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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017669
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】錠剤及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/167 20060101AFI20240201BHJP
   A61K 31/616 20060101ALI20240201BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240201BHJP
   A61K 47/14 20170101ALI20240201BHJP
   A61K 47/36 20060101ALI20240201BHJP
【FI】
A61K31/167
A61K31/616
A61P29/00
A61K9/20
A61K47/04
A61K47/02
A61K47/14
A61K47/36
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120475
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】000006769
【氏名又は名称】ライオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】石井 智樹
【テーマコード(参考)】
4C076
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA37
4C076BB01
4C076CC01
4C076DD28
4C076DD29
4C076DD30
4C076DD43
4C076DD47
4C076DD67
4C076EE31
4C076EE32
4C076EE38
4C076FF05
4C076FF36
4C086AA01
4C086AA02
4C086DA17
4C086MA10
4C206AA01
4C206AA02
4C206GA02
4C206GA31
4C206MA03
4C206MA05
4C206MA11
4C206MA55
4C206MA72
4C206NA20
4C206ZA07
4C206ZA08
4C206ZB11
(57)【要約】
【課題】(A)アセチルサリチル酸と、(B)アセトアミノフェンとを同一層内に含有する錠剤において、錠剤の側面にキズが入るバインディング等の打錠障害がなく、十分な錠剤硬度を有する錠剤を提供する。
【解決手段】
(A)アセチルサリチル酸、
(B)アセトアミノフェン、
(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種以上、及び
(D)フマル酸ステアリルナトリウム
を同一層に含有する錠剤。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)アセチルサリチル酸、
(B)アセトアミノフェン、
(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種以上、及び
(D)フマル酸ステアリルナトリウム
を同一層に含有する錠剤。
【請求項2】
さらに、(E)部分アルファ化デンプン及びバレイショデンプンから選ばれる1種以上を同一層に含有する請求項1記載の錠剤。
【請求項3】
[(C)+(D)]/[(A)+(B)]で表される質量比が、0.021~0.5である、請求項1記載の錠剤。
【請求項4】
(D)成分の含有量が、0.1~25mg/錠である請求項1記載の錠剤。
【請求項5】
錠剤硬度が7kgf以上である、請求項1記載の錠剤。
【請求項6】
上記(D)成分以外の粉体を混合して粉体混合物1を得る混合工程1と、前記粉体混合物1に(D)成分を加えて粉体混合物2を得る混合工程2と、前記粉体混合物2を打錠する打錠工程を有する、請求項1~5のいずれか1項記載の錠剤を製造する製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、錠剤及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
