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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176705
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ボンディング装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/60 20060101AFI20241212BHJP
   H01L 21/52 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01L21/60 311T
H01L21/52 F
H01L21/60 311Q
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095455
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000253019
【氏名又は名称】澁谷工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100156199
【弁理士】
【氏名又は名称】神崎 真
(74)【代理人】
【識別番号】100124497
【弁理士】
【氏名又は名称】小倉 洋樹
(72)【発明者】
【氏名】北川 雅人
【テーマコード(参考)】
5F044
5F047
【Fターム(参考)】
5F044PP18
5F044PP19
5F044QQ01
5F047FA01
5F047FA62
5F047FA63
5F047FA65
(57)【要約】
【課題】 半導体チップと基板との接合位置の周囲を高いレベルで雰囲気ガスに置換する。
【解決手段】 半導体ウェハ2(基板)を支持するボンディングステージ4と、半導体チップ1を保持するボンディングヘッド5と、上記ボンディングステージ4の上方に配置されたカバー部材7と、当該カバー部材7と上記基板支持部4aとの間に雰囲気ガスを供給するステージ側ガス供給手段8とを備えたボンディング装置3に関する。
上記ステージ側ガス供給手段8は、雰囲気ガスを流通させるノズル13と、上記カバー部材7とボンディングステージ4との間に設けた整流ガイド14とを備え、上記ノズル13の噴射口13aを上記基板支持部4aに対して一方の側部に隣接した位置に設け、上記噴射口13aを上記基板支持部4aに支持された基板よりも幅広に形成し、整流ガイド14の上部と上記カバー部材7との間に隙間gを形成した。
【選択図】 図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面に基板を支持する基板支持部が形成されたボンディングステージと、半導体チップを保持するボンディングヘッドと、上記ボンディングステージの上方に配置され、上記ボンディングヘッドが通過可能な開口部を有するカバー部材と、当該カバー部材と上記基板支持部との間に雰囲気ガスを供給するステージ側ガス供給手段とを備えたボンディング装置において、
上記ステージ側ガス供給手段は、雰囲気ガスを供給するガス供給源と、当該ガス供給源の雰囲気ガスを流通させるノズルと、上記カバー部材とボンディングステージとの間に設けた整流ガイドとを備え、
上記ノズルの噴射口を上記基板支持部に対して一方の側部に隣接した位置に設けるとともに、上記噴射口を上記基板支持部に支持された基板よりも幅広に形成し、
上記整流ガイドは、上記噴射口に沿って設けられるとともに上記基板支持部の反対側に立設された主ガイド部と、当該主ガイド部の両端部から基板支持部に向けて設けられたサイドガイド部とを備え、さらに上記整流ガイドの上部と上記カバー部材との間に隙間を形成したことを特徴とするボンディング装置。
【請求項2】
上記整流ガイドの上記サイドガイド部は、上記主ガイド部に連接される始端部から平行に伸びる平行区間と、終端部にかけて相互に離間するように形成される末広がり区間とを有することを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項3】
上記ボンディングヘッドは、上記半導体チップを保持する保持部と、上記保持部に保持された半導体チップとボンディングステージに保持された基板との間に雰囲気ガスを供給するヘッド側ガス供給手段とを備え、
