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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176695
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】豆腐系代用肉
(51)【国際特許分類】
   A23L 11/45 20210101AFI20241212BHJP
   A23J 3/00 20060101ALI20241212BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20241212BHJP
   A23L 5/00 20160101ALI20241212BHJP
【FI】
A23L11/45 Z
A23J3/00 505
A23L13/00 A
A23L5/00 M
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095438
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】519443550
【氏名又は名称】株式会社トーフミート
(74)【代理人】
【識別番号】110000626
【氏名又は名称】弁理士法人英知国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村上 英雄
【テーマコード(参考)】
4B020
4B035
4B042
【Fターム(参考)】
4B020LB19
4B020LC04
4B020LG06
4B020LK04
4B020LP06
4B020LP08
4B020LP19
4B020LP30
4B035LC03
4B035LC16
4B035LE01
4B035LE16
4B035LG33
4B035LP01
4B035LP23
4B035LP31
4B035LP43
4B042AC05
4B042AC10
4B042AD36
4B042AE02
4B042AK13
4B042AP02
4B042AP18
4B042AP22
(57)【要約】
【課題】冷凍に向いた豆腐系代用肉の提供を課題とする。
【解決手段】本発明は、このような課題に鑑みて、豆腐を脱水し、ほぐし、表面に熱処理を施した豆腐系代用肉であって、粒状形態を有し、表面硬化層を有し、応力測定試験としてレオメータ機種名:株式会社山電製クリープメータ「RHEONER2 CREEP METER RE2-33005B」を用い、測定条件として、内径34mmかつ高さ17mmの容器に測定対象である試料を充填し、この容器をレオメータにセットした後、常温下において直径30mmのプランジャーにより測定対象を圧縮速度1.0mm/秒で圧縮した際の歪に対する圧縮応力を計測することで得た歪率40%時応力が33.5N~81.6Nであることを特徴とする豆腐系代用肉とすることで課題を解決した。
【選択図】図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
豆腐を脱水し、ほぐし、表面に熱処理を施した豆腐系代用肉であって、
粒状形態を有し、
表面硬化層を有し、
応力測定試験として
レオメータ機種名:株式会社山電製クリープメータ「RHEONER2 CREEP METER RE2-33005B」を用い、
測定条件として、内径34mmかつ高さ17mmの容器に測定対象である試料を充填し、この容器をレオメータにセットした後、常温下において直径30mmのプランジャーにより測定対象を圧縮速度1.0mm/秒で圧縮した際の歪に対する圧縮応力を計測することで得た歪率40%時圧縮応力が33.5N~81.6Nであることを特徴とする豆腐系代用肉。
【請求項2】
歪率40%時圧縮応力が35.0N~60.0Nであることを特徴とする請求項1記載の豆腐系代用肉。
【請求項3】
請求項1または2記載の豆腐系代用肉を冷凍した冷凍物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、豆腐を主原料とした、植物系代用肉に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、健康志向の食習慣が求められるようになり、植物系の代用肉が販売されるようになってきた。