アセチルサリチル酸は非ステロイド系抗炎症剤(NSAIDs)で、主にプロスタグランジンE2の合成抑制によって鎮痛・解熱・抗炎症作用を発揮する。アセトアミノフェンは、中枢神経におけるシクロオキシゲナーゼ阻害が知られており、何れの成分も解熱鎮痛薬に広く利用されている。解熱鎮痛薬や感冒薬等の一般用医薬品には、これら成分を同時に配合する配合剤とすることが可能である。
【0003】
しかしながら、これら成分を同一層内に配合した場合、錠剤の側面にキズが入るバインディング等の打錠障害が生じやすくなり、また、十分な錠剤硬度が得られない課題が発生した。
【0004】
打錠障害を防ぐ方法として、賦形剤や滑沢剤成分を配合する方法があるが、アセチルサリチル酸は1日服用量が多いため添加剤の含有量に制約があり、打錠障害を抑制する十分な量を含有すると錠剤が大きくなる。そのため、アセチルサリチル酸をポリビニルアルコール水溶液で噴霧造粒乾燥し、任意の賦形剤を添加して圧縮成形することで、滑沢剤を使用しないアセチルサリチル酸含有錠剤が提案されている(例えば、特許文献1)。また、アセチルサリチル酸とアセトアミノフェンを別層に含有した2層錠とすることで、打錠障害を抑制することができるが、製造工程数の増加につながる他、各層において賦形剤の添加が必要になるため、錠剤が大きくなり易く、服用性が問題になる場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011-144137号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記事情に鑑みなされたもので、(A)アセチルサリチル酸と、(B)アセトアミノフェンとを同一層内に含有する錠剤において、錠剤の側面にキズが入るバインディング等の打錠障害がなく、十分な錠剤硬度を有する錠剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、(A)アセチルサリチル酸、(B)アセトアミノフェン、(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる種以上、及び
(D)フマル酸ステアリルナトリウムを同一層に配合することで、上記課題が解決することを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0008】
従って、本発明は、下記錠剤を提供する。
1.(A)アセチルサリチル酸、
(B)アセトアミノフェン、
(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種以上、及び
(D)フマル酸ステアリルナトリウム
を同一層に含有する錠剤。
2.さらに、(E)部分アルファ化デンプン及びバレイショデンプンから選ばれる1種以上を同一層に含有する1記載の錠剤。
3.[(C)+(D)]/[(A)+(B)]で表される質量比が、0.021~0.5である、1又は2記載の錠剤。
4.(D)成分の含有量が、0.1~25mg/錠である1~3のいずれかに記載の錠剤。
5.錠剤硬度が7kgf以上である、1~4のいずれかに記載の錠剤。
6.上記(D)成分以外の粉体を混合して粉体混合物1を得る混合工程1と、前記粉体混合物1に(D)成分を加えて粉体混合物2を得る混合工程2と、前記粉体混合物2を打錠する打錠工程を有する、1~5のいずれかに記載の錠剤を製造する製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、(A)アセチルサリチル酸と、(B)アセトアミノフェンとを同一層内に含有する錠剤において、錠剤の側面にキズが入るバインディング等の打錠障害がなく、十分な錠剤硬度を有する錠剤を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明について詳細に説明する。
[(A)成分]
