(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176760
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】圧縮機及び冷凍装置
(51)【国際特許分類】
H02K 3/50 20060101AFI20241212BHJP
F04B 39/00 20060101ALI20241212BHJP
F04C 29/00 20060101ALI20241212BHJP
H02K 3/34 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02K3/50 A
F04B39/00 106E
F04C29/00 T
H02K3/34 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095544
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002853
【氏名又は名称】ダイキン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001427
【氏名又は名称】弁理士法人前田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永谷 早祐美
(72)【発明者】
【氏名】塚 義友
(72)【発明者】
【氏名】塚本 聡
【テーマコード(参考)】
3H003
3H129
5H604
【Fターム(参考)】
3H003AA01
3H003AB03
3H003AC03
3H003CF02
3H003CF03
3H003CF04
3H003CF06
3H129AA02
3H129AA14
3H129AA21
3H129AB03
3H129BB38
3H129BB44
3H129CC06
3H129CC07
3H129CC23
3H129CC27
5H604AA05
5H604BB01
5H604BB08
5H604BB14
5H604CC01
5H604CC05
5H604CC15
5H604PB03
5H604QB14
(57)【要約】
【課題】中性線を固定する固定部をステータコアの周辺を流れる作動流体から保護する。
【解決手段】圧縮機(10)は、圧縮機構(30)と、圧縮機構を駆動するモータ(60)と、を備える。モータのステータコア(70)は、環状であり且つ軸方向に延びるバックヨーク(71)と、ヨーク内周面(71a)から径方向内方に突出し且つ周方向に間隔を空けて配置された第1ティース(72A)及び第2ティース(72B)と、を含む。ヨーク外周面には、軸方向に延び且つ径方向内方に凹んだコアカット(73)が設けられる。第1ティースには第1相コイル(80A)が巻かれる。第2ティースには第2相コイル(80B)が巻かれる。第1相コイルからは第1相中性線(82A)が引き出される。第2相コイルからは第2相中性線(82B)が引き出される。第1相中性線と第2相中性線とを固定する固定部(83)は、周方向にてコアカットに重ならない位置且つヨーク内周面よりも径方向外方に配置される。
【選択図】
図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)を駆動するモータ(60)と、を備え、
前記モータ(60)は、ステータコア(70)を有し、
前記ステータコア(70)は、環状であり且つ軸方向(Z)に延びるバックヨーク(71)と、前記バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)から径方向(R)の内方(R1)に突出し且つ周方向(T)に間隔を空けて配置された第1ティース(72A)及び第2ティース(72B)と、を含み、
前記バックヨーク(71)のヨーク外周面(71b)には、前記軸方向(Z)に延び且つ前記径方向(R)の内方(R1)に凹んだコアカット(73)が設けられており、
前記第1ティース(72A)には、第1相コイル(80A)が巻かれており、
前記第2ティース(72B)には、第2相コイル(80B)が巻かれており、
前記第1相コイル(80A)からは、第1相中性線(82A)が引き出されており、
前記第2相コイル(80B)からは、第2相中性線(82B)が引き出されており、
前記第1相中性線(82A)と前記第2相中性線(82B)とは、固定部(83)で固定されており、
前記固定部(83)は、前記周方向(T)において前記コアカット(73)に重ならない位置、且つ、前記ヨーク内周面(71a)よりも前記径方向(R)の外方(R2)に、配置されている、
圧縮機。
【請求項2】
前記バックヨーク(71)の前記軸方向(Z)におけるヨーク端面(71c)には、インシュレータ(90)が設けられており、
前記インシュレータ(90)は、環状であり且つ前記軸方向(Z)に延びる外周壁(91)を含み、
前記固定部(83)は、前記外周壁(91)に配置されている、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項3】
前記固定部(83)は、前記外周壁(91)におけるインシュレータ外周面(91a1,91b1)に配置されている、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項4】
前記外周壁(91)には、切り欠き(94)が形成されており、
前記固定部(83)は、前記切り欠き(94)に配置されている、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項5】
前記固定部(83)は、前記外周壁(91)の前記軸方向(Z)におけるインシュレータ端面(91b2)に配置されている、
請求項2に記載の圧縮機。
【請求項6】
前記第1相コイル(80A)からは、第1相リード線(81A)が引き出されており、
前記第2相コイル(80B)からは、第2相リード線(81A)が引き出されており、
前記第1相中性線(82A)及び前記第2相中性線(82B)は、前記第1相リード線(81A)及び前記第2相リード線(81B)に対して前記軸方向(Z)の反対側に、引き出されている、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項7】
前記軸方向(Z)において前記第1相中性線(82A)及び前記第2相中性線(82B)よりも前記第1相リード線(81A)及び前記第2相リード線(81B)の近くに配置された端子台(110)を備える、
請求項6に記載の圧縮機。
【請求項8】
前記周方向(T)において互いに異なる位置に配置された前記固定部(83)としての第1固定部(83A)及び第2固定部(83B)があり、
前記第1固定部(83A)及び前記第2固定部(83B)は、前記周方向(T)において前記コアカット(73)に重ならない位置、且つ、前記ヨーク内周面(71a)よりも前記径方向(R)の外方(R2)に、配置されている、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項9】
前記固定部(83)は、前記第1相中性線(82A)と前記第2相中性線(82B)とを束ねるスリーブ(83)である、
