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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176698
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】インクジェット記録装置
(51)【国際特許分類】
   B41J 2/01 20060101AFI20241212BHJP
   B41J 2/165 20060101ALI20241212BHJP
   B41J 2/015 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B41J2/01 403
B41J2/01 305
B41J2/165 207
B41J2/015 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095446
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000006150
【氏名又は名称】京セラドキュメントソリューションズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001933
【氏名又は名称】弁理士法人 佐野特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮下 直斗
(72)【発明者】
【氏名】湯淺 譲
【テーマコード(参考)】
2C056
2C057
【Fターム(参考)】
2C056EA14
2C056EB12
2C056EB13
2C056EB36
2C056EC08
2C056EC37
2C056EC38
2C056EC53
2C056EC54
2C056FA04
2C056FA13
2C056HA22
2C056HA29
2C056HA30
2C056HA46
2C056JC15
2C056JC23
2C057AF72
2C057AF81
2C057AG15
2C057AK07
2C057AM16
2C057AM17
2C057AM22
2C057AN05
2C057AR08
2C057BA04
2C057BA14
(57)【要約】
【課題】ノズルからインクが意図せず溢れ出ることを抑制する。
【解決手段】搬送ベルトと、インクを収容する加圧室、加圧室と連通するノズル、電圧が印加されることにより変形して加圧室に圧力をかける変位素子、および、入力されたパルス状の駆動信号に基づき変位素子に対する電圧印加のオンオフを切り替えるドライバー回路を有する記録ヘッドと、制御部と、を備え、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理では、制御部は、駆動信号のパルス幅をドライバー回路および変位素子を含む回路部の時定数よりも小さくする。
【選択図】図12
【特許請求の範囲】
【請求項1】
シートを搬送する搬送ベルトと、
インクを収容する加圧室、前記加圧室と連通するノズル、電圧が印加されることにより変形して前記加圧室に圧力をかける変位素子、および、入力されたパルス状の駆動信号に基づき前記変位素子に対する電圧印加のオンオフを切り替えるドライバー回路を有し、前記加圧室に圧力をかけることにより前記ノズルから前記インクを吐出して前記シートに画像を形成する記録ヘッドと、
前記駆動信号を生成して前記ドライバー回路に入力する制御部と、を備え、
前記搬送ベルトは、開口が形成されたフラッシング領域を有し、
前記フラッシング領域は、前記搬送ベルトの移動方向に間隔を隔てて複数配置され、
前記搬送ベルトの駆動中、前記制御部は、前記シートに向けて前記インクを吐出する画像形成処理とは別に、前記シートと重なっていない前記フラッシング領域の前記開口に向けて前記インクを吐出するフラッシング処理を前記記録ヘッドに行わせ、
前記インクの吐出前、前記制御部は、前記ドライバー回路にメニスカス揺動処理用の前記駆動信号を入力して前記変位素子を駆動することにより、前記ノズルにおける前記インクのメニスカスを揺動するメニスカス揺動処理を前記記録ヘッドに行わせ、
前記フラッシング処理の前の前記メニスカス揺動処理では、前記制御部は、前記駆動信号のパルス幅を前記ドライバー回路および前記変位素子を含む回路部の時定数よりも小さくする、インクジェット記録装置。
【請求項2】
前記画像形成処理の前の前記メニスカス揺動処理では、前記制御部は、前記駆動信号のパルス幅を前記回路部の時定数よりも大きくする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記画像形成処理の前に複数回の前記メニスカス揺動処理を前記記録ヘッドに行わせ、
前記制御部は、前記画像形成処理の前の複数回の前記メニスカス揺動処理のうち、所定回数分の前記メニスカス揺動処理については、前記駆動信号のパルス幅を前記回路部の時定数よりも大きくする一方、残りの前記メニスカス揺動処理については、前記駆動信号のパルス幅を前記回路部の時定数よりも小さくする、請求項1に記載のインクジェット記録装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェット記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のインクジェット記録装置は、インクを吐出する記録ヘッドを備える。従来のインクジェット記録装置は、記録ヘッドからシートに向けてインクを吐出する。これにより、シートに画像が形成される。このようなインクジェット記録装置は、たとえば、特許文献1に開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2013-59875号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ノズル内のインクが増粘している場合には、吐出されるインクが意図せぬ方向に飛び散るという不都合が生じ得る。そこで、ノズル内におけるインクのメニスカスを揺動するメニスカス揺動処理が行われる場合がある。
【0005】
