(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176745
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車載電池の温度制御装置
(51)【国際特許分類】
H02J 7/04 20060101AFI20241212BHJP
H02J 7/00 20060101ALI20241212BHJP
H01M 10/44 20060101ALI20241212BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02J7/04 L
H02J7/00 P
H01M10/44 P
H01M10/48 301
H01M10/48 P
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095523
(22)【出願日】2023-06-09
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)令和4年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「未利用熱エネルギーの革新的活用技術研究開発」に係る委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(71)【出願人】
【識別番号】000003137
【氏名又は名称】マツダ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】森島 千菜美
(72)【発明者】
【氏名】種平 貴文
(72)【発明者】
【氏名】三国 祐亮
(72)【発明者】
【氏名】山本 嵩
【テーマコード(参考)】
5G503
5H030
【Fターム(参考)】
5G503AA01
5G503BA04
5G503BB01
5G503CA08
5G503CB11
5G503EA08
5H030AS08
5H030BB01
5H030BB23
5H030FF22
5H030FF41
5H030FF42
5H030FF43
5H030FF44
5H030FF52
(57)【要約】
【課題】複数の電池を有する車載電池の充電効率の悪化を抑制する。
【解決手段】複数の電池は、車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方に並んで配置されている。BECM81は、各電池間の温度差が所定温度差以上であるときには、相対的に温度が低い電池からの放電量を、相対的に温度が高い電池からの放電量よりも多くするとともに、相対的に温度が低い電池に対する充電量を、相対的に温度が高い電池に対する充電量よりも小さくする。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電池を有する車載電池の温度制御装置であって、
前記各電池の温度をそれぞれ測定する複数の電池温度検出部と、
前記各電池温度検出部の検出結果に基づいて、各電池の充電及び放電をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、
前記各電池は、車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方に並んで配置されており、
前記コントローラは、前記各電池間の温度差が所定温度差以上であるときには、相対的に温度が低い前記電池からの放電量を、相対的に温度が高い前記電池からの放電量よりも多くするとともに、相対的に温度が低い前記電池に対する充電量を、相対的に温度が高い前記電池に対する充電量よりも小さくする、ことを特徴とする車載電池の温度制御装置。
【請求項2】
請求項1に記載の車載電池の温度制御装置において、
前記車載電池は、第1電池と第2電池との一対の電池を有し、
前記第1電池と前記第2電池とは、車両前後方向又は車幅方向に並んで配置されており、
前記コントローラは、前記第1及び前記第2電池のうち相対的に温度が低い前記電池である低温電池と、相対的に温度が高い前記電池である高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときには、前記低温電池からの放電量を、前記高温電池からの放電量よりも多くするとともに、前記低温電池に対する充電量を、前記高温電池に対する充電量よりも小さくする、ことを特徴とする車載電池の温度制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載の車載電池の温度制御装置において、
前記コントローラは、
前記低温電池のSOH(State of Health)を推定し、
推定したSOHに基づいて前記所定温度差を設定する、ことを特徴とする車載電池の温度制御装置。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の電池の温度制御装置において、
前記コントローラは、
前記1及び第2電池のSOC(State of Charge)をそれぞれ算出し、
前記低温電池のSOCが前記第1所定値未満であるときには、前記低温電池と前記高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときであっても、前記低温電池からの放電量と、前記高温電池からの放電量とを等しくする、ことを特徴とする車載電池の温度制御装置。
【請求項5】
請求項4に記載の電池の温度制御装置において、
