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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024001767
(43)【公開日】2024-01-10
(54)【発明の名称】電圧調整装置
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/16 20060101AFI20231227BHJP
【FI】
H02J3/16
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022100637
(22)【出願日】2022-06-22
(71)【出願人】
【識別番号】000102636
【氏名又は名称】エナジーサポート株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】弁理士法人 快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】豊田 靖臣
(72)【発明者】
【氏名】小栗 和也
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 文彦
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066DA04
5G066DA06
5G066FA01
5G066FB11
5G066FB15
(57)【要約】
【課題】配電系統に発生する電圧フリッカを低減することができる電圧調整装置を提供する。
【解決手段】
電圧調整装置10は、配電系統1に接続され、配電系統1の電圧を調整する。電圧調整装置10は、配電系統1に発生する特定周波数の変動成分を検出する検出部14と、検出部14で検出される特定周波数の変動成分を打ち消す無効電力を配電系統1に出力する無効電力出力部11と、を備えている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
配電系統に接続され、前記配電系統の電圧を調整する電圧調整装置であり、
前記配電系統に発生する特定周波数の変動成分を検出する検出部と、
前記検出部で検出される前記特定周波数の変動成分を打ち消す無効電力を前記配電系統に出力する無効電力出力部と、を備える電圧調整装置。
【請求項2】
前記検知部は、
前記配電系統の電圧を検出する電圧センサと、
前記電圧センサで検出された前記配電系統の電圧を周波数分析することで、前記特定周波数の変動成分を算出する演算部と、
を備える、請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項3】
前記演算部は、前記特定周波数の変動成分の振幅及び位相を算出し、
前記無効電力出力部は、前記演算部で算出された前記変動成分の振幅及び位相に基づいて算出される前記無効電力を前記配電系統に出力する、請求項2に記載の電圧調整装置。
【請求項4】
前記特定周波数は、特定周波数領域に複数設定されており、
前記検出部は、前記複数の特定周波数のそれぞれについて変動成分を検出し、
前記無効電力出力部は、前記複数の特定周波数のそれぞれについて、当該変動成分を打ち消す無効電力を前記配電系統に出力する、請求項1~3のいずれか一項に記載の電圧調整装置。
【請求項5】
前記検出部と前記無効電力出力部を制御する制御部をさらに備えており、
前記制御部は、前記複数の特定周波数のそれぞれについて順番に、
所定時間をかけて当該特定周波数の変動成分を前記検出部に検出させる検出工程と、
前記検出工程で検出された当該特定周波数の変動成分を打ち消す無効電力を前記出力部から前記配電系統に出力させる出力工程と、
を実行するように構成されており、
前記制御部は、さらに、2番目以降の前記特定周波数について前記検出工程を実行するときに、直前の前記特定周波数について前記出力工程を実行するように構成されている、請求項4に記載の電圧調整装置。
【請求項6】
前記検知部は、
前記配電系統に接続され、前記配電系統の負荷側無効電流を検出する電流センサと、
前記電流センサで検出された前記配電系統の負荷側無効電流を周波数分析することで、前記特定周波数の変動成分を算出する演算部と、
を備える、請求項1に記載の電圧調整装置。
【請求項7】
前記特定周波数は、特定周波数領域に複数設定されており、
前記検出部は、前記複数の特定周波数のそれぞれについて変動成分を検出し、
前記無効電力出力部は、前記複数の特定周波数の変動成分のそれぞれについて、当該変動成分を打ち消す無効電力を前記配電系統に出力する、請求項6に記載の電圧調整装置。
