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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176737
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】重荷重用タイヤ
(51)【国際特許分類】
   B60C 11/00 20060101AFI20241212BHJP
   B60C 11/13 20060101ALI20241212BHJP
   B60C 11/03 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B60C11/00 F
B60C11/13 B
B60C11/00 Z
B60C11/03 100B
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095511
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000183233
【氏名又は名称】住友ゴム工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000280
【氏名又は名称】弁理士法人サンクレスト国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 高士
【テーマコード(参考)】
3D131
【Fターム(参考)】
3D131BB03
3D131BC02
3D131BC12
3D131BC19
3D131BC34
3D131BC37
3D131EA08U
3D131EA08X
3D131EA09V
3D131EA09X
3D131EB11X
3D131EB16V
3D131EB19V
3D131EB22V
3D131EB22X
3D131EB23V
3D131EB23X
3D131EB24V
3D131EB24X
3D131EB27V
3D131EB28V
3D131EB28X
3D131EB62X
3D131EB64X
3D131EB68X
3D131EB83V
3D131EB86V
3D131EB86W
3D131EB91V
3D131EB91W
3D131EB94V
3D131EB94W
3D131EB99V
3D131EC01V
3D131EC01W
3D131EC12W
3D131EC22V
3D131EC22X
(57)【要約】
【課題】摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤ2の提供。
【解決手段】タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4はトレッド面6を含む。トレッド4はクラウン部分CRとショルダー陸部22と有する。クラウン部分CRに周方向細溝26が刻まれる。周方向細溝26は胴部28と拡幅部30とを備える。トレッド面6は、クラウン部分CRの陸面10Cと、ショルダー陸部22の陸面10Sとを含む。クラウン部分CRの陸面10Cの輪郭は円弧で表される。ショルダー陸部22の陸面10Sの輪郭は円弧又は直線で表される。赤道からトレッド面6の端TEまでの径方向距離D1の、赤道からトレッド面6の基準端BTEまでの径方向距離D2に対する比(D1/D2)は、0.60以上1.70以下である。
【選択図】図10
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トレッドを備えるタイヤであって、
前記トレッドの外周面が、路面と接地するトレッド面を含み、
前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を刻むことで、軸方向に並ぶ複数の陸部が構成され、
複数の前記周方向主溝が、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝を含み、
複数の前記陸部が、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー陸部を含み、
前記トレッドのうち、一対の前記ショルダー周方向主溝である第一ショルダー周方向主溝と第二ショルダー周方向主溝との間の部分がクラウン部分であり、前記ショルダー周方向主溝と前記トレッド面の端との間の部分が前記ショルダー陸部であり、
前記クラウン部分に少なくとも1本の周方向細溝が刻まれ、
前記周方向細溝が、前記周方向細溝の溝口を含む胴部と、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを備え、
前記胴部が、ストレートにのびる胴部本体を備え、
前記拡幅部が、前記胴部本体に連なり、前記胴部本体と前記溝底との間に最大溝幅を示す部分を有し、
前記トレッド面が、前記クラウン部分の陸面と、前記ショルダー陸部の陸面とを含み、
前記クラウン部分の陸面と赤道面との交線が赤道であり、
前記タイヤの子午線断面において、前記クラウン部分の陸面の輪郭が、赤道面上に中心を有し、400mm以上の半径を有する円弧で表され、前記ショルダー陸部の陸面の輪郭が、0.002mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線で表され、
前記クラウン部分の陸面の輪郭を表す円弧の延長線と、前記トレッド面の端を通り径方向にのびる直線との交点を、前記トレッド面の基準端としたとき、前記赤道から前記トレッド面の端までの径方向距離D1の、前記赤道から前記トレッド面の基準端までの径方向距離D2に対する比(D1/D2)が、0.60以上1.70以下である、
重荷重用タイヤ。
【請求項2】
前記胴部本体の溝幅が2.5mm以下であり、
前記胴部本体の溝幅の、前記拡幅部の最大溝幅に対する比が0.10以上0.40以下である、
請求項1に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項3】
前記周方向細溝の溝口から前記拡幅部が前記最大溝幅を示す位置までの溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が、0.80以上0.90以下である、
請求項2に記載の重荷重用タイヤ。
【請求項4】
前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤに正規荷重を付与して、前記タイヤを平らな路面に接触させて得られる接地面において、最大接地幅の97%幅に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L1であり、前記最大接地幅の70%幅に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L2であり、
前記接地長L2の前記接地長L1に対する比(L2/L1)が、0.90以上1.10以下である、
請求項1から3のいずれかに記載の重荷重用タイヤ。
【請求項5】
前記最大接地幅の中心に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L3であり、
前記接地長L3の前記接地長L2に対する比(L3/L2)が、1.00以上1.20以下である、
請求項4に記載の重荷重用タイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、重荷重用タイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
タイヤのトレッドは、軸方向に並列した複数の周方向主溝を有する。複数の周方向主溝は複数の陸部をトレッドに構成する。
陸部は路面と接地すると変形する。陸部の変形はタイヤの転がり抵抗に影響する。環境への影響が考慮され、転がり抵抗の低減がタイヤには強く求められている。
周方向主溝の溝幅よりも狭い溝幅を有する周方向細溝を設けると、トレッドが路面と接地した時に陸部同士が互いに支え合うことができ、陸部の変形が抑制される。
タイヤの転がり抵抗を低減するために、周方向細溝の採用が検討されている(例えば、下記の特許文献1)。
周方向細溝は、例えば、濡れた路面での走行性能(以下、ウェット性能とも呼ばれる。)にも影響する。諸性能への影響を考慮しながら、周方向細溝の採用が進められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2017-094891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る重荷重用タイヤはトレッドを備える。前記トレッドの外周面は、路面と接地するトレッド面を含む。前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を刻むことで、軸方向に並ぶ複数の陸部が構成される。複数の前記周方向主溝は、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝を含む。複数の前記陸部は、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー陸部を含む。前記トレッドのうち、一対の前記ショルダー周方向主溝である第一ショルダー周方向主溝と第二ショルダー周方向主溝との間の部分がクラウン部分であり、前記ショルダー周方向主溝と前記トレッド面の端との間の部分が前記ショルダー陸部である。前記クラウン部分に少なくとも1本の周方向細溝が刻まれる。前記周方向細溝は、前記周方向細溝の溝口を含む胴部と、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを備える。前記胴部は、ストレートにのびる胴部本体を備える。前記拡幅部は、前記胴部本体に連なり、前記胴部本体と前記溝底との間に最大溝幅を示す部分を有する。前記トレッド面は、前記クラウン部分の陸面と、前記ショルダー陸部の陸面とを含む。前記クラウン部分の陸面と赤道面との交線が赤道である。前記タイヤの子午線断面において、前記クラウン部分の陸面の輪郭は、赤道面上に中心を有し、400mm以上の半径を有する円弧で表される。前記ショルダー陸部の陸面の輪郭は、0.002mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線で表される。前記クラウン部分の陸面の輪郭を表す円弧の延長線と、前記トレッド面の端を通り径方向にのびる直線との交点を、前記トレッド面の基準端としたとき、前記赤道から前記トレッド面の端までの径方向距離D1の、前記赤道から前記トレッド面の基準端までの径方向距離D2に対する比(D1/D2)は、0.60以上1.70以下である。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】本発明の一実施形態に係る重荷重用タイヤのトレッドの一部を示す展開図である。
