wが外部に搬出される。
【0038】
<他の実施形態>
本発明は上記記述及び図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0039】
(1)切替弁8として、電磁弁等の自動弁を使用し、その開閉制御を、醗酵処理装置が備える制御盤(制御装置)からの指示に基づいて、行ってもよい。例えば、切替弁は、空気供給部の稼働時に閉状態となり、かつ空気供給部の停止時に閉状態となるように、制御盤からの指示による開閉制御を行ってもよい。
【0040】
(2)他の実施形態の醗酵処理装置では、図7に示されるように、送気管3内の水Bが、自重で、中継管5(第1中継部51)側に向かい易くするために、送気管3を、中継管5側に向かって下るように緩やかに傾斜した状態で溝部22内に配設してもよい。
【0041】
(3)排出口は、本発明の目的を損なわない限り、長手状の中継管5(第1中間部51)の端部であってもよいし、中継管5(第1中継部51)の中央側の周壁を貫通する形で設けられてもよい。
【0042】
(4)他の実施形態において、切替弁としては、中継管(第1中継部)の端部の排出口(開口)を塞ぐ、取り付け及び取り外しが可能なキャップを使用してもよい。
【0043】
(5)他の実施形態において、送気管3Aとしては、例えば、図8に示されるように、略水平方向に配置された状態において、円筒状のパイプからなる本体部31Aのうち、噴出口は、上側部分のみならず、側面や底面(下側部分)等にも多数設けられていてもよい。これらの噴出口は、空気供給機構の停止時に、溝部22内に溜まった水分を送気管3A内に取り入れるための取入れ入口としても機能する。噴出口32から取り入れられた水分は、送気管3Aを通って、最終的に排出口から外部に排出される。
【符号の説明】
【0044】
1…醗酵処理装置、2…一次発酵槽の床部、21…載置面、22…溝部、23…壁部、24…出入口、3…送気管、31…本体部、32…噴出口、33…送気管の一端(一方の端部)、34…送気管の他端(他方の端部)、4…空気供給部、41…設置台、5…中継管、51…第1中継部、52…第2中継部、6…空気供給機構、7…排出口、8…切替弁、9…排水槽、10…排水溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【手続補正書】
【提出日】2024-10-16
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機性廃棄物が載せられる載置面と、前記載置面に設けられる溝部とを有する床部と、
前記溝部内に配設される筒状をなし、一端側から空気が供給され、かつ前記載置面に載置された前記有機性廃棄物に向けて空気を噴出するように上方に向けて開口する複数の噴出口を含む送気管と、
前記送気管の前記一端側から空気を供給する空気供給部とを備える醗酵処理装置であって、
前記送気管の前記一端側と前記空気供給部とを繋ぐように配設され、かつ前記空気供給部から供給された空気を前記送気管へ送る筒状の中継管と、
前記中継管の何れかの位置に設けられ、前記送気管内に溜まった水を外部へ排出させる排出口と、
前記排出口を閉塞する閉状態と、前記排出口を開放する開状態とに切り替え可能な切替弁とを備え
前記切替弁は、前記空気供給部の稼働時に閉状態となり、かつ前記空気供給部の停止時に開状態となるように、切り替えられる醗酵処理装置。
【請求項2】
前記排出口の下方に設けられ、前記排出口から排出された水が溜められる貯留槽を備える請求項1に記載の醗酵処理装置。
【請求項3】
前記送気管は、前記中継管側に向かって下るように傾斜した状態で前記溝部内に配設される請求項1又は請求項2に記載の醗酵処理装置。