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特開2024-176712液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法
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  • 特開-液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176712
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 55/18 20060101AFI20241212BHJP
   B32B 7/027 20190101ALI20241212BHJP
   B32B 15/08 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 67/03 20060101ALI20241212BHJP
   C08J 5/18 20060101ALI20241212BHJP
   C08J 9/26 20060101ALI20241212BHJP
   B29C 67/20 20060101ALI20241212BHJP
   B29C 44/00 20060101ALI20241212BHJP
   B29K 67/00 20060101ALN20241212BHJP
   B29L 7/00 20060101ALN20241212BHJP
【FI】
B29C55/18
B32B7/027
B32B15/08 J
C08L67/03
C08J5/18 CFD
C08J9/26
B29C67/20 B
B29C67/20 R
B29C44/00 C
B29K67:00
B29L7:00
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095468
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003964
【氏名又は名称】日東電工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100163038
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 武志
(74)【代理人】
【識別番号】100193725
【弁理士】
【氏名又は名称】小森 幸子
(72)【発明者】
【氏名】武田 耕平
(72)【発明者】
【氏名】大西 秀典
(72)【発明者】
【氏名】永見 直斗
【テーマコード(参考)】
4F071
4F074
4F100
4F210
4F214
4J002
【Fターム(参考)】
4F071AA48
4F071AB24
4F071AD02
4F071AE01
4F071AF11Y
4F071AF12
4F071AF54Y
4F071AF61Y
4F071AH13
4F071BA09
4F071BB03
4F071BB04
4F071BC01
4F071BC12
4F074AA65
4F074AC30
4F074AE06
4F074AG20
4F074CB03
4F074CB14
4F074DA02
4F074DA23
4F074DA47
4F100AA08A
4F100AB01B
4F100AB17B
4F100AB33B
4F100AK41A
4F100BA02
4F100BA07
4F100CA23A
4F100DJ00A
4F100EJ172
4F100EJ17A
4F100EJ19A
4F100EJ33A
4F100EJ37A
4F100EJ422
4F100EJ42A
4F100EJ59A
4F100EJ85A
4F100GB43
4F100JA02A
4F100JA04A
4F100JG01B
4F100JG05A
4F100JL04
4F210AA27
4F210AB02
4F210AB11
4F210AB16
4F210AG01
4F210AG03
4F210AG20
4F210AH36
4F210AR06
4F210AR20
4F210QA04
4F210QC02
4F210QD21
4F210QD34
4F210QG01
4F210QG15
4F210QG17
4F210QN01
4F210QN21
4F210QN25
4F210QW31
4F210QW50
4F214AA27
4F214AB02
4F214AB11
4F214AB16
4F214AG01
4F214AG03
4F214AG20
4F214AH36
4F214AR06
4F214AR20
4F214UA07
4F214UA32
4F214UB01
4F214UC04
4F214UG02
4F214UG27
4F214UR27
4F214US06
4F214UW32
4J002CF161
4J002GQ01
(57)【要約】
【課題】 反りが低減された液晶ポリマーフィルムなどの提供。
【解決手段】 液晶ポリマーフィルムであって、
熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる1回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL1)と、前記熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる2回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL2)との差(ΔL1-ΔL2)が、120μm以下である、液晶ポリマーフィルム。