【請求項8】
前記無効電力出力部は、前記複数の特定周波数の変動成分のうち振幅の大きな変動成分から順番に、当該変動成分を打ち消す無効電力を前記配電系統に出力する、請求項7に記載の電圧調整装置。
【請求項9】
前記検出部と前記無効電力出力部を制御する制御部をさらに備えており、
前記制御部は、
前記複数の特定周波数のそれぞれについて、当該特定周波数の変動成分を前記検出部に検出させる検出工程と、
前記検出工程で検出された前記複数の特定周波数の変動成分のうち振幅の大きな変動成分から順番に、当該変動成分を打ち消す無効電力を前記出力部から前記配電系統に出力させる出力工程と、
を実行するように構成されており、
前記制御部は、前記検出工程と前記出力工程を繰り返し実行するように構成されている、請求項8に記載の電圧調整装置。
【請求項10】
前記制御部は、前記検出工程と前記出力工程を繰り返し実行するときに、2回目以降の前記検出工程は、直前の前記出力工程と同時に実行させるように構成されている、請求項9に記載の電圧調整装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書で開示する技術は、配電系統の電圧を調整する電圧調整装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、配電系統に電圧変動が生じた際に、配電系統に無効電力を供給し、配電系統の電圧変動を抑制する電圧調整装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012-29433号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年、配電系統に多数の分散型電源(例えば、太陽光発電装置)が連系されるようになっており、これら分散型電源の制御装置(Power Conditioning Subsystem(以下、PCSという))が原因となって配電系統に広域的な電圧フリッカが発生するという問題が生じている。特許文献1に記載の電圧調整装置では、配電系統に発生する急峻な電圧変動を低減することはできるものの、上記した電圧フリッカに対しては十分な低減効果を得ることは難しかった。本明細書は、配電系統に発生する電圧フリッカを低減することができる電圧調整装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示する電圧調整装置は、配電系統に接続され、配電系統の電圧を調整する。この電圧調整装置は、配電系統に発生する特定周波数の変動成分を検出する検出部と、検出部で検出される特定周波数の変動成分を打ち消す無効電力を配電系統に出力する無効電力出力部と、を備える。
【0006】
本願発明者が鋭意検討した結果、配電系統に発生する広域的な電圧フリッカは、特定周波数領域内の特定周波数の変動成分を有することが判明した。上記の電圧調整装置では、配電系統に発生する特定周波数の変動成分を検出し、その変動成分を打ち消すように配電系統に無効電力を出力する。これによって、配電系統に発生する広域的な電圧フリッカを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施例1の電圧調整装置の概略構成を示す図。
図2】実施例1の電圧調整装置の制御装置で実施される処理の手順を示すフローチャート。
図3】実施例1の電圧調整装置において、起動時から定常運転に移行するまでに行われる系統電圧のサンプリングと無効電力の出力とが実施される様子を模式的に示す図。
図4】実施例2の電圧調整装置の概略構成を示す図。
図5】実施例2の電圧調整装置の制御装置で実施される処理の手順を示すフローチャート。
図6】実施例2の電圧調整装置において、無効電流のサンプリングと無効電力の出力とが実施される様子を模式的に示す図。
図7】無効電流サンプリング時と無効電力出力時における、系統電圧の波形と無効電力の波形を模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本明細書で開示する電圧調整装置の実施形態では、検知部は、配電系統の電圧を検出する電圧センサと、電圧センサで検出された配電系統の電圧を周波数分析することで、特定周波数の変動成分を算出する演算部と、を備えていてもよい。配電系統の電圧を周波数分析することで、電圧フリッカの原因となる特定周波数を特定することができる。
【0009】
本明細書で開示する電圧調整装置の実施形態では、演算部は、特定周波数の変動成分の振幅及び位相を算出してもよい。無効電力出力部は、演算部で算出された変動成分の振幅及び位相に基づいて算出される無効電力を配電系統に出力してもよい。これによって、特定周波数の変動成分を打ち消すことができる。
