(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176762
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】制御装置及び電源装置の制御方法
(51)【国際特許分類】
H02M 3/00 20060101AFI20241212BHJP
G01R 31/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H02M3/00 C
H02M3/00 W
G01R31/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095547
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000002037
【氏名又は名称】新電元工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】浅見 和博
(72)【発明者】
【氏名】惠 隆義
【テーマコード(参考)】
2G036
5H730
【Fターム(参考)】
2G036AA24
2G036BA37
2G036BB02
5H730AA12
5H730AA20
5H730AS01
5H730BB82
5H730FD01
5H730FD61
5H730FF09
5H730XX19
5H730XX38
5H730XX40
5H730XX47
(57)【要約】 (修正有)
【課題】並列に接続された複数の電源装置の寿命を均一化する制御装置及び電源装置の制御方法を提供する。
【解決手段】電源システム1000において、各電源装置の出力電圧を制御することで、並列に接続された複数の電源装置の寿命を均一化する、電源装置の制御装置は、電源装置に搭載されている電子部品の温度に関する温度情報を取得する取得部と、温度情報に基づいて、電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出する算出部と、あらかじめ設定された出力電圧指示値と寿命消費率とに基づいて、電源装置の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、を含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源装置に搭載されている電子部品の温度に関する温度情報を取得する取得部と、
前記温度情報に基づいて、前記電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出する算出部と、
あらかじめ設定された出力電圧指示値と前記寿命消費率とに基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、
を含む、制御装置。
【請求項2】
前記出力電圧制御部は、前記寿命消費率と前記寿命消費率に応じて設定されたドループ設定値とに基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御する、
請求項1に記載の制御装置。
【請求項3】
前記取得部は、所定のサンプリング周期で前記温度情報を取得し、
前記算出部は、前記サンプリング周期あたりの前記電子部品の寿命減少率を算出し、前記寿命減少率を時間積分した結果に基づいて、前記寿命消費率を算出する、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項4】
前記出力電圧制御部は、前記寿命消費率が大きい程、前記電源装置の出力電圧を低くする、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項5】
前記電子部品は、電解コンデンサである、
請求項1または2に記載の制御装置。
【請求項6】
電源装置に搭載されている電子部品の温度に関する温度情報を取得するステップと、
前記温度情報に基づいて、前記電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出するステップと、
前記寿命消費率に基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御するステップと、
を含む、電源装置の制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、制御装置及び電源装置の制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、電解コンデンサの寿命を予測する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
複数の電源装置を並列に接続し、負荷に電流を出力する電源システムがある。このような電源システムでは、電流を出力する電源装置が特定の1台の電源装置に偏ると、その電源装置の内部の温度が他の電源装置に比べて上昇し、電解コンデンサなどの寿命部品の劣化が他の電源装置に比べて早まってしまう。この場合、並列に接続された複数の電源装置の内、特定の1台の電源装置の寿命が早まってしまう可能性がある。
【0005】
本開示は、並列に接続された複数の電源装置の寿命を均一化することのできる制御装置及び電源装置の制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様の制御装置は、電源装置に搭載されている電子部品の温度に関する温度情報を取得する取得部と、前記温度情報に基づいて、前記電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出する算出部と、あらかじめ設定された出力電圧指示値と前記寿命消費率とに基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御する出力電圧制御部と、を含む。
