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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176731
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】電子黒板システム
(51)【国際特許分類】
   B43L 1/04 20060101AFI20241212BHJP
   B43L 1/06 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B43L1/04 A
B43L1/04 F
B43L1/06
B43L1/04 B
B43L1/04 K
B43L1/04 L
B43L1/04 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095499
(22)【出願日】2023-06-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】522020623
【氏名又は名称】坂和 尚美
(74)【代理人】
【識別番号】100081558
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 晴男
(74)【代理人】
【識別番号】100154287
【弁理士】
【氏名又は名称】齋藤 貴広
(72)【発明者】
【氏名】坂和 勝紀
【テーマコード(参考)】
2C071
【Fターム(参考)】
2C071CA01
2C071CA02
2C071CA04
2C071CB02
2C071CB04
2C071CB05
2C071CB06
2C071CB30
2C071CC01
2C071DC10
(57)【要約】
【課題】既設黒板はそのままに、GIGAスクール構想を実現し得る電子黒板システムを比較的低コストに、且つ、ごく短時間のうちに設置でき、児童・生徒、教師共に馴染のある授業法である板書を基本とする授業を可能にし、しかも、板書内容をデジタルデータで保存することが可能な電子黒板システムを提供することを課題とする。
【解決手段】電子黒板であるディスプレイ3と、プロジェクター2による2画面表示が可能な筆記用ボード1を並置した。ディスプレイ3は、筆記用ボード1の一側部又は両側部に配置されて、それぞれ筆記用ボード1の一半部上に移動可能である。ディスプレイ3と筆記用ボード1は、1つのトラス構造フレーム11に取り付けられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電子黒板であるディスプレイと、プロジェクターによる2画面表示が可能な筆記用ボードを並置したことを特徴とする電子黒板システム。
【請求項2】
前記ディスプレイは、前記筆記用ボードの一側に配置されて前記筆記用ボードの一半部上に移動可能である、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項3】
前記ディスプレイは、前記筆記用ボードの両側に配置されて、それぞれ前記筆記用ボードの一半部上に移動可能である、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項4】
前記筆記用ボードは、書き消し機能とスクリーン機能とを有している、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項5】
前記ディスプレイと前記筆記用ボードは、1つの固定用フレームに取り付けられている、請求項1に記載の電子黒板システム。
【請求項6】
前記固定用フレームは、周面に多数のボルト孔を設けたジョイントに、複数の骨組み材を接続して構成されるトラス構造フレームである、請求項5に記載の電子黒板システム。
【請求項7】
前記トラス構造フレームは、前面に正方形状部が複数連設され、前記正方形状部の背面側に四角錘状部が形成され、両端の前記正方形状部の下側に、三角錘状の脚部が連設されて成る、請求項6に記載の電子黒板システム。
【請求項8】
前記フレームに、プロジェクター取り付け用ボードが上方に突出するように設置されている、請求項5に記載の電子黒板システム。
【請求項9】
前記ディスプレイは、前記トラス構造フレームに配備されたスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記筆記用ボード上に旋回移動可能である、請求項6に記載の電子黒板システム。
【請求項10】
前記スイング機構は、前記トラス構造フレームに固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成り、前記ディスプレイは、その裏面が前記ディスプレイ固定枠に固定される、請求項9に記載の電子黒板システム。
【請求項11】