前記コントローラは、前記低温電池のSOCが前記第1所定値よりも高い第2所定値未満でありかつ前記高温電池のSOCが前記第2所定値以上であるときには、前記低温電池と前記高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときであっても、前記低温電池に対する充電量を、前記高温電池に対する充電量よりも大きくする、ことを特徴とする車載電池の温度制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ここに開示された技術は、車載電池の温度制御装置に関する技術分野に属する。
【背景技術】
【0002】
従来より、車載電池の温度分布を抑制する工夫が検討されている。
【0003】
例えば、特許文献1では、電動車両の温度分布を推測する推測部と、冷却装置の駆動条件を設定する条件設定部と、を備え、条件設定部は、推測部が推測した温度分布に基づいて、第1通路を用いて蓄電池を冷却する条件と、第2通路を用いて前記蓄電池を冷却する条件とを、個別に設定する、蓄電池の冷却制御装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、電動で走行可能な車両には、車載電池が複数の電池を有するものがある。電池が複数ある場合、各電池の配置によって、電池間に温度差が生じることがある。
【0006】
例えば、各電池が車両前後方向に並んで配置されているときには、相対的に前側に位置する電池には走行風が当たりやすい一方で、相対的に後側に位置する電池には走行風が当たりにくい。このため、後側の電池と前側の電池の間に温度差が生じる。また、各電池が車幅方向に並んで配置されているときには、日光が車幅方向の一方側に当たる状況では、該一方側に配置されている電池は、他方側に配置されている電池と比較して温度が高くなる。
【0007】
電池の充電効率は温度によって変化するため、複数の電池間に温度の偏りがあると、走行中に充電する際に、電池間で充電効率に差が生じる。充電効率に差が生じると、充電量が小さくなり、結果として走行距離が短くなるおそれがある。
【0008】
また、電池の温度が高い状態で、複数の電池間に温度の偏りがあると、特定の電池の劣化が促進される。特定電池の劣化が促進されると、劣化が進んだ電池の充電効率が悪化する。この場合でも、電池間で充電効率に差が生じて、結果として走行距離が短くなるおそれがある。
【0009】
この対策として、特許文献2のように冷却装置の構造や制御を工夫したり、電池の配置を工夫したりして、電池間での温度差を小さくすることが考えられる。しかし、電池は比較的大きいため、その周囲の構造を工夫したり、電池自体の配置を工夫したりするのは限界がある。また、冷却装置の制御を工夫するにしても、各電池に対する冷媒の供給量を調整する切替バルブを設けるなどの構造上の変更が避けられない。このため、複数の電池の間で温度に偏りが生じたとしても、十分な充電効率が得られるようにするには改良の余地がある。
【0010】
ここに開示された技術は斯かる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、複数の電池を有する車載電池の充電効率の悪化を抑制することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題を解決するために、ここに開示された技術の第1の態様では、複数の電池を有する車載電池の温度制御装置を対象として、前記各電池の温度をそれぞれ測定する複数の電池温度検出部と、前記各電池温度検出部の検出結果に基づいて、各電池の充電及び放電をそれぞれ制御するコントローラと、を備え、前記各電池は、車両前後方向及び車幅方向の少なくとも一方に並んで配置されており、前記コントローラは、前記各電池間の温度差が所定温度差以上であるときには、相対的に温度が低い前記電池からの放電量を、相対的に温度が高い前記電池からの放電量よりも多くするとともに、相対的に温度が低い前記電池に対する充電量を、相対的に温度が高い前記電池に対する充電量よりも小さくする、という構成とした。
【0012】
本願発明者らは、走行中における、充電時の電池の発熱と放電時の電池の発熱とを比較して、放電時の方が充電時と比較して発熱が高いことを見出した。そこで、本開示は、相対的に温度が低い電池からの放電量を、相対的に温度が高い電池からの放電量よりも多くする。
【0013】
これにより、相対的に温度が低い電池は、相対的に温度が高い電池よりも温まりやすくなる。逆に言えば、相対的に温度が高い電池は、相対的に温度が低い電池よりも冷却されやすくなる。これにより、電池間の温度差が解消される。電池間の温度差が解消されることで、電池間での充電効率の差が解消されて、車載電池全体での充電効率を高い状態にすることができる。
【0014】
また、前記構成のように、相対的に温度が低い電池に対する充電量を、相対的に温度が高い電池に対する充電量よりも小さくする。これにより、充電効率が高い電池に優先的に充電されるため、車載電池全体での充電効率は高い状態にすることができる。
【0015】
ここに開示された技術の第2の態様では、前記第1の態様において、前記車載電池は、第1電池と第2電池との一対の電池を有し、前記第1電池と前記第2電池とは、車両前後方向又は車幅方向に並んで配置されており、前記コントローラは、前記第1及び前記第2電池のうち相対的に温度が低い前記電池である低温電池と、相対的に温度が高い前記電池である高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときには、前記低温電池からの放電量を、前記高温電池からの放電量よりも多くするとともに、前記低温電池に対する充電量を、前記高温電池に対する充電量よりも小さくする。
【0016】
この構成によると、コントローラによる制御が簡単になるため、車載電池全体での充電効率の悪化をより効果的に抑制することができる。
【0017】
ここに開示された技術の第3の態様では、前記第2の態様において、前記コントローラは、前記低温電池のSOH(State of Health)を推定し、推定したSOHに基づいて前記所定温度を設定する。