【選択図】図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液晶ポリマーフィルムであって、
熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる1回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL1)と、前記熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる2回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL2)との差(ΔL1-ΔL2)が、120μm以下である、液晶ポリマーフィルム。
【請求項2】
圧延フィルムである、請求項1に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項3】
圧延の際のMD方向における面内配向度が、50%以下である、請求項2に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項4】
20体積%~70体積%のフィラーを含有する、請求項1に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項5】
空孔率が、20%~70%である、請求項1に記載の液晶ポリマーフィルム。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム及び金属層を厚み方向に順に備える低誘電基板材。
【請求項7】
請求項1から5のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム及び導体層を厚み方向に順に備える配線回路基板。
【請求項8】
液晶ポリマーを含有する組成物から形成されたシートを圧延し、圧延フィルムを得る工程と、
前記圧延フィルムを、下記式(1)を満たす熱処理温度で熱処理する工程と、
を含む、液晶ポリマーフィルムの製造方法。
T1<熱処理温度(℃)≦T2 ・・・式(1)
T1:前記液晶ポリマーの融点より100℃低い温度
T2:前記液晶ポリマーの融点
【請求項9】
前記圧延が、1対のロール間に前記シートを通過させることで行われる、請求項8に記載の液晶ポリマーフィルムの製造方法。
【請求項10】
前記圧延が、1対のロール間に積層体を通過させることにより行われ、
前記積層体が、前記シートと、前記シートの第1の面に接して配された第1フィルム状基材と、前記シートの第2の面に接して配された第2フィルム状基材とを有する、
請求項8に記載の液晶ポリマーフィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法、並びに液晶ポリマーフィルムを備える低誘電基板材及び配線回路基板に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ポリマーは、低い吸湿率及び低い誘電率を有する。そのため、液晶ポリマーを用いた液晶ポリマーフィルムは、例えば、FPC(Flexible printed circuits)の絶縁層としての利用が進められている。
【0003】
絶縁層としての液晶ポリマーフィルムは、例えば、銅箔などの金属箔に積層されて用いられる。その際、絶縁層付きの金属箔には、反りが生じないことが求められる。
【0004】
例えば、寸法変化率の異方性が大幅に低減されたLCP押出フィルムとして、熱可塑性液晶ポリマーを含み15μm以上300μm以下の厚みを有するLCP押出フィルムであって、MD方向に平行なフィルム断面に対してナノインデンテーション法で測定した、フィルム表面から厚み方向に1μmに位置する深度1μm点の硬さH1と厚み中心点の硬さH2とが、-10.0≦100×(H2-H1)/H1≦0.0を満たし、且つ、JISK7197に準拠したTMA法によって測定される23~200℃におけるMD方向及びTD方向の線膨張係数が-30~55ppm/Kの範囲内にある、LCP押出フィルムが提案されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2022-91688号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、反りが低減された液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法、並びに液晶ポリマーフィルムを備える低誘電基板材及び配線回路基板を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明は以下を包含する。
【0008】
[1] 液晶ポリマーフィルムであって、
熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる1回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL1)と、前記熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる2回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の前記液晶ポリマーフィルムの寸法変化量(ΔL2)との差(ΔL1-ΔL2)が、120μm以下である、液晶ポリマーフィルム。
[2] 圧延フィルムである、[1]に記載の液晶ポリマーフィルム。
[3] 圧延の際のMD方向における面内配向度が、50%以下である、[2]に記載の液晶ポリマーフィルム。