壁面に固定されている既設黒板の一側又は両側の前記壁面に、電子黒板であるディスプレイを、前記既設黒板の一半部上に移動可能に設置して成る電子黒板システム。
【請求項12】
前記ディスプレイは、前記壁面に固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成るスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記既設黒板の一半部上に旋回移動可能である、請求項11に記載の電子黒板システム。
【請求項13】
前記既設黒板は、曲面・半曲面黒板、上げ下げ式黒板及び引分け式黒板を含む、請求項11に記載の電子黒板システム。
【請求項14】
壁面に固定されている既設黒板の下側の腰壁に、電子黒板であるディスプレイを1台又は2台設置し、前記一方又は双方のディスプレイを前記既設黒板の一半部上に移動可能にしたことを特徴とする電子黒板システム。
【請求項15】
前記ディスプレイは、前記腰壁に固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成るスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記既設黒板の一半部上に旋回移動可能である、請求項14に記載の電子黒板システム。
【請求項16】
電子黒板であるディスプレイと筆記用ボードを、前記電子黒板が前記筆記用ボード上に移動可能に並置して成る電子黒板システムにおいて、前記電子黒板を前記筆記用ボード上に移動させるためのスイング機構であって、
ベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支される、ディスプレイ固定枠とから成る電子黒板スイング機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子黒板システムに関するものであり、より詳細には、シンプルな構成で低コストにて導入でき、GIGAスクール構想を実現するのに好適な電子黒板システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
令和元年にGIGAスクール構想の実現パッケージが発表されたことを受けて、各学校において校内LANが整備され、学校ICT導入・利活用が急速に進んでいる。このGIGAスクール構想の骨子は、児童・生徒1人1人に個別化され、創造性を育む教育ICT環境の構築である。具体的には、児童・生徒1人1人に学習者用端末(タブレット)が与えられ、各教室に配備される電子黒板を用いての授業ということになる。
【0003】
しかるに、各教室には黒板が設置されていて、古くから学校における授業は黒板への板書を基本に進められてきており、それは児童・生徒、教師共に馴染のある授業法であり、たとえICT教育が進んだとしても捨てがたいものである。一方、教室ごとに従来の黒板等の他に電子黒板を用意することは、予算の面及び設置スペースの面で限度がある。特に、黒板に代わるような大型の電子黒板を導入することは、極めて困難なことであり、非現実的なことである。
【0004】
そこで、既設黒板やホワイトボードを利用し、ボード上部にプロジェクターを配設し、ボードに映写することでボードを電子黒板化(筆記用ボード化)することが考えられ、実用化されている(特開2021-128299号公報、特開2018-189925号公報)。但し、その場合、板書内容をデジタルデータで保存することができない等の問題がある。また、一歩進んで、既設黒板の周辺部にセンサを埋設し、ペンや指先の動きを検出可能にして電子黒板化を図ることも考えられているが、その場合はチョーク粉がセンサの機能を阻害するおそれがある。
【0005】
一方で、黒板の老朽化が進み、そのリニューアル需要も毎年増加している。例えば、黒板のリニューアルは、枠を残して古い黒板を外してマグネットシートを貼り、その上に新しい表面材を貼った後、元の枠内に戻す方法が、コスト面からして一般的となっている。しかし、この表面材貼り替え方法の場合は、総取替の場合に比較して低コストとはいっても、かなりの費用がかかる。また、黒板の重量は、大型サイズの場合は50kgを超えるので、取り外し及び取り付け作業に4~5人の作業員が必要となる。しかも、その貼り替え工事には、1教室当たり約4時間もかかり、多数の教室に対して授業のない時間及び時期に集中的に行わなければならない必要性があるため、その作業は極めて過酷なものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2021-128299号公報
【特許文献2】特開2018-189925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の黒板等の他に電子黒板を用意することは、予算の面及び設置スペースの面で問題があり、既設黒板やホワイトボードを、プロジェクターを配設することで電子黒板化する方法の場合は、板書内容をデジタルデータで保存することができないという問題があり、また一方において、黒板のリニューアル作業に、多大なコストと労力が費やされているという現実がある。