植物系の代用肉の原料は、小麦、大豆などがあり、動物性の肉の食感に近づける工夫がなさている。
中でも大豆は、代用肉の原料として広く普及している。大豆由来の代用肉は、その多くが、特許文献1のように脱脂大豆(大豆ミール)を原料とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2014-143969号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、これまで豆腐を原料とした代用肉はほとんどなかった。豆腐の原料は、脱脂大豆と異なり、大豆そのものである。乾燥した大豆は、水に浸漬され、夾雑部を除去される。その後、水を含んだ大豆は、摩砕され生呉が作られる。
生呉は加熱され、搾ることでおからと分離され、豆乳が得られる。豆腐は、豆乳を苦汁で凝固させたものである。
一般的に代用肉は、挽き肉のように粒状タイプのものが多い。
豆腐を原料とする粒状タイプの代用肉は、脱脂大豆を原料とするものと異なり多くの水分を含んでいるため、冷凍すると互いにくっつき、凍結状態ではバラバラにほぐれない。
そのため、使用者は、料理に使う必要量の代用肉を得るため、全量を解凍し分け再冷凍する、半解凍状態にして必要量を切り取るなど手間を要していた。当然のことながら、解凍、半冷凍状態にした後に再凍結した代用肉は、品質が劣化する。
【0005】
本発明は、冷凍に向いた豆腐系代用肉の提供を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の第1の態様は、このような課題に鑑みて、豆腐を脱水し、ほぐし、表面に熱処理を施した豆腐系代用肉であって、粒状形態を有し、表面硬化層を有し、応力測定試験としてレオメータ機種名:株式会社山電製クリープメータ「RHEONER2 CREEP METER RE2-33005B」を用い、測定条件として、内径34mmかつ高さ17mmの容器に測定対象である試料を充填し、この容器をレオメータにセットした後、常温下において直径30mmのプランジャーにより測定対象を圧縮速度1.0mm/秒で圧縮した際の歪に対する圧縮応力を計測することで得た歪率40%時圧縮応力が33.5N~81.6Nであることを特徴とする豆腐系代用肉とすることで課題を解決した。
【0007】
また、第1の態様の豆腐代用肉において、歪率40%時圧縮応力が45.8N~49.7Nとした第2の態様の豆腐代用肉も開示する。
【0008】
さらに、第3の態様として、上述の豆腐代用肉を冷凍した豆腐代用肉の冷凍物も開示する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の豆腐系代用肉は、冷凍することができる。そして、本発明の豆腐系代用肉は、冷凍状態のままでも簡単にほぐれる特性を有していた。また、本発明の豆腐系代用肉は、表面硬化層が程よい硬さであり、代用肉として品質が高いものであった。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、実施例の豆腐系代用肉の外観写真である。
図2図2は、実施例の豆腐系代用肉製造方法のフロー図である。
図3図3は、豆腐系代用肉の断面図である。
図4図4は、各試験区の冷凍物ほぐれ評価の結果を表す写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。以下の説明で、異なる図における同一符号は同一機能の部位を示しており、各図における重複説明は適宜省略する。
【0012】
[実施例]
本発明でいう「豆腐系代用肉」とは、脱脂大豆を原料とした代用肉と区別されるものである。実施例の豆腐系代用肉と脱脂大豆を原料とした代用肉は、原料のみならず、製造工程、栄養成分など全く異なるものである。
【0013】
[1.実施例の豆腐系代用肉の製造工程]
図1は実施例の豆腐系代用肉の外観写真である。
図1に示す豆腐系代用肉1aは、調味料を加えたものであり動物由来のひき肉を加熱調理したものと同様に茶褐色の粒状の外観を有するため、動物由来のひき肉を用いる料理に使用した場合も違和感はない。