[4] 20体積%~70体積%のフィラーを含有する、[1]から[3]のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム。
[5] 空孔率が、20%~70%である、[1]から[4]のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム。
[6] [1]から[5]のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム及び金属層を厚み方向に順に備える低誘電基板材。
[7] [1]から[5]のいずれかに記載の液晶ポリマーフィルム及び導体層を厚み方向に順に備える配線回路基板。
[8] 液晶ポリマーを含有する組成物から形成されたシートを圧延し、圧延フィルムを得る工程と、
前記圧延フィルムを、下記式(1)を満たす熱処理温度で熱処理する工程と、
を含む、液晶ポリマーフィルムの製造方法。
T1<熱処理温度(℃)≦T2 ・・・式(1)
T1:前記液晶ポリマーの融点より100℃低い温度
T2:前記液晶ポリマーの融点
[9] 前記圧延が、1対のロール間に前記シートを通過させることで行われる、[8]に記載の液晶ポリマーフィルムの製造方法。
[10] 前記圧延が、1対のロール間に積層体を通過させることにより行われ、
前記積層体が、前記シートと、前記シートの第1の面に接して配された第1フィルム状基材と、前記シートの第2の面に接して配された第2フィルム状基材とを有する、
[8]に記載の液晶ポリマーフィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、反りが低減された液晶ポリマーフィルム、及びその製造方法、並びに液晶ポリマーフィルムを備える低誘電基板材及び配線回路基板を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の低誘電基板材の一実施形態の概略断面図である。
図2図2は、本発明の低誘電基板材の他の一実施形態の概略断面図である。
図3図3は、本発明の配線回路基板の一実施形態の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(液晶ポリマーフィルム)
本発明の液晶ポリマーフィルムにおいては、寸法変化量(ΔL1)と寸法変化量(ΔL2)との差(△L1-ΔL2)が、120μm以下である。
寸法変化量(ΔL1)は、熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる1回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の液晶ポリマーフィルムの寸法変化量である。なお、寸法変化量(ΔL1)は、1回目の昇温及び降温の前後のフィルムの寸法の差であり、1回目の昇温及び降温後のフィルムの長さ(L1after)と、1回目の昇温及び降温前のフィルムの長さ(L1before)との差(L1after-L1before)である。
寸法変化量(ΔL2)は、熱機械分析装置を用いて40℃から200℃に温度上昇させる2回目の昇温後、200℃から40℃に降温させた際の液晶ポリマーフィルムの寸法変化量である。なお、寸法変化量(ΔL2)は、2回目の昇温及び降温の前後のフィルムの寸法の差であり、2回目の昇温及び降温後のフィルムの長さ(L2after)と、2回目の昇温及び降温前のフィルムの長さ(L2before)との差(L2after-L2before)である。
なお、寸法変化量の測定方法については後の実施例で記載するが、試験サンプルの有効長さ(チャック間の長さ)は、24mmである。
なお、寸法変化量とは、フィルムの厚みの変化量ではなく、フィルムの長さの変化量を指す。フィルムの長さとは、フィルムの厚み方向と直交する方向のフィルムの長さを指す。
【0012】
本発明者らは、反りが低減された液晶ポリマーフィルムを得るために鋭意検討を行った。
反りには液晶ポリマーフィルムを製造する際に生じる残留応力が大きく影響していると、本発明者らは考えた。そこで、本発明者らは、液晶ポリマーフィルムを熱処理して残留応力の緩和を試みたところ、反りが低減された液晶ポリマーフィルムを得ることができた。
残留応力が緩和されているかどうかは、熱機械分析装置を用いた液晶ポリマーフィルムの寸法変化量の測定によって、知ることができる。ただし、液晶ポリマーフィルムの寸法変化には、試験サンプルの装置へのセット時に生じる撚れ等のノイズに起因する寸法変化もあるため、熱機械分析装置を用いた寸法変化量の測定において、1回目の昇温及び降温の寸法変化量のみを測定しても、残留応力の緩和を正しく把握することはできない。そこで、本発明者らは、1回目の昇温及び降温による寸法変化量(ΔL1)と、2回目の昇温及び降温による寸法変化量(ΔL2)との差(ΔL1-ΔL2)に着目した。1回目の昇温及び降温の寸法変化量(ΔL1)には、残留応力による寸法変化量と試験サンプルの装置へのセット時に生じる撚れ等のノイズに起因する寸法変化量とが含まれている。他方、1回目の昇温及び降温によって試験サンプルの応力は緩和されているため、2回目の昇温及び降温の寸法変化量(ΔL2)には、試験サンプルの装置へのセット時に生じる撚れ等のノイズに起因する寸法変化量は含まれるが、残留応力による寸法変化量は含まれない。そのため、差(ΔL1-ΔL2)は、残留応力を反映した寸法変化量となる。
そして、差(ΔL1-ΔL2)が120μm以下であると、反りが十分に低減できる液晶ポリマーフィルムが得られる。
【0013】
差(ΔL1-ΔL2)は、120μm以下であれば、特に限定されないが、100μm以下が好ましい。
