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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176724
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ころ軸受
(51)【国際特許分類】
F16C 33/34 20060101AFI20241212BHJP
F16C 19/26 20060101ALI20241212BHJP
F16C 43/06 20060101ALI20241212BHJP
【ＦＩ】
F16C33/34
F16C19/26
F16C43/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】ＯＬ
(21)【出願番号】P 2023095488
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000102692
【氏名又は名称】ＮＴＮ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100087941
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 修司
(74)【代理人】
【識別番号】100112829
【弁理士】
【氏名又は名称】堤 健郎
(74)【代理人】
【識別番号】100155963
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100150566
【弁理士】
【氏名又は名称】谷口 洋樹
(74)【代理人】
【識別番号】100142608
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 由佳
(74)【代理人】
【識別番号】100213470
【弁理士】
【氏名又は名称】中尾 真二
(72)【発明者】
【氏名】前田 剛
【テーマコード（参考）】
3J117
3J701
【Ｆターム（参考）】
3J117HA03
3J701AA13
3J701AA24
3J701AA32
3J701AA42
3J701AA52
3J701AA62
3J701BA04
3J701BA05
3J701BA09
3J701EA78
3J701FA44
3J701FA46
3J701GA24
3J701XB03
3J701XB16
(57)【要約】
【課題】軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができるころ軸受を提供する。
【解決手段】ころ軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪と外輪との間に介在する複数のころと、これらころを保持する保持器とを備える。内輪と外輪のいずれか一方と複数のころ３および保持器の組立品が、内輪と外輪のいずれか他方に対し軸方向に分離可能である。各ころ３の面取り７を丸面取りとする。且つ、面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋ぐ。軸方向面取り寸法（Ｃ）＝０．５～１．０×ころ面取りＲ寸法である。
【選択図】図３
【解決手段】ころ軸受は、内輪と、外輪と、これら内輪と外輪との間に介在する複数のころと、これらころを保持する保持器とを備える。内輪と外輪のいずれか一方と複数のころ３および保持器の組立品が、内輪と外輪のいずれか他方に対し軸方向に分離可能である。各ころ３の面取り７を丸面取りとする。且つ、面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋ぐ。軸方向面取り寸法（Ｃ）＝０．５～１．０×ころ面取りＲ寸法である。
【選択図】図３
【特許請求の範囲】
【請求項1】
内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数のころと、これらころを保持する保持器とを備え、前記内輪と前記外輪のいずれか一方と前記複数のころおよび前記保持器の組立品が、前記内輪と前記外輪のいずれか他方に対し軸方向に分離可能なころ軸受であって、