【0018】
すなわち、SOHは放電時の発熱量に影響する。所定温度差が小さくかつ発熱量が多いと、前述の充放電の制御時間がかなり短くなる。充放電の制御時間が短くなりすぎるとハンチングが発生するおそれがある。このため、前記構成のように、SOHに基づいて所定温度差を設定することで、制御時間をハンチングが発生しない程度の長さにすることができる。
【0019】
ここに開示された技術の第4の態様では、前記第2又は3の態様において、前記1及び第2電池のSOC(State of Charge)をそれぞれ算出し、前記低温電池のSOCが前記第1所定値未満であるときには、前記低温電池と前記高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときであっても、前記低温電池からの放電量と、前記高温電池からの放電量とを等しくする。
【0020】
すなわち、低温電池の電力が枯渇すると、高温電池からメインに放電することになって、過剰に温度差が広がるおそれがある。前記の構成によると、放電量を等しくすることで、低温電池の電力の枯渇を抑制しつつ、温度差が過剰に広がるのを抑制することができる。
【0021】
ここに開示された技術の第5の態様では、前記第4の態様において、前記コントローラは、前記低温電池のSOCが前記第1所定値よりも高い第2所定値未満でありかつ前記高温電池のSOCが前記第2所定値以上であるときには、前記低温電池と前記高温電池との間の温度差が前記所定温度差以上であるときであっても、前記低温電池に対する充電量を、前記高温電池に対する充電量よりも大きくする。
【0022】
この構成によると、SOCが高い状態では充電が抑制されるため、過剰な充電による電池の劣化を抑制することができる。これにより、電池の劣化による充電効率の悪化を抑制することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上説明したように、ここに開示された技術によると、複数の電池を有する車載電池の充電効率の悪化を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、例示的な実施形態に係る温度制御装置を有する車両の概略図である。
【
図2】
図2は、車両の冷却装置を示す概略図である。
【
図3】
図3は、温度制御装置の制御系を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、PCMの処理動作を示すフローチャートである。
【
図5】
図5は、所定温度差を設定するフローチャートである。
【
図6】
図6は、特定制御の処理動作を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は、第1電池の温度が第1所定温度未満であるときの、第1及び第2電池の温度の変化を示すタイムチャートである。
【
図8】
図8は、第2電池の温度が第2所定温度より高いときの、第1及び第2電池の温度の変化を示すタイムチャートである。
【
図10】
図10は、更に別の変形例に係る車両の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、例示的な実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0026】
〈全体構成〉
図1は、本実施形態に係る温度制御装置を備えた車両1を示す。車両1は、電気自動車やハイブリッド自動車などの電力で走行可能な自動車の車両である。
【0027】
車両1は、駆動源としての駆動モータ2を有する。駆動モータ2の回転は、4つの車輪4F,4F,4R,4Rのうち、前側に位置する2輪(駆動輪4F)にシャフトを介して伝達される。これにより、車両1は移動(走行)する。駆動モータ2は、モータジェネレータであって、車両1の減速時(回生時)には発電機として動作する。
【0028】
駆動モータ2は、インバータ3、第1コンバータ5、及び第2コンバータ6を介して電池10と接続されている。
【0029】
電池10は、第1電池11と、第2電池12とを含む。第1電池11は、第2電池12の前側に位置する。第1及び第2電池11,12は、それぞれ、複数のリチウムイオン電池セルを積層して構成されている。第1及び第2電池11,12の定格電圧は、例えば50V以下(具体的には48V)である。第1電池11及び第2電池12の構成は同じである。
【0030】
第1コンバータ5は、第1電池11に接続されている。第2コンバータ6は、第2電池12に接続されている。第1及び第2コンバータ5,6は、車両1の走行時には、第1及び第2電池11,12から出力される直流電力を駆動モータ2の駆動電圧に降圧して、インバータ3に供給する。第1及び第2コンバータ5,6は、車両1の回生時には、インバータ3からの直流電力を昇圧して、第1及び第2電池11,12に充電する。
【0031】
インバータ3は、直流電力と交流電力との変換を行う。インバータ3は、車両1の走行時には、第1及び第2コンバータ5,6を介して供給された直流電力を位相が異なる3相の交流電流に変換して駆動モータ2に供給する。インバータ3は、車両1の回生時には、駆動モータ2で発電された交流電力を直流電力に変換して、第1及び第2コンバータ5,6に供給する。
【0032】
第1電池11には、第1スイッチ13が接続されている。第2電池12には第2スイッチ14が接続されている。第1スイッチ13及び第2スイッチ14の両方がオンのときには、第1及び第2電池11,12の両方に対する充電、並びに第1及び第2電池11,12の両方からの放電が可能になる。第1スイッチ13がオンでかつ第2スイッチ14がオフのときには、第1電池11のみに対する充電及び第1電池11のみからの放電が可能になる。第1スイッチ13がオフでかつ第2スイッチ14がオンのときには、第2電池12のみに対する充電及び第2電池12のみからの放電が可能になる。
