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特開2024-176684溶接接合部および溶接接合部の形成方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176684
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】溶接接合部および溶接接合部の形成方法
(51)【国際特許分類】
   B23K 9/00 20060101AFI20241212BHJP
   B23K 37/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B23K9/00 501B
B23K37/06 R
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095423
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100140774
【弁理士】
【氏名又は名称】大浪 一徳
(74)【代理人】
【識別番号】100134359
【弁理士】
【氏名又は名称】勝俣 智夫
(74)【代理人】
【識別番号】100188592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100217249
【弁理士】
【氏名又は名称】堀田 耕一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100221279
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 健吾
(74)【代理人】
【識別番号】100207686
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 恭宏
(74)【代理人】
【識別番号】100224812
【弁理士】
【氏名又は名称】井口 翔太
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 洋介
(72)【発明者】
【氏名】二階堂 真人
(72)【発明者】
【氏名】木村 慧
(72)【発明者】
【氏名】清水 信孝
【テーマコード(参考)】
4E081
【Fターム(参考)】
4E081YB03
4E081YX02
4E081YX08
4E081YY02
(57)【要約】
【課題】本発明は、溶接接合部と溶接接合部の形成方法の提供を目的とする。
【解決手段】本発明に係る溶接接合部は、建築構造用柱からなる下部柱と上部柱が溶接された溶接接合部であって、前記下部柱の上端部の隅角部および前記上部柱の下端部の隅角部に、溶接以前に設けられていたエレクションピースに由来する切断跡が存在することを特徴とする。建築構造用柱からなる下部柱の上端部と、建築構造用柱からなる上部柱の下端部が、前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている開先面を前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部の間に介在させ、前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに形成された溶接部により接合された溶接接合部であることが好ましい。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
建築構造用柱からなる下部柱と上部柱が溶接された溶接接合部であって、前記下部柱の上端部の隅角部および前記上部柱の下端部の隅角部に、溶接以前に設けられていたエレクションピースに由来する切断跡が存在することを特徴とする溶接接合部。
【請求項2】
建築構造用柱からなる下部柱の上端部と、建築構造用柱からなる上部柱の下端部が、
前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている開先面を前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部の間に介在させ、前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに形成された溶接部により接合された溶接接合部であって、
前記溶接部において、隅角部を介し隣接する2つの直線状溶接部が、いずれも、継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、
前記2つの直線状溶接部のうち、
一方の直線状溶接部が開先内溶接部、他方の直線状溶接部が全長溶接部であり、
前記開先内溶接部は、継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を前記全長溶接部の開先面位置まで到達させた開先内溶接部であり、
前記全長溶接部は、柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり隅角部以外の位置で継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる全長溶接部である
ことを特徴とする溶接接合部。
【請求項3】
前記溶接部において、隅角部を介し隣接する4つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、
前記4つの直線状溶接部のうち、2つが前記全長溶接部であり、残り2つが前記開先内溶接部である、
ことを特徴とする請求項2に記載の溶接接合部。
【請求項4】
前記溶接部において、隅角部を介し隣接する4つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、
前記4つの直線状溶接部のうち、1つが前記全長溶接部であり、1つが前記開先内溶接部であり、残り2つが溶接始終端部の片側が開先面およびルート間隔位置まで到達させた開先内溶接部であり、もう片方が柱板端面まで連続した溶接金属からなる
ことを特徴とする請求項3に記載の溶接接合部。
【請求項5】
前記開先内溶接部が前記全長溶接部と接触する位置に継ぎ目が形成された、
請求項1~請求項4のいずれか一項に記載の溶接接合部。
【請求項6】
建築構造用柱からなる下部柱と上部柱を溶接する際、前記下部柱の上端部および前記上部柱の下端部の隅角部にエレクションピースを設けることを特徴とする溶接接合部の形成方法。
【請求項7】
建築構造用柱からなる下部柱の上端部と、建築構造用柱からなる上部柱の下端部が、
前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている開先面を前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部の間に介在させ、前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに形成された溶接部により接合され、
前記溶接部において、隅角部を介し隣接する2つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、
前記2つの直線状溶接部のうち、
一方の直線状溶接部が開先内溶接部、他方の直線状溶接部が全長溶接部であり、
前記開先内溶接部は、継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を前記全長溶接部の開先面位置まで到達させた開先内溶接部であり、
前記全長溶接部は、柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり隅角部以外の位置で継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる全長溶接部であり、