前記各ころのころ外周面ところ端面との間の面取りを丸面取りとし、且つ、前記面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面と前記ころ外周面とを滑らかに繋ぐ、ころ軸受。
前記各ころのころ外周面ところ端面との間の面取りを丸面取りとし、且つ、前記面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面と前記ころ外周面とを滑らかに繋ぐ、ころ軸受。
【請求項2】
請求項１に記載のころ軸受において、前記軸方向面取り寸法（Ｃ）＝０．５～１．０×ころ面取りＲ寸法である、ころ軸受。
【請求項3】
請求項１または請求項２に記載のころ軸受において、前記ころ、前記内輪、および前記外輪の少なくともいずれか一つに表面処理が施されているころ軸受。
【請求項4】
請求項３に記載のころ軸受において、前記表面処理は、ＤＬＣ皮膜または黒染めであるころ軸受。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内輪または外輪が分離するころ軸受に関し、例えば、産業機械用及び
鉄道車両用のモータ等に適用される技術に関する。
鉄道車両用のモータ等に適用される技術に関する。
【背景技術】
【0002】
軸受を、使用される機械に組み込み易くするため、内輪または外輪が分離するタイプの軸受がある。この軸受として、例えば、円筒ころ軸受、円すいころ軸受等がある。内輪が分離することにより、内・外輪一体型に比べて内輪を軸へ「焼き嵌め」するのが容易になる。同様に外輪が分離することにより、内・外輪一体型に比べて内輪組立品を軸へ「焼き嵌め」するのが容易になる。
【0003】
この分離するタイプの内輪または外輪を組み込む際には、特に内輪または外輪の軌道面に傷がつく可能性がある。このため、内輪または外輪の相対的な傾きをなくすことに対して細心の注意が必要である。
内輪または外輪の相対的な傾きが発生した場合には、ころ面取り面と外径面の境目にあるエッジ部が内輪または外輪の軌道面と干渉してしまい、内輪または外輪の軌道面に傷が発生する恐れがある。
内輪または外輪の相対的な傾きが発生した場合には、ころ面取り面と外径面の境目にあるエッジ部が内輪または外輪の軌道面と干渉してしまい、内輪または外輪の軌道面に傷が発生する恐れがある。
【0004】
この対策のため、内輪または外輪の相対的な傾きを抑制するため「組立治具」を使用している（例えば、特許文献１）。
また、内輪または外輪の相対的な傾きを抑制するため「保持器を特殊な形状」にしているものもある。（例えば、特許文献２）。
また、内輪または外輪の相対的な傾きを抑制するため「保持器を特殊な形状」にしているものもある。（例えば、特許文献２）。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開２００５－１８８５９０号公報
【特許文献2】特開２０１５－９８９０１号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来の「組立治具」を使用する対策では別途この部品を準備する必要があり非効率的である。「保持器を特殊な形状」とする対策では、保持器の形状が複雑になる。このため、軸受の製造コストが増加する恐れがある。
図９のように、軸受を機械に組み込んだ後に内輪５０または外輪５１が傾いた状態で軸方向Ｃ１に移動させる場合がある。この場合、図１０および図１１のように、内輪５０の軌道面または外輪５１の軌道面（図示せず）に傷がつく可能性がある。
このように軸受を組み込んだ後に内輪または外輪が傾く場合には、従来の傾かない様な組み込みをしても内輪または外輪の軌道面およびころ転動面に傷がつく恐れがある。
図９のように、軸受を機械に組み込んだ後に内輪５０または外輪５１が傾いた状態で軸方向Ｃ１に移動させる場合がある。この場合、図１０および図１１のように、内輪５０の軌道面または外輪５１の軌道面（図示せず）に傷がつく可能性がある。