請求項1に記載の圧縮機。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1つに記載の圧縮機(10)を備える、
冷凍装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、圧縮機及び冷凍装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示の圧縮機は、圧縮機構と、圧縮機構を駆動するモータと、を備える。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に係る圧縮機では、モータのステータコアの外周面には、軸方向に延びるコアカットが設けられている。圧縮機構で圧縮された作動流体は、ケーシング内を、圧縮機構側からモータ側に流れる。このとき、作動流体は、ケーシングとステータコアとの間を、コアカットに沿うようにして軸方向に流れる。さらに、作動流体は、ステータコアの内周側を、軸方向に沿って流れることがある。
【0005】
ステータコアには、複数のコイルが配置されている。コイルからは中性線が引き出されている。各コイルから引き出された各中性線は、固定部で互いに固定される。
【0006】
中性線同士を互いに固定する固定部が、コアカットに沿って軸方向に流れる作動流体やステータコアの内周側を軸方向に流れる作動流体に、晒されてしまうと、固定部による中性線同士の固定が解除されたり、固定部がステータコアから脱落したりしかねない。
【0007】
本開示の目的は、圧縮機において、中性線同士を固定する固定部を、ステータコアの周辺を流れる作動流体から、保護することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の第1の態様は、圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)は、圧縮機構(30)と、前記圧縮機構(30)を駆動するモータ(60)と、を備え、前記モータ(60)は、ステータコア(70)を有し、前記ステータコア(70)は、環状であり且つ軸方向(Z)に延びるバックヨーク(71)と、前記バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)から径方向(R)の内方(R1)に突出し且つ周方向(T)に間隔を空けて配置された第1ティース(72A)及び第2ティース(72B)と、を含み、前記バックヨーク(71)のヨーク外周面(71b)には、前記軸方向(Z)に延び且つ前記径方向(R)の内方(R1)に凹んだコアカット(73)が設けられており、前記第1ティース(72A)には、第1相コイル(80A)が巻かれており、前記第2ティース(72B)には、第2相コイル(80B)が巻かれており、前記第1相コイル(80A)からは、第1相中性線(82A)が引き出されており、前記第2相コイル(80B)からは、第2相中性線(82B)が引き出されており、前記第1相中性線(82A)と前記第2相中性線(82B)とは、固定部(83)で固定されており、前記固定部(83)は、前記周方向(T)において前記コアカット(73)に重ならない位置、且つ、前記ヨーク内周面(71a)よりも前記径方向(R)の外方(R2)に、配置されている。
【0009】
第1の態様によれば、第1相中性線(82A)と第2相中性線(82B)とを固定する固定部(83)は、周方向(T)においてコアカット(73)に重ならない位置、且つ、ヨーク内周面(71a)よりも径方向(R)の外方(R2)に、配置されている。
【0010】
この範囲に固定部(83)を配置することによって、固定部(83)は、コアカット(73)に沿って軸方向(Z)に流れる作動流体やヨーク内周面(71a)よりも径方向(R)の内方(R1)を軸方向(Z)に流れる作動流体に、晒されにくくなる。
【0011】
圧縮機(10)において、第1相中性線(82A)と第2相中性線(82B)とを固定する固定部(83)を、ステータコア(70)の周辺を流れる作動流体から、保護することができる。
【0012】
本開示の第2の態様は、第1の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記バックヨーク(71)の前記軸方向(Z)におけるヨーク端面(71c)には、インシュレータ(90)が設けられており、前記インシュレータ(90)は、環状であり且つ前記軸方向(Z)に延びる外周壁(91)を含み、前記固定部(83)は、前記外周壁(91)に配置されている。
【0013】
第2の態様によれば、固定部(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置することによって、固定部(83)を、バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向(R)の外方(R2)に、簡単に位置付けることができる。
【0014】
本開示の第3の態様は、第2の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記固定部(83)は、前記外周壁(91)におけるインシュレータ外周面(91a1,91b1)に配置されている。
【0015】
第3の態様によれば、固定部(83)をバックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向(R)の外方(R2)に位置付ける上で、より有利になる。
【0016】
本開示の第4の態様は、第2の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記外周壁(91)には、切り欠き(94)が形成されており、前記固定部(83)は、前記切り欠き(94)に配置されている。
【0017】
第4の態様によれば、インシュレータ(90)の外周壁(91)に切り欠き(94)を形成することによって、固定部(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置するのが容易になる。
【0018】
本開示の第5の態様は、第2の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記固定部(83)は、前記外周壁(91)の前記軸方向(Z)におけるインシュレータ端面(91b2)に配置されている。
【0019】
第5の態様によれば、固定部(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置するのが容易になる。
【0020】
本開示の第6の態様は、第1~第5の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記第1相コイル(80A)からは、第1相リード線(81A)が引き出されており、前記第2相コイル(80B)からは、第2相リード線(81B)が引き出されており、前記第1相中性線(82A)及び前記第2相中性線(82B)は、前記第1相リード線(81A)及び前記第2相リード線(81B)に対して前記軸方向(Z)の反対側に、引き出されている。
【0021】
第6の態様によれば、第1相中性線(82A)及び第2相中性線(82B)と第1相リード線(81A)及び第2相リード線(81B)との干渉を抑制することができるので、第1相中性線(82A)及び第2相中性線(82B)の配線が容易になって、固定部(83)のレイアウト自由度を高めることができる。
