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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176738
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】表示装置の製造方法および製造装置
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/16 20230101AFI20241212BHJP
   H10K 59/122 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 59/173 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 71/60 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/81 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/82 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/15 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/16 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/17 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/858 20230101ALI20241212BHJP
   H10K 50/844 20230101ALI20241212BHJP
   G09F 9/30 20060101ALI20241212BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20241212BHJP
   C23C 14/12 20060101ALI20241212BHJP
   C23C 14/24 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H10K71/16
H10K59/122
H10K59/173
H10K71/60
H10K50/81
H10K50/82
H10K50/15
H10K50/16
H10K50/17
H10K50/858
H10K50/844
G09F9/30 365
G09F9/30 349Z
G09F9/00 338
C23C14/12
C23C14/24 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】24
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095512
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】502356528
【氏名又は名称】株式会社ジャパンディスプレイ
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高山 健
(72)【発明者】
【氏名】福田 加一
(72)【発明者】
【氏名】竹中 貴史
(72)【発明者】
【氏名】水越 寛文
(72)【発明者】
【氏名】濱田 夕慎
【テーマコード(参考)】
3K107
4K029
5C094
5G435
【Fターム(参考)】
3K107AA01
3K107BB01
3K107CC41
3K107CC45
3K107DD71
3K107DD74
3K107DD78
3K107DD89
3K107EE21
3K107GG04
3K107GG36
4K029AA11
4K029CA01
4K029DB06
4K029DB12
4K029DB14
4K029KA01
5C094AA32
5C094AA42
5C094BA03
5C094BA27
5C094CA19
5C094FA01
5C094FA02
5C094FA03
5C094FB05
5C094GB01
5C094JA08
5G435AA17
5G435BB05
5G435CC09
5G435KK05
5G435KK10
(57)【要約】
【課題】 表示領域に設けられた配線と表示素子の上電極を良好に接続可能な構成を提供する。
【解決手段】 実施形態によれば、表示装置の製造方法は、下電極と、下電極と重なる画素開口を有するリブと、下部および下部の側面から突出した上部を有する隔壁とを含む基板を用意し、画素開口を通じて下電極に接触する有機層を基板に対し蒸着で形成し、有機層を覆うとともに隔壁の下部に接触する上電極を基板に対し蒸着で形成する、ことを含む。有機層の第1薄膜の形成に用いられる第1蒸着源は、第1蒸着源に対して相対的に移動する基板に向けて材料を放出する第1ノズルを備える。上電極の形成に用いられる第2蒸着源は、第2蒸着源に対して相対的に移動する基板に向けて材料を放出する第2ノズルを備える。第1および第2ノズルの少なくとも一方の軸は、平面視において基板の移動方向と直交する方向に向けて基板の法線方向に対し傾斜している。
【選択図】 図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下電極と、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出した上部を有する隔壁と、を含む基板を用意し、
前記画素開口を通じて前記下電極に接触するとともに電圧の印加に応じて発光する有機層を前記基板に対して蒸着によって形成し、
前記有機層を覆うとともに前記隔壁の前記下部に接触する上電極を前記基板に対して蒸着によって形成する、
ことを含み、
前記有機層は、第1薄膜を含み、
前記第1薄膜の形成に用いられる第1蒸着源は、前記第1蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて気化された材料を放出する第1ノズルを備え、
前記上電極の形成に用いられる第2蒸着源は、前記第2蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて気化された材料を放出する第2ノズルを備え、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの少なくとも一方の軸は、平面視において前記基板の移動方向と直交する方向に向けて、前記基板の法線方向に対し傾斜している、
表示装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1ノズルの軸は、平面視において前記移動方向と直交する第1側方に向けて、前記法線方向に対し傾斜しており、
前記第2ノズルの軸は、前記第1側方と反対の第2側方に向けて、前記法線方向に対し傾斜している、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項3】
前記第1蒸着源は、平面視において前記移動方向と直交する方向に並ぶ複数の前記第1ノズルを備え、
前記複数の第1ノズルの各々の軸が前記第1側方に向けて傾斜している、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項4】
前記第2蒸着源は、平面視において前記移動方向と直交する方向に並ぶ複数の前記第2ノズルを備え、
前記複数の第2ノズルの各々の軸が前記第2側方に向けて傾斜している、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項5】
前記有機層は、第2薄膜を含み、
前記第2薄膜の形成に用いられる第3蒸着源は、気化された材料を放出する第3ノズルを備え、
前記第3ノズルの軸は、前記法線方向と平行である、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項6】
前記第3蒸着源は、前記第3ノズルを囲うとともに、前記第3ノズルの全周にわたり同等の高さを有したシールドをさらに備えている、
請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項7】
前記第1薄膜は、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層のいずれかである、
請求項5に記載の表示装置の製造方法。
【請求項8】
前記第2薄膜は、正孔注入層である、
請求項7に記載の表示装置の製造方法。
【請求項9】
前記隔壁は、前記画素開口を挟むように配置された第1隔壁および第2隔壁を有し、
前記第1隔壁の前記上部は、第1端部を有し、
前記第2隔壁の前記上部は、第2端部を有し、
前記有機層は、前記第1端部の直下における厚さが、前記第2端部の直下における厚さよりも小さくなるように形成される、
請求項2に記載の表示装置の製造方法。