差(ΔL1-ΔL2)の下限値としては、特に限定されないが、例えば、差(ΔL1-ΔL2)は、0μm以上であってもよいし、10μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよいし、40μm以上であってもよい。
【0014】
寸法変化量(ΔL1)としては、特に限定されないが、150μm以下が好ましく、130μm以下がより好ましく、110μm以下が特に好ましい。
寸法変化量(ΔL1)の下限値としては、特に限定されないが、20μm以上であってもよいし、40μm以上であってもよいし、60μm以上であってもよい。
【0015】
寸法変化量(ΔL2)としては、特に限定されないが、40μm以下が好ましく、30μm以下がより好ましく、20μm以下が特に好ましい。
寸法変化量(ΔL2)の下限値としては、特に限定されないが、0μm以上であってもよいし、1μm以上であってもよい。
【0016】
液晶ポリマーフィルムは、液晶ポリマーを含有する。
液晶ポリマーは、限定されない。液晶ポリマーは、液晶性の熱可塑性樹脂である。液晶ポリマーとしては、例えば、液晶ポリエステル、好ましくは、芳香族液晶ポリエステルが挙げられる。液晶ポリマーは、例えば、特開2020-147670号公報、および、特開2004-189867号公報に具体的に記載される。
液晶ポリマーは、市販品を用いることができる。市販品として、例えば、UENO LCP(登録商標、以下同様)8100シリーズ(低融点タイプ、上野製薬社製)、および、UENO LCP 5000シリーズ(高融点タイプ、上野製薬社製)が挙げられる。好ましくは、UENO LCP5000シリーズが挙げられる。
【0017】
液晶ポリマーの融点は、限定されない。液晶ポリマーの融点は、例えば、170℃以上、好ましくは、180℃以上、より好ましくは、200℃以上であり、また、例えば、370℃以下である。液晶ポリマーの融点は、示差走査熱量測定によって求められる。示差走査熱量測定では、昇温速度は、10℃/minであり、25℃から400℃までの範囲を操作し、窒素雰囲気で液晶ポリマーを加熱する。また、液晶ポリマーが市販品であれば、市販品のカタログ値をそのまま採用することができる。
【0018】
液晶ポリマーのガラス転移温度は、限定されない。液晶ポリマーのガラス転移温度は、例えば、80℃以上であり、また、例えば、125℃以下である。液晶ポリマーのガラス転移温度は、昇温速度10℃/minで実施される示差走査熱量測定法により求められる。
【0019】
液晶ポリマーフィルムにおける液晶ポリマーの含有量は、特に限定されないが、液晶ポリマーフィルムに対して70質量%以上が好ましい。
【0020】
液晶ポリマーフィルムは、その他の成分を含有していてもよい。
その他の成分としては、例えば、フィラー、添加剤、液晶ポリマー以外の樹脂等が挙げられる。
【0021】
フィラーとしては、例えば、シリカ、アルミナ、酸化チタン、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、水酸化アルミニウム、炭酸カルシウム等の無機充填材;硬化エポキシ樹脂、架橋ベンゾグアナミン樹脂、架橋アクリル樹脂等の有機充填材が挙げられる。
フィラーを含有する場合の液晶ポリマーフィルムにおけるフィラーの含有量は、特に限定されないが、20体積%~70体積%がが好ましい。
【0022】
添加剤としては、例えば、レべリング剤、消泡剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、難燃剤、着色剤などが挙げられる。
液晶ポリマーフィルムにおける添加剤の含有量は、特に限定されないが、液晶ポリマー100質量部に対して、0~5質量部が好ましい。
【0023】
液晶ポリマー以外の樹脂としては、例えば、ポリプロピレン、ポリアミド、非晶質ポリエステル、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルケトン、ポリカーボネート、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンエーテル、ポリエーテルイミド等の熱可塑性樹脂;フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリイミド樹脂、シアネート樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
液晶ポリマー以外の樹脂の含有量は、特に限定されないが、液晶ポリマー100質量部に対して、0~20質量部が好ましい。
【0024】
液晶ポリマーフィルムは、多孔質であってもよいし、多孔質でなくてもよい。
液晶ポリマーフィルムが多孔質である場合の液晶ポリマーフィルムの空孔率としては、特に限定されないが、20%~70%が好ましい。
液晶ポリマーフィルムの空孔率の求め方は、後の実施例で記載する。
【0025】
液晶ポリマーフィルムの厚みとしては、特に限定されないが、例えば、2μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、例えば、200μm以下であり、100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましい。
【0026】
液晶ポリマーフィルムに生じる残留応力は、圧延によって生じやすい。
他方で、圧延によるフィルムの製造には、フィラーの含有率を上げてもフィルム化できるという利点がある。その点において、液晶ポリマーフィルムは、圧延によって製造されることが好ましい。即ち、液晶ポリマーフィルムは、圧延フィルムであることが好ましい。
本発明の液晶ポリマーフィルムは、圧延フィルムであっても反りが低減された液晶ポリマーフィルムとなる。
