(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176685
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】異常診断装置、異常診断方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
G05B 23/02 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G05B23/02 301X
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095425
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100162868
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 英輔
(74)【代理人】
【識別番号】100161702
【弁理士】
【氏名又は名称】橋本 宏之
(74)【代理人】
【識別番号】100189348
【弁理士】
【氏名又は名称】古都 智
(74)【代理人】
【識別番号】100196689
【弁理士】
【氏名又は名称】鎌田 康一郎
(72)【発明者】
【氏名】永野 一郎
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 真由美
(72)【発明者】
【氏名】青山 邦明
(72)【発明者】
【氏名】江口 慶治
【テーマコード(参考)】
3C223
【Fターム(参考)】
3C223AA02
3C223AA03
3C223BA01
3C223CC01
3C223DD01
3C223EB01
3C223EB03
3C223FF04
3C223FF13
3C223FF16
3C223FF24
3C223FF35
3C223FF45
3C223GG01
3C223HH03
3C223HH08
(57)【要約】
【課題】監視対象において発生している異常の原因を示すセンサの組み合わせを、少ない労力及び短い時間で分析者が特定できるようにする。
【解決手段】異常を検出した際に、複数のセンサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択する。選択した2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した第1指標と第2指標の組み合わせごとに、第1指標の尺度と、第2指標の尺度と、第1指標及び第2指標の尺度で特定される状態量の各々の位置とを表示画面に表示する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出部と、
前記異常検出部が異常を検出した際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択部と、
前記センサ選択部が選択した前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理部と、
を備える異常診断装置。
【請求項2】
前記センサ選択部は、
選択した前記2つのセンサの組み合わせごとに、前記組み合わせに含まれる2つのセンサの状態量から二次元マハラノビス距離を算出し、前記二次元マハラノビス距離を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第2の所定順位までの前記二次元マハラノビス距離に対応する前記組み合わせの中から、改めて前記2つのセンサの組み合わせを選択する、
請求項1に記載の異常診断装置。
【請求項3】
前記所定の選択条件は、
前記一方のセンサ以外の全てのセンサであるという条件である、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項4】
前記所定の選択条件は、
前記一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる2以上の個数の任意のセンサであるという条件である、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項5】
前記所定の選択条件は、
前記一方のセンサ以外のセンサであって、前記一方のセンサの状態量と、前記一方のセンサ以外のセンサの状態量との相関の度合いが、予め定められる閾値との関係で、高い相関の度合いを示すセンサであるという条件である、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項6】
前記所定の選択条件は、
前記一方のセンサ以外のセンサであって、前記一方のセンサに対して予め定められるセンサであるという条件である、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項7】
前記表示処理部は、
前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置を表示する際に、前記状態量の種類ごとに、異なる形態で前記状態量の位置を表示する、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項8】
前記第1の所定順位は、最上位である、
請求項1または請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項9】
前記第2の所定順位は、最上位である、
請求項2に記載の異常診断装置。
【請求項10】
監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出ステップと、
前記異常検出ステップによって異常が検出された際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択ステップと、
前記センサ選択ステップによって選択された前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理ステップと、
を含む異常診断方法。
【請求項11】
コンピュータを、
監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出手段、
前記異常検出手段が異常を検出した際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択手段、
前記センサ選択手段が選択した前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理手段、
として機能させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、異常診断装置、異常診断方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンなどのプラントの遠隔監視手法として、例えば、マハラノビス・タグチ法(以下、MT(Mahalanobis-Taguchi)法という)が利用されている。MT法では、監視対象であるプラントが正常状態で動作している際に、監視対象に設置された各種のセンサが検出する状態量を複数取得し、取得した複数の状態量を基準とする。その後、各種のセンサが検出する状態量を、時間の経過と共に順次取得し、取得した状態量を用いて信号空間を定める。信号空間が得られるごとに、信号空間と、基準とした状態量を用いて定めた単位空間との違いを、マハラノビス距離として算出する。算出したマハラノビス距離が、例えば、予め定められる閾値を超えた場合、監視対象に異常が発生したと判定する。