【請求項10】
前記上電極は、前記第1端部の直下における厚さが、前記第2端部の直下における厚さよりも大きくなるように形成される、
請求項9に記載の表示装置の製造方法。
【請求項11】
前記第1薄膜および前記上電極を形成する際に、静止した前記第1蒸着源および前記第2蒸着源に対して前記基板を移動させる、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項12】
前記第1薄膜および前記上電極を形成する際に、静止した前記基板に対して前記第1蒸着源および前記第2蒸着源を移動させる、
請求項1に記載の表示装置の製造方法。
【請求項13】
前記上電極を覆うキャップ層を形成することをさらに含む、
請求項1乃至12のうちいずれか1項に記載の表示装置の製造方法。
【請求項14】
前記キャップ層および前記隔壁を連続的に覆う封止層を形成することをさらに含む、
請求項13に記載の表示装置の製造方法。
【請求項15】
下電極と、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出した上部を有する隔壁と、を含む基板に対し、前記画素開口を通じて前記下電極に接触するとともに電圧の印加に応じて発光する有機層を形成する第1蒸着装置と、
前記有機層を覆うとともに前記隔壁の前記下部に接触する上電極を前記基板に対して形成する第2蒸着装置と、
を備え、
前記有機層は、第1薄膜を含み、
前記第1蒸着装置は、第1ノズルが設けられた第1蒸着源を備え、前記第1ノズルは、前記第1蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて、気化された前記第1薄膜の材料を放出し、
前記第2蒸着装置は、第2ノズルが設けられた第2蒸着源を備え、前記第2ノズルは、前記第2蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて、気化された前記上電極の材料を放出し、
前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの少なくとも一方の軸は、平面視において前記基板の移動方向と直交する方向に向けて、前記基板の法線方向に対し傾斜している、
表示装置の製造装置。
【請求項16】
前記第1ノズルの軸は、平面視において前記移動方向と直交する第1側方に向けて、前記法線方向に対し傾斜しており、
前記第2ノズルの軸は、前記第1側方と反対の第2側方に向けて、前記法線方向に対し傾斜している、
請求項15に記載の表示装置の製造装置。
【請求項17】
前記第1蒸着源は、平面視において前記移動方向と直交する方向に並ぶ複数の前記第1ノズルを備え、
前記複数の第1ノズルの各々の軸が前記第1側方に向けて傾斜している、
請求項16に記載の表示装置の製造装置。
【請求項18】
前記第2蒸着源は、平面視において前記移動方向と直交する方向に並ぶ複数の前記第2ノズルを備え、
前記複数の第2ノズルの各々の軸が前記第2側方に向けて傾斜している、
請求項16に記載の表示装置の製造装置。
【請求項19】
前記有機層は、第2薄膜を含み、
前記第2薄膜の形成に用いられる第3蒸着源は、気化された材料を放出する第3ノズルを備え、
前記第3ノズルの軸は、前記法線方向と平行である、
請求項16に記載の表示装置の製造装置。
【請求項20】
前記第3蒸着源は、前記第3ノズルを囲うとともに、前記第3ノズルの全周にわたり同等の高さを有したシールドをさらに備えている、
請求項19に記載の表示装置の製造装置。
【請求項21】
前記第1薄膜は、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層のいずれかである、
請求項19に記載の表示装置の製造装置。
【請求項22】
前記第2薄膜は、正孔注入層である、
請求項21に記載の表示装置の製造装置。
【請求項23】
前記第1薄膜および前記上電極を形成する際に、静止した前記第1蒸着源および前記第2蒸着源に対して前記基板を移動させる、
請求項15に記載の表示装置の製造装置。
【請求項24】
前記第1薄膜および前記上電極を形成する際に、静止した前記基板に対して前記第1蒸着源および前記第2蒸着源を移動させる、
請求項15に記載の表示装置の製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、表示装置の製造方法および製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を適用した表示装置が実用化されている。この表示素子は、下電極と、下電極を覆う有機層と、有機層を覆う上電極とを備えている。各表示素子の上電極には、表示領域に配置された配線を通じて共通電圧が印加される。
【0003】
有機層および上電極は、上記配線が設けられた基板に対して蒸着によって形成される。この場合において、先に形成される有機層により、上電極と配線の接続が阻害される可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000-195677号公報
【特許文献2】特開2004-207217号公報
【特許文献3】特開2008-135325号公報
【特許文献4】特開2009-32673号公報
【特許文献5】特開2010-118191号公報
【特許文献6】国際公開第2018/179308号
【特許文献7】米国特許出願公開第2022/0077251号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、表示領域に設けられた配線と表示素子の上電極を良好に接続可能な表示装置の製造方法および製造装置を提供することを目的の一つとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概して、実施形態によれば、表示装置の製造方法は、下電極と、前記下電極と重なる画素開口を有するリブと、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出した上部を有する隔壁と、を含む基板を用意し、前記画素開口を通じて前記下電極に接触するとともに電圧の印加に応じて発光する有機層を前記基板に対して蒸着によって形成し、前記有機層を覆うとともに前記隔壁の前記下部に接触する上電極を前記基板に対して蒸着によって形成する、ことを含む。前記有機層は、第1薄膜を含む。前記第1薄膜の形成に用いられる第1蒸着源は、前記第1蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて気化された材料を放出する第1ノズルを備えている。前記上電極の形成に用いられる第2蒸着源は、前記第2蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて気化された材料を放出する第2ノズルを備えている。さらに、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの少なくとも一方の軸は、平面視において前記基板の移動方向と直交する方向に向けて、前記基板の法線方向に対し傾斜している。
【0007】
また、実施形態によれば、表示装置の製造装置は、下電極、前記下電極と重なる画素開口を有するリブ、および、前記リブの上に配置された導電性の下部および前記下部の側面から突出した上部を有する隔壁を含む基板に対し、前記画素開口を通じて前記下電極に接触するとともに電圧の印加に応じて発光する有機層を形成する第1蒸着装置と、前記有機層を覆うとともに前記隔壁の前記下部に接触する上電極を前記基板に対して形成する第2蒸着装置と、を備えている。前記有機層は、第1薄膜を含む。前記第1蒸着装置は、第1ノズルが設けられた第1蒸着源を備え、前記第1ノズルは、前記第1蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて、気化された前記第1薄膜の材料を放出する。前記第2蒸着装置は、第2ノズルが設けられた第2蒸着源を備え、前記第2ノズルは、前記第2蒸着源に対して相対的に移動する前記基板に向けて、気化された前記上電極の材料を放出する。さらに、前記第1ノズルおよび前記第2ノズルの少なくとも一方の軸は、平面視において前記基板の移動方向と直交する方向に向けて、前記基板の法線方向に対し傾斜している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、一実施形態に係る表示装置の構成例を示す図である。
図2図2は、副画素のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。
図3図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図4図4は、有機層に適用し得る層構造の一例を示す図である。
図5図5は、図2中のV-V線に沿う表示装置の概略的な断面図である。
図6図6は、副画素を囲う隔壁の概略的な平面図である。