【0007】
本開示の制御装置において、前記出力電圧制御部は、前記寿命消費率と前記寿命消費率に応じて設定されたドループ設定値とに基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御する。
【0008】
本開示の制御装置において、前記取得部は、所定のサンプリング周期で前記温度情報を取得し、前記算出部は、前記サンプリング周期あたりの前記電子部品の寿命減少率を算出し、前記寿命減少率を時間積分した結果に基づいて、前記寿命消費率を算出する。
【0009】
本開示の制御装置において、前記出力電圧制御部は、前記寿命消費率が大きい程、前記電源装置の出力電圧を低くする。
【0010】
本開示の制御装置において、前記電子部品は、電解コンデンサである。
【0011】
本開示の一態様の電源装置の制御方法は、電源装置に搭載されている電子部品の温度に関する温度情報を取得するステップと、前記温度情報に基づいて、前記電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出するステップと、前記寿命消費率に基づいて、前記電源装置の出力電圧を制御するステップと、を含む。
【発明の効果】
【0012】
本開示によれば、並列に接続された複数の電源装置の寿命を均一化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】
図1は、実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係る寿命消費率算出処理を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施形態に係る第1の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係る第2の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
【
図6】
図6は、実施形態に係る第3の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
【
図7】
図7は、実施形態に係る電源装置の出力電圧の制御処理を示すフローチャートである。
【
図8】
図8は、実施形態に係る出力電圧を制御する方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面を参照して、本開示に係る実施形態を詳細に説明する。なお、この実施形態により本開示が限定されるものではなく、また、以下の実施形態において、同一の部位には同一の符号を付することにより重複する説明を省略する。
【0015】
[実施形態]
(電源システム)
図1を用いて、実施形態に係る電源システムの構成例について説明する。
図1は、実施形態に係る電源システムの構成例を示す図である。
【0016】
図1に示すように、電源システム1000は、電源装置100aと、電源装置100bと、電源装置100cと、を含む。電源装置100aと、電源装置100bと、電源装置100cとは、並列に接続されている。電源装置100aから電源装置100cは、それぞれ、負荷200に電流を出力するように構成されている。
【0017】
電源装置100aは、制御装置110aと、記憶装置120aと、センサ130aと、を含む。
【0018】
制御装置110aは、電源装置100aを制御する。制御装置110aは、例えば、DSP(Digital Signal Processor)、CPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro Processing Unit)などを含む。
【0019】
記憶装置120aは、各種のデータやプログラムを記憶している。記憶装置120aは、例えば、センサ130aが検出した電源装置100aに搭載されている寿命部品の周辺の温度を示す温度情報を記憶している。記憶装置120aは、半導体メモリ等で構成されており、電源装置100aの電源を切っても必要なデータが保持されるように、少なくとも一部が不揮発性メモリによって構成されている。
【0020】
センサ130aは、電源装置100aの内部の温度を検出する温度センサである。センサ130aは、例えば、電源装置100aに搭載されている電解コンデンサなどの寿命部品の周辺の温度を検出する。
【0021】
電源装置100bは、制御装置110bと、記憶装置120bと、センサ130bと、を含む。
【0022】
制御装置110bは、電源装置100bを制御する。制御装置110bは、例えば、DSP、CPU、MPUなどを含む。
【0023】
記憶装置120bは、各種のデータやプログラムを記憶している。記憶装置120bは、例えば、センサ130bが検出した電源装置100bに搭載されている寿命部品の周辺の温度を示す温度情報を記憶している。記憶装置120bは、半導体メモリ等で構成されており、電源装置100bの電源を切っても必要なデータが保持されるように、少なくとも一部が不揮発性メモリによって構成されている。
【0024】
センサ130bは、電源装置100bの内部の温度を検出する温度センサである。センサ130bは、例えば、電源装置100bに搭載されている電解コンデンサなどの寿命部品の周辺の温度を検出する。
【0025】
電源装置100cは、制御装置110cと、記憶装置120cと、センサ130cと、を含む。