【0010】
本明細書で開示する電圧調整装置の実施形態では、特定周波数は、特定周波数領域に複数設定されていてもよい。検出部は、複数の特定周波数のそれぞれについて変動成分を検出してもよい。無効電力出力部は、複数の特定周波数のそれぞれについて、当該変動成分を打ち消す無効電力を配電系統に出力してもよい。このような構成によると、複数の特定周波数の変動成分のそれぞれを打ち消す無効電力が重畳的に出力されるため、配電系統に発生する電圧フリッカを好適に低減することができる。
【0011】
本明細書で開示する電圧調整装置の実施形態では、検出部と無効電力出力部を制御する制御部をさらに備えていてもよい。制御部は、複数の特定周波数のそれぞれについて順番に、(1)所定時間をかけて当該特定周波数の変動成分を検出部に検出させる検出工程と、(2)検出工程で検出された当該特定周波数の変動成分を打ち消す無効電力を出力部から配電系統に出力させる出力工程と、を実行するように構成されていてもよい。制御部は、さらに、2番目以降の特定周波数について検出工程を実行するときに、直前の特定周波数について出力工程を実行するように構成されていてもよい。このような構成によると、特定周波数の変動成分を検出しているときに、直前に検出した他の特定周波数の変動成分を打ち消すための無効電力の出力が行われる。このため、無効電力の出力が途切れることなく行われ、電圧フリッカを短時間で低減することができる。
【0012】
本明細書で開示する電圧調整装置の他の実施形態では、検知部は、配電系統に接続され、配電系統の負荷側無効電流を検出する電流センサと、電流センサで検出された配電系統の負荷側無効電流を周波数分析することで、特定周波数の変動成分を算出する演算部と、 を備えていてもよい。負荷側無効電流を周波数分析することによっても、電圧フリッカの原因となる特定周波数を特定することができる。
【0013】
本明細書で開示する電圧調整装置の他の実施形態では、特定周波数は、特定周波数領域に複数設定されていてもよい。検出部は、複数の特定周波数のそれぞれについて変動成分を検出してもよい。無効電力出力部は、複数の特定周波数の変動成分のそれぞれについて、当該変動成分を打ち消す無効電力を配電系統に出力してもよい。このような構成によると、配電系統に発生する電圧フリッカを好適に低減することができる。
【0014】
本明細書で開示する電圧調整装置の他の実施形態では、無効電力出力部は、複数の特定周波数の変動成分のうち振幅の大きな変動成分から順番に、当該変動成分を打ち消す無効電力を前記配電系統に出力してもよい。このような構成によると、配電系統に発生する電圧フリッカを短時間で抑制することができる。
【0015】
本明細書で開示する電圧調整装置の他の実施形態では、検出部と無効電力出力部を制御する制御部をさらに備えていてもよい。制御部は、(1)複数の特定周波数のそれぞれについて、当該特定周波数の変動成分を検出部に検出させる検出工程と、(2)検出工程で検出された複数の特定周波数の変動成分のうち振幅の大きな変動成分から順番に、当該変動成分を打ち消す無効電力を出力部から配電系統に出力させる出力工程と、を実行するように構成されていてもよい。制御部は、検出工程と出力工程を繰り返し実行するように構成されていてもよい。
【0016】
本明細書で開示する電圧調整装置の他の実施形態では、制御部は、検出工程と出力工程を繰り返し実行するときに、2回目以降の検出工程は、直前の出力工程と同時に実行させるように構成されていてもよい。このような構成によると、無効電力の出力が途切れることなく行われ、電圧フリッカを好適に低減することができる。
【実施例0017】
(実施例1)
図1~3を参照して、実施例1に係る電圧調整装置10について説明する。図1に示すように、電圧調整装置10は配電系統1に接続される。配電系統1は、電源(例えば、変電所)に接続されており、電源から配電系統1に電力が供給される。配電系統1には、負荷4が接続されており、負荷4は配電系統1から供給される電力により作動する。電圧調整装置10は、負荷4が接続された接続点より電源側において、配電系統1に接続されている。具体的には、電圧調整装置10は、開閉器2及び変圧器3を介して配電系統1に並列接続されている。電圧調整装置10は、負荷4等によって配電系統1の電圧(以下、系統電圧ということがある)が変動するときに、配電系統1に電力を供給することで系統電圧の変動を抑制する。系統電圧の変動が調整されることで、配電系統1の電力品質が維持される。
【0018】