【0033】
図2に示すように、車両1は、電池10を冷却する冷却装置50を有する。冷却装置50は、液体の冷媒を気体へと相変化させる際の吸熱反応により電池10を冷却する。冷媒は、例えばHFO(ハイドロフルオロオレフィン)系冷媒であって、具体的にはR1234yfである。
【0034】
冷却装置50は、冷媒と第1電池11とを熱交換させる第1熱交換器51と、冷媒と第2電池12とを熱交換させる第2熱交換器52と、第1及び第2熱交換器51,52から流出した冷媒を加圧するコンプレッサ53と、コンプレッサ53で加圧された冷媒を冷却して凝縮させるコンデンサ54と、外気を引き込むファン55と、コンデンサ54で凝縮された冷媒を貯留するレシーバタンク56と、コンデンサ4で凝縮された冷媒の圧力を低下させる膨張弁57と、を有する。
【0035】
コンプレッサ53は、第1及び第2電池11,12と熱交換した後の冷媒を加圧する。コンプレッサ3は、例えばスクロール式のコンプレッサであって、回転数を調整することで流出する冷媒の圧力を調整することができる。
【0036】
コンデンサ54は、車両1の走行時には、走行風及びファン55の少なくとも一方により引き込まれた空気によって冷媒を冷却する一方で、車両1の停車時には、ファン55の回転により引き込まれた空気により冷媒を冷却する。
【0037】
ファン55は電動式のファンである。ファン55は、小型の電動モータを有しており、該電動モータの回転により回転する。
【0038】
膨張弁57は、冷媒の圧力を低下させて、該冷媒を第1及び第2熱交換器51,52に流入させる。膨張弁57を通過した冷媒は、断熱膨張により温度が低下する。膨張弁5は、第1及び第2熱交換器51,52に流入させる冷媒の流量を調整するためにも利用される。具体的には、膨張弁57の開度が大きいほど第1及び第2熱交換器51,52に流入する冷媒の流量が大きくなる一方で、膨張弁57の開度が小さいほど第1及び第2熱交換器51,52に流入する冷媒の流量が小さくなる。
【0039】
〈制御システム〉
図3に示すように、車両1は、車両1の動力系統全体の制御を行うコントローラであるPCM(Powertrain Control Module)80と、主に電池10の充放電制御を行うコントローラであるBECM(Battery Energy Control Module)81を有する。PCM80は、CPUを有する1つ以上のプロセッサ80aと、ROMやRAMを有しかつ各種プログラムを記憶するメモリ80bと、を備える。メモリ80bは、例えば不揮発性メモリである。BECM81は、CPUを有する1つ以上のプロセッサ81aと、ROMやRAMで構成されかつ各種プログラムを記憶するメモリ81bと、を備える。メモリ81bは、例えば不揮発性メモリである。
【0040】
BECM81は、第1電池11の温度を検出する第1電池温度センサSW1、第2電池12の温度を検出する第2電池温度センサSW2、第1電池11の電流を検出する第1電流センサSW3、第2電池12の電流を検出する第2電流センサSW4、第1電池11の電圧を検出する第1電圧センサSW5、及び第2電池12の電圧を検出する第2電圧センサSW6をそれぞれ備える。第1及び第2電池温度センサSW1,SW2は、例えば、第1電池及び第2電池11,12の中央付近に配置されている。第1及び第2電流センサSW3,SW4は、第1及び第2電池11,12に対してそれぞれ直列接続されている。第1及び第2電圧センサSW5,SW6は、第1及び第2電池11,12に対してそれぞれ並列接続されている。
【0041】
BECM81は、各センサSW1~SW6からの信号に基づいて、第1及び第2電池11,12に対する充放電に関する制御信号をPCM80に送信する。
【0042】
PCM80は、BECM81から受信した制御信号に基づいて、第1スイッチ13、第2スイッチ14、インバータ3、第1コンバータ5、第2コンバータ6、コンプレッサ53、ファン55、及び膨張弁57を制御する。
【0043】
BECM81が行う制御は、メモリ81bにプログラムとして記憶されている。PCM80が行う制御は、メモリ80bにプログラムとして記憶されている。
【0044】
〈電池の温度制御〉
BECM81は、駆動モータ2に電流を供給するとき、及び駆動モータ2で発電された電力を第1及び第2電池11,12に充電するときには、第1及び第2電池11,12の両方に対して充放電が行われるようにする。つまり、BECM81は、第1及び第2スイッチ13,14の両方をオンにするように、PCM80に制御信号を出力する。
【0045】
ここで、前述したように、第1電池11は、第2電池12よりも車両前側に配置されている。このため、第1電池11は、第2電池12よりも走行風が当たりやすく、例えば走行風の温度が低い冬場においては、第2電池12よりも冷えやすい。
【0046】
基本的に、電池の温度が低くなると充電効率が低下してしまう。このため、第1電池11の温度が第2電池12の温度よりも低いときには、第1電池11と第2電池12との両方に充電可能な状態であったとしても、第1電池11の充電効率は、第2電池12の充電効率よりも悪くなる。このため、第1電池11と第2電池12との温度差が大きいときには、充電効率に大きな差が生じてしまい、第1電池11の残量が少なくなりやすくなる。第1電池11の残量が少なくなると、走行距離が短くなってしまう。
【0047】
また、逆に第2電池12は、第1電池11よりも高温になりやすい。第2電池12が高温になりすぎると第2電池12の劣化を促進させてしまう。第2電池12の劣化が促進すると、第2電池12の充電効率が悪化する。このため、電池10の温度が高い場合にも、第1電池11と第2電池12との温度差が大きいときには、充電効率に大きな差が生じてしまう。