【0003】
MT法では、更に、状態量ごと、すなわちセンサごとのマハラノビス距離への影響度を示す指標として、SN(Signal-to-Noise)比を算出する。このSN比を用いることで、どのセンサが検出した状態量に異常があるか、言い換えると、センサの各々が検出対象としている監視対象の箇所において、どの箇所に異常があるかを特定することができる(例えば、特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011-238148号公報
【特許文献2】特開2021-140540号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
SN比が最大のセンサが検出する状態量は、マハラノビス距離を大きくしている要因の1つである。しかしながら、監視対象において発生する異常は、様々な要因によって発生する。例えば、SN比が最大のセンサの検出対象の箇所に異常の原因が存在せず、異常の原因となっている箇所の状態の変化が、SN比が最大のセンサの検出対象の箇所の状態量を変化させているという場合もある。
【0006】
このような場合、異常を分析する分析者は、複数のセンサの状態量の関係を参照しつつ、異常の原因を特定する分析作業を行う必要がある。ただし、監視対象に設置されるセンサの数は、非常に多いため、センサの組み合わせの数が膨大になる。そのため、異常の原因を特定する分析作業において、分析者が、どのセンサの組み合わせを参照すればよいのかを特定することに、多大な労力と時間を要してしまうという課題がある。
【0007】
本発明は、上記課題を解決すべくなされたもので、監視対象において発生している異常の原因を示すセンサの組み合わせを、少ない労力及び短い時間で分析者が特定できるようにする異常診断装置、異常診断方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示に係る異常診断装置は、監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出部と、前記異常検出部が異常を検出した際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択部と、前記センサ選択部が選択した前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理部と、を備える。
【0009】
本開示に係る異常診断方法は、監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出ステップと、前記異常検出ステップによって異常が検出された際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択ステップと、前記センサ選択ステップによって選択された前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理ステップと、を含む。
【0010】
本開示に係るプログラムは、コンピュータを、監視対象に備えられる複数のセンサの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサの各々に対応するSN比を算出する異常検出手段、前記異常検出手段が異常を検出した際に、複数の前記センサの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択手段、前記センサ選択手段が選択した前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理手段、として機能させる。
【発明の効果】
【0011】
本開示の異常診断装置、異常診断方法、及びプログラムによれば、監視対象において発生している異常の原因を示すセンサの組み合わせを、少ない労力及び短い時間で分析者が特定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示の実施形態に係る異常診断装置と、異常診断装置の監視対象であるプラントと、異常診断装置に接続するセンサ及び表示装置の構成を示すブロック図である。
【
図2】本開示の実施形態に係る異常診断装置の状態量記憶部が記憶するテーブルのデータ形式を示す図である。
【
図3】本開示の実施形態に係る異常診断装置のSN比記憶部が記憶するテーブルのデータ形式を示す図である。
【
図4】本開示の実施形態に係る異常診断装置による処理の流れを示すフローチャートである。
【
図5】本開示の異常診断装置に接続する表示装置の表示画面に表示されるグラフの例を示す図である。
【
図6】少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態に係る異常診断装置、異常診断方法、及びプログラムについて、
図1~
図5を参照して説明する。
図1は、本開示の実施形態に係る異常診断装置1と、異常診断装置1の監視対象であるプラント30と、異常診断装置1に接続するセンサ20-1~20-N及び表示装置2の構成を示すブロック図である。
図2、
図3は、それぞれ本開示の実施形態に係る異常診断装置1の状態量記憶部12と、SN比記憶部14とが記憶するテーブルのデータ形式を示す図である。
図4は、本開示の実施形態に係る異常診断装置1による処理の流れを示すフローチャートである。
図5は、本開示の異常診断装置1に接続する表示装置2の表示画面に表示されるグラフの例を示す図である。なお、各図において同一または対応する構成には同一の符号を用いて説明を適宜省略する。
【0014】
(異常診断装置の構成例)
図1に示すように、異常診断装置1は、表示装置2と、センサ20-1~20-Nとに接続し、異常診断装置1の監視対象であるプラント30の状態を、センサ20-1~20-Nによって監視する。プラント30は、例えば、ガスタービンなどである。表示装置2は、例えば、表示画面を有する液晶ディスプレイなどである。
【0015】
センサ20-1~20-Nは、例えば、温度センサ、圧力センサ、電圧センサなどの各種センサであり、プラント30において監視が必要な箇所に設置される。ここで、Nは、2以上の整数である。センサ20-1~20-Nの各々は、内部に、例えば、時計などの計時手段を備えており、一定の時間間隔で、各々が設置されているプラント30における監視対象箇所の状態を検出し、検出した時刻(以下、検出時刻という)を計時手段から取得する。センサ20-1~20-Nの各々は、検出した状態の量を示す状態量と、当該状態量の検出時刻を示す情報と、センサ20-1~20-Nの各々のセンサ識別情報とを含む状態データを出力する。センサ識別情報は、センサ20-1~20-Nの各々を識別可能なように、センサ20-1~20-Nの各々に対して予め付与される情報である。ここで、センサ20-1~20-Nが検出する状態量は、例えば、温度センサの場合、温度値になり、圧力センサの場合、圧力値になり、電圧センサの場合、電圧値になる。センサ20-1~20-Nの各々の内部に備えられる計時手段から得られる時刻を示す情報は、例えば、年月日時分秒の形式で表される情報である。
【0016】
異常診断装置1は、状態量収集部11、状態量記憶部12、異常検出部13、SN比記憶部14、センサ選択部15、及び表示処理部16を備える。