本発明の(A)成分はアセチルサリチル酸(アスピリン)であり、日本薬局方に収載された、非ピリン系の解熱消炎鎮痛成分である。アセチルサリチル酸は、粉末状又は粒状のアセチルサリチル酸、前記を造粒した顆粒のいずれも用いることができる。粉末状又は粒状の(アセチルサリチル酸原薬)場合、アセチルサリチル酸の粒子径には特に制約はないが、通常50~500μm程度のものを使用する。造粒方法は特に制限されないが、例えば、アセチルサリチル酸のみを造粒してもよく、通常汎用されている賦形剤や崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、カルメロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン架橋体、クロスカルメロース、部分α化デンプン等)や、必要に応じて結合剤、色素、矯味・矯臭剤、香料等を含有させ、乾式の造粒機を用いて造粒することができる。また、市販されている造粒粒子を用いてもよい。市販品としては、アセチルサリチル酸からなる造粒粒子であるNovacyl製のアスピリン「Rhodine3118」等を挙げることができる。
【0011】
上記造粒粒子の体積基準中位径の範囲は、100~1,500がμm好ましく、200~1,300μmがより好ましく、300~1,200μmがさらに好ましく、500~1,100μmが特に好ましい。中位径を上記下限以上とすることで、製造工程における製造機器への造粒粒子の付着をより防ぐことができる。一方、中位径が上記上限以下とすることで、アセチルサリチル酸の溶解速度がより向上し、混合均一性が向上する。なお、上記造粒粒子の中位径は、レーザー回折・散乱粒度分布測定装置(例えば、ベックマン・コールター社製「LS13320型」)によって測定される粒子径、つまり、体積基準で求めた粒度分布の全体積を100%とした累積体積分布曲線において50%となる点の粒子径、すなわち体積基準累積50%径を意味する。以下、造粒粒子の体積基準中位径の定義及びその測定方法は同じである。
【0012】
(A)成分の錠剤中の含有量としては、10~70質量%が好ましく、30~60質量%がより好ましい。また、1錠当たりの含有量は、50~500mg/錠が好ましく、100~300mg/錠がより好ましく、150~250mg/錠がさらに好ましい。上記下限以上とすることで、解熱鎮痛効果が向上する。上記上限以下とすることで、錠剤が小型化され、服用性が向上し、錠剤が崩壊しやすくなり、(A)成分の溶出性が高くなる。加えて、製造中の機器への付着を軽減でき、バインディングの抑制効果がより高まる。
【0013】
[(B)成分]
本発明の(B)成分は、アセトアミノフェンであり、日本薬局方に収載された解熱鎮痛成分である。アセトアミノフェン原薬の粒子径には特に制約はないが、体積基準中位径の範囲は、10~800μmが好ましく、30~500μmがより好ましい。アセトアミノフェンは造粒粒子を用いることができ、造粒粒子の体積基準中位径の範囲は、20~800μmが好ましく、100~500μmがより好ましい。アセトアミノフェンの造粒粒子は、アセトアミノフェンのみを造粒してもよく、通常汎用されている賦形剤や崩壊剤(例えば、トウモロコシデンプン、カルメロース、結晶セルロース、ポリビニルピロリドン架橋体、クロスカルメロース、部分α化デンプン等)や、必要に応じて結合剤、色素、矯味・矯臭剤、香料等を含有させ、乾式又は湿式の造粒機を用いて造粒することができる。中位径を上記下限以上とすることで、流動性が良く、打錠時に充填しやすい。一方、中位径が上記上限以下とすることで、アセトアミノフェンの溶解速度が向上し、混合均一性が向上する。
【0014】
(B)成分の錠剤中の含有量は、8~55質量%が好ましく、22~40質量%がより好ましい。また、1錠当たりの含有量は、20~300mg/錠が好ましく、50~200mg/錠がより好ましい。上記下限以上とすることで、解熱鎮痛効果が向上する。上記上限以下とすることで、錠剤が小型化され、服用性が向上し、錠剤硬度がより高くなる。
【0015】
(B)/(A)で表される(A)成分に対する(B)成分の含有質量比は、0.3~0.8が好ましく、0.45~0.75がより好ましい。上記下限以上とすることで、主に(A)成分に起因する胃障害が抑制され、混合均一性が向上する。一方、上記上限以下とすることで、解熱鎮痛効果が向上する。
【0016】
[(C)成分]