メニスカス揺動処理が行われることにより、ノズル内におけるインクの増粘が抑制される。しかし、場合によっては、メニスカス揺動処理の実行時にノズルからインクが意図せず溢れ出る。たとえば、ノズルからインクが意図せず溢れ出ると、そのインクがシートに付着してシートが汚れる場合がある。また、シートを搬送ベルトで搬送する構成では、搬送ベルトがインクで汚れる場合がある。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、ノズルからインクが意図せず溢れ出ることを抑制することが可能なインクジェット記録装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一局面によるインクジェット記録装置は、シートを搬送する搬送ベルトと、インクを収容する加圧室、加圧室と連通するノズル、電圧が印加されることにより変形して加圧室に圧力をかける変位素子、および、入力されたパルス状の駆動信号に基づき変位素子に対する電圧印加のオンオフを切り替えるドライバー回路を有し、加圧室に圧力をかけることによりノズルからインクを吐出してシートに画像を形成する記録ヘッドと、駆動信号を生成してドライバー回路に入力する制御部と、を備える。搬送ベルトは、開口が形成されたフラッシング領域を有する。フラッシング領域は、搬送ベルトの移動方向に間隔を隔てて複数配置される。搬送ベルトの駆動中、制御部は、シートに向けてインクを吐出する画像形成処理とは別に、シートと重なっていないフラッシング領域の開口に向けてインクを吐出するフラッシング処理を記録ヘッドに行わせる。インクの吐出前、制御部は、ドライバー回路にメニスカス揺動処理用の駆動信号を入力して変位素子を駆動することにより、ノズルにおけるインクのメニスカスを揺動するメニスカス揺動処理を記録ヘッドに行わせる。フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理では、制御部は、駆動信号のパルス幅をドライバー回路および変位素子を含む回路部の時定数よりも小さくする。
【発明の効果】
【0008】
本発明の構成では、ノズルからインクが意図せず溢れ出ることを抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】一実施形態によるインクジェット記録装置の概略図である。
図2】一実施形態によるインクジェット記録装置の記録部の平面図である。
図3】一実施形態によるインクジェット記録装置の搬送ベルトおよびその周辺の模式図である。
図4】一実施形態によるインクジェット記録装置のブロック図である。
図5】一実施形態によるインクジェット記録装置の記録ヘッドおよびその周辺のブロック図である。
図6】一実施形態によるインクジェット記録装置のノズルおよびその周辺を模式的に示す断面図である。
図7】一実施形態によるインクジェット記録装置の搬送ベルトの平面図である。
図8】一実施形態によるインクジェット記録装置の搬送ベルトのフラッシング領域と記録ヘッドとの位置関係を示す図である。
図9】一実施形態によるインクジェット記録装置の搬送ベルトのフラッシング領域とシートとの位置関係を示す図である。
図10】一実施形態によるインクジェット記録装置の搬送ベルトへのシートの搬送タイミングを説明するための図である。
図11】一実施形態によるインクジェット記録装置の記録ヘッドが行うメニスカス揺動処理の実行タイミングを示す図である。
図12】一実施形態によるインクジェット記録装置の制御部が行う処理の流れを示す図である。
図13】一実施形態によるインクジェット記録装置の圧電素子への印加電圧とパルス幅との関係を示す図(パルス幅を時定数よりも小さくする場合の図)である。
図14】一実施形態によるインクジェット記録装置の圧電素子への印加電圧とパルス幅との関係を示す図(パルス幅を時定数よりも大きくする場合の図)である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図1図14を参照し、本発明の一実施形態について、記録媒体としてのシートSに印刷を行うプリンター100を例にとって説明する。シートSの種類は特に限定されない。たとえば、シートSとして、用紙が使用される。なお、以下の説明では、プリンター100の設置面(たとえば、平坦な床面)に対して垂直な方向を上下方向と定義する。
【0011】
<プリンターの全体構成>
図1に示すように、本実施形態のプリンター100(「インクジェット記録装置」に相当)は、第1搬送部11および第2搬送部12を備える。第1搬送部11は、給紙カセットCAにセットされたシートSを給紙し、印刷位置に向けてシートSを搬送する。プリンター100による印刷ジョブでは、印刷位置を通過するシートSに対してインクが吐出される。これにより、シートSに画像が印刷される。言い換えると、プリンター100による印刷ジョブでは、インクからなる画像がシートSに形成される。第2搬送部12は、印刷済みのシートSを搬送する。第2搬送部12は、印刷済みのシートSを排出トレイETに排出する。
【0012】
第1搬送部11は、レジストローラー対10を含む複数の搬送ローラー部材を備える。図1では、複数の搬送ローラー部材のうちレジストローラー対10にのみ符号を付す。複数の搬送ローラー部材は、それぞれ、回転することによってシートSを搬送する。レジストローラー対10は、互いに圧接する一対のローラーを含む。レジストローラー対10を構成する一対のローラー間にレジストニップが形成される。給紙カセットCAから給紙されたシートSがレジストニップに進入する。レジストローラー対10は、回転することにより、後述するベルト搬送部2に向けてシートSを搬送する。
【0013】
なお、シートSの前端がレジストニップに到達した時点では、レジストローラー対10は回転を停止している。一方で、レジストローラー対10よりもシートSの搬送方向上流側の搬送ローラー部材は回転している。これにより、シートSの斜行が矯正される。
【0014】
プリンター100は、ベルト搬送部2を備える。ベルト搬送部2は、第1搬送部11からシートSを受け入れ、シートSを搬送する。ベルト搬送部2は、複数の張架ローラー20を備える。複数の張架ローラー20は、回転可能に支持される。また、ベルト搬送部2は、搬送ベルト3を備える。搬送ベルト3は、無端状である。搬送ベルト3は、複数の張架ローラー20によって回転可能に張架される。第1搬送部11からベルト搬送部2に向けてシートSが搬送され、そのシートSが搬送ベルト3の外周面上に至る。
【0015】