このように軸受を組み込んだ後に内輪または外輪が傾く場合には、従来の傾かない様な組み込みをしても内輪または外輪の軌道面およびころ転動面に傷がつく恐れがある。
【0007】
本発明の目的は、軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができるころ軸受を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のころ軸受は、内輪と、外輪と、前記内輪と前記外輪との間に介在する複数のころと、これらころを保持する保持器とを備え、前記内輪と前記外輪のいずれか一方と前記複数のころおよび前記保持器の組立品が、前記内輪と前記外輪のいずれか他方に対し軸方向に分離可能なころ軸受であって、
前記各ころのころ外周面ところ端面との間の面取りを丸面取りとし、且つ、前記面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法（Ｒ）以下としてころ面取り面と前記ころ外周面とを滑らかに繋ぐ。
前記「ころ」は、円筒ころ、針状ころ、または円すいころである。
前記各ころのころ外周面ところ端面との間の面取りを丸面取りとし、且つ、前記面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法（Ｒ）以下としてころ面取り面と前記ころ外周面とを滑らかに繋ぐ。
前記「ころ」は、円筒ころ、針状ころ、または円すいころである。
【0009】
この構成によると、各ころの丸面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法（Ｒ）以下としてころ面取り面ところ外周面とを滑らかに繋ぐ。このため、ころ面取り面ところ外周面との境目に急峻なエッジができることを抑制することが可能となる。これにより、軸受を機械に組み込むとき、または軸受の組み込み後軸受を軸方向に移動させるとき、内・外輪軌道面のエッジ部に応力集中が生じることを防止し得る。したがって、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品である内外輪の軌道面の組み込み傷を防止し得る。よって、軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0010】
前記軸方向面取り寸法（Ｃ）＝０．５～１．０×ころ面取りＲ寸法であってもよい。軸方向面取り寸法（Ｃ）が０．５×ころ面取りＲ寸法未満の場合、ころ面取り面ところ外周面との境目に急峻なエッジができる恐れがある。また軸方向面取り寸法（Ｃ）が１．０×ころ面取りＲ寸法を超えると、同様にころ面取り面ところ外周面との境目に急峻なエッジができる恐れがある。
【0011】
前記ころ、前記内輪、および前記外輪の少なくともいずれか一つに表面処理が施されていてもよい。この場合、軸受部品に表面処理が施されていないものより、内輪、外輪またはころの滑り性能を向上させ、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。
【0012】
前記表面処理は、ＤＬＣ皮膜または黒染めであってもよい。前記ＤＬＣ皮膜を採用する場合、黒染め等の表面処理よりも耐摩耗性を向上し得る。前記黒染めを採用する場合、他の表面処理よりも製造コストの低減を図れる。
【発明の効果】
【0013】
本発明のころ軸受は、各ころの面取りを丸面取りとし、且つ、面取りの軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面ところ外周面とを滑らかに繋ぐ。このため、軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1A】本発明の第１の実施形態に係るころ軸受等の縦断面図である。
【図1B】同ころ軸受の機械への組み込み過程を示す説明図である。
【図2】同ころ軸受のころの正面図である。
【図4】同ころに表面処理を施した例を示す部分拡大図である。
【図5】同ころに施されるＤＬＣ皮膜の構成を示す模式断面図である。
【図6】同ころ軸受の内外輪、ころに表面処理を施した例を示す部分拡大図である。
【図7A】本発明の第２の実施形態に係るころ軸受の縦断面図である。