図7図7は、表示装置の製造方法の一例を示すフローチャートである。
図8A図8Aは、表示装置の製造工程を示す概略的な断面図である。
図8B図8Bは、図8Aに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図8C図8Cは、図8Bに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図8D図8Dは、図8Cに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図8E図8Eは、図8Dに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図8F図8Fは、図8Eに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図8G図8Gは、図8Fに続く製造工程を示す概略的な断面図である。
図9図9は、表示装置の製造装置の一部の概略的な構成を示す図である。
図10図10は、搬送される基板と蒸着源の関係の一例を示す概略的な平面図である。
図11図11は、正孔注入層の蒸着源に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。
図12図12は、正孔注入層の蒸着源に適用可能な構成のさらに他の例を示す概略的な斜視図である。
図13図13は、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層の蒸着源に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。
図14図14は、上電極の蒸着源に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。
図15図15は、正孔注入層を形成する工程を示す概略的な断面図である。
図16図16は、正孔輸送層、電子ブロッキング層、発光層、正孔ブロッキング層、電子輸送層および電子注入層を形成する工程を示す概略的な断面図である。
図17図17は、上電極を形成する工程を示す概略的な断面図である。
図18図18は、上電極を形成する工程の他の例を示す図である。
図19図19は、隔壁に適用し得る構成の第1変形例を示す概略的な断面図である。
図20図20は、隔壁に適用し得る構成の第2変形例を示す概略的な断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いくつかの実施形態について図面を参照しながら説明する。
開示はあくまで一例に過ぎず、当業者において、発明の主旨を保っての適宜変更について容易に想到し得るものについては、当然に本発明の範囲に含有されるものである。また、図面は、説明をより明確にするため、実際の態様に比べて、各部の幅、厚さ、形状等について模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。また、本明細書と各図において、既出の図に関して前述したものと同一または類似した機能を発揮する構成要素には同一の参照符号を付し、重複する詳細な説明を適宜省略することがある。
【0010】
なお、図面には、必要に応じて理解を容易にするために、互いに直交するX軸、Y軸およびZ軸を記載する。X軸に沿った方向をX方向と称し、Y軸に沿った方向をY方向と称し、Z軸に沿った方向をZ方向と称する。Z方向は、X方向とY方向を含む平面の法線方向である。また、Z方向と平行に各種要素を見ることを平面視という。
【0011】
各実施形態に係る表示装置は、表示素子として有機発光ダイオード(OLED)を備える有機エレクトロルミネッセンス表示装置であり、テレビ、パーソナルコンピュータ、車載機器、タブレット端末、スマートフォン、携帯電話端末、ウェアラブル端末等の各種の電子機器に搭載され得る。
【0012】
図1は、一実施形態に係る表示装置DSPの構成例を示す図である。表示装置DSPは、絶縁性の基板10を備えている。基板10は、画像を表示する表示領域DAと、表示領域DAの周辺の周辺領域SAとを有している。基板10は、ガラスであってもよいし、可撓性を有する樹脂フィルムであってもよい。
【0013】
本実施形態においては、平面視における基板10の形状が長方形である。ただし、基板10の平面視における形状は長方形に限られず、正方形、円形あるいは楕円形などの他の形状であってもよい。
【0014】
表示領域DAは、X方向およびY方向にマトリクス状に配列された複数の画素PXを備えている。画素PXは、異なる色を表示する複数の副画素SPを含む。本実施形態においては、画素PXが青色の副画素SP1と、緑色の副画素SP2と、赤色の副画素SP3とを含む場合を想定する。ただし、画素PXは、副画素SP1,SP2,SP3とともに、あるいは副画素SP1,SP2,SP3のいずれかに代えて、白色などの他の色の副画素SPを含んでもよい。
【0015】
副画素SPは、画素回路1と、画素回路1によって駆動される表示素子DEとを備えている。画素回路1は、画素スイッチ2と、駆動トランジスタ3と、キャパシタ4とを備えている。画素スイッチ2および駆動トランジスタ3は、例えば薄膜トランジスタにより構成されたスイッチング素子である。
【0016】
表示領域DAには、各副画素SPの画素回路1に走査信号を供給する複数の走査線GLと、各副画素SPの画素回路1に映像信号を供給する複数の信号線SLと、複数の電源線PLとが配置されている。図1の例においては、走査線GLおよび電源線PLがX方向に延び、信号線SLがY方向に延びている。
【0017】
画素スイッチ2のゲート電極は、走査線GLに接続されている。画素スイッチ2のソース電極およびドレイン電極の一方は信号線SLに接続され、他方は駆動トランジスタ3のゲート電極およびキャパシタ4に接続されている。駆動トランジスタ3において、ソース電極およびドレイン電極の一方は電源線PLおよびキャパシタ4に接続され、他方は表示素子DEに接続されている。
【0018】
なお、画素回路1の構成は図示した例に限られない。例えば、画素回路1は、より多くの薄膜トランジスタおよびキャパシタを備えてもよい。
【0019】
図2は、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトの一例を示す概略的な平面図である。図2の例においては、副画素SP2,SP3がそれぞれ副画素SP1とX方向に並んでいる。さらに、副画素SP2と副画素SP3がY方向に並んでいる。
【0020】
副画素SP1,SP2,SP3がこのようなレイアウトである場合、表示領域DAには、副画素SP2,SP3がY方向に交互に配置された列と、複数の副画素SP1がY方向に繰り返し配置された列とが形成される。これらの列は、X方向に交互に並ぶ。なお、副画素SP1,SP2,SP3のレイアウトは図2の例に限られない。
【0021】
表示領域DAには、リブ5が配置されている。リブ5は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ画素開口AP1,AP2,AP3を有している。図2の例においては、画素開口AP1が画素開口AP2よりも大きく、画素開口AP2が画素開口AP3よりも大きい。すなわち、副画素SP1,SP2,SP3のうちで副画素SP1の開口率が最も大きく、副画素SP3の開口率が最も小さい。
【0022】
副画素SP1は、画素開口AP1とそれぞれ重なる下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1を備えている。副画素SP2は、画素開口AP2とそれぞれ重なる下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2を備えている。副画素SP3は、画素開口AP3とそれぞれ重なる下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3を備えている。
【0023】
下電極LE1、上電極UE1および有機層OR1のうち画素開口AP1と重なる部分は、副画素SP1の表示素子DE1を構成する。下電極LE2、上電極UE2および有機層OR2のうち画素開口AP2と重なる部分は、副画素SP2の表示素子DE2を構成する。下電極LE3、上電極UE3および有機層OR3のうち画素開口AP3と重なる部分は、副画素SP3の表示素子DE3を構成する。表示素子DE1,DE2,DE3は、後述するキャップ層をさらに含んでもよい。リブ5は、これら表示素子DE1,DE2,DE3の各々を囲っている。
【0024】
リブ5の上には、導電性の隔壁6が配置されている。隔壁6は、全体的にリブ5と重なっており、リブ5と同様の平面形状を有している。すなわち、隔壁6は、副画素SP1,SP2,SP3においてそれぞれ開口を有している。他の観点からいうと、リブ5および隔壁6は、平面視において格子状であり、副画素SP1,SP2,SP3のそれぞれを囲っている。隔壁6は、上電極UE1,UE2,UE3に共通電圧を供給する配線としての役割を有している。