複数の張架ローラー20のうち1つは、ベルトモーターBM(図4参照)に連結され、ベルトモーターBMの駆動力が伝達されて回転する。ベルトモーターBMに連結された張架ローラー20が回転することにより、搬送ベルト3が駆動し、他の張架ローラー20が従動して回転する。言い換えると、搬送ベルト3は、回転する。
【0016】
また、ベルト搬送部2は、吸引ユニット200を備える。吸引ユニット200は、搬送ベルト3の内周側に配置される。吸引ユニット200は、搬送ベルト3の内周側から、搬送ベルト3の外周面上のシートSを吸引する。
【0017】
具体的には、搬送ベルト3は、吸引孔(図示せず)を複数有する。搬送ベルト3の吸引孔は、搬送ベルト3の厚み方向に貫通する。吸引ユニット200は、搬送ベルト3の吸引孔を介して、搬送ベルト3の外周面上のシートSを吸引する。これにより、搬送ベルト3の外周面にシートSが吸着される。搬送ベルト3は、シートSを外周面に吸着保持して回転する。言い換えると、搬送ベルト3は、シートSを外周面に吸着して搬送する。さらに言い換えると、搬送ベルト3は、移動(すなわち、回転)することにより、シートSを搬送する。搬送ベルト3の回転方向が「移動方向」に相当する。
【0018】
プリンター100は、記録部4を備える。記録部4は、搬送ベルト3の外周面と上下方向に対向するよう配置される。搬送ベルト3によるシートSの搬送中、搬送ベルト3の外周面上のシートSと記録部4とが上下方向に間隔を隔てて対向する。これにより、搬送ベルト3によるシートSの搬送中、後述する記録ヘッド40のノズル面と搬送ベルト3の外周面との間をシートSが通過する。すなわち、記録ヘッド40のノズル面と搬送ベルト3の外周面との間がシートSの搬送経路の一部となる。なお、記録ヘッド40が搬送ベルト3の上方に配置され、記録ヘッド40のノズル面が下方に向けられる。
【0019】
記録部4は、図2に示すように、シアン、マゼンタ、イエローおよびブラックの各色にそれぞれ対応する4つのラインヘッド41を備える。図2では、シアンのラインヘッド41に符号「C」を付し、マゼンタのラインヘッド41に符号「M」を付し、イエローのラインヘッド41に符号「Y」を付し、ブラックのラインヘッド41に符号「K」を付して区別する。後の説明で参照する図3も同様である。
【0020】
各色のラインヘッド41は、複数(たとえば、3つ)の記録ヘッド40を含む。たとえば、各色の複数の記録ヘッド40は、搬送ベルト3によるシートSの搬送方向と直交する方向に千鳥状に配列される。以下の説明では、搬送ベルト3によるシートSの搬送方向と直交する方向を単に幅方向と称する。
【0021】
各記録ヘッド40は、搬送ベルト3の外周面に対して上下方向に間隔を隔てて配置される。言い換えると、各記録ヘッド40は、搬送ベルト3により搬送されるシートSと上下方向に対向する位置に配置される。さらに言い換えると、搬送ベルト3は、各記録ヘッド40の下方においてシートSを吸着して搬送する。搬送ベルト3によるシートSの搬送方向および幅方向と直交する方向が上下方向となる。
【0022】
各記録ヘッド40は、搬送ベルト3の外周面と上下方向に対向する面をノズル面として有する。各記録ヘッド40のノズル面は、複数のノズル4Nを有する。各記録ヘッド40の複数のノズル4Nは、対応する色のインクを下方に吐出する。たとえば、各記録ヘッド40のノズル4Nの個数は同数である。各記録ヘッド40の複数のノズル4Nは、搬送ベルト3の幅方向に沿って配列される。図2では、ノズル4Nを破線で示す。実際には、より多くのノズル4Nが各記録ヘッド40に設けられる。
【0023】
各記録ヘッド40は、印刷ジョブでシートSに印刷すべき画像データに基づき、搬送ベルト3の外周面上のシートSに向けて、ノズル4Nからインクを吐出する。各記録ヘッド40から吐出されるインクはシートSに付着する。これにより、シートSに画像が形成される。言い換えると、各記録ヘッド40と搬送ベルト3との間が印刷位置であり、その印刷位置においてシートSに対する印刷が行われる。
【0024】
なお、図3に示すように、搬送ベルト3の内周側には、廃インクタンク21が配置される。廃インクタンク21は、後述するフラッシング処理で吐出されるインクを貯留する。廃インクタンク21のインクは破棄される。
【0025】
図1に戻り、プリンター100は、乾燥ユニット51およびデカーラー52を備える。乾燥ユニット51は、デカーラー52に向けてシートSを搬送しつつ、搬送中のシートSに付着したインクを乾燥する。デカーラー52は、シートSのカールを矯正する。デカーラー52は、カール矯正後のシートSを第2搬送部12に向けて搬送する。
【0026】
また、図4に示すように、プリンター100は、制御部6を備える。制御部6は、CPUおよびASICなどの処理回路を含む。制御部6は、印刷ジョブを制御する。具体的には、制御部6は、ベルトモーターBMを制御し、搬送ベルト3を適切に移動(すなわち、回転)させる。制御部6は、搬送ベルト3によるシートSの搬送を制御する。また、制御部6は、各記録ヘッド40によるインクの吐出を制御する。さらに、詳細は後述するが、制御部6は、フラッシング処理を制御するとともに、メニスカス揺動処理を制御する。
【0027】
制御部6には、レジストセンサー61、シートセンサー62およびベルトセンサー63が接続される。レジストセンサー61、シートセンサー62およびベルトセンサー63の各検知位置(配置位置)を図3に示す。
【0028】
レジストセンサー61は、レジストニップよりもシートSの搬送方向上流側の位置を検知位置とする。レジストセンサー61は、たとえば、反射型光センサーまたは透過型光センサーである。レジストセンサー61は、対応する検知位置におけるシートSの有無に応じて出力値を変化させる。
【0029】
制御部6は、レジストセンサー61の出力値に基づき、レジストセンサー61の検知位置におけるシートSの前端到達および後端通過を検知する。言い換えると、制御部6は、レジストセンサー61の出力値に基づき、レジストニップにおけるシートSの前端到達および後端通過を検知する。制御部6は、レジストセンサー61の検知位置でシートSの前端到達を検知してからの時間に基づき、レジストローラー対10によるシートSの搬送開始タイミング(レジストローラー対10の回転開始タイミング)を計る。
【0030】