【0022】
本開示の第7の態様は、第6の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)は、前記軸方向(Z)において前記第1相中性線(82A)及び前記第2相中性線(82B)よりも前記第1相リード線(81A)及び前記第2相リード線(81B)の近くに配置された端子台(110)を備える。
【0023】
第7の態様によれば、第1相リード線(81A)及び第2相リード線(81B)と端子台(110)とが近くなるので、第1相リード線(81A)及び第2相リード線(81B)を端子台(110)まで引き出すのが容易になる。
【0024】
本開示の第8の態様は、第1~第7の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記周方向(T)において互いに異なる位置に配置された前記固定部(83)としての第1固定部(83A)及び第2固定部(83B)があり、前記第1固定部(83A)及び前記第2固定部(83B)は、前記周方向(T)において前記コアカット(73)に重ならない位置、且つ、前記ヨーク内周面(71a)よりも前記径方向(R)の外方(R2)に、配置されている。
【0025】
第8の態様によれば、複数の固定部(83)(第1固定部(83A)及び第2固定部(83B))を、ステータコア(70)の周辺を流れる作動流体から、保護することができる。
【0026】
本開示の第9の態様は、第1~第8の態様に係る圧縮機(10)を対象とする。圧縮機(10)では、前記固定部(83)は、前記第1相中性線(82A)と前記第2相中性線(82B)とを束ねるスリーブ(83)である。
【0027】
第9の態様によれば、第1相中性線(82A)と第2相中性線(82B)とを、スリーブ(83)で束ねることによって、簡単に固定することができる。
【0028】
本開示の第10の態様は、冷凍装置(1)を対象とする。冷凍装置(1)は、第1から第9の態様に係る圧縮機(10)を備える。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図3】
図3は、圧縮機(10)におけるモータ(60)の周辺を縦断面図で示す。
【
図4】
図4は、モータ(60)のステータコア(70)を平面図で示す。
【
図5】
図5は、インシュレータ(90)を平面図で示す。
【
図6】
図6は、ステータコア(70)とインシュレータ(90)とを平面図で示す。
【
図7】
図7は、ステータコア(70)とコイル(80)とインシュレータ(90)とを平面図で示す。
【
図8】
図8は、コイル(80)から引き出されるリード線(81)及び中性線(82)を模式的に示す。
【
図9】
図9は、中性線(82)同士を束ねる固定スリーブ(83)を斜視図で示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、本開示は、以下に示される実施形態に限定されるものではなく、本開示の技術的思想を逸脱しない範囲内で各種の変更が可能である。各図面は、本開示を概念的に説明するためのものであるから、理解容易のために必要に応じて寸法、比又は数を誇張又は簡略化して表す場合がある。
【0031】
(冷凍装置)
本実施形態に係る圧縮機(10)について説明する。圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に適用される。
図1は、冷凍装置(1)を示す。冷凍装置(1)は、作動流体としての冷媒が循環する冷媒回路(1a)を、含む。冷凍装置(1)の冷媒回路(1a)は、圧縮機(10)と、凝縮器(放熱器)(2)と、減圧機構(膨張機構)(3)と、蒸発器(4)と、を備える。減圧機構(3)は、例えば、膨張弁やキャピラリーチューブなどである。冷媒回路(1a)は、蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う。冷凍装置(1)は、例えば、空気調和機や冷却機などに適用される。
【0032】
(圧縮機)
図2は、圧縮機(10)を縦断面図で示す。圧縮機(10)は、スクロール圧縮機である。圧縮機(10)は、ケーシング(20)と、圧縮機構(30)と、駆動軸(40)と、ハウジング(50)と、モータ(60)と、下部軸受部材(100)と、端子台(110)と、を備える。なお、簡単のため、
図2において、バランスウエイトや給排油機構などの図示を省略している。
【0033】
以下、駆動軸(40)の軸心の延びる方向を、軸方向として、(Z)で示す。駆動軸(40)の軸心に直交する方向を、径方向として、(R)で示す。径方向における駆動軸(40)の軸心に近い方を、径方向内方として、(R1)で示す。径方向における駆動軸(40)の軸心に遠い方を、径方向外方として、(R2)で示す。駆動軸(40)の回転方向を、周方向として、(T)で示す。駆動軸(40)の軸方向は、上下方向に延びている。軸方向(上下方向)における上方を、軸方向一方として、(Z1)で示す。軸方向(上下方向)における下方を、軸方向他方として、(Z2)で示す。
【0034】
圧縮機(10)は、縦置きである。ケーシング(20)内には、上方から下方に向けて順に、圧縮機構(30)と、ハウジング(50)と、モータ(60)と、下部軸受部材(100)と、が収容されている。駆動軸(40)は、ケーシング(20)内を軸方向(上下方向)に延びている。端子台(110)は、ケーシング(20)の外周壁に固定されている。
【0035】
(ケーシング)
ケーシング(20)は、軸方向(上下方向)に縦長に延びる円筒状の密閉容器である。ケーシング(20)は、胴部(21)と、第1鏡板部(22)と、第2鏡板部(23)と、脚部(24)と、を含む。胴部(21)は、軸方向(上下方向)の両端が開放した円筒状である。第1鏡板部(22)は、胴部(21)の軸方向一端(上端)を閉塞する。第2鏡板部(23)は、胴部(21)の軸方向他端(下端)を閉塞する。脚部(24)は、第2鏡板部(23)の下側に設けられており、ケーシング(20)を支持する。
【0036】
ケーシング(20)には、吸入管(25)と吐出管(26)とが接続されている。吸入管(25)は、ケーシング(20)の第1鏡板部(22)を軸方向に貫通している。吐出管(26)は、ケーシング(20)の胴部(21)を径方向に貫通している。ケーシング(20)の下底部には、油貯留部(27)が設けられている。油貯留部(27)には、圧縮機(10)の各摺動部を潤滑するための潤滑油が、貯留される。
【0037】
(圧縮機構)
圧縮機構(30)は、ケーシング(20)内に設けられている。圧縮機構(30)は、作動流体(例えば冷媒など)を圧縮する。作動流体は、ガスである。圧縮機構(30)は、固定スクロール(31)と、旋回スクロール(可動スクロール)(35)と、を有する。旋回スクロール(35)は、固定スクロール(31)に噛み合わされる。
【0038】
固定スクロール(31)は、固定側鏡板部(32)と、固定側ラップ(33)と、外周壁部(34)と、を含む。固定側鏡板部(32)は、円板状である。固定側ラップ(33)は、インボリュート曲線を描く渦巻壁状であり、固定側鏡板部(32)の下面から下方に突出している。外周壁部(34)は、固定側ラップ(33)を外周側から囲むように形成されており、固定側鏡板部(32)の下面から下方に突出している。外周壁部(34)の先端面(下端面)は、固定側ラップ(33)の先端面(下端面)と略面一となっている。