本発明の(C)成分は、乾燥水酸化アルミニウムゲル、合成ヒドロタルサイト、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムから選ばれる1種以上であり、1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。(C)成分を含有することで、バインディングが抑制され、十分な錠剤硬度が得られる。
【0017】
乾燥水酸化アルミニウムゲル、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム及び酸化マグネシウムは、日本薬局方に収載された制酸剤である。合成ヒドロタルサイトは日本薬局方外医薬品規格に収載された制酸剤である。中でも、少量で制酸効果が得られ且つ錠剤硬度がより高くなることから、乾燥水酸化アルミニウムゲルが好ましい。
【0018】
(C)成分の錠剤中の含有量は、2~20質量%が好ましく、4~12質量%がより好ましい。また、1錠当たりの含有量は、5~100mg/錠が好ましく、10~60mg/錠がより好ましい。上記下限以上とすることで、制酸効果が向上し、錠剤硬度がより高くなり、バインディングの抑制効果がより向上する。上記上限以下とすることで、錠剤硬度がより高くなる。加えて、錠剤が小型化され、服用性が向上し、有効成分の溶出性が高くなる。
【0019】
[(D)成分]
本発明の(D)成分は、フマル酸ステアリルナトリウムであり、医薬品添加物規格2018に記載された成分である。(D)成分を含有することで、バインディングが抑制され、十分な錠剤硬度が得られる。
【0020】
(D)成分の錠剤中の含有量は、0.1~5質量%が好ましく、0.1~2質量%がより好ましい。また、1錠当たりの含有量は、0.1~25mg/錠が好ましく、0.1~10mg/錠がより好ましい。上記下限以上とすることで、錠剤硬度がより高くなり、滑沢効果が得られるため、バインディングの抑制効果がより向上する。また、錠剤の上面や下面が帽子状にはく離するキャッピングが生じ難くなる。上記上限以下とすることで、錠剤硬度がより高くなり、錠剤が崩壊しやすく、有効成分の溶出性が向上する。
【0021】
[(C)+(D)]/[(A)+(B)]で表される(A)成分と(B)成分の合計量に対する(C)成分と(D)成分の合計量の質量比は、0.021~0.5が好ましく、0.05~0.2がより好ましい。上記下限以上とすることで、錠剤硬度がより高くなり、バインディング抑制効果がより向上する。上記上限以下とすることで、錠剤硬度がより高くなり、錠剤が崩壊しやすくなり、有効成分の溶出性が向上する。
【0022】
(C)/(D)で表される(D)成分に対する(C)成分の質量比は、3~65が好ましい。上記下限以上とすることで、錠剤硬度がより高くなる。上記上限以下とすることで、錠剤硬度がより高くなり、バインディングの抑制効果がより向上する。
【0023】
[(E)成分]
本発明の錠剤は、さらに、(E)部分アルファ化デンプン及びバレイショデンプンから選ばれる1種以上を含有してもよく、下記の効果が得られるため含有することが好ましい。これら成分を含有することで、錠剤硬度がさらに高くなり、バインディング抑制効果がより高まる。(E)成分は、医薬品添加物規格2018に記載された部分アルファ化デンプン及びバレイショデンプンである。
【0024】
(E)成分を含有する場合、その錠剤中の含有量は、1~15質量%が好ましく、1~10質量%がより好ましい。また、1錠当たりの含有量は、1~80mg/錠が好ましく、1~50mg/錠がより好ましい。上記下限以上とすることで、錠剤硬度がさらに高くなり、バインディング抑制効果がより向上する。上記上限以下とすることで、錠剤が小型化される。
【0025】
本発明の錠剤には、本発明の効果を損なわない範囲で、その他の生理活性成分や添加剤を含有してもよい。これらはそれぞれ1種単独で又は2種以上組み合わせて用いることができる。
【0026】