【0008】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたもので、既設黒板はそのままに、GIGAスクール構想を実現し得る電子黒板システムを比較的低コストに、且つ、ごく短時間のうちに設置でき、児童・生徒、教師共に馴染のある授業法である板書を基本とする授業を可能にし、しかも、板書内容をデジタルデータで保存することが可能な電子黒板システムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための請求項1に係る発明は、電子黒板であるディスプレイと、プロジェクターによる2画面表示が可能な筆記用ボードを並置したことを特徴とする電子黒板システムである。
【0010】
一実施形態においては、前記ディスプレイは、前記インタラクティブボードの一側部に配置されて前記筆記用ボードの一半部上に移動可能である。あるいは、前記ディスプレイは、前記筆記用ボードの両側部に配置されて、それぞれ前記筆記用ボードの一半部上に移動可能である。また、一実施形態においては、前記インタラクティブボードは、書き消し機能とスクリーン機能とを有している。
【0011】
一実施形態においては、前記ディスプレイと前記筆記用ボードは、1つの固定用フレームに取り付けられている。好ましくは、前記固定用フレームは、周面に多数のボルト孔を設けたジョイントに、複数の骨組み材を接続して構成されるトラス構造フレームである。そして、一実施形態においては、前記トラス構造フレームは、前面に正方形状部が複数連設され、前記正方形状部の背面側に四角錘状部が形成され、両端の前記正方形状部の下側に、三角錘状の脚部が連設されて成る。
【0012】
一実施形態においては、前記固定フレームに、プロジェクター取り付け用ボードが上方に突出するように設置される。
【0013】
一実施形態においては、前記ディスプレイは、前記トラス構造フレームに配備されたスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記筆記用ボード上に旋回移動可能である。一実施形態においては、前記スイング機構は、前記トラス構造フレームに固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成り、前記ディスプレイは、その裏面が前記ディスプレイ固定枠に固定される。
【0014】
上記課題を解決するための請求項11に係る発明は、壁面に固定されている既設黒板の一側又は両側の前記壁面に、電子黒板であるディスプレイを、前記既設黒板の一半部上に移動可能に設置して成る電子黒板システムである。
【0015】
一実施形態においては、前記ディスプレイは、前記壁面に固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成るスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記既設黒板の一半部上に旋回移動可能である。また、前記既設黒板は、曲面・半曲面黒板、上げ下げ式黒板及び引分け式黒板を含む。
【0016】
上記課題を解決するための請求項14に係る発明は、壁面に固定されている既設黒板の下側の腰壁に、電子黒板であるディスプレイを1台又は2台設置し、前記一方又は双方のディスプレイを前記既設黒板の一半部上に移動可能にしたことを特徴とする電子黒板システムである。
【0017】
一実施形態においては、前記ディスプレイは、前記腰壁に固定されるベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支されるディスプレイ固定枠とから成るスイング機構により、正面に向けた状態のまま前記既設黒板の一半部上に旋回移動可能である。
【0018】
上記課題を解決するための請求項16に係る発明は、電子黒板であるディスプレイと筆記用ボードを、前記電子黒板が前記筆記用ボード上に移動可能に並置して成る電子黒板システムにおいて、前記電子黒板を前記筆記用ボード上に移動させるためのスイング機構であって、
ベース枠と、前記ベース枠に旋回自在に軸支される旋回枠と、前記旋回枠の端部に支軸を介して軸支される、ディスプレイ固定枠とから成る電子黒板スイング機構である。
【発明の効果】
【0019】
本発明は上記のとおりであって、既設黒板の上に重ねて、GIGAスクール構想を実現し得る電子黒板システムを比較的低コストにてごく短時間のうちに設置でき、高機能化が進んでいる電子黒板の機能を利用しての授業と共に、児童・生徒、教師共に馴染のある授業法である板書を基本とする授業を可能にし、しかも、板書内容をデジタルデータで保存することが可能という効果がある。
【0020】