【0026】
制御装置110cは、電源装置100cを制御する。制御装置110cは、例えば、DSP、CPU、MPUなどを含む。
【0027】
記憶装置120cは、各種のデータやプログラムを記憶している。記憶装置120cは、例えば、センサ130cが検出した電源装置100cに搭載されている寿命部品の周辺の温度を示す温度情報を記憶している。記憶装置120cは、半導体メモリ等で構成されており、電源装置100cの電源を切っても必要なデータが保持されるように、少なくとも一部が不揮発性メモリによって構成されている。
【0028】
センサ130cは、電源装置100cの内部の温度を検出する温度センサである。センサ130cは、例えば、電源装置100cに搭載されている電解コンデンサなどの寿命部品の温度を検出する。
【0029】
すなわち、電源装置100aから電源装置100cは、それぞれ、独立に制御される。電源装置100aから電源装置100cを区別する必要のない場合には、電源装置100と総称する。制御装置110aから制御装置110cを区別する必要のない場合には、制御装置110と総称する。記憶装置120aから記憶装置120cを区別する必要のない場合には、記憶装置120と総称する。センサ130aからセンサ130cを区別する必要のない場合には、センサ130と総称する。
【0030】
第1端子1aは、出力電流を出力する出力端子である。第2端子2aは、基準電位に電気的に接続されている。基準電位は、例えば、グラウンドであるが、これに限定されない。第1端子1aと、第2端子2aとの間には、出力電圧V1が印加される。電源装置100aは、出力電流Io1を第1端子1aから負荷200に対して出力する。電源装置100aから負荷200の間の経路は、配線抵抗R1を有する。
【0031】
第1端子1bは、出力電流を出力する出力端子である。第2端子2bは、基準電位に電気的に接続されている。第1端子1bと、第2端子2bとの間には、出力電圧V2が印加される。電源装置100bは、出力電流Io2を第1端子1bから負荷200に対して出力する。電源装置100bから負荷200の間の経路は、配線抵抗R2を有する。
【0032】
第1端子1cは、出力電流を出力する出力端子である。第2端子2cは、基準電位に電気的に接続されている。第1端子1cと、第2端子2cとの間には、出力電圧V3が印加される。電源装置100cは、出力電流Io3を第1端子1cから負荷200に対して出力する。電源装置100cから負荷200の間の経路は、配線抵抗R3を有する。
【0033】
電源システム1000においては、電源装置100aから電源装置100cが分担して負荷200に出力電流を出力する。
図1に示す例では、負荷200には、Io1+Io2+Io3の電流が流れる。ここで、出力電圧V1から出力電圧V3がばらついたり、配線抵抗R1から配線抵抗R3がばらついたりすることで、負荷200に流れる電流も変動する。このような場合、従来では、例えば、電源装置100aのみが常に負荷200に対して出力電流を出力し、負荷200に出力する出力電流が足りないときに、電源装置100bまたは電源装置100cが出力電流を負荷200に対して出力するという事象が発生していた。このため、電源装置100aの内部の温度が電源装置100bおよび電源装置100cに比べて上昇してしまい、電源装置100aに搭載されている電解コンデンサなどの寿命部品の劣化が早まってしまっていた。
【0034】
一般的には、電源装置100の寿命は電解コンデンサの寿命に依存しているため、「電解コンデンサの寿命≒電源装置100の寿命」となる。電解コンデンサの寿命は、アレニウスの法則に従い、10℃低くなると寿命が2倍になり得るため、温度依存性が大きい。そのため、特定の電源装置100aの内部の温度が電源装置100bおよび電源装置100cに比べて上昇してしまうと、電源装置100aの寿命が電源装置100bおよび電源装置100cに比べて、早まってしまう。そこで、本開示では、各電源装置は、寿命部品の寿命消費率を算出し、寿命消費率に応じた制御を行うことで、並列に接続された複数の電源装置の寿命を均一化する制御を行う。
【0035】
(制御装置)
図2を用いて、実施形態に係る制御装置の構成例について説明する。
図2は、実施形態に係る制御装置の構成例を示すブロック図である。
【0036】
図2に示すように、制御装置110は、取得部111と、算出部112と、出力電圧制御部113と、を備える。
【0037】
取得部111は、センサ130を制御して、電源装置100の内部の温度を検出させる。取得部111は、例えば、センサ130を制御して、電源装置100の内部に搭載されている電解コンデンサなどの寿命部品(電子部品)の周辺の温度を検出させる。取得部111は、センサ130が検出した温度を示す温度情報をセンサ130から取得する。具体的には、取得部111は、所定のサンプリング周期ごとにセンサ130から温度情報を取得する。取得部111は、取得した温度情報を記憶装置120に記憶させる。
【0038】
算出部112は、取得部111が取得した温度情報に基づいて、電子部品の寿命に関する寿命消費率を算出する。算出部112の詳細は後述する。
【0039】
出力電圧制御部113は、あらかじめ設定された出力電圧指示値と、算出部112が算出した寿命消費率とに基づいて、電源装置100の出力電圧を制御する。出力電圧制御部113の詳細は後述する。
【0040】
(寿命消費率算出処理)
図3を用いて、実施形態に係る寿命消費率の算出処理について説明する。
図3は、実施形態に係る寿命消費率算出処理を示すフローチャートである。
【0041】