図2図1のII-II線に沿った断面図である。
図3図1のIII-III線に沿った断面図である。
図4図1の一部を示す拡大展開図である。
図5図4のV-V線に沿った断面図である。
図6図4のVI-VI線に沿った断面図である。
図7図1の一部を示す拡大展開図である。
図8図7のVIII-VIII線に沿った断面図である。
図9図7のIX-IX線に沿った断面図である。
図10】トレッド面の輪郭の一部を示す断面図である。
図11】接地面形状を説明する概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明のタイヤはリムに組まれる。タイヤの内側には空気が充填され、タイヤの内圧が調整される。リムに組まれたタイヤはタイヤ-リム組立体とも呼ばれる。タイヤ-リム組立体は、リムと、このリムに組まれたタイヤとを備える。
【0009】
本発明において、タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、正規状態と呼ばれる。
タイヤを正規リムに組み、タイヤの内圧を正規内圧の5%に調整し、このタイヤに荷重をかけていない状態は、基準状態と呼ばれる。
【0010】
本発明においては、特に言及がない限り、タイヤ各部の寸法及び角度は、正規状態で測定される。
正規リムにタイヤを組んだ状態で測定できない、タイヤの子午線断面における各部の寸法及び角度は、回転軸を含む平面に沿ってタイヤを切断することにより得られる、タイヤの切断面において、測定される。この測定では、左右のビード間の距離が、正規リムに組んだタイヤにおけるビード間の距離に一致するように、タイヤはセットされる。なお、正規リムにタイヤを組んだ状態で確認できないタイヤの構成は、前述の切断面において確認される。
【0011】
正規リムとは、タイヤが依拠する規格において定められたリムを意味する。JATMA規格における「標準リム」、TRA規格における「Design Rim」、及びETRTO規格における「Measuring Rim」は、正規リムである。
【0012】
正規内圧とは、タイヤが依拠する規格において定められた内圧を意味する。JATMA規格における「最高空気圧」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「INFLATION PRESSURE」は、正規内圧である。
【0013】
正規荷重とは、タイヤが依拠する規格において定められた荷重を意味する。JATMA規格における「最大負荷能力」、TRA規格における「TIRE LOAD LIMITS AT VARIOUS COLD INFLATION PRESSURES」に掲載された「最大値」、及びETRTO規格における「LOAD CAPACITY」は、正規荷重である。
【0014】
本発明において、タイヤのトレッド部とは、路面と接地する、タイヤの部位である。ビード部とは、リムに嵌め合わされる、タイヤの部位である。サイドウォール部とは、トレッド部とビード部との間を架け渡す、タイヤの部位である。タイヤは、部位として、トレッド部、一対のビード部及び一対のサイドウォール部を備える。
トレッド部の中央部分はクラウン部分とも呼ばれる。トレッド部の端の部分はショルダー部分とも呼ばれる。
【0015】
[本発明の基礎となった知見]
前述したように、トレッドに周方向細溝を設けることで、トレッドが路面と接地した時に陸部の変形が抑制され、見かけ上、陸部の剛性が高まる。タイヤは転がり抵抗を低減できる。
トレッドが摩耗すると、トレッドに設けた溝は消失していく。周方向細溝の溝容積は、周方向主溝の溝容積よりも小さい。トレッドに周方向細溝を設けた場合、トレッドが摩耗すると溝容積が不足し、ウェット性能が低下するという懸念がある。
前述したように、周方向細溝は陸部の剛性を見かけ上高める。周方向細溝を設けると接地面の形状が変化し、偏摩耗の発生リスクが高まるという懸念もある。
そこで本発明者は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる技術について鋭意検討し、以下に説明する発明を完成するに至っている。
【0016】
[本発明の実施形態の概要]
[構成1]
本発明の一態様に係る重荷重用タイヤは、トレッドを備えるタイヤであって、前記トレッドの外周面が、路面と接地するトレッド面を含み、前記トレッドに、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝を刻むことで、軸方向に並ぶ複数の陸部が構成され、複数の前記周方向主溝が、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー周方向主溝を含み、複数の前記陸部が、軸方向において最も外側に位置する一対のショルダー陸部を含み、前記トレッドのうち、一対の前記ショルダー周方向主溝である第一ショルダー周方向主溝と第二ショルダー周方向主溝との間の部分がクラウン部分であり、前記ショルダー周方向主溝と前記トレッド面の端との間の部分が前記ショルダー陸部であり、前記クラウン部分に少なくとも1本の周方向細溝が刻まれ、前記周方向細溝が、前記周方向細溝の溝口を含む胴部と、前記周方向細溝の溝底を含む拡幅部とを備え、前記胴部が、ストレートにのびる胴部本体を備え、前記拡幅部が、前記胴部本体に連なり、前記胴部本体と前記溝底との間に最大溝幅を示す部分を有し、前記トレッド面が、前記クラウン部分の陸面と、前記ショルダー陸部の陸面とを含み、前記クラウン部分の陸面と赤道面との交線が赤道であり、前記タイヤの子午線断面において、前記クラウン部分の陸面の輪郭が、赤道面上に中心を有し、400mm以上の半径を有する円弧で表され、前記ショルダー陸部の陸面の輪郭が、0.002mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線で表され、前記クラウン部分の陸面の輪郭を表す円弧の延長線と、前記トレッド面の端を通り径方向にのびる直線との交点を、前記トレッド面の基準端としたとき、前記赤道から前記トレッド面の端までの径方向距離D1の、前記赤道から前記トレッド面の基準端までの径方向距離D2に対する比(D1/D2)が、0.60以上1.70以下である。
【0017】
このようにタイヤを整えることにより、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減が達成される。
【0018】
[構成2]
好ましくは、前述の[構成1]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記胴部本体の溝幅が2.5mm以下であり、前記胴部本体の溝幅の、前記拡幅部の最大溝幅に対する比が0.10以上0.40以下である。
【0019】
[構成3]
好ましくは、前述の[構成1]又は[構成2]に記載の重荷重用タイヤにおいて、前記周方向細溝の溝口から前記拡幅部が前記最大溝幅を示す位置までの溝深さの、前記周方向細溝の溝深さに対する比が、0.80以上0.90以下である。
【0020】
[構成4]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成3]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記タイヤを正規リムに組み、前記タイヤの内圧を正規内圧に調整し、前記タイヤに正規荷重を付与して、前記タイヤを平らな路面に接触させて得られる接地面において、最大接地幅の97%幅に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L1であり、前記最大接地幅の70%幅に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L2であり、前記接地長L2の前記接地長L1に対する比(L2/L1)が、0.90以上1.10以下である。
【0021】
[構成5]
好ましくは、前述の[構成1]から[構成4]のいずれかに記載の重荷重用タイヤにおいて、前記最大接地幅の中心に相当する位置での前記接地面の長さが接地長L3であり、前記接地長L3の前記接地長L2に対する比(L3/L2)が、1.00以上1.20以下である。
【0022】
[本発明の実施形態の詳細]
以下、適宜図面が参照されつつ、好ましい実施形態に基づいて、本発明が詳細に説明される。
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るタイヤ2の一部を示す。このタイヤ2は、トラック、バス等の車両に装着される。このタイヤ2は重荷重用タイヤである。
両矢印Aで示される方向はタイヤ2の軸方向を表す。両矢印Cで示される方向はタイヤ2の周方向を表す。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の径方向である。
図1において周方向にのびる一点鎖線CLはタイヤ2の赤道面を表す。
【0024】
図1はトレッド4を示す。タイヤ2はトレッド4を備える。トレッド4は周方向にのびる。トレッド4はタイヤ2のトレッド部に含まれる。トレッド4は架橋ゴムからなる。
【0025】
図示されないが、タイヤ2はトレッド4以外にサイドウォール、ビード、カーカス等の要素を含む。本発明では、これら要素で構成されるタイヤ2の内部構造に特に制限はない。詳述しないが、このタイヤ2は、重荷重用タイヤの内部構造として一般的な内部構造を有する。
【0026】
