(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176688
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車速制限制御装置
(51)【国際特許分類】
B60W 50/14 20200101AFI20241212BHJP
【FI】
B60W50/14
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095428
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083998
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 丈夫
(74)【代理人】
【識別番号】100096644
【弁理士】
【氏名又は名称】中本 菊彦
(72)【発明者】
【氏名】▲辻▼中 康敏
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA10
3D241BC01
3D241CC01
3D241DA13Z
3D241DA14Z
(57)【要約】
【課題】実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量との差を適切なタイミングで運転者が視認することができる車速制限制御装置を提供する。
【解決手段】運転者によって定められた制限車速に応じて目標駆動力を制御する車速制限制御を、実際のアクセル操作量が予め定められた解除アクセル操作量を超えた場合に解除するように構成された車速制限制御装置であって、実際のアクセル操作量と、解除アクセル操作量とを表示する表示部と、表示部を制御するコントローラとを備え、コントローラは、実際のアクセル操作量が、解除アクセル操作量よりも小さい表示判定閾値以上であり、かつ実際のアクセル操作量の変化速度が予め定められた所定変化速度以下である場合に、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とを表示部に表示する(ステップS18)。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
運転者によって定められた制限車速に応じて目標駆動力を制御する車速制限制御を、実際のアクセル操作量が予め定められた解除アクセル操作量を超えた場合に解除するように構成された車速制限制御装置であって、
前記実際のアクセル操作量と、前記解除アクセル操作量とを表示する表示部と、
前記表示部を制御するコントローラとを備え、
前記コントローラは、
前記実際のアクセル操作量が、前記解除アクセル操作量よりも小さい表示判定閾値以上であり、かつ前記実際のアクセル操作量の変化速度が予め定められた所定変化速度以下である場合に、前記実際のアクセル操作量と前記解除アクセル操作量とを前記表示部に表示する
ことを特徴とする車速制限制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、運転者が設定した制限車速に応じて、アクセル操作に基づく駆動力を補正して目標駆動力を定めるように構成された車速制限制御装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、運転者が設定した制限車速に応じて目標駆動力を補正する車速制限制御を、アクセル操作によって解除するように構成された制御装置が記載されている。具体的には、運転者による実際のアクセル操作量が、制限車速に基づいて定められた解除アクセル操作量を超えた場合に、車速制限制御を解除するように構成された制御装置が記載されている。この制御装置は、制限車速に基づいて解除アクセル操作量を定め、解除アクセル操作量までの操作領域を、アクセル操作量に基づいて目標駆動力を定める非補正エリアと、アクセル操作量に応じた目標駆動力を補正する補正エリアと、目標駆動力を補正することに加えて、実際のアクセル操作量が解除アクセル操作量に近づいたことを運転者に告知する、補正および警報エリアとの三つのエリアに区分するように構成されている。また、この制御装置は、車速制限制御を解除するまでに要するアクセル操作量を運転者が認識できるように、実際のアクセル操作量と、車速制限制御を解除する解除アクセル操作量とをインジケータに表示するとともに、実際のアクセル操作量が属するエリアに応じて表示の色彩を変更するように構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された制御装置は、車速制限制御を解除するまでに要するアクセル操作量を運転者が認識できるように、インジケータに実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とを常時、表示する。そのため、アクセル操作量が比較的小さく、解除アクセル操作量との差が大きい場合にインジケータの表示が変化すると、運転者が煩わしく感じる可能性がある。また、先行車両を追い越すためにアクセル操作を行った場合は、運転者は車速制限制御を解除することを意図しているものと考えられ、そのような場合に、そのアクセル操作の増加に伴ってインジケータの表示が変化すると、運転者が煩わしく感じる可能性がある。
【0005】