前記開先内溶接部を形成する際、始端側と終端側について前記開先内溶接部の形成領域を超えて前記全長溶接部の形成領域まで達する溶接金属を形成し、前記全長溶接部の形成領域に存在する溶接金属を削除した後、前記全長溶接部の形成領域に、前記柱幅全長にわたり前記全長溶接部を形成することを特徴とする溶接接合部の形成方法。
【請求項8】
前記全長溶接部の形成領域に、前記柱幅全長にわたり前記全長溶接部を形成するにあたり、
前記全長溶接部の形成領域の始端側および終端側において、前記全長溶接部の形成領域を超える外側位置に、前記全長溶接部の形成領域に相当する前記下部柱の上端部形状と前記上部柱の下端部形状と前記開先面の形状を模したエンドタブを設け、前記全長溶接部の形成領域を超えて前記エンドタブの領域まで溶接金属を設け、該溶接金属において前記エンドタブの領域に形成した部分を除去することにより前記全長溶接部を形成する
ことを特徴とする請求項7に記載の溶接接合部の形成方法。
【請求項9】
前記エンドタブとして、前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている端面および開先面およびルート間隔の形状を模した第1タブ本体および第2タブ本体および第3タブ本体を用いることを特徴とする、
請求項8に記載の溶接接合部の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶接接合部および溶接接合部の形成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
建築現場で利用されている現場ロボット溶接は、ロボット重量や性能などを任意に設定できるが、鉄骨足場に溶接ロボットを設置するため、ロボットの可搬性やロボット性能に応じた対応可能な溶接施工に制限が生じる。
例えば、現状、溶接ロボットを用いた建築構造用柱における隅角部の施工難易度は高く、直線部は溶接ロボットにより溶接し、コーナー部は溶接技能者が溶接し、溶接の取り合い部を熟練溶接技能者が確認する、という手順の溶接方法が一般的に用いられている。
ここで、「建築構造用柱」は、角形鋼管柱および溶接組立箱形断面柱を対象としている。また、「隅角部」は、建築構造用柱における隣接する側面が接続されている部分を含む概念であり、例えば、直角または面取りされた角を形成している部分等を含む概念である。
【0003】
しかし、鋼管柱の隅角部を含めて鋼管柱の全周を溶接ロボットで溶接する場合、解決するべき複数の課題が考えられる。
「1」柱幅中央部に設けたエレクションピースを境とするビード継ぎ目で発生する溶接欠陥の問題。
「2」隅角部における先行溶接の溶接始終端部の形状が凹凸であることにより、後行溶接の溶接開始時の条件設定が困難である問題。
「3」隅角部に形成されるビード継ぎ目に発生する溶接欠陥の問題。
【0004】
例えば、図7(b)に示す溶接組立箱形断面柱からなる下部柱10Aと上部柱11Aを溶接ロボット33により溶接する場合について考察する。
溶接を行うには、まず、上部柱11Aの下端部において、対向する2つの側面の外側に設けた直線状のガイドレール30Aに沿ってそれぞれ溶接ロボット33を移動自在に設置する。ガイドレール30Aは柱側面に取り付けたレール支持部34Aにより支持される。
下部柱10Aと上部柱11Aは、それらの突き合わせ部分近くに取り付けられたエレクションピース12、12をスプライスプレート13で挟み込み、これらを貫通する連結ボルト15にナット16を螺合することで仮固定されている。
溶接組立箱形断面柱の場合、対向する2つの側面のそれぞれに溶接ロボット33を設置し、2台の溶接ロボット33を用いて同時に直線溶接することがなされている。
また、図7(a)に示す角形鋼管柱の場合、上部柱11の下端部を周回するようにガイドレール30を設け、ガイドレール30を周回するように2台の溶接ロボット33を設置し、溶接がなされている。
上述のようにガイドレール30Aに沿って直線移動もしくはガイドレール30に沿って周回しながら溶接ロボット33が溶接を行うことで下部柱と上部柱の溶接を行うことができる。
【0005】
下部柱10Aと上部柱11A、あるいは、下部柱10と上部柱11の側面において、幅方向中央に仮固定用のエレクションピース12を取り付けることにより、例えば図10(a)に示すように搬送車両の荷台に建築構造用柱10Aを横積みする際、エレクションピース12が他部品と干渉するのを避けることができる。
また、エレクションピース12を吊り治具としてワイヤーロープYにより部材を吊る際、少ない吊り治具で、吊り上げ中の部材の回転を抑えることができる。また、柱スキンプレートへの溶接は、角部に比べて、平板部の方が簡易に取り付けることができる。
前述の場合、ガイドレール30に沿って移動する溶接ロボット33が溶接すると、エレクションピース12の位置において必然的に溶接ビードの継ぎ目が発生する。
エレクションピース12の設置位置を境に溶接パスを分けるため、その継ぎ目において溶接工数が増え、継ぎ目の部分において溶接欠陥を生じるおそれがある。
【0006】
また、図8に示す下部柱10の各側面中央にエレクションピース12が設けられている仮固定構造において、2台の溶接ロボットRを用いる以下の溶接方法が知られている。
まず、下部柱10の隅角部にセラミック製のタブ2を配置し、図8(a)に示す下部柱10の対角位置に設置したタブ2、2とこれらタブ2に隣接するエレクションピース12との間の領域A、Bを溶接する。領域Aに溶接部3を形成し、領域Bに溶接部4を形成することができる。
次いで、図8(b)に示すように領域Aに隣接する領域Cと、領域Bに隣接する領域Dを溶接する。図8(c)に示すように領域Cに溶接部5を形成し、領域Dに溶接部6を形成することができる。
これにより、下部柱10の断面積の半分程度を溶接できたので、エレクションピース12を切断し、上下のエレクションピース12の接合を分離する。残りの領域Eと領域Fが開放されるので、残った領域Eと領域Fを図8(c)に示すように溶接することができる。
【0007】
従来、溶接ロボットを用いて上下の建築構造用柱を溶接する場合、特許文献1に示すようにエレクションピースの設置位置を避けた建築構造用柱の対角位置の隅角部を先行溶接し、エレクションピースを除去した後、残りの部分を後行溶接する技術が知られている。
【0008】
また、仮固定状態の上下の建築構造用柱を溶接する場合、図8に示す構造と同様にエレクションピース12が設けられている仮固定構造において、特許文献2に記載の建築構造用柱の角部に挿入した溶接仕切板とエレクションピースの間の領域を順次溶接する溶接方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2021-065899号公報
【特許文献2】特開2020-157361号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
特許文献1、2および図8を基に説明した従来の溶接方法では、何れの方法においても、前述した課題を解決できている訳ではない。
従来の仮固定構造では、エレクションピース12の設置位置を境に溶接パスを分けるために溶接工数が増え、さらに先行溶接部と後行溶接部が発生するので、継ぎ目の部分において溶接欠陥を生じるおそれがある。
また、従来の溶接方法では、溶接組立箱形断面柱の隅角部に溶接始終端を設けるので溶接の始端には溶け込み不良やブローホールなどの溶接欠陥が生じ易く、溶接終端にはクレータ割れなどの溶接欠陥を生じ易い問題がある。
これら溶接欠陥の発生は、補修溶接による溶接施工工期の遅れに帰結し易く、溶接欠陥部の歪み集中による早期の溶接部破断を誘発する可能性が考えられる。
【0011】
本発明は、上述の問題に鑑みなされたものであり、エレクションピースの設置位置を工夫することにより、溶接工数を減らし、溶接欠陥を生じ難くした溶接接合部と溶接接合部の形成方法の提供を1つの課題とする。