【0017】
状態量収集部11は、センサ20-1~20-Nに、例えば、電気回線や通信回線を介して接続し、センサ20-1~20-Nの各々が出力する状態データを取り込む。状態量収集部11は、取り込んだ状態データの各々の検出時刻のズレを補正して、1つの検出時刻にN個の状態データが存在するように、検出時刻と、状態データとの関連付けを行う。状態量収集部11は、N個の状態データに含まれるN個の状態量と、N個の状態量の各々に対応するセンサ識別情報と、N個の状態量に対応する1つの検出時刻を示す情報とを1つのレコードとして、状態量記憶部12に記録する。
【0018】
状態量記憶部12は、
図2に示すように、「検出時刻」と、N個の「センサ識別情報」の各々と、「種類」という項目を有するデータ形式のテーブルを記憶する。「検出時刻」の項目には、状態量収集部11によって検出時刻を示す情報が記録される。N個の「センサ識別情報」の項目の各々には、状態量収集部11によって、項目の各々のセンサ識別情報に対応する状態量が記録される。「種類」の項目には、「単位空間」、「信号空間」、「異常」の何れかが記録される。なお、状態量収集部11は、レコードを状態量記憶部12に記録する際、「種類」の項目に「信号空間」を記録する。
【0019】
異常診断装置1のユーザ、すなわち異常を分析する分析者は、図示しない異常診断装置1に備えられる操作部を操作することにより、状態量記憶部12のレコードから、プラント30が正常に動作している期間のレコードの幾つかを選択し、選択したレコードの「種類」の項目を「信号空間」から「単位空間」に書き換える。なお、「信号空間」から「単位空間」への書き換えは、例えば、定期的に分析者によって行われ、直近でプラント30が正常に動作している2~3か月程度の期間の連続するレコードが「信号空間」から「単位空間」に書き換えられて、状態量記憶部12に記録されている状態が望ましい。
【0020】
異常検出部13は、状態量記憶部12に記録されているレコードのうち「種類」の項目が「単位空間」のレコードの状態量を用いて単位空間を定める。異常検出部13は、状態量収集部11による状態量記憶部12への新たなレコードの記録の処理を監視する処理を継続して行っており、状態量記憶部12に新たなレコードが記録されると、記録された新たなレコードの状態量を用いて信号空間を定める。
【0021】
異常検出部13は、信号空間の状態量と、単位空間の状態量とに対して、MT法を適用して、信号空間のマハラノビス距離を算出する。異常検出部13は、算出したマハラノビス距離が、予め定められる閾値を超えた場合、プラント30に異常が発生したと判定する。異常検出部13は、プラント30に異常が発生したと判定した場合、判定した際の信号空間に対応するレコードの「種類」の項目を「信号空間」から「異常」に書き換える。
【0022】
異常検出部13は、異常が発生したと判定した際の判定対象の状態量記憶部12のレコードの状態量の各々と、単位空間の状態量とに基づいて、センサ20-1~20-Nごとのマハラノビス距離への影響度を示す指標であるSN比を算出する。異常検出部13は、異常が発生したと判定した際の判定対象の状態量記憶部12のレコードの検出時刻を示す情報と、算出したセンサ20-1~20-NごとのSN比とをSN比記憶部14に記録する。異常検出部13は、SN比記憶部14への記録が終了すると、SN比記憶部14に記録した検出時刻を示す情報を含む異常発生通知信号を出力する。
【0023】
SN比記憶部14は、
図3に示すように、「検出時刻」と、N個の「センサ識別情報」の各々という項目を有するデータ形式のテーブルを記憶する。「検出時刻」の項目には、異常検出部13によって検出時刻を示す情報が記録される。N個の「センサ識別情報」の項目の各々には、異常検出部13によって、項目の各々のセンサ識別情報に対応するSN比が記録される。
【0024】
センサ選択部15は、複数のセンサ20-1~20-Nの中から2つのセンサの組み合わせを選択する。センサ選択部15は、センサ組み合わせ生成部15-1と、二次元MD(Mahalanobis-Distance)算出部15-2とを備える。センサ組み合わせ生成部15-1は、異常検出部13が出力する異常発生通知信号を取り込むと、取り込んだ異常発生通知信号に含まれている検出時刻を示す情報に対応するレコードをSN比記憶部14から検出する。センサ組み合わせ生成部15-1は、検出したレコードに含まれるN個のSN比が大きい順にセンサ識別情報を並べる。センサ組み合わせ生成部15-1は、最上位から所定順位(以下、第1の所定順位という)の間のセンサ識別情報を選択する。
【0025】
センサ組み合わせ生成部15-1は、選択したセンサ識別情報が一方のセンサ識別情報として含まれ、当該一方のセンサ識別情報以外のセンサ識別情報であって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサ20-1~20-Nに対応するセンサ識別情報が他方のセンサ識別情報として含まれる組み合わせデータを生成する。
【0026】
二次元MD算出部15-2は、センサ組み合わせ生成部15-1が生成した組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報に対応する状態量を状態量記憶部12から読み出し、読み出した状態量を用いて単位空間と、信号空間とを定める。二次元MD算出部15-2は、定めた単位空間と、信号空間とに基づいて、信号空間の二次元マハラノビス距離を算出する。
【0027】
二次元MD算出部15-2は、センサ組み合わせ生成部15-1が生成する組み合わせデータの各々に対応する二次元マハラノビス距離を算出すると、二次元マハラノビス距離が大きい順に組み合わせデータを並べる。二次元MD算出部15-2は、最上位から所定順位(以下、第2の所定順位という)の間の組み合わせデータを選択する。
【0028】
表示処理部16は、例えば、電気回線を介して表示装置2に接続する。表示処理部16は、二次元MD算出部15-2が選択した組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報の各々に対応する状態量を状態量記憶部12から読み出す。表示処理部16は、二次元MD算出部15-2が選択した組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報の一方のセンサの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサの状態量を表す指標を第2指標として選定する。表示処理部16は、選定した第1指標と第2指標の組み合わせごとに、第1指標の尺度と、第2指標の尺度とによって表されるグラフであって、読み出した状態量の各々の位置が、第1指標及び第2指標の尺度とによって示されるグラフの画像データを生成する。表示処理部16は、グラフの画像データを生成する際に、読み出した状態量の種類、すなわち「単位空間」、「信号空間」、「異常」の種類ごとに、異なる形態で状態量の位置が示されるようにグラフの画像データを生成する。表示処理部16は、生成したグラフの画像データを表示装置2に出力する。表示装置2は、表示処理部16が出力するグラフの画像データを用いてグラフの画像を表示画面に表示する。
【0029】
(異常診断装置による処理)