【0039】
旋回スクロール(35)は、可動側鏡板部(36)と、可動側ラップ(37)と、ボス部(38)と、を含む。可動側鏡板部(36)は、円板状である。可動側ラップ(37)は、インボリュート曲線を描く渦巻壁状であり、可動側鏡板部(36)の上面から上方に突出している。ボス部(38)は、円筒状であり、可動側鏡板部(36)の下面の中央部から下方に突出している。ボス部(38)の内周には、軸受(38a)が嵌め込まれている。
【0040】
圧縮機構(30)では、旋回スクロール(35)の可動側ラップ(37)は、固定スクロール(31)の固定側ラップ(33)に噛み合わされている。固定スクロール(31)における固定側鏡板部(32)及び固定側ラップ(33)と旋回スクロール(35)における可動側鏡板部(36)及び可動側ラップ(37)とに囲まれた領域には、圧縮室(C)が形成される。圧縮室(C)では、作動流体が圧縮される。圧縮室(C)は、吸入管(25)に連通している。
【0041】
固定スクロール(31)の固定側鏡板部(32)には、吐出ポート(P)が形成されている。吐出ポート(P)は、固定側鏡板部(32)の中央部を軸方向に貫通して、圧縮室(C)に連通している。固定スクロール(31)とケーシング(20)の第1鏡板部(22)との間の領域には、吐出チャンバ(S)が形成されている。吐出チャンバ(S)は、吐出ポート(P)に連通している。
【0042】
(駆動軸)
駆動軸(40)は、ケーシング(20)内を軸方向(上下方向)に延びている。駆動軸(40)は、ケーシング(20)の胴部(21)の上端からケーシング(20)の下底部(油貯留部(27))に亘って、軸方向(上下方向)に延びている。駆動軸(40)は、主軸部(41)と、偏心軸部(42)と、を有する。偏心軸部(42)は、主軸部(41)の軸方向一端(上端)に設けられている。偏心軸部(42)の外径は、主軸部(41)の外径よりも小さい。偏心軸部(42)の軸心(42a)は、主軸部(41)の軸心(41a)に対して、所定距離だけ偏心している。
【0043】
駆動軸(40)の偏心軸部(42)は、軸受(38a)を介して、旋回スクロール(35)のボス部(38)に、回転可能(摺動可能)に支持されている。
【0044】
(ハウジング)
ハウジング(50)は、軸方向(上下方向)に延びる円筒状である。ハウジング(50)は、ケーシング(20)内において旋回スクロール(35)の下方且つモータ(60)の上方に設けられている。ハウジング(50)の内周には、駆動軸(40)が挿入されている。ハウジング(50)の上側部分の外径は、ハウジング(50)の下側部分の外径よりも大きい。ハウジング(50)の上側部分の外周面は、ケーシング(20)の胴部(21)の内周面に固定されている。ケーシング(20)の内部空間は、ハウジング(50)の上方空間とハウジング(50)の下方空間(28)とに区画されている。
【0045】
ハウジング(50)の下方空間(28)は、ハウジング(50)とモータ(60)との間の領域に形成されている。ハウジング(50)の下方空間(28)は、固定スクロール(31)及びハウジング(50)に形成された吐出通路(図示省略)を通じて、吐出チャンバ(S)に連通している。ハウジング(50)の下方空間(28)は、吐出管(26)に連通している。ハウジング(50)の下方空間(28)は、高圧の作動流体(例えば高圧の吐出冷媒)で満たされる。
【0046】
ハウジング(50)の上側部分の内径は、ハウジング(50)の下側部分の内径よりも大きい。ハウジング(50)の上側部分の内周側には、下方に凹む凹部によって、クランク室(51)が形成されている。クランク室(51)は、旋回スクロール(35)のボス部(38)を収容する。
【0047】
ハウジング(50)の下側部分の内周側には、主軸受部(52)が形成されている。主軸受部(52)は、ハウジング(50)を軸方向(上下方向)に貫通しており、クランク室(51)に連通している。主軸受部(52)の内周には、軸受(52a)が嵌め込まれている。駆動軸(40)の主軸部(41)は、軸受(52a)を介して、ハウジング(50)の主軸受部(52)に回転可能(摺動可能)に支持されている。
【0048】
(下部軸受部材)
下部軸受部材(100)は、軸方向(上下方向)に延びる略円筒状である。下部軸受部材(100)は、ケーシング(20)内において、モータ(60)と油貯留部(27)(ケーシング(20)の下底部)との間に設けられている。下部軸受部材(100)は、ケーシング(20)の胴部(21)の内周面に固定されている。下部軸受部材(100)の内周には、軸受(100a)が嵌め込まれている。駆動軸(40)の主軸部(41)は、軸受(100a)を介して、下部軸受部材(100)に回転可能(摺動可能)に支持されている。
【0049】
(モータ)
モータ(60)は、ケーシング(20)内において、ハウジング(50)の下方且つ下部軸受部材(100)の上方に設けられている。モータ(60)は、駆動軸(40)を回転させることによって、圧縮機構(30)を駆動する。
【0050】
モータ(60)は、U相・V相・W相の3相交流モータである。本例では、U相を第1相として扱い、U相以外のV相及びW相をそれぞれ第2相として扱う。
【0051】
モータ(60)は、ロータコア(61)と、ステータコア(70)と、複数のコイル(80)と、インシュレータ(90)と、を有する。
【0052】
図3は、圧縮機(10)におけるモータ(60)の周辺を縦断面図で示す。
図4は、モータ(60)のステータコア(70)を軸方向に見た平面図で示す。
図5は、インシュレータ(90)を軸方向に見た平面図で示す。
図6は、ステータコア(70)とインシュレータ(90)とを軸方向に見た平面図で示す。
図7は、ステータコア(70)とコイル(80)とインシュレータ(90)とを軸方向他方(下方)から見た平面図で示す。以下の説明において、モータ(60)の軸方向中央に遠い方を軸方向外方という。
【0053】
(ロータコア)
図3に示すように、ロータコア(61)は、軸方向(上下方向)に延びる円筒状である。ロータコア(61)の内周側には、駆動軸(40)の主軸部(41)が挿入されて固定されている。ロータコア(61)の内部には、複数の内側ガス通路(61a)が形成されている。複数の内側ガス通路(61a)は、ロータコア(61)を軸方向(上下方向)に貫通しており、ロータコア(61)の周方向に沿って所定の間隔を空けて配置されている。ロータコア(61)は、金属からなる。
【0054】
(ステータコア)
ステータコア(70)は、軸方向(上下方向)に延びる円筒状である。ステータコア(70)は、ケーシング(20)の胴部(21)の内周面に固定されている。ステータコア(70)は、ロータコア(61)を径方向外方(外周側)から囲むように配置されている。ステータコア(70)とロータコア(61)とは、径方向に所定の間隔を空けている。ロータコア(61)は、ステータコア(70)の内周側に回転可能に挿入されている。ステータコア(70)は、金属からなる。
【0055】