タイヤ2はトレッド4において路面と接地する。トレッド4の外周面は、路面と接地するトレッド面6を含む。本発明においてトレッド面6は、特に言及がない限り、走行履歴のない未使用タイヤ2のトレッド面を意味する。
トレッド4には溝8が刻まれる。これにより、トレッドパターンが構成される。トレッド面6のうち溝8以外の部分は陸面10とも呼ばれる。
【0027】
図1はトレッド面6の展開図である。図1において符号TEで示される二点鎖線はトレッド面6の端を表す。図1に示されたトレッド面6では、赤道面の左側に位置するトレッド面6の端TE(図示されず)が第一端TE1とも呼ばれ、赤道面の右側に位置する端TEが第二端TE2とも呼ばれる。図1において両矢印TWで示される長さは、トレッド面6の幅である。トレッド面6の幅TWは、トレッド面6の第一端TE1から第二端TE2までの軸方向距離である。トレッド面6の幅TWは、トレッド面6に沿って計測される。
【0028】
本発明においては、外観上、明瞭なエッジとしてトレッド面6の端TEを識別できない場合、接地面の軸方向外端(接地端とも呼ばれる。)に対応するトレッド面6上の位置が、トレッド面6の端TEとして特定される。接地面は、正規状態のタイヤ2のキャンバー角を0°とした状態で、タイヤ2の正規荷重に相当する荷重をタイヤ2に負荷して、平面からなる路面にタイヤ2を接地させて得られる。
【0029】
トレッド面6(詳細には、後述するクラウン部分の陸面)と赤道面との交線が赤道PCとも呼ばれる。図1に示されるように、赤道面上に溝8が位置する場合は、赤道面上に溝8がないと仮定して得られる仮想外面に基づいて、赤道PCは特定される。
【0030】
図2は、図1のII-II線に沿った溝8の断面を示す。図2に示される溝8の断面は、溝8がのびる方向に対して垂直な平面に沿った、この溝8の断面である。
図2は、トレッド4に刻まれる溝8の一例を示す。具体的には、図2に示された溝8の断面は、後述するクラウン周方向主溝の断面である。この図2に基づいて溝8の主たる構成が説明される。
【0031】
溝8は、溝口8Mを含む一対の壁面8Wと、溝底8Tを含む底面8Bとを有する。一対の壁面8Wはそれぞれ、溝口8Mと底面8Bとの間を架け渡す。
溝8の溝幅は、一対の壁面8Wである第一壁面8Wと第二壁面8Wとの間の距離、すなわち壁面間距離で表される。
図2において両矢印WGで示される長さは、溝口8Mにおける溝8の溝幅である。溝幅WGは、溝口8Mを構成する一対のエッジ8Eである第一エッジ8Eから第二エッジ8Eまでの最短距離で表される。
溝口8Mのエッジ8Eが面取りされ、溝8の溝口8Mにテーパー加工が施されている場合は、特に言及がない限り、壁面8Wの輪郭線の延長線と、陸面10の輪郭線の延長線との交点を仮想的にエッジとして、溝口8Mにおける溝幅WGが得られる。
両矢印DGで示される長さは、溝8の溝深さである。溝8の溝深さDGは、左右のエッジ8Eを結ぶ線分から溝8の溝底8Tまでの最短距離で表される。溝深さを表す線分DGは、溝底8Tを通る、左右のエッジ8Eを結ぶ線分の法線に含まれる。この法線の方向が、溝8の深さ方向である。
溝8の位置、溝幅WG、溝深さDG等は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0032】
溝底8Tは、溝8の断面において最も深い位置である。溝口8Mを構成する左右のエッジ8Eを結ぶ線分の法線に沿って、この線分から底面8Bまでの距離が計測される。この線分から底面8Bまでの距離が最大となる位置が、溝底8Tである。
図2に示された底面8Bは曲面である。底面8Bが平面を含み、この平面が溝底8Tを含んでもよい。この場合、平面の幅中心が溝底8Tとして用いられる。
【0033】
溝口8Mにおいて1.0mm未満の溝幅WGを有する溝8はサイプとも呼ばれる。サイプ以外の溝8は普通溝とも呼ばれ、その溝口8Mにおいて1.0mm以上の溝幅WGを有する。
サイプが、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm以上の溝幅を有する部分(以下、普通溝相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗して普通溝相当部分が露出することで、サイプが普通溝に切り替わる。
普通溝が、溝口8Mと溝底8Tとの間に、1.0mm未満の溝幅を有する部分(サイプ相当部分)を含んでいてもよい。この場合、トレッド4が摩耗してサイプ相当部分が露出することで、普通溝がサイプに切り替わる。
【0034】
普通溝の中でも、周方向に連続してのび、トレッド4の厚さの0.5倍以上の溝深さを有する普通溝は周方向溝とも呼ばれる。周方向に連続してのび、トレッド4の厚さの0.5倍未満の溝深さを有する普通溝は縦溝とも呼ばれる。
周方向溝の中でも、トレッド4が路面と接地しても一対の壁面8Wが互いに接触することがない周方向溝は、周方向主溝とも呼ばれる。周方向主溝はトレッド4に陸部を構成する。トレッド4が路面と接地したとき、一対の壁面8Wが互いに接触することがある周方向溝は、周方向細溝とも呼ばれる。
【0035】
赤道面からトレッド面6の第二端TE2までのゾーンにおけるトレッドパターンを示す図1に基づいて、以下に、本発明のトレッドパターンが説明される。説明の便宜のために、矢印C1で示される側を第一側として、矢印C2で示される側を第二側として、トレッド4各部の周方向位置が表される。図示されないが、赤道面からトレッド面6の第一端TE2までのゾーンにおけるトレッドパターンも、図1に示された構成と同様の構成を有する。
【0036】
図1に示されるように、このタイヤ2のトレッド4には、軸方向に並ぶ複数の周方向主溝12が刻まれる。トレッド4は、軸方向に並び、周方向に連続してのびる複数の周方向主溝12を有する。
【0037】
周方向主溝12の溝深さは、例えば、10mm以上21mm以下である。タイヤ2が良好なウェット性能を発揮できる観点から、溝深さは13mm以上18mm以下であるのが好ましい。
【0038】
本発明においては、トレッド4に刻まれる複数の周方向主溝12のうち、軸方向において最も外側に位置する2本の周方向主溝12がショルダー周方向主溝である。赤道面上に位置する周方向主溝12(赤道面上に周方向主溝12が存在しない場合は、赤道面に最も近い2本の周方向主溝12)がクラウン周方向主溝である。クラウン周方向主溝とショルダー周方向主溝との間に周方向主溝12が位置する場合は、この周方向主溝12はミドル周方向主溝とも呼ばれる。
【0039】
図1に示されたトレッド4は、軸方向に並ぶ3本の周方向主溝12を有する。3本の周方向主溝12のうち、軸方向において最も外側に位置する2本の周方向主溝12がショルダー周方向主溝14である。赤道面上に位置する周方向主溝12がクラウン周方向主溝16である。このトレッド4は、クラウン周方向主溝16と、一対のショルダー周方向主溝14とを有する。
【0040】
前述したように、図2に示された溝8の断面は、クラウン周方向主溝16の断面である。クラウン周方向主溝16は、溝口16Mを含む一対の壁面16Wと、溝底16Tを含む底面16Bとを有する。
【0041】
図1に示されるように、このタイヤ2のクラウン周方向主溝16は、周方向にジグザグにのびる。クラウン周方向主溝16は、トレッド面6の第一端TE1(図示されず)に近い、第一頂点16aと、トレッド面6の第二端TE2に近い、第二頂点16bとを含む。クラウン周方向主溝16は、第一頂点16aと第二頂点16bとを周方向に交互に経由しながら、ジグザグにのびる。クラウン周方向主溝16の溝口16Mを構成する一対のエッジ16Eはそれぞれ、周方向にジグザグにのびる。このクラウン周方向主溝16が、後述するショルダー周方向主溝14と同じように、その溝口16Mを構成する一対のエッジ16Eがそれぞれ周方向にストレートにのびるように構成されてもよい。
【0042】
図3は、図1のIII-III線に沿った、ショルダー周方向主溝14の断面を示す。
ショルダー周方向主溝14は、溝口14Mを含む一対の壁面14Wと、溝底14Tを含む底面14Bとを有する。図1に示されるように、ショルダー周方向主溝14の溝口14Mを構成する一対のエッジ14Eはそれぞれ、周方向にストレートにのびる。このショルダー周方向主溝14が、前述のクラウン周方向主溝16と同じように、その溝口14Mを構成する一対のエッジ14Eがそれぞれ周方向にジグザグにのびるように構成されてもよい。
【0043】
図1において両矢印WGcで示される長さは、クラウン周方向主溝16の溝口16Mでの溝幅である。両矢印WGsで示される長さは、ショルダー周方向主溝14の溝口14Mでの溝幅である。
【0044】
クラウン周方向主溝16の溝幅WGcの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WGc/TW)は2.0%を超える。具体的には、比率(WGc/TW)は好ましくは4.0%以上10%以下である。
図1に示されたトレッド4では、ショルダー周方向主溝14の溝幅WGsはクラウン周方向主溝16の溝幅WGcよりも広い。ショルダー周方向主溝14の溝幅WGsの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WGs/TW)は、好ましくは、5.0%以上11%以下である。
【0045】
図2において両矢印DGcで示される長さはクラウン周方向主溝16の溝深さである。図3において両矢印DGsで示される長さはショルダー周方向主溝14の溝深さである。ショルダー周方向主溝14の溝深さDGsは、クラウン周方向主溝16の溝深さDGcと同じである。ショルダー周方向主溝14がクラウン周方向主溝16よりも浅くてもよいし、ショルダー周方向主溝14がクラウン周方向主溝16よりも深くてもよい。
【0046】
図1に示されたクラウン周方向主溝16の底面には、底面から突出する突起18が設けられる。複数の突起18が周方向に所定の間隔をあけて配置される。突起18は、クラウン周方向主溝16に石が噛み込むことを防止する。
【0047】
前述したように、トレッド4には複数の周方向主溝12が刻まれる。これにより、トレッド4には、軸方向に並ぶ複数の陸部20が構成される。複数の周方向主溝12は、トレッド4に複数の陸部20を構成する。