【0027】
液晶ポリマーフィルムにおける、圧延の際のMD(machine direction)方向における面内配向度としては、特に限定されないが、50%以下が好ましい。なお、圧延の際のMD方向とは、圧延の際のフィルムの送り方向(搬送方向)を指す。
圧延の際のMD方向における面内配向度の下限値としては、特に限定されないが、圧延の際のMD方向における面内配向度は、例えば、20%以上であってもよい。
面内配向度の求め方は、後の実施例で記載する。
【0028】
液晶ポリマーフィルムは、延伸されたフィルムであってもよいし、延伸されたフィルムではなくてもよい。ここでの延伸とは、圧延とは異なり、1軸延伸又は2軸延伸であり、1方向(主に縦方向)又は2方向(縦と横方向)に機械的に引き延ばすフィルム製造工程を指す。
他方、多孔質の液晶ポリマーフィルムは、延伸フィルムではないことが好ましい。特に、多孔化剤を用いて製造される多孔質の液晶ポリマーフィルムは、延伸フィルムではないことが好ましい。
【0029】
(液晶ポリマーフィルムの製造方法)
本発明の液晶ポリマーフィルムの製造方法は、圧延工程と、熱処理工程とを含む。
本発明の液晶ポリマーフィルムの製造方法は、本発明の液晶ポリマーフィルムの好適な製造方法である。
【0030】
<圧延工程>
圧延工程としては、シートを圧延し、圧延フィルムを得る工程であれば、特に限定されない。
シートは、液晶ポリマーを含有する組成物から形成される。
【0031】
組成物は、液晶ポリマーを含有する。液晶ポリマーとしては、特に限定されず、例えば、前述の液晶ポリマーなどが挙げられる。
組成物は、その他の成分を含有していてもよい。その他の成分としては、フィラー、添加剤、液晶ポリマー以外の樹脂等が挙げられる。
【0032】
多孔質の液晶ポリマーフィルムを製造する場合、組成物は、更に、多孔化剤を含有していてもよい。
多孔化剤は、無機化合物であってもよいし、有機化合物であってもよい。
無機化合物としては、例えば、無機塩が挙げられる。無機塩は、例えば、硫酸塩であってもよいし、塩化物であってもよいし、炭酸塩であってもよい。硫酸塩の例は、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、硫酸リチウム、硫酸マグネシウム、及び硫酸カルシウムである。塩化物の例は、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、及び塩化カルシウムである。炭酸塩の例は、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸マグネシウム、及び炭酸カルシウムである。
有機化合物としては、例えば、プリン誘導体が挙げられ、好ましくは、カフェインが挙げられる。
【0033】
組成物における多孔化剤の含有量としては、特に限定されないが、液晶ポリマーと多孔化剤との体積比率(液晶ポリマー:多孔化剤)は、10:90~90:10が好ましく、20:80~80:20がより好ましく、30:70~60:40が特に好ましい。
【0034】
組成物が、液晶ポリマーの他に液晶ポリマー以外の成分を含有する場合、組成物は、例えば、原材料を混錬して得られる。
【0035】
シートは、液晶ポリマーを含有する組成物から形成される。
シートの形成方法としては、特に限定されず、例えば、プレス成形、押出成形、射出成形などが挙げられる。
【0036】
圧延される前のシートの厚みとしては、特に限定されないが、100μm~1,000μmが好ましく、150μm~800μmがより好ましい。
【0037】
圧延とは、例えば、シートを1対のロール(2つのロール)で挟み込むことでシートに線圧をかけて、シートを引き延ばすことをいう。また、線圧とは、ロールへ係る荷重をロールの面長で割った値のことである。
圧延の際の線圧としては、特に限定されず、適宜選択することができる。線圧は、例えば、油圧方式などで調整することができる。
【0038】
圧延後の圧延フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、例えば、2μm以上であり、5μm以上が好ましく、10μm以上がより好ましい。また、例えば、200μm以下であり、100μm以下が好ましく、75μm以下がより好ましい。
圧延される前のシートの厚み(T)と、圧延後の圧延フィルムの厚み(T)との比率(T/T)としては、特に限定されないが、例えば、2~30であってもよいし、5~20であってもよい。
【0039】
圧延の際は、ロールを加熱してもよい。
ロールの温度としては、特に限定されず、例えば、250℃~450℃であってもよいし、300℃~400℃であってもよい。
また、ロールの温度としては、液晶ポリマーの融点よりも高い温度であることが好ましく、液晶ポリマーの融点よりも30℃以上高い温度であることが好ましい。ロール温度の上限値としては、液晶ポリマーが熱分解で劣化しない温度以下で適宜設定すれば特に限定されないが、ロールの温度は、例えば、液晶ポリマーの融点より100℃高い温度以下であってもよい。
加熱は、例えば、加熱ロールを用いて行われる。加熱ロールは、1対のロールの両方であってもよいし、片方であってもよい。
【0040】
圧延は、例えば、1対のロール間にシートを通過させることで行われる。
圧延は、好ましくは、1対のロール間に積層体を通過させることにより行われる。
積層体は、シートと、シートの第1の面に接して配された第1フィルム状基材と、シートの第2の面に接して配された第2フィルム状基材とを有する。即ち、積層体は、第1フィルム状基材と、シートと、第2フィルム状基材とをこの順で有する。積層体は、更にその他のフィルム乃至はシートを有していてもよい。