また、本発明の他の実施形態においては、既設黒板をそのまま利用可能状態にして、その一側又は両側、あるいは、下側に、上記電子黒板システムを配備することにより、GIGAスクール構想を実現し得る電子黒板システムを比較的低コストにてごく短時間のうちに設置できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】本発明に係る電子黒板システムの全体構成を示す部分破断正面図である。
図2】本発明に係る電子黒板システムにおける電子黒板の旋回動作を示す斜視図である。
図3】本発明に係る電子黒板システムの側面図である。
図4】本発明に係る電子黒板システムの平面図である。
図5】本発明に係る電子黒板システムにおける電子黒板の旋回動作を取り入れた平面図である。
図6】本発明に係る電子黒板システムにおけるスイング機構を示す分解図である。
図7】本発明に係る電子黒板システムにおけるスイング機構の取り付け方法を示す図である。
図8】本発明に係る電子黒板システムにおけるスイング機構の軸支部の構成を示す図である。
図9】第2の発明に係る電子黒板システムの説明図である。
図10】第2の発明に係る電子黒板システムの他の実施形態の説明図である。
図11】第2の発明に係る電子黒板システムの更に他の実施形態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明を実施するための形態につき、添付図面を参照しつつ、詳細に説明する。本発明に係る電子黒板システムは2つの発明を含み、第1の発明は、既設黒板(黒板又はホワイトボード)は使用せず、その上に被せて本システムを施工するものであり、第2の発明は、既設黒板を利用可能状態にしたままで、本発明に係るシステムを構築するものである。
【0023】
第1の発明は、電子黒板であるディスプレイと、プロジェクターによる2画面表示が可能な筆記用ボードを並置したことを特徴とするものである。この第1の発明に係る電子黒板システムは、プロジェクター2が付設されてインタラクティブ化される筆記用ボード1と、筆記用ボード1の左右いずれかの側、あるいは、その両側に配置される電子黒板であるディスプレイ3とから成り(図1に示す例では正面視において左側に配置されている。)、筆記用ボード1とディスプレイ3が、既設黒板上や壁面に固定される1つの共通の固定用フレームに設置される。なお、既設黒板は、平面黒板に限らず、曲面黒板や半曲面黒板等であっても差し支えない。
【0024】
筆記用ボード1は、プロジェクター2が付設されることにより、電子黒板として機能し得るボードで、投影可能なホワイトボード又は黒板(好ましくは、映写対応で反射の少ない、グレーとグリーンの混色や、グレーと白色の混色のものとする。)である。これらのホワイトボード又は黒板は、教師及び生徒が使い慣れている、チョーク等での書き込み及び黒板消し等での消去が可能なものである。
【0025】
筆記用ボード1と電子黒板3を設置する固定用フレームは、周面に多数のボルト孔を設けた金属製のボール型ジョイント12に、複数の骨組み材13を接続して構成されるトラス構造を連設して成るトラス構造フレーム11である。このトラス構造フレーム11を構成するためのジョイント12や骨組み材13は、種々出回っており、そのうちの任意のものを採用することができる。このジョイント12と骨組み材13により形成されるトラス構造フレーム11は、湾曲力に強い骨組みであり、構成部材の総量が少なく、コストや重量を抑えることができるという特長を有するものである。
【0026】
図示した例のトラス構造フレーム11は、四角錐の立体トラスAを横向きに4つ並設し、両端の立体トラスAの下に、三角錐状の立体トラスBにより形成される脚部を連設して成る。各立体トラスA、Bは、それぞれ多数のジョイント12と骨組み材13により形成される。ジョイント12の周面には、骨組み材13をねじ込むためのボルト孔が多数形成され、上記形状を生成するのに適合するボルト孔を選択して骨組み材13がねじ込まれる。
【0027】
立体トラスAは、四角形を形成する4つのジョイント12及び4本の骨組み材13と、その4つのジョイント12から斜め後方に伸びて、四角錘の頂点となるジョイント12aに集結する4本の骨組み材13aにより構成される(図3参照)。中間の2つの立体トラスAは、隣接する立体トラスAと、一部のジョイント12及び骨組み材13を共用する。この4つ並設されている立体トラスAが、既設黒板40の表面を覆うように配置される。なお、既設黒板40のサイズによっては、トラス構造フレーム11の一部が覆われずに露出することもある。
【0028】
また、脚部を構成する立体トラスBは、両端の立体トラスAのジョイント12から斜め下方に伸びて、三角錘の頂点となるジョイント12bに集結する一対の骨組み材13bと、ジョイント12bから立ち上がり、その上の立体トラスAのジョイント12aに接続される骨組み材13cにより構成される。この場合、骨組み材13bは、ジョイント12bに向かって斜め奥に傾斜するので、立体トラスBが足元の邪魔になることはない。なお更に、4つの立体トラスAの各頂点のジョイント12aが、水平に配置される骨組み材13dにより連結されて、強化される場合もある(図6参照)。