取得部111は、所定のサンプリング周期ごとに寿命部品の温度を示す温度情報をセンサ130から取得する(ステップS100)。そして、ステップS102に進む。
【0042】
算出部112は、取得部111が取得した温度情報に基づいて、サンプリング周期ごとの寿命消費量を算出する(ステップS102)。具体的には、算出部112は、以下の式(1)に従って、サンプリング周期ごとの寿命消費量を算出する。
【0043】
【0044】
Life_Usageは、サンプリング周期あたりの寿命消費量[s(秒)]を表す。Temp_Speriodは、サンプリング周期[s]を表す。Life_Ampは、寿命増幅率[%]を表す。C_RefTempは、寿命部品を使用する環境の基準温度[℃]を表す。Temp_Currentは、現在の温度[℃]を表す。Life_TempDiffは、寿命増幅率に対する温度差[℃]を表す。
【0045】
C_LifeTimeと、C_RefTempとは、使用する寿命部品に応じてあらかじめ設定された寿命計算パラメータである。C_LifeTimeは、例えば、36000000[s]である。C_RefTempは、例えば、90[℃]である。
【0046】
Life_TempDiffと、Life_Ampとは、使用する寿命部品に応じて予め設定されたコンデンサの寿命係数である。Life_TempDiffは、例えば、10[℃]である。Life_Ampは、例えば、200%である。これらは、アレニウスの法則により、温度が10[℃]低くなると寿命が2倍になることを示している。
【0047】
Temp_Currentと、Temp_SPeriodとは、入力値である。Temp_SPeriodは、例えば、5000[s]である。
【0048】
算出部112は、算出されたサンプリング周期ごとの寿命消費量を全期間にわたって時間積分する(ステップS104)。具体的には、算出部112は、以下の式(2)に従って、サンプリング周期ごとの寿命消費量を全期間にわたって時間積分する。
【0049】
【0050】
Life_Integralは、Life_Usageの全期間に渡る時間積分の結果を表す。
【0051】
算出部112は、サンプリング周波数ごとの寿命消費量の全期間に渡る時間積分の結果に基づいて、寿命消費率を算出する(ステップS106)。具体的には、算出部112は、以下の式(3)に従って、寿命消費率を算出する。
【0052】
【0053】
DDC_Lifeは、電源装置100の寿命消費率[%]を表す。算出部112は、例えば、C_RefTempが90[℃]、C_LifeTimeが10000[h(時間)]、Life_Integralが100[h]の場合、100/10000=1[%]と、電源装置100の寿命が1[%]減少したと算出する。算出部112は、例えば、C_RefTempが80[℃]、C_LifeTimeが10000[h(時間)]、Life_Integralが100[h]の場合、100/10000×0.5=0.5[%]と、電源装置100の寿命が0.5[%]減少したと算出する。これは、使用温度が基準温度から10[℃]下がったため、アレニウスの法則により寿命消費率が半分になったためである。すなわち、算出部112は、基準温度と現在の使用温度とに基づいて、寿命消費率にアレニウスの法則に基づいた係数を乗算することで、寿命消費率を算出する。
【0054】
図4は、実施形態に係る第1の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
図4は、横軸が時間[s]を示し、左側の縦軸が温度[℃]を示し、右側の縦軸が寿命消費率[%]を示す。
【0055】
波形301は、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度変化を表す。波形302は、実施形態に係る寿命消費率の算出結果を表す。波形303は、比較例に係る寿命消費率の算出結果を表す。比較例では、Life_Ampを400%に設定しており、その他のパラメータは実施形態と同じである。
【0056】
波形301が示すように、実施形態に係る第1の例では、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度がランダムに変化している。このような場合、波形302と波形303とが示すように、寿命消費率は、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度の変化量に応じて変化する。また、波形302と波形303とを比較すると、比較例の方が、実施形態よりも寿命消費率が大きく変化している。
【0057】
図5は、実施形態に係る第2の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
図5は、横軸が時間[s]を示し、左側の縦軸が温度[℃]を示し、右側の縦軸が寿命消費率[%]を示す。
【0058】
波形311は、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度変化を表す。波形312は、実施形態に係る寿命消費率の算出結果を表す。波形313は、比較例に係る寿命消費率の算出結果を表す。比較例では、Life_Ampを400%に設定しており、その他のパラメータは実施形態と同じである。
【0059】
波形311が示すように、実施形態に係る第2の例では、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度は一定である。このような場合、波形312と波形313とが示すように、寿命消費率は線形に変化する。また、波形312と波形313とを比較すると、比較例の方が、実施形態よりも寿命消費率が大きく変化している。そのため、実施形態に係る式(1)から式(3)を用いた、寿命部品の寿命消費率の算出結果は適切であるといえる。