シートセンサー62は、複数のラインヘッド41のうちシートSの搬送方向における最も上流側にあるラインヘッド41の印刷位置とレジストニップとの間の位置を検知位置とする。シートセンサー62は、対応する検知位置におけるシートSの有無に応じて出力値を変化させる。シートセンサー62としては、CIS(Contact Image Sensor)を用いてもよいし、反射型光センサーまたは透過型光センサーを用いてもよい。たとえば、シートセンサー62としてCISが用いられる。
【0031】
制御部6は、シートセンサー62の出力値に基づき、シートセンサー62の検知位置におけるシートSの前端到達および後端通過を検知する。制御部6は、シートセンサー62の出力値に基づき、搬送ベルト3により搬送されるシートSへのインクの吐出タイミングを計る。レジストローラー対10によるシートSの搬送開始からの時間に基づき、搬送ベルト3により搬送されるシートSへのインクの吐出タイミングを計ってもよい。
【0032】
また、制御部6は、シートセンサー62の検知位置にシートSの前端が到達してからシートセンサー62の検知位置を同じシートSの後端が通過するまでのシート通過時間を計測する。シートセンサー62の検知位置におけるシート通過時間は、シートSの搬送方向のサイズに応じて変わる。そこで、制御部6は、シート通過時間に基づき、搬送ベルト3により搬送されるシートSの搬送方向のサイズを認識する。これにより、搬送ベルト3により搬送されるシートSが不定型サイズであっても、シートSの搬送方向のサイズを制御部6が検知できる。
【0033】
さらに、制御部6は、シートセンサー62の出力値(シートセンサー62よる読み取りで得られる読取データ)に基づき、シートSの位置ずれ(シートSの斜行を含む)を検知する。たとえば、レジストローラー対10によるシートSの搬送が開始されて以降にシートSに位置ずれが発生する場合がある。この場合、シートSの位置ずれが制御部6によって検知される。
【0034】
なお、シートセンサー62の設置数を複数にしてもよい。たとえば、シートセンサー62を2つ設置してもよい。
【0035】
ベルトセンサー63は、搬送ベルト3の予め定められた基準位置(ホームポジション)を検知するためのセンサーである。搬送ベルト3の基準位置には、所定のマークが設けられる。これにより、ベルトセンサー63の出力値に基づき、搬送ベルト3の基準位置を検知できる。たとえば、ベルトセンサー63としてCISが用いられる。透過型光センサーまたは反射型光センサーを用いてベルトセンサー63を構成してもよい。
【0036】
制御部6は、ベルトセンサー63の出力値に基づき、搬送ベルト3の基準位置を検知する。言い換えると、制御部6は、ベルトセンサー63の出力値に基づき、搬送ベルト3の回転方向におけるフラッシング領域30(図7参照)の位置を検知する。
【0037】
また、図4に示すように、プリンター100は、記憶部7を備える。記憶部7は、ROM、RAM、HDDおよびSSDなどの記憶デバイスを含む。記憶部7は、各種情報を記憶する。記憶部7は、制御部6に接続される。制御部6は、記憶部7からの情報の読み出しを行う。また、制御部6は、記憶部7への情報の書き込みを行う。
【0038】
プリンター100は、操作パネル8を備える。操作パネル8には、たとえば、タッチスクリーンが設けられる。タッチスクリーンは、ソフトウェアボタンおよびメッセージなどの表示を行い、ユーザーからタッチ操作を受け付ける。また、操作パネル8には、設定および指示などを受け付けるハードウェアボタンも設けられる。操作パネル8は、制御部6に接続される。制御部6は、操作パネル8(タッチスクリーン)の表示動作を制御する。また、制御部6は、操作パネル8に対して行われた操作を検知する。
【0039】
プリンター100は、通信部9を備える。通信部9は、通信回路などを含む。通信部9は、ネットワークNTを介して、ユーザー端末PCに接続される。ユーザー端末PCは、パーソナルコンピューターなどの情報処理装置である。制御部6は、通信部9を用いて、ユーザー端末PCと通信する。
【0040】
ユーザー端末PCからプリンター100に対して、印刷ジョブの印刷データ(PDLデータなどを含むデータ)が送信される。言い換えると、ユーザー端末PCからプリンター100に対して、印刷ジョブの実行要求が送信される。印刷ジョブの印刷データは、印刷ジョブで使用するシートSのサイズなど、印刷に関する種々の設定データを含む。通信部9は、印刷ジョブの印刷データを受信する。印刷ジョブの印刷データを通信部9が受信したとき、制御部6は、印刷ジョブの実行要求を受けたと判断する。
【0041】
<インクの吐出構成>
図5および図6に示すように、各記録ヘッド40は、圧電素子PEを有する。圧電素子PEは「変位素子」に相当する。圧電素子は、各ノズル4Nに1つずつ割り当てられる。圧電素子PEは、駆動電圧が印加されることによって変形駆動する。各ノズル4Nは、対応する圧電素子PEの変形によってインクを吐出する。
【0042】
具体的には、各記録ヘッド40は、加圧室410をノズル4Nごとに有する。各加圧室410は、共通流路420介して、図示しないインクタンクからインクの供給を受ける。各加圧室410は、インクタンクから供給されたインクを収容する。各加圧室410は、対応するノズル4Nと連通する。各加圧室410には、圧電素子PEが1つずつ割り当てられる。各圧電素子PEは、変形駆動することにより、対応する加圧室410に圧力をかけ、加圧室410の体積を変化させる。 なお、電圧印加により変形駆動して加圧室410の体積を変化させるものであれば、圧電素子PEに代えて、別の変位素子を用いてもよい。
【0043】
各ノズル4Nは、対応する加圧室410の圧電素子PEが駆動することにより、インクを吐出する。後述するメニスカス揺動処理では、各圧電素子PEに対し、対応する加圧室410に繋がるノズル4Nからインクが吐出されない程度の電圧が印加される。これにより、メニスカス揺動処理では、各ノズル4Nにおいて、インクを吐出させることなく、インクのメニスカスを揺動させることができる。図6では、インクのメニスカスに符号Mを付す。
【0044】
各記録ヘッド40は、振動板430を有する。振動板430は、記録ヘッド40の壁面のうち、ノズル面とは上下方向に反対側の上面を構成する。振動板430上には、共通電極401が配置される。そして、共通電極401上に圧電素子PEが配置される。圧電素子PE上には、個別電極402が配置される。言い換えると、圧電素子PEは、一対の電極の上下方向間(すなわち、共通電極401と個別電極402との上下方向間)に挟まれる。共通電極401上には、他の圧電素子PEも配置される。個別電極402は、圧電素子PEごとに配置される。