図4は、異常診断装置1において、異常検出部13が異常発生通知信号を出力した後に、センサ選択部15と、表示処理部16とによって行われる処理の流れを示すフローチャートである。なお、以下では、上記した所定の選択条件が、一方のセンサ識別情報に対応するセンサ20-1~20-N以外の全てのセンサ20-1~20-Nであるという条件であるとし、上記した第1の所定順位が最上位であり、上記した第2の所定順位が、第3位である場合の処理について説明する。
【0030】
センサ組み合わせ生成部15-1は、異常検出部13が出力する異常発生通知信号を取り込んで取得する(S1)。センサ組み合わせ生成部15-1は、取得した異常発生通知信号に含まれている検出時刻を示す情報に対応するレコードをSN比記憶部14から読み出す。センサ組み合わせ生成部15-1は、読み出したレコードに含まれるN個のSN比が大きい順にセンサ識別情報を並べる。センサ組み合わせ生成部15-1は、順番において最上位のセンサ識別情報、すなわちSN比が最も大きいセンサ識別情報を選択する(S2)。
【0031】
センサ組み合わせ生成部15-1は、選択したSN比が最も大きいセンサ識別情報を、組み合わせを生成する際の主となるセンサ識別情報(以下、主センサ識別情報という)とする。センサ組み合わせ生成部15-1は、所定の選択条件にしたがって、主センサ識別情報が一方のセンサ識別情報として含まれ、主センサ識別情報以外の全てのセンサ識別情報の各々が他方のセンサ識別情報として含まれるN-1個の組み合わせデータを生成する。なお、センサ組み合わせ生成部15-1は、組み合わせデータを生成する際、主センサ識別情報に対して、主センサ識別情報であることを示す識別ラベルを付与して、組み合わせデータを生成する。
【0032】
センサ組み合わせ生成部15-1は、生成したN-1個の組み合わせデータの各々に対して、当該N-1個の組み合わせデータを生成した際に、SN比記憶部14から読み出したレコードの「検出時刻」の項目の検出時刻を示す情報を関連付ける。センサ組み合わせ生成部15-1は、各々に検出時刻を示す情報が関連付けられているN-1個の組み合わせデータを二次元MD算出部15-2に出力する(S3)。
【0033】
二次元MD算出部15-2は、センサ組み合わせ生成部15-1が出力する、各々に検出時刻を示す情報が関連付けられているN-1個の組み合わせデータを取り込む。二次元MD算出部15-2は、取り込んだN-1個の組み合わせデータから何れか1つの組み合わせデータを選択する。
【0034】
二次元MD算出部15-2は、選択した組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報に対応する状態量であって、「種類」の項目が「単位空間」の状態量を状態量記憶部12から全て読み出す。二次元MD算出部15-2は、読み出した「種類」の項目が「単位空間」に対応する状態量を用いて、選択した組み合わせデータに対応する単位空間を定める。
【0035】
二次元MD算出部15-2は、選択した組み合わせデータに関連付けられている検出時刻を示す情報に対応する1つのレコードを状態量記憶部12から検出する。二次元MD算出部15-2は、検出した1つのレコードから、選択した組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報の各々に対応する2つの状態量を読み出す。二次元MD算出部15-2は、読み出した2つの状態量を用いて、選択した組み合わせデータに対応する信号空間を定める。二次元MD算出部15-2は、当該信号空間と、選択した組み合わせデータに対応して定めた単位空間とを用いて、信号空間の二次元マハラノビス距離を算出する。二次元MD算出部15-2は、選択した組み合わせデータに、更に、算出した二次元マハラノビス距離を関連付ける。二次元MD算出部15-2は、検出時刻を示す情報と、二次元マハラノビス距離とが関連付けられている組み合わせデータを内部の記憶領域に記録する(S4)。
【0036】
二次元MD算出部15-2は、S4の処理対象としていない何れか1つの組み合わせデータを選択し、選択した組み合わせデータに対してS4の処理を行うことを、S4の処理対象の組み合わせデータが無くなるまで繰り返し行う(ループL1s~L1e)。なお、
図4のフローチャートの処理は、異常検出部13が、異常発生通知信号を出力するごとに行われる処理である。そのため、ループL1s~L1eの処理における初回のS4の処理において、二次元MD算出部15-2は、検出時刻を示す情報と、二次元マハラノビス距離とが関連付けられている組み合わせデータを内部の記憶領域に記録する前に、内部の記憶領域を初期化する。これにより、前回の異常発生通知信号の際の組み合わせデータが消去されることになる。
【0037】
二次元MD算出部15-2は、内部の記憶領域から二次元マハラノビス距離と、検出時刻を示す情報とが関連付けられているN-1個の組み合わせデータを読み出す。二次元MD算出部15-2は、読み出した二次元マハラノビス距離と、検出時刻を示す情報とが関連付けられているN-1個の組み合わせデータを、二次元マハラノビス距離が大きい順に並べる。二次元MD算出部15-2は、最上位から第3位までの3つの組み合わせデータを選択する。二次元MD算出部15-2は、選択した3つの組み合わせデータであって、検出時刻を示す情報が関連付けられている組み合わせデータに、更に、順位を示す情報を関連付けて、表示処理部16に出力する(S5)。
【0038】
表示処理部16は、二次元MD算出部15-2が出力する3つの組み合わせデータであって、順位を示す情報と、検出時刻を示す情報とが関連付けられている組み合わせデータを取り込む。表示処理部16は、例えば、順位にしたがって、組み合わせデータの各々から、以下に示す手順で、グラフの画像データを生成する処理を行う。すなわち、表示処理部16は、最初に第1位の組み合わせデータを選択し、選択した組み合わせデータに含まれる、主センサ識別情報であることを示す識別ラベルが付与されたセンサ識別情報と、識別ラベルが付与されていないセンサ識別情報とを読み出す。ここで、識別ラベルが付与されたセンサ識別情報に対応するセンサが、センサ20-A(ただし、Aは、1以上N以下の整数である)であるとし、識別ラベルが付与されていないセンサ識別情報に対応するセンサが、センサ20-P(ただし、Pは、1以上N以下の整数であって、Aとは異なる整数である)であるとする。
【0039】
表示処理部16は、センサ20-Aの状態量を表す指標を第1指標とし、センサ20-Pの状態量を表す指標を第2指標とする。表示処理部16は、センサ20-A,20-Pのセンサ識別情報の各々に対応する状態量であって、「種類」の項目が「単位空間」になっている状態量を状態量記憶部12から読み出し、読み出した状態量に「単位空間」を示すラベルを付与する。
【0040】
表示処理部16は、センサ20-A,20-Pのセンサ識別情報の各々に対応する状態量であって、「検出時刻」の項目の検出時刻の年月日が、第1位の組み合わせデータに関連付けられている検出時刻を示す情報が示す年月日に一致する状態量であって、「種類」の項目が「信号空間」または「異常」である状態量を状態量記憶部12から読み出す。言い換えると、表示処理部16は、センサ20-A,20-Pのセンサ識別情報の各々に対応する状態量であって、異常が発生した日と同日に検出された「信号空間」または「異常」の状態量を状態量記憶部12から読み出す。
【0041】
表示処理部16は、センサ20-A,20-Pのセンサ識別情報の各々に対応する異常が発生した日に検出された「信号空間」または「異常」の状態量を状態量記憶部12から読み出す際、読み出す状態量に対応する「種類」の項目の情報、すなわち「信号空間」または「異常」の情報も読み出す。表示処理部16は、読み出した状態量に、当該状態量に対応して読み出した「種類」の項目の情報を付与する。