図4に示すように、ステータコア(70)は、バックヨーク(71)と、複数のティース(72)と、を含む。
【0056】
(バックヨーク)
バックヨーク(71)は、軸方向(上下方向)に見て、円環状である。バックヨーク(71)は、軸方向(上下方向)に延びている。バックヨーク(71)は、円筒状であるともいえる。
【0057】
(ティース)
複数のティース(72)は、バックヨーク(71)におけるヨーク内周面(71a)から、径方向内方(内周側)に突出している。複数のティース(72)は、周方向に互いに所定の間隔を空けて配置されている。なお、ヨーク内周面(71a)は、径方向内方(内周側)に臨む。
【0058】
複数のティース(72)として、第1ティース(72A)としてのU相ティース(72u)と、第2ティース(72B)としてのV相ティース(72v)と、第2ティース(72B)としてのW相ティース(72w)と、がある。
【0059】
本例では、ティース(72)は、計12つある。U相ティース(72u)、V相ティース(72v)及びW相ティース(72w)は、4つずつある。U相ティース(72u)、V相ティース(72v)及びW相ティース(72w)は、U・V・Wの順に、周方向に1つずつ並んでいる。
【0060】
U相ティース(72u)、V相ティース(72v)及びW相ティース(72w)は、バックヨーク(71)におけるヨーク内周面(71a)から、径方向内方(内周側)に突出している。U相ティース(72u)、V相ティース(72v)及びW相ティース(72w)は、周方向に互いに所定の間隔を空けて配置されている。
【0061】
(コイル)
図7に示すように、複数のティース(72)には、複数のコイル(80)が対応している。1つのティース(72)には、1つのコイル(80)が集中して巻かれている(集中巻き)。ティース(72)に金属の導線(巻線)が巻かれることによって、コイル(80)が形成される。
【0062】
複数のコイル(80)として、第1相コイル(80A)としてのU相コイル(80u)と、第2相コイル(80B)としてのV相コイル(80v)と、第2相コイル(80B)としてのW相コイル(80w)と、がある。本例では、コイル(80)は、計12つある。U相コイル(80u)、V相コイル(80v)及びW相コイル(80w)は、4つずつある。U相コイル(80u)、V相コイル(80v)及びW相コイル(80w)は、U・V・Wの順に、周方向に1つずつ並んでいる。
【0063】
U相ティース(72u)には、U相コイル(80u)が巻かれている。V相ティース(72v)には、V相コイル(80v)が巻かれている。W相ティース(72w)には、W相コイル(80w)が巻かれている。
【0064】
(コアカット)
図4に示すように、バックヨーク(71)のヨーク外周面(71b)には、複数のコアカット(73)が設けられている。なお、ヨーク外周面(71b)は、径方向外方(外周側)に臨む。コアカット(73)は、ヨーク外周面(71b)の軸方向一端(上端)から軸方向他端(下端)に亘って、軸方向に延びている。コアカット(73)は、軸方向(上下方向)に延びる溝である。
【0065】
コアカット(73)は、ヨーク外周面(71b)から、径方向内方(内周側)に凹んでいる。複数のコアカット(73)は、周方向に沿って間隔を空けて配置されている。本例では、コアカット(73)は、16つある。コアカット(73)の径方向における深さ(溝深さ)は、例えば、1mm以上であることが好ましく、5mm以上であることがより好ましい。
【0066】
図3に示すように、コアカット(73)は、外側ガス通路(74)を形成している。外側ガス通路(74)は、ケーシング(20)における胴部(21)の内周面と、バックヨーク(71)におけるコアカット(73)の溝底面(73a)と、の間を軸方向(上下方向)に延びている。
【0067】
(インシュレータ)
図3に示すように、インシュレータ(90)は、2つある。インシュレータ(90)は、ステータコア(70)に対して軸方向(上下方向)の両外側(上側び下側)に、配置されている。
図6に示すように、インシュレータ(90)は、バックヨーク(71)の軸方向(上下方向)におけるヨーク端面(71c)及び複数のティース(72)の軸方向におけるティース端面(72a)に、設けられている。なお、ヨーク端面(71c)及びティース端面(72a)は、軸方向外方(上方及び下方)に臨む。
【0068】
図5,6に示すように、インシュレータ(90)は、外周壁(91)と、複数の突出部(92)と、内周壁(93)と、を含む。
【0069】
さらに、外周壁(91)は、座部(91a)と、外筒部(91b)と、含む。外周壁(91)の座部(91a)は、軸方向(上下方向)に見て円環状である。外周壁(91)の座部(91a)は、バックヨーク(71)のヨーク端面(71c)における内周寄りに設けられている。外周壁(91)の座部(91a)は、ヨーク端面(71c)に接触して載せられている。
【0070】
外周壁(91)の外筒部(91b)は、軸方向(上下方向)に見て、円環状である。外周壁(91)の外筒部(91b)は、軸方向に延びている。外周壁(91)の外筒部(91b)は、円筒状であるともいえる。外周壁(91)において、外筒部(91b)は、座部(91a)の内周端部(ヨーク端面(71c)の内周端部に相当)から、軸方向外方(上方及び下方)に延びている。
【0071】
外周壁(91)における座部(91a)の内周端部と、外周壁(91)における外筒部(91b)の内周端部と、バックヨーク(71)の内周端部とは、径方向において互いに略面一である。外周壁(91)において、座部(91a)の外径は、外筒部(91b)の外径よりも大きい。外周壁(91)において、座部(91a)の外周端部は、外筒部(91b)の外周端部よりも、径方向外方(外周側)に突出している。詳細は後述するが、外周壁(91)の外筒部(91b)には、切り欠き(94)及び小切り欠き(95)が形成されている(
図9参照)。
【0072】
複数の突出部(92)は、複数のティース(72)に対応している。本例では、複数の突出部(92)は、12つある。突出部(92)は、外周壁(91)の座部(91a)の内周面から径方向内方(内周側)に突出している。突出部(92)は、ティース(72)のティース端面(72a)に設けられている。突出部(92)は、ティース端面(72a)に接触して載せられている。
【0073】
内周壁(93)は、軸方向(上下方向)に見て、円環状である。内周壁(93)は、軸方向に延びている。内周壁(93)は、円筒状であるともいえる。内周壁(93)は、突出部(92)の内周端部(ティース(72)の内周端部に相当)から、軸方向外方(上方及び下方)に延びている。
【0074】
インシュレータ(90)は、樹脂からなる。インシュレータ(90)は、ステータコア(70)のバックヨーク(71)とコイル(80)とを絶縁する。コイル(80)は、インシュレータ(90)の突出部(92)と共に、ステータコア(70)のティース(72)に巻かれる。コイル(80)は、ステータコア(70)に対して軸方向外方(上方及び下方)に突出するコイルエンドを、含む。インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)と内周壁(93)とは、コイル(80)のコイルエンドを、径方向両側(外周側及び内周側)から覆う。