圧延が、積層体を1対のロール間に通過させて行われることにより、シートがロールに直接接することを避けることができる。そうすることで、シートがロールに付着して、シートがロールに巻き付くのを防ぐことができる。
【0041】
圧延工程は、1回であってもよいし、複数回であってもよい。なお、複数回の圧延の際の圧延条件(例えば、線圧、加熱温度など)は、同じであってもよいし、異なっていてもよい。
例えば、厚みが1mm程度のシート(圧延前のシート)を1回の圧延によって数十μmの厚みにするのは難しいため、厚みが1mm程度のシート(圧延前のシート)を複数回の圧延によって数十μmの厚みにしてもよい。
【0042】
第1フィルム状基材、及び第2フィルム状基材の厚み、材質、及び構造としては、特に限定されない。
第1フィルム状基材、及び第2フィルム状基材の厚みとしては、例えば、それぞれ独立して、10μm~200μmであってもよいし、20μm~150μmであってもよいし、50μm~100μmであってもよい。
第1フィルム状基材、及び第2フィルム状基材の材質としては、特に限定されないが、金属であってもよいし、熱可塑性樹脂であってもよい。
金属としては、例えば、銅、アルミニウム、ステンレスなどが挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメチルペンテン、エチレン-α-オレフィン共重合体等のポリオレフィン系樹脂、PMMA等のアクリル系樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、アクリロニトリル-ブタジエン-スチレン共重合体(ABS樹脂)、ポリスチレン(PS)、ポリ塩化ビニル、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリカーボネート(PC)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニルサルファイド(PPS)などが挙げられる。
【0043】
<熱処理工程>
熱処理工程としては、圧延フィルムを、下記式(1)を満たす熱処理温度で熱処理する工程であれば、特に限定されない。
T1<熱処理温度(℃)≦T2 ・・・式(1)
T1:液晶ポリマーの融点より100℃低い温度
T2:液晶ポリマーの融点
【0044】
熱処理によって圧延フィルムの残留応力が緩和され、反りが低減された液晶ポリマーフィルムが得られる。
液晶ポリマーを溶融させない観点から、熱処理温度は、液晶ポリマーの融点以下の温度で行うことが好ましい。他方、熱処理温度が低すぎると、残留応力の緩和が十分ではない。そのため、熱処理温度は、式(1)を満たす熱処理温度が好ましい。
【0045】
熱処理工程は、圧延フィルムを、下記式(1-1)を満たす熱処理温度で熱処理する工程であることが好ましい。
T1’≦熱処理温度(℃)≦T2 ・・・式(1-1)
T1’:液晶ポリマーの融点より80℃低い温度
T2:液晶ポリマーの融点
【0046】
熱処理工程における熱処理温度の下限値は、上記式(1)を満たす限り特に限定されず、熱処理温度は、例えば、150℃以上であってもよいし、180℃以上であってもよいし、200℃以上であってもよい。
熱処理工程における熱処理温度の上限値は、上記式(1)を満たす限り特に限定されず、熱処理温度は、例えば、350℃以下であってもよいし、300℃以下であってもよいし、250℃以下であってもよい。
【0047】
熱処理は、バッチ式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。連続式とは、例えば圧延工程から送り出された圧延フィルムを、ロールtoロールにて連続的に加熱処理装置に送り込んで熱処理する方式が挙げられる。
【0048】
熱処理時間としては、特に限定されないが、5秒~1時間が挙げられる。
【0049】
<多孔化工程>
多孔質の液晶ポリマーフィルムを製造する場合、本発明の液晶ポリマーフィルムの製造方法は、更に、多孔化工程を含んでいてもよい。
多孔化工程は、圧延工程の後であれば、熱処理工程の前に行ってもよいし、熱処理工程の後に行ってもよい。
【0050】
多孔化工程は、圧延フィルムを多孔質にする工程である。
多孔化工程は、例えば、圧延フィルムから多孔化剤を抽出する工程である。
抽出方法としては、特に限定されないが、例えば、溶媒抽出、超臨界抽出などが挙げられる。
【0051】
多孔化剤が無機塩の場合、抽出は、例えば、溶媒(例えば、水)を用いて行われる。
抽出は、例えば、溶媒(例えば、超純水)に圧延フィルムを浸漬させることにより行うことができる。
浸漬の際の溶媒の温度としては、特に限定されず、例えば、10℃~100℃などが挙げられる。
浸漬時間としては、特に限定されず、例えば、10分間~2時間などが挙げられる。
なお、加圧下で圧延フィルムを溶媒に浸漬させてもよい。その際には、溶媒の温度は、常圧における溶媒の沸点以上の温度であってもよい。
【0052】
多孔化剤が有機化合物の場合、抽出は、例えば、超臨界流体を用いて行われる。超臨界流体を用いた抽出方法としては、特に限定されず、例えば、特開2022-156865号公報に記載の第2工程及び第3工程が挙げられる。
【0053】
(低誘電基板材)
本発明の低誘電基板材は、本発明の液晶ポリマーフィルム及び金属層を厚み方向に順に備える。
低誘電基板材は、その他の構成として、例えば、接着層を備える。
低誘電基板材において、液晶ポリマーフィルムは、絶縁層である。
【0054】
<金属層>
金属層は、シート(板)形状を有する。
金属層の材料は、特に限定されず、例えば、銅、鉄、銀、金、アルミニウム、ニッケル、それらの合金(ステンレス、青銅)などが挙げられる。好ましくは、銅が挙げられる。