【0042】
これにより、表示処理部16は、第1位の組み合わせデータに対応する、センサ20-A,20-Pのセンサ識別情報の各々に対応する状態量であって、状態量の各々に「単位空間」、「信号空間、「異常」の何れかの情報が付与された状態量を得ることになる。
【0043】
表示処理部16は、センサ20-Aの状態量を表す指標を第1指標とし、センサ20-Pの状態量を示す指標を第2指標とする。表示処理部16は、第1指標の尺度を縦軸とし、第2指標の尺度を横軸とし、第1指標と第2指標の尺度で特定される状態量の各々の位置と、状態量の各々の種類を示す散布図のグラフの画像データを生成する。表示処理部16は、状態量の位置及び種類を表示するため、例えば、「単位空間」が付与されている状態量の位置に円形のマークが表示され、「信号空間」が付与されている状態量の位置に菱形のマークが表示され、「異常」が付与されている状態量の位置に星形のマークが表示されるようにグラフの画像データを生成する。表示処理部16は、生成したグラフの画像データを表示装置2に出力する。表示装置2は、表示処理部16が出力するグラフの画像データを取り込み、取り込んだグラフの画像データを用いてグラフの画像を表示画面に表示する(S6)。これにより、例えば、
図5(a)に示すグラフが、表示装置2の表示画面に表示される。
【0044】
表示処理部16は、次に、第2位の組み合わせデータを選択して、S6の処理を行う。第2位の組み合わせデータに含まれる主センサ識別情報に対応する一方のセンサは、センサ20-Aになる。ここで、第2位の組み合わせデータに含まれる他方のセンサを、センサ20-Q(ただし、Qは、1以上N以下の整数であって、A,Pとは異なる整数である)とする。この場合、表示処理部16は、第2位の組み合わせデータに対するS6の処理により、センサ20-Aに対応する第1指標を縦軸とし、センサ20-Qに対応する第2指標を横軸とする散布図のグラフの画像データを生成する。これにより、表示装置2の表示画面に、例えば、
図5(b)に示すグラフが表示されることになる。
【0045】
表示処理部16は、最後に、第3位の組み合わせデータを選択して、S6の処理を行う。第3位の組み合わせデータに含まれる主センサ識別情報に対応する一方のセンサは、センサ20-Aになる。ここで、第3位の組み合わせデータに含まれる他方のセンサを、センサ20-R(ただし、Rは、1以上N以下の整数であって、A,P,Qとは異なる整数である)とする。この場合、表示処理部16は、第3位の組み合わせデータに対するS6の処理により、センサ20-Aに対応する第1指標を縦軸とし、センサ20-Rに対応する第2指標を横軸とする散布図のグラフの画像データを生成する。これにより、表示装置2の表示画面に、例えば、
図5(c)に示すグラフが表示されることになる(ループL2s~L2e)。ループL2s~L2eの処理の終了により、
図4に示すフローチャートの処理は、終了する。
【0046】
(異常診断装置の作用・効果)
図4の処理が終了した際に、表示装置2の表示画面には、
図5(a),(b),(c)という3つのグラフが表示される。
図5(a)に示すグラフは、センサ20-Aの状態量との関係で、二次元マハラノビス距離が最も大きいセンサ20-Pの状態量と、センサ20-Aの状態量との関係を示すグラフである。
図5(b)に示すグラフは、センサ20-Aの状態量との関係で、二次元マハラノビス距離が2番目に大きいセンサ20-Qの状態量と、センサ20-Aの状態量との関係を示すグラフである。
図5(c)に示すグラフは、センサ20-Aの状態量との関係で、二次元マハラノビス距離が3番目に大きいセンサ20-Rの状態量と、センサ20-Aの状態量との関係を示すグラフである。なお、
図5(a),(b),(c)のグラフでは、「異常」の種類を示す星形のマークが5個表示されていることから、異常検出部13が、5回目に異常発生通知信号を出力した際に、表示装置2の表示画面に表示されたグラフということになる。この3つのグラフを、分析者が参照して、異常を示す状態量が、どれぐらい単位空間から離れているかなどを分析することにより、分析者は、プラント30において、異常が発生している箇所を特定することができる。
【0047】
N個のセンサ20-1~20-Nから2つのセンサ20-1,20-Nを選択する組み合わせの数は、NC2、すなわちN×(N-1)/2になる。Nの数が大きくなると、組み合わせの数は、膨大な数になる。これに対して、異常診断装置1のセンサ選択部15は、SN比の大きさと、二次元マハラノビス距離の大きさという2つの指標に基づいて、N×(N-1)/2個の組み合わせの中から、表示対象とする組み合わせを絞り込むようにしている。SN比の大きさと、二次元マハラノビス距離という2つの指標は、異常に対する関連性の度合いを示す指標ということができる。そのため、センサ選択部15が絞り込んだ組み合わせは、異常に対する関連性が高い組み合わせになり、表示装置2の表示画面に表示されるグラフは、異常に対する関連性が高い組み合わせの関係を示したグラフということになる。言い換えると、SN比の大きさと、二次元マハラノビス距離の大きさという2つの指標に基づいて、組み合わせを絞り込むことにより、表示装置2の表示画面に表示されるグラフの中に、発生している異常の原因を示すセンサ20-1~20-Nの状態量の特性を示すグラフが含まれる可能性を高くすることができる。したがって、異常診断装置1を用いることにより、監視対象であるプラント30において発生している異常の原因を示すセンサの組み合わせを、少ない労力及び短い時間で分析者が特定できることになる。
【0048】
<実施形態の他の構成例>
(所定順位の他の構成例)
図4の処理の前提とした、第1の所定順位、第2の所定順位は、一例であり、第1の所定順位、第2の所定順位は、任意の順位としてもよい。例えば、第2の所定順位を最上位にすると、二次元MD算出部15-2は、二次元マハラノビス距離が最も大きい組み合わせデータのみを表示処理部16に出力するため、上記の
図4の例の場合、表示処理部16は、
図5(a)のグラフのみを表示装置2の表示画面に表示することになる。
【0049】
第1の所定順位が示す順位を下げていくことにより、センサ組み合わせ生成部15-1が生成する組み合わせデータの数が増加するため、二次元MD算出部15-2による処理負荷が大きくなるが、その一方で、より広い範囲で、発生している異常に対する関連性が高い組み合わせを抽出することが可能になる。したがって、第1の所定順位は、分析範囲と、二次元MD算出部15-2による処理負荷の程度とに鑑みて定められることになる。なお、第1の所定順位を、第2位以下とした場合、センサ組み合わせ生成部15-1は、最上位から第1の所定順位までの間の任意の1つ以上の順位のセンサ識別情報を選択するようにしてもよい。
【0050】
第2の所定順位は、表示処理部16が表示装置2の表示画面に表示するグラフの数に関連するため、第2の所定順位が示す順を下げていくことにより、表示処理部16は、より多くのグラフを表示装置2の表示画面に表示することになる。そのため、分析者は、より多くのグラフを参照して分析することになり、分析者の分析に要する労力と時間が増加することになるが、その一方で、分析者の分析対象が増えるため、より正確に、発生している異常の原因を特定する可能性を高めることができる。したがって、第2の所定順位は、分析者の分析に要する労力及び時間と、要求される正確さとに鑑みて定められることになる。なお、第2の所定順位を、第2位以下とした場合、二次元MD算出部15-2は、最上位から第2の所定順位までの間の任意の1つ以上の順位の組み合わせデータを選択するようにしてもよい。