【図7B】同ころ軸受の組み込み過程示す説明図である。
【図8】本発明の第３の実施形態に係るころ軸受の縦断面図である。
【図9】従来のころ軸受の機械への組み込み例を示す断面図である。
【図10】同ころ軸受の内輪軌道面の組み込み傷を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
［第１の実施形態：ＮＵ形］
本発明の実施形態に係るころ軸受を図１Ａないし図３と共に説明する。実施形態に係るころ軸受は、例えば、産業機械用及び鉄道車両用のモータ等に適用される単列の円筒ころ軸受である。
＜円筒ころ軸受の概略構成＞
図１Ａに示すＮＵ形の円筒ころ軸受１０は、内輪１と、外輪２と、これら内輪１と外輪２の軌道面間に介在する複数の円筒ころ３と、これら円筒ころ３を保持する保持器４とを備える。内輪１は鍔なし、外輪２は、軌道面の軸方向両側に鍔２ａ，２ａを有する。円筒ころ軸受１０は、内輪１の外周面の径方向外方に外輪２が配置される所謂ラジアルころ軸受の一つである。内輪１および外輪２の中心軸の軸心方向を「軸方向」Ｃ１とする。前記「軸方向」Ｃ１に直交する方向を「径方向」とする。
本発明の実施形態に係るころ軸受を図１Ａないし図３と共に説明する。実施形態に係るころ軸受は、例えば、産業機械用及び鉄道車両用のモータ等に適用される単列の円筒ころ軸受である。
＜円筒ころ軸受の概略構成＞
図１Ａに示すＮＵ形の円筒ころ軸受１０は、内輪１と、外輪２と、これら内輪１と外輪２の軌道面間に介在する複数の円筒ころ３と、これら円筒ころ３を保持する保持器４とを備える。内輪１は鍔なし、外輪２は、軌道面の軸方向両側に鍔２ａ，２ａを有する。円筒ころ軸受１０は、内輪１の外周面の径方向外方に外輪２が配置される所謂ラジアルころ軸受の一つである。内輪１および外輪２の中心軸の軸心方向を「軸方向」Ｃ１とする。前記「軸方向」Ｃ１に直交する方向を「径方向」とする。
【0016】
ＮＵ形の円筒ころ軸受１０では、図１Ｂのように、外輪２と複数の円筒ころ３および保持器４の組立品１０Ａが、内輪１に対し軸方向Ｃ１に分離可能である。保持器４は、複数の円筒ころ３を円周方向一定間隔おきに保持する。保持器４は、例えば、もみ抜き保持器または打ち抜き保持器である。円筒ころ３を、単に、ころ３と称す場合がある。
【0017】
＜ころ面取りの詳細構造＞
図２のように、各ころ３のころ外周面３ａところ端面３ｂとの間の面取り７を丸面取りとしている。さらに図３のように、前記面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋いでいる。丸面取りである面取り７の前記ころ面取りＲ寸法は、例えば、国際標準化機構（略称ＩＳＯ）のＩＳＯ ３０９６に準拠したＪＩＳ Ｂ １５０６のころの実測面取寸法の許容限界値rsmaxに基づいて規定される。ころ３の端面形状は所謂平面形である。ころ面取りＲ寸法の輪郭が丸面取りであり、この丸面取りの曲率半径の中心は同図３におけるころ内に位置する。但し、ころ面取りＲ寸法をＪＩＳ Ｂ １５０６に依拠しない丸面取りにしてもよい。軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下すなわち軸方向面取り寸法（Ｃ）≒ころ面取りＲ寸法とし、ころ外周面３ａを接線Ｒに近づけている。具体的には、（０．５×ころ面取りＲ寸法）≦軸方向面取り寸法（Ｃ）≦（１．０×ころ面取りＲ寸法）としている。また丸面取り７の径方向面取り寸法（Ｄ７）も同様に規定される。
図２のように、各ころ３のころ外周面３ａところ端面３ｂとの間の面取り７を丸面取りとしている。さらに図３のように、前記面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋いでいる。丸面取りである面取り７の前記ころ面取りＲ寸法は、例えば、国際標準化機構（略称ＩＳＯ）のＩＳＯ ３０９６に準拠したＪＩＳ Ｂ １５０６のころの実測面取寸法の許容限界値rsmaxに基づいて規定される。ころ３の端面形状は所謂平面形である。ころ面取りＲ寸法の輪郭が丸面取りであり、この丸面取りの曲率半径の中心は同図３におけるころ内に位置する。但し、ころ面取りＲ寸法をＪＩＳ Ｂ １５０６に依拠しない丸面取りにしてもよい。軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下すなわち軸方向面取り寸法（Ｃ）≒ころ面取りＲ寸法とし、ころ外周面３ａを接線Ｒに近づけている。具体的には、（０．５×ころ面取りＲ寸法）≦軸方向面取り寸法（Ｃ）≦（１．０×ころ面取りＲ寸法）としている。また丸面取り７の径方向面取り寸法（Ｄ７）も同様に規定される。