上記半導体チップと基板との接合位置近傍における、上記ヘッド側ガス供給手段が形成する雰囲気ガスの流速を、上記ステージ側ガス供給手段が形成する雰囲気ガスの流速よりも高く設定したことを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【請求項4】
上記ノズルの噴射口に抵抗部材を設けて、ノズルの内部を外部雰囲気に対して陽圧にすることを特徴とする請求項1に記載のボンディング装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はボンディング装置に関し、詳しくは半導体チップを基板に接合する際に、上記半導体チップと基板との接合位置の周囲に雰囲気ガスを流通させるボンディング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上面に基板を支持するボンディングステージと、半導体チップを保持するボンディングヘッドと、上記ボンディングステージの上方に配置され、上記ボンディングヘッドが通過可能な開口部を有するカバー部材と、当該カバー部材と上記基板支持部との間に窒素ガスやアルゴンガスなどの雰囲気ガスを供給するステージ側ガス供給手段とを備えたボンディング装置が知られている(特許文献1)。
特許文献1によれば、上記カバー部材とボンディングステージとの間に雰囲気ガスを流通させることで、半導体チップと基板との接合位置の周囲に雰囲気ガスを充満させ、溶融したバンプが固化する際の酸化による接合不良を防止するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7157367号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら特許文献1の構成の場合、雰囲気ガスを噴射する噴射口が基板を囲撓するように配置されているため、各噴射口より排出された雰囲気ガスの流量差によってカバー部材と基板支持部との間に渦が発生してしまい、外部雰囲気を巻き込んで酸素濃度が下がりきらないという問題があった。
このような問題に鑑み、本発明は半導体チップと基板との接合位置の周囲を高いレベルで雰囲気ガスに置換することが可能なボンディング装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち請求項1の発明にかかるボンディング装置は、上面に基板を支持する基板支持部が形成されたボンディングステージと、半導体チップを保持するボンディングヘッドと、上記ボンディングステージの上方に配置され、上記ボンディングヘッドが通過可能な開口部を有するカバー部材と、当該カバー部材と上記基板支持部との間に雰囲気ガスを供給するステージ側ガス供給手段とを備えたボンディング装置において、
上記ステージ側ガス供給手段は、雰囲気ガスを供給するガス供給源と、当該ガス供給源の雰囲気ガスを流通させるノズルと、上記カバー部材とボンディングステージとの間に設けた整流ガイドとを備え、
上記ノズルの噴射口を上記基板支持部に対して一方の側部に隣接した位置に設けるとともに、上記噴射口を上記基板支持部に支持された基板よりも幅広に形成し、
上記整流ガイドは、上記噴射口に沿って設けられるとともに上記基板支持部の反対側に立設された主ガイド部と、当該主ガイド部の両端部から基板支持部に向けて設けられたサイドガイド部とを備え、さらに上記整流ガイドの上部と上記カバー部材との間に隙間を形成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
上記発明によれば、ノズルの噴射口を上記基板支持部に対して一方の側部に設けて、噴射口より噴射した雰囲気ガスを上記整流ガイドによって整流することにより、基板支持部によって支持された基板を覆う、雰囲気ガスによる一方向流を形成することができる。
これにより、渦の発生による外部雰囲気の巻き込みを可及的に防止し、半導体チップと基板との接合位置の周囲の空気を高いレベルで雰囲気ガスに置換することが可能となっている。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本実施例にかかるボンディング装置の側面図