【0051】
(所定の選択条件の他の構成例(その1))
図4の処理の前提とした、所定の選択条件は、一例であり、以下のような所定の選択条件を適用してもよい。例えば、所定の選択条件として、主センサ識別情報に対応するセンサ20-A以外の予め定められる2以上の個数の任意のセンサ20-1~20-Nであるという条件を適用してもよい。この条件にすることで、センサ組み合わせ生成部15-1が生成する組み合わせデータの数を減少させることができるので、二次元MD算出部15-2による処理負荷を小さくすることが可能になる。
【0052】
(所定の選択条件の他の構成例(その2))
所定の選択条件として、主センサ識別情報に対応するセンサ20-A以外のセンサ20-1~20-Nであって、センサ20-Aの状態量と、センサ20-A以外のセンサ20-1~20-Nの状態量との相関の度合いが、予め定められる閾値との関係で、高い相関の度合いを示すセンサ20-1~20-Nであるという条件を適用してもよい。この条件が適用された場合の具体的な処理について説明する。例えば、センサ組み合わせ生成部15-1は、
図4のS3の処理において、主センサ識別情報を定めた後、状態量記憶部12から主センサ識別情報の状態量であって、「種類」の項目が「単位空間」である状態量を読み出す。センサ組み合わせ生成部15-1は、主センサ識別情報以外のセンサ識別情報を何れか1つを選択し、状態量記憶部12から、選択したセンサ識別情報の状態量であって、「種類」の項目が「単位空間」である状態量を読み出す。センサ組み合わせ生成部15-1は、主センサ識別情報の単位空間の状態量と、選択したセンサ識別情報の単位空間の状態量とに基づいて、相関係数を算出する。
【0053】
センサ組み合わせ生成部15-1は、上記の手順により、主センサ識別情報以外のセンサ識別情報の各々に対応する相関係数を算出する。センサ組み合わせ生成部15-1は、相関係数の絶対値が、予め定められる閾値を超えているセンサ識別情報を選択する。センサ組み合わせ生成部15-1は、一方に主センサ識別情報を含み、他方に相関係数の絶対値が予め定められる閾値を超えているセンサ識別情報の各々を含む組み合わせデータを生成する。センサ組み合わせ生成部15-1は、生成した組み合わせデータの各々に対して、当該組み合わせデータを生成した際に参照したSN比記憶部14のレコードの「検出時刻」の項目の検出時刻を示す情報を関連付ける。センサ組み合わせ生成部15-1は、検出時刻を示す情報が関連付けられている組み合わせデータを二次元MD算出部15-2に出力する。その後、ループL1s~L1eの処理が行われる。
【0054】
これにより、センサ組み合わせ生成部15-1は、一方のセンサ識別情報を、SN比の大きさに基づいて選択された、発生している異常に対する関連性が高い主センサ識別情報とし、他方のセンサ識別情報を、主センサ識別情報に対応する状態量に対して、高い相関の度合いを示す状態量を検出するセンサ20-1~20-Nのセンサ識別情報とする組み合わせデータを生成することができる。
【0055】
この場合、センサ組み合わせ生成部15-1は、他方のセンサ識別情報を、主センサ識別情報以外の全てのセンサ識別情報とする場合に比べて、他方として選択されるセンサ識別情報の数を絞り込んでいることから、生成する組み合わせデータの数を減少させることができる。そのため、二次元MD算出部15-2による処理負荷を小さくすることが可能になる。更に、センサ組み合わせ生成部15-1は、無作為に、他方として選択されるセンサ識別情報の数を絞り込むわけではなく、センサ20-1の状態量に対して相関の度合いが高い状態量を検出するセンサ20-1~20-Nのセンサ識別情報に絞り込んでいる。そのため、S6の処理において、表示処理部16が、表示装置2の表示画面に表示するグラフの中に、発生している異常の原因を示すセンサ20-1~20-Nの状態量の特性を示すグラフが含まれる可能性を、更に、高くすることができる。
【0056】
なお、センサ組み合わせ生成部15-1は、相関係数を算出することに替えて、決定係数を算出するようにしてもよい。決定係数は、0~1の間の数値で表されることから、-1~1の間の数値で表される相関係数のように、絶対値と、閾値とを比較する必要がなく、決定係数と、閾値とを比較すればよいことになる。
【0057】
(所定の選択条件の他の構成例(その3))
所定の選択条件として、主センサ識別情報に対応するセンサ20-A以外のセンサ20-1~20-Nであって、主センサ識別情報に対応するセンサ20-Aに対して予め定められるセンサ20-1~20-Nであるという条件を適用してもよい。例えば、センサ20-1~20-Nごとに、過去に発生した異常の際の経験などによって、二次元マハラノビス距離が大きくなる他のセンサ20-1~20-Nや、異常の原因の特定に役立った他のセンサ20-1~20-Nなどの関連性が高いと推定される他のセンサ20-1~20-Nを予め特定することができる。このようにして特定した、センサ20-1~20-Nの各々と、各々に対応する他のセンサ20-1~20-Nとの対応関係をセンサ識別情報によって示したリストデータを予め生成する。生成したリストデータを、センサ組み合わせ生成部15-1の内部の記憶領域に予め記憶させる。
【0058】
センサ組み合わせ生成部15-1は、
図4のS3の処理において、主センサ識別情報を定めた後、内部の記憶領域に記憶されているリストデータを参照して、リストデータにおいて、主センサ識別情報に対応付けられているセンサ識別情報を読み出す。センサ組み合わせ生成部15-1は、一方に主センサ識別情報を含み、他方にリストデータから読み出したセンサ識別情報の各々を含む組み合わせデータを生成する。センサ組み合わせ生成部15-1は、生成した組み合わせデータの各々に対して、当該組み合わせデータを生成した際に参照したSN比記憶部14のレコードの「検出時刻」の項目の検出時刻を示す情報を関連付ける。センサ組み合わせ生成部15-1は、検出時刻を示す情報が関連付けられている組み合わせデータを二次元MD算出部15-2に出力する。その後、ループL1s~L1eの処理が行われる。
【0059】
これにより、センサ組み合わせ生成部15-1は、一方のセンサ識別情報を、SN比の大きさに基づいて選択された、発生している異常に対する関連性の高い主センサ識別情報とし、他方のセンサ識別情報を、主センサ識別情報に対応するセンサ20-Aと関連性が高いと推定されるセンサ20-1~20-Nのセンサ識別情報とする組み合わせデータを生成することができる。
【0060】
この場合、センサ組み合わせ生成部15-1は、他方のセンサ識別情報を、主センサ識別情報以外の全てのセンサ識別情報とする場合に比べて、他方として選択されるセンサ識別情報の数を絞り込んでいることから、生成する組み合わせデータの数を減少させることができる。そのため、二次元MD算出部15-2による処理負荷を小さくすることが可能になる。更に、センサ組み合わせ生成部15-1は、無作為に、他方として選択されるセンサ識別情報の数を絞り込むわけではなく、主センサ識別情報のセンサ20-Aに対して関連性が高いと推定される20-1~20-Nのセンサ識別情報に絞り込んでいる。そのため、S6の処理において、表示処理部16が、表示装置2の表示画面に表示するグラフの中に、発生している異常の原因を示すセンサ20-1~20-Nの状態量の特性を示すグラフが含まれる可能性を、更に、高くすることができる。