【0018】
＜組み込み過程について＞
図１Ｂのように、外輪２に保持器４およびころ３を組み込んだ組立品１０Ａをハウジング５に取り付ける。このとき軸受空間には、グリースＧが塗布されている。その後、軸６に圧入等で取り付けられた内輪１を、図１Ａのように、組立品１０Ａ内に軸方向に押し込むことで円筒ころ軸受１０が組み込まれる。
図１Ｂのように、外輪２に保持器４およびころ３を組み込んだ組立品１０Ａをハウジング５に取り付ける。このとき軸受空間には、グリースＧが塗布されている。その後、軸６に圧入等で取り付けられた内輪１を、図１Ａのように、組立品１０Ａ内に軸方向に押し込むことで円筒ころ軸受１０が組み込まれる。
【0019】
＜作用効果＞
以上説明した円筒ころ軸受１０によると、図３のように、各ころ３の丸面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋ぐ。このため、ころ面取り面７ａところ外周面３ａとの境目８に急峻なエッジができることを抑制することが可能となる。これにより、図１Ｂのように、軸受１０を機械に組み込むとき、または軸受１０の組み込み後軸受１０を軸方向に移動させるとき、内・外輪軌道面のエッジ部に応力集中が生じることを防止し得る。したがって、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品である内外輪１，２の軌道面の組み込み傷を防止し得る。よって、軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができる。
以上説明した円筒ころ軸受１０によると、図３のように、各ころ３の丸面取り７の軸方向面取り寸法（Ｃ）をころ面取りＲ寸法以下としてころ面取り面７ａところ外周面３ａとを滑らかに繋ぐ。このため、ころ面取り面７ａところ外周面３ａとの境目８に急峻なエッジができることを抑制することが可能となる。これにより、図１Ｂのように、軸受１０を機械に組み込むとき、または軸受１０の組み込み後軸受１０を軸方向に移動させるとき、内・外輪軌道面のエッジ部に応力集中が生じることを防止し得る。したがって、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品である内外輪１，２の軌道面の組み込み傷を防止し得る。よって、軸受部品の組み込み傷を防止すると共に製造コストの低減を図ることができる。
【0020】
図３のように、軸方向面取り寸法（Ｃ）＝０．５～１．０×ころ面取りＲ寸法である。軸方向面取り寸法（Ｃ）が０．５×ころ面取りＲ寸法未満の場合、ころ面取り面７ａところ外周面３ａとの境目８に急峻なエッジができる恐れがある。また軸方向面取り寸法（Ｃ）が１．０×ころ面取りＲ寸法を超えると、同様にころ面取り面７ａところ外周面３ａとの境目８に急峻なエッジができる恐れがある。
【0021】
＜他の実施形態等について＞
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
以下の説明においては、各実施形態で先行して説明している事項に対応している部分には同一の参照符号を付し、重複する説明を略する。構成の一部のみを説明している場合、構成の他の部分は、特に記載のない限り先行して説明している実施形態と同様とする。同一の構成は同一の作用効果を奏する。各実施形態で具体的に説明している部分の組合せばかりではなく、特に組合せに支障が生じなければ、実施形態同士を部分的に組合せることも可能である。
【0022】
［変形例１：ころにＤＬＣ皮膜、図４，５］