本発明は、上記の技術的課題に着目してなされたものであって、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量との差を適切なタイミングで運転者が視認することができる車速制限制御装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の目的を達成するために、運転者によって定められた制限車速に応じて目標駆動力を制御する車速制限制御を、実際のアクセル操作量が予め定められた解除アクセル操作量を超えた場合に解除するように構成された車速制限制御装置であって、前記実際のアクセル操作量と、前記解除アクセル操作量とを表示する表示部と、前記表示部を制御するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記実際のアクセル操作量が、前記解除アクセル操作量よりも小さい表示判定閾値以上であり、かつ前記実際のアクセル操作量の変化速度が予め定められた所定変化速度以下である場合に、前記実際のアクセル操作量と前記解除アクセル操作量とを前記表示部に表示することを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、実際のアクセル操作量が、解除アクセル操作量よりも小さい表示判定閾値以上であり、かつ実際のアクセル操作量の変化速度が予め定められた所定変化速度以下である場合に、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とを表示部に表示する。すなわち、実際のアクセル操作量が比較的緩やかに増加して、解除アクセル操作量を超える可能性がある場合のみに実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とが表示部に表示される。そのため、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量との差が大きい、低操作量である場合に、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とが表示部に表示されて運転者が煩わしく感じることや、運転者が車速制限制御が解除されることを想定して急激にアクセル操作した場合に、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とが表示部に表示されて運転者が煩わしく感じることを抑制することができる。言い換えると、運転者が認識せずに車速制限制御が解除される懸念がある適切なタイミングで、実際のアクセル操作量と解除アクセル操作量とを表示部に表示することにより、車速制限制御が解除される可能性があることを運転者に告知することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】制限車速の設定、および駆動力源の制御を行うための電子制御装置の一例を説明するためのブロック図である。
【
図2】解除アクセル開度を定めるための解除アクセル開度マップの一例を示す図である。
【
図3】表示判定開度を定めるための表示判定開度マップの一例を示す図である。
【
図4】オーバライド判定制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図5】表示判定制御の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図6】インストルメントパネルの速度メータと同一位置に、実際のアクセル開度と解除アクセル開度とを表示した例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の実施形態における車速制限制御装置は、エンジンの動力のみで走行するエンジン車両、モータの動力のみで走行する電気自動車、エンジンとモータとの動力で走行するハイブリッド車両などの種々の車両を対象とし、後述する解除アクセル操作量(解除アクセル開度)以下でアクセル操作した場合には、運転者が設定した制限車速以下の車速となるように目標駆動力を定めるように構成されている。なお、目標駆動力に基づいてエンジンやモータなどの駆動力源の出力トルクを定めてもよく、その駆動力源の出力トルクと、変速機構などの動力伝達装置の変速比とを定めてもよい。
【0010】
上記の制限車速の設定、および駆動力源を制御するための電子制御装置(以下、ECUと記す)1を
図1に示してある。
図1に示すECU1には、運転者によって操作されるスピードリミッタスイッチ2、各車輪に設けられた車輪速センサ3、およびアクセルペダルの踏み込み量(アクセル開度)を検出するアクセルペダルセンサ4から信号が入力される。
【0011】
ECU1は、本発明の実施形態における「コントローラ」に相当するものであり、
図1に示す例では、制限車速算出部5、オーバライド判定部6、走行加速度算出部7、および表示判定部8を備えている。制限車速算出部5は、運転者が要求する制限車速を設定するように構成されている。
図1に示す制限車速算出部5には、スピードリミッタスイッチ2と、車輪速センサ3とから信号が入力される。そして、制限車速算出部5は、スピードリミッタスイッチ2を操作した時点における車速を、車輪速センサ3から入力される信号に基づいて求め、その求められた車速を制限車速として設定する。また、スピードリミッタスイッチ2は、制限車速を変更するためのタンブラスイッチを含み、運転者がタンブラスイッチを操作することにより、その信号が制限車速算出部5に入力されて、制限車速を増加または減少させる。
【0012】
オーバライド判定部6は、制限車速を解除する程度まで運転者がアクセル操作したことを判定するように構成されている。