【0048】
本発明においては、トレッド4に構成される複数の陸部20のうち、軸方向において最も外側に位置する2本の陸部20がショルダー陸部である。ショルダー陸部はトレッド面6の端TEを含む。赤道面上に位置する陸部20(赤道面上に陸部20が存在しない場合は、赤道面に最も近い2本の陸部20)がクラウン陸部である。クラウン陸部とショルダー陸部との間に陸部20が位置する場合は、この陸部20がミドル陸部とも呼ばれる。
【0049】
図1に示されたトレッド4は、軸方向に並ぶ4本の陸部20を有する。4本の陸部20のうち、軸方向において最も外側に位置する2本の陸部20がショルダー陸部22である。このトレッド4には、赤道面上に陸部20は存在しない。赤道面に最も近い2本の陸部20がクラウン陸部24である。このトレッド4は、一対のクラウン陸部24と、一対のショルダー陸部22とを有する。一対のショルダー陸部22はそれぞれ、トレッド面6の端TEを含む。
【0050】
このタイヤ2では、トレッド4のうち、一対のショルダー周方向主溝14である第一ショルダー周方向主溝14(図示されず)と第二ショルダー周方向主溝との間の部分がクラウン部分Crである。ショルダー周方向主溝14と、このショルダー周方向主溝14の近くに位置するトレッド面6の端との間の部分が、ショルダー陸部22である。2本のショルダー周方向主溝14は、トレッド4に、クラウン部分Crと、2本のショルダー陸部22とを構成する。
【0051】
図1に示されたクラウン部分Crは、2本のクラウン陸部24と、2本のクラウン陸部24の間に位置するクラウン周方向主溝16とを含む。このクラウン部分Crは、1本の周方向主溝12と2本の陸部20とで構成される。
このクラウン部分Crが、1本の陸部20のみで構成されてもよい。このクラウン部分Crが、2本の周方向主溝12と3本の陸部20とで構成されてもよい。このクラウン部分Crが、3本の周方向主溝12と4本の陸部20とで構成されてもよい。
クラウン部分CRの構成は、タイヤ2の仕様が考慮され、適宜決められる。クラウン部分Crに含まれる周方向主溝12の本数が多いほど、クラウン部分Crの剛性を高い剛性で維持することが困難になる。転がり抵抗を効果的に低減できる観点から、クラウン部分Crが含む周方向主溝12の本数は少ないほど好ましい。具体的には、クラウン部分Crが含む周方向主溝12の本数は2本以下であるのが好ましく、1本又は0本であるのがより好ましい。
【0052】
このタイヤ2のクラウン部分Crには、少なくとも1本の周方向細溝26が刻まれる。前述したように、クラウン部分Crは2本のクラウン陸部24を含む。このタイヤ2では、それぞれのクラウン陸部24に1本の周方向細溝26が刻まれる。このタイヤ2のクラウン部分Crには2本の周方向細溝26が刻まれる。2本の周方向細溝26の間にクラウン周方向主溝16が位置する。
このタイヤ2では、クラウン部分Crに含まれる、一の陸部20に刻まれる周方向細溝26の本数に特に制限はない。一の陸部20に2本以上の周方向細溝26が刻まれてもよい。一の陸部20に刻まれる周方向細溝26の本数は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0053】
図4は、図1に示されたトレッド面6の一部を示す。図4はクラウン陸部24を示す。
図4において両矢印WLCで示される長さは、クラウン陸部24の最大幅である。このタイヤ2のクラウン陸部24では、最大幅WLCの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WLC/TW)は、17%以上27%以下である。
【0054】
図4において一点鎖線LCMは、クラウン陸部24の最大幅中心線である。周方向細溝26は最大幅中心線LCM上に位置する。言い換えれば、周方向細溝26は、径方向において、この最大幅中心線LCMと重複するように配置される。周方向細溝26が最大幅中心線LCMの軸方向内側に設けられてもよく、この周方向細溝26が最大幅中心線LCMの軸方向外側に設けられてもよい。周方向細溝26の位置は、タイヤ2の仕様に応じて適宜決められる。
【0055】
図5は、図4のV-V線に沿った、周方向細溝26の断面を示す。
周方向細溝26は、溝口26Mを含む一対の壁面26Wと、溝底26Tを含む底面26Bとを有する。
【0056】
周方向細溝26は、形状的要素として、胴部28と拡幅部30とを備える。図5に示された周方向細溝26の胴部28は、テーパー部32と胴部本体34とを備える。
【0057】
テーパー部32は、周方向細溝26の溝口26Mを含む。テーパー部32は溝口26Mから内側に向かって先細りである。図5に示されたテーパー部32の壁面26Wの輪郭は直線で表される。この輪郭が1又は2以上の円弧で表されてもよい。
胴部本体34は、テーパー部32の径方向内側に位置する。胴部本体34はテーパー部32に連なる。胴部本体34は、周方向細溝26の深さ方向にストレートにのびる。胴部本体34の壁面26Wの輪郭は直線で表される。
【0058】
図5において符号PUで示される位置は、テーパー部32と胴部本体34との境界である。境界PUは、テーパー部32の壁面輪郭線と胴部本体34の壁面輪郭線との交点で表される。図5に示されるように、テーパー部32と胴部本体34との境界部分が丸められている場合は、境界PUは、テーパー部32の壁面輪郭線の延長線と胴部本体34の壁面輪郭線の延長線との交点で表される。
【0059】
周方向細溝26には、テーパー部32は設けられなくてもよい。この場合、胴部28は胴部本体34のみで構成される。
タイヤ2が、周方向細溝26の溝容積を確保しながら、周方向細溝26の溝口26Mへの歪の集中を効果的に抑制できる観点から、図5に示されるように、周方向細溝26にはテーパー部32が設けられるのが好ましい。
【0060】
図5において両矢印WDで示される長さは、胴部本体34の溝幅である。周方向細溝26の溝口26Mの部分にはテーパー加工が施されている。周方向細溝26の溝口26Mにおける溝幅は、胴部本体34の溝幅WDで表される。胴部本体34の溝幅WDは、後述する、拡幅部30の最大溝幅の半分よりも狭い。
【0061】
拡幅部30は、胴部28、詳細には、胴部本体34の径方向内側に位置する。拡幅部30は胴部本体34に連なる。拡幅部30は、周方向細溝26の溝底26Tを含む。
【0062】
図5において両矢印WMで示される長さは、拡幅部30の最大溝幅である。符号PMで示される位置は、拡幅部30が最大溝幅WMを示す位置である。
拡幅部30は、胴部本体34と溝底26Tとの間に最大溝幅WMを示す部分を有する。拡幅部30は胴部本体34の溝幅WDよりも広い溝幅を有する。
図5に示されるように、拡幅部30は、最大溝幅WMを示す部分から外向きに先細りである。最大溝幅位置PMから境界PSまでの部分において拡幅部30は、その外側から内向きに窪むように湾曲する。
拡幅部30は、最大溝幅WMを示す部分から内向きに先細りである。最大溝幅位置PMから溝底26Tまでの部分において拡幅部30は、丸みを帯びた輪郭を有する。この部分において拡幅部30は、その内側から外向きに膨らむように湾曲する。
拡幅部30において、その外側から内向きに窪むように湾曲する部分と、その内側から外向きに膨らむように湾曲する部分との境界は、最大溝幅位置PMの径方向外側に位置する。
【0063】
このタイヤ2の周方向細溝26では、拡幅部30のうち、最大溝幅位置PM及び溝底26Tを含む部分の輪郭は円弧で表される。図5において矢印Rhは、この最大溝幅位置PM及び溝底26Tを含む部分の輪郭を表す円弧の半径である。
【0064】
図5において符号PSで示される位置は、胴部本体34と拡幅部30との境界である。前述したように、周方向細溝26の断面において、胴部本体34の壁面輪郭線は直線である。本発明においては、拡幅部30の壁面輪郭線が胴部本体34の壁面輪郭線に収束する位置が、胴部本体34と拡幅部30との境界PSである。具体的には、胴部本体34から拡幅部30にかけての溝幅において、胴部本体34の溝幅WDの1.1倍の溝幅を示す位置が、胴部本体34と拡幅部30との境界PSとして表される。
【0065】
図5において両矢印HTで示される長さは周方向細溝26の溝深さである。両矢印HSで示される長さは、胴部28の溝深さである。溝深さHSは、溝口26Mから位置PSまでの距離で表される。両矢印HUで示される長さは、テーパー部32の溝深さである。溝深さHUは、溝口26Mから位置PUまでの距離で表される。両矢印HMで示される長さは、拡幅部30が最大溝幅WMを示す部分までの溝深さである。溝深さHMは、溝口26Mから最大溝幅位置PMまでの距離で表される。
溝深さHS、溝深さHU及び溝深さHMは、周方向細溝26の溝深さHTを表す線分に沿って計測される。
【0066】
タイヤ2が、周方向細溝26の溝容積を確保しながら、周方向細溝26の溝口26Mへの歪の集中を効果的に抑制できる観点から、テーパー部32の溝深さHUの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(HU/HT)は、0.12以上0.14以下であるのが好ましい。
【0067】
前述したように、クラウン陸部24は周方向細溝26を有する。周方向細溝26は、クラウン陸部24を2つのクラウン細陸部36に区分する。2つのクラウン細陸部36のうち、赤道面に近いクラウン細陸部36は内側クラウン細陸部38であり、トレッド面6の端TEに近いクラウン細陸部36は外側クラウン細陸部40である。
【0068】
2つのクラウン細陸部36はそれぞれ、クラウン細陸部36を横断する複数のクラウンサイプ42を有する。複数のクラウンサイプ42は、クラウン細陸部36を複数のクラウンブロック44に区分する。
内側クラウン細陸部38に設けられるクラウンサイプ42は、内側クラウンサイプ46とも呼ばれる。内側クラウン細陸部38のクラウンブロック44は、内側クラウンブロック48とも呼ばれる。外側クラウン細陸部40に設けられるクラウンサイプ42は、外側クラウンサイプ50とも呼ばれる。外側クラウン細陸部40のクラウンブロック44は、外側クラウンブロック52とも呼ばれる。
【0069】