【0045】
各記録ヘッド40は、電圧生成回路VGを有する。各記録ヘッド40は、ドライバー回路DRを有する。電圧生成回路VGは、各圧電素子PEを駆動させる電圧を生成し、ドライバー回路DRに供給する。ドライバー回路DRは、各圧電素子PEに対し、電圧生成回路VGから供給された駆動電圧を印加する。これにより、ドライバー回路DRは、各圧電素子PEを変形駆動させる。
【0046】
ドライバー回路DRには、パルス状の駆動信号が入力される。ドライバー回路DRは、駆動信号が立ち上がることにより、駆動すべき圧電素子PEに電圧を印加する。ドライバー回路DRは、駆動信号が立ち下がることにより、圧電素子PEへの電圧の印加を停止する。すなわち、ドライバー回路DRは、入力されたパルス状の駆動信号に基づき各圧電素子PEに対する電圧印加のオンオフを切り替える。なお、ドライバー回路DRは、駆動させない圧電素子PEには電圧を印加しない。
【0047】
ドライバー回路DRは、制御部6に接続される。制御部6は、ドライバー回路DRへの駆動信号を生成する信号生成回路60を含む。信号生成回路60は、パルス状の駆動信号を生成する。駆動信号は、各圧電素子PEを周期的に駆動させるための信号である。制御部6は、駆動信号を生成し、ドライバー回路DRに入力する。
【0048】
<搬送ベルトの構成>
図7に示すように、搬送ベルト3は、フラッシング領域30を有する。図7では、フラッシング領域30を破線で囲む。フラッシング領域30は、搬送ベルト3の厚み方向に貫通する開口31が形成された領域である。詳細は後述するが、フラッシング処理では、各記録ヘッド40からインクが吐出され、その吐出されたインクが開口31を通過し、搬送ベルト3の内周側に至り、廃インクタンク21に貯留される。
【0049】
なお、搬送ベルト3には、複数のフラッシング領域30が設けられる。複数のフラッシング領域30は、搬送ベルト3の回転方向に互いに所定間隔を隔てて配列される。搬送ベルト3は、フラッシング領域30とそれ以外の領域(符号省略)とを回転方向に交互に有する。
【0050】
各フラッシング領域30は、開口31を複数(同数)ずつ有する。開口31は、搬送ベルト3の幅方向に長い長孔である。開口31の形状(搬送ベルト3の厚み方向から見た形状)は特に限定されず、矩形状でもよいし、円形状でもよいし、楕円形状でもよいし、オーバル形状でもよい。
【0051】
たとえば、各フラッシング領域30は、2列分の開口列を含む。開口列は、搬送ベルト3の幅方向に等間隔で並ぶ開口31の列である。一方の開口列は、N個(図7では6個)の開口31を有し、他方の開口列は、N-1個(図7では5個)の開口31を有する。また、いずれの開口列の幅方向の中心位置も、搬送ベルト3の幅方向の中心位置に配置される。すなわち、各フラッシング領域30の複数の開口31は、幅方向に千鳥状に配列される。なお、開口31の幅方向の長さ(開口幅)は、幅方向に隣り合う一方の開口31と他方の開口31との間隔よりも大きい。
【0052】
また、図8に示すように、幅W1(mm)は、幅W2(mm)よりも小さい。なお、幅W1は、ラインヘッド41の幅方向の長さに相当する。具体的には、幅W1は、幅方向の一方側に位置する記録ヘッド40の当該一方側の端から幅方向の他方側に位置する記録ヘッド40の当該他方側の端までの幅方向の長さに相当する。幅W2は、フラッシング領域30の幅方向の長さに相当する。具体的には、幅W2は、幅方向の最も一方側に位置する開口31の当該一方側の端から幅方向の最も他方側に位置する開口31の当該他方側の端までの幅方向の長さに相当する。
【0053】
これにより、複数のノズル4Nはそれぞれ、搬送ベルト3が回転することにより、少なくともいずれかの開口31と上下方向に対向する。
【0054】
<シートの搬送制御>
搬送ベルト3により順次搬送される複数枚の同じサイズのシートSに対して連続して画像を形成する印刷ジョブである連続印刷ジョブでは、制御部6は、先行のシートSの後端と後行のシートS(先行のシートSの次に搬送されるシートS)の前端との搬送方向の間隔である紙間が一定となるよう制御する。言い換えると、制御部6は、複数枚のシートSが連続して一定の間隔で搬送されるように制御する。さらに言い換えると、制御部6は、複数枚のシートSを連続して搬送する場合に生じる各紙間を一定の間隔に維持する。
【0055】
ここで、連続印刷ジョブでは、制御部6は、搬送ベルト3により搬送されるシートSのサイズを認識する。また、制御部6は、搬送ベルト3の基準位置を検知する。そして、制御部6は、フラッシング領域30が一定周期で紙間に出現するようレジストローラー対10から搬送ベルト3へのシートSの搬送開始タイミングを計る。制御部6は、搬送ベルト3により搬送されるシートSのサイズに応じて、レジストローラー対10から搬送ベルト3へのシートSの搬送開始タイミングを変える。なお、制御部6は、印刷ジョブの印刷データに基づき、印刷ジョブで用いるシートS(搬送ベルト3により搬送されるシートS)のサイズを認識する。
【0056】
搬送ベルト3により搬送されるシートSとフラッシング領域30との位置関係を図9に示す。図9では、搬送ベルト3の回転方向(すなわち、シートSの搬送方向)は、紙面の右から左に向かう方向である。図9では、フラッシング領域30をハッチング柄で示し、開口31を省略する。また、図9では、シートSの符号を省略し、代わりに、シートSを示す図形内にシートSのサイズを付記する。なお、図9では、便宜上、複数の異なるサイズのシートSをまとめて図示する。
【0057】
ここで、図10を参照し、A4縦サイズのシートS(図9では、上から3段目に示すシートS)に着目して詳細に説明する。図10では、搬送ベルト3の回転方向(すなわち、シートSの搬送方向)は、紙面の下から上に向かう方向である。図10では、便宜上、3枚のシートSを図示し、各シートSの符号に対し搬送順を示す番号1~3を付す。
【0058】