電圧調整装置10は、インバータ11と、インバータ11を制御する制御装置14を備えている。インバータ11は、連系リアクトル12を介して変圧器3に接続され、変圧器3が開閉器2を介して配電系統1に接続されている。また、インバータ11には、電位確立用のコンデンサ13が接続されている。なお、連系リアクトル12とコンデンサ13は電圧調整装置10に装備されており、変圧器3は電圧調整装置10とは別に設けられている。
【0019】
制御装置14は、CPU,ROM,RAMを備えたコンピュータによって構成され、開閉器2に装備される各種センサ5,6,7に接続されている。すなわち、開閉器2は、配電系統1の電流を検出する2つの電流センサ6,7と、配電系統1の電圧(すなわち、系統電圧)を検出する電圧センサ5を備えている。電流センサ6は、インバータ11が接続された接続点より電源側の配電系統1の電流を検出する。電流センサ7は、インバータ11が接続された接続点より負荷側の配電系統1の電流を検出する。電流センサ6,7及び電圧センサ5で検出された検出値は、制御装置14に入力される。制御装置14は、電流センサ6,7及び電圧センサ5で検出された検出値に基づいて、系統電圧の変動を抑制するようインバータ11を駆動する。すなわち、系統電圧が低下しているときは、系統電圧が上昇するようにインバータ11を駆動して連系リアクトル12に流れる電流を制御する。一方、系統電圧が上昇しているときは、系統電圧が下降するようにインバータ11を駆動して連系リアクトル12に流れる電流を制御する。これによって、系統電圧が予め設定された基準電圧(例えば、6600V)となるようにフィードバック制御する。
【0020】
次に、制御装置14が配電系統1に発生する電圧フリッカを低減するために実施する処理(以下、フリッカ低減処理ということがある)について説明する。電圧調整装置10に電源が投入されて制御装置14が起動すると、制御装置14はフリッカ低減処理を繰り返し実行する。すなわち、図2に示すように、制御装置14は、まず、配電系統1の電圧をサンプリングする(S10)。具体的には、電圧センサ5から入力される電圧値(すなわち、配電系統1の電圧)を、所定のサンプリング時間(例えば、5秒)の間、所定のサンプリング間隔(例えば、25m秒)で取得する。これによって、所定のサンプリング数(例えば、200個)の電圧値が取得される。
【0021】
次に、制御装置14は、S10でサンプリングされた電圧値のデータを、予め設定された周波数領域にフーリエ変換する(S12)。PCSを原因として配電系統1に発生する電圧フリッカは、所定の周波数領域(例えば、3~15Hz)の変動成分を有している。このため、制御装置14は、S10でサンプリングされた系統電圧のデータ(例えば、200個のデータ)を、予め設定された周波数領域(例えば、0~20Hz)にフーリエ変換する。S12のフーリエ変換には、例えば、離散フーリエ変換(DFT)を用いることができる。
【0022】
次に、制御装置14は、S12のフーリエ変換で得られた結果から、系統電圧に含まれる電圧フリッカ(微細な電圧変動)の振幅(周波数スペクトル)と位相を検出する(S14)。すなわち、制御装置14は、フーリエ変換により得られた電圧変動成分(例えば、0~20Hz内に存在する電圧変動成分)のうち、予め設定された設定値以上となる振幅を有する電圧変動成分を電圧フリッカとして特定する。そして、制御装置14は、その特定した電圧フリッカの振幅と位相を算出する。
【0023】
次に、制御装置14は、S14で検出された電圧フリッカを打ち消すための無効電力量を算出する(S16)。系統電圧に含まれる電圧フリッカの振幅と位相は、S14で検出されている。したがって、制御装置14は、検出した電圧フリッカの振幅及び位相と、配電系統1のインピーダンス(既知)に基づいて、当該電圧フリッカを打ち消すための無効電力量を算出する。なお、S14で複数の周波数について電圧フリッカが検出されている場合、制御装置14は、複数の周波数のそれぞれについて、当該周波数の電圧フリッカを打ち消すための無効電力量を算出する。
【0024】
次に、制御装置14は、S16で算出された無効電力量を配電系統1に出力する(S18)。具体的には、制御装置14は、S16で算出された無効電力量が配電系統1に出力されるようにインバータ11を駆動する。なお、S16で複数の周波数について電圧フリッカを打ち消すための無効電力量が算出されている場合、S18ではこれら算出された複数の無効電力量が重畳して配電系統1に出力される。配電系統1に無効電力量が出力されることによって、配電系統1に含まれる電圧フリッカが打ち消される。
【0025】
S18の処理が終了すると、制御装置14は、S10~S18の処理を繰り返し実行する。これにより、配電系統1の電圧に含まれる電圧フリッカが打ち消された状態となる。
【0026】