図6は、図4のVI-VI線に沿った、内側クラウンサイプ46の断面を示す。
外側クラウンサイプ50の断面形状は、内側クラウンサイプ46のそれと同じである。内側クラウンサイプ46の断面形状を例にして、クラウンサイプ42の断面形状が説明される。
【0070】
クラウンサイプ42はその深さ方向にストレートにのびる。クラウンサイプ42は、溝口42Mを含む一対の壁面42Wと、溝底42Tを含む底面42Bとを有する。
図6において両矢印WGpは、クラウンサイプ42の溝口42Mでの溝幅である。両矢印DGpは、クラウンサイプ42の溝深さである。
このタイヤ2のクラウンサイプ42の溝幅WGpは1.0mm未満である。クラウン細陸部36に荷重が作用し、クラウン細陸部36が変形すると、クラウンサイプ42の壁面42W同士が接触し、互いに支え合う。
【0071】
図7は、図1に示されたトレッド面6の一部を示す。図7はショルダー陸部22を示す。図7において両矢印WLSで示される長さは、ショルダー陸部22の最大幅である。このタイヤ2のショルダー陸部22では、最大幅WLSの、トレッド面6の幅TWに対する比率(WLS/TW)は、15%以上25%以下である。
図7において一点鎖線LSMは、ショルダー陸部22の最大幅中心線である。
【0072】
このタイヤ2のトレッド4には、2本のショルダー陸部22が設けられる。2本のショルダー陸部22はそれぞれ、ショルダー横溝54を有する。ショルダー横溝54は、ショルダー周方向主溝14とトレッド面6の端TEとの間を繋ぐ。ショルダー横溝54はショルダー陸部22を横断する。ショルダー横溝54は軸方向に対して傾斜する。図7に示されたショルダー横溝54のトレッド面6の第二端TE2側の端は、ショルダー横溝54の赤道面側の端よりも周方向において第一側に位置する。ショルダー横溝54が軸方向にのびるように構成されてもよい。
ショルダー陸部22は複数のショルダー横溝54を有する。複数のショルダー横溝54は、ショルダー陸部22に複数のショルダーブロック56を構成する。
【0073】
ショルダー横溝54はエッジ成分として機能する。ショルダー横溝54はウェット性能の向上に貢献できる。この観点から、ショルダー横溝54は軸方向に対して傾斜するのが好ましい。
【0074】
図8は、図7のVIII-VIII線に沿った、ショルダー横溝54の断面を示す。
ショルダー横溝54はその深さ方向にストレートにのびる。ショルダー横溝54は、溝口54Mを含む一対の壁面54Wと、溝底54Tを含む底面54Bとを有する。
【0075】
図8において両矢印WGyは、ショルダー横溝54の溝口54Mでの溝幅である。両矢印DGyは、ショルダー横溝54の溝深さである。
このタイヤ2のショルダー横溝54の溝幅WGyは1.0mm以上である。
【0076】
ショルダー横溝54はクラウン細陸部36に設けられるクラウンサイプ42よりも浅い。ショルダー陸部22にショルダー横溝54を設けているにもかかわらず、ショルダー陸部22の剛性が適切に維持される。この観点から、ショルダー横溝54はクラウンサイプ42よりも浅いのが好ましい。具体的には、ショルダー横溝54の溝深さDGyの、クラウンサイプ42の溝深さDGpに対する比(DGy/DGp)は0.50以下であるのが好ましく、0.30以下であるのがより好ましい。ショルダー横溝54がウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、この比(DGy/DGp)は0.10以上であるのが好ましい。
【0077】
図7に示されるように、ショルダー陸部22は、周方向に連続してのびるショルダー縦溝58を有する。
図9は、図7のIX-IX線に沿った、ショルダー縦溝58の断面を示す。
ショルダー縦溝58はその深さ方向にストレートにのびる。ショルダー縦溝58は、溝口58Mを含む一対の壁面58Wと、溝底58Tを含む底面58Bとを有する。
図9において両矢印WGtは、ショルダー縦溝58の溝口58Mでの溝幅である。両矢印DGtは、ショルダー縦溝58の溝深さである。
このタイヤ2のショルダー縦溝58の溝幅WGtは1.0mm以上である。
【0078】
このタイヤ2のショルダー縦溝58はクラウン細陸部36に設けられるクラウンサイプ42よりも浅い。ショルダー横溝54に加えてショルダー縦溝58をショルダー陸部22に設けているにもかかわらず、ショルダー陸部22の剛性が適切に維持される。この観点から、ショルダー縦溝58はクラウンサイプ42よりも浅いのが好ましい。具体的には、ショルダー縦溝58の溝深さDGtの、クラウンサイプ42の溝深さDGpに対する比(DGt/DGp)は0.50以下であるのが好ましく、0.30以下であるのがより好ましい。ショルダー縦溝58がウェット性能の向上に効果的に貢献できる観点から、この比(DGt/DGp)は0.10以上であるのが好ましい。
【0079】
図7に示されるように、ショルダー縦溝58はショルダーブロック56を縦断する。これにより、ショルダーブロック56に、内側ショルダーブロック60及び外側ショルダーブロック62が構成される。
ショルダー縦溝58は、ショルダー横溝54と交差する。これにより、ショルダー横溝54に、内側ショルダー横溝64と外側ショルダー横溝66とが構成される。ショルダー横溝54は、内側ショルダー横溝64と外側ショルダー横溝66とを備える。内側ショルダー横溝64は、ショルダー周方向主溝14とショルダー縦溝58との間を繋ぐ。外側ショルダー横溝66は、ショルダー縦溝58とトレッド面6の端TEとの間を繋ぐ。
【0080】
ショルダー縦溝58がショルダー横溝54と交差するので、ウェット路面とタイヤ2との間に存在する水が、ショルダー横溝54を通じて効果的に排出される。このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、ショルダー縦溝58はショルダー横溝54と交差するのが好ましい。
【0081】
前述したように、トレッド4のクラウン部分CRには少なくとも1本の周方向細溝26が刻まれる。トレッド4が路面と接地すると、クラウン部分Crに含まれるクラウン陸部24は変形する。このタイヤ2では、周方向細溝26が有する一対の壁面26Wが、胴部28(詳細には、胴部本体34)において互いに接触する。
【0082】
このタイヤ2では、トレッド4が路面に接地した際に、クラウン細陸部36同士が接触し互いに支え合うことができる。周方向細溝26はクラウン陸部24の剛性を見かけ上高める。クラウン部分Crは2本のクラウン陸部24を含む。クラウン部分Crの変形が抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗を低減でき、耐摩耗性を向上できる。
【0083】
前述したように、周方向細溝26は、胴部28の内側に拡幅部30を有する。摩耗により、胴部28が消失すると、拡幅部30が露出する。前述したように、拡幅部30は胴部本体34の溝幅WDよりも広い溝幅を有する。周方向細溝26の拡幅部30は、溝容積の増加に貢献できる。拡幅部30を有する周方向細溝26は、この拡幅部30を有さない周方向細溝に比して、路面とトレッド面6との間に存在する水を効果的に排出できる。摩耗により陸部20の剛性は見かけ上高まるものの、拡幅部30が剛性の急な高まりを抑制するので、トレッド4が摩耗しても、このタイヤ2は、良好なウェット性能と、低い転がり抵抗を維持できる。
このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0084】
前述したように、周方向細溝26はクラウン陸部24の剛性を見かけ上高める。クラウン陸部24の変形が抑制されるので、接地面の形状が変化するという懸念がある。具体的には、クラウン部分Crの接地長が短くなるので、ショルダー部分の接地長が相対的に長くなり、その結果、偏摩耗の発生リスクが高まる恐れがある。
本発明者は、偏摩耗の発生リスクに関して、トレッド面6の輪郭に着目して鋭意検討したところ、赤道からトレッド面6の端TEまでの径方向距離を調整してショルダー部分の接地長をコントロールすることで、偏摩耗の発生リスクを低減できることを見出し、本発明を完成するに至っている。以下に、この偏摩耗の発生リスクを低減するための技術が説明される。
【0085】
図10は、図1に示されたタイヤ2の子午線断面における、タイヤ2の輪郭線の一部を示す。図10は、トレッド面6の輪郭線TLの一部を示す。本発明において、子午線断面とは、タイヤ2の回転軸を含む平面に沿った、このタイヤ2の断面を意味する。
図10において両矢印Aで示される方向はタイヤ2の軸方向を表す。両矢印Rで示される方向はタイヤ2の径方向を表す。図1の紙面に対して垂直な方向は、タイヤ2の周方向である。
【0086】
図10に示された輪郭線TLは、基準状態にあるタイヤ2の外面形状を変位センサーで計測することで得られる。
タイヤ2の外面の輪郭線は、計測した外面形状において、溝8や装飾等がないと仮定し、直線又は円弧からなる複数の輪郭線をつないで構成される。
【0087】
詳述しないが、タイヤ2の外面は、未加硫状態のタイヤ(生のタイヤ2であり、ローカバーとも呼ばれる。)を、図示されないモールドのキャビティ面に押し当てることで形づけられる。図10に示されたトレッド面6の輪郭線TLは、モールドのキャビティ面におけるトレッド面6に対応する部分の輪郭線に一致する。
【0088】
前述したように、トレッド4のうち、一対のショルダー周方向主溝14である第一ショルダー周方向主溝14(図示されず)と第二ショルダー周方向主溝との間の部分がクラウン部分Crであり、ショルダー周方向主溝14と、このショルダー周方向主溝14の近くに位置するトレッド面6の端TEとの間の部分が、ショルダー陸部22である。
このタイヤ2のトレッド面6は、クラウン部分Crの陸面10Cと、一対のショルダー陸部22の陸面10Sとを含む。トレッド面6の輪郭線TLは、クラウン部分Crの陸面10Cの輪郭線(以下、クラウン輪郭線TLC)と、一対のショルダー陸部22の陸面10Sの輪郭線(以下、ショルダー輪郭線TLS)とを備える。
【0089】