また、本発明は、エレクションピースの設置位置を工夫し、エレクションピースの設置位置近傍における溶接継ぎ目をなくし、従来エレクションピースと隅角部に不可避的に形成されたビード継ぎ目を一体とし、溶接欠陥が発生しうるビード継ぎ目の数を減らした溶接接合部と溶接接合部の形成方法の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
(1)上記課題を解決するために、本発明に係る一形態の溶接接合部は、建築構造用柱からなる下部柱と上部柱が溶接された溶接接合部であって、前記下部柱の上端部の隅角部および前記上部柱の下端部の隅角部に、溶接以前に設けられていたエレクションピースに由来する切断跡が存在することを特徴とする。
上述の構造を採用すると、建築構造用柱の下部柱と前記上部柱を溶接する際、前記下部柱の上端部および前記上部柱の下端部の角部に取り付けたエレクションピースにより、前記下部柱と前記上部柱を仮固定した状態で溶接することができる。
【0013】
(2)本発明に係る一形態の溶接接合部は、建築構造用柱からなる下部柱の上端部と、建築構造用柱からなる上部柱の下端部が、前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている開先面を前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部の間に介在させ、前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに形成された溶接部により接合された溶接接合部であって、前記溶接部において、隅角部を介し隣接する2つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、前記2つの直線状溶接部のうち、一方の直線状溶接部が開先内溶接部、他方の直線状溶接部が全長溶接部であり、前記開先内溶接部は、継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を前記全長溶接部の開先面位置まで到達させた開先内溶接部であり、前記全長溶接部は、柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり隅角部以外の位置で継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる全長溶接部であることを特徴とする。
【0014】
(3)本発明に係る一形態の溶接接合部においては、前記溶接部において、隅角部を介し隣接する4つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、前記4つの直線状溶接部のうち、2つが前記全長溶接部であり、残り2つが前記開先内溶接部である構成を採用できる。
【0015】
(4)本発明に係る一形態の溶接接合部においては、前記溶接部において、隅角部を介し隣接する4つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、前記4つの直線状溶接部のうち、1つが前記全長溶接部であり、1つが前記開先内溶接部であり、残り2つが溶接始終端部の片側が開先面およびルート間隔位置まで到達させた開先内溶接部であり、もう片方が柱板端面まで連続した溶接金属の構成を採用できる。
(5)本発明に係る一形態の溶接接合部においては、前記開先内溶接部が前記全長溶接部と接触する位置に継ぎ目が形成された構成を採用できる。
【0016】
(6)本発明に係る一形態に係る溶接接合部の形成方法は、建築構造用柱からなる下部柱と上部柱を溶接する際、前記下部柱の上端部および前記上部柱の下端部の隅角部にエレクションピースを設けることを特徴とする。
(7)本発明に係る一形態の溶接接合部の形成方法において、建築構造用柱からなる下部柱の上端部と、建築構造用柱からなる上部柱の下端部が、前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている開先面を前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部の間に介在させ、前記下部柱の上端部と前記上部柱の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに形成された溶接部により接合され、前記溶接部において、隅角部を介し隣接する2つの直線状溶接部が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部であり、前記2つの直線状溶接部のうち、一方の直線状溶接部が開先内溶接部、他方の直線状溶接部が全長溶接部であり、前記開先内溶接部は、継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を前記全長溶接部の開先面位置まで到達させた開先内溶接部であり、前記全長溶接部は、柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり隅角部以外の位置で継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる全長溶接部であり、前記開先内溶接部を形成する際、始端側と終端側について前記開先内溶接部の形成領域を超えて前記全長溶接部の形成領域まで達する溶接金属を形成し、前記全長溶接部の形成領域に存在する溶接金属を削除した後、前記全長溶接部の形成領域に、前記柱幅全長にわたり前記全長溶接部を形成することを特徴とする。
【0017】
(8)本発明に係る一形態の溶接接合部の形成方法において、前記全長溶接部の形成領域に、前記柱幅全長にわたり前記全長溶接部を形成するにあたり、前記全長溶接部の形成領域の始端側および終端側において、前記全長溶接部の形成領域を超える外側位置に、前記全長溶接部の形成領域に相当する前記下部柱の上端部形状と前記上部柱の下端部形状と前記開先面の形状を模したエンドタブを設け、前記全長溶接部の形成領域を超えて前記エンドタブの領域まで溶接金属を設け、該溶接金属において前記エンドタブの領域に形成した部分を除去することにより前記全長溶接部を形成することを特徴とする。
【0018】
(9)本発明の一形態の溶接方法において、前記エンドタブとして、前記上部柱の下端部周面と前記下部柱の上端部周面の少なくとも一方に形成されている端面および開先面およびルート間隔の形状を模した第1タブ本体および第2タブ本体および第3タブ本体を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、下部柱の上端部および上部柱の下端部の隅角部にエレクションピースを取り付けることにより、下部柱と上部柱の突き当て部分周りを溶接した溶接接合部であり、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続させた全長溶接部と、全長溶接部の開先面位置まで到達する開先内溶接部により溶接接合部を構成できるので、溶接工数を減らし、溶接欠陥発生率の低い溶接接合部を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
図1】本発明に係る第1実施形態の溶接方法と溶接接合部の概要について説明するための部分断面図であり、(a)は上部柱と下部柱の突き合わせ部分において2つの領域に溶接部を形成した状態を示す断面図、(b)は2つの領域に形成した溶接部の端部を加工した状態を示す断面図、(c)は残り2つの領域に溶接部を形成し、エレクションピースおよびエンドタブを切断して、溶接接合部を完成させた状態を示す断面図。
図2】同第1実施形態の溶接方法について説明するための図であり、(a)は上部柱および下部柱の突き合わせ部分と隅角部におけるエレクションピースおよびエンドタブの設置状態を示す斜視図、(b)は同状態を示す側面図、(c)は上部柱と下部柱の突き合わせ部分に形成した溶接部を示す側面図。