【0025】
図3は、図2中のIII-III線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。上述の基板10の上に回路層11が配置されている。回路層11は、図1に示した画素回路1、走査線GL、信号線SLおよび電源線PLなどの各種回路や配線を含む。回路層11は、有機絶縁層12により覆われている。有機絶縁層12は、回路層11により生じる凹凸を平坦化する平坦化膜として機能する。
【0026】
下電極LE1,LE2,LE3は、有機絶縁層12の上に配置されている。リブ5は、有機絶縁層12および下電極LE1,LE2,LE3の上に配置されている。下電極LE1,LE2,LE3の端部は、リブ5により覆われている。図3の断面には表れていないが、下電極LE1,LE2,LE3は、それぞれ有機絶縁層12に設けられたコンタクトホールを通じて回路層11の画素回路1に接続されている。
【0027】
隔壁6は、リブ5の上に配置された導電性を有する下部61と、下部61の上に配置された上部62とを含む。上部62は、下部61よりも大きい幅を有している。これにより、上部62の両端部が下部61の側面よりも突出している。このような隔壁6の形状は、オーバーハング状と呼ばれる。
【0028】
図3の例において、下部61は、リブ5の上に配置されたボトム層63と、ボトム層63の上に配置された軸層64とを有している。例えば、ボトム層63は、軸層64よりも薄く形成されている。また、図3の例においては、ボトム層63の両端部が軸層64の側面から突出している。
【0029】
有機層OR1は、画素開口AP1を通じて下電極LE1を覆っている。上電極UE1は、有機層OR1を覆い、下電極LE1と対向している。有機層OR2は、画素開口AP2を通じて下電極LE2を覆っている。上電極UE2は、有機層OR2を覆い、下電極LE2と対向している。有機層OR3は、画素開口AP3を通じて下電極LE3を覆っている。上電極UE3は、有機層OR3を覆い、下電極LE3と対向している。上電極UE1,UE2,UE3は、隔壁6の下部61の側面に接触している。
【0030】
表示素子DE1は、上電極UE1の上に配置されたキャップ層CP1を含む。表示素子DE2は、上電極UE2の上に配置されたキャップ層CP2を含む。表示素子DE3は、上電極UE3の上に配置されたキャップ層CP3を含む。キャップ層CP1,CP2,CP3は、それぞれ有機層OR1,OR2,OR3が発する光の取り出し効率を向上させる光学調整層としての役割を有している。
【0031】
以下の説明においては、有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1を含む多層体を積層膜FL1と呼び、有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2を含む多層体を積層膜FL2と呼び、有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3を含む多層体を積層膜FL3と呼ぶ。
【0032】
積層膜FL1の一部は、上部62の上に位置している。当該一部は、積層膜FL1のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE1を構成する部分)と離間している。同様に、積層膜FL2の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL2のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE2を構成する部分)と離間している。さらに、積層膜FL3の一部は上部62の上に位置し、当該一部は積層膜FL3のうち隔壁6の下に位置する部分(表示素子DE3を構成する部分)と離間している。
【0033】
副画素SP1,SP2,SP3には、それぞれ封止層SE1,SE2,SE3が配置されている。封止層SE1は、キャップ層CP1や副画素SP1の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE2は、キャップ層CP2や副画素SP2の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。封止層SE3は、キャップ層CP3や副画素SP3の周囲の隔壁6を連続的に覆っている。
【0034】
図3の例においては、副画素SP1,SP2の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL2および封止層SE2と離間している。また、副画素SP1,SP3の間の隔壁6上の積層膜FL1および封止層SE1が、当該隔壁6上の積層膜FL3および封止層SE3と離間している。
【0035】
封止層SE1,SE2,SE3は、樹脂層13により覆われている。樹脂層13は、封止層14により覆われている。封止層14は、樹脂層15により覆われている。樹脂層13,15および封止層14は、少なくとも表示領域DAの全体に連続的に設けられ、その一部が周辺領域SAにも及んでいる。
【0036】
偏光板、タッチパネル、保護フィルムまたはカバーガラスなどのカバー部材が樹脂層15の上方にさらに配置されてもよい。このようなカバー部材は、例えばOCA(Optical Clear Adhesive)などの接着層を介して樹脂層15に接着されてもよい。
【0037】
有機絶縁層12は、ポリイミドなどの有機絶縁材料で形成されている。リブ5および封止層14,SE1,SE2,SE3は、シリコン窒化物(SiNx)、シリコン酸化物(SiOx)、シリコン酸窒化物(SiON)または酸化アルミニウム(Al)などの無機絶縁材料で形成されている。一例では、リブ5がシリコン酸窒化物で形成され、封止層14,SE1,SE2,SE3がシリコン窒化物で形成されている。樹脂層13,15は、例えばエポキシ樹脂やアクリル樹脂などの樹脂材料(有機絶縁材料)で形成されている。
【0038】
下電極LE1,LE2,LE3は、例えば銀で形成された反射層と、この反射層の上面および下面をそれぞれ覆う一対の導電性酸化物層とを有している。各導電性酸化物層は、例えばITO(Indium Tin Oxide)、IZO(Indium Zinc Oxide)またはIGZO(Indium Gallium Zinc Oxide)などの透明な導電性酸化物で形成することができる。
【0039】
上電極UE1,UE2,UE3は、例えばマグネシウムと銀の合金(MgAg)などの金属材料で形成されている。例えば、下電極LE1,LE2,LE3はアノードに相当し、上電極UE1,UE2,UE3はカソードに相当する。
【0040】
図4は、有機層OR1,OR2,OR3に適用し得る層構造の一例を示す図である。有機層OR1,OR2,OR3は、発光層EMLを含む複数の薄膜によって構成されている。本実施形態においては、有機層OR1,OR2,OR3が正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILをZ方向に順に積層した構造を有する場合を想定する。ただし、有機層OR1,OR2,OR3は、複数の発光層EMLを含むいわゆるタンデム構造などの他の構造を有してもよい。
【0041】
キャップ層CP1,CP2,CP3は、例えば複数の透明層が重ねられた積層構造を有している。これら透明層は、無機材料によって形成された層および有機材料によって形成された層を含み得る。また、これら透明層は、互いに異なる屈折率を有している。例えば、これら透明層の屈折率は、上電極UE1,UE2,UE3の屈折率および封止層SE1,SE2,SE3の屈折率と異なる。なお、キャップ層CP1,CP2,CP3の少なくとも1つが省略されてもよい。
【0042】
隔壁6のボトム層63および軸層64は、金属材料によって形成されている。ボトム層63の金属材料としては、例えば、モリブデン、チタン、窒化チタン(TiN)、モリブデン-タングステン合金(MoW)またはモリブデン-ニオブ合金(MoNb)を用いることができる。軸層64の金属材料としては、例えばアルミニウム、アルミニウム-ネオジム合金(AlNd)、アルミニウム-イットリウム合金(AlY)またはアルミニウム-シリコン合金(AlSi)を用いることができる。なお、軸層64が絶縁性の材料で形成されてもよい。
【0043】
例えば、隔壁6の上部62は、金属材料で形成された下層と、導電性酸化物で形成された上層との積層構造を有している。下層を形成する金属材料としては、例えばチタン、窒化チタン、モリブデン、タングステン、モリブデン-タングステン合金またはモリブデン-ニオブ合金を用いることができる。上層を形成する導電性酸化物としては、例えばITOまたはIZOを用いることができる。なお、上部62は、金属材料の単層構造を有してもよい。さらに、上部62は、絶縁材料で形成された層を含んでもよい。
【0044】