図2】ボンディング装置の平面図
図3】ボンディングヘッドを説明する側面図
図4】ヘッド側ガス供給手段を説明する図
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、図示実施形態について説明すると、図1は、半導体チップ1を基板としての半導体ウェハ2に接合するボンディング装置3を示しており、半導体ウェハ2を支持するボンディングステージ4と、半導体チップ1を保持するボンディングヘッド5と、上記ボンディングステージ4とボンディングヘッド5とを相対移動させる移動手段6とを備えている。
また上記ボンディングステージ4の上方には、上記ボンディングヘッド5が通過可能な開口部7aを有するカバー部材7が設けられ、当該カバー部材7とボンディングステージ4との間には、ステージ側ガス供給手段8が雰囲気ガスを供給するようになっている。
さらに上記ボンディングヘッド5には、当該ボンディングヘッド5に保持された半導体チップ1の周囲に雰囲気ガスを供給するヘッド側ガス供給手段9(図3参照)が設けられている。
そして、上記構成を有するボンディング装置3は、コンピュータなどからなる図示しない制御手段によって制御されるようになっている。
【0009】
上記半導体チップ1は略正方形を有しており、裏面には複数の電極が設けられ、各電極にはハンダからなるバンプが形成されている。
上記半導体ウェハ2は円盤状を有しており、複数の半導体チップ1が接合可能となっている。また上記半導体チップ1を接合する位置には、上記半導体チップ1の電極と同じ配置で電極が設けられ、各電極にはバンプが形成されている。
そして上記ボンディング装置3は、上記ボンディングステージ4とボンディングヘッド5とを相対移動させて、半導体チップ1をボンディングステージ4に支持された半導体ウェハ2の所要の位置に密着させ、その状態で上記バンプを溶融させることにより、半導体チップ1と半導体ウェハ2とを接合するようになっている。
なお、本実施形態を説明する図面においては、説明のため、上記半導体チップ1と半導体ウェハ2との大きさの比率を実際の比率とは異ならせており、半導体チップ1を大きめに表示したものとなっている。
【0010】
上記ボンディングステージ4は、上記半導体ウェハ2を支持する基板支持部4aと、当該基板支持部4aを囲繞する外周ガイド4bとを備え、これらは上記移動手段6を構成するX-Yステージ11によって水平方向に移動可能となっている。
上記基板支持部4aの上面は平坦に加工され、図2に示す平面視においては、上記半導体ウェハ2よりも大径な円形を有している。また基板支持部4aは図示しない吸着手段によってその上面で上記半導体ウェハ2を吸着保持することが可能となっている。
上記外周ガイド4bは上記基板支持部4aの外側を囲繞するように設けられており、その上面は上記基板支持部4aと同じ高さに形成されている。
また外周ガイド4bの大きさは、後述する雰囲気ガスを流通させた際に、半導体ウェハ2の周囲で雰囲気ガスの乱れが生じない程度の広さに設定されている。
【0011】
上記X-Yステージ11は、基板支持部4aの下方に設けられたステージベース11aと、当該ステージベース11aを保持するテーブル11bと、当該テーブル11bの下面に設けられたX方向駆動手段11cおよびY方向駆動手段11dとから構成されている。
X方向駆動手段11cおよびY方向駆動手段11dは従来公知であるため詳細な説明については省略するが、直交するように設けられた一対のレールおよびスライダによって構成されている。
【0012】
上記カバー部材7は、上記ボンディングステージ4の上方に図示しない固定手段によって固定された板状の部材となっており、上記X-Yステージ11によって移動する半導体ウェハ2の移動範囲を十分に覆うことが可能な面積を有している。
カバー部材7には上記ボンディングヘッド5が通過可能な開口部7aが形成されており、ボンディングヘッド5が下降した際には、当該開口部7aとボンディングヘッド5との間に干渉しない程度の隙間が形成されるようになっている。
【0013】
上記ステージ側ガス供給手段8は、雰囲気ガスを供給するガス供給源12と、当該ガス供給源12の雰囲気ガスを流通させるとともに上記ボンディングステージ4に噴射口13aが形成されたノズル13と、当該ノズル13の噴射口13aより噴射された雰囲気ガスを上記基板支持部4aへと導く整流ガイド14と、基板支持部4aを挟んで整流ガイド14に対向した位置に設けられた対向ガイド15とを備えている。