シートSのサイズがA4縦サイズの場合、1枚目のシートS1と2枚目のシートS2との紙間には、フラッシング領域30は出現しない。2枚目のシートS2と3枚目のシートS3との紙間には、フラッシング領域30が出現する。シートS2とシートS3との紙間のフラッシング領域30は、シートS2およびシートS3のいずれにも全く重ならない。図示しないが、3枚目のシートS3と4枚目のシートSとの紙間には、フラッシング領域30が出現せず、4枚目のシートSと5枚目のシートSとの紙間には、フラッシング領域30が出現する。
【0059】
<フラッシング処理の概要>
複数のノズル4Nのうちインクの吐出頻度が低いノズル4N内のインク粘度は経時的に高くなる。その結果、目詰まりが発生し、画質が低下する。このような不都合を抑制するため、搬送ベルト3の駆動中、各記録ヘッド40は、画像形成処理とは別に、フラッシング処理を行う。なお、画像形成処理は、シートSに向けてインクを吐出してシートSに画像を形成する処理である。
【0060】
フラッシング処理は、搬送ベルト3の複数のフラッシング領域30のうちシートSと重なっていないフラッシング領域30の開口31に向けてインクを吐出する処理である。すなわち、フラッシング処理は、シートSに画像を形成するタイミングとは異なるタイミングでインクを吐出する処理である。フラッシング処理の吐出インクは、画像形成には寄与しない。フラッシング処理の吐出インクは、シートSには向かわず、開口31を通過し、搬送ベルト3の内周側に至り、廃インクタンク21に貯留される。フラッシング処理が行われることにより、目詰まりが抑制される。
【0061】
以下、或る1つの記録ヘッド40に着目し、フラッシング処理の制御方法について説明する。他の記録ヘッド40のフラッシング処理の制御方法については、以下の説明を援用するものとして省略する。後で説明するメニスカス揺動処理の制御方法についても同様とする。
【0062】
搬送ベルト3の駆動中、制御部6は、シートSと重なっていないフラッシング領域30と記録ヘッド40とが上下方向に対向するタイミングで、記録ヘッド40にフラッシング処理を行わせる。たとえば、記録ヘッド40は、1回のフラッシング処理で、各ノズル4Nから複数回、インクを吐出する。記録ヘッド40は、フラッシング領域30と上下方向に対向するタイミングで、ノズル4Nからインクを吐出し、開口31を通過させる。フラッシング処理で吐出されるインクは開口31を通過するため、搬送ベルト3にはインクが付着しない。
【0063】
ここで、連続印刷ジョブでは、フラッシング領域30が一定周期で紙間に出現するようシートSの搬送が制御される。すなわち、連続印刷ジョブの実行中、繰り返し、シートSと重なっていないフラッシング領域30と記録ヘッド40とが上下方向に対向する。
【0064】
そこで、連続印刷ジョブの実行中、制御部6は、記録ヘッド40に複数回のフラッシング処理を行わせる。連続印刷ジョブの実行中、制御部6は、記録ヘッド40とフラッシング領域30とが上下方向に対向するごとに、記録ヘッド40にフラッシング処理を行わせる。
【0065】
<メニスカス揺動処理の概要>
ノズル4N内のインクが増粘した状態になり、その状態でノズル4Nから無理にインクを吐出すると、ノズル4Nから吐出されるインクが意図せぬ方向に進行する場合がある。たとえば、搬送ベルト3にインクが付着する。搬送ベルト3にインクが付着すると、搬送ベルト3により搬送されるシートSがインクで汚れる場合がある。
【0066】
そこで、記録ヘッド40は、ノズル4N内におけるインクのメニスカスを揺動するメニスカス揺動処理を行う。記録ヘッド40は、複数のノズル4Nのそれぞれについてメニスカス揺動処理を行う。記録ヘッド40は、メニスカス揺動処理をインクの吐出前に行う。すなわち、記録ヘッド40は、フラッシング処理の前(言い換えると、フラッシング処理の直前)にメニスカス揺動処理を行う。また、記録ヘッド40は、画像形成処理の前(言い換えると、画像形成処理の直前)にメニスカス揺動処理を行う。
【0067】
制御部6は、記録ヘッド40によるメニスカス揺動処理を制御する。制御部6は、メニスカス揺動処理でのメニスカスの揺動回数(言い換えると、圧電素子PEに印加する駆動パルス数)を制御する。制御部6は、メニスカス揺動処理でのメニスカスの揺動振幅(言い換えると、圧電素子PEに印加する駆動電圧の振幅)を制御する。また、制御部6は、メニスカス揺動処理の実行タイミングを制御する。
【0068】
インクの吐出前、制御部6は、記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせる。記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、ドライバー回路DRにメニスカス揺動処理用の駆動信号を入力し、駆動すべき圧電素子PE(すなわち、インクのメニスカスを揺動させるべきノズル4Nに割り当てられた圧電素子PE)に駆動電圧を印加する。メニスカス揺動処理では、駆動電圧として微小な電圧が圧電素子PEに印加される。これにより、圧電素子PEが変形し、振動板430が振動する。このとき、ノズル4N内のインクを介して、インクのメニスカスに振動が伝わる。その結果、インクのメニスカスが揺動する。
【0069】
メニスカス揺動処理が行われることにより、ノズル4N内のインクが攪拌される。これにより、ノズル4N内のインクの増粘が抑制される。なお、インクのメニスカスが揺動しても、その揺動は小さいため、ノズル4Nからのインクの漏出は抑制される。
【0070】
<メニスカス揺動の振幅制御>
図11に示すように、印刷ジョブの実行要求を受けると、制御部6は、搬送ベルト3の駆動を開始する(時点P0)。以降、搬送ベルト3の回転速度が一定速度に安定してからシートSが印刷位置に到達する前の時点P1までの期間であるフラッシング期間Tfのとき、制御部6は、記録ヘッド40にフラッシング処理を行わせる。そして、シートSが印刷位置に到達して以降、制御部6は、記録ヘッド40に画像形成処理を行わせる。図11では、フラッシング処理の実行時点を「Pf」で示し、画像形成処理の実行時点を「Pi」で示す。
【0071】
フラッシング期間Tfのとき、制御部6は、複数のノズル4Nのそれぞれについて、複数回のフラッシング処理を記録ヘッド40に行わせる。また、制御部6は、複数のノズル4Nのそれぞれについて、フラッシング処理の前に毎回、複数回のメニスカス揺動処理を記録ヘッド40に行わせる。図11では、メニスカス揺動処理の実行期間をハッチングで示す。
【0072】