このような豆腐系代用肉1aの製造は、豆腐を製造することから開始する。
【0014】
図2は、実施例の豆腐系代用肉製造方法のフロー図である。
豆腐系代用肉製造工程2cは、大きく分けて豆腐製造工程2aと豆腐3cを代用肉に成型する成形工程2bを含んでいる。
【0015】
(豆腐製造工程)
(浸漬工程)
豆腐製造工程2aは、図2において一点鎖線で囲まれる工程であり、大豆を水に浸漬する浸漬工程S1で始まる。
【0016】
(摩砕工程)
水に浸漬した大豆は、摩砕工程S2で砕かれ生呉が作られる。摩砕は注水しながら行われ生呉の濃度が加減される。
【0017】
(釜煮工程)
次いで、生呉(なまご)は釜に入れられ、釜煮工程S3で蒸気加熱され、大豆に含まれる蛋白質などの成分が溶出される。
成分が十分溶出された煮呉(にご)は、搾り・濾過分離工程S4で豆乳3aと搾り粕3b(おから)に分離される。
【0018】
(加熱工程)
豆乳3aを塩化マグネシウムなどの凝固剤で固めたものが豆腐3cであるが、豆乳3aの温度が低い場合は、うまく固まらない。そこで、凝固を促進するため豆乳3aは、凝固に適した温度(75℃~80℃程度)まで加熱する加熱工程S5で温められる。
加熱工程S5は、豆乳3aの温度が適切である場合不要であり、また、凝固剤の種類により加熱工程S5が不要なこともある。
【0019】
(凝固工程)
その後、適度に加温された豆乳3aは、凝固工程S6で凝固剤である塩化マグネシウムが添加され、成形型に入れられ固められ豆腐3cとなる。
その後、完成した豆腐3cは、粗熱を除去するため冷やされる。
【0020】
以上は、実施例の豆腐製造工程2aの概略であるが、説明した豆腐製造工程2aは、一般的な豆腐3cの製造工程である。豆腐3cの製造方法は、様々な変形例が存在する。どのような方法で作られるにせよ、本発明の豆腐系代用肉1aの原料となる豆腐3cは、豆乳3aを凝固したものであれば使うことができる。
【0021】
(豆腐製造の変形例1)
実施例の凝固剤は、ニガリと呼ばれる塩化マグネシウムを使用した。変形例1は、凝固剤に硫酸カルシウムや塩化カルシウム、グルコノデルタラクトンなどを使う例である。
凝固剤は、豆乳3aを固めることができる適宜なものを使用することができる。
【0022】
(豆腐製造の変形例2)
公知の豆腐製造工程2aの中には、釜煮工程S3を行わないものも存在する。
釜煮工程S3が無いため、摩砕工程S2で作られた生呉は、煮呉になることなく生呉のまま搾り・濾過分離工程S4に送られ、生呉由来の豆乳3aが作られる。
本発明の豆腐3cは、このような生呉由来の豆腐3cも包含される。
【0023】
(成形工程)
実施例の成形工程2bは、前工程で作られた豆腐3cを豆腐系代用肉1aに成型する工程である。
【0024】
(脱水工程)
先の豆腐製造工程2aで作られた豆腐3cは、水分量が多いため、適度な水分量となるまで脱水工程S7で脱水される。豆腐3cは、脱水が不十分だと、作られた豆腐系代用肉1aは水っぽく、また、食感が肉から遠くなる。
実施例は、400gの豆腐3cを200gになるまで脱水した。脱水は、プレス機を用いて行った。
この工程で、脱水を十分に行った豆腐系代用肉1aは、しっかりとしたボディーとなり、良好な歯ごたえを有する。
また、脱水を軽めにおこなった豆腐系代用肉1aは、軽やかな歯ごたえを有する。
なお、この工程における脱水の程度は異なるとしても、後の表面硬化層形成工程S9において、脱水された豆腐3cは圧縮応力が所定の値になるまで油で炒められる。脱水の程度が軽い豆腐3cは、十分脱水した豆腐3cより、圧縮応力が所定の値になるまでに、より長い時間の表面硬化層形成工程S9を要することになる。
【0025】
(ほぐし工程)
次いで、脱水処理された豆腐3cは、ほぐし工程S8で、所定の粒度になるようにほぐされる。豆腐系代用肉1aは、同一の形状、同一の粒度であると不自然に見えてしまう。そこで、ほぐし工程S8は、形状が不揃いで、かつ、ある程度の幅を持った粒度にほぐすことが好ましい。
ほぐされた脱水した豆腐3cの粒度は、小さすぎると粉状になってしまうし、大きすぎるとハンバーグや挽き肉として使うのに適していない大きさになってしまう。ほぐされた脱水した豆腐3cの粒度は、調理に適した粒度にすることが好ましい。