【0075】
(リード線)
図8は、コイル(80)から引き出される複数のリード線(81)を模式的に示す。複数のリード線(81)として、第1相リード線(81A)としてのU相リード線(81u)と、第2相リード線(81B)としてのV相リード線(81v)と、第2相リード線(81B)としてのW相リード線(81w)と、がある。本例では、リード線(81)は、計6つある。U相リード線(81u)、V相リード線(81v)及びW相リード線(81w)は、2つずつある。
【0076】
U相リード線(81u)は、U相コイル(80u)から軸方向一方(上方)に引き出されている。V相コイル(80v)及びW相コイル(80w)を挟んで隣り合う2つのU相コイル(80u)によって、U相コイル群が構成されている。U相コイル群は、2組ある。1組のU相コイル群において、一方のU相コイル(80u)における巻線の軸方向一端(上端)と、他方のU相コイル(80u)における巻線の軸方向一端(上端)とは、共通のU相リード線(81u)で合流している。
【0077】
一方のU相コイル群に対応するU相リード線(81u)と、他方のU相コイル群に対応するU相リード線(81u)とは、軸方向一方(上方)に引き出された後に、途中でさらに合流して(図示省略)、端子台(110)におけるU相端子に接続されている。
【0078】
V相リード線(81v)は、V相コイル(80v)から軸方向一方(上方)に引き出されている。W相コイル(80w)及びU相コイル(80u)を挟んで隣り合う2つのV相コイル(80v)によって、V相コイル群が構成されている。V相コイル群は、2組ある。1組のV相コイル群において、一方のV相コイル(80v)における巻線の軸方向一端(上端)と、他方のV相コイル(80v)における巻線の軸方向一端(上端)とは、共通のV相リード線(81v)で合流している。
【0079】
一方のV相コイル群に対応するV相リード線(81v)と、他方のV相コイル群に対応するV相リード線(81v)とは、軸方向一方(上方)に引き出された後に、途中でさらに合流して(図示省略)、端子台(110)におけるV相端子に接続されている。
【0080】
W相リード線(81w)は、W相コイル(80w)から軸方向一方(上方)に引き出されている。U相コイル(80u)及びV相コイル(80v)を挟んで隣り合う2つのW相コイル(80w)によって、W相コイル群が構成されている。W相コイル群は、2組ある。1組のW相コイル群において、一方のW相コイル(80w)における巻線の軸方向一端(上端)と、他方のW相コイル(80w)における巻線の軸方向一端(上端)とは、共通のW相リード線(81w)で合流している。
【0081】
一方のW相コイル群に対応するW相リード線(81w)と、他方のW相コイル群に対応するW相リード線(81w)とは、軸方向一方(上方)に引き出された後に、途中でさらに合流して(図示省略)、端子台(110)におけるW相端子に接続されている。
【0082】
(中性線)
図8は、コイル(80)から引き出される複数の中性線(82)を模式的に示す。複数の中性線(82)として、第1相中性線(82A)としてのU相中性線(82u)と、第2相中性線(82B)としてのV相中性線(82v)と、第2相中性線(82B)としてのW相中性線(82w)と、がある。本例では、中性線(82)は、計6つある。U相中性線(82u)、V相中性線(82v)及びW相中性線(82w)は、2つずつある。
【0083】
U相中性線(82u)は、U相コイル(80u)から軸方向他方(下方)に引き出されている。1組のU相コイル群において、一方のU相コイル(80u)における巻線の軸方向他端(下端)と、他方のU相コイル(80u)における巻線の軸方向他端(下端)とは、共通のU相中性線(82u)で合流している。
【0084】
V相中性線(82v)は、V相コイル(80v)から軸方向他方(下方)に引き出されている。1組のV相コイル群において、一方のV相コイル(80v)における巻線の軸方向他端(下端)と、他方のV相コイル(80v)における巻線の軸方向他端(下端)とは、共通のV相中性線(82v)で合流している。
【0085】
W相中性線(82w)は、W相コイル(80w)から軸方向他方(下方)に引き出されている。1組のW相コイル群において、一方のW相コイル(80w)における巻線の軸方向他端(下端)と、他方のW相コイル(80w)における巻線の軸方向他端(下端)とは、共通のW相中性線(82w)で合流している。
【0086】
(リード線と中性線との位置関係)
リード線(81)と中性線(82)との位置関係について説明する。上述したように、U相リード線(81u)、V相リード線(81v)及びW相リード線(81w)は、U相コイル(80u)、V相コイル(80v)及びW相コイル(80w)から、軸方向一方(上方)に引き出されている。上述したように、U相中性線(82u)、V相中性線(82v)及びW相中性線(82w)は、U相コイル(80u)、V相コイル(80v)及びW相コイル(80w)から、軸方向他方(下方)に引き出されている。
【0087】
U相中性線(82u)、V相中性線(82v)及びW相中性線(82w)は、U相リード線(81u)、V相リード線(81v)及びW相リード線(81w)に対して、軸方向(上下方向)の反対側に、引き出されている。
【0088】
(端子台)
図3に示すように、端子台(110)は、ケーシング(20)の胴部(21)の外周壁に固定されている。端子台(110)は、外部電源とモータ(60)とを電気的に接続するための端子を、保持する。端子台(110)は、端子を収容する箱状でもよい(端子箱)。端子台(110)は、軸方向(上下方向)において、モータ(60)の軸方向一端部(上端部)と略同じ位置にある。端子台(110)は、モータ(60)の軸方向他端部(下端部)よりも、モータ(60)の軸方向一端部(上端部)の近くに、配置されている。
【0089】
端子台(110)は、軸方向(上下方向)において、U相中性線(82u)、V相中性線(82v)及びW相中性線(82w)よりも、U相リード線(81u)、V相リード線(81v)及びW相リード線(81w)の近くに、配置されている。
【0090】
(固定スリーブ)
図8に示すように、2つの中性線(82)は、固定部としての固定スリーブ(83)によって互いに固定されている。2つの中性線(82)は、固定スリーブ(83)によって保持されているともいえる。固定スリーブ(83)は、中性点を構成する。固定スリーブ(83)は、筒状である。固定スリーブ(83)は、金属からなる。
【0091】
本例では、固定スリーブ(83)は、計6つある。固定スリーブ(83)として、第1固定部としての第1固定スリーブ(83A)と、第2固定部としての第2固定スリーブ(83B)と、第3固定部としての第3固定スリーブ(83C)とが、2つずつある。
【0092】
U相中性線(82u)とV相中性線(82v)とは、第1固定スリーブ(83A)で互いに固定されている。U相中性線(82u)とW相中性線(82w)とは、第2固定スリーブ(83B)で互いに固定されている。V相中性線(82v)とW相中性線(82w)とは、第3固定スリーブ(83C)で互いに固定されている。
【0093】