生理活性成分としては、例えば、(A),(B)成分以外の解熱鎮痛成分(例えばイブプロフェン、ピロキシカム、メロキシカム、アンピロキシカム、セロコキシブ、ロフェコキシブ、チアラミド、ロキソプロフェンナトリウム、エテンザミド、スルピリン等)、鎮静催眠成分(例えば、アリルイソプロピルアセチル尿素、ブロムワレリル尿素等)、抗ヒスタミン成分(例えば、塩酸イソチペンジル、塩酸ジフェニルピラリン、塩酸ジフェンヒドラミン、塩酸ジフェテロール、塩酸トリプロリジン、塩酸トリペレナミン、塩酸トンジルアミン、塩酸フェネタジン、塩酸メトジラジン、サリチル酸ジフェンヒドラミン、ジフェニルジスルホン酸カルビノキサミン、酒石酸アリメマジン、タンニン酸ジフェンヒドラミン、テオクル酸ジフェニルピラリン、ナパジシル酸メブヒドロリン、プロメタジンメチレン二サリチル酸塩、マレイン酸カルビノキサミン、dl-マレイン酸クロルフェニラミン、d-マレイン酸クロルフェニラミン、リン酸ジフェテロール等)、中枢興奮成分(例えば、安息香酸ナトリウムカフェイン、カフェイン、無水カフェイン等)、鎮咳去痰成分(コデインリン酸塩、デキストロメトルファン臭化水素酸塩、ジメモルファンリン酸塩、チペピジンヒベンズ酸塩、メトキシフェナミン塩酸塩、トリメトキノール塩酸塩、カルボシステイン、アセチルシステイン、エチルシステイン、dl-メチルエフェドリン、ブロムヘキシン塩酸塩、セラペプターゼ、塩化リゾチーム、アンブロキソール、テオフィリン、アミノフィリン)、ビタミン成分(例えば、ビタミンB1及びその誘導体、ならびにそれらの塩類、例えば硝酸チアミン;ビタミンB2及びその誘導体、ならびにそれらの塩類、例えばリボフラビン;ビタミンC及びその誘導体並びにそれらの塩類、例えばL-アスコルビン酸;ヘスペリジン及びその誘導体ならびにそれらの塩類等)が挙げられる。
【0027】
(B)成分以外の制酸剤としては、グリシン、ケイ酸マグネシウム、水酸化アルミニウム・炭酸水素ナトリウム共沈物、水酸化アルミニウム-炭酸マグネシウム混合乾燥ゲル、水酸化アルミニウム-炭酸マグネシウム-炭酸カルシウム共沈殿物、水酸化マグネシウム-硫酸アルミニウムカリウム共沈生成物、炭酸マグネシウム、水酸化アルミニウム-重炭酸ナトリウム共沈殿物、合成ケイ酸アルミニウム、ジヒドロキシアルミニウムアミノ酢酸、水酸化マグネシウムアルミニウム、水酸化マグネシウム、炭酸水素ナトリウム、沈殿炭酸カルシウム、無水第二リン酸カルシウム、リン酸水素カルシウム等の制酸剤が挙げられる。
【0028】
添加剤の例としては、賦形剤、結合剤、崩壊剤、滑沢剤、香料、甘味剤、酸味剤、色素などが挙げられる。具体的には下記のものが挙げられる。
賦形剤としては、二酸化ケイ素、乳糖、乳糖造粒物、結晶セルロース、コーンスターチ(トウモロコシデンプン)、粉糖、マンニトール、L-システイン等を用いることができる。
【0029】
結合剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ショ糖、ゼラチン、アラビアゴム末、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、プルラン、デキストリン等を用いることができる、
【0030】
崩壊剤としては、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロース、クロスポビドン、クロスカルメロースナトリウム等が挙げられる。
滑沢剤としては、ステアリン酸マグネシウム、ショ糖脂肪酸エステル、軽質無水ケイ酸等を用いることができる。ただし、十分な錠剤硬度を得るためには、これら滑沢剤の含有量は少ないことが好ましい。具体的には、0.1質量%以下が好ましく、0.01質量%が好ましく、検出限界以下とすることがより好ましい。
香料としては、メントール、リモネン、植物精油(ハッカ油、ミント油、ライチ油、オレンジ油、レモン油等)等が挙げられる。
甘味剤としては、サッカリンナトリウム、アスパルテーム、ステビア、グリチルリチン酸二カリウム、アセスルファムカリウム、ソーマチン、スクラロース等が挙げられる。
酸味剤としては、クエン酸、酒石酸、リンゴ酸、コハク酸、フマル酸、乳酸又はそれらの塩等を用いることができる。
色素としては、三二酸化鉄を用いることができる。
【0031】
(E)成分を含む任意成分の含有量は、製造上問題ない範囲内であれば、特に限定されないが、同一層又は錠剤中の任意成分の含有割合は、1~60質量%がより好ましく、2~40質量%がさらに好ましい。前記量比の下限以上とすることで、錠剤の製造性を向上させることができ、上限以下とすることで、(A)~(D)成分を十分に配合することができるため、発明の効果を得やすくなる。
【0032】
[素錠の形態]