【0048】
そこで、本実施形態では、第1電池11と第2電池12との温度差が、充電効率に大きな差が生じてしまう程度に大きくなったときには、第1及び第2電池11,12に対する充電及び放電を偏らせる特定制御を実行するようにした。
【0049】
図4は、BECM81により特定制御を実行する際のフローチャートである。
【0050】
まず、ステップS1において、BECM81は、各センサSW1~SW6からの検出信号を読み込む。
【0051】
次に、ステップS2において、BECM81は、第1電池11の温度である第1電池温度T1が、第1所定温度Tc1より高く、かつ第1所定温度Tc1よりも高温の第2所定温度Tc2よりも低いか否かを判定する。第1所定温度Tc1は、電池10の充電効率が悪化する温度であり、例えば0℃である。第2所定温度Tc2は、電池10の劣化が促進する温度であり、例えば55℃である。BECM81は、第1電池温度T1が第1所定温度Tc1より高くかつ第2所定温度Tc2より低いYESのときには、ステップS3に進む。一方で、BECM81は、第1電池温度T1が第1所定温度Tc1より低いか又は第2所定温度Tc2より高いNOのときには、ステップS4に進む。
【0052】
前記ステップS3において、BECM81は、第2電池12の温度である第2電池温度T2が、第1所定温度Tc1より高く、かつ第1所定温度Tc1よりも高温の第2所定温度Tc2よりも低いか否かを判定する。BECM81は、第2電池温度T2が第1所定温度Tc1より高くかつ第2所定温度Tc2より低いYESのときには、ステップS8に進む。一方で、BECM81は、第2電池温度T2が第1所定温度Tc1より低いか又は第2所定温度Tc2より高いNOのときには、ステップS4に進む。
【0053】
前記ステップS4では、BECM81は、第1所定温度差dTh1及び第2所定温度差dTh2を算出する。第1所定温度差dTh1は、第1及び第2電池11,12の一方の電池のSOH(State of Health)、特にSOHR(State of Health Resistance)に基づいて算出される。SOHRは、電池の内部抵抗の劣化率である。第2所定温度差dTh2は、第1所定温度差dTh1に基づいて設定される。第2所定温度差dTh2は、第1所定温度差dTh1よりも小さい値である。第1所定温度差dTh1及び第2所定温度差dTh2の算出方法については後述する。
【0054】
次にステップS5において、BECM81は、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差の絶対値が第1所定温度差dTh1以上であるか否かを判定する。BECM81は、当該差の絶対値が第1所定温度差dTh1以上であるYESのときにはステップS6に進む。一方で、BECM81は、当該差の絶対値が第1所定温度差dTh1未満であるNOのときにはステップS8に進む。
【0055】
前記ステップS6では、BECM81は、特定制御を実行する。特定制御は、第1電池11のSOC(State of Charge)及び第2電池12のSOCに応じて、制御内容が変化する。特定制御については後述する。
【0056】
次に、ステップS7では、BECM81は、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差の絶対値が第2所定温度差dTh2以下であるか否かを判定する。BECM81は、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差の絶対値が第2所定温度差dTh2以下であるYESのときには、リターンする。一方で、BECM81は、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差の絶対値が第2所定温度差dTh2よりも大きいNOのときには、ステップS6に戻る。
【0057】
前記ステップS8では、BECM81は、通常制御を実行する。通常制御は、前述した様に、充電及び放電のいずれにおいても、第1及び第2スイッチ13,14の両方をオンにする制御である。BECM81は、ステップS8の後はリターンする。
【0058】
〈所定温度差の算出〉
次に、前述した第1所定温度差dTh1及び第2所定温度差dTh2の算出方法について説明する。第1所定温度差dTh1は、第1及び第2電池11,12のうち相対的に温度が低い電池(以下、低温電池という)のSOHRから算出される内部抵抗と、特定制御を最低限継続する必要がある時間である下限時間とに基づいて設定される。
【0059】
詳しくは後述するが、特定制御では、基本的には、充電は第1及び第2電池11,12のうち相対的に温度が高い電池(以下、高温電池という)のみに対して実行され、放電は低温電池のみに対して実行される。このため、第1及び第2電池11,12に対する充電量も放電量も通常制御と比較して大きくなる。充電量及び放電量が大きくなると、ハンチングが生じ易くなる。ハンチングは、第1及び第2スイッチ13,14のオンオフの周期が短い程発生しやすくなる。このため、ハンチングを抑制するには、特定制御をある程度長い時間継続する必要がある。この時間が下限時間として予め設定されている。下限時間は、実験等により求めることができる。下限時間は、メモリ81bに記憶されている。
【0060】
図5は、第1所定温度差dTh1を算出する際のフローチャートである。
【0061】
まずステップS41において、BECM81は、低温電池のSOHRを推定する。BECM81は、スイッチがオフされた状態での低温電池の電流値及び電圧値に基づいてSOHRを推定する。
【0062】