実施例のほぐし工程S8は、篩の目開きが3.35mm~8.0mmの金網篩を利用して上から豆腐3cに圧をかけながら行った。
【0026】
(表面硬化層形成工程)
表面硬化層形成工程S9は、ほぐされた豆腐3cを熱処理して表面硬化層を形成する工程である。
実施例は、フライパンに油を敷き、ほぐされた豆腐3cを油で炒めることで熱処理がなされた。油の量は適宜でよく、油で揚げるような量であっても構わないが、実施例で行われた熱処理は、フライパンで炒める調理を行うときに通常使用する油の量で炒めるものであった。
【0027】
図3は、豆腐系代用肉1aの断面図である。脱水されほぐされた豆腐3cは、表面硬化層形成工程S9を経ることで、表面硬化層1bが形成される。表面硬化層1bの内側は、柔らかな内層1cになっている。なお、表面硬化層1bの厚さは、表面硬化層形成工程S9の処理条件(処理時間等)によって変化する。
【0028】
(調味液)
表面硬化層形成工程S9は、油と共に調味液を使うことで、豆腐系代用肉1aの表面に色や味を付けることができる。
【0029】
(熱処理)
後述する測定手段で圧縮応力が所定の値に収めることができさえすればよく、表面硬化層形成工程S9で行われる熱処理は様々に変形できる。
たとえば、表面硬化層形成工程S9は、ほぐされた豆腐3cの表面に油を塗り、オーブンに入れることで実行されてもよい。
また、オーブンは、過熱水蒸気オーブンであってもよい。
油と加熱により、表面硬化層を形成できるのであれば適宜な処理を採用できる。
【0030】
(表面硬化層の役割)
表面硬化層1bは、内層1cと共に豆腐系代用肉1aの食感に大きな影響を与える。また、表面硬化層1bは、豆腐系代用肉1aの表面水分量に影響を与え、豆腐系代用肉1aの冷凍時の特性を変化させる。特性の変化の詳細は、後述する。
表面硬化層1bをより硬くするために、脱水されほぐされた豆腐3cの表面に小麦粉や小麦粉に油脂を添加した粉体などまぶすこともできる。また、脱水されほぐされた豆腐3cの表面に油をまぶした後、小麦粉などの粉体をまぶしてもよい。
【0031】
(実験で使われた試験区)
実施例の実験に使われた試験区は、次のように作られた。
各試験区の豆腐系代用肉1aは、2Kgの脱水されほぐされた豆腐3cを、植物性油を15ml入れたフライパンに入れて、試験区ごとに異なる時間熱処理する(炒める)ことで作られた。
(応力測定試験)
応力測定試験が、表面硬化層形成工程S9の処理条件を様々に変えて作られた実施例の豆腐系代用肉1aを使って行われた。
測定は、レオメータを用いて行われ、機種名:株式会社山電製クリープメータ「RHEONER2 CREEP METER RE2-33005B」が用いられた。
測定は、内径34mmかつ高さ17mmの容器に測定対象である試料を充填し、この容器をレオメータにセットした後、常温下において直径30mmのプランジャーにより測定対象を圧縮速度1.0mm/秒で圧縮した際の歪に対する圧縮応力を計測することでなされた。
そして、歪率40%時の圧縮応力が、測定値として取得された。なお、以下、本明細書は、「歪率40%時の圧縮応力」を「圧縮応力」と略記する。
【0032】
表1は、その試験結果である。
「#1~#9」という表記は試験区番号を示す。そして、試験区#5~試験区#9は、本発明の実施例に相当し、圧縮応力が33.5N~81.6Nの範囲にある。
【表1】
フライパンは事前に210℃程度まで温められた状態で、油が敷かれ熱処理が開始される。なお、比較例となる試験区#1は、一切熱処理をしておらず、脱水されほぐされた豆腐3cそのものである。
フライパンの表面温度と脱水されほぐされた豆腐3cの表面温度は、ほぼ一定に保たれるように熱処理を施した。
表1の試験のために作られた豆腐系代用肉1aは、評価を正確にするため、調味液などを加えないプレーンタイプの豆腐系代用肉1aであった。
【0033】
表1の各試験区のデータは、3回の試験の平均値であり、各試験区ごとに3回実験がなされた。
【0034】
(冷凍物ほぐれ評価)
冷凍は、家庭の冷蔵庫を用い行った。冷凍に際し、豆腐系代用肉1aは特殊な冷凍前処理や冷凍処理をすることなく、豆腐系代用肉1aを単に袋に詰め、冷凍した。