【0029】
トラス構造フレーム11には、プロジェクター設置用プレート14と、プロジェクターのインターフェイスボックス15aを設置するための受け台15が設置される。プロジェクター設置用プレート14は、プロジェクター2のアームを固定するための平板14aと、平板から下方に伸びる2本の脚杆(図示してない)とから成り、脚杆の中間部と下端部が、U字ボルト等により、トラス構造フレーム11の横向きの骨組み材13に固定される。また、受け台15も同様に、U字ボルト等により、トラス構造フレーム11の水平に配置される骨組み材13に固定される。
【0030】
トラス構造フレーム11には更に、ディスプレイ3を、筆記用ボード1に重ならない位置(図1参照)からその一半部に重なる位置(図2参照)に移動可能にするためのスイング機構が、その一端部に組付けられる。例えば、スイング機構は、トラス構造フレーム11に固定されるベース枠21と、ベース枠21に旋回自在に軸支される旋回枠22と、旋回枠22の端部に支軸24を介して軸支されるディスプレイ固定枠23とから成り、ディスプレイ3は、その裏面が任意の方法でディスプレイ固定枠23に固定されることにより、支軸24を介して旋回枠22に対して揺動可能となり、また、旋回枠22の旋回動作に追随してディスプレイ固定枠23と一体に旋回可能となる(特に図6,7参照)。
【0031】
例えば、ベース枠21は、四角形状の金属製枠体で、その上面が、立体トラスAの上辺を形成する複数のジョイント12に固定される上フレーム31にボルト止めされ、また、その下面が、立体トラスAの下辺を形成する複数のジョイント12に固定される下フレーム32にボルト止めされることで、トラス構造フレーム11に固定設置される(図7参照)。ベース枠21はこのように固定設置されて、合計で100Kgを越えることのある旋回枠22、ディスプレイ固定枠23及びディスプレイ3を支持するが、十分な剛性を有することが実証されている。
【0032】
ベース枠21の一方の縦枠上下に、旋回枠22の一端の縦枠の上下に配備されるL型金具22aと係合する軸支板21bが設置される。軸支板21bは、中心にボルト孔21cを形成し、そのボルト孔21cを囲むように半円弧状(180度)のガイド孔21dを形成したもので、ベース枠21に水平方向に延設されるアングル材21aの上面に固定される(図8参照)。旋回枠22は、そのL型金具22aを軸支板21b上に載せて、軸ボルト25で軸支板21bに取り付けることで、ベース枠21に対し、軸ボルト25を軸に回動可能となる。また、同時に、L型金具22aを通してガイド孔21dにガイドボルト26が差し込まれる。ガイドボルト26は、ガイド孔21dに沿って摺動することになる。旋回枠22には、必要に応じ、筋交い22bが対角線上に1本、あるいは、交差させて2本配置されて強化される。
【0033】
かくして旋回枠22は、軸ボルト25を軸に、ガイド孔21dによって規制される範囲、即ち、180度回転可能となる。また、旋回枠22の端部に支軸24を介して軸支されているディスプレイ固定枠23、並びに、それに設置されるディスプレイ3も、旋回枠22と共に旋回する。その旋回の間ディスプレイ3は、旋回枠22に対し、支軸24を介して揺動可能であるので、常に正面向きにして移動させることができる。
【0034】
このようにしてディスプレイ3は、図1に示される筆記用ボード11に重ならない位置から、その一部に重なる位置(図2,5参照)に移動可能となるが、旋回枠22はその旋回端まで移動させることなく、任意の位置において止めることができ、また、ディスプレイ3を、任意の位置において所望方向、即ち、すべての生徒が見やすくなる方向に向けることができる。このようなディスプレイ3の移動・角度調整を行いやすくするために、ディスプレイ3の側辺及び/又は下部に、ハンドル27を配置することが好ましい。例えば、ハンドル27は、取付け枠23を囲むように設置される補助枠28の底辺に配置することができる(図1,3参照)。また、ディスプレイ3の旋回操作を補助するために、適宜個所にガススプリング(ガスダンパー)を配備することもある。
【0035】
上記構成例は、ディスプレイ3を筆記用ボード1の左右いずれかの側に配置する場合のものであるが、ディスプレイ3を筆記用ボード1の両側に設置するように構成することもできる。即ち、トラス構造フレーム11は、長さの異なる骨組み材13を選択することにより、また、立体トラスAの数を増やすことにより、より横長に形成することができる。そして、上記スイング機構を、トラス構造フレーム11の筆記用ボード1の両側にはみ出る部分に配備し、それぞれにディスプレイ3を設置して構成することができる。なお、寸法の関係で、既設黒板40の全体が覆われずに、一部が露出することもあり得る。
