(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176704
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両側部構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B62D25/04 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095454
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 経雄
(74)【代理人】
【氏名又は名称】田渕 智雄
(72)【発明者】
【氏名】田之上 大樹
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 将太
【テーマコード(参考)】
3D203
【Fターム(参考)】
3D203AA02
3D203BB13
3D203BB55
3D203CA52
3D203CA53
3D203CA54
(57)【要約】
【課題】ルーフクラッシュ試験時にセンタピラーの車両後方への変形を抑制できる、車両側部構造の提供。
【解決手段】ブレース40の後脚部42が、ロッカアウタ20のコ字形状部21の上方に位置しており、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部42eを有する。そのため、センタピラーアウタ30に車両後方へのモーメントMが作用してセンタピラーアウタ30が変形したときに、後脚部42がロッカアウタ20のコ字形状部21の上面と接触する。よって、センタピラーアウタ30の車両後方へのモーメントMをキャンセルさせる荷重Fを発生させることができ、センタピラーの車両後方への変形(センタピラーの後側の壁が変形してセンタピラーが倒れるモード)を抑制できる。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びており、下部で車両前後方向に延びるロッカアウタと接続されるセンタピラーアウタと、
前記センタピラーアウタの下端部に設けられるブレースと、
を有し、
前記ロッカアウタは、延び方向である車両前後方向と直交する横断面視で、車幅方向内側に開放するコ字形状部と、該コ字形状部の上壁部の車幅方向内側端部から上方に向って延びる上方フランジ部と、前記コ字形状部の下壁部の車幅方向内側端部から下方に向って延びる下方フランジ部と、を有するハット形状となっており、
前記ブレースは、車幅方向から見たときに、上下方向に延びる前脚部、該前脚部より車両後方位置で上下方向に延びる後脚部、および前記前脚部と前記後脚部を繋いでおり車両前後方向に延びる接続部、を有する逆U字形状となっており、
前記後脚部は、前記ロッカアウタのコ字形状部の上方に位置しており、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部を有する、車両側部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両側部構造に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、センタピラーの下部とロッカ(サイドシル)とをつなぐセンタピラーインナロアを開示している。
【0003】
ところで、車両のルーフクラッシュ試験(FMVSS 216:Federal Motor Vehicle Safety Standards 216)では、車両に荷重を加えるデバイスの角度を正面視で25°、側面視で5°として車両を押すため、側面視で5°の角度で車両を押すことでセンタピラーに車両後方のモーメントが作用する。しかし、上記公報開示の技術では、このモーメントに反作用させる構造に関して記載が無い。よって、ルーフクラッシュ試験時にセンタピラーの車両後方への変形を抑制する点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ルーフクラッシュ試験時にセンタピラーの車両後方への変形を抑制できる、車両側部構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成する本発明はつぎの通りである。
(1) 上下方向に延びており、下部で車両前後方向に延びるロッカアウタと接続されるセンタピラーアウタと、
前記センタピラーアウタの下端部に設けられるブレースと、
を有し、
前記ロッカアウタは、延び方向である車両前後方向と直交する横断面視で、車幅方向内側に開放するコ字形状部と、該コ字形状部の上壁部の車幅方向内側端部から上方に向って延びる上方フランジ部と、前記コ字形状部の下壁部の車幅方向内側端部から下方に向って延びる下方フランジ部と、を有するハット形状となっており、
前記ブレースは、車幅方向から見たときに、上下方向に延びる前脚部、該前脚部より車両後方位置で上下方向に延びる後脚部、および前記前脚部と前記後脚部を繋いでおり車両前後方向に延びる接続部、を有する逆U字形状となっており、
前記後脚部は、前記ロッカアウタのコ字形状部の上方に位置しており、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部を有する、車両側部構造。