歪率40%時圧縮応力が表1のとおりの試験区#1~♯9は、冷凍された。各試験区の豆腐系代用肉1aは、袋に入れて冷凍され、板状に固まっているときは袋から5cmのところで折ることで袋から取り出し、皿の上に載せた。板状に固まっておらず、ほぐれたままそのまま袋から出すことが可能な試験区の豆腐系代用肉1aは、適当量を皿の上に出した。このように皿の上に出された冷凍物は、ほぐれた程度を「冷凍物ほぐれ評価」として評価された。
【0035】
図4は、各試験区の冷凍物ほぐれ評価の結果を表す写真である。試験区#2~試験区#4は、圧縮応力が本発明の範囲を下回る比較例である。
試験区2~試験区#4の豆腐系代用肉1aの冷凍物は、板状の塊のままであり、袋から冷凍物を折り、取り出す他なかった。これらの試験区の評価は、表1に示したとおり「×:ほぐれることなく板状の塊のままである」という評価であった。
試験区#5の実施例は、大半が塊のままであったが、一部がほぐれるものであった。試験区#5の評価は、表1に示したとおり「△:一部がほぐれた」という評価であった。
【0036】
試験区#5~試験区#9は、圧縮応力が本発明の範囲内の実施例である。試験区#5~試験区#9の冷凍物は、固まることなく粒状のまま袋から皿に取り出せた。中でも試験区#6の評価は「〇:4割以上がバラバラになってほぐれた」であり、試験区#7~試験区#9の評価は、表1に示したとおり「◎:粒がバラバラになってほぐれた」であった。
【0037】
本明細書には示していないが、発明者は、試験区#9の圧縮応力81.6Nを超えた圧縮応力の試験区を幾種類か作り、冷凍物ほぐれ評価を実施した。圧縮応力81.6Nを超えた試験区は、いずれも冷凍物解れ評価が「◎:粒がバラバラになってほぐれた」であった。
【0038】
豆腐系代用肉1aの表面硬化層1bの、硬化の度合いが、冷凍物ほぐれ評価に影響を与えていることが明らかになった。
【0039】
(弾力食感評価)
試験区#1~試験区#4の比較例と、試験区#5~試験区#9の実施例は、5名のパネラーにより弾力食感評価が行われた。
評価は、豆腐系代用肉1aの弾力があるかどうかで判断された。圧縮応力は、当然のことながらパネラーによる弾力食感評価に影響を与える。弾力食感評価は、無機的な圧縮応力という数値とパネラーという人の評価の関連を調べることにある。評価は次の基準でなされた。
×:×は、ほぼ脱水された豆腐3cと同じであり、代用肉といえるような弾性が無い試験区に与えられた。
〇:〇は、脱水された豆腐3cより弾性がある試験区に与えられた。
◎:◎は、弾性が肉に近いほどよい弾性を備えた試験区に与えられた。
●:●は、固い触感を受けた試験区に与えられた。
××:××は、固すぎて食品として不適な試験区に与えられた。
なお、表1で示された試験区の中に、××と評価された試験区は無かった。具体的なデータは示さないが圧縮応力を極度に高めた試験区は、××の評価が下された。
【0040】
弾力食感評価は、パネラーによる評価を正確にするため、試験区となる豆腐系代用肉1aの弾力のみに絞った評価である。脱水された豆腐3cとほぼ同じであり、代用肉といえるような弾性が無い試験区には「×」の評価が与えられた。しかし、この評価を下された試験区は、おいしくないことを意味しない。試験区が、脱水された豆腐3cと同じと評価されたとしても、当該試験区の弾力食感に適した調理を行えばおいしい料理が作れる。弾力食感評価は、おいしい、おいしくないといった主観的評価を排除して、肉に近い食感を評価すべく弾性に特化した評価手法を採用した。
【0041】
上述したように、弾力食感評価は、主観性を排除し客観的な評価基準を採用したため、5人のパネラー間で評価が分かれることはほとんどなかった。なお、パネラー間で評価が割れた場合は、パネラーの多数が選択した評価値を付与するルールを定めた。
【0042】
(蛋白質含有量)
味覚が、実施例の豆腐系代用肉1aの蛋白質含有量を変化させて、評価された。その結果、本発明の豆腐系代用肉1aは、蛋白質含有量を16g~30g/100gの範囲に調整することによりコクがあり深みのある味わいになることが判明した。
【0043】
(脂質含有量)
本発明の、豆腐系代用肉1aと大豆ミートと呼ばれる脱脂大豆を原料とした代用肉の違いは、脂質の含有量にある。大豆ミートの多くは、脱脂大豆を原料とするため、どうしても脂質の含有量が少なくなる。大豆ミートの脂質含有量は、4~5g/100gであり、脂質が少ないためさっぱりした味わいとなる。