上述の説明から明らかなように、フリッカ低減処理では、系統電圧のサンプリング(S10)と、サンプリングした系統電圧を解析することによる無効電力量の算出(S12~S16)と、算出した無効電力量の出力(S18)が順に行われる。そこで、本実施例においては、系統電圧のサンプリング(S10)と、無効電力量の出力(S18)とを同時に行うことで、配電系統1の電圧に含まれる電圧フリッカを短期間で打ち消すことを可能としている。
【0027】
すなわち、図3に示すように、制御装置14が起動すると(t=0秒)、まず、制御装置14は、電圧センサ5から入力する系統電圧をサンプリングする(AS-1(t=0~5秒))。次いで、制御装置14は、t=0~5秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量を算出する(S12~S16)と同時に、次の周期のための系統電圧のサンプリングを行う(BS-1(t=5~10秒))。なお、t=5~10秒における系統電圧のサンプリングは、電圧調整装置10から配電系統1に無効電力が出力されていない状態で行われる。このため、電圧フリッカの状態に変化がなければ、t=5~10秒の間における系統電圧のサンプリングは、t=0~5秒の間における系統電圧のサンプリングと略同一の結果となる。
【0028】
次に、制御装置14は、t=5~10秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量を算出すると同時に、次の周期のための系統電圧のサンプリングを行う(AS-2(t=10~15秒))。さらに、制御装置14は、t=5~10秒の間で算出した無効電力量を配電系統1に出力する(AO-1(t=10~15秒))。このため、t=10~15秒で行われる系統電圧のサンプリングは、t=0~5秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて算出された無効電力量が電圧調整装置10から配電系統1に出力された状態で行われる。
【0029】
次に、制御装置14は、t=10~15秒の場合と同様に、t=10~15秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量を算出すると同時に、次の周期のための系統電圧のサンプリングを行う(BS-2(t=15~20秒))。さらに、制御装置14は、t=10~15秒の間で算出した無効電力量を配電系統1に出力する(BO-1(t=15~20秒))。
【0030】
次に、制御装置14は、t=15~20秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量を算出すると同時に、次の周期のための系統電圧のサンプリングを行う(AS-3(t=20~25秒))。さらに、制御装置14は、t=10~15秒の間に出力した無効電力量(AO-1)と、t=15~20秒の間で算出した無効電力量とを加算して配電系統1に出力する(前回値+AO-2(t=20~25秒))。すなわち、t=15~20秒の間で算出した無効電力量は、t=10~15秒の間にサンプリングされた系統電圧に基づいて算出されたものであり、t=10~15秒の間は無効電力量(AO-1)が配電系統1に出力されている。このため、無効電力量(AO-1)と、t=15~20秒の間で算出した無効電力量とを加算して配電系統1に出力する。
【0031】
以下、同様に、制御装置14は、系統電圧のサンプリング(BS-3,AS-4,BS-4,・・)を行うと同時に、配電系統1への無効電力量の出力を行う(前回値+BO-2,前回値+AO-3,前回値+BO-3,・・)。また、これと同時に直前の周期でサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量の算出を行う。これによって、配電系統1の電圧フリッカを好適に低減することができる。
【0032】
上述の説明から明らかように、本実施例の電圧調整装置10によると、配電系統1の電圧を所定時間だけサンプリングし、そのサンプリングした電圧をフーリエ解析することで、電圧フリッカの周波数と振幅及び位相を検出する。そして、検出した電圧フリッカを打ち消す無効電力量を配電系統1に出力するため、従来の技術(すなわち、フィードバック制御)では難しかった周波数の高い電圧フリッカに対しても十分に低減効果を奏することができる。
【0033】