このタイヤ2のクラウン輪郭線TLCは、トレッド面6の第一端TE1側に位置するショルダー周方向主溝14の内側エッジ14E1(図示されず)と、その第二端TE2側に位置するショルダー周方向主溝14の内側エッジ14E1との間を架け渡し、赤道PCを含む。クラウン輪郭線TLCは、周方向細溝26の溝口26Mも含む。
クラウン輪郭線TLCにおいては、赤道PCが径方向において最も外側に位置し、ショルダー周方向主溝14の内側エッジ14E1が径方向において最も内側に位置する。クラウン輪郭線TLCは、赤道PCから内側エッジ14E1に向かって、タイヤ2の回転軸(図示されず)からの距離が漸減していくように構成される。
クラウン輪郭線TLCは外向きに膨らむ円弧である。図10において符号R1で示される矢印は、クラウン輪郭線TLCの半径である。図示されないが、クラウン輪郭線TLCの中心は、赤道面上に位置する。クラウン部分Crの陸面10Cの輪郭は、赤道面上に中心を有る円弧で表される。
【0090】
このタイヤ2のショルダー輪郭線TLSは、ショルダー周方向主溝14の外側エッジ14E2と、トレッド面6の端TEとの間を架け渡す。
ショルダー輪郭線TLSにおいては、ショルダー周方向主溝14の外側エッジ14E2が径方向において最も外側に位置し、トレッド面6の端TEが径方向において最も内側に位置する。ショルダー輪郭線TLSは、外側エッジ14E2からトレッド面6の端TEに向かって、前述の回転軸(図示されず)からの距離が漸減していくように構成される。
このタイヤ2のショルダー輪郭線TLSは直線である。このショルダー輪郭線TLSが円弧であってもよい。言い換えれば、ショルダー陸部22の陸面10Sの輪郭は直線又は円弧で表される。ショルダー輪郭線TLSが円弧である場合、この円弧が、トレッド面6の内側に中心を有する、外向きに膨らむ円弧であってもよく、トレッド面6の外側に中心を有する、内向きに膨らむ円弧であってもよい。
【0091】
このタイヤ2のトレッド面6の輪郭線TLでは、ショルダー周方向主溝14の一対の壁面14W間に、クラウン輪郭線TLCとショルダー輪郭線TLSとの変わり目が位置する。図10に示されるように、ショルダー周方向主溝14の外側エッジ14E2はその内側エッジ14E1よりも径方向内側に位置する。図10において両矢印dで示される、内側エッジ14E1から外側エッジ14E2までの径方向距離が2.0mm以下であれば、クラウン輪郭線TLCの延長線とショルダー輪郭線TLSの延長線とは、接していてもよいし、交差していてもよいし、交わることなく離れていてよい。
【0092】
図10において実線RLは径方向基準線である。径方向基準線RLは、トレッド面6の端TEを通り径方向にのびる直線である。実線EXLは、クラウン輪郭線TLCの延長線、つまり、クラウン部分CRの陸面10Cの輪郭を表す円弧の延長線である。符号BTEで示される位置は、径方向基準線RLと延長線EXLとの交点である。この交点BTEは、トレッド面6の基準端である。
【0093】
図10において両矢印D1で示される長さは、赤道PCからトレッド面6の端TEまでの径方向距離である。径方向距離D1は、トレッド面6のドロップ量とも呼ばれる。両矢印D2で示される長さは、赤道PCからトレッド面6の基準端BTEまでの径方向距離である。径方向距離D2は、トレッド面6の基準ドロップ量とも呼ばれる。
ドロップ量D1の基準ドロップ量D2に対する比(D1/D2)は、延長線EXLに対するトレッド面6の位置や、延長線EXLからトレッド面6がどの程度離れているかを表す。具体的には、比(D1/D2)が1.00に近いほど、トレッド面6は延長線EXLの近くに位置することを表す。比(D1/D2)が1.00よりも大きい場合、トレッド面6は延長線EXLの径方向内側に位置することを表す。トレッド面6が延長線EXLの径方向内側に位置する状態は、トレッド面6はネガティブ側に位置するとして表される。比(D1/D2)が1.00よりも小さい場合、トレッド面6は延長線EXLの径方向外側に位置することを表す。トレッド面6が延長線EXLの径方向外側に位置する状態は、トレッド面6はポジティブ側に位置するとして表される。
図6に示されたトレッド4では、トレッド面6のドロップ量D1が基準ドロップ量D2よりも小さい、言い換えれば、比(D1/D2)が1.00よりも小さい。そのため、トレッド面6はポジティブ側に位置する。
【0094】
このタイヤ2では、その子午線断面におけるトレッド面6の輪郭線TLが、クラウン輪郭線TLCと、一対のショルダー輪郭線TLSとを含む。クラウン輪郭線TLCが、赤道面上に中心を有し、400mm以上の半径を有する円弧であり、それぞれのショルダー輪郭線TLSが、0.002mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線である。
クラウン輪郭線TLCの円弧の半径R1が400mm未満であると、クラウン部分CRの陸面10Cの丸みが強調され、周方向細溝26が潰れるというよりもむしろ、溝幅が広がるようにクラウン部分CRの陸面10Cが路面に押し付けられる。この場合、周方向細溝26がその効果を十分に発揮できない。しかしこのタイヤ2のクラウン輪郭線TLCは、赤道面上に中心を有し、400mm以上の半径を有する円弧であるので、周方向細溝26が潰れるように、クラウン部分CRの陸面10Cが路面に押し付けられる。このタイヤ2の周方向細溝26はその効果を十分に発揮できる。この観点から、クラウン輪郭線TLCは、赤道面上に中心を有し、500mm以上の半径を有する円弧であるのが好ましい。
ショルダー輪郭線TLSが0.002mm-1より大きい曲率を有する円弧で表される場合、この円弧が外向きに膨らむ円弧であれば、ショルダー陸部22の陸面10Sが膨らみ、ショルダー陸部22のボリュームが増加する。この場合、転がり抵抗が増加する恐れがある。一方、この円弧が内向きに膨らむ円弧であれば、ショルダー陸部22の陸面10Sが窪み、陸面10S全体が路面と接地できないために、例えば、トレッド面6の端TEにおいて局所的に接地圧が高まる恐れがある。この場合、偏摩耗の発生リスクが高まる。しかしこのタイヤ2のショルダー輪郭線TLSは、0.002mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線であるので、ショルダー陸部22のボリュームは適正に維持される。陸面10S全体が路面と接地するので、局所的な接地圧の高まりも抑制される。ショルダー陸部22を起因とする転がり抵抗の増加や、偏摩耗の発生が抑制される。この観点から、ショルダー輪郭線TLSは、0.001mm-1以下の曲率を有する円弧又は直線であるのが好ましい。
そして、ドロップ量D1の基準ドロップ量D2に対する比(D1/D2)が0.60以上1.70以下である。
比(D1/D2)が0.60未満であると、ショルダー部分での接地長が長くなり、トレッド面6の端TEにおいて接地圧が局所的に高まる恐れがある。この場合、偏摩耗の発生リスクが高まる。比(D1/D2)が1.70より大きいと、ショルダー部分での接地長が短くなり過ぎて、トレッド面6の端TEの部分が路面に対して滑りやすくなる恐れがある。この場合も、偏摩耗の発生リスクが高まる。しかしこのタイヤ2では、比(D1/D2)が0.60以上1.70以下であるので、周方向細溝26を設けたことで短くなったクラウン部分CRの接地長に見合った接地長を示すように、このタイヤ2はショルダー部分の接地状態をコントロールできる。しかも周方向細溝26の溝底26T側に設けられた拡幅部30がクラウン部分CRの剛性の高まり過ぎを抑制するので、このタイヤ2はショルダー部分の接地状態を効果的にコントロールできる。このタイヤ2は偏摩耗の発生リスクの低減を図ることができる。この観点から、比(D1/D2)は0.65以上1.65以下であるのが好ましい。
【0095】
前述したように、このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図ることができる。このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる。
【0096】
図11は、タイヤの接地面の形状(接地形状)の一例を示す。図11において両矢印Lで示される方向は接地面の長さ方向である。長さ方向はタイヤの周方向に相当する。両矢印Wで示される方向は接地面の幅方向である。幅方向はタイヤの軸方向に相当する。
接地形状は、前述したように、接地形状測定装置(図示されず)を用いて、正規状態のタイヤに正規荷重を付与し、キャンバー角を0度とし、タイヤを平らな路面に接触させて得られる接地面をカメラで撮影する、転写する等して得られる。
この図11に示された接地形状の模式図を用いて、以下に、接地形状を評価するための指標が説明される。
【0097】
図11において一点鎖線CLaは接地形状の幅方向中心位置を示す基準線である。この基準線CLaは通常、タイヤの赤道面に一致する。
符号GEで示される位置は接地面の幅方向外端である。第一の幅方向外端GEから第二の幅方向外端GEまでの幅方向距離が、この接地面の最大接地幅である。
両矢印W100で示される長さは、基準線CLaから幅方向外端GEまでの幅方向距離である。この幅方向距離W100は基準幅とも呼ばれる。前述の最大接地幅は、基準幅W100の2倍に等しい。
符号L70で示される実線は、基準線CLaと幅方向外端GEとの間に位置し、長さ方向にのびる直線である。符号W70で示される長さは、基準線CLaから実線L70までの幅方向距離である。本発明においては、幅方向距離W70の、基準幅W100に対する比率(W70/W100)は70%である。実線L70は、最大接地幅の70%幅に相当する位置を表わす。
符号L97で示される実線は、実線L70と幅方向外端GEとの間に位置し、長さ方向にのびる直線である。符号W97で示される長さは、基準線CLaから実線L97までの幅方向距離である。本発明においては、幅方向距離W97の、基準幅W100に対する比率(W97/W100)は97%である。実線L97は、最大接地幅の97%幅に相当する位置を表わす。
両矢印L1で示される長さは、実線L97と接地形状との交線の長さである。本発明において、この長さL1が、最大接地幅の97%幅に相当する位置での接地面の長さであり、接地長L1として表される。