次に、ステップS42において、BECM81は、特定制御を実行すると仮定したときの低温電池の放電時の発熱量を算出する。発熱量は、前記ステップS42で推定したSOHRから算出される内部抵抗と、放電時の電流値と、下限時間と、に基づいて、
Q = RI2t
の式からジュール熱の量を算出することで求めることができる。Qは発熱量であり、RはSOHRから算出される内部抵抗であり、Iは放電時の電流値であり、tは下限時間である。放電時の電流値は平均電流値である。尚、ここでは、低温電池のみから放電した場合の発熱量が算出される。後述するように、特定制御では、低温電池と高温電池との両方から放電する場合があるが、そのときの発熱量は、低温電池のみから放電した場合の発熱量よりも低いためである。
【0063】
次いで、ステップS43において、BECM81は、前記ステップS43で算出した発熱量を低温電池の熱容量で除することで、第1所定温度差dTh1を算出する。第1及び第2電池11,12の構成は同じであるため、第1及び第2電池11,12の熱容量も同じである。第1及び第2電池11,12の熱容量は、メモリ81bに記憶されている。
【0064】
次に、ステップS44において、BECM81は、前記ステップS44又は前記ステップS46で算出した第1所定温度差dTh1に基づいて、第2所定温度差dTh2を算出する。BECM81は、算出した第1所定温度差dTh1よりも低くなるように算出する。第2所定温度差dTh2は、第1所定温度差dTh1から決まった値だけ低い値に設定してもいいし、第1所定温度差dTh1に対して決まった割合(例えば60%)の値に設定してもいい。BECM81は、ステップS44の後はリターンする。尚、第1所定温度差dTh1に基づいて算出した第2所定温度差dTh2が、第1及び第2温度センサSW1,SW2による温度差検出の分解能よりも小さいときには、第2所定温度差dTh2を、当該温度差検出の分解能に設定してもよい。例えば、第1所定温度差dTh1に基づいて算出した第2所定温度差dTh2が2℃であり、第1及び第2温度センサSW1,SW2による温度差検出の分解能が3℃であるときには、第2所定温度差dTh2を3℃に設定してもよい。
【0065】
以上により、ハンチングを抑制しつつ特定制御を実行可能な第1所定温度差dTh1を算出することができる。
【0066】
〈特定制御〉
次に、前述した特定制御について詳細に説明する。
【0067】
充電時の発熱と放電時の発熱とを比較すると、放電時の方が発熱しやすい。このため、特定制御では、基本的に、放電は、低温電池のみから行う一方で、充電は、第1及び第2電池11,12のうち相対的に温度が高い電池(以下、高温電池という)のみに対して行う。
【0068】
しかしながら、低温電池のSOCが低いときに低温電池から積極的に放電を行うと、低温電池の充電電力が枯渇してしまい放電による発熱を継続できなくなってしまう。また、高温電池のSOCが高いときに無理に充電を行うと、高温電池の劣化が進んでしまって、電池の劣化による充電効率の悪化を招きかねない。
【0069】
そこで、本実施形態では、放電は低温電池から行いかつ充電は高温電池に行う制御を基本としつつ、低温電池のSOCが低いとき及び高温電池のSOCが高いときには、制御内容を変更するようにした。
【0070】
図6は、特定制御におけるBECM81の処理動作を示すフローチャートである。
【0071】
まず、ステップS61において、BECM81は、低温電池のSOCが第1所定値C1未満であるか否かを判定する。第1所定値C1は、放電量を抑制すべきSOCの値であり、例えば40%である。BECM81は、低温電池のSOCが第1所定値C1未満であるYESのときには、ステップS63に進む。一方で、BECM81は、低温電池のSOCが第1所定値C1以上であるNOのときには、ステップS62に進む。
【0072】
前記ステップS62では、BECM81は、高温電池のSOCが第2所定値C2以上であるか否かを判定する。第2所定値C2は、充電量を抑制すべきSOCの値であり、例えば80%である。BECM81は、高温電池のSOCが第2所定値C2以上であるYESのときには、ステップS64に進む。一方で、BECM81は、高温電池のSOCが第1所定値C2未満であるNOのときには、ステップS65に進む。
【0073】
前記ステップS63では、BECM81は、充電は低温電池のみに対して実行し、放電は低温電池及び高温電池の両方から行うように、PCM80に制御信号を出力する。PCM80は、充電時には低温電池に接続されているスイッチをオンにしかつ高温電池に接続されているスイッチをオフにする。PCM80は、放電時には低温電池に接続されているスイッチ及び高温電池に接続されているスイッチの両方をオンにする。BECM81は、ステップS63の後はリターンする。
【0074】
前記ステップS64では、BECM81は、充電及び放電の両方を低温電池のみに対して実行するように、PCM80に制御信号を出力する。PCM80は、充電時及び放電時の両方において、低温電池に接続されているスイッチをオンにしかつ高温電池に接続されているスイッチをオフにする。BECM81は、ステップS64の後はリターンする。
【0075】
前記ステップS65では、BECM81は、充電は高温電池のみに対して実行し、放電は低温電池から行うように、PCM80に制御信号を出力する。PCM80は、充電時には高温電池に接続されているスイッチをオンにしかつ低温電池に接続されているスイッチをオフにする。PCM80は、放電時には低温電池に接続されているスイッチをオンにしかつ高温電池に接続されているスイッチをオフにする。BECM81は、ステップS65の後はリターンする。
【0076】
このように、出来る限り低温電池から放電するようにすることで、低温電池の発熱を促すことができるとともに、高温電池の冷却を促すことができる。また、出来る限り高温電池に充電することで、電池10全体での充電効率の悪化を抑制することができる。