図3】同第1実施形態の溶接方法において下部柱と上部柱の突き合わせ部分の隅角部を示すもので、(a)は隅角部に対する固形タブの取り付けイメージを示す斜視図、(b)は下部柱および上部柱の隅角部における固形タブを示す正面図、(c)は同隅角部における右側面図、(d)は固形タブのセットバック状態を示す正面図、(e)は固形タブのセットバック状態を示す側面図。
図4】同第1実施形態の溶接方法において下部柱と上部柱の突き合わせ部分の隅角部を示すもので、(a)は隅角部に対するエンドタブの取り付けイメージを示す斜視図、(b)は同隅角部におけるエンドタブを示す正面図、(c)は同隅角部におけるエンドタブを示す右側面図。
図5】本発明に係る第2実施形態の溶接方法と溶接接合部について説明するための部分断面図であり、(a)は上部柱と下部柱の突き合わせ部分において2つの領域に溶接部を形成した状態を示す断面図、(b)は2つの領域に続く溶接部を形成する位置を示す断面図、(c)は残り2つの領域に溶接部を形成して溶接接合部を完成させた状態を示す断面図。
図6】本発明に係る溶接方法においてエレクションピースの取り付け状態の第2、第3の例を示す斜視図であり、(a)は第2の例を示す斜視図、(b)は第3の例を示す斜視図。
図7】エレクションピースを備えた上部柱と下部柱を溶接ロボットにより溶接している状態を説明するための斜視図であり、(a)は角形鋼管柱の場合の斜視図、(b)は溶接組立箱形断面柱の場合の斜視図。
図8】従来の溶接方法の一例を説明するための図であり、(a)はエレクションピースと干渉しない2つの領域を溶接する状態を示す断面図、(b)は先に溶接部を形成した領域に隣接する領域に溶接部を形成する状態を示す断面図、(c)は残りの部分を溶接する状態を示す断面図。
図9】本発明に係る他の実施形態を示すもので、(a)は第3実施形態の溶接接合部を示す説明図、(b)は第4実施形態の溶接接合部を示す説明図、(c)は第5実施形態の溶接接合部を示す説明図。
図10】建築構造用柱の吊り下げ状態を示すもので、(a)はエレクションピースを柱幅方向中央部に設けた場合を示す図、(b)はエレクションピースを柱の隅角部に設けた場合を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しながら、本発明の好適な実施形態について説明する。
なお、以下に示す複数の実施形態の説明で用いる図面は、特徴をわかりやすくするために、便宜上特徴となる部分を拡大する等、強調して示している場合がある。また、各実施形態の説明において共通の構成には同一の符号を付し、同一符号を付した構成の説明を簡略化するか略することがある。
【0022】
「第1実施形態」
以下、図1図4図7を用いて、本発明に係る溶接接合部とその形成方法を具体化した第1実施形態について説明する。
第1実施形態に係る溶接接合部およびその形成方法において接合対象とする下部柱と上部柱は、図7に示した下部柱10および上部柱11と同じように建築現場に立設された建築構造用柱からなる図1または図2に示す下部柱20と上部柱21である。
図7に示した例では、下部柱10の側面上端中央と上部柱11の側面下端中央にエレクションピース12が形成されていたが、本実施形態では、下部柱10の側面上端隅角部と上部柱11の側面下端隅角部にエレクションピース22が取り付けられている。
【0023】
「上部柱と下部柱およびエレクションピースの構成」
図1図2に示すように下部柱20は複数のスキンプレートを組み合わせて溶接し、1本の溶接組立箱形断面柱とされたものである。一例として図2(a)に示すように柱本体溶接部20a、20aを介し複数のスキンプレートを接合して一体化された溶接組立箱形断面柱から下部柱20が構成されている。
同様に、柱本体溶接部21a、21aを介し複数のスキンプレートを接合して一体化された溶接組立箱形断面柱から上部柱21が構成されている。なお、図2(a)、(c)では、下部柱20と上部柱21の柱本体溶接部20a、21aを描いているが、図1では柱本体溶接部20aの記載を略し、下部柱20を平面視した概形のみ示している。
【0024】
下部柱20は、図1(a)に示すように下部柱20を平面視した場合、左側に位置する側面20Aと、この側面20Aを起点として下部柱20の反時計回り周方向に順次配置された側面20B、20C、20Dからなる。側面20Aに対し側面20Bは交差角度90゜となるように配置され、側面20Bに対し側面20Cは交差角度90゜となるように配置され、側面20Cに対し側面20Dは交差角度90゜となるように配置されている。
なお、図1図2を用いて下部柱20を構成する側面20A、20B、20C、20Dと、上部柱21を構成する側面21A、21Bは表示しているが、側面21C、21Dは図2(a)の裏面側にあって図2(a)では表示できない。このため、図1では下部柱20の上方に上部柱21が存在すると仮定し、下部柱20の側面20A、20B、20C、20Dを示す符号の後に、括弧付き符号を付してこれらの上方に上部柱21を構成する側面21A、21B、21C、21Dが存在することを示しておく。
【0025】
下部柱20と上部柱21が大型の場合、下部柱20と上部柱21は複数のスキンプレートを溶接した溶接組立箱形断面柱とされるが、本実施形態において溶接対象とする下部柱20と上部柱21は一体物でも、複数のスキンプレートの接合体でも構わない。このため、図1では下部柱20の構造について、本体溶接部などを略した簡略化記載としている。
図2(a)に示すように、下部柱20の上端部には水平面となる上端面20bが形成され、上部柱21の下端部には斜面となる開先面21bが形成されている。開先面21bは側面21A、21B、21C、21Dのそれぞれの下端部においてそれぞれの厚さを順次薄くなるように形成した下向きの斜面から形成されている。各開先面21bの傾斜角度は、例えば開先面21bに隣接する側面21A、21B、21C、21Dのいずれかの表面に対し55゜程度の傾斜角度とされている。
【0026】
図2(a)に示すように、下部柱20の側面20Aにおける上端側隅角部であり、側面20Bに近い位置と、上部柱21の側面21Aにおける下端側隅角部であり、側面21Bに近い位置と、を連結した側面視コ字型のエレクションピース22が設けられている。
エレクションピース22は、下部柱20に対し固定された長方形板状の下部取付片22aと、上部柱21に対し固定されたL字形状の取付片22bから形成されている。下部取付片22aは、片面の半分程度を側面20Aの表面に接触させ、片面の残り半分程度を側面20Aの側縁から側方に突出させて側面20Aに固定されている。上部取付片22bは、片面の半分程度を側面21Aの表面に接触させ、片面の残り半分程度を側面21Aの側縁から側方に突出させて側面21Aに固定されている。下部取付片22aと上部取付片22bは、薄肉溶接などの接合法により側面20Aあるいは側面21Aに固定されている。
図2(a)、(b)においては下部取付片22aと上部取付片22bの取り付け部分周りに薄肉溶接部19を描いている。
【0027】
また、下部取付片22aに沿うように板状のスプライスプレート23が設けられている。スプライスプレート23において下部取付片22aに対応する部分にスプライスプレート23と下部取付片22aを貫通する挿通孔24が形成されている。スプライスプレート23において上部取付片22bに対応する部分にスプライスプレート23と上部取付片22bを貫通する挿通孔25が形成されている。これら挿通孔24、25は、これらを貫通するように連結ボルトが設けられ、連結ボルトに螺合されるナットが設けられる。これら連結ボルトとナットを緊結することによりスプライスプレート23がエレクションピース22に一体化され、エレクションピース22が補強されている。