上記ガス供給源12は雰囲気ガスを供給するようになっており、具体的にはNガスやアルゴンガスなどの不活性ガスの他、必要に応じて、水素やギ酸等の還元性ガスを供給するようになっている。
【0014】
上記ノズル13は上記X-Yステージ11のテーブル11bに固定されており、上記基板支持部4aおよび外周ガイド4bと一体的に移動可能に設けられている。またノズル13は上記基板支持部4aに対して図示左方にのみ設けられている。
上記ノズル13は筒状を有した金属製の部材となっており、上記ガス供給源12に接続される供給部13bと、外周ガイド4bの上面に上記噴射口13aを有する排出部13cと、供給部13bと排出部13cとの間に設けられた本体部13dとから構成されている。
図1に示す側面視において、上記供給部13bは水平方向に設けられており、上記ガス供給源12から供給された雰囲気ガスは図示左方から水平に流入するようになっている。
上記排出部13cは垂直方向に設けられており、上記排出部13cの上端部に形成された噴射口13aは上記基板支持部4aおよび外周ガイド4bの上面と同じ高さに形成されている。
上記本体部13dは、上記供給部13bの端部と上記排出部13cの端部とを接続するように設けられ、具体的には、図1において図示左下に設けられた供給部13bから、図示右上に設けられた排出部13cへと、斜め上方に向けて設けられている。
上記構成を有するノズル13によれば、上記供給部13bに流入して水平方向に流通した雰囲気ガスは、供給部13bと本体部13dとの連結部において斜め上方に流れ、その後上記排出部13cにおいて上方に向けて流通することとなる。
そして、上記排出部13cの端部に形成された噴射口13aからは、雰囲気ガスが垂直上方に向けて噴射され、上部に設けられた上記カバー部材7に対して垂直に衝突するようになっている。
【0015】
図2に示す平面視において、上記噴射口13aの長手方向の幅は、上記基板支持部4aに支持されている半導体ウェハ2の幅よりも広く設定されており、より具体的には上記基板支持部4aの直径よりも幅広に設けられている。
なお、本実施形態の噴射口13aは細長い長方形を有しているが、上記基板支持部4aの形状に倣って円弧状にしたり、中央部を基板支持部4aに対して離隔する方向に突出させた略く字形に形成した物であってもよい。
【0016】
図2において、排出部13cの幅は供給部13bの幅よりも広く設定され、これに対し、上記本体部13dは平面視において上記供給部13bから排出部13cに向けて拡大するテーパ状を有したものとなっている。
ここで当該本体部13dの上記テーパ形状は、平面視において膨出部が相互に接近した円弧形状を有しており、これにより後述する流路面積の増大を徐変させることが可能となっている。
一方、図1において、上記ノズル13における排出部13cの噴射口13aの短手方向の幅は、上記供給部13bの高さよりも狭く設定されている。これにより、側面視において上記本体部13dは上記供給部13bから排出部13cに向けて縮小するテーパ状を有したものとなっている。
ノズル13の本体部13dをこのような形状とすることにより、上記供給部13bから排出部13cにかけて、本体部13dの各部の断面開口が徐々に増大するようになっており、上記本体部13dを流通する間に雰囲気ガスによる渦が形成されるのを防止するものとなっている。
【0017】
次に、上記ノズル13の噴射口13aには、抵抗部材としてのメッシュ状部材16が装着されている。このメッシュ状部材16としては、その他にもパンチングメタルなど、金属板に無数の穴を穿設した構成のものでもよい。
上記メッシュ状部材16を噴射口13aに設けることで、雰囲気ガスがメッシュ状部材16を通過する際に圧力損失を発生させ、ノズル13の内部を外部雰囲気に対して陽圧にすることができる。
これにより、ノズル13を流通して噴射口13aから雰囲気ガスが噴射される際に、噴射口13aの全体から均一した圧力で雰囲気ガスを噴射することが可能となる。
【0018】