図1に示すオーバライド判定部6には、車輪速センサ3、アクセルペダルセンサ4、および制限車速算出部5から信号が入力される。また、オーバライド判定部6には、制限車速に応じて解除アクセル開度θcancelを設定するための解除アクセル開度マップが記憶されている。
【0013】
図2には、解除アクセル開度マップの一例を示してあり、横軸に制限車速を採り、縦軸に解除アクセル開度を採ってある。
図2に示す例では、制限車速が所定車速V1以下の場合に、相対的にアクセル開度が小さい第1アクセル開度θ1を解除アクセル開度θcancelに設定し、制限車速が所定車速V1よりも高車速の場合に、相対的にアクセル開度が大きい第2アクセル開度θ2を解除アクセル開度θcancelに設定するように構成されている。
【0014】
そして、オーバライド判定部6は、後述するオーバライド判定制御を実行することにより、車輪速センサ3から入力される信号に基づく車速と、制限車速算出部5から入力される制限車速とに基づいて、制限車速制御を解除する解除アクセル開度θcancelを定め、アクセルペダルセンサ4から入力される信号に基づく実際のアクセル開度θactが、解除アクセル開度θcancelを超えるオーバライドが生じたことを判定する。
【0015】
走行加速度算出部7は、目標加速度(目標駆動力)を算出するように構成されている。
図1に示す走行加速度算出部7には、制限車速算出部5から制限車速の信号が入力され、オーバライド判定部6からオーバライドの発生の有無、車速、およびアクセル開度の信号が入力される。そして、走行加速度算出部7は、制限車速が設定されかつオーバライドが発生していない場合には、所定のアクセル開度以下では、従来の車両の目標駆動力を定める手段と同様に、車速とアクセル開度とに基づいて目標駆動力を設定する駆動力マップを参照して目標駆動力を設定し、所定のアクセル開度よりも高開度では、駆動力マップから求められる駆動力に所定の補正係数を乗算するなどによって、車速が制限車速を超過しない目標駆動力を設定する。
【0016】
表示判定部8は、インストルメントパネルやヘッドアップディスプレイなどの表示部9に、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示することを判定するように構成されている。
図1に示す表示判定部8には、走行加速度算出部7と同様に、制限車速算出部5から制限車速の信号が入力され、オーバライド判定部6からオーバライドの発生の有無、車速、およびアクセル開度の信号が入力される。また、表示判定部8には、制限車速に応じて表示部9に実際のアクセル開度と解除アクセル開度との表示の有無を判定するための表示判定開度θdisplayを設定する表示判定開度マップが記憶されている。なお、表示判定開度θdisplayが、本発明の実施形態における「表示判定閾値」に相当する。
【0017】
図3には、表示判定開度マップの一例を示してあり、横軸に制限車速を採り、縦軸に表示判定開度を採ってある。
図3に示す例では、制限車速が所定車速V1以下の場合に、相対的にアクセル開度が小さい第3アクセル開度θ3を表示判定開度θdisplayに設定し、制限車速が所定車速V1よりも高車速の場合に、相対的にアクセル開度が大きい第4アクセル開度θ4を表示判定開度θdisplayに設定するように構成されている。なお、第3アクセル開度θ3は、
図2に示す第1アクセル開度θ1よりも低開度に定められ、第4アクセル開度θ4は、
図2に示す第2アクセル開度θ2よりも低開度に定められている。
【0018】
そして、表示判定部8は、後述する表示判定制御を実行することにより、車輪速センサ3から入力される信号に基づく車速と、制限車速算出部5から入力される制限車速とに基づいて表示判定開度θdisplayを定め、アクセルペダルセンサ4から入力される信号に基づく実際のアクセル開度θactが表示判定開度θdisplayを超えた場合に、表示部9に信号を出力することを判定する。
【0019】
図4には、オーバライド判定制御の一例を説明するためのフローチャートを示してある。
図4に示す例では、まず、制限車速算出部5により制限車速を算出する(ステップS1)。このステップS1は、上述したようにスピードリミッタスイッチ2と車輪速センサ3とから運転者が設定する制限車速を算出する。
【0020】
ついで、オーバライド判定部6により、解除アクセル開度θcancelを設定する。具体的には、ステップS1に続いて、ステップS1で設定された制限車速が予め定められた所定車速よりも低車速であるか否かを判断する(ステップS2)。このステップS2は、例えば、一般道等の法定制限車速が比較的低車速の走行路を走行しているか、高速道路等の法定制限車速が比較的高車速の走行路を走行しているか否かを判断するためのステップであり、所定車速は、解除アクセル開度θcancelが
図2に示す第1アクセル開度θ1と第2アクセル開度θ2との境界となる車速V1に設定することができる。
【0021】
制限車速が所定車速よりも高車速であることによりステップS2で否定的に判断された場合は、
図2に示す解除アクセル開度マップに基づいて、第2アクセル開度θ2を解除アクセル開度θcancelに設定する(ステップS3)。
【0022】
通常、制限車速が設定されている場合には、実際の車速は制限車速以下の車速に維持されるため、解除アクセル開度を、解除アクセル開度マップに基づいて設定することにより、運転者が加速を意図してアクセル開度を踏み増した場合に、車速制限制御を解除して、運転者が要求する駆動力を発生することができる。
【0023】