【0036】
上記構成のトラス構造フレーム11は、組み立て分解が容易であり、分解して施工現場へ搬入し、短時間のうちに組み立てることができる。組み立て後、既設黒板40に固定するに際しては、先ず、一対の、立体トラスBのジョイント12bを床上に定置して、4つの立体トラスAを既設黒板40の表面を覆うように配置する。そして、ジョイント12bを床面に固定すると共に、立体トラスAの頂点の4つのジョイント12aを、既設黒板40に固定する。ジョイント12a,2bの固定には、通例、アンカーボルト等のボルト類が用いられる。
【0037】
上述したように、既設黒板40は平面黒板に限らず、曲面黒板や半曲面黒板等であっても問題なく、本システムをその上に重ねて設置可能である。曲面黒板等の場合は、背面側の四角錘状部の奥行きを、曲面に合わせて調整すればよい(長さの異なる骨組み材13を採用する等の方法による。)。
【0038】
ディスプレイ3はパソコン機能を備えたものであり、ディスプレイ3に対する筆記内容、映写内容をそのまま、プロジェクター2を介して筆記用ボード1に拡大投影可能である。また、筆記用ボード1には、板書内容をディスプレイ3に取り込み可能にするために、周縁部に、マーカーや指先の動きを検出するセンサ(図示してない)が複数配備される。このセンサとしては、電子黒板において一般に用いられているのと同じ、赤外線遮断方式のセンサを用いることができる。そのセンサからの板書内容に対応する出力信号がディスプレイ3に取り込まれ、そのままディスプレイ3に表示されると共に、デジタルデータ化されて保存される。その保存データは、教師及び生徒が共有して有効活用できる。
【0039】
図示してないが、GIGAスクール構想の実現のためには更に、教師が扱う教師用端末と、生徒1人に1台用意される生徒用端末とが含まれる。通例、教師用端末はタブレット又はスマホであり、生徒用端末はタブレットである。教師用端末と生徒用端末はディスプレイ3にWi-Fi接続され、ディスプレイ3と各端末との間での相互通信が可能に設定される。
【0040】
プロジェクター2としては、2画面投影可能なワイドプロジェクターが用いられる。プロジェクター2は、上述したプロジェクター設置用プレート14に固定されて、筆記用ボード1の上辺中央にくるように配置される。プロジェクター2は、ディスプレイ3の画面のミラーリング投影が可能である。即ち、ディスプレイ3(あるいは教師用端末等)に保存されているコンテンツ画面を、プロジェクター2を介してそのまま筆記用ボード1に拡大投影して画面共有することが可能となる。
【0041】
通例、ディスプレイ3にはテンプレートソフトが装備され、升目、五線譜、鍵盤、サッカーコートその他多種多様のテンプレートが提供される。教師は、所望のテンプレートを選択し、プロジェクター2を介して筆記用ボード1に大きく投写させて、その上にマーカーや指先で書き込みを行うことができる。そして、筆記用ボード1のマーカーや指先の動きが検出されて、その書き込み内容がディスプレイ3に取り込まれ、デジタルデータ化されて保存される。また、上記テンプレート等は、プロジェクター2を移動させ、あるいは、筆記用ボード1を筆記用ボード1に重なるように移動させることにより、筆記用ボード1上に投写させて利用することもできる。
【0042】
本発明に係る電子黒板システムを教育現場において実施する場合、教師は、筆記用ボード1から離れた位置において教師用端末を手元操作(片手での操作が可能)して、教師用端末に選択表示させたコンテンツ画面を、ディスプレイ3に表示させ、更にプロジェクター2を介して筆記用ボード1に拡大してミラーリング投影させることができる。最近では、老若男女を問わず、多くの人がスマートフォンの操作に慣れているので、通例、スマートフォンである教師用端末による操作は決して難しいものではない。
【0043】
プロジェクター2の機能により、授業内容に応じて投射位置を左・中央・右にスライドさせたり、左右に2画面投射させたりすることもできるので、授業展開が非常にスムーズになる。例えば、左側に電子教科書の画面、右側に生徒たちの回答をサムネイル投影することも可能で、その比較表示により、様々な考えを確認でき、新たな気付きを促したり、新しいアイディアの創出に繋がることが期待できる。
【0044】
従来、電子黒板(プロジェクターを用いて電子黒板化した場合も含む)における書き込みには、専ら高価な電子ペンが用いられていた。この電子ペンは、WindowsPCを画面上で操作するためのものであるが、GIGAスクール構想の下においては種々のOS端末が供給され、WindowsPCの配備率はかなり低下してきている。
【0045】
これまでチョークによる板書に慣れ親しんできた教師にとって、電子ペンでの書き込みはストレスを感じるものである。また、電子ペンは、筆記面がホワイトボードのように滑りの良いものの場合は問題ないが、黒板のようにザラザラする筆記面の場合は書き込みにくく、摩耗も激しいという問題があり、更に、電池切れ、故障等の不具合によって授業が中断し、生徒の集中力が途切れるといった問題もあった。