【0028】
なお、図2(a)では、下部柱20の側面20Aにおける上端側隅角部であり、側面20Bに近い側のエレクションピース22とスプライスプレート23のみ示した。しかし、これらは、下部柱20の側面20Aにおける上端側隅角部であり、側面20Dに近い側にも設けられている。図2(b)では側面20Aの左右両側に設けられているエレクションピース22およびスプライスプレート23を表示しているが、図2(a)では図示簡略化のため片側のみ示している。
【0029】
図2(b)の左側に示すエレクションピース22においては、下部取付片22aを側面20Aの左端縁から左側に突出するように側面20Aに取り付けられ、上部取付片22bを側面21Aの左端縁から左側に突出させるように側面21Aに取り付けられている。
図2(b)に示す左右のエレクションピース22が側面20Aに対し配置されている状態を図1(a)では左側に示している側面20Aの幅方向両側に簡略的に描いている。
本実施形態では更に、側面20Cに対し上述のエレクションピース22と同じエレクションピース22が幅方向両側に設けられている。側面20Cの幅方向両側に設けられているエレクションピース22について、図1(a)において設置位置のみ簡略的に記載している。
また、下部柱20と上部柱21は、互いの中心軸線を同一鉛直線に一致させて建築現場等においてエレクションピース22により仮固定されている。
【0030】
「溶接方法の概要」
本実施形態の溶接方法では、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部が突き合わされている部分周りに溶接金属を供給して溶接部を形成し、下部柱20と上部柱21の溶接を行う。
溶接方法の概要として、図1図2に示すようにエレクションピース22により仮固定されている下部柱20と上部柱に21に対し、後に図3を基に詳述する固形タブ26と先に図7を用いて説明した2台の溶接ロボット33を用いて第1段階の溶接を行う。
第1段階の溶接では、図1(a)に示すように、下部柱20の側面20Bと上部柱21の側面21Bの間の領域Bに溶接部(開先内溶接部)27を形成し、下部柱20の側面20Dと上部柱21の側面21Dの間の領域Dに溶接部(開先内溶接部)28を形成する。2台の溶接ロボット33を用いて領域Bと領域Dの溶接を行うため、領域Bと領域Dを同時に溶接しても良いし、領域Bと領域Dをこの順であるいは逆の順序で溶接しても良い。
【0031】
ここで、一例として、角形鋼管用の溶接ロボットの構成と溶接組立箱形断面柱用の溶接ロボットの構成について補足説明する。
図7(a)は角形鋼管用溶接ロボットの一例構成を示し、図7(b)は溶接組立箱形断面柱用の溶接ロボットの一例構成を示す。
図7(a)に示すように上部柱11のエレクションピース12の若干上方に、上部柱11の周面と一定間隔をあけて上部柱11の周回りを囲むように環状のガイドレール30が取り付けられている。ガイドレール30は、上部柱11の側面に対しボルト止めなどの手段により固定されている複数のレール支持部34によりほぼ水平に支持されている。ガイドレール30には、溶接ロボット33が複数(図7(a)に示す例では2基)取り付けられている。溶接ロボット33は、ガイドレール30に沿って上部柱11の周回りに移動自在となるようにガイドレール30に取り付けられている。溶接ロボット33はガイドレール30に沿って直線状に移動するか周回りに移動しながら溶接ができるように構成されている。
本実施形態の下部柱20と上部柱21においては、図7(b)に示す溶接組立箱形断面柱用の溶接ロボット33を用いることができる。上部柱21のエレクションピース22の若干上方に、上部柱21の側面と一定間隔をあけて上部柱21の側面の幅方向に沿って直線状のガイドレール30Aが設けられている。ガイドレール30Aは、上部柱21の側面に固定されている複数のレール支持部34Aによりほぼ水平に支持されている。
【0032】
溶接ロボット33は、ガイドレール30あるいはガイドレール30Aを把持する把持部35とこの把持部35に取り付けられた本体部36と、本体部36の下部側に支持機構37を介し支持された溶接トーチ38を具備する。溶接ロボット33は、ガイドレール30あるいはガイドレール30Aに沿って移動しながら溶接トーチ38により下部柱と上部柱の突き合わせ部分を溶接する機能を有する。
溶接ロボット33は、ガイドレール30あるいはガイドレール、30Aに沿って柱の周囲を直線移動もしくは周回しながら下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分を溶接できるロボットであれば、いずれの構成を採用しても良い。一例としてMHIソリューションテクノロジーズ(株)の多層盛溶接ロボットを用いることができる。また、以下に説明する溶接作業を実施する場合、図7(b)に示す溶接組立箱形断面柱用の溶接ロボット33を用いることが好ましいが、図7(a)に示すガイドレール30に沿って移動する溶接ロボット33を用いても良い。
【0033】
図1図2において前述した第1段階で溶接する領域Bは、側面20Bの上方の上端面20bとその上方の上部柱21の開先面21bとに隣接する領域であって、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部の突き合わせ部分の周囲領域であると説明できる。
領域Dは、側面20Dの上方の上端面20bとその上方の上部柱21の開先面21bとに隣接する領域であって、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部の突き合わせ部分の周囲領域と説明できる。
【0034】
第1段階の溶接が終了したならば、固形タブ26を取り外し、形成した溶接部27、28の溶接始終端部を側面20Aおよび側面20Cの開先面およびルート間隔に沿うように削って形を整えた後、図4に基づいて後に詳述するエンドタブ40と2台の溶接ロボット33を用いて第2段階の溶接を行う。
第2段階の溶接では、図1(b)~(c)に示すように、下部柱20の側面20Aと上部柱21の側面21Aの間の領域Aに溶接部(全長溶接部)41を形成し、下部柱20の側面20Cと上部柱21の側面21Cの間の領域Cに溶接部(全長溶接部)42を形成する。
【0035】
以上により、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部との突き合わせ部分周りに、溶接部27、28、41、42を形成できる。
第1段階の溶接と第2段階の溶接が終了したならば、図1(c)に示すように全てのエレクションピース22と全てのエンドタブ40を切断することで下部柱20と上部柱21の溶接作業を完了できる。
以下に固形タブ26の詳細構造とエンドタブ40の詳細構造について説明し、先に概要のみ説明した第1段階と第2段階の溶接について詳細に説明する。
【0036】
「固形タブの構造」
第1段階の溶接に用いる固形タブ26とその取付状態を図3(a)に示す。
固形タブ26は、例えばセラミック製の立体構造物であり、図3(a)に示すように下部柱20の隅角部と上部柱21の隅角部との間に介挿される。換言すると、側面20Aの上端面20bと、側面20Bの上端面20bが交わる隅角部に、隅角部からはみ出さない程度の大きさの固形タブ26が介挿される。
固形タブ26は、第1タブ本体26Aと第2タブ本体26Bからなる。
第1タブ本体26Aは、固形タブ26を図3(a)に示すように設置した状態において側面20Aの上端面20bと側面20Bの上端面20bの隅角部に設置される底面26aを有する。第1タブ本体26Aは、底面26aからほぼ直角に立ち上がり側面20Aの表面と面一に配置される側面26bを有し、底面26aから直角に立ち上がり側面20Bの表面と面一に配置される側面26cを有する。
【0037】