両矢印L2で示される長さは、実線L70と接地形状との交線の長さである。本発明において、この長さL2が、最大接地幅の70%幅に相当する位置での接地面の長さであり、接地長L2として表される。
両矢印L3で示される長さは、基準線CLaと接地形状との交線の長さである。本発明において、この長さL3が、最大接地幅の中心に相当する位置での接地面の長さであり、接地長L3として表される。
【0098】
このタイヤ2では、接地長L2の接地長L1に対する比(L2/L1)は、0.90以上1.10以下であるのが好ましい。
比(L2/L1)が0.90以上であることで、ショルダー部分の内側部分の接地長が、その外側部分、つまり、トレッド面6の端PEの部分での接地長に対して相対的に短くなることが抑制される。局所的な接地圧の高まりが抑制されるので、このタイヤ2は偏摩耗の発生リスクの低減を図ることができる。この観点から、比(L2/L1)は0.95以上であるのがより好ましい。
比(L2/L1)が1.10以下であることで、ショルダー部分の内側部分の接地長、トレッド面6の端PEの部分での接地長に対して相対的に長くなることが抑制される。ショルダー陸部22が路面に対して滑りにくくなるので、この場合も、偏摩耗の発生リスクの低減を図ることができる。この観点から、比(L2/L1)は1.05以下であるのがより好ましい。
【0099】
このタイヤ2では、接地長L3の接地長L2に対する比(L3/L2)は、1.00以上1.20以下であることが好ましい。
比(L3/L2)が1.00以上であることで、クラウン部分Crの接地長が、トレッド面6の端PEの部分の接地長に対して相対的に短くなることが抑制される。クラウン部分Crが路面に対して滑りにくくなるので、このタイヤ2は偏摩耗の発生リスクの低減を図ることができる。この観点から、比(L3/L2)は1.05以上であるのがより好ましい。
比(L3/L2)が1.20以下であることで、クラウン部分Crの接地長が、トレッド面6の端PEの部分の接地長に対して相対的に長くなることが抑制される。局所的な接地圧の高まりが抑制されるので、この場合においても、このタイヤ2は偏摩耗の発生リスクの低減を図ることができる。この観点から、比(L3/L2)は1.15以下であるのがより好ましい。
【0100】
このタイヤ2では、偏摩耗の発生リスクの低減の観点から、比(L2/L1)が0.90以上1.10以下であり、比(L3/L2)が1.00以上1.20以下であるのがより好ましい。
【0101】
前述したように、クラウン部分Crに含まれるクラウン陸部24は変形すると、周方向細溝26が有する一対の壁面26Wが、胴部本体34において互いに接触する。これにより、クラウン部分Crの変形が抑制され、転がり抵抗の低減が図られる。
このタイヤ2では、胴部本体34の溝幅WDは2.5mm以下であるのが好ましい。これにより、周方向細溝26の胴部本体34が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、溝幅WDは2.0mm以下であるのがより好ましい。
【0102】
前述したように、周方向細溝26は胴部本体34の内側に、胴部本体34の溝幅よりも広い溝幅を有する拡幅部30を有する。
このタイヤ2では、胴部本体34の溝幅WDの、拡幅部30の最大溝幅WMに対する比(WD/WM)は0.10以上0.40以下であるのが好ましい。
比(WD/WM)が0.10以上に設定されことにより、拡幅部30が大きくなり過ぎず、その大きさが適切に維持される。拡幅部30による剛性への影響が抑制されるので、周方向細溝26が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、比(WD/WM)は0.15以上であるのがより好ましい。
比(WD/WM)が0.40以下に設定されことにより、拡幅部30が小さくなり過ぎず、その大きさが適切に維持される。拡幅部30が露出した際、この拡幅部30がウェット性能の向上に効果的に貢献できる。この観点から、比(WD/WM)は0.35以下であるのがより好ましい。
【0103】
タイヤ2が、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図ることができる観点から、胴部本体34の溝幅WDは2.0mm以下であり、胴部本体34の溝幅WDの、拡幅部30の最大溝幅WMに対する比(WD/WM)は0.10以上0.40以下であるのがより好ましい。
【0104】
このタイヤ2では、好ましくは、拡幅部30が最大溝幅WMを示す位置PMは、周方向細溝26の溝深さの3/4の溝深さに相当する位置と、溝底26Tとの間に位置する。具体的には、周方向細溝26の溝口26Mから拡幅部30が最大溝幅WMを示す位置PMまでの溝深さHMの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(HM/HT)は0.80以上0.90以下であるのが好ましい。
比(HM/HT)が0.80以上に設定されることにより、拡幅部30が溝口26Mから適正な間隔をあけて配置される。胴部本体34の長さが確保されるので、周方向細溝26が転がり抵抗の低減に効果的に貢献できる。この観点から、比(HM/HT)は0.82以上であるのがより好ましい。
比(HM/HT)が0.90以下に設定されることにより、露出した拡幅部30がウェット性能の向上に効果的に貢献できる。この観点から、比(HM/HT)は0.88以下であるのがより好ましい。
【0105】
このタイヤ2の周方向細溝26の溝深さHTは、クラウン周方向主溝16の溝深さDGcと同じある、又は、周方向細溝26は、クラウン周方向主溝16よりも浅い。前述したように、周方向細溝26はその溝底26T側に拡幅部30を有する。周方向細溝26の拡幅部30が、トレッド4が摩耗してタイヤ2の交換が必要な状態(以下、摩耗末期状態)に到達するまでの間、低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる。このタイヤ2は、摩耗によるウェット性能の低下を効果的に抑制できる。
この観点から、周方向細溝26の溝深さHTは、クラウン周方向主溝16の溝深さDGcと同じある、又は、周方向細溝26は、クラウン周方向主溝16よりも浅いのが好ましい。言い換えれば、周方向細溝26の溝深さHTの、クラウン周方向主溝16の溝深さDGcに対する比(HT/DGc)が1.0以下であることが好ましい。
摩耗末期状態において、周方向細溝26全体が消失することなく、拡幅部30が低減した溝容積を補うことに効果的に貢献できる観点から、比(HT/DGc)は0.75以上であることが好ましい。
【0106】
周方向細溝26の胴部28の溝深さHSの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(HS/HT)は0.20以上0.50以下であるのが好ましい。
比(HS/HT)が0.20以上に設定されることにより、このタイヤ2は、拡幅部30によるクラウン陸部24の剛性への影響を効果的に抑制できる。周方向細溝26がクラウン陸部24の剛性を見かけ上高めることに効果的に貢献できる。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、比(HS/HT)は0.25以上であるのがより好ましい。
比(HS/HT)が0.50以下に設定されることにより、拡幅部30が、摩耗により低減する溝容積を補うことに効果的に貢献できる。この観点から、比(HS/HT)は0.45以下であるのがより好ましい。
【0107】
このタイヤ2の周方向細溝26はクラウンサイプ42よりも深い。クラウンサイプ42は周方向細溝26よりも先に消失する。クラウンサイプ42から周方向細溝26の拡幅部30への切り替わりによる、転がり抵抗への影響と、ウェット性能への影響とを小さく抑制できる観点から、クラウンサイプ42の溝深さDGpの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(DGp/HT)は、0.30以上であるのが好ましく、0.50以上であるのがより好ましい。同様の観点から、この比(DGp/HT)は0.85以下であるのが好ましい。
【0108】
このタイヤ2では、クラウンサイプ42は周方向細溝26の胴部28よりも深いのが好ましい。これにより、このタイヤ2は、クラウンサイプ42から周方向細溝26の拡幅部30への切り替わりによる、転がり抵抗への影響と、ウェット性能への影響とを小さく抑制できる。この観点から、周方向細溝26の胴部28の溝深さHSの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(HS/HT)は0.20以上0.50以下であり、クラウンサイプ42の溝深さDGpの、周方向細溝26の溝深さHTに対する比(DGp/HT)は0.30以上0.85以下であり、クラウンサイプ42は周方向細溝26の胴部28よりも深いのがより好ましい。
【0109】
前述したように、周方向細溝26の溝深さHTは、クラウン周方向主溝16の溝深さDGcと同じある、又は、周方向細溝26は、クラウン周方向主溝16よりも浅い。クラウンサイプ42は、クラウン周方向主溝16よりも浅い。
【0110】
このタイヤ2では、周方向細溝26がその機能を十分に発揮できる観点から、トレッド面6の端TEに対するショルダー周方向主溝14の位置と、このショルダー周方向主溝14に最も近い周方向細溝26の位置とがコントロールされる。
図10において両矢印WSで示される長さは、トレッド面6の端TEからショルダー周方向主溝14の溝底14Tまでの軸方向距離である。両矢印WHで示される長さは、トレッド面6の端TEから周方向細溝26の溝底26Tまでの軸方向距離である。
【0111】
このタイヤ2では、ショルダー周方向主溝14の溝底14Tの位置は、軸方向において、トレッド面6の端TEから周方向細溝26の溝底26Tまでの軸方向距離WHの半分の位置と一致する、又は、ショルダー周方向主溝14の溝底14Tは、軸方向距離WHの半分の位置よりも軸方向内側に位置するのが好ましい。これにより、ショルダー周方向主溝14と周方向細溝26との間に位置する外側クラウン細陸部40が適正なボリュームで構成される。外側クラウン細陸部40に荷重が作用するとすぐに、外側クラウン細陸部40が変形し、周方向細溝26が有する一対の壁面26Wが胴部本体34において接触できる。クラウン部分Crの変形が効果的に抑制されるので、このタイヤ2は転がり抵抗の低減を図ることができる。