【0055】
金属層の厚みは、例えば、0.1μm以上であり、1μm以上が好ましく、また、例えば、100μm以下であり、50μm以下が好ましい。
【0056】
<接着層>
接着層は、例えば、液晶ポリマーフィルムの厚み方向一方面において、面方向に沿うシート形状を有する。
【0057】
接着層の材料としては、特に限定されず、ホットメルト型接着剤、熱硬化型接着剤など、種々の型の接着剤が挙げられ、具体的には、アクリル系接着剤、エポキシ系接着剤、シリコーン系接着剤などが挙げられる。好ましくは、アクリル系接着剤が挙げられる。
【0058】
接着層の厚みは、例えば、2μm以上であり、5μm以上が好ましく、また、例えば、50μm以下であり、25μm以下が好ましい。
【0059】
低誘電基板材の厚みは、例えば、10μm以上であり、20μm以上が好ましく、また、例えば、5,000μm以下であり、2,000μm以下が好ましい。
【0060】
低誘電基板材は、例えば、各種用途に用いられ、好ましくは、第五世代(5G)の規格に適合する高周波アンテナや高速伝送基板(高速伝送FPCなど)の製造に用いられる。具体的には、低誘電基板材は、高周波アンテナや高速FPCの基板材として用いられる。
【0061】
低誘電基板材の一例を図を用いて説明する。
図1は、本発明の低誘電基板材の一実施形態の概略断面図である。
図1に示す低誘電基板材1は、厚み方向に対向する一方面および他方面を有しており、厚み方向に直交する面方向に延びる形状を有する。
低誘電基板材1は、第1金属層2と、第1金属層2の厚み方向一方面に配置される液晶ポリマーフィルム3と、液晶ポリマーフィルム3の厚み方向一方面に配置される接着層4と、接着層4の厚み方向一方面に配置される第2金属層5とを備える。つまり、低誘電基板材1は、第1金属層2と、液晶ポリマーフィルム3と、接着層4と、第2金属層5とを厚み方向他方側から一方側に向かって順に備える。好ましくは、低誘電基板材1は、第1金属層2と、液晶ポリマーフィルム3と、接着層4と、第2金属層5とのみを備える。
【0062】
低誘電基板材の他の実施形態では、図2に示すように、低誘電基板材1は、液晶ポリマーフィルム3及び金属層6を厚み方向一方側に向かって順に備える。
【0063】
(配線回路基板)
本発明の配線回路基板は、本発明の液晶ポリマーフィルム及び導体層を厚み方向に順に備える。
配線回路基板は、その他の構成として、例えば、接着層を備える。
配線回路基板において、液晶ポリマーフィルムは、絶縁層である。
【0064】
配線回路基板は、例えば、導体層として、配線を有する。配線としては、例えば、信号配線、アンテナ配線、グランド配線などが挙げられる。配線は、例えば、金属層をフォトリソグラフィ(例えば、サブトラクティブ法)によってパターニングすることにより形成することができる。
【0065】
配線回路基板の一例を図を用いて説明する。
図3は、本発明の配線回路基板の一実施形態の概略断面図である。
図3に示す配線回路基板10は、面方向に延びる。配線回路基板10は、シート形状を有する。配線回路基板10は、液晶ポリマーフィルム3と、導体層7とを厚み方向の一方側に向かって順に備える。導体層7は、液晶ポリマーフィルム3の厚み方向の一方面に接触する。導体層7は、所定の配線パターンを有する。
図3に示す配線回路基板10は、例えば、以下の様にして作製することができる。
まず、図2に示す低誘電基板材1を用意する。
次に、図2に示す低誘電基板材1の金属層6を、フォトリソグラフィによってパターニングすることにより、液晶ポリマーフィルム3上に導体層7を形成する。
【実施例0066】
以下に、実施例及び比較例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。なお、本発明は、何ら実施例及び比較例に限定されない。
【0067】
(実施例1)
<<第1工程:混練>>
液晶ポリマーとしての上野製薬(株)製のUENO LCP A5000(融点280℃)45体積部と、多孔化剤としての富士フィルム和光純薬(株)製の硫酸ナトリウム55体積部とを、東洋精機社製のラボプラストミル(型番:4C150)で混練して、組成物を調製した。混練における温度は、350℃であり、混練装置におけるスクリューの回転速度は30rpm(revolutions per minute)に調整された。
【0068】
<<第2工程:シート作製>>
続いて、組成物から、井元製作所社製の手動油圧真空プレス(型番:11FD)を用いて、厚み200μm~560μmの無孔質シート(無孔シート)を作製した。
プレスにおける温度は、350℃であり、圧力は、4~10MPaであった。
【0069】
<<第3工程:圧延>>
圧縮成形部に直径300mmの誘導加熱ロール一対(2本)が上下に配置されている圧延装置を用いた。
フィルム状耐熱性基材として、片面に超耐熱・超耐寒性ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン300H」,厚さ75μm)と、対の面に福田金属箔粉工業(株)製の銅箔(CF-T49A-DS-HD2-18)とを準備し、その間に無孔質シートを挟み込み、積層体を得た。
第1の圧延として以下の圧延を行った。
下側のロールに90°抱かせるように積層体を供給した。ロール温度は、350℃であり、ロール荷重は、2tonFとした。
第2の圧延として以下の圧延を行った。
第1の圧延を行った積層体を、90°向きを変えて、下側のロールに90°抱かせるように供給した。ロール温度は、350℃であり、ロール荷重は、2tonFとした。
ロールを通過させた後、室温まで自然冷却した。その後、ポリイミドフィルムを剥離した。