他方、本発明の豆腐系代用肉1aは、特に脂質含有量を8~18g/100gに調整することにより、脂質がもたらす旨味の余韻が生じ、良好な味わいになることが判明した。
【0044】
なお、ほぐし工程S8で使われる好ましい篩の目開きは、2.00mm~20.0mmである。目開きは、小さすぎると、豆腐系代用肉1aが粉のようになってしまい肉様の食感を得ることが難しい。また、目開きは、20.0mmを超えると、豆腐系代用肉1aが大きな塊になり、使える調理が限られて来る。また、目開きは、20.0mmを超えると、圧縮応力が33.5N~81.6Nにするのに必要な表面硬化層形成工程S9の処理時間が著しく長時間化する。豆腐系代用肉1aの1粒の大きさに比例して、内層の体積が大きくなるためである。目開きを大きくして豆腐系代用肉1aの粒度を大きくし過ぎることは、製造効率を著しく下げるので好ましくない。
豆腐系代用肉1aの粒度分布は、ある程度あってもよいが、粒度分布が広すぎないことが好ましい。また、実施例のほぐし工程S8は、篩を使ってほぐしたが、篩以外の手法でほぐしてもよいことは言うまでもない。
【0045】
(熱処理)
表面硬化層形成工程S9で行われた熱処理は、2Kgの脱水されほぐされた豆腐3cを、植物性油を15ml入れたフライパンに入れて熱処理する(炒める)ものであった。実施例の熱処理において、脱水されほぐされた豆腐3cの量に対して使われた植物性油はわずか15mlであり、植物性油は必須ではない。植物性油を使う主目的は、フライパンに付着させないためであり、付着しにくい樹脂被覆したフライパンなどを使用する場合、植物性油は無くてもよい。
しかしながら、植物性油を使うと、油が豆腐系代用肉1aの周囲に薄くコーティングされ、使用しないときと比べて表面硬化層の形成が容易になる。したがって、表面硬化層形成工程S9で行おこなう熱処理において、油(植物性油又は動物性油)を使用することは、好ましい態様である。
【0046】
(総合評価)
豆腐系代用肉1aの圧縮応力は、実施例である試験区#5の33.5Nより大きくなるほど、冷凍物ほぐれ評価が高くなった。この結果だけを考慮すれば、良好なほぐれ評価を示す豆腐系代用肉1aは、圧縮応力が33.5N以上であればよい。
さらに、「◎:粒がバラバラになってほぐれた」評価を得た豆腐系代用肉1aの圧縮応力は45.8N以上の試験区#7~試験区#9であり、データを示さないが圧縮応力が試験区#9を超えても◎の評価は維持された。
したがって、豆腐系代用肉1aの圧縮応力は、33.5Nより大きいことが好ましく、さらに45.8N以上であることがより好ましい。
【0047】
他方、食品としての弾力食感評価の結果、豆腐系代用肉1aの圧縮応力は、試験区#4の28.3N以上となることが好ましい。しかし、試験区#4の冷凍物ほぐれ評価が悪かったことから、総合的に評価すると、豆腐系代用肉1aの圧縮応力は、33.5Nより大きいことが好ましい。
また、弾力食感評価の結果、豆腐系代用肉1aの圧縮応力は試験区#9の81.6Nにまで高くなると、固い触感を受けるようになり、さらにこれを超えると、固すぎて食品として不適な食感となった。そのため、豆腐系代用肉1aの圧縮応力の上限は、総合的に評価すると81.6Nであった。
よって、豆腐系代用肉1aの圧縮応力は、33.5N~81.6Nが好ましく、35.0N~60.0Nであることがさらに好ましく、さらに、45.8N~49.7Nであることがより好ましいことが判明した。
【0048】
以上、本発明に係る実施の態様を、実施例や変形例に沿って詳述してきたが、具体的な構成は、これらの実施の態様に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても本発明に含まれる。
また、前述の各実施の態様は、その目的および構成等に特に矛盾や問題がない限り、互いの技術を流用して組み合わせることが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1a 豆腐系代用肉
1b 表面硬化層
1c 内層
2a 豆腐製造工程
2b 成形工程
2c 豆腐系代用肉製造工程
3a 豆乳
3b 搾り粕(おから)
3c 豆腐
図1
図2
図3
図4