隔壁6には、共通電圧が供給されている。この共通電圧は、下部61の側面に接触した上電極UE1,UE2,UE3にそれぞれ供給される。下電極LE1,LE2,LE3には、それぞれ副画素SP1,SP2,SP3の画素回路1を通じて信号線SLの映像信号に応じた画素電圧が供給される。
【0045】
有機層OR1,OR2,OR3は、電圧の印加に応じて発光する。具体的には、下電極LE1と上電極UE1の間に電位差が形成されると、有機層OR1の発光層EMLが青色の波長域の光を放つ。下電極LE2と上電極UE2の間に電位差が形成されると、有機層OR2の発光層EMLが緑色の波長域の光を放つ。下電極LE3と上電極UE3の間に電位差が形成されると、有機層OR3の発光層EMLが赤色の波長域の光を放つ。
【0046】
他の例として、有機層OR1,OR2,OR3の発光層EMLが同一色(例えば白色)の光を放ってもよい。この場合において、表示装置DSPは、発光層EMLが放つ光を副画素SP1,SP2,SP3に対応する色の光に変換するカラーフィルタを備えてもよい。また、表示装置DSPは、発光層EMLが放つ光により励起して副画素SP1,SP2,SP3に応じた色の光を生成する量子ドットを含んだ層を備えてもよい。
【0047】
図5は、図2中のV-V線に沿う表示装置DSPの概略的な断面図である。この図に示す断面は、Y方向およびZ方向で規定されるY-Z断面に相当し、Y方向に並ぶ3つの副画素SP1を示している。なお、基板10、回路層11、樹脂層13、封止層14および樹脂層15は省略している。以下の説明においては、図5中の左側の隔壁6を第1隔壁6Aと呼び、右側の隔壁6を第2隔壁6Bと呼ぶ。これら隔壁6A,6Bは、Y方向において図5中の中央の画素開口AP1を挟むように配置されている。
【0048】
図5の例においては、積層膜FL1および封止層SE1が隔壁6A,6Bの上で途切れていない。すなわち、封止層SE1は、隔壁6A,6Bおよび各副画素SP1のキャップ層CP1を連続的に覆っている。
【0049】
図5中の(a)(b)に拡大して示すように、有機層OR1は、第1層L1と、第1層L1の上の第2層L2とを有している。本実施形態においては、第1層L1が正孔注入層HILで構成され、第2層L2が正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILで構成される場合を想定する。ただし、第1層L1は、正孔注入層HILに加えて正孔輸送層HTLなどの他の層をさらに含んでもよい。なお、図5(a)(b)においてはキャップ層CP1および封止層SE1を省略している。
【0050】
第1層L1および第2層L2の厚さは、隔壁6A,6Bに近づくに連れて減少している。同様に、上電極UE1の厚さは、隔壁6A,6Bに近づくに連れて減少している。
【0051】
第1層L1は、第1隔壁6A側の端部E1aと、第2隔壁6B側の端部E1bとを有している。有機層OR1と隔壁6A,6Bとの間でのリーク電流の発生を抑制する観点からは、第1層L1を構成する正孔注入層HILが隔壁6と導通していないことが好ましい。すなわち、図5に示すように端部E1a,E1bがそれぞれ隔壁6A,6Bのボトム層63と離間していることが好ましい。ただし、第1層L1がこれらボトム層63の少なくとも一方と僅かに接触していてもよい。
【0052】
第2層L2は、第1隔壁6A側の端部E2aと、第2隔壁6B側の端部E2bとを有している。図5(a)(b)の例においては、端部E2a,E2bがそれぞれ隔壁6A,6Bのボトム層63の上に位置している。すなわち、第2層L2は、隔壁6A,6Bのボトム層63と接触している。他の例として、第2層L2が第1隔壁6Aのボトム層63と接触していなくてもよい。さらに、第2層L2が隔壁6A,6Bのボトム層63の双方と接触していなくてもよい。
【0053】
図5(a)に示すように、端部E2aは、第1隔壁6Aの軸層64と離間している。これにより、第1隔壁6Aのボトム層63の上面には、第2層L2で覆われていない領域が形成されている。一方、図5(b)の例においては、端部E2bが第2隔壁6Bの軸層64と接触している。これにより、第2隔壁6Bのボトム層63の上面が全体的に第2層L2で覆われている。他の例として、端部E2bが第2隔壁6Bの軸層64と離間していてもよい。
【0054】
上電極UE1は、第1隔壁6A側の端部E3aと、第2隔壁6B側の端部E3bとを有している。図5(a)の例においては、端部E3aが第1隔壁6Aのボトム層63の上に位置するとともに、軸層64に接触している。ただし、端部E3aは軸層64と離間していてもよい。一方、図5(b)の例においては、端部E3bが第2層L2の上に位置し、第2隔壁6Bのボトム層63および軸層64と接触していない。他の例として、端部E3bが第2隔壁6Bの軸層64と接触していてもよい。
【0055】
図5(a)に鎖線で示す線分Vaは、第1隔壁6Aの上部62の第1端部62aを通り、かつZ方向と平行な直線である。また、図5(b)に鎖線で示す線分Vbは、第2隔壁6Bの上部62の第2端部62bを通り、かつZ方向と平行な直線である。
【0056】
線分Vaと交わる位置、すなわち第1端部62aの直下において、有機層OR1は、厚さT1aを有している。また、線分Vbと交わる位置、すなわち第2端部62bの直下において、有機層OR1は、厚さT1bを有している。厚さT1a,T1bは、第1層L1および第2層L2の合計厚さに相当する。
【0057】
線分Vaと交わる位置、すなわち第1端部62aの直下において、上電極UE1は、厚さT2aを有している。また、線分Vbと交わる位置、すなわち第2端部62bの直下において、上電極UE1は、厚さT2bを有している。例えば、厚さT2aは、厚さT1aよりも小さい(T2a<T1a)。また、厚さT2bは、厚さT1bよりも小さい(T2b<T1b)。
【0058】
本実施形態においては、厚さT1aが厚さT1bよりも小さい(T1a<T1b)。さらに、厚さT2aが厚さT2bよりも大きい(T2a>T2b)。すなわち、有機層OR1は第1隔壁6Aの近傍で薄く、第2隔壁6Bの近傍で厚く形成されている。また、上電極UE1は、第1隔壁6Aの近傍で厚く、第2隔壁6Bの近傍で薄く形成されている。
【0059】
また、本実施形態においては、第1隔壁6Aの下部61(ボトム層63および軸層64)と有機層OR1との接触面積が、第2隔壁6Bの下部61と有機層OR1との接触面積よりも小さい。
【0060】
さらに、第1隔壁6Aの下部61と上電極UE1との接触面積が、第2隔壁6Bの下部61と上電極UE1との接触面積よりも大きい。図5(b)の例においては、上電極UE1が第2隔壁6Bの下部61に接触していない。この場合においては、第2隔壁6Bの下部61と上電極UE1との接触面積は零である。この例に限られず、上電極UE1が第2隔壁6Bのボトム層63や軸層64に接触して、上記接触面積が零でなくてもよい。
【0061】
このように、図5の例においては、第1隔壁6Aの近傍で有機層OR1を薄くし、かつ上電極UE1を厚くすることにより、第1隔壁6Aのボトム層63と上電極UE1との接触面積を広く確保している。これにより、上電極UE1と隔壁6とを良好に導通させることができる。
【0062】
なお、表示領域DAに配置された各副画素SP1は、いずれも図5の中央に示した副画素SP1と同様の形状を有している。すなわち、隔壁6A,6Bの各々に着目すると、下部61の一方の側面近傍は図5(a)の構造を有し、他方の側面近傍は図5(b)の構造を有している。
【0063】
図6は、副画素SP1,SP2,SP3を囲う隔壁6の概略的な平面図である。図示したように、副画素SP1を囲う隔壁6の4辺を辺S1a,S1b,S1c,S1dと定義し、副画素SP2を囲う隔壁6の4辺を辺S2a,S2b,S2c,S2dと定義し、副画素SP3を囲う隔壁6の4辺を辺S3a,S3b,S3c,S3dと定義する。辺S1a,S1b,S2a,S2b,S3a,S3bは、X方向と平行である。辺S1c,S1d,S2c,S2d,S3c,S3dは、Y方向と平行である。
【0064】
鎖線枠で囲った辺S1a,S2b,S3aは、それぞれ上電極UE1,UE2,UE3と隔壁6とが接触するコンタクト辺に相当する。上電極UE1,UE2,UE3には、少なくともこれらコンタクト辺を通じて共通電圧が供給される。
【0065】
辺S1aの構造は、図5(a)に示したとおりである。辺S2bにおける有機層OR2、上電極UE2および隔壁6の構造は、図5(a)に示した有機層OR1、上電極UE1および第1隔壁6Aの構造と同様である。また、辺S3aにおける有機層OR3、上電極UE3および隔壁6の構造も、図5(a)に示した有機層OR1、上電極UE1および第1隔壁6Aの構造と同様である。これにより、上電極UE1と同じく、上電極UE2,UE3についても隔壁6との良好な導通を確保することができる。
【0066】
また、辺S1bの構造は、図5(b)に示したとおりである。辺S2aにおける有機層OR2、上電極UE2および隔壁6の構造は、図5(b)に示した有機層OR1、上電極UE1および第2隔壁6Bの構造と同様である。また、辺S3bにおける有機層OR3、上電極UE3および隔壁6の構造も、図5(b)に示した有機層OR1、上電極UE1および第2隔壁6Bの構造と同様である。