(2) 前記ブレースの前脚部と前記後脚部は、それぞれ下端部が前記ロッカアウタの上方フランジ部の車幅方向外方に位置する、(1)記載の車両側部構造。
【発明の効果】
【0007】
上記(1)の車両側部構造によれば、つぎの効果を得ることができる。
ブレースの後脚部が、ロッカアウタのコ字形状部の上方に位置しており、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部を有するため、車両のルーフクラッシュ試験時であってセンタピラーアウタに車両後方へのモーメントが作用してセンタピラーアウタが変形したとき、ロッカアウタのコ字形状部の上面と接触してセンタピラーアウタの車両後方へのモーメントをキャンセルさせる荷重を発生させることができる。よって、センタピラーの車両後方への変形(センタピラーの後側の壁が変形してセンタピラーが倒れるモード)を抑制できる。
【0008】
上記(2)の車両側部構造によれば、つぎの効果を得ることができる。
ブレースの前脚部と後脚部が、それぞれ下端部がロッカアウタの上方フランジ部の車幅方向外方に位置するため、車両の側面衝突試験時であってセンタピラーアウタが車幅方向内側に変形したとき、ロッカアウタの上方フランジ部に接触してセンタピラーアウタの車幅方向内側への荷重をロッカに伝達させることができる。よって、センタピラーの車幅方向内側への変形を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明実施例の車両側部構造の、車幅方向内側かつ前上側から見た斜視図である。
【
図2】本発明実施例の車両側部構造の、ルーフクラッシュ試験時にセンタピラーに作用するモーメントと該モーメントをキャンセルさせる荷重との関係を示す、
図1と同方向から見た斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、図面を参照して、本発明実施例の車両側部構造10について説明する。なお、図中、UPは車両上方、FRは車両前方を示す。
【0011】
車両側部構造10は、
図1に示すように、上下方向に延びており下部でロッカアウタ20と接続されるセンタピラーアウタ(Bピラーアウタ)30と、センタピラーアウタ30の下端部に設けられるブレース40と、を有する。
【0012】
ロッカアウタ20は、車両の車幅方向両側部の下部に、車両前後方向に延びて設けられている。ロッカアウタ20は、延び方向である車両前後方向と直交する横断面視で、車幅方向内側に開放するコ字形状部21と、コ字形状部21の上壁部21aの車幅方向内側端部から上方に向って延びる上方フランジ部22と、コ字形状部21の下壁部21bの車幅方向内側端部から下方に向って延びる下方フランジ部23と、を有するハット形状となっている。ロッカアウタ20は、ロッカアウタ20の車幅方向内側に配置される図示略のロッカインナと上方フランジ部22および下方フランジ部23で接合されている。ロッカアウタ20は、ロッカインナと協働して車両前後方向に延びる閉断面部を有するロッカを形成している。
【0013】
センタピラーアウタ30は、延び方向である上下方向と直交する横断面視で、車幅方向内側に開放するコ字形状部31と、コ字形状部31の前壁部31aの車幅方向内側端部から車両前方に向って延びる前方フランジ部32と、コ字形状部31の後壁部31bの車幅方向内側端部から車両後方に向って延びる後方フランジ部33と、を有するハット形状となっている。センタピラーアウタ30は、センタピラーアウタ30の車幅方向内側に配置される図示略のセンタピラーインナと前方フランジ部32および後方フランジ部33で接合されている。センタピラーアウタ30は、センタピラーインナと協働して上下方向に延びる閉断面部を有するセンタピラーを形成している。センタピラーアウタ30は、下部で、ロッカアウタ20の車両前後方向中間部に接合されている。
【0014】
ブレース40は、NV(Noise Vibration)対応のブレースであり、センタピラーアウタ30の車幅方向内側に配置される。ブレース40は、
図2に示すように、車幅方向から見たときに、上下方向に延びる前脚部41、前脚部41より車両後方位置で上下方向に延びる後脚部42、および前脚部41と後脚部42を繋いでおり車両前後方向に延びる接続部43、を有する逆U字形状となっている。
【0015】
前脚部41と後脚部42のそれぞれの下端部41-1、42-1は、センタピラーアウタ30に車両後方へのモーメントが作用しておらず、さらに、センタピラーアウタ30に車幅方向内側への衝撃荷重が作用していないとき(通常時)、ロッカアウタ20に接触していてもよく、接触していなくてもよい。また、ロッカアウタ20に接触している場合には、ロッカアウタ20に接合されていてもよい。なお、以下、本発明実施例では、通常時に、前脚部41と後脚部42のそれぞれの下端部41-1、42-1がロッカアウタ20の上方フランジ部22に接触しており接合される場合を説明する。
【0016】