たとえば、場合によっては、印刷ジョブを前回実行してから今回実行するまでのインク不吐出期間が長くなる。インク不吐出期間が長いほど、ノズル4N内のインクが増粘し易くなる。このため、制御部6は、フラッシング期間Tfにおける最初のフラッシング処理の前については、2回目以降のフラッシング処理の前よりも、メニスカス揺動処理の実行期間を長くする。言い換えると、制御部6は、フラッシング期間Tfにおける最初のフラッシング処理の前については、2回目以降のフラッシング処理の前よりも、メニスカス揺動処理の実行回数を多くする。
【0073】
この構成では、フラッシング期間Tfにおけるメニスカス揺動処理の実行回数が多くなる。メニスカス揺動処理の実行回数が多いほど、ノズル4N内のインクが増粘することを抑制できる。一方で、メニスカス揺動処理の実行回数が多い場合には、メニスカス揺動処理の実行時にノズル4Nからインクが溢れ出ることがある。メニスカス揺動処理の実行時にノズル4Nからインクが溢れ出ると、搬送ベルト3がインクで汚れる。
【0074】
この都合を抑制するため、制御部6は、フラッシング処理の前(すなわち、インクの吐出前)のメニスカス揺動処理については、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅が小さくなるよう制御する。詳細は後述する。これにより、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理において、ノズル4Nからインクが溢れ出ることを抑制できる。
【0075】
一方で、ノズル4N内のインクが増粘した状態で画像形成処理が行われた場合には、画質が低下するという不都合が生じ得る。このため、画像形成処理の前のメニスカス揺動処理では、ノズル4N内のインクが増粘することを確実に抑制する必要がある。
【0076】
そこで、制御部6は、画像形成処理で使用するノズル4Nである印刷寄与ノズル4Nについては、画像形成処理の前(すなわち、インクの吐出前)に毎回、複数回のメニスカス揺動処理を記録ヘッド40に行わせる。
【0077】
なお、制御部6は、画像形成処理の前に印刷寄与ノズル4Nに行わせる複数回のメニスカス揺動処理のうち、少なくとも1回のメニスカス揺動処理については、他のメニスカス揺動処理よりも、印刷寄与ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅が大きくなるよう制御する。詳細は後述する。
【0078】
記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、図12に示すフローに沿った処理を行う。メニスカス揺動処理は、ノズル4Nごとに行われる。すなわち、図12に示すフローに沿った処理は、ノズル4Nごとに行われる。
【0079】
たとえば、フラッシング処理については、全てのノズル4Nを対象にして行われる。すなわち、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理については、全てのノズル4Nを対象にして行われる。
【0080】
一方で、画像形成処理については、全てのノズル4Nが使用されるとは限らない。印刷ジョブで使用されるシートSは様々である。搬送ベルト3による搬送中のシートSと上下方向に対向しないノズル4Nは少なくとも、画像形成処理には使用されない。また、搬送ベルト3による搬送中のシートSと上下方向に対向するノズル4Nであっても、印刷ジョブで印刷すべき画像データによっては、画像形成処理には使用されない。
【0081】
このように印刷ジョブでは、使用されないノズル4Nが存在する。印刷ジョブで使用されないノズル4Nについては、画像形成処理でインクを吐出しないので、画像形成処理の前のメニスカス揺動処理は行われない。
【0082】
なお、印刷ジョブで印刷すべき画像データによっては、単一のノズル4Nが複数回の画像形成処理を行う場合がある。この場合、当該ノズル4Nが画像形成処理を行うとき、その都度、当該ノズル4Nを対象にメニスカス揺動処理が行われる。
【0083】
記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、今回のメニスカス揺動処理がフラッシング処理の前のメニスカス揺動処理であるか否かを判断する(ステップ#1)。フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理である場合には、ステップ#2に移行する。フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理でない場合、すなわち、画像形成処理の前のメニスカス揺動処理である場合には、ステップ#3に移行する。
【0084】
ステップ#2に移行した場合、制御部6は、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅を小さくするための第1処理を行う。一方で、ステップ#3に移行した場合、制御部6は、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅を大きくするための第2処理を行う。
【0085】
ここで、制御部6は、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を変えることにより、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅を制御する。以下、図13および図14を参照し、具体的に説明する。以下の説明では、ドライバー回路DR、圧電素子PE、および、それらを接続する配線部などを含む部分に符号400を付して回路部400(図5参照)と称する。
【0086】
図13および図14では、ドライバー回路DRに入力される駆動信号のパルス幅を上図に示し、ドライバー回路DRに駆動信号が入力されることによって圧電素子PEに印加される駆動電圧の遷移を下図に示す。なお、圧電素子PEの変位は圧電素子PEに印加される駆動電圧に依存する。すなわち、図13および図14において、圧電素子PEに印加される駆動電圧の遷移は圧電素子PEの変位の遷移でもある。図13および図14では、回路部400の時定数を「T」で示し、駆動信号のパルス幅を「W」で示す。
【0087】