素錠の寸法は特に限定されないが、錠剤の取り扱いやすさと嚥下性の観点から、素錠の径として3~10mmφが好ましく、5~10mmφがより好ましい。また1錠当たりの素錠質量は、100~600mgが好ましく、250~500mgがより好ましい。
また、素錠の形状としては特に限定されないが、服用性がより向上する点で丸みを帯びたR錠もしくは2段階R錠が好ましい。素錠は、(A)~(D)成分、必要に応じてさらに(E)成分が同一層内に配合されていれば単層構造(単層錠)であってもよいし、積層構造(積層錠)であってもよい。
【0033】
[製造方法]
本発明の錠剤は、上記(A)~(D)成分を含む粉体混合物を得る粉体調製工程と、打錠する工程とを有する製造方法で得ることができる。詳細には、薬物層を構成する成分(A)~(D)成分、必要に応じて(E)成分を含む粉体(以下、「薬物含有粉体」という。)を打錠成型して、薬物層を形成することで得られる。打錠の方法としては、例えば、臼と杵とを有する打錠機を用いて、薬物含有粉体を打錠成型して錠剤を得る工程(打錠工程)を有するものが挙げられる。
【0034】
薬物含有粉体は、(A)~(D)成分、必要に応じて(E)成分を含有する粉体であればよく、さらに必要に応じて任意成分を含有してもよい。薬物含有粉体は、例えば、(A)~(D)成分、必要に応じて(E)成分との粉体混合物でもよいし、(A)~(D)成分、必要に応じて(E)成分を組み合わせた造粒物でもよい。粉体調製工程は、上記(D)成分以外の粉体を混合して粉体混合物1を得る混合工程1と、前記粉体混合物1に(D)成分を加えて粉体混合物2を得る混合工程2とを有することが好ましい。この場合、(E)成分等の任意成分は、混合工程1にて混合を行う。また、(D)成分以外の粉体の混合工程は、上記混合工程1のみでもよく、混合工程1の前にプレミックス工程を有してもよい。(D)成分を他の粉体とは別に最後に混合することで、過混合が生じ難くなり、より高い錠剤硬度が得られやすくなる。粉体調製工程における混合方法としては特に限定されず、従来公知の粉体混合方法(例えば、容器回転型混合機であるボーレコンテナミキサー、V型混合機、W型混合機等)による混合が挙げられる。粉体調製工程に用いられる各成分は、公知の製造方法により得られたものでもよく、市販のものを用いてもよい。各成分は、原末がそのまま用いられてもよく、造粒されたものでもよい。造粒したものを用いる場合、造粒方法は公知の造粒方法を採用できる。
【0035】
打錠工程で用いられる打錠機としては、例えば、ロータリー式打錠機((株)菊水製作所製:リブラ2)等が挙げられる。打錠圧、回転盤の回転速度等の打錠条件は適宜設定されるが、打錠圧は5~18kNの範囲で適宜選定される。前記打錠を行う前に、1/3~1/4程度の圧力(例えば、1~6kNの範囲)で予備圧縮を行ってもよい。予備圧縮を行うことで、錠剤の硬度がより高くなり易く、キャッピングがより生じ難くなる。なお、錠剤が積層錠である場合、薬物含有粉体は、臼に最初に充填されてもよく、任意層を構成する成分よりも後に充填されてもよい。
【0036】
[コーティング]
得られた素錠は、そのまま錠剤としてもよく、必要に応じてコーティング剤によりコーティング処理を施してもよい。かかるコーティング剤としては、錠剤の崩壊性を著しく損なわないものを選択することが好ましく、中でも水溶性高分子化合物、可塑剤が好ましい。水溶性高分子化合物としては、具体的には、カルメロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、低置換度ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース類;アラビアゴム、カルボキシビニルポリマー、ポビドン、ポリビニルアルコール、ポリアクリル酸等が挙げられる。可塑剤としては、クエン酸トリエチル、トリアセチン等の日本薬局方(広川書店)及び医薬品添加物規格((株)薬事日報社)等の公定書に記載されているものが挙げられる。これらは1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。コーティング剤の割合は、素錠100質量部に対して0.5質量部以上であり、0.5~5質量部が好ましい。コーティング剤の割合が上記下限値以上であれば、(A)成分や(B)成分に起因する苦味マスキング効果が得られ易くなり、服用性が向上する。