上記整流ガイド14は、上記噴射口13aに沿って上記基板支持部4aの反対側に立設された主ガイド部14aと、当該主ガイド部14aの両端部から基板支持部4aに向けて設けられたサイドガイド部14bとを備え、上記主ガイド部14aおよびサイドガイド部14bの上部には、上記カバー部材7との間に隙間gが形成されている。
上記主ガイド部14aは上記噴射口13aに対して所定距離離隔した位置に設けられており、主ガイド部14aと噴射口13aとの間には上記基板支持部4aと同じ高さで底板14cが設けられている。
上記サイドガイド部14bは、上記主ガイド部の両端部より平行に伸びる平行区間を有するとともに、平行区間の端部から徐々に離間するように形成される末広がり区間14dを備えている。
【0019】
上記対向ガイド15は上記整流ガイド14に対して、上記基板支持部4aを挟んで対称に構成され、上記基板支持部4aの反対側に立設された主ガイド部15aと、当該主ガイド部15aの両端部に設けられたサイドガイド部15bとを備え、上記カバー部材7との間には隙間gが形成されている。
主ガイド部15aと外周ガイド4bとの間には、上記基板支持部4aと同じ高さで底板15cが設けられ、また上記サイドガイド部15bの平行区間の先端部には末広がり区間15dとから構成されている。
【0020】
上記構成を有するステージ側ガス供給手段8によれば、上記ボンディングステージ4とカバー部材7との間に、図1図2に示す雰囲気ガスの流れを形成することができる。
つまり、上記ガス供給源12から上記ノズル13に対して雰囲気ガスを供給すると、図1に示す側面視において、当該ノズル13を流通した雰囲気ガスは上記基板支持部4aと同じ高さに形成された噴射口13aより垂直上方に向けて噴射される。
このとき、上記本体部13dがテーパ状に形成されており、断面開口が徐々に大きくなるように形成されていることから、ノズル13の内部において流量差による渦の発生が抑制され、雰囲気ガスが整流された状態で噴射されるようになっている。
さらに、上記噴射口13aには上記メッシュ状部材16が設けられており、ノズル13の内部が外部雰囲気に対して陽圧になることから、噴射口13aの全体から均一な圧力で雰囲気ガスが噴射されるようになっている。
このようにして噴射口13aから噴射された雰囲気ガスは、上記カバー部材7に衝突すると水平方向に拡散するが、その大部分(例えば8割程度)は上記整流ガイド14によって導かれて、図示右方の基板支持部4aに向けて流通する。
一方、図示左方に向けて拡散した雰囲気ガスは、上記整流ガイド14とカバー部材7との隙間gから整流ガイド14の外部に排出され、これにより整流ガイド14よりも図示左方に位置する外部雰囲気が上記隙間gからカバー部材7とボンディングステージ4との間に入り込むのを阻止するようになっている。
【0021】
一方、図2に示す平面視において、上記噴射口13aは基板支持部4aよりも幅広に形成されていることから、上記噴射口13aより噴射され、その後上記整流ガイド14によってガイドされた雰囲気ガスは、上記基板支持部4aに支持された半導体ウェハ2全体を覆う一方向流を形成するようになっている。
また噴射口13aより噴射された雰囲気ガスのうち、上記整流ガイド14のサイドガイド部14bに沿って流通した雰囲気ガスは、当該サイドガイド部14bの末広がり区間14dに沿って流通することにより、整流ガイド14から拡散された状態で排出されるようになっている。
但し、末広がり区間14dは上記拡散された雰囲気ガスが渦を形成しないような形状に形成されており、基板支持部4aの周囲で外部雰囲気を巻き込まないようになっている。
そして、上記基板支持部4aを超えて整流ガイド14の反対側に上記対向ガイド15を設けたことにより、上記基板支持部4aを超えて流通した雰囲気ガスを整流した状態のまま収容することができる。
対向ガイド15に収容された雰囲気ガスは、図1に示すように対向ガイド15の上部とカバー部材7との隙間gから排出され、外部雰囲気が上記隙間gからカバー部材7とボンディングステージ4との間に入り込むのを阻止するようになっている。
【0022】
図3図4は上記ボンディングヘッド5を説明する図となっており、その構成は特開2022―174463号公報に記載のボンディングヘッド5と略同様の構成となっている。