【0061】
なお、センサ組み合わせ生成部15-1は、所定の選択条件の他の構成例(その2)の所定の選択条件、及び所定の選択条件の他の構成例(その3)の所定の選択条件の何れか一方を所定の選択条件として適用した場合に、上記したように所定の選択条件に該当するセンサ20-1~20-Nの全てに対応するセンサ識別情報を用いるのではなく、所定の選択条件に該当するセンサ20-1~20-Nの中から任意に選択するセンサ20-1~20-Nに対応するセンサ識別情報を用いて組み合わせデータを生成するようにしてもよい。
【0062】
また、センサ組み合わせ生成部15-1は、所定の選択条件の他の構成例(その2)の所定の選択条件、及び所定の選択条件の他の構成例(その3)の所定の選択条件の両方を所定の選択条件として適用し、所定の選択条件に該当するセンサ20-1~20-Nの全てに対応するセンサ識別情報を用いて組み合わせデータを生成するようにしてもよいし、所定の選択条件に該当するセンサ20-1~20-Nの中から任意に選択するセンサ20-1~20-Nに対応するセンサ識別情報を用いて組み合わせデータを生成するようにしてもよい。
【0063】
(グラフの種類について)
上記の実施形態において、表示処理部16は、「単位空間」、「信号空間」、及び「異常」の状態量の種類を、異なる形状のマークによって示すようにしている。これに対して、表示処理部16は、「単位空間」、「信号空間」、及び「異常」の状態量の種類を異なる色のマークで表すなど、「単位空間」、「信号空間」、「異常」の状態量の種類の違いが分かる形態であれば、どのような形態でグラフを表示するようにしてもよい。この場合において、表示処理部16は、必ずしも「単位空間」、「信号空間」、「異常」の3つの種類の違いが分かる形態にする必要はなく、例えば、「異常」の状態量を「信号空間」の状態量の一部とみなして、「単位空間」の状態量と、「信号空間」の状態量との違いが分かる形態で表示するようにしてもよいし、「単位空間」、「信号空間」、及び「異常」の種類を考慮せず、状態量の位置のみを表示するようにしてもよい。
【0064】
上記の実施形態において、表示処理部16は、
図5に示すように、識別ラベルが付与されている主センサ識別情報に対応するセンサ20-Aの状態量を表す指標を第1指標とし、第1指標を縦軸で表し、第2指標を横軸で表す散布図のグラフを表示する。これに対して、第1指標を横軸で表し、第2指標を縦軸で表す散布図のグラフとしてもよい。また、センサ組み合わせ生成部15-1は、識別ラベルの付与を行わずに、組み合わせデータを生成し、表示処理部16は、組み合わせデータに含まれる2つのセンサ識別情報からランダムに選択する一方のセンサ識別情報に対応するセンサ20-1~20-Nの状態量を表す指標を第1指標とし、残りの他方のセンサ識別情報に対応するセンサ20-1~20-Nの状態量を表す指標を第2指標としてもよい。また、表示処理部16は、第1指標及び第2指標の尺度と、第1指標及び第2指標の尺度で特定される状態量の各々の位置と、状態量の各々の種類を示すグラフであれば、散布図以外のグラフの画像データを生成するようにしてもよい。
【0065】
(グラフの表示について)
上記の実施形態において、
図4の処理は、異常検出部13が、異常発生通知信号を出力するごとに行われる。この場合において、異常検出部13が、短期間の間に、複数の異常発生通知信号を出力すると、表示装置2の表示画面に、異常発生通知信号ごとに3つのグラフが追加表示されることになる。このように、多くのグラフが、表示装置2の表示画面に表示されないようにするため、例えば、表示処理部16は、以下のように、選択してグラフを表示装置2の表示画面に表示する処理を行うようにしてもよい。
【0066】
表示処理部16は、二次元MD算出部15-2が出力する組み合わせデータであって、順位を示す情報と、検出時刻を示す情報とが関連付けられている組み合わせデータを取り込むと、取り込んだ組み合わせデータを内部の記憶領域に記録する。分析者は、図示しない異常診断装置1に備えられる操作部を介して、表示処理部16に対して、検出時刻を指定する操作を行う。表示処理部16は、操作部から受けた検出時刻に対応する3つの組み合わせデータを、内部の記憶領域から読み出して、ループL2s~L2eの処理を行う。これにより、分析者が指定する検出時刻に対応する3つのグラフの画像のみを、表示装置2の表示画面に表示することができる。
【0067】
分析者は、図示しない操作部を介して、表示処理部16に対して、検出時刻を指定すると共に、順位を指定するようにしてもよい。この場合、表示処理部16は、操作部から受けた検出時刻と順位に対応する1つの組み合わせデータを、内部の記憶領域から読み出して、S6の処理を行う。これにより、分析者が指定する検出時刻と、順位とに対応する1つのグラフの画像のみを、表示装置2の表示画面に表示することができる。
【0068】
(二次元MD算出部について)
上記の実施形態の異常診断装置1において、センサ選択部15を、センサ組み合わせ生成部15-1のみを備え、二次元MD算出部15-2を備えないセンサ選択部15としてもよい。この場合、表示処理部16は、センサ組み合わせ生成部15-1が生成する組み合わせデータに基づいて、グラフを表示装置2の表示画面に表示することになる。そのため、異常診断装置1は、二次元マハラノビス距離を用いた絞り込みの効果を得ることができないものの、二次元MD算出部15-2による処理負荷を無くすことが可能になる。この場合において、センサ組み合わせ生成部15-1において適用する所定の選択条件は、上記した何れの所定の選択条件を適用するようにしてもよい。
【0069】
<その他の実施形態>
以上、本開示の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施の形態に限られるものではなく、本開示の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0070】
<コンピュータ構成>
図6は、少なくとも1つの実施形態に係るコンピュータの構成を示す概略ブロック図である。コンピュータ90は、プロセッサ91、メインメモリ92、ストレージ93、および、インタフェース94を備える。インタフェース94には、センサ20-1~20-N、及び表示装置2が接続する。上述の異常診断装置1は、コンピュータ90に実装される。そして、上述した異常診断装置1の状態量収集部11、異常検出部13、センサ選択部15、表示処理部16の動作は、プログラムの形式でストレージ93に記憶されている。プロセッサ91は、プログラムをストレージ93から読み出してメインメモリ92に展開し、当該プログラムに従って上記処理を実行する。また、プロセッサ91は、プログラムに従って、上述したセンサ組み合わせ生成部15-1及び二次元MD算出部15-2の内部の記憶領域、状態量記憶部12、SN比記憶部14に対応する記憶領域をメインメモリ92に確保する。なお、状態量記憶部12、及びSN比記憶部14の記憶領域は、ストレージ93に確保されてもよい。
【0071】