【実施例0037】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において特に明記のない場合は、組成の「%」は質量%、比率は質量比を示し、表中の各成分の量は純分換算した量である。
【0038】
[実施例及び比較例]
(1)混合物(粉体)の調製方法
表1及び表2に示す実施例及び比較例について、各表に示す量に従って混合物の総質量が3kgとなるように粉体を調製した。なお、表中の数値は、錠剤1錠あたりの各成分の含有量(mg)である。初めに、フマル酸ステアリルナトリウムを除く成分をビニール袋に量り取り、混合した。フマル酸ステアリルナトリウムを配合する実施例及びステアリン酸マグネシウムを配合する比較例においては、上記混合の後、1錠あたりの含有量が表の値となるようフマル酸ステアリルナトリウム又はステアリン酸マグネシウムを添加し、さらに混合し、混合物(粉体)を調製した。
【0039】
(2)打錠
混合した粉体を以下の条件で打錠した。
臼杵:φ8.5mm、2段R(R1=10mm、R2=3.4mm)、ランド部0.1mm
(R1:球欠部の周縁部の曲線についての曲率半径、R2:球欠部の天頂部・底面部の曲線についての曲率半径)
打錠機:ロータリー式打錠機リブラ2((株)菊水製作所製)
盤回転数:30rpm
予圧(予備圧縮):3kN
本圧(予備圧縮後の本圧縮):12kN
下記評価を行った。結果を表中に併記する。
【0040】
[打錠障害]
打錠を開始し、10分経過後に任意の錠剤300錠をサンプリングし、錠剤側面のバインディング有無を確認した。結果を下記評価基準で示す。
評価基準
◎:バインディングが発生した錠剤が0.3%未満
○:バインディングが発生した錠剤が0.3%以上10%未満
△:バインディングが発生した錠剤が10%以上30%未満
×:バインディングが発生した錠剤が30%以上
【0041】
[錠剤硬度]
日本薬局方参考情報に準じて実施し、10錠の平均値を示した。
【0042】
【表1】
【0043】
【表2】
【0044】
【表3】
【0045】
【表4】
【0046】
【表5】
【0047】
実施例及び比較例から明らかであるように、実施例が、打錠障害(バインディング及びキャッピング)が生じず十分な錠剤硬度を有するのに対し、(C)及び(D)を含まない場合(比較例1)、(D)を含まない場合(比較例2)、(C)を含まない場合(比較例3)、(D)成分をステアリン酸マグネシウムに置換えた場合(比較例4)では、バインディングが生じ、十分な錠剤硬度が得られなかった。
【0048】
上記例で使用した原料を下記に示す。なお、特に明記がない限り、表中の各成分の量は純分換算量である。以下の「日局」、「局外規」、「薬添規」との記載は、それぞれ日本薬局方規格、日本薬局方外医薬品規格、医薬品添加物規格に適合した原料であることを意味する。
(A)アセチルサリチル酸(アスピリン):Rhodine 3118 (Novacyl製)(中位径:590μm)「日局」
(B)アセトアミノフェン:アセトアミノフェン結晶品(スペラネクサス(株)製)(中位径:250μm)「日局」
(C)乾燥水酸化アルミニウムゲル:S-100(協和化学工業(株)製)「日局」
合成ヒドロタルサイト:アルカマックSN(協和化学工業(株)製)「局外規」
メタケイ酸アルミン酸マグネシウム:ノイシリンNFL2N (富士化学工業(株)製)「日局」
酸化マグネシウム:酸化マグネシウム重質(協和化学工業(株)製)「日局」
(D)フマル酸ステアリルナトリウム:PRUV(SRI Pharma 製)「薬添規」
(E)部分α化デンプン:PCS PC-10(旭化成(株)製)「薬添規」
バレイショデンプン:バレイショデンプン(松谷化学工業(株)製)「日局」
ステアリン酸マグネシウム:ステアリン酸マグネシウム軽質(植物性)(太平化学産業(株))「日局」
ヒドロキシプロピルセルロース:HPC-SSL、HPC-L(日本曹達(株)製)「日局」
低置換度ヒドロキシプロピルセルロース:LH-21、LH-31(信越化学工業(株)製)「日局」
乳酸:DL-90%(昭和化工(株))「日局」
結晶セルロース:SEOLUS KG-1000(旭化成(株)製)「日局」
乳糖造粒物:乳糖G(フロイント産業(株)製)(乳糖水和物95.0~98.0%と、ヒドロキシプロピルセルロース2.0~5.0%の造粒物)「薬添規」