第1固定スリーブ(83A)は、U相中性線(82u)とV相中性線(82v)とを、束ねるとともに、カシメて圧着する。第2固定スリーブ(83B)は、U相中性線(82u)とW相中性線(82w)とを、束ねるとともに、カシメて圧着する。第3固定スリーブ(83C)は、V相中性線(82v)とW相中性線(82w)とを、束ねるとともに、カシメて圧着する。
【0094】
図7に示すように、2つの第1固定スリーブ(83A)と2つの第2固定スリーブ(83B)と2つの第3固定スリーブ(83C)とは、軸方向(上下方向)に見たとき、周方向において互いに異なる位置(重ならない位置)に、配置されている。
【0095】
固定スリーブ(83)は、軸方向(上下方向)に見たとき、周方向においてバックヨーク(71)のコアカット(73)に重ならない位置(異なる位置)、且つ、バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向外方(外周側)に、配置されている。
【0096】
詳細には、第1固定スリーブ(83A)と第2固定スリーブ(83B)と第3固定スリーブ(83C)とは、軸方向(上下方向)に見たとき、周方向においてコアカット(73)に重ならない位置(異なる位置)、且つ、ヨーク内周面(71a)よりも径方向外方(外周側)に、配置されている。
【0097】
図4には、固定スリーブ(83)が配置され得る配置範囲(A)をドットにて示す。
【0098】
図9は、中性線(82)同士を束ねる固定スリーブ(83)を斜視図で示す。上述したように、インシュレータ(90)における外周壁(91)の座部(91a)は、バックヨーク(71)のヨーク端面(71c)における内周寄りに接触して載せられている。インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)は、座部(91a)の内周端部(ヨーク端面(71c)の内周端部に相当)から、軸方向外方(上方及び下方)に延びている。
【0099】
インシュレータ(90)における外周壁(91)の座部(91a)は、径方向外方(外周側)に臨むインシュレータ外周面(91a1)を、含む。
図9には示さないが、座部(91a)のインシュレータ外周面(91a1)には、径方向外方(外周側)に突出した突起(91a2)が、設けられている(
図5参照)。
【0100】
インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)は、径方向外方(外周側)に臨むインシュレータ外周面(91b1)と、軸方向外方(上方及び下方)に臨むインシュレータ端面(91b2)と、を含む。外周壁(91)において、座部(91a)のインシュレータ外周面(91a1)は、外筒部(91b)のインシュレータ外周面(91b1)よりも、径方向外方(外周側)に突出している。
【0101】
インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)の軸方向他端部(下端部)には、上方に凹む切り欠き(94)が、形成されている。
【0102】
固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)の外周壁(91)に配置されている。詳細には、固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)に設けられた切り欠き(94)に、配置されている。
【0103】
なお、インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)の軸方向他端部(下端部)には、中性線(82)を保持するための小切り欠き(95)も、形成されている。
【0104】
(圧縮機の運転動作)
圧縮機(10)の運転動作について説明する。モータ(60)が駆動すると、駆動軸(40)が回転して圧縮機構(30)の旋回スクロール(35)が駆動される。旋回スクロール(35)は、自転が規制された状態で、駆動軸(40)の主軸部(41)の軸心(41a)を中心に公転する。低圧作動流体(例えば低圧冷媒ガス)は、吸入管(25)から、圧縮機構(30)の圧縮室(C)に吸入されて圧縮され、高圧作動流体(例えば高圧冷媒ガス)となる。高圧作動流体は、圧縮室(C)から、固定スクロール(31)の吐出ポート(P)を通じて、吐出チャンバ(S)へ吐出される。高圧作動流体は、吐出チャンバ(S)から、固定スクロール(31)及びハウジング(50)に形成された吐出通路(図示省略)を通じて、ハウジング(50)の下方空間(28)に流出する。高圧流体は、下方空間(28)から、吐出管(26)を通じて、ケーシング(20)の外部(例えば冷媒回路(1a)の凝縮器(2))へ、吐出される。
【0105】
(モータの周辺での作動流体の流れ)
モータ(60)の周辺での作動流体の流れを、
図3を参照しながら説明する。圧縮機構(30)で圧縮された作動流体は、吐出ポート(P)を通じて、ケーシング(20)の内部空間に吐出される。作動流体は、圧縮機構(30)に形成された通路(図示省略)及びガイド部材(図示省略)などによって、外側ガス通路(74)へ導かれる。上述したように、外側ガス通路(74)は、ステータコア(70)のバックヨーク(71)に設けられたコアカット(73)によって形成されている。
【0106】
外側ガス通路(74)では、作動流体は、軸方向他方(下方)に流れる。外側ガス通路(74)を通過した作動流体は、ロータコア(61)の内側ガス通路(61a)に、軸方向他方(下方)から流入する。内側ガス通路(61a)では、作動流体は、軸方向一方(上方)に流れる。内側ガス通路(61a)を通過した作動流体は、ハウジング(50)とモータ(60)との間の下方空間(28)に流入した後、吐出管(26)を通じて、ケーシング(20)の外部へ吐出される。
【0107】
作動流体は、ロータコア(61)の内側ガス通路(61a)の他にも、ステータコア(70)におけるバックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向内方(内周側)を、軸方向一方(上方)に流れることがある。作動流体は、バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向内方(内周側)において、周方向に隣り合うティース(72)同士の間(すなわちコイル(80)の内部)を、流れることがある。
【0108】
(作用効果)
本実施形態によれば、中性線(82)同士を互いに固定する固定スリーブ(83)は、周方向(T)においてバックヨーク(71)のコアカット(73)に重ならない位置、且つ、バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向外方(外周側)に、配置されている(
図4の配置範囲(A)参照)。
【0109】
この配置範囲(A)に固定スリーブ(83)を配置することによって、固定スリーブ(83)は、コアカット(73)に沿って軸方向(上下方向)に流れる作動流体やヨーク内周面(71a)よりも径方向内方(内周側、例えばコイル(80)の内部)を軸方向(上下方向)に流れる作動流体に、晒されにくくなる。
【0110】
圧縮機(10)において、中性線(82)同士を互いに固定する固定スリーブ(83)を、ステータコア(70)の周辺を流れる作動流体から、保護することができる。
【0111】