【0070】
<<第4工程:多孔化>>
圧延した無孔質シートから、溶媒としての超純水に硫酸ナトリウムを抽出させた。具体的には以下の方法により行った。
超純水の温度は20℃、無孔質シートを超純水に含浸させた時間である抽出時間は、36時間であった。
その後、超純水に硫酸ナトリウムを抽出させて得られたシートを乾燥させて、多孔シートを得た。
【0071】
<<第5工程:熱処理>>
得られた多孔シートを、ヤマト科学社製のマッフル炉(FP300)にいれて熱処理した。熱処理温度は260℃、熱処理時間は30分間であった。
その後、室温(20℃)になるまで多孔シートを炉内に静置し、徐冷した。
以上により、銅箔上に液晶ポリマーフィルムが積層された積層体を得た。
【0072】
(実施例2~4、並びに比較例1、2、4及び5)
第2の圧延の有無、熱処理の有無、熱処理温度、及び徐冷の有無を、表1-1又は表1-2に記載の条件に変えた以外は、実施例1と同様にして、液晶ポリマーフィルムを得た。
なお、熱処理後に徐冷を行わない場合、熱処理後すぐに炉から多孔シートを取り出し、炉外で静置して自然冷却した。
【0073】
(実施例5)
<<第1工程:シート作製>>
液晶ポリマーとしての上野製薬(株)製のUENO LCP A5000(融点280℃)を、井元製作所社製の手動油圧真空プレス(型番:11FD)を用いてプレスし、厚み200μm~560μmの無孔質シート(無孔シート)を作製した。
プレスにおける温度は、350℃であり、圧力は、0.5~4MPaであった。
【0074】
<<第2工程:圧延>>
圧縮成形部に直径300mmの誘導加熱ロール一対(2本)が上下に配置されている圧延装置を用いた。
フィルム状耐熱性基材として、片面に超耐熱・超耐寒性ポリイミドフィルム(東レ・デュポン社製「カプトン300H」,厚さ75μm)と、対の面に福田金属箔粉工業(株)製の銅箔(CF-T49A-DS-HD2-18)とを準備し、その間に無孔質シートを挟み込み、積層体を得た。
第1の圧延として以下の圧延を行った。
下側のロールに90°抱かせるように積層体を供給した。ロール温度は、350℃であり、ロール荷重は、2tonFとした。
ロールを通過させた後、室温まで自然冷却した。その後、ポリイミドフィルムを剥離した。
【0075】
<<第3工程:熱処理>>
圧延した無孔質シートを、ヤマト科学社製のマッフル炉(FP300)にて熱処理した。熱処理温度は260℃、熱処理時間は30分間であった。
熱処理後すぐに炉から多孔シートを取り出し、炉外で静置した。
以上により、銅箔上に液晶ポリマーフィルムが積層された積層体を得た。
【0076】
(比較例3)
熱処理の有無、及び熱処理温度を、表1-2に記載の条件に変えた以外は、実施例5と同様にして、液晶ポリマーフィルムを得た。
【0077】
(空孔率)
空孔率は、以下の式で求めた。結果を表1-1及び表1-2に示す。
空孔率[%]=100×{(M-M)/M
・M:液晶ポリマーの比重
・M:多孔シートの比重
【0078】
(厚み)
液晶ポリマーフィルムの厚みは、尾崎製作所社製のデジタルゲージ(RI-205)により求めた。結果を表1-1及び表1-2に示す。
【0079】
(TMA(熱機械分析))
銅箔をエッチングにより除去し、液晶ポリマーフィルムのみにした。
TMA測定を、JIS K7197に準拠して、以下の条件で行った。
なお、液晶ポリマーフィルムの試験サンプルは、第1の圧延の際のシートの送り方向(MD方向)が長手方向となるように作製した。
・サンプル幅:4mm
・サンプル有効長(チャック間の長さ):24mm
・昇降温速度:10℃/min
・一定荷重:0.020N
・温度範囲:40℃⇒200℃(実温度)⇒40℃の測定条件
40℃から200℃に温度上昇させ、200℃から40℃に変化させたときの温度変化における液晶ポリマーフィルムの第1の圧延の際のシートの送り方向(MD方向)の寸法変化量ΔL1、前記液晶ポリマーフィルムを同じ温度条件で再度測定した際の寸法変化量ΔL2、及びそれらの差(ΔL1-ΔL2)を求めた。結果を表1-1及び表1-2に示す。
なお、寸法変化量は、昇温及び降温を行う前後の寸法の違いを指す。
【0080】
(カール評価)
「カール」(反り)は、JIS C6481に準拠して求めることができ、具体的には、以下の様に行った。
銅箔上に液晶ポリマーフィルムが積層された積層体(5cm×5cm)を水平台上に、フィルムの中心が台に接し且つ四隅が台から浮いた状態になるように置き、四隅と台との隔りを測定して最大値を求めた。この最大値をフィルムの辺の長さで除した百分率値を反り率(%)とした。
以下の評価基準で評価した。結果を表1-1及び表1-2に示す。
〔評価基準〕
〇:反り率が、20%以下
△:反り率が、20%超、30%以下
×:反り率が、30%超
【0081】
(配向度)
配向度(%)は、リガク社製X線回折装置(Nano-Viewer)を用いて透過法でX線回折測定を行った。2θ/θスキャンでピーク強度(配向性成分)を測定した。得られたプロファイルのピークを用いてβスキャンで方位角方向に0°から360°までの強度を測定した。得られた回折強度分布曲線(βプロファイル)の各ピークの半値幅を波形分離により算出し、下記式に従って配向度を算出した。なお、配向度は、第1の圧延の際のシートの送り方向の配向度である。結果を表1-1及び表1-2に示す。
配向度=(360-(ピーク半値幅の和))/360×100
【0082】
【表1-1】
【0083】
【表1-2】
【符号の説明】
【0084】
1 低誘電基板材
2 第1金属層
3 液晶ポリマーフィルム
4 接着層
5 第2金属層
6 金属層
7 導体層
10 配線回路基板
図1
図2
図3