【0067】
なお、図示したコンタクト辺に加え、さらに他の辺において上電極UE1,UE2,UE3と下部61が接触していてもよい。また、副画素SP1,SP2,SP3のコンタクト辺の位置は、図6の例に限られず、適宜に変更可能である。
【0068】
図7は、表示装置DSPの製造方法の一例を示すフローチャートである。図8A乃至図8Gは、表示装置DSPの製造工程を示す概略的な断面図である。図8A乃至図8Gにおいては、基板10および回路層11の図示を省略している。
【0069】
表示装置DSPの製造にあたっては、先ず基板10の上に回路層11および有機絶縁層12が形成され、さらに図8Aに示すように有機絶縁層12の上に下電極LE1,LE2,LE3が形成される(工程PR1)。
【0070】
続いて、図8Bに示すように、リブ5および隔壁6が形成される(工程PR2)。リブ5の画素開口AP1,AP2,AP3は、隔壁6の形成後に設けられてもよいし、隔壁6の形成前に設けられてもよい。
【0071】
工程PR1,PR2によって下電極LE1,LE2,LE3、リブ5および隔壁6が形成された基板が用意された後、表示素子DE1,DE2,DE3を形成するための工程が実施される。本実施形態においては、表示素子DE1が最初に形成され、表示素子DE2が次に形成され、表示素子DE3が最後に形成される場合を想定する。ただし、表示素子DE1,DE2,DE3の形成順はこの例に限られない。
【0072】
表示素子DE1の形成にあたっては、先ず図8Cに示すように、積層膜FL1および封止層SE1が形成される(工程PR3)。積層膜FL1は、図3に示したように、画素開口AP1を通じて下電極LE1に接触する有機層OR1、有機層OR1を覆う上電極UE1、および、上電極UE1を覆うキャップ層CP1を含む。有機層OR1、上電極UE1およびキャップ層CP1は、蒸着によって形成される。また、封止層SE1は、CVD(Chemical Vapor Deposition)によって形成される。積層膜FL1は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE1は、積層膜FL1の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0073】
工程PR3の後、積層膜FL1および封止層SE1がパターニングされる(工程PR4)。このパターニングにおいては、図8Dに示すように、封止層SE1の上にレジストRが配置される。レジストRは、副画素SP1とその周囲の隔壁6の一部を覆っている。
【0074】
その後、レジストRをマスクとしたエッチングにより、図8Eに示すように積層膜FL1および封止層SE1のうちレジストRから露出した部分が除去される。言い換えると、積層膜FL1および封止層SE1のうち、下電極LE1と重なる部分が残され、他の部分が除去される。これにより、副画素SP1に表示素子DE1が形成される。例えば、当該エッチングは、封止層SE1、キャップ層CP1、上電極UE1および有機層OR1に対して順に実施されるウェットエッチングやドライエッチングを含む。これらのエッチングの後、レジストRが除去される。
【0075】
表示素子DE2は、表示素子DE1と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE2の形成にあたっては、積層膜FL2および封止層SE2が表示領域DAの全体に形成される(工程PR5)。積層膜FL2は、図3に示したように、画素開口AP2を通じて下電極LE2に接触する有機層OR2、有機層OR2を覆う上電極UE2、および、上電極UE2を覆うキャップ層CP2を含む。
【0076】
有機層OR2、上電極UE2およびキャップ層CP2は、蒸着によって形成される。また、封止層SE2は、CVDによって形成される。積層膜FL2は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE2は、積層膜FL2の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0077】
工程PR5の後、積層膜FL2および封止層SE2がパターニングされる(工程PR6)。これにより、図8Fに示すように、副画素SP2に表示素子DE2が形成される。
【0078】
表示素子DE3は、表示素子DE1,DE2と同様の手順で形成される。すなわち、表示素子DE3の形成にあたっては、積層膜FL3および封止層SE3が表示領域DAの全体に形成される(工程PR7)。積層膜FL3は、図3に示したように、画素開口AP3を通じて下電極LE3に接触する有機層OR3、有機層OR3を覆う上電極UE3、および、上電極UE3を覆うキャップ層CP3を含む。
【0079】
有機層OR3、上電極UE3およびキャップ層CP3は、蒸着によって形成される。また、封止層SE3は、CVDによって形成される。積層膜FL3は、オーバーハング状の隔壁6によって複数の部分に分断される。封止層SE3は、積層膜FL3の分断された各部分および隔壁6を連続的に覆う。
【0080】
工程PR7の後、積層膜FL3および封止層SE3がパターニングされる(工程PR8)。これにより、図8Gに示すように、副画素SP3に表示素子DE3が形成される。
【0081】
表示素子DE1,DE2,DE3が形成された後、図3に示した樹脂層13、封止層14および樹脂層15が順に形成される(工程PR9)。このような工程を経て表示装置DSPが完成する。
【0082】
図9は、表示装置DSPの製造装置100の一部の概略的な構成を示す図である。この図に示す製造装置100は、有機層OR1および上電極UE1を形成する製造ラインに相当し、正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILを形成するための蒸着装置DD1~DD7を備えている。蒸着装置DD1~DD7は、有機層OR1を形成するための第1蒸着装置を構成する。製造装置100は、上電極UE1を形成するための蒸着装置DD8(第2蒸着装置)をさらに備えている。
【0083】
蒸着装置DD1~DD8は、内部が真空に維持されるチャンバC1~C8と、チャンバC1~C8の内部に配置された蒸着源DS1~DS8とをそれぞれ備えている。さらに、製造装置100は、工程PR2を経て隔壁6が形成された基板10Xを搬送する搬送装置CDを備えている。基板10Xは、表示装置DSPにそれぞれ相当する複数のパネル部が形成されたマザー基板であってもよい。搬送装置CDは、基板10XをチャンバC1~C8に順次搬送する。以下の説明においては、基板10Xが各チャンバC1~C8を通る方向(蒸着源DS1~DS8に対して基板10Xが相対的に移動する方向)を移動方向FDと呼ぶ。
【0084】
なお、図9においては、有機層OR1が正孔注入層HIL、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILが順に積層された構成を有する場合を想定し、製造装置100が蒸着装置DD1~DD7を備える例を示した。しかしながら、製造装置100が備える蒸着装置の構成は、有機層OR1に含まれる薄膜の構成に応じて変更され得る。
【0085】
図10は、搬送される基板10Xと蒸着源DS(DS1~DS8)の関係の一例を示す概略的な平面図である。蒸着源DSは、坩堝CRと、坩堝CRに接続された長尺な容器CTと、容器CTに設けられた複数のノズルNとを備えている。
【0086】
坩堝CRは、内部に収容された材料を加熱することにより、当該材料を気化(蒸発または昇華)させる。気化された材料は、容器CTに供給され、蒸着源DSに対して移動方向FDに相対的に移動する基板10Xに向けて各ノズルNから放たれる。複数のノズルNは、基板10Xと対向する容器CTの一面において、ノズル配列方向NDに沿って直線状に並んでいる。
【0087】
例えば、基板10Xは、移動方向FDがノズル配列方向NDと直交するように搬送される。図10の例においては、ノズル配列方向NDと直交する蒸着源DSの幅方向WD、移動方向FDおよびX方向が互いに平行である。
【0088】
以下の説明においては、図10に示すようにノズルNに対する第1側方SD1、第2側方SD2、第3側方SD3および第4側方SD4を定義する。第1側方SD1および第2側方SD2は、互いに反対の方向であり、図10の例においてはノズル配列方向NDおよびY方向と平行である。すなわち、第1側方SD1および第2側方SD2は、平面視において移動方向FDと直交する。第3側方SD3および第4側方SD4は、互いに反対の方向であり、図10の例においては移動方向FD、幅方向WDおよびX方向と平行である。また、第3側方SD3は移動方向FDにおける上流側を向き、第4側方SD4は移動方向FDにおける下流側を向く。
【0089】