図1に示すように、前脚部41は、下端部でロッカアウタ20の上方フランジ部22に車幅方向外側から接合されるとともに該上方フランジ部22との接合部より上方位置でセンタピラーアウタ30の前方フランジ部32に接合される前脚側内側面部41aと、前脚側内側面部41aの車両後側端部から車幅方向外側に折れ曲がって延びる前脚側外方延出面部41bと、前脚側外方延出面部41bの車幅方向外側端部から車両後方に折れ曲がって延びておりセンタピラーアウタ30のコ字形状部31の車幅方向延び部31cと接合される前脚側外側面部41cと、を有する。なお、前脚側内側面部41aの下端部は、前脚部41の下端部41-1にある。また、図中、符号41dは、前脚部41とロッカアウタ20またはセンタピラーアウタ30との接合部(スポット溶接等による溶接部)を示している。
【0017】
前脚部41は、ロッカアウタ20のコ字形状部21の上方に位置している。前脚部41の下端部41-1は、ロッカアウタ20の上方フランジ部22の車幅方向外方に位置している。
【0018】
後脚部42は、下端部でロッカアウタ20の上方フランジ部22に車幅方向外側から接合されるとともに該上方フランジ部22との接合部より上方位置でセンタピラーアウタ30の後方フランジ部33に接合される後脚側内側面部42aと、後脚側内側面部42aの車両前側端部から車幅方向外側に折れ曲がって延びる後脚側外方延出面部42bと、後脚側外方延出面部42bの車幅方向外側端部から車両前方に折れ曲がって延びておりセンタピラーアウタ30のコ字形状部31の車幅方向延び部31cと接合される後脚側外側面部42cと、を有する。なお、後脚側内側面部42aの下端部は、後脚部42の下端部42-1にある。また、図中、符号42dは、後脚部42とロッカアウタ20またはセンタピラーアウタ30との接合部(スポット溶接等による溶接部)を示している。
【0019】
後脚部42は、ロッカアウタ20のコ字形状部21の上方に位置している。後脚部42の下端部42-1は、ロッカアウタ20の上方フランジ部22の車幅方向外方に位置している。
【0020】
後脚部42は、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部42eを有している。傾斜部42eは、上下方向に延びる後脚部42の少なくとも下端部42-1に設けられており、後脚部42の上下方向の一部のみに設けられていてもよく全域にわたって設けられていてもよい。傾斜部42eは、センタピラーアウタ30に作用する車両後方へのモーメントMをキャンセルさせる荷重F(ともに
図2)を効率よく発生させるために、車幅方向から見たときに直線状に延びていることが望ましい。
【0021】
接続部43は、上下方向と直交する断面視で、車幅方向内側に開放するコ字形状でありセンタピラーアウタ30のコ字形状部31の車幅方向延び部31cと接合される接続部側コ字形状部43aと、接続部側コ字形状部43aの前壁部43a1の車幅方向内側端部から車両前方に向って延びておりセンタピラーアウタ30の前方フランジ部32と接合される接続部側前方フランジ部43bと、接続部側コ字形状部43aの後壁部43a2の車幅方向内側端部から車両後方に向って延びておりセンタピラーアウタ30の後方フランジ部33に接合される接続部側後方フランジ部43cと、を有する。なお、図中、符号43dは、接続部43とセンタピラーアウタ30との接合部(スポット溶接等による溶接部)を示している。
【0022】
つぎに、本発明実施例の作用、効果を説明する。
【0023】
(A)ブレース40の後脚部42が、ロッカアウタ20のコ字形状部21の上方に位置しており、下方へ向かうほど車両前方に位置するように傾斜して延びる傾斜部42eを有するため、車両のルーフクラッシュ試験時であってセンタピラーアウタ30に車両後方へのモーメントMが作用してセンタピラーアウタ30が変形したとき、ロッカアウタ20のコ字形状部21の上面と接触してセンタピラーアウタ30の車両後方へのモーメントMをキャンセルさせる荷重Fを発生させることができる(
図2)。よって、センタピラーの車両後方への変形(センタピラーの後側の壁が変形してセンタピラーが倒れるモード)を抑制できる。
【0024】
(B)ブレース40の前脚部41と後脚部42が、それぞれ下端部41-1、42-1がロッカアウタ20の上方フランジ部22の車幅方向外方に位置するため、車両の側面衝突試験時であってセンタピラーアウタ30が車幅方向内側に変形したとき、ロッカアウタ20の上方フランジ部22に接触してセンタピラーアウタ30の車幅方向内側への荷重をロッカに伝達させることができる。よって、センタピラーの車幅方向内側への変形を抑制できる。
【0025】
以上、本発明実施例では、ブレース40の前脚部41と後脚部42のそれぞれの下端部41-1、42-1が、通常時に、ロッカアウタ20に接合される場合を説明したが、前述したように、それぞれの下端部41-1、42-1は、ロッカアウタ20に接合されていなくてもよい。この場合、ブレース40とロッカとの接合が不要になるため、ブレース40とロッカの搬送時の荷姿が大きくなることを抑制でき、搬送時の搬送量を増大できる。
【符号の説明】
【0026】
10 車両側部構造
20 ロッカアウタ
21 ロッカアウタのコ字形状部
21a ロッカアウタのコ字形状部の上壁部
21b ロッカアウタのコ字形状部の下壁部
22 上方フランジ部
23 下方フランジ部
30 センタピラーアウタ
31 センタピラーアウタのコ字形状部
32 センタピラーアウタの前方フランジ部
33 センタピラーアウタの後方フランジ部
40 ブレース
41 ブレースの前脚部
41-1 ブレースの前脚部の下端部
42 ブレースの後脚部
42e 傾斜部
42-1 ブレースの後脚部の下端部
43 ブレースの接続部