また、本実施例の電圧調整装置10では、系統電圧のサンプリング(S10)と、サンプリングした系統電圧を解析することによる無効電力量の算出(S12~S16)と、算出した無効電力量の出力(S18)とが所定の時間間隔(例えば、5秒)で順に行われる。そして、無効電力量の出力(S18)と、それ以降の周期で行う系統電圧のサンプリング(S10)とを同時に行う。これによって、無効電力量の出力(S18)が中断することなく行われると共に、出力される無効電力量の見直しが順次行われる。このため、配電系統1の電圧に含まれる電圧フリッカを短時間で打ち消すことができる。具体的には、従来技術のフィードバック制御を行うだけでは、配電系統1の電圧フリッカ周波数が高くなるほど応答遅れにより電圧フリッカを低減することが困難であった。しかしながら、系統電圧のサンプリング-解析・算出-電圧フリッカを打ち消す無効電力量の配電系統1への出力という一連の動作を、所定の時間間隔で順に行うようにしたため、出力開始後の最短低減時間(例えば、t=10秒以降)で電圧フリッカを打ち消すことができる。
【0034】
(実施例2)
次に、図4~6を用いて、実施例2に係る電圧調整装置について説明する。実施例2の電圧調整装置では、負荷側の無効電流をサンプリングし、そのサンプリングした無効電流に基づいて負荷側の無効電流フリッカを抑制する点で、上述した実施例1の電圧調整装置と異なり、その他の点では実施例1の電圧調整装置と略同一の構成を有している。このため、以下の説明では、実施例1と異なる点を主に説明する。
【0035】
図4に示すように、実施例2の電圧調整装置10も、実施例1の電圧調整装置と同一のハード構成を備えている。すなわち、実施例2の電圧調整装置10は、開閉器2及び変圧器3を介して配電系統1に接続されており、インバータ11と、連系リアクトル12と、コンデンサ13と、制御装置14を備えている。実施例2の電圧調整装置10では、制御装置14が、電流センサ7で検出される電流値(すなわち、インバータ11が接続された接続点より負荷側の配電系統1の電流)に基づいて、負荷側に発生する無効電流フリッカを抑制する点で実施例1と相違する。以下、制御装置14で実施されるフリッカ低減処理について説明する。なお、配電系統1の系統電圧が予め設定された基準電圧となるように制御装置14がフィードバック制御する点については、実施例1と同様に行われる。
【0036】
次に、実施例2の制御装置14が実施するフリッカ低減処理について説明する。実施例2のフリッカ低減処理は、制御装置14が起動すると繰り返し実行される。図2に示すように、制御装置14は、まず、配電系統1の負荷側の無効電流をサンプリングする(S20)。具体的には、電流センサ7から入力される電流値から取得される負荷側の無効電流を、所定のサンプリング時間(例えば、1秒)の間、所定のサンプリング間隔(例えば、2m秒)で取得する。これによって、所定のサンプリング数(例えば、500個)の電流値が取得される。
【0037】
次に、制御装置14は、S20でサンプリングした電流値のデータを、予め設定された周波数について離散フーリエ変換(DFT)を行う(S22)。既に述べたように、PCSを原因として配電系統1に発生する電圧フリッカは、所定の周波数領域(例えば、3~15Hz)の変動成分を有している。ここで、S20で電流値をサンプリングするサンプリング間隔が短く設定され、その結果、解析対象となるデータ数(サンプリング数)は多くなっている。このため、実施例2では、制御装置14の演算処理の負荷を低減するため、電圧フリッカが発生する周波数領域(例えば、3~15Hz)に、解析対象となる周波数を複数(例えば、6個)だけ設定し、その設定した周波数(例えば、4,6,8,10,12,14Hz)の近傍(例えば、±0.03Hz)について離散フーリエ変換を行うように構成されている。なお、解析対象となる周波数については、負荷側の無効電流を予め解析し、解析結果に基づいて決定することができる。また、制御装置14の演算処理能力を高めることで、実施例1と同様、無効電流フリッカが発生する周波数領域(例えば、3~15Hz)の全域を解析対象としてもよい。
【0038】
次に、制御装置14は、S22の離散フーリエ変換の結果に基づいて、各周波数についてフリッカ成分の振幅及び位相を検出する(S24)。すなわち、S22の離散フーリエ変換は、予め設定された複数の周波数(例えば、4,6,8,10,12,14Hz)について行われている。S24では、複数の周波数のそれぞれについて、フリッカ成分の振幅及び位相を検出する。
【0039】