上記ボンディングヘッド5は、レーザ光Lを照射するレーザ光照射手段21と、上記移動手段6を構成する昇降手段22によって昇降可能に設けられたハウジング23と、当該ハウジング23の下部に設けられて上記半導体チップ1を負圧によって吸着保持する保持部24と、吸着された半導体チップ1の周囲に雰囲気ガスを供給する上記ヘッド側ガス供給手段9とを備えている。
上記レーザ光照射手段21はレーザ光Lを下方に向けて照射し、保持部24の下面に吸着保持された半導体チップ1にレーザ光Lを照射することで、当該半導体チップ1および半導体ウェハ2の電極に形成された上記バンプを溶融させるものとなっている。
なお、上記レーザ光照射手段21に代えて、パルスヒーター等の公知の加熱手段を用いて、上記半導体チップ1および半導体ウェハ2の電極に形成されたバンプを溶融させるようにしてもよい。
そして上記昇降手段22は、上記ボンディングヘッド5を上下方向(Z方向)に昇降させるように構成され、また図示しないがボンディングヘッド5ごと上記半導体チップ1を回転させる回転機構を備えている。
【0023】
上記保持部24は、透明な2枚のプレート24aと、当該プレート24aの外周部分を保持するホルダ24bとを備えており、また保持部24には負圧を供給する負圧供給手段24cが接続されている。
上記2枚のプレート24aはレーザ光照射手段21からのレーザ光Lを透過させる石英やガラス等の透明な素材によって構成されており、図4に示すように上記半導体チップ1よりも大きな面積を有した略正方形を有している。
上記2枚のプレート24aの間には、当該プレート24aの外周縁に沿って無端状に設けられたスペーサ24dが設けられており、これにより2枚のプレート24aの間に空間が形成されるようになっている。
上記ホルダ24bは、上記2枚のプレート24aおよびスペーサ24dを囲繞するように設けられ、上記レーザ光照射手段21が照射したレーザ光Lが上記2枚のプレート24aを上方から下方へと透過するのを許容するようになっている。
【0024】
また上記ホルダ24bおよび上記スペーサ24dには、上記負圧供給手段24cに連通する負圧通路Rが形成されており、当該負圧通路Raを介して供給された負圧は上記プレート24aとプレート24aとの間に形成された空間に流入するようになっている。
上記2枚のプレート24aのうち、下方側に設けられたプレート24aの略中央部には上下方向に貫通穴が形成されており、上記空間に供給された負圧によって当該半導体チップ1がプレート24aの下面に吸着されるようになっている。
そして上記負圧供給手段24cは上記制御手段によって制御され、負圧の供給を制御することで上記半導体チップ1の吸着保持および解除を行うことが可能となっている。
【0025】
上記ヘッド側ガス供給手段9は、上記ガス供給源12に接続されており、上記保持部24を構成するホルダ24bのさらに外周を囲繞するフレーム9aによって構成されている。
上記フレーム9aは開口部7aが内側を向いた断面略コ字型を有しており、フレーム9aと上記ホルダ24bの外周面との間には上記ホルダ24bを無端状に囲繞する空間が形成され、当該空間には上記フレーム9aに形成されたガス通路Rbを介して上記ガス供給源12が接続されている。
本実施例において、上記ガス通路Rbは図2に示すように上記フレーム9aの四隅に設けられており、上記ガス供給源12から分岐配管を介して各ガス通路Rbに接続されている。
そして、上記フレーム9aの下部には、上記ホルダ24bの外周面との間にスリットSが形成されており、このスリットSは上記フレーム9aの内側に形成される空間に連通することで、上記空間に供給された雰囲気ガスを下方に向けて噴射するようになっている。
【0026】
図4に示すように、上記スリットSは略正方形を有した上記保持部24の各辺に対応する位置に設けられており、より具体的には上記ホルダ24bの外周縁に沿って無端状に略正方形に形成されたものとなっている。
そして本実施例のボンディング装置3では、図示左方に位置する1つのスリットSを幅広スリットSLとし、他の3つのスリットSを幅狭スリットSSとしている。例えば幅広スリットSLの開口面積を幅狭スリットSSに対して10倍程度に設定したものとなっている。
このような構成とすることにより、上記幅広スリットSLから上記幅狭スリットSSよりも大きな流量で雰囲気ガスを噴射することが可能となっている。
【0027】