【0112】
このタイヤ2では、ショルダー周方向主溝14と周方向細溝26との間に位置する外側クラウン細陸部40には周方向に連続してのびる縦溝は設けられていない。このような場合は、図10に示されるように、ショルダー周方向主溝14の溝底14Tは、軸方向距離WHの半分の位置よりも軸方向内側に位置するのがより好ましい。具体的には、軸方向距離WSの軸方向距離WHに対する比(WS/WH)は0.60以上であるのがより好ましい。外側クラウン細陸部40の剛性を確保する観点から、この比(WS/WH)は0.80以下であるのが好ましい。
【0113】
図4に示されるように、周方向細溝26は、ストレートではなく蛇行しながら周方向にのびる。特に、このタイヤ2の周方向細溝26は、赤道面に近い内側細溝68と、トレッド面6の端TEに近い外側細溝70と、内側細溝68と外側細溝70とを繋ぐ連結細溝72とを含む。内側細溝68及び外側細溝70は、最大幅中心線LCMと重複するように配置される。
【0114】
連結細溝72のうち、内側細溝68と、周方向においてこの内側細溝68の第一側に位置する外側細溝70とを繋ぐ連結細溝72は第一連結細溝72aとも呼ばれる。内側細溝68と、周方向においてこの内側細溝68の第二側に位置する外側細溝70とを繋ぐ連結細溝72は第二連結細溝72bとも呼ばれる。
第一連結細溝72a、内側細溝68、第二連結細溝72b、及び外側細溝70をこの順で繋げて構成されるユニットを溝ユニットとしたとき、この溝ユニットを複数、周方向に繋げることで、周方向細溝26が構成される。内側細溝68と外側細溝70とは、周方向に交互に配置される。
【0115】
クラウン陸部24に力が作用しクラウン陸部24が変形すると、周方向細溝26は、その胴部本体34において壁面同士が接触する。周方向細溝26は、蛇行しながら周方向にのびるので、壁面同士が効果的に噛み合う。周方向細溝26の両側に位置するクラウン細陸部36が互いに拘束し合う。クラウン陸部24の剛性が見かけ上高まる。クラウン陸部24の変形が効果的に抑制される。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、周方向細溝26は、内側細溝68と、外側細溝70と、内側細溝68と外側細溝70とを繋ぐ連結細溝72とを備え、内側細溝68と外側細溝70とは周方向に交互に配置されるのが好ましい。
【0116】
図4に示された内側クラウンサイプ46は、軸方向に対して傾斜する。外側クラウンサイプ50も、軸方向に対して傾斜する。クラウンサイプ42は軸方向に対して傾斜する。クラウンサイプ42は軸方向にのびてもよい。
軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するクラウンサイプ42はエッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤ2はウェット性能の向上を図ることができる。この観点から、クラウンサイプ42は、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するのが好ましい。クラウンサイプ42は、軸方向に対して傾斜するのがより好ましい。
【0117】
図4において、角度θucは、内側クラウンサイプ46が軸方向に対してなす角度を表す。角度θucは、内側クラウンサイプ46の傾斜角とも呼ばれる。角度θscは、外側クラウンサイプ50が軸方向に対してなす角度を表す。角度θscは、外側クラウンサイプ50の傾斜角とも呼ばれる。
内側クラウンサイプ46がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、内側クラウンサイプ46の傾斜角θucは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θucは45度以下であるのが好ましい。
外側クラウンサイプ50がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、外側クラウンサイプ50の傾斜角θscは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θscは45度以下であるのが好ましい。
【0118】
図4に示されるように、内側クラウンサイプ46のトレッド面6の端TE側の端は、内側クラウンサイプ46の赤道面側の端よりも周方向において第二側に位置する。外側クラウンサイプ50のトレッド面6の端TE側の端は、外側クラウンサイプ50の赤道面側の端よりも周方向において第一側に位置する。内側クラウンサイプ46の傾斜の向きは、外側クラウンサイプ50の向きと逆である。
このタイヤ2では、赤道面側からトレッド面6の端TEに向かってクラウン陸部24に力が作用した場合、外側クラウンサイプ50において壁面同士が接触し互いに支え合う。外側クラウン細陸部40が内側クラウン細陸部38の動きを効果的に拘束できる。これにより、クラウン陸部24の剛性が見かけ上高まる。トレッド面6の端TE側から赤道面に向かってクラウン陸部24に力が作用した場合、内側クラウンサイプ46において壁面同士が接触し互いに支え合う。内側クラウン細陸部38が外側クラウン細陸部40の動きを効果的に拘束できる。この場合においても、クラウン陸部24の剛性が見かけ上高まる。いずれの場合も、クラウン陸部24の変形が効果的に抑制される。このタイヤ2は転がり抵抗をさらに低減できる。この観点から、内側クラウン細陸部38におけるクラウンサイプ42の傾斜の向きは、外側クラウン細陸部40におけるクラウンサイプ42の傾斜の向きと逆であるのが好ましい。
【0119】
転がり抵抗の低減を図りながらも、摩耗によるウェット性能の低下を効果的に抑制できる観点から、2つのクラウン細陸部36のそれぞれに設けられるクラウンサイプ42は軸方向に対して傾斜し、内側クラウンサイプ46の傾斜の向きは外側クラウンサイプ50の傾斜の向きと逆であり、内側クラウンサイプ46がクラウン周方向主溝16の第二頂点14bと周方向細溝26の外側細溝70との間を繋ぎ、外側クラウンサイプ50が周方向細溝26の内側細溝68とショルダー周方向主溝14とを繋ぐのがより好ましい。
【0120】
図7に示されるように、内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれは、軸方向に対して傾斜する。内側ショルダー横溝64が軸方向にのびるように、ショルダー陸部22が構成されてもよい。外側ショルダー横溝66が軸方向にのびるように、ショルダー陸部22が構成されてもよい。
【0121】
内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれは、エッジ成分として機能する。内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66を有するショルダー横溝54は、ウェット性能の向上に貢献できる。タイヤ2がウェット性能の向上を図ることができる観点から、ショルダー陸部22が、ショルダー陸部22を横断するショルダー横溝54を有し、ショルダー横溝54が、赤道面側に位置する内側ショルダー横溝64と、トレッド面6の端TE側に位置する外側ショルダー横溝66とを備え、内側ショルダー横溝64及び外側ショルダー横溝66のそれぞれが、軸方向にのびる、又は、軸方向に対して傾斜するのが好ましい。
【0122】
図7において、角度θuyは、内側ショルダー横溝64が軸方向に対してなす角度を表す。角度θuyは、内側ショルダー横溝64の傾斜角とも呼ばれる。角度θsyは、外側ショルダー横溝66が軸方向に対してなす角度を表す。角度θsyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角とも呼ばれる。
内側ショルダー横溝64がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θuyは45度以下であるのが好ましい。
外側ショルダー横溝66がエッジ成分として効果的に機能できる観点から、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyは、0度以上であるのが好ましく、5度以上であるのがより好ましい。同様の観点から、傾斜角θsyは45度以下であるのが好ましい。
【0123】
図7に示されるように、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyよりも大きい。これにより、ショルダー横溝54が全体として、エッジ成分として効果的に機能できる。このタイヤ2は、ウェット性能の向上を効果的に図ることができる。この観点から、内側ショルダー横溝64の傾斜角θuyは、外側ショルダー横溝66の傾斜角θsyよりも大きいのが好ましい。この場合、ショルダー縦溝58は、ショルダー陸部22の最大幅中心線LSMよりもトレッド面6の端TE側に位置するのがさらに好ましい。
【0124】
以上の説明から明らかなように、本発明によれば、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる、重荷重用タイヤが得られる。
【産業上の利用可能性】
【0125】
以上説明された、摩耗によるウェット性能の低下を抑制しながら転がり抵抗の低減を図るとともに、偏摩耗の発生リスクの低減を達成できる技術は、種々のタイヤに適用されうる。
【符号の説明】
【0126】
2・・・タイヤ
4・・・トレッド
6・・・トレッド面
8・・・溝
10・・・陸面
12・・・周方向主溝
14・・・ショルダー周方向主溝
16・・・クラウン周方向主溝
20・・・陸部
22・・・ショルダー陸部
24・・・クラウン陸部
26・・・周方向細溝
28・・・胴部
30・・・拡幅部
32・・・テーパー部
34・・・胴部本体
68・・・内側細溝
70・・・外側縦溝
72・・・連結細溝
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11