第1タブ本体26Aは、図3(b)に示すように側面20Aを正面視した場合、側面21Bの下端に位置する開先面21bと面一な向きの斜面26dを有する。また、斜面26dの下端に、この下端から垂下して底面26aの端縁に接続する短側面26eを有している。
第1タブ本体26Aは、図3(c)に示すように側面20Bを正面視した場合、側面21Aの下端に位置する開先面21bと面一な向きの斜面26fを有する。また、斜面26fの下端に、この下端から垂下して底面26aの端縁に接続する短側面26gを有している。
【0038】
第2タブ本体26Bは、第1タブ本体26Aに隣接して隅角部に設置される底面26hを有する。第2タブ本体26Bは、底面26hから第1タブ本体26A側の部分に第1タブ本体26Aの斜面26dと短側面26eを受ける側面26iと斜面26jが形成されている。
第2タブ本体26Bは、斜面26jを第1タブ本体26Aの斜面26dと面合わせして隅角部に設置されている。また、斜面26jと斜面26dを面合わせしたまま、第2タブ本体26Bに対し第1タブ本体26Aを側面20Bの上端面20bに沿ってスライド移動できるようになっている。
【0039】
「第1段階の溶接」
第1段階の溶接では、溶接ロボット33を用いて先に図1(a)を用いて説明したように溶接部27と溶接部28を形成する。図1(a)に示す溶接部27を形成する場合、領域Bの左端部側に図3(a)~(c)に示すように隅角部に固形タブ26が設ける。
なお、図3では示していないが、領域Bの右端部側の隅角部にも固形タブ26を設置する。固形タブ26は、例えば、接着剤付きアルミニウム箔などを用いて取り付けることが好ましい。
溶接ロボット33により領域Bに沿って溶接金属を供給しながら図1(a)に示すように溶接部27を形成する場合、領域Bの左端部側の第1タブ本体26Aを第2タブ本体26Bに対し図3(e)の矢印方向に若干移動し、セットバック状態としておく。
【0040】
セットバック状態とする場合の移動距離は、一例として、図3(e)に示す第1タブ本体26Aの底面26aの横幅の数分の一程度の距離とすることができる。また、領域Bの右端部側に設けた固形タブ26についても同様にセットバック状態としておく。領域Bの左右端の固形タブ26について、第1タブ本体26A、26Aをセットバック状態とすることで、領域Bを左右方向に拡張することができる。
【0041】
領域Bを拡張した状態で溶接ロボット33を作動させ、拡張した領域Bについて、下部柱20の上端面20bと上部柱21の開先面21bとの間に沿うように溶接金属を供給し、溶接部27を形成する。ここで溶接金属は、その両端側をセットバック状態とした第1タブ本体26A、26Aに接するまで形成する。
第1タブ本体26A、26Aに接するまで形成した溶接金属の両端側は、側面20Bの上方の開先面21bに対し、その左右端位置を超える領域まで形成される。このため、側面20Bの上方の開先面21bの左右端位置を超え、側面20Aの上方の開先面20b、開先面21bの領域に到達した溶接金属は、溶接後、グラインダーなどを用いて除去する。
なお、溶接ロボット33により第1タブ本体26A、26A間に直行溶接により溶接部を形成するので、溶接ロボット33に入力する溶接条件情報入力も容易となる。
【0042】
図3(e)で示した第1タブ本体26Aのセットバック状態の場合、図3(e)に第1タブ本体26Aのセットバックに伴う移動を示す複数の矢印を記載した領域まで溶接金属が形成される。このため、図3(e)に複数の矢印を記載した領域の溶接金属は除去し、残った部分を溶接部27とする。図3(e)に示す開先面21bの右端側の固形タブ26は記載を略しているが、開先面21bの右端側に形成した溶接金属についても同様にセットバック状態とした部分に対応した溶接金属をグラインダー処理などにより除去し、残りの部分を溶接部27とする。
溶接ロボット33を用いて直行溶接を実施する場合、溶接開始の始端部側と溶接終了時の終端部側では、いずれも欠陥を生じ易い問題がある。この点、溶接部27の始端側と終端側について、第1タブ本体26Aのセットバック量に応じ除去しているので、溶接部27の始端側と終端側に欠陥を含むおそれをなくすることができる。
【0043】
なお、溶接部28を形成した領域Dにおいても、領域Dの両端側に固形タブ26を設け、第1タブ本体26A、26Aの移動によりセットバック状態として領域Dを拡張する。そして、拡張した領域まで溶接金属を形成し、溶接金属の始端側と終端側について直交する溶接部の開先面およびルート間隔に到達する部分を除去する処理を領域Bと同じように行う。この処理により、溶接部28においても、始端側と終端側に欠陥を含むおそれをなくすることができる。
なお、溶接部27、28の両端側においてグラインダーにより除去する部分の詳細については、後の第2段階の溶接に用いるエンドタブ40について図4(c)に基づき説明する際に再度説明する。
第1段階の溶接が終了したならば、下部柱20と上部柱21の隅角部に設置した固形タブ26を全て取り外し、第2段階の溶接に移行する。固形タブ26はセラミック製であり、接着剤とアルミニウム箔を介し隅角部に固定しているため、隅角部から容易に取り外すことができる。
【0044】
「第2段階の溶接」
第1段階の溶接により溶接部27、28を形成したならば、次に、図4に示すエンドタブ40を用いて第2段階の溶接を行い、図1(c)に示したように溶接部41、42を形成する。
エンドタブ40は、図4(a)に示すように第1タブ本体40Aと第2タブ本体40Bと第3タブ本体40Cからなる。
第1タブ本体40Aと第2タブ本体40Bと第3タブ本体40Cは、いずれも鋼材製のブロックからなり、下部柱20の上端部と上部柱21下端部の間の隅角部の外側に、組立溶接により設置される。エンドタブ40は、下部柱20の上端部と上部柱21下端部の間の4つの隅角部にそれぞれ取り付ける。
【0045】
図4(a)に示す下部柱20の側面20Bと上部柱21の側面21Bに取り付けられたエンドタブ40を一例として、エンドタブ40の構成について以下に説明する。
第1タブ本体40Aは直方体のブロックからなり、一方の端面を側面20Bの上端隅角部に溶接して側面20Bに取り付けられている。第1タブ本体40Aは上面40aを側面20Aの上端面20bと面一になるように側面20Bに取り付けられている。また、第1タブ本体40Aは1つの側面40bを隣接する側面20Aの表面と面一になるように側面20Bに取り付ける。
【0046】
第2タブ本体40Bは略直方体状のブロックからなり、一方の端面を側面21Bの下端隅角部に溶接して側面21Bに取り付けられている。第2タブ本体40Bの下面側に斜面40dが形成され、この斜面40dを側面21Aの開先面21bと面一になるように第2タブ本体40Bが側面21Bに取り付けられている。
第2タブ本体40Bにおいて斜面40dの下端は第1タブ本体40Aの上面40aより若干上方に位置されている。斜面40dの下端と第1タブ本体40Aの上面40aとの間隔は、開先面21bの下端と下部柱20の上端面20bとの間隔であるルート間隔と、同じ大きさに設定する。
【0047】
第3タブ本体40Cは、直方体状のブロックからなり、図4(a)に示すように第1タブ本体40Aの裏面側と第2タブ本体40Bの裏面側に溶接されている。第3タブ本体40Cは、前述した斜面40dの下端と第1タブ本体40Aの上面40aの間に形成される隙間を図1(a)に示すように裏側から閉じるように組立溶接されている。
図4(b)、(c)にエンドタブ40と下部柱20、上部柱21の位置関係を示す。図4(b)では、エンドタブ40の奥側に、第1段階の溶接により形成された溶接部27が描かれている。図4(c)では、エンドタブ40の右側に、第1段階の溶接により形成された溶接部27が描かれている。
【0048】
第1段階の溶接において形成した溶接部27は、セットバック状態の固形タブ26を用いて形成しているので、両端側の不要部分を除去し、作製されると先に説明した。