上記構成を有するヘッド側ガス供給手段9によれば、上記ガス供給源12が供給した雰囲気ガスはガス通路Rbを介して上記フレーム9aの内部に形成された空間に供給され、フレーム9aとホルダ24bとの間に形成されたスリットSから下方に向けて噴射される。
図3に示すように、スリットSから噴射された雰囲気ガスは、下方に位置する半導体ウェハ2やボンディングステージ4の表面に衝突すると、半導体ウェハ2やボンディングステージ4に沿って広がるように流れる。
このとき、本実施例のボンディング装置3では、上記保持部24を囲繞する4つのスリットSのうち、一つを幅広スリットSLとし、その他を幅狭スリットSSとしている。
このような構成とすることで、図1に示すように、噴出流量の大きな幅広スリットSLから排出された雰囲気ガスが、当該幅広スリットSLに対して半導体チップ1を挟んで対向した位置に設けた、噴出流量の小さな幅狭スリットSSに向けて流通し、ボンディングヘッド5の下方で半導体チップ1を横切るような流れを形成するようになっている。
【0028】
以下、上記構成を有するボンディング装置3の動作を説明する。
最初に、制御手段はボンディングヘッド5の下方に示しないチップ供給手段(リレーステージ)を移動させ、ボンディングヘッド5を下降させるとともに、上記保持部24に半導体チップ1を吸着保持させる。
一方、制御手段は図示しない基板供給手段によって、上記ボンディングステージ4の所要の位置に上記半導体ウェハ2を供給し、ボンディングステージ4は当該半導体ウェハ2を吸着保持する。
続いて、制御手段は図示しない撮影手段を用いて、上記ボンディングヘッド5に吸着保持された半導体チップ1と、上記ボンディングステージ4に保持された半導体ウェハ2とを撮影し、これらの相対的な位置関係を認識する。
その後、上記移動手段6はボンディングヘッド5とボンディングステージ4とを相対移動させ、半導体チップ1の電極の位置と、半導体ウェハ2の電極の位置とが一致するよう、半導体チップ1の水平方向における位置の微調整と、水平面内における回転を行う。
【0029】
このようにしてボンディングヘッド5が半導体チップ1を半導体ウェハ2における接合位置の上方に位置し、その後ボンディングヘッド5が下降すると、ボンディングヘッド5は上記カバー部材7の開口部7aを通過し、保持された半導体チップ1がカバー部材7とボンディングステージ4との間に位置することとなる。
図1は、ボンディングヘッド5に保持された半導体チップ1がボンディングステージ4に支持された半導体ウェハ2との接合位置の上方(例えば、ボンディングヘッド5とボンディングステージ4との間の隙間が5mmとなる位置)に位置した状態を示している。
すると、制御手段は上記ヘッド側ガス供給手段9を作動させて、保持部24に保持された半導体チップ1と半導体ウェハ2との間に、図示左方から図示右方へと向かう雰囲気ガスの流れを形成する。
一方、ボンディングステージ4では、上記ステージ側ガス供給手段8がボンディングステージ4とカバー部材7との間に、図示左方から図示右方へと向かう雰囲気ガスの流れを形成している。
これにより、上記ボンディングヘッド5に保持された半導体チップ1と、ボンディングステージ4に支持された半導体ウェハ2との間が、図示左方から図示右方へと向かう雰囲気ガスによって置換されることとなる。
【0030】
ここで、本実施形態においては、上記ヘッド側ガス供給手段9が形成する雰囲気ガスの流速を、上記ステージ側ガス供給手段8が形成する雰囲気ガスの流速よりも高くなるように設定している。
具体的には、例えば上記ヘッド側ガス供給手段9においてガス供給源12が20L/minの流量で雰囲気ガスを供給すると、上記幅広スリットSLから噴射された直後の、図示左方から右方に流通する雰囲気ガスの流速が1.0m/sとなり、その後上記半導体チップ1の接合位置近傍での流速が0.4~0.5m/sとなり、接合位置を超えた下流側での流速が0.2m/sとなった。
これに対し、上記ステージ側ガス供給手段8ではガス供給源12が150L/minの流量でノズル13に雰囲気ガスを供給すると、上記ノズル13の供給部13bにおける流速が5.0~20.0m/sとなった。