図11は、正孔注入層HILの蒸着源DS1に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。以下の説明においては、蒸着源DS1のノズルNをノズルN0と呼ぶ。ノズルN0は、気化された正孔注入層HILの材料Mを蒸着方向MD0に放つ。
【0090】
蒸着方向MD0は、例えばノズルN0の軸AX0(ノズルN0の延出方向)と平行である。図11の例においては、軸AX0がノズル配列方向NDおよび幅方向WDと直交している。材料Mは、蒸着方向MD0を中心に所定の拡がり角をもってノズルN0から放たれる。蒸着方向MD0は、ノズルN0から放たれる材料Mの中心軸と平行な方向、あるいは材料Mの主放出方向ということもできる。
【0091】
蒸着源DS1は、複数のノズルNを囲うシールド20をさらに備えてもよい。図11の例において、シールド20は、容器CTおよび各ノズルN0を囲うとともに、ノズルN0側が開口した形状を有している。
【0092】
シールド20は、幅方向WDにおける第1側壁21および第2側壁22を有している。これら側壁21,22は、各ノズルN0の先端よりも蒸着方向MD0に突出しており、材料Mの幅方向WDへの拡がりを抑制する。
【0093】
図12は、蒸着源DS1に適用可能な構成のさらに他の例を示す概略的な斜視図である。この図の例においては、ノズルN0に対してシールド30がさらに配置されている。シールド30は、例えばノズルN0を囲う円筒状であり、容器CTに取り付けられている。例えば、シールド30は、蒸着源DS1の複数のノズルN0のそれぞれに対して設けられる。
【0094】
シールド30は、ノズルN0の先端よりも蒸着方向MD0に突出している。シールド30の高さ(ノズルN0の先端からの突出長さ)は、ノズルN0の全周にわたり同等である。これにより、ノズルN0から放たれる材料Mの拡がりが、ノズルN0を中心とした全方位にわたり抑制される。
【0095】
図13は、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILの蒸着源DS2~DS7に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。以下の説明においては、蒸着源DS2~DS7のノズルNをノズルN1と呼ぶ。ノズルN1は、気化された材料Mを蒸着方向MD1に放つ。
【0096】
蒸着方向MD1は、例えばノズルN1の軸AX1(ノズルN1の延出方向)と平行である。材料Mは、蒸着方向MD1を中心に所定の拡がり角をもってノズルN1から放たれる。蒸着方向MD1は、ノズルN1から放たれる材料Mの中心軸と平行な方向、あるいは材料Mの主放出方向ということもできる。図13の例においては、各ノズルN1の軸AX1が第1側方SD1に傾斜している。これにより、蒸着方向MD1も第1側方SD1に傾斜している。
【0097】
蒸着源DS2~DS7の少なくとも1つは、図13に示すようにシールド20をさらに備えてもよい。また、蒸着源DS2~DS7の少なくとも1つは、図12に示したシールド30をさらに備えてもよい。
【0098】
図14は、上電極UE1の蒸着源DS8に適用可能な構成の一例を示す概略的な斜視図である。以下の説明においては、蒸着源DS8のノズルNをノズルN2と呼ぶ。ノズルN2は、気化された材料Mを蒸着方向MD2に放つ。
【0099】
蒸着方向MD2は、例えばノズルN2の軸AX2(ノズルN2の延出方向)と平行である。材料Mは、蒸着方向MD2を中心に所定の拡がり角をもってノズルN2から放たれる。蒸着方向MD2は、ノズルN2から放たれる材料Mの中心軸と平行な方向、あるいは材料Mの主放出方向ということもできる。図14の例においては、各ノズルN2の軸AX2が第2側方SD2に傾斜している。これにより、蒸着方向MD2も第2側方SD2に傾斜している。
【0100】
蒸着源DS8は、図14に示すようにシールド20をさらに備えてもよい。また、蒸着源DS8は、図12に示したシールド30をさらに備えてもよい。
【0101】
図15は、蒸着源DS1により正孔注入層HILを形成する工程を示す概略的な断面図である。この図に示す断面は、図5と同様のY-Z断面に相当する。基板10Xの上方に1つのノズルN0とその近傍の容器CTを示しているが、実際には複数のノズルN0が図15の左右方向に並んでいる。
【0102】
図15の例においては、ノズルN0の軸AX0がZ方向(基板10Xの法線方向)と平行である。すなわち、蒸着方向MD0は、Z方向に対して傾斜していない。
【0103】
上述のとおり、正孔注入層HILは隔壁6のボトム層63と離間していることが好ましい。そこで、ノズルN0から放たれる材料Mの拡がりを低減すべく、蒸着源DS1は図12に示したシールド30を備えることが好ましい。蒸着源DS1は、図11に示したシールド20をさらに備えてもよい。材料Mの拡がりが低減されていれば、隔壁6の上部62により材料Mが遮られ、上部62の下方に材料Mが付着しにくい。これにより、正孔注入層HIL(第1層L1)と下部61(ボトム層63および軸層64)との接触を抑制することが可能である。
【0104】
図16は、蒸着源DS2~DS7により正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILを形成する工程を示す概略的な断面図である。この図に示す断面は、図15と同様のY-Z断面に相当する。基板10Xの上方に1つのノズルN1とその近傍の容器CTを示しているが、実際には複数のノズルN1が図16の左右方向に並んでいる。
【0105】
ノズルN1の軸AX1は、Z方向に対して第1側方SD1に傾斜している。これにより、軸AX1および蒸着方向MD1は、Z方向に対して鋭角である角度θ1を成す。蒸着源DS2~DS7は、上述のシールド20,30の少なくとも一方を備えてもよい。
【0106】
蒸着源DS2~DS7の蒸着方向MD1が図16に示すように傾斜していると、各隔壁6の第2側方SD2側の側面近傍には材料Mが付着しやすく、第1側方SD1側の側面近傍には材料Mが付着しにくい。これにより、図5に示したように、隔壁6A,6Bの近傍で厚さが異なる第2層L2を形成することができる。
【0107】
図17は、蒸着源DS8により上電極UE1を形成する工程を示す概略的な断面図である。この図に示す断面は、図15および図16と同様のY-Z断面に相当する。基板10Xの上方に1つのノズルN2とその近傍の容器CTを示しているが、実際には複数のノズルN2が図17の左右方向に並んでいる。
【0108】
ノズルN2の軸AX2は、Z方向に対して第2側方SD2に傾斜している。これにより、蒸着方向MD2は、蒸着方向MD1と逆向きに傾斜する。軸AX2および蒸着方向MD2は、Z方向に対して鋭角である角度θ2を成す。角度θ2は、角度θ1と同等であってもよいし、角度θ1と異なってもよい。蒸着源DS8は、上述のシールド20,30の少なくとも一方を備えてもよい。
【0109】
図17のように蒸着源DS8の蒸着方向MD2が傾斜していると、各隔壁6の第1側方SD1側の側面近傍には材料Mが付着しやすく、第2側方SD2側の側面近傍には材料Mが付着しにくい。これにより、図5に示したように、隔壁6A,6Bの近傍で厚さが異なる上電極UE1を形成することができる。
【0110】
図18は、上電極UE1を形成する工程の他の例を示す図である。上述のように上電極UE1がマグネシウムと銀の合金からなる場合、上電極UE1は、マグネシウムと銀の共蒸着によって形成される。
【0111】
具体的には、蒸着装置DD8のチャンバC8(図9参照)には、マグネシウムである材料Maを放つ蒸着源DS8aと、銀である材料Mbを放つ蒸着源DS8bとが配置される。これら蒸着源DS8a,DS8bは、例えば図18(a)の平面図に示すように、移動方向FDにおいて近接するように配置される。
【0112】
図18(b)は、図18(a)に示す蒸着源DS8a,DS8bを移動方向FDに沿って見た概略的な側面図である。図18(c)は、図18(a)に示す蒸着源DS8a,DS8bをノズル配列方向NDに沿って見た概略的な側面図である。図18(b)(c)に示すように、蒸着源DS8aはノズルN2aを備え、蒸着源DS8bはノズルN2bを備えている。
【0113】
図18(b)に示すように、ノズルN2aの軸AX2aおよびノズルN2bの軸AX2bは、いずれもZ方向に対して第2側方SD2に傾斜している。これにより、蒸着源DS8aの蒸着方向MD2aおよび蒸着源DS8bの蒸着方向MD2bもZ方向に対して第2側方SD2に傾斜する。例えば、図18(b)において軸AX2a,AX2b(あるいは蒸着方向MD2a,MD2b)がZ方向と成す角度は同等である。
【0114】
蒸着源DS8aが材料Maを放つ領域と、蒸着源DS8bが材料Mbを放つ領域とは、基板10Xの表面において重なることが好ましい。そこで、図18(c)においては、軸AX2a,AX2bがX方向とZ方向で規定されるX-Z平面においても傾斜している。
【0115】
具体的には、軸AX2aがZ方向に対して第4側方SD4に傾斜している。これにより、蒸着方向MD2aもZ方向に対して第4側方SD4に傾斜する。また、軸AX2bは、Z方向に対して第3側方SD3に傾斜している。これにより、蒸着方向MD2bもZ方向に対して第3側方SD3に傾斜する。