固定スリーブ(83)による中性線(82)同士の固定が解除されるのを、抑制することができる。固定スリーブ(83)がステータコア(70)から脱落するのを、抑制することができる。固定スリーブ(83)が破損するのを、抑制することができる。
【0112】
固定スリーブ(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置することによって、固定スリーブ(83)を、バックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向外方(外周側)に、簡単に位置付けることができる。
【0113】
インシュレータ(90)における外周壁(91)の外筒部(91b)に切り欠き(94)を形成することによって、固定スリーブ(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置するのが容易になる。
【0114】
中性線(82)をリード線(81)に対して軸方向の反対側に引き出すことによって、中性線(82)とリード線(81)との干渉を抑制することができる。中性線(82)の配線が容易になって、固定スリーブ(83)のレイアウト自由度を高めることができる。
【0115】
端子台(110)がリード線(81)の近くにあるので、リード線(81)を端子台(110)まで引き出すのが容易になる。
【0116】
本実施形態では、1つのみならず複数の固定スリーブ(83)(第1固定スリーブ(83A)、第2固定スリーブ(83B)及び第3固定スリーブ(83C))を、配置範囲(A)に配置している。1つのみならず複数の固定スリーブ(83)を、ステータコア(70)の周辺を流れる作動流体から、保護することができる。
【0117】
特に、本実施形態では、全ての固定スリーブ(83)を配置範囲(A)に配置することによって、全ての固定スリーブ(83)を、ステータコア(70)の周辺を流れる作動流体から、保護することができる。
【0118】
本実施形態では、固定部(83)は、固定スリーブ(83)で構成されている。中性線(82)同士を固定スリーブ(83)で束ねることによって、中性線(82)同士を簡単に固定することができる。
【0119】
(その他の実施形態)
その他の実施形態について説明する。
【0120】
図9に二点鎖線で示すように、固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)の外周壁(91)の座部(91a)におけるインシュレータ外周面(91a1)に、配置されてもよい。同様に、固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)の外周壁(91)の外筒部(91b)におけるインシュレータ外周面(91b1)に、配置されてもよい。
【0121】
これによれば、固定スリーブ(83)をバックヨーク(71)のヨーク内周面(71a)よりも径方向外方(外周側)に位置付ける上で、より有利になる。なお、このとき、固定スリーブ(83)は、インシュレータ外周面(91a1,91b1)に接触せずに、浮いていてもよい。また、図示しないが、固定スリーブ(83)は、外周壁(91)の座部(91a)におけるインシュレータ外周面(91a1)から突出した突起(91a2)(
図5参照)に、設けられてもよい。
【0122】
図9に二点鎖線で示すように、固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)の外周壁(91)の外筒部(91b)の軸方向の他端(下端)におけるインシュレータ端面(91b2)に、配置されてもよい。これによれば、固定スリーブ(83)をインシュレータ(90)の外周壁(91)に配置するのが容易になる。なお、このとき、固定スリーブ(83)は、インシュレータ端面(91b2)に接触せずに、浮いていてもよい。
【0123】
固定スリーブ(83)は、インシュレータ(90)の外周壁(91)に配置されなくてもよい。固定スリーブ(83)は、配置範囲(A)であれば、どこに配置されてもよい。
【0124】
ロータコア(61)には、内側ガス通路(61a)が設けられなくてもよい。
【0125】
固定スリーブ(83)は、U相中性線(82u)とV相中性線(82v)とW相中性線(82w)を、3つまとめて固定してもよい。
【0126】
固定部(83)は、固定スリーブ(83)によるカシメ圧着に限定されず、例えば、ロウ付けやテープ留めなどでもよい。また、固定部(83)として、裸の状態の中性線(82)を直接的に互いに圧着固定してもよい。
【0127】
環状は、円環状に限定されず、多少の角を持つ角環状でもよい。
【0128】
圧縮機(10)は、横置きでもよい。すなわち、軸方向(Z)は、水平方向でもよい。
【0129】
コイル(80)は、集中巻きに限定されず、分布巻きでもよい。
【0130】
上記実施形態では、モータ(60)を3相交流モータであるとして、U相を第1相として扱い、V相及びW相をそれぞれ第2相として扱ったが、これに限定されない。例えば、V相を第1相として扱い、W相及びU相をそれぞれ第2相として扱ってもよい。また、W相を第1相として扱い、U相及びV相をそれぞれ第2相として扱ってもよい。
【0131】
さらには、モータ(60)は、2相交流モータでもよい。この場合、一方の相を第1相として扱い、他方の相を第2相として扱えばよい。
【0132】
圧縮機(10)は、スクロール圧縮機に限定されず、例えばロータリ圧縮機などの、他の圧縮機でもよい。
【0133】
圧縮機(10)は、冷凍装置(1)に適用されなくてもよく、例えば、単体として用いられてもよい。
【0134】
以上、実施形態を説明したが、特許請求の範囲の趣旨及び範囲から逸脱することなく、形態や詳細の多様な変更が可能なことが理解されるであろう。以上の実施形態、変形例、その他の実施形態に係る要素を適宜組み合わせたり、置換したりしてもよい。
【符号の説明】
【0135】
Z 軸方向
R 径方向
R1 内方
R2 外方
T 周方向
A 配置範囲
1 冷凍装置
10 圧縮機
20 ケーシング
30 圧縮機構
40 駆動軸
50 ハウジング
60 モータ
61 ロータコア
70 ステータコア
71 バックヨーク
71a ヨーク内周面
71b ヨーク外周面
71c ヨーク端面
72 ティース
72a ティース端面
72A 第1ティース
72B 第2ティース
72u U相ティース
72v V相ティース
72w W相ティース
73 コアカット
80 コイル
80A 第1相コイル
80B 第2相コイル
80u U相コイル
80v V相コイル
80w W相コイル
81 リード線
81A 第1相リード線
81B 第2相リード線
81u U相リード線
81v V相リード線
81w W相リード線
82 中性線
82A 第1相中性線
82B 第2相中性線
82u U相中性線
82v V相中性線
82w W相中性線
83 固定スリーブ(固定部、スリーブ)
83A 第1固定スリーブ(第1固定部)
83B 第2固定スリーブ(第2固定部)
83C 第3固定スリーブ
90 インシュレータ
91 外周壁
91a 座部
91a1 インシュレータ外周面
91b 外筒部
91b1 インシュレータ外周面
91b2 インシュレータ端面
92 突出部
93 内周壁
94 切り欠き
100 下部軸受部材
110 端子台