【0077】
図7は、電池温度が低いときにおける、第1及び第2電池11,12に対する充電及び放電と、第1及び第2電池温度T1,T2の変化を示すタイムチャートである。ここでは、第1電池11が低温電池であり、第2電池12が高温電池である場合を想定している。また、第1電池11のSOC及び第2電池12のSOCは、共に第1所定値C1以上でかつ第2所定値C2未満である場合を想定している。
【0078】
まず、初期状態では、車両1が停止していて、第1及び第2電池11,12のいずれに対しても充電も放電もされていない。このとき、第1電池温度T1は、第1所定温度Tc1未満である。第1電池温度T1と第2電池温度T2との差は、第1所定温度差dTh1未満である。
【0079】
次に、時刻t11において、車両1が走行を開始する。第1電池温度T1と第2電池温度T2とにほとんど差がないため、BECM81は通常制御を実行する。このため、第1及び第2電池11,12の両方から放電される。第1電池11の方が第2電池12よりも走行風が当たりやすいため、第1電池温度T1は、第2電池温度T2よりも上昇しにくい。
【0080】
次いで、時刻t12において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が第1所定温度差dTh1以上になると、BECM81は特定制御を実行する。現在は放電中であるため、第1電池11からのみ放電され、第2電池12からは放電されない。このとき、第1電池11のみで駆動モータ2に必要な電力を供給する必要があるため、放電量は、通常制御と比較して増加する。第1電池11のみから放電されることで、第1電池温度T1が大きく上昇する。
【0081】
次に、車両1にブレーキがかけられて、時刻t13において回生充電が開始される。このときには、第2電池12に対してのみ充電され、第1電池11には充電されない。第2電池12にのみ充電されるため、第2電池温度T2が上昇する一方で、第1電池温度T1はほとんど上昇しない。また、充電時は放電時よりも温度上昇が小さいため、充電時における第2電池温度T2の上昇速度は、放電時における第1電池温度T1の上昇速度よりも低い。
【0082】
次いで、時刻t14において、再び放電が開始されると、第1電池11からのみ放電され、第2電池12からは放電されない。これにより、第1電池温度T1が再び大きく上昇する。
【0083】
そして、時刻t15において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が第2所定温度差dTh2以下になると、BECM81は、特定制御を停止させて、通常制御を実行する。これにより、第1及び第2電池11,12の両方から放電される。
【0084】
その後、時刻t16において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が再び第1所定温度差dTh1以上になると、BECM81は特定制御を再度実行する。
【0085】
図8は、電池温度が高いときにおける、第1及び第2電池11,12に対する充電及び放電と、第1及び第2電池温度T1,T2の変化を示すタイムチャートである。ここでは、第1電池11が低温電池であり、第2電池12が高温電池である場合を想定している。また、第1電池11のSOC及び第2電池12のSOCは、共に第1所定値C1以上でかつ第2所定値C2未満である場合を想定している。
【0086】
まず、初期状態では、車両1が停止していて、第1及び第2電池11,12のいずれに対しても充電も放電もされていない。このとき、第2電池温度T2は、第2所定温度Tc2よりも高い。第1電池温度T1と第2電池温度T2との差は、第1所定温度差dTh1未満である。
【0087】
次に、時刻t21において、車両1が走行を開始する。第1電池温度T1と第2電池温度T2とにほとんど差がないため、BECM81は通常制御を実行する。このため、第1及び第2電池11,12の両方から放電される。第1電池11の方が第2電池12よりも走行風が当たりやすいため、第2電池温度T2は、第1電池温度T1よりも低下しにくい。
【0088】
次いで、時刻t22において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が第1所定温度差dTh1以上になると、BECM81は特定制御を実行する。現在は放電中であるため、第1電池11からのみ放電され、第2電池12からは放電されない。このとき、第1電池11のみで駆動モータ2に必要な電力を供給する必要があるため、放電量は、通常制御と比較して増加する。第2電池12から放電されなくなることで、第2電池12が冷却されやすくなって、第2電池温度T2が大きく低下する。
【0089】
次に、車両1にブレーキがかけられて、時刻t23において回生充電が開始される。このときには、第2電池12に対してのみ充電され、第1電池11には充電されない。第2電池12にのみ充電されるため、第2電池温度T2は、第1電池温度T1よりも低下しにくくなる。
【0090】
次いで、時刻t24において、再び放電が開始されると、第1電池11からのみ放電され、第2電池12からは放電されない。これにより、第2電池温度T2が再び大きく低下する。
【0091】
そして、時刻t25において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が第2所定温度差dTh2以下になると、BECM81は、特定制御を停止させて、通常制御を実行する。これにより、第1及び第2電池11,12の両方から放電される。
【0092】
その後、時刻t26において、第1電池温度T1と第2電池温度T2との差が再び第1所定温度差dTh1以上になると、BECM81は特定制御を再度実行する。