【0116】
このような構成であれば、材料Ma,Mbが移動方向FDにおいて混ざり合い、基板10Xに付着する。したがって、基板10Xの全体に対し、均一な性質の上電極UE1を形成することができる。
【0117】
なお、図15および図16においては、有機層OR1の各薄膜が1つの蒸着源によって形成される様子を示した。しかしながら、有機層OR1を構成する複数の薄膜のうち、例えば正孔注入層HIL、発光層EMLおよび電子輸送層ETLは、ホスト材料とドーパントの共蒸着によって形成され得る。このような薄膜を形成する蒸着装置については、図18の例と同様に、ノズルの軸(蒸着方向の傾き)が異なる複数の蒸着源がチャンバに配置されてもよい。
【0118】
以上、図9乃至図18を用いて説明した有機層OR1および上電極UE1の蒸着に関する構成は、有機層OR2,OR3および上電極UE2,UE3の蒸着にも適用できる。すなわち、有機層OR2,OR3および上電極UE2,UE3を形成する際にも、正孔注入層HILの蒸着方向MD0をZ方向と平行とし、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILの蒸着方向MD1と、上電極UE2,UE3の蒸着方向MD2とを逆向きに傾斜させればよい。
【0119】
ただし、図6に示したように辺S1a,S2b,S3aをそれぞれ副画素SP1,SP2,SP3のコンタクト辺に設定する場合、有機層OR2および上電極UE2の形成時の蒸着方向MD1,MD2は、有機層OR1および上電極UE1の形成時の蒸着方向MD1,MD2とそれぞれ逆方向に傾斜する。これにより、辺S2bの近傍において、有機層OR2の厚さを低減するとともに上電極UE2の厚さを増すことができる。
【0120】
本実施形態に係る製造方法を用いれば、図5に例示した構造のように、コンタクト辺の近傍で有機層OR1,OR2,OR3を薄くし、かつ上電極UE1,UE2,UE3を厚くすることができる。これにより、図5および図6を用いて説明したとおり、コンタクト辺において上電極UE1,UE2,UE3と隔壁6とを良好に導通させることができる。
【0121】
また、本実施形態においては、蒸着源DS2~DS8の蒸着方向MD1,MD2が、移動方向FDと直交する方向(第1側方SD1または第2側方SD2)に傾斜している。このような構成は、図18に示したような共蒸着を実施する際に有利である。すなわち、蒸着方向MD1,MD2を移動方向FDと平行な方向(第3側方SD3または第4側方SD4)に傾斜させる構成においては、共蒸着のための複数の蒸着源が放つ材料を移動方向FDにおいて良好に混合することが困難な場合がある。これらの材料が基板10Xに付着する領域が移動方向FDにおいてずれていると、蒸着によって形成される膜には厚さ方向において性質のムラ(例えばドーパントの濃度ムラ)が生じ得る。
【0122】
これに対し、蒸着方向MD1,MD2を移動方向FDと直交する方向(第1側方SD1または第2側方SD2)に傾斜させる場合には、例えば図18(c)に示すように移動方向FDと平行な方向にも各蒸着源の蒸着方向を傾斜させることにより、各蒸着源が放つ材料を移動方向FDにおいて良好に混合することができる。これにより、蒸着によって形成される膜には、厚さ方向における性質のムラが生じにくい。
【0123】
なお、図9乃至図18に例示した製造方法において、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILは、ノズルの軸を傾斜させて形成される第1薄膜の一例である。また、正孔注入層HILは、ノズルの軸を傾斜させずに形成される第2薄膜の一例である。
【0124】
他の例として、正孔注入層HILを含む、有機層OR1を構成する全ての薄膜が、図16の例と同様にZ方向に対し傾斜した軸を有するノズルを用いて形成されてもよい。また、正孔輸送層HTL、電子ブロッキング層EBL、発光層EML、正孔ブロッキング層HBL、電子輸送層ETLおよび電子注入層EILの少なくとも1つが、図15の例と同様にZ方向と平行な軸を有するノズルを用いて形成されてもよい。
【0125】
すなわち、有機層OR1を構成する複数の薄膜のうち少なくとも1つが、上電極UE1のノズルN2と逆向きに傾斜した軸を有するノズルを用いて形成されればよい。これにより、上電極UE1が厚く形成されるコンタクト辺において有機層OR1が薄くなる。そのため、複数の薄膜の全てをZ方向と平行な軸を有するノズルを用いて形成する場合に比べ、上電極UE1と隔壁6の導通が改善する。
【0126】
また、有機層OR1を構成する複数の薄膜の少なくとも1つの蒸着方向を、上電極UE1の蒸着方向と同じ方向に、かつ上電極UE1の蒸着方向よりも小さい角度で傾斜させてもよい。この場合においても、コンタクト辺において上電極UE1を有機層OR1よりも下部61の近くまで形成することができる。
【0127】
さらに他の例として、有機層OR1を構成する複数の薄膜の全てが、Z方向と平行な軸を有するノズルを用いて形成されてもよい。あるいは、有機層OR1を構成する複数の薄膜のうち少なくとも1つがZ方向に対し傾斜した軸を有するノズルを用いて形成され、上電極UE1がZ方向と平行な軸を有するノズルを用いて形成されてもよい。
【0128】
図9乃至図18に例示した製造方法においては、搬送装置CDによって基板10Xが移動方向FDに搬送されることにより、静止した蒸着源DS1~DS8に対して基板10Xが相対的に移動する構成を例示した。他の例として、蒸着源DS1~DS8による蒸着に際し、基板10Xが各チャンバC1~C8内で静止し、この基板10Xに対して蒸着源DS1~DS8が相対的に移動してもよい。この場合においては、例えば、蒸着装置DD1~DD8がそれぞれ蒸着源DS1~DS8をチャンバC1~C8内で移動させるための駆動機構を備える。
【0129】
以上、有機層OR1および上電極UE1について述べた変形例は、有機層OR2,OR3および上電極UE2,UE3についても同様に適用できる。
【0130】
隔壁6の構成は、図5などに示したものに限られない。以下に、隔壁6に適用し得るいくつかの変形例を示す。
【0131】
図19は、隔壁6に適用し得る構成の第1変形例を示す概略的な断面図である。この図の例においては、ボトム層63の両端部が軸層64の側面と揃っている。図示した隔壁6の右側の側面は、上電極UE1とのコンタクト辺に相当する。すなわち、図中の右側の副画素SP1の上電極UE1は、ボトム層63および軸層64の側面に接触している。一方で、右側の副画素SP1の有機層OR1は、ボトム層63および軸層64の側面と離間している。他の例として、当該有機層OR1がボトム層63および軸層64の側面に接触してもよい。
【0132】
図20は、隔壁6に適用し得る構成の第2変形例を示す概略的な断面図である。この図の例においては、下部61がボトム層63を備えていない。すなわち、下部61は、軸層64によって構成されている。この図においても、隔壁6の右側の側面がコンタクト辺に相当し、当該側面に上電極UE1が接触している。図19の例と同じく、右側の副画素SP1の有機層OR1が軸層64の側面と離間している。他の例として、当該有機層OR1が軸層64の側面に接触してもよい。
【0133】
以上、本発明の実施形態として説明した表示装置、表示装置の製造方法および製造装置を基にして、当業者が適宜設計変更して実施し得る全ての表示装置、製造方法および製造装置も、本発明の要旨を包含する限り本発明の範囲に属する。
【0134】
本発明の思想の範疇において、当業者であれば、各種の変形例に想到し得るものであり、それら変形例についても本発明の範囲に属するものと解される。例えば、上述の実施形態に対して、当業者が適宜、構成要素の追加、削除、もしくは設計変更を行ったもの、または、工程の追加、省略もしくは条件変更を行ったものも、本発明の要旨を備えている限り、本発明の範囲に含まれる。
【0135】
また、上述の実施形態において述べた態様によりもたらされる他の作用効果について、本明細書の記載から明らかなもの、または当業者において適宜想到し得るものについては、当然に本発明によりもたらされるものと解される。
【符号の説明】
【0136】
DSP…表示装置、DA…表示領域、SA…周辺領域、PX…画素、SP1,SP2,SP3…副画素、LE1,LE2,LE3…下電極、OR1,OR2,OR3…有機層、UE1,UE2,UE3…上電極、SE1,SE2,SE3…封止層、DD1~DD8…蒸着装置、DS1~DS8…蒸着源、N0,N1,N2…ノズル、5…リブ、6…隔壁、61…下部、62…上部、63…ボトム層、64…軸層、100…製造装置。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8A
図8B
図8C
図8D
図8E
図8F
図8G
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19
図20