図4(b)、(c)に、溶接部27の端部形状を示す。溶接部27は、図4(b)に示すように側面20Bの上端面20bを覆うように形成され、側面21Bの開先面21bを覆うように形成され、上端面20bと開先面21bの間の空間を埋めるように形成されている。また、図4(c)に示すように溶接部27の左側の端部は第2タブ本体40Bによって隠された領域まで形成されている。
【0049】
図4(a)~(c)に示すようにエンドタブ40を取り付けたならば、第2段階の溶接を実施する。なお、エンドタブ40は図1(c)を基に先に説明したように下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分において隅角部4箇所にそれぞれ取り付ける。
エンドタブ40の取り付けが終了したならば、溶接ロボット33を作動させて図1(c)に示すように領域Aと領域Cに溶接部41、42を形成する。
溶接部41を形成するにあたり、溶接ロボット33により下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分を含めて領域Aに対し、その始端側と終端側に設置されているエンドタブ40の領域まで含めて直行溶接を実施する。
溶接部42を形成するにあたり、溶接ロボット33により下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分を含めて領域Cに対し、その始端側と終端側に設置されているエンドタブ40の領域まで含めて直行溶接を実施する。
【0050】
ここで、図4(a)に示すようにエンドタブ40を設けることで第1タブ本体40Aの上面40aは側面20Aの上端面20bを延長した面となり、第2タブ本体40Bの斜面40dは側面21Aの開先面21bを延長した面となっている。このため、下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分に沿って領域Aを溶接したとして、領域Aの端部からエンドタブ40の設置領域に至る境界部分、あるいは、エンドタブ40の設置領域から領域Aに至る境界部分において、いずれも溶接不良を生成することなく溶接できる。
直行溶接を実施する場合、その始端側と終端側において溶け込み不良やブローホールやクレータ割れなどの欠陥を生じやすい問題がある。しかし、エンドタブ40の領域を含めて溶接ロボット33による直行溶接を実施すると、仮に溶接欠陥を生じたとして、溶接欠陥はエンドタブ40の設置領域に生成する。このため、エンドタブ40を切断すると、溶接欠陥を有していない溶接部(全長溶接部)41、42が得られる。
【0051】
以上説明した溶接部27、28、41、42の形成については、先に図1(a)~(c)に基づき、溶接方法の概要において一度説明した。
固形タブ26を用いて領域Bと領域Dに溶接金属を形成し、領域Bと領域Dの両端側から固形タブ26のセットバック状態に対応し、各領域から外れて突出した部分まで溶接金属を形成し、突出部分の溶接金属を削除し、溶接部27、28を形成した。
溶接部27、28の形成後、エンドタブ40を用いてエンドタブ設置領域まで溶接金属を形成し、エンドタブ40の設置領域の溶接金属を除去することで溶接部41、42を形成した。この状態の溶接部27、28、41、42を図1(c)に示している。
【0052】
図1(c)に示す状態において溶接部27と溶接部41は、隅角部を介し隣接する直線状の溶接部27、41が、いずれも、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく直線状に連続した溶接金属からなる溶接部である。そして、溶接部41が柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた全長溶接部である。更に、溶接部27が継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を全長溶接部41の開先面位置まで到達させた溶接部であると説明できる。換言すると、溶接部41、42は全長溶接部であり、溶接部27、28は開先内溶接部である。
例えば、溶接部41、42が柱幅に沿う方向に、柱幅全長にわたり継ぎ目部を有することなく直線状に連続させた全長溶接部であり、溶接部27、28が継ぎ目を有することなく直線状に連続させた溶接金属からなる溶接部を全長溶接部41あるいは全長溶接部の開先面位置まで到達させた溶接部であると説明できる。
【0053】
以上説明した第1実施形態においては、エレクションピース22を下部柱20の側面上端隅角部あるいは上部柱21の側面下端隅角部に設けた。
建築現場において高層建築物を構成する場合、下部柱20と上部柱21を複数用いて階数に応じた柱を構築することがある。この場合、下部柱20と上部柱21の上端側と下端側にそれぞれエレクションピース22を取り付け、複数の下部柱20と複数の上部柱21を順次交互に接続して1本の柱とすることがある。
このように下部柱20と上部柱21を使用する場合、一例として、図10(b)に示すように長さ方向両端の隅角部の各々にエレクションピース22を設けた下部柱20(あるいは上部柱21)を用いることとなる。なお、図10(b)においてエレクションピース22の取付位置は簡略記載している。
図10(b)に示すように長さ方向両端部の側面隅角部にエレクションピース22を取り付けた下部柱20(あるいは上部柱21)を搬送トラック等に横積みする場合、ワイヤーロープYを4つのエレクションピース22に連結し、クレーンにより吊り上げてトラックに積載できる。4つのエレクションピース22を利用することで下部柱20を確実に支持しながら積載作業ができる。
【0054】
「第2実施形態」
図5図6(a)は第2実施形態に係る溶接方法について説明するための図である。
図5図6(a)に示す構造において下部柱20、上部柱21の構成は先の第1実施形態と同等であるが、エレクションピース52の取り付け位置と構成が異なる。図5図6(a)において、エレクションピース52は、溶接組立箱形断面柱からなる下部柱20の4つの隅角部20eおよび上部柱21の4つの隅角部21eに対応するように4つ設けられている。
【0055】
図6(a)に示すようにエレクションピース52は、下部柱20の隅角部20eに隅肉溶接により固定された平面視Y字型の下部取付片52aと、上部柱21の隅角部21eに隅肉溶接により固定された平面視Y字型の上部取付片52bを有する。下部取付片52aの基端部52dと上部取付片52bの基端部52eはこれらを連結した連結片52cにより一体化されている。
エレクションピース52の連結片52Cの表裏両面にスプライスプレート54が添設され、2枚のスプライスプレート54とエレクションピース52を貫通する透孔が形成され、これらの透孔には図示略の連結ボルトが挿通され、連結ボルトにナットを螺合することによりエレクションピース52が補強されている。エレクションピース取付片52a、52bは、隅角部に設けることを目的としており、平面視Y字型に限定されない。
【0056】
また、スプライスプレート54の長さ方向中央部側であって、隅角部20e、21e側の部分に、エレクションピース52とスプライスプレート54を部分的に側面視半円状に切り欠いた切欠部54aが形成されている。エレクションピース52とスプライスプレート54の切欠部54aは、溶接時の溶接棒との干渉を避けることを目的としており、この形状に限定されない。切欠部54aは下部柱20の上端部から上部柱21の下端部に至る程度の直径を有するように形成されている。
図5(a)においては、図示簡略化のためにエレクションピース52を1枚板のように簡略記載し、エレクションピース52の基端部52eの方向が分かるように記載する。4つのエレクションピース52は、下部柱20を図5(a)に示すように平面視した場合、下部柱20の対角線の延長線に沿うように対角位置に設置されている。