図４のように、ころ３の外周面３ａに、多層構造のＤＬＣ皮膜９である表面処理が施されている。ころ端面３ｂにはＤＬＣ皮膜を有さない。但し、ＤＬＣ皮膜９は多層構造に限定されるものではなく、例えば、ＤＬＣを含む一層構造であってもよい。ＤＬＣ皮膜９は、ころ３の面取り７にも成膜されてもよい。例えば、ころ端面３ｂをマスキングした状態で外周面３ａにＤＬＣ皮膜９を成膜する場合、ＤＬＣ皮膜９が面取り７にも回り込んで成膜されるからである。図４に示すＤＬＣ皮膜９は、実際の膜厚よりも厚く強調して表している。ころ３の外周面３ａだけでなくころ端面３ｂにもＤＬＣ皮膜を設けることも可能である。
図４のように、ころ３の外周面３ａに、多層構造のＤＬＣ皮膜９である表面処理が施されている。ころ端面３ｂにはＤＬＣ皮膜を有さない。但し、ＤＬＣ皮膜９は多層構造に限定されるものではなく、例えば、ＤＬＣを含む一層構造であってもよい。ＤＬＣ皮膜９は、ころ３の面取り７にも成膜されてもよい。例えば、ころ端面３ｂをマスキングした状態で外周面３ａにＤＬＣ皮膜９を成膜する場合、ＤＬＣ皮膜９が面取り７にも回り込んで成膜されるからである。図４に示すＤＬＣ皮膜９は、実際の膜厚よりも厚く強調して表している。ころ３の外周面３ａだけでなくころ端面３ｂにもＤＬＣ皮膜を設けることも可能である。
【0023】
図５のように、ＤＬＣ皮膜９が多層構造である場合、ＤＬＣ皮膜９は、ころ３の母材側から順に、下地層９ａ、混合層９ｂ、および表面層９ｃの３層とされている。多層構造のＤＬＣ皮膜９における各層９ａ，９ｂ，９ｃの膜硬さは、段階的に外層側の層が高くなる。ＤＬＣ皮膜９は、（１）ころ３の外周面３ａ上に直接成膜されるＣｒとＷＣとを主体とする下地層９ａと、（２）下地層９ａの上に成膜されるＷＣとＤＬＣとを主体とする混合層９ｂと、（３）混合層９ｂの上に成膜されるＤＬＣを主体とする表面層９ｃとを含む３層構造を有する。混合層９ｂは、下地層９ａ側から表面層９ｃ側へ向けて連続的または段階的に、該混合層中のＷＣの含有率が小さくなり、かつ、該混合層中のＤＬＣの含有率が高くなる層である。本実施形態では、ＤＬＣ皮膜９の膜構造を上記のような３層構造とすることで、急激な物性（硬度・弾性率等）変化を避けるようにしている。
【0024】
この構成によると、軸受部品に表面処理が施されていないものより、内輪およびころ３の滑り性能を向上させ、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。図４のように、ＤＬＣ皮膜９がころ３の面取り７にも回り込んで成膜される場合、円筒ころ軸受の組み込み時等において、内輪又は外輪軌道面に組み込み傷が生じることをより確実に防止し得る。
【0025】
［変形例２：内外輪、ころにＤＬＣ皮膜、図６］
図６のように、ころ３、内外輪１，２の全てにＤＬＣ皮膜９が施されていてもよい。ＤＬＣ皮膜９は軸受部品毎に個別に成膜される。この変形例２によると、内外輪１，２およびころ３の滑り性能を向上させ、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。
図６のように、ころ３、内外輪１，２の全てにＤＬＣ皮膜９が施されていてもよい。ＤＬＣ皮膜９は軸受部品毎に個別に成膜される。この変形例２によると、内外輪１，２およびころ３の滑り性能を向上させ、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。
【0026】
［変形例３：内外輪、ころに黒染め、図６］
表面処理は、ＤＬＣ皮膜に代えて黒染め９Ａであってもよい。軸受部品の表面処理として黒染め９Ａを採用する場合、ＤＬＣ皮膜等の表面処理設備よりも設備費用を低減できる分、製造コストの低減を図れる。さらに内外輪１，２およびころ３の滑り性能を向上させ、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。
表面処理は、ＤＬＣ皮膜に代えて黒染め９Ａであってもよい。軸受部品の表面処理として黒染め９Ａを採用する場合、ＤＬＣ皮膜等の表面処理設備よりも設備費用を低減できる分、製造コストの低減を図れる。さらに内外輪１，２およびころ３の滑り性能を向上させ、従来の組立治具または特殊な保持器形状等を使用することなく、軸受部品の組み込み傷をより確実に防止することができる。
【0027】