プログラムは、コンピュータ90に発揮させる機能の一部を実現するためのものであってもよい。例えば、プログラムは、ストレージ93に既に記憶されている他のプログラムとの組み合わせ、または他の装置に実装された他のプログラムとの組み合わせによって機能を発揮させるものであってもよい。なお、他の実施形態においては、コンピュータは、上記構成に加えて、または上記構成に代えてPLD(Programmable Logic Device)などのカスタムLSI(Large Scale Integrated Circuit)を備えてもよい。PLDの例としては、PAL(Programmable Array Logic)、GAL(Generic Array Logic)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、FPGA(Field Programmable Gate Array)等が挙げられる。この場合、プロセッサによって実現される機能の一部または全部が当該集積回路によって実現されてよい。
【0072】
ストレージ93の例としては、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、磁気ディスク、光磁気ディスク、CD-ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD-ROM(Digital Versatile Disc Read Only Memory)、半導体メモリ等が挙げられる。ストレージ93は、コンピュータ90のバスに直接接続された内部メディアであってもよいし、インタフェース94または通信回線を介してコンピュータ90に接続される外部メディアであってもよい。また、このプログラムが通信回線によってコンピュータ90に配信される場合、配信を受けたコンピュータ90が当該プログラムをメインメモリ92に展開し、上記処理を実行してもよい。少なくとも1つの実施形態において、ストレージ93は、一時的でない有形の記憶媒体である。
【0073】
<付記>
上記の実施形態に記載の異常診断装置1は、例えば以下のように把握される。
【0074】
(1)第1の態様に係る異常診断装置1は、監視対象に備えられる複数のセンサ20-1~20-Nの各々が検出する状態量にマハラノビス・タグチ法を適用して異常検出を行い、前記センサ20-1~20-Nの各々に対応するSN比を算出する異常検出部13と、前記異常検出部13が異常を検出した際に、複数の前記センサ20-1~20Nの中から選択する2つのセンサの組み合わせであって、前記SN比を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第1の所定順位までのSN比に対応するセンサ20-1~20-Nが一方のセンサとして含まれ、当該一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる所定の選択条件を満たすセンサ20-1~20-Nが他方のセンサとして含まれる組み合わせを選択するセンサ選択部15と、前記センサ選択部15が選択した前記2つのセンサの組み合わせの各々に含まれる一方のセンサ20-1~20-Nの状態量を表す指標を第1指標とし、他方のセンサ20-1~20-Nの状態量を表す指標を第2指標として選定し、選定した前記第1指標と前記第2指標の組み合わせごとに、前記第1指標の尺度と、前記第2指標の尺度と、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の各々の位置とを表示画面に表示する表示処理部16と、を備える。本態様および以下の各態様によれば、監視対象において発生している異常の原因を示すセンサの組み合わせを、少ない労力及び短い時間で分析者が特定することができる。
【0075】
(2)第2の態様に係る異常診断装置1は、(1)の異常診断装置1であって、前記センサ選択部15は、選択した前記2つのセンサの組み合わせごとに、前記組み合わせに含まれる2つのセンサの状態量から二次元マハラノビス距離を算出し、前記二次元マハラノビス距離を大きい順に並べた場合に、最上位から数えて予め定められる第2の所定順位までの前記二次元マハラノビス距離に対応する前記組み合わせの中から、改めて前記2つのセンサの組み合わせを選択する。本態様によれば、二次元マハラノビス距離の大きさに基づいて、2つのセンサの組み合わせを絞り込むことができる。
【0076】
(3)第3の態様に係る異常診断装置1は、(1)または(2)に記載の異常診断装置1であって、前記所定の選択条件は、前記一方のセンサ以外の全てのセンサ20-1~20Nであるという条件である。本態様によれば、SN比に基づいて選択した一方のセンサに対して組み合わせが可能な全てのセンサを選択して、2つのセンサの組み合わせを生成することができる。
【0077】
(4)第4の態様に係る異常診断装置1は、(1)または(2)に記載の異常診断装置1であって、前記所定の選択条件は、前記一方のセンサ以外のセンサであって予め定められる2以上の個数の任意のセンサ20-1~20Nであるという条件である。本態様によれば、2つのセンサの組み合わせの他方のセンサを、予め定められる複数個のセンサ20-1~20-Nに絞り込むことができる。
【0078】
(5)第5の態様に係る異常診断装置1は、(1)または(2)に記載の異常診断装置1であって、前記所定の選択条件は、前記一方のセンサ以外のセンサであって、前記一方のセンサの状態量と、前記一方のセンサ以外のセンサの状態量との相関の度合いが、予め定められる閾値との関係で、高い相関の度合いを示すセンサ20-1~20-Nであるという条件である。本態様によれば、相関の度合いに基づいて、2つのセンサの組み合わせを絞り込むことができる。
【0079】
(6)第6の態様に係る異常診断装置1は、(1)、(2)、(5)の何れか1つに記載の異常診断装置1であって、前記所定の選択条件は、前記一方のセンサ以外のセンサであって、前記一方のセンサに対して予め定められるセンサ20-1~20-Nであるという条件である。本態様によれば、2つのセンサの組み合わせの他方のセンサを、予め定められたセンサ20-1~20-Nに絞り込むことができる。
【0080】
(7)第7の態様に係る異常診断装置1は、(1)から(6)の何れか1つに記載の異常診断装置1であって、前記表示処理部16は、前記第1指標及び前記第2指標の尺度で特定される前記状態量の位置を表示する際に、前記状態量の種類ごとに、異なる形態で前記状態量の各々の位置を表示する。本態様によれば、表示画面に、状態量の種類ごとに、異なる形態で状態量の位置が示されるため、例えば、状態量の各々が、単位空間、信号空間、または、異常が発生した際の状態量であるかを表示画面において区別することができる。
【0081】
(8)第8の態様に係る異常診断装置1は、(1)から(7)の何れか1つに記載の異常診断装置1であって、前記第1の所定順位は、最上位である。本態様によれば、SN比に基づいて選択する一方のセンサを、SN比が最大のセンサにすることができる。
【0082】
(9)第9の態様に係る異常診断装置1は、(1)から(8)の何れか1つに記載の異常診断装置1であって、前記第2の所定順位は、最上位である。本態様によれば、表示画面に表示する2つのセンサの組み合わせを、二次元マハラノビス距離が最大の組み合わせにすることができる。
【符号の説明】
【0083】
1 異常診断装置
2 表示装置
11 状態量収集部
12 状態量記憶部
13 異常検出部
14 SN比記憶部
15 センサ選択部
15-1 センサ組み合わせ生成部
15-2 二次元MD算出部
16 表示処理部
20-1~20-N センサ
30 プラント