【0093】
以上のようにして、第1電池11と第2電池12との間の温度差を小さくして、第1電池11の充電効率と第2電池12の充電効率とが出来る限り高い状態で均一になるようにすることができる。この結果、充電効率の悪化を抑制することができる。
【0094】
〈実施形態の効果〉
したがって、本実施形態では、第1及び第2電池11,12の温度をそれぞれ測定する第1及び第2電池温度センサSW1,SW2と、第1及び第2電池温度センサSW1,SW2の検出結果に基づいて、第1及び第2電池11,12の充電及び放電をそれぞれ制御するBECM81と、を備え、第1電池11と第2電池12とは、車両前後方向に並んで配置されており、BECM81は、第1及び第2電池11,12のうち相対的に温度が低い低温電池と、相対的に温度が高い高温電池との間の温度差が第1所定温度差dTh以上であるときには、低温電池からのみ放電するとともに、高温電池にのみ充電する。これにより、低温電池は、高温電池よりも温まりやすくなるため、第1電池11と第2電池12との間の温度差が解消される。また、高温電池は、低温電池よりも冷却されやすくなるため、第1電池11と第2電池12との間の温度差が解消される。第1電池11と第2電池12との温度差が解消されることで、第1電池11と第2電池12との充電効率の差が解消されて、車載電池全体での充電効率を高い状態にすることができる。また、低温電池に対する充電量を、高温電池に対する充電量よりも小さくする。これにより、充電効率が高い電池に優先的に充電されるため、車載電池全体での充電効率は高い状態にすることができる。
【0095】
また、本実施形態では、BECM81は、低温電池のSOHRを推定し、推定したSOHRに基づいて第1所定温度差dTh1を設定する。これにより、特定制御が実行される時間をハンチングが発生しない程度の長さにすることができる。この結果、特定制御を精度良く実行することができる。
【0096】
また、本実施形態では、BECM81は、第1及び第2電池11,12のSOCをそれぞれ算出し、低温電池のSOCが第1所定値C1未満であるときには、低温電池と高温電池との間の温度差が第1所定温度差dTh以上であるときであっても、低温電池からの放電量と、高温電池からの放電量とを等しくする。これにより、低温電池の電力の枯渇を抑制しつつ、温度差が過剰に広がるのを抑制することができる。
【0097】
BECM81は、低温電池のSOCが第1所定値C1よりも高い第2所定値C2未満でありかつ高温電池のSOCが第2所定値C2以上であるときには、低温電池と高温電池との間の温度差が第1所定温度差dTh1以上であるときであっても、低温電池に対する充電量を、高温電池に対する充電量よりも大きくする。これにより、SOCが高い状態では充電が抑制されるため、過剰な充電による高温電池の劣化を抑制することができる。この結果、高温電池の劣化による充電効率の悪化を抑制することができる。
【0098】
(その他の実施形態)
ここに開示された技術は、前述の実施形態に限られるものではなく、請求の範囲の主旨を逸脱しない範囲で代用が可能である。
【0099】
例えば、前述の実施形態では、第1電池11と第2電池12とは、車両前後方向に並んで配置されていた。これに限らず、
図9に示すように、第1電池11と第2電池12とは、車幅方向に並んで配置されていてもよい。第1電池11と第2電池12とが車幅方向に並んで配置されている場合であっても、例えば、日光が車両1の左右一方側に当たっているときや、排気管が車両1の左右の一方側に偏って配置されているときには、第1電池11と第2電池12との間で温度差が生じる。このため、第1電池11と第2電池12とが車幅方向に並んで配置されている場合であっても、特定制御の効果を発揮することができる。
【0100】
また、前述の実施形態では、BECM81は、基本的には、放電は低温電池からのみ行い、充電は高温電池にのみ行うようにしていた。これに限らず、BECM81は、放電及び充電の少なくとも一方を、低温電池及び高温電池の両方に行うようにしかつその割合を調整するようにしてもよい。例えば、放電量の80%を低温電池から供給しかつ20%を高温電池から供給するようにしてもよい。また、充電量の20%を低温電池に供給しかつ80%を高温電池に供給するようにしてよい。このように、充電量及び放電量の割合を調整する制御は、第1コンバータ5及び第2コンバータ6を制御することで可能である。
【0101】
また、前述の実施形態では、電池10は、第1電池11と第2電池12の2つのみであった。これに限らず、
図10に示すように3つ以上の電池を含んでいてもよい。この場合、BECM81は、最も温度が高い電池の温度と最も温度が低い電池の温度の差が第1所定温度差dTh1以上になったときに、特定制御を実行するようにする。このときには、最も温度が低い電池のみから放電するようにし、充電は最も温度が低い電池以外の電池に対して行えばよい。また、電池の温度に応じて、放電量及び充電量の割合を調整するようにしてもよい。例えば、
図10のように電池が3つのときには、放電量の70%を温度が最も低い電池から供給しかつ20%を中間の温度の電池から供給しかつ10%を最も温度が高い電池から供給するようにしてもよい。
【0102】
前述の実施形態は単なる例示に過ぎず、本開示の範囲を限定的に解釈してはならない。本開示の範囲は請求の範囲によって定義され、請求の範囲の均等範囲に属する変形や変更は、全て本開示の範囲内のものである。
【産業上の利用可能性】
【0103】
ここに開示された技術は、複数の電池を有する車載電池の温度制御装置として有用である。
【符号の説明】
【0104】
10 電池
11 第1電池
12 第2電池
81 BECM(コントローラ)
SW1 第1電池温度センサ(電池温度検出部)
SW2 第2電池温度センサ(電池温度検出部)