［第２の実施形態：Ｎ形、図７Ａ～図７Ｂ］
図７Ａに示すＮ形の円筒ころ軸受１０は、外輪２が鍔なし、内輪１の軌道面の軸方向両側に鍔１ａ，１ａを有する。Ｎ形の円筒ころ軸受１０では、図７Ｂのように、内輪１と複数の円筒ころ３および保持器４の組立品１０Ｂが、外輪２に対し軸方向に分離可能である。ころ面取りの詳細構造は、第１の実施形態と同様である。この円筒ころ軸受１０では、内輪１にころ３および保持器４を組み込んだ組立品１０Ｂに対し、図７Ａのように、外輪２を軸方向に押し込むことで円筒ころ軸受１０が組み込まれる。この場合にも、ころ面取りの詳細構造を第１の実施形態と同様にすることで、第１の実施形態と同様の作用効果を奏する。第２の実施形態において、各変形例のような表面処理を施すことも可能である。
図７Ａに示すＮ形の円筒ころ軸受１０は、外輪２が鍔なし、内輪１の軌道面の軸方向両側に鍔１ａ，１ａを有する。Ｎ形の円筒ころ軸受１０では、図７Ｂのように、内輪１と複数の円筒ころ３および保持器４の組立品１０Ｂが、外輪２に対し軸方向に分離可能である。ころ面取りの詳細構造は、第１の実施形態と同様である。この円筒ころ軸受１０では、内輪１にころ３および保持器４を組み込んだ組立品１０Ｂに対し、図７Ａのように、外輪２を軸方向に押し込むことで円筒ころ軸受１０が組み込まれる。この場合にも、ころ面取りの詳細構造を第１の実施形態と同様にすることで、第１の実施形態と同様の作用効果を奏する。第２の実施形態において、各変形例のような表面処理を施すことも可能である。
【0028】
［第３の実施形態：円すいころ軸受、図８］
図８のように、実施形態に係るころ軸受として、円すいころ軸受１０を適用することも可能である。この円すいころ軸受１０では、内輪１と複数の円すいころ３および保持器４の組立品が、外輪２に対し軸方向に分離可能である。ころ面取りの詳細構造は、第１の実施形態と同様である。この場合にも、ころ面取りの詳細構造を第１の実施形態と同様にすることで、第１の実施形態と同様の作用効果を奏する。第３の実施形態において、各変形例のような表面処理を施すことも可能である。
図８のように、実施形態に係るころ軸受として、円すいころ軸受１０を適用することも可能である。この円すいころ軸受１０では、内輪１と複数の円すいころ３および保持器４の組立品が、外輪２に対し軸方向に分離可能である。ころ面取りの詳細構造は、第１の実施形態と同様である。この場合にも、ころ面取りの詳細構造を第１の実施形態と同様にすることで、第１の実施形態と同様の作用効果を奏する。第３の実施形態において、各変形例のような表面処理を施すことも可能である。
【0029】
実施形態に係るころ軸受として、針状ころ軸受、複列円筒ころ軸受、４列円筒ころ軸受を適用することも可能である。スラストころ軸受は適用不可である。
ころ、内外輪の少なくともいずれか一つに表面処理が施されてもよい。
産業機械、鉄道車両用のモータ以外の用途に、各実施形態のころ軸受を適用してもよい。
表面処理として、ＤＬＣ皮膜または黒染め以外に、内外輪またはころの滑り性能を向上させる作用効果を奏する表面処理を適用することも可能である。
ころ、内外輪の少なくともいずれか一つに表面処理が施されてもよい。
産業機械、鉄道車両用のモータ以外の用途に、各実施形態のころ軸受を適用してもよい。
表面処理として、ＤＬＣ皮膜または黒染め以外に、内外輪またはころの滑り性能を向上させる作用効果を奏する表面処理を適用することも可能である。
【0030】
以上、本発明の実施形態を説明したが、今回開示された実施形態はすべての点で例示であって制限的なものではない。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0031】
１…内輪、２…外輪、３…ころ、３ａ…ころ外周面、３ｂ…ころ端面、４…保持器、７…面取り、７ａ…ころ面取り面、９…ＤＬＣ皮膜、９Ａ…黒染め、１０…円筒ころ軸受、１０Ａ，１０Ｂ…組立品
【図1A】
【図1B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7A】
【図7B】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】