フラッシング処理の前に記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、すなわち、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅を小さくするとき、制御部6は、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも小さくする第1処理を行う。一方で、画像形成処理の前に記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、すなわち、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅を大きくするとき、制御部6は、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも大きくする第2処理を行う。
【0088】
本実施形態では、フラッシング処理の前に第1処理が行われることにより、図13に示すように、圧電素子PEに印加される駆動電圧が定常状態に達する前に圧電素子PEへの電圧印加がオフされる。すなわち、圧電素子PEが最大に変位する前に圧電素子PEへの電圧印加がオフされる。これにより、第1処理が行われた場合には、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅が小さくなる。
【0089】
また、画像形成処理の前に第2処理が行われることにより、図14に示すように、圧電素子PEに印加される駆動電圧が定常状態に達した後に圧電素子PEへの電圧印加がオフされる。すなわち、圧電素子PEが最大に変位した後に圧電素子PEへの電圧印加がオフされる。これにより、第2処理が行われた場合には、ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅が大きくなる。
【0090】
ここで、画像形成処理の前のメニスカス揺動処理でのノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅(以下、単にメニスカス揺動振幅と称する場合がある)が比較的大きい場合がある。この場合、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理でのメニスカス揺動振幅を画像形成処理の前のメニスカス揺動処理でのメニスカス揺動振幅よりも相対的に小さくしても、それでは不十分となり、ノズル4Nからインクが溢れ出る可能性がある。
【0091】
一方で、本実施形態では、フラッシング処理の前のメニスカス揺動振幅を画像形成処理の前のメニスカス揺動振幅よりも単に小さくしているわけではない。具体的には、フラッシング処理の前に記録ヘッド40にメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも小さくする。これにより、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理でのメニスカス揺動振幅を確実に小さくできる。その結果、フラッシング処理の前のメニスカス揺動処理において、ノズル4Nからインクが溢れ出ることを抑制できる。すなわち、ノズル4Nからインクが意図せず溢れ出ることを抑制できる。ノズル4Nからインクが意図せず溢れ出ることを抑制できれば、搬送ベルト3がインクで汚れることを抑制できる。
【0092】
また、本実施形態では、画像形成処理の前に印刷寄与ノズル4N(すなわち、画像形成処理で使用するノズル4N)が行う複数回のメニスカス揺動処理のうち、少なくとも1回のメニスカス揺動処理については、他のメニスカス揺動処理よりも、印刷寄与ノズル4Nにおけるインクのメニスカスの揺動振幅が大きくなるよう制御される。
【0093】
たとえば、画像形成処理の前に記録ヘッド40に複数回のメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、当該複数回のメニスカス揺動処理の全てについて、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも大きくする。すなわち、画像形成処理の前、印刷寄与ノズル4Nで複数回のメニスカス揺動処理が行われるが、当該複数回のメニスカス揺動処理の全てにおいて、印刷寄与ノズル4Nにおけるインクのメニスカスが比較的大きく揺動する。これにより、確実に、印刷寄与ノズル4N内でインクが増粘することを抑制できる。
【0094】
また、たとえば、画像形成処理の前に記録ヘッド40に複数回のメニスカス揺動処理を行わせるとき、制御部6は、当該複数回のメニスカス揺動処理のうち、所定回数分のメニスカス揺動処理については、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも大きくする一方、残りのメニスカス揺動処理については、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも小さくする。すなわち、画像形成処理の前、印刷寄与ノズル4Nで複数回のメニスカス揺動処理が行われるが、当該複数回のメニスカス揺動処理のうち、所定回数分のメニスカス揺動処理の実行時にだけ、印刷寄与ノズル4Nにおけるインクのメニスカスが比較的大きく揺動する。これにより、印刷寄与ノズル4N内でインクが増粘することを抑制しつつ、印刷寄与ノズル4Nからインクが溢れ出ることを抑制できる。
【0095】
なお、所定回数は特に限定されない。また、画像形成処理の前の複数回のメニスカス揺動処理のうち、初回から所定回数分のメニスカス揺動処理について、ドライバー回路DRに入力する駆動信号のパルス幅を回路部400の時定数よりも大きくしてもよい。
【0096】
今回開示された実施形態は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の説明ではなく特許請求の範囲によって示され、さらに、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれる。
【符号の説明】
【0097】
3 搬送ベルト
4N ノズル
6 制御部
30 フラッシング領域
31 開口
40 記録ヘッド
100 プリンター(インクジェット記録装置)
400 回路部
410 加圧室
DR ドライバー回路
PE 圧電素子(変位素子)
S シート
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14