エレクションピース52は下部取付片および上部取付片の基端部52eの長さ分、下部柱20の側面および上部柱21の側面と離間した位置に配置されている。
【0057】
「第2実施形態の溶接方法」
第2実施形態の溶接方法では、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部が突き合わされている部分周りに溶接部を形成し、下部柱20と上部柱21の溶接を行う。
第2実施形態の溶接方法では、図5(a)に示すようにエレクションピース52により仮固定されている下部柱20と上部柱21に対し、下部柱20の隅角部20eと上部柱21の隅角部21eの間にセラミック製の固形タブ53を挟み込む。
固形タブ53を設置したならば、溶接ロボット33を用いて図5(a)に示すように領域Bと領域Dに溶接金属を形成して溶接部55、56を形成する。
【0058】
溶接ロボット33で溶接部55、56を形成するにあたり、エレクションピース52は下部取付片および上部取付片の基端部52eの長さ分、下部柱20および上部柱21と離間した位置に存在する。その上、エレクションピース52において下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分周りに半円状の切欠部54aを設けているので、下部柱20および上部柱21の隅角部周りには充分な作業スペースが確保される。
この作業スペースを利用し、溶接ロボット33は余裕を持って溶接トーチ38の先端部を下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分周りに配置しながら、直行溶接することができる。従って、領域Bと領域Dに、いずれも隅角部以外の位置で継ぎ目を有しない、溶接欠陥を生じていない溶接部55、56を形成できる。
【0059】
領域Bと領域Dに溶接部55、56を形成したならば、全ての固形タブ53を取り外し、再び溶接ロボット33を用いて図5(b)~(c)に示すように領域Aと領域Cに溶接部57、58を形成する。
領域Aと領域Cに溶接部57、58を形成する際、エレクションピース52の設置位置の関係と切欠部54aを設けている関係から、溶接ロボット33は直行溶接により支障なく領域Aと領域Cに溶接部57、58を形成できる。
図5(c)に示すように、溶接部55と溶接部57の境界はそれらの端部に形成された傾斜部55a、57aを介し接続されている。溶接部57と溶接部56の境界はそれらの端部に形成された傾斜部57b、56aを介し接続されている。溶接部56と溶接部58の境界はそれらの端部に形成された傾斜部56b、58aを介し接続されている。溶接部58と溶接部55の境界はそれらの端部に形成された傾斜部58b、55bを介し接続されている。
溶接部55、57、56、58は図5(c)に示すように平面視矩形枠状に配置され、下部柱20と上部柱21の突き合わせ部分の周囲を覆っている。
【0060】
領域B、Dと領域A、Cに溶接部を形成したならば、図5(c)に示すように全てのエレクションピース52を除去し、下部柱20と上部柱21の溶接作業を完了できる。
図5図6を基に説明した第2実施形態に係る溶接方法によれば、エレクションピース52周りでの溶接継ぎ目をなくすことができ、溶接工数も削減できる効果がある。
【0061】
なお、下部柱20と上部柱21の4つの隅角部において、溶接部55、57、56、58の隣接する位置には見かけの溶接継ぎ目が発生するが、本実施形態ではエレクションピース位置での継ぎ目を少なくすることができる。
【0062】
図5(c)に示す溶接接合部は、下部柱20の上端部と上部柱21の下端部を突き合わせ、突き合わせ部分周りに平面視四角枠型に配置した溶接部55、56、57、58により接合された溶接接合部である。また、四角枠型の溶接部が、隅角部以外の位置で継ぎ目を有することなく溶接金属を直線状に連続させた4つの直線状溶接部55、56、57、58からなり、4つの直線状溶接部55、56、57、58がそれらの両端部に形成された傾斜部どうしの間を見かけの継ぎ目として平面視四角枠状に組まれて溶接接合部が構成されている。
【0063】
図6(b)は、第2実施形態の溶接方法を実施する場合に用いるエレクションピースの変形例を示す。
先の例では平面視Y字型の下部取付片52a、上部取付片52bを有するエレクションピース52を用いたが、下部取付片、上部取付片については、図6(b)に示すようにL字型の下部取付片70、上部取付片71を用い、エレクションピース73を構成しても良い。
図6(b)に示すエレクションピース73を適用した構造であっても、図5に示すように溶接部55、56、57、58を形成することができる。
【0064】
ところで、前記した第1実施形態と第2実施形態の構造では、いずれも上部柱21の下端部に開先面21Aを形成したが、開先面を形成する位置は下部柱20の上端部か上部柱21の下端部、あるいは、それらの両方の何れかの位置で良い。
【0065】
図9(a)は本発明に係る溶接接合部の第3実施形態を示す平面図である。
図9(a)は溶接後の図1(c)に対応する平面図であり、図1(c)の構造では全長溶接部である溶接部41、42を柱幅方向に設け、開先内溶接部である溶接部27、28を柱幅方向に設けた。
これに対し、図9(a)に示す第3実施形態では、全長溶接部である溶接部41、42を柱幅方向に設け、開先内溶接部である溶接部27、28を柱幅方向に設けた。
図9(a)に示す溶接接合部を得るためには、第1溶接で用いるエレクションピース22と固形タブ26の取り付け位置を調節し、第2溶接で用いるエンドタブ40の取付位置を調整し、第1溶接で領域Aと領域Cに溶接部27、28を形成し、第2溶接で領域Bと領域Dに溶接部41、42を形成すれば良い。
【0066】
図9(b)は溶接接合部の第4実施形態を示す。
図9(b)の溶接接合部では、図9(a)に示す全長溶接部である溶接部42と開先内溶接部である溶接部28を図9(a)に示す構造と同じ領域に有する。
第4実施形態では、領域Aに溶接部60を有し、領域Bに溶接部61を有する点に特徴を有する。溶接部60は、その一端部60aに開先内溶接部の端部と同じ構造を有し、他端部60bに全長溶接部の端部と同じ構造を有する。溶接部61は、その一端部61aに開先内溶接部の端部と同じ構造を有し、他端部61bに全長溶接部の端部と同じ構造を有する。
図9(b)に示す構造においても、溶接欠陥を少なくした溶接接合部を得ることができる。
【0067】
図9(c)は溶接接合部の第5実施形態を示す。
図9(c)では、図9(a)に示す全長溶接部である溶接部42と開先内溶接部である溶接部27を図9(a)に示す構造と同じ領域に有する。
第5実施形態では、領域Cに溶接部62を有し、領域Bに溶接部63を有する点に特徴を有する。溶接部62は、その一端部62aに開先内溶接部の端部と同じ構造を有し、他端部62bに全長溶接部の端部と同じ構造を有する。溶接部63は、その一端部63aに開先内溶接部の端部と同じ構造を有し、他端部63bに全長溶接部の端部と同じ構造を有する。
図9(c)に示す構造においても、溶接欠陥を少なくした溶接接合部を得ることができる。
【符号の説明】
【0068】
20…下部柱、20A、20B、20C、20D…側面、20b…上端面、
21…上部柱、21A、21B、21C、21D…側面、21b…開先面、
22…エレクションピース、22a…下部取付片、22b…上部取付片、
22c…連結片、23…スプライスプレート、26…固形タブ、26A…第1タブ本体、26a…底面、26B…第2タブ本体、26b…側面、26d…斜面、
27、27…溶接部(開先内溶接部)、30…ガイドレール、33…溶接ロボット、
40…エンドタブ、40A…第1タブ本体、41B…第2タブ本体、
41C…第3タブ本体、41、42…溶接部(全長溶接部)。
図1
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