一方、制限車速が高車速であり、その制限車速で走行している状態から、運転者が制限車速を低車速に切り替えると、システム上における制限車速が低速になったとしても、実際の車速はそれに遅れて低下する。すなわち、実際の車速が制限車速以上となる過渡期がある。
【0024】
その過渡期にアクセル開度が踏み増されるなどによる加速要求があった場合には、実際のアクセル開度に追従して駆動力が増加することが好ましい。言い換えると、低車速に設定された制限車速に対応して解除アクセル開度を設定すると、アクセル開度が踏み増されたとしても、目標駆動力が低駆動力側に補正されて、運転者が要求する駆動力を出力できなくなる可能性がある。
【0025】
したがって、制限車速が所定車速よりも低車速であることによりステップS2で肯定的に判断された場合は、現在の車速が制限車速以下であるか否かを判断する(ステップS4)。そして、現在の車速が制限車速以下であることによりステップS4で肯定的に判断された場合は、
図2に示す解除アクセル開度マップにおける第1アクセル開度θ1を解除アクセル開度θcancelに設定し(ステップS5)、現在の車速が制限車速よりも高車速であることによりステップS4で否定的に判断された場合は、
図2に示す解除アクセル開度マップにおける第2アクセル開度θ2を解除アクセル開度θcancelに設定する(ステップS6)。
【0026】
そして、ステップS3、ステップS5、およびステップS6に続いて、実際のアクセル開度θactが解除アクセル開度θcancel以上であるか否かを判断し(ステップS7)、実際のアクセル開度θactが解除アクセル開度θcancel以上であることによりステップS7で肯定的に判断された場合は、オーバライド判定が成立したと判断して(ステップS8)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、車速制限制御を解除して、アクセル開度から定められる目標駆動力に応じた信号を駆動力源10に出力する。それとは反対に、実際のアクセル開度が解除アクセル開度未満であることによりステップS7で否定的に判断された場合は、オーバライド判定が不成立と判断して(ステップS9)、このルーチンを一旦終了する。すなわち、車速制限制御を継続する。つまり、制限車速以下の車速で走行するための目標駆動力に基づいた信号を駆動力源10に出力する。
【0027】
次に、表示判定制御の一例について
図5に示すフローチャートを参照して説明する。
図5に示す例では、まず、制限車速算出部5により制限車速を算出する(ステップS11)。このステップS11は、上述したようにスピードリミッタスイッチ2と車輪速センサ3とから運転者が設定する制限車速を算出する。
【0028】
ついで、表示判定部8により、表示判定開度θdisplayを設定する。具体的には、ステップS11に続いて、ステップS11で設定された制限車速が予め定められた所定車速よりも低車速であるか否かを判断する(ステップS12)。このステップS12は、上述したステップS2と同様のステップであって、例えば、一般道等の法定制限車速が比較的低車速の走行路を走行しているか、高速道路等の法定制限車速が比較的高車速の走行路を走行しているか否かを判断するためのステップである。したがって、所定車速は、表示判定開度θdisplayが
図3に示す第3アクセル開度θ3と第4アクセル開度θ4との境界となる車速V1に設定することができる。なお、ステップS2における所定車速とステップS12における所定車速とは同一の車速に設定されていてよい。
【0029】
制限車速が所定車速よりも高車速であることによりステップS12で否定的に判断された場合は、
図3に示す表示判定開度マップに基づいて、第4アクセル開度θ4を表示判定開度θdisplayに設定する(ステップS13)。
【0030】
上述したオーバライド判定制御では、制限車速が低車速でかつ現在の車速が制限車速以下の場合には、第1アクセル開度θ1を解除アクセル開度θcancelに設定し、制限車速が低車速でかつ現在の車速が制限車速よりも高車速の場合、および制限車速が高車速の場合には、第2アクセル開度θ2を解除アクセル開度θcancelに設定する。したがって、オーバライド判定制御に即して、制限車速、および現在の車速に応じて、表示判定開度θdisplayを設定するように構成されている。
【0031】
具体的には、制限車速が所定車速よりも低車速であることによりステップS12で肯定的に判断された場合は、現在の車速が制限車速以下であるか否かを判断する(ステップS14)。そして、現在の車速が制限車速以下であることによりステップS14で肯定的に判断された場合は、
図3に示す表示判定開度マップにおける第3アクセル開度θ3を表示判定開度θcancelに設定し(ステップS15)、現在の車速が制限車速よりも高車速であることによりステップS14で否定的に判断された場合は、
図3に示す表示判定開度マップにおける第4アクセル開度θ4を表示判定開度θcancelに設定する(ステップS16)。
【0032】
そして、ステップS13、ステップS15、およびステップS16に続いて、実際のアクセル開度θactが表示判定開度θdisplay以上でありかつアクセル開度θactの変化速度が所定変化速度以下であるか否かを判断する(ステップS17)。このステップS17は、車速制限制御を解除することを意図して運転者がアクセル操作した場合に表示判定されることを抑制するためのステップである。したがって、所定変化速度は、先行車両を追い越す場合などの急激に加速度を増加させることを意図した場合のアクセル開度の変化速度であって、実験などによって予め定めることができる。