【0046】
しかるに、本発明に係る電子黒板システムの場合は、教師は筆記用ボード1にマーカーや指先を用いて板書できるので、電子ペン利用上のストレスがなくなり、また、電子ペンの不具合による授業の中断等もなくなるという利点がある。更に、教師は、筆記用ボード1に対し、従来慣れ親しんできたチョークによる板書及び黒板消しによる消去を行うことができるので、よりストレスなく本発明に係る電子黒板システムを利用することが可能となる。
【0047】
第2の発明は、既設黒板40をそのまま使用することを前提とするものである。その第1の実施形態は、壁面に固定されている既設黒板40の一側(図9(A)、図10(A))又は両側(図9(B)、図10(B))に、電子黒板であるディスプレイ3を設置し、ディスプレイ3を既設黒板40の一半部上に移動可能にすることを特徴とするものである。図9に示す既設黒板40は、平面黒板、曲面黒板又は半曲面黒板等であり、図10に示す既設黒板40は、上げ下げ式黒板である。
【0048】
この場合ディスプレイ3は、トラス構造フレーム11の端部の、スイング機構を組み付けた立体トラスAと立体トラスBで構成される支持フレームを介して設置することとしてもよいが、単に、トラス型フレーム11のスイング機構を介して、既設黒板40の脇の壁面に設置することもできる。即ち、スイング機構を構成するベース枠21を壁面に固定し、これに旋回枠22とディスプレイ固定枠23を組み付け、ディスプレイ固定枠23にディスプレイ3を設置する。この場合もディスプレイ3は、その裏面がディスプレイ固定枠23に固定されることにより、支軸24を介して旋回枠22に対して揺動可能となり、且つ、旋回枠22の旋回動作に追随して旋回可能となる。
【0049】
上記旋回枠22の旋回動作を可能にするためには、旋回枠22を、既設黒板40の縦枠よりも前方に位置させる必要がある。一般的な平面黒板における縦枠幅は60mm程であるが、曲面黒板や半曲面黒板、あるいは、上げ下げ式黒板の場合は200mmを越えることもあるので、ベース枠21はその分前方に配置する必要がある。そのためにベース枠21は、間隔調整材を介して壁面に固定されることになる。
【0050】
この第1の実施形態の場合も、ディスプレイ3は、支持フレームに配備されたスイング機構により、正面に向けた状態のまま既設黒板40の一半部上に旋回移動可能である。また、既設黒板40の上部にプロジェクター2を配置することにより、既設黒板40をインタラクティブボード化でき、第1の発明の場合と同様に、GIGAスクール構想の実現が可能となる。
【0051】
第2の実施形態の電子黒板システムは、壁面に固定されている既設黒板40の下側に、電子黒板であるディスプレイ3を1台又は2台設置し、その一方又は双方のディスプレイ3を既設黒板40の一半部上に移動可能にしたことを特徴とするものである(図11参照)。この第2の実施形態は、既設黒板40の両側に家具等があって、ディスプレイ3の設置スペースがない場合に対応するもので、この場合のディスプレイ3は、既設黒板40の下側の腰壁部分に、上下動可能に設置される。
【0052】
ディスプレイ3を上下動可能にするためには、上記スイング機構を90度回転させて設置すればよい。この場合も第1の実施形態の場合と同様に、ベース枠21は、間隔調整材を介して腰壁面に固定されることになる。また、必要に応じ、昇降補助のために、並びに、上昇位置保持のために、ガススプリング(ガスダンパー)やストッパー類が配備される。
【0053】
なお、既設黒板40をそのままに、その脇の壁面にディスプレイ3を、上記のように旋回移動可能にすることなく、固定設置することも考えられる。その固定設置のために、上記立体トラスA、あるいは、立体トラスAと立体トラスBの組み合わせを利用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明は上記のとおりであって、GIGAスクールを指向するためのシステムを比較的低コストにて30分ほどのごく短時間のうちに構築でき、児童・生徒、教師共に馴染のある授業法である板書を基本とする授業が可能であって、板書内容をデジタルデータで保存することが可能という効果もあり、また、教師にとって電子ペン利用上のストレスを伴わずにGIGAスクール構想の実現が可能となり、経済上のメリットも大きいので、その産業上の利用可能性は大である。
【符号の説明】
【0055】
1 筆記用ボード
2 プロジェクター
3 電子黒板
11 トラス構造フレーム
A,B 立体トラス
12 ジョイント
13 骨組み材
21 ベース枠
22 旋回枠
23 取付け枠
24 支軸
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11