次に、制御装置14は、S24で検出された振幅及び位相に基づいて、無効電流フリッカを打ち消すための無効電力量を算出し(S26)、算出された無効電力量をインバータ11を駆動して配電系統1に出力する(S28)。S24では、予め設定された複数の周波数のそれぞれについてフリッカ成分の振幅及び位相を検出しているため、S26では複数の周波数のそれぞれについて、当該フリッカ成分を打ち消すための無効電力量を算出し、S28では算出した無効電力量をそれぞれ出力する。S26の無効電力量の算出及びS28の無効電力量の出力は、複数の周波数に予め順番を設定し、その順番に従って行われる。すなわち、予め設定された周波数順に無効電力量を算出し、算出された無効電力量を出力する。無効電力量が算出されると直ちに無効電力量が出力され、全ての周波数について無効電力量が算出されることを待つことはない。このため、フリッカ成分を早期に低減することができる。
【0040】
なお、無効電力量の出力は、予め設定された周波数順ではなく、振幅の大きい周波数から出力するようにしてもよい。すなわち、S24においては、予め設定された複数の周波数のそれぞれについて、フリッカ成分の振幅と位相が検出されている。このため、振幅の大きい順に、無効電力量の算出(S26)及び無効電力量の出力(S28)を行うようにしてもよい。このような形態をよると、振幅の大きなフリッカ成分から順に打ち消されるため、フリッカ成分を効果的に低減することができる。なお、フリッカ低減処理の周期によってフリッカ成分の振幅の大きさが変化する場合は、周期毎に、振幅の大きい順に無効電力量の算出(S26)及び無効電力量の出力(S28)を行うようにする。これによって、負荷側の無効電流の変化に応じて、効果的にフリッカ成分を打ち消すことができる。
【0041】
以下、制御装置14は、S20~S28の処理を繰り返し実行する。ここで、実施例2のフリッカ低減処理では、無効電流フリッカが発生する周波数領域に、予め解析対象となる複数の周波数を設定し、設定した周波数について離散フーリエ変換(DFT)を行う。このため、サンプリングした負荷側の無効電流を解析して無効電力量を算出する処理を短時間で行うことができる。そこで、実施例2のフリッカ低減処理では、負荷側の無効電流のサンプリング(S20)の後、直ちに無効電力量の出力(S28)を行っている。
【0042】
すなわち、図6に示すように、制御装置14が起動すると(t=0秒)、まず、制御装置14は、電流センサ7から入力する負荷側の無効電流をサンプリングする(S1(t=0~1秒))。次いで、制御装置14は、t=0~1秒の間にサンプリングした系統電圧に基づいて無効電力量を算出し(S22~S26)、その算出した無効電力量を配電系統1に出力する(O1(t=1~2秒))。この動作と同時に、制御装置14は、次の周期のフリッカ低減処理を開始し、電流センサ7から入力する負荷側の無効電流をサンプリングする(S2(t=1~2秒))。以下、同様に、無効電力量の配電系統1への出力(O2)と負荷側の無効電流のサンプリング(S3)が同時に行われ、これらの処理が繰り返し実行される。実施例2においては、負荷側の無効電流のサンプリングの後、直ちに無効電力量の出力を行うため、短時間で系統電圧に含まれるフリッカ成分を低減することが可能となる。すなわち、図7に示すように、無効電流のサンプリング(S1(t=0~1000mm秒))で検出されたフリッカ成分が、無効電力量の配電系統1への出力(O1(t=1000~2000mm秒)によって直ちに打ち消すことができる。
【0043】
実施例2の電圧調整装置10によっても、配電系統1の負荷側の無効電流に含まれるフリッカ成分を低減することができる。特に、実施例2では、負荷側の無効電流に含まれるフリッカ成分に限定することで、短時間でフリッカ成分を低減することができる。具体的には、従来技術のフィードバック制御を行うだけでは、配電系統1に発生する無効電流フリッカの周波数が高くなるほど応答遅れにより無効電流フリッカを低減することは困難であった。しかしながら、無効電流フリッカを打ち消す無効電力量を1秒サンプリングして次の1秒で配電系統1に出力するため、出力開始後の最短低減時間(例えば、t=1秒以降)で無効電流フリッカを打ち消すことができる。
【0044】
(他の変形例)
上記実施例2では、無効電流に基づいて負荷側の無効電流フリッカを抑制する制御を行っていたが、有効電流に基づいて負荷側の有効電流フリッカを抑制する制御を行ってもよい。このようにしても、フリッカ成分を早期に低減することができる。
【0045】
以上、本発明の具体例を詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成し得るものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0046】
1:配電系統
2:開閉器
3:変圧器
4:負荷
5:電圧センサ
6,7:電流センサ
10:電圧調整装置
11:インバータ
12:連系リアクトル
13:コンデンサ
14:制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7