【0033】
実際のアクセル開度θactが表示判定開度θdisplay以上でありかつアクセル開度θactの変化速度が所定変化速度以下であることによりステップS17で肯定的に判断された場合には、運転者が認識せずに車速制限制御が解除される可能性がある。したがって、ステップS17で肯定的に判断された場合には、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示部9に表示するための信号を出力して(ステップS18)、このルーチンを一旦終了する。
【0034】
なお、
図6には、インストルメントパネルの速度メータと同一の位置に実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示する例を示してある。
図6に示す例では、解除アクセル開度θcancelを制限車速の位置に「▼」のシンボルで示してあり、実際のアクセル開度θactを速度メータの外縁に沿って伸縮するゲージで示してある。
【0035】
一方、実際のアクセル開度θactが表示判定開度θcancel未満であり、またはアクセル開度θactの変化速度が所定変化速度よりも高いことによりステップS17で否定的に判断された場合には、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示部9に表示するための信号を出力せず(ステップS19)、このルーチンを一旦終了する。
【0036】
なお、実際のアクセル開度θactや解除アクセル開度θcancelが表示部9に表示された後は、アクセル開度θactが表示判定開度θdisplay以下となった場合や、アクセル開度θactの変化速度が所定変化速度以上となり、かつアクセル開度θactが表示判定開度θdisplay以下となった場合に、表示部9における実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとの表示を非表示とすればよい。
【0037】
上述した車速制限制御装置は、車速制限制御を解除する解除アクセル開度θcancelを、制限車速に応じて変更するように構成されている。したがって、一般道の走行時などであって、制限車速が比較的低車速に設定され、かつ先行車両を追い越すために設定された制限車速以上の車速に加速する機会が比較的多い走行環境では、アクセル開度の増加量を過度に多くすることなく車速制限制御を解除することができ、加速応答性や加速時の操作性を向上させることができる。
【0038】
また、高速道路の走行時などであって、制限車速が比較的高車速に設定され、急加速する機会が比較的少ない走行環境では、アクセル開度が大きく増加するまでの間は、車速制限制御を維持することができるため、車速制限制御を維持することを意識するなどによる運転者のアクセル操作の負荷が増加することを抑制できる。
【0039】
さらに、制限車速が高車速から低車速に変更されかつ実際の車速が変更後の制限車速まで低下する間の過渡期には、解除アクセル開度θcancelが高い状態が維持される。言い換えると、実際の車速が制限車速以下となるまでは、制限車速が変更されない。つまり、実際のアクセル開度θactに基づいて設定される目標駆動力(駆動力特性)が、運転者による制限車速を変更する操作前の状態に維持される。その結果、変更後の制限車速以下まで実際の車速が低下する以前に、加速要求があった場合には、目標駆動力が補正されて低下させられることなく、実際のアクセル開度θactに応じた駆動力を出力することができ、運転者が加速不足と感じることを抑制できる。
【0040】
また、実際のアクセル開度θactが、解除アクセル開度θcancelよりも小さい表示判定開度θdisplay以上であり、かつ実際のアクセル開度θactの変化速度が所定変化速度以下である場合に、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示部9に表示する。すなわち、実際のアクセル開度θactが比較的緩やかに増加して、解除アクセル開度θcancelを超える可能性がある場合のみに実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとが表示部9に表示される。
【0041】
そのため、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとの差が大きい低操作量である場合に、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとが表示部9に表示されて運転者が煩わしく感じることや、運転者が車速制限制御が解除されることを想定して急激にアクセル操作した場合に、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとが表示部9に表示されて運転者が煩わしく感じることを抑制することができる。言い換えると、運転者が認識せずに車速制限制御が解除される懸念がある適切なタイミングで、実際のアクセル開度θactと解除アクセル開度θcancelとを表示部9に表示することにより、車速制限制御が解除される可能性があることを運転者に告知することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 電子制御装置(ECU)
2 スピードリミッタスイッチ
3 車輪速センサ
4 アクセルペダルセンサ
5 制限車速算出部
6 オーバライド判定部
7 走行加速度算出部
8 表示判定部
9 表示部
10 駆動力源