そして、上記噴射口13aに上記メッシュ状部材16を設けたことにより、上記噴射口13aの全体から均一に雰囲気ガスが噴射され、その後上記整流ガイド14によって図示左方から右方への流れが形成されると、噴射口13a近傍の流速が1.0m/sとなり、また上記半導体チップ1の接合位置近傍での流速が0.05m/sとなり、基板支持部4aを超えた上記対向ガイド15近傍での流速が0.02~0.04m/sとなった。
【0031】
このように、本実施形態のボンディング装置3では、ステージ側ガス供給手段8およびヘッド側ガス供給手段9がそれぞれ雰囲気ガスを供給することにより、半導体チップ1と半導体ウェハ2との接合位置の周囲の空気を、高いレベルで雰囲気ガスに置換することができる。
まず上記ステージ側ガス供給手段8は、ボンディングステージ4の上面に形成された上記噴射口13aより雰囲気ガスを噴射し、この雰囲気ガスは整流ガイド14によって図示左方から右方へと向かう一方向流を形成している。
一方、ボンディングヘッド5では、上記ヘッド側ガス供給手段9が雰囲気ガスを保持部5の下面に吸着保持した半導体チップ1の周囲に流通させており、また当該雰囲気ガスは上記ステージ側ガス供給手段8が形成した雰囲気ガスと同じ方向、すなわち図2において図示左方から右方へと流れている。
ただし上記ヘッド側ガス供給手段9が形成する雰囲気ガスの方向については、上記ステージ側ガス供給手段8が形成した雰囲気ガスに直交する方向や、逆方向にしてもよく、方向を異ならせることが可能である。
これは、上記ヘッド側ガス供給手段9が形成する雰囲気ガスの流速を、上記ステージ側ガス供給手段8が形成する雰囲気ガスの流速よりも高く設定することにより、上記ヘッド側ガス供給手段9が形成した接合位置近傍の雰囲気ガスを、その周囲の上記ステージ側ガス供給手段8が形成した雰囲気ガスよりも陽圧としているからであり、このようにすることで外部雰囲気の巻き込みをより効果的に抑えることができる。
【0032】
このようにして半導体チップ1と半導体ウェハ2との間の空間が雰囲気ガスによって置換されると、制御手段は上記レーザ光照射手段21を制御してレーザ光Lを半導体チップ1に照射し、上記半導体チップ1のバンプを溶融させ、その後ボンディングヘッド5を下降させて、半導体チップ1を半導体ウェハ2に密着させる。
半導体チップ1を半導体ウェハ2に密着させ、レーザ光照射手段21によるレーザ光Lの照射を停止させると、溶融したバンプが冷却されて固化することとなるが、バンプが完全に固化するまで上記ボンディングヘッド5を待機させると、一つの半導体チップ1の処理に要する時間が長くなってしまう。
本実施形態では、バンプが完全に固化する前にボンディングヘッド5を半導体チップ1から離脱させても、上記ステージ側ガス供給手段8が形成する雰囲気ガスの流れが維持されているため、接合位置への外部雰囲気の巻き込みが防止され、バンプの酸化が防止されるようになっている。
これに対し、ステージ側ガス供給手段8が形成する雰囲気ガスの流れが形成されていない場合、バンプが完全に固化する前にボンディングヘッド5を上昇させてしまうと、上記ヘッド側ガス供給手段9による雰囲気ガスの流れがなくなってしまい、接合位置に外部雰囲気が流入する恐れがある。
【0033】
なお、上記実施形態においては、上記ボンディングヘッド5にヘッド側ガス供給手段9を設けて、半導体チップ1と半導体ウェハ2との接合位置近傍に雰囲気ガスを供給しているが、上記ヘッド側ガス供給手段9を省略することも可能である。
この場合であっても、上記ステージ側ガス供給手段8による雰囲気ガスによって、カバー部材7とボンディングステージ4との間が雰囲気ガスによって置換され、バンプの酸化を防止することができる。
また上記実施形態において、上記整流ガイド14のサイドガイド部14bは平行区間と末広がり区間14dとを備えているが、当該サイドガイド部14bを上記平行区間のみによって構成してもよく、あるいは末広がり区間14のみによって構成してもよい。
【符号の説明】
【0034】
1 半導体チップ 2 半導体ウェハ(基板)
3 ボンディング装置 4 ボンディングステージ
5 ボンディングヘッド 6 移動手段
7 カバー部材 7a 開口部
8 ステージ側ガス供給手段 9 ヘッド側ガス供給手段
13 ノズル 13a 噴射口
13b 供給部 13c 排出部
13d 本体部 14 整流ガイド
15 対向ガイド 16 メッシュ状部材(抵抗部材)
図1
図2
図3
図4