【0060】
図6は、実施形態に係る第3の例に係る寿命消費率の算出結果を説明するための図である。
図6は、横軸が時間[s]を示し、左側の縦軸が温度[℃]を示し、右側の縦軸が寿命消費率[%]を示す。
【0061】
波形321は、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度変化を表す。波形322は、実施形態に係る寿命消費率の算出結果を表す。波形323は、比較例に係る寿命消費率の算出結果を表す。比較例では、Life_Ampを400%に設定しており、その他のパラメータは実施形態と同じである。
【0062】
波形321が示すように、実施形態に係る第3の例では、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度が線形に上昇している。このような場合、波形322と波形323とが示すように、温度が比較的低いときには寿命消費率は小さいが、温度が高くなるに連れて、寿命消費率が大きく増加している。波形322と波形323とを比較すると、比較例の方が、実施形態よりも寿命消費率が大きく変化している。
【0063】
上述のとおり、本実施形態では、電源装置100の内部に搭載された寿命部品の周辺の温度に基づいて、電源装置100の寿命消費率を適切に算出することができる。
【0064】
(電源装置の制御処理)
次に、本実施形態に係る電源装置の出力電圧の制御処理について説明する。本実施形態では、制御装置110は、電源装置100の寿命消費率に基づいて、電源装置100の出力電圧を制御する。
【0065】
図7を用いて、実施形態に係る電源装置の出力電圧の制御処理について説明する。
図7は、実施形態に係る電源装置の出力電圧の制御処理を示すフローチャートである。
【0066】
出力電圧制御部113は、予め電源装置100に設定された出力電圧指示値を取得する(ステップS200)。例えば、出力電圧指示値はあらかじめ記憶装置120に記憶されており、出力電圧制御部113は、記憶装置120から出力電圧指示値を取得する。そして、ステップS202に進む。
【0067】
出力電圧制御部113は、ドループ設定値を取得する(ステップS202)。ドループ設定値は、並列に接続された複数の電源装置100から出力される出力電流のバランスを調整するために設定されるパラメータである。例えば、ドループ設定値はあらかじめ記憶装置120に記憶されており、出力電圧制御部113は、記憶装置120からドループ値を取得する。そして、ステップS204に進む。
【0068】
出力電圧制御部113は、電源装置100の出力電圧値を算出する(ステップS204)。具体的には、出力電圧制御部113は、以下の式(4)に従って、電源装置100の出力電圧値を算出する。式(4)は、実施形態に係る出力電圧値の算出式である。また、以下の式(5)は、比較例に係る出力電圧値の算出式である。
【0069】
【0070】
【0071】
Voは出力電圧値を表す。Ioは出力電流値を表す。RCはドループ設定値を表す。式(5)が示すように、比較例は、あらかじめ設定されたドループ設定値に応じて出力電圧値を算出する。そのため、比較例では、寿命消費率が大きい電源装置100に対して大きな出力電圧値が設定される可能性がある。一方、実施形態では、式(4)には寿命部品の寿命消費率が含まれているため、実施形態では寿命消費率に応じた出力電圧値を算出することができる。実施形態では、寿命消費率の大きな電源装置100程、出力電圧値は小さく算出される。例えば、寿命消費率が50[%]の電源装置100の出力電圧値は、寿命消費率が10[%]の電源装置100の出力電圧値よりも小さくなる。そのため、寿命消費率が50[%]の電源装置100は、出力電流値も小さくなり内部の温度が低下するため、寿命部品の温度が低下する。これにより、本実施形態は、並列に接続された複数の電源装置100の寿命を均一化でき、かつ電源装置100の製品寿命を延ばすことができる。
【0072】
出力電圧制御部113は、電源装置100の出力電圧を制御する(ステップS206)。
図8は、実施形態に係る出力電圧を制御する方法を説明するための図である。
図8は、横軸が出力電流Io[A]を示し、縦軸が出力電圧Vo[V]を示す。
図8に示す例は、出力電圧指示値が28[V]、出力電流Ioが90[A]、ドループ設定値RCが0.01[Ω]である。
【0073】
ライン331は、寿命消費率が0[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。ライン332は、寿命消費率が20[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。ライン333は、寿命消費率が40[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。ライン334は、寿命消費率が60[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。ライン335は、寿命消費率が80[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。ライン336は、寿命消費率が100[%]の電源装置100の出力電圧値を表す。
【0074】
ライン331からライン336に示すように、本実施形態では、寿命消費率が大きい程、出力電流Ioが同じときの出力電圧Voが小さくなる。例えば、出力電流Ioが90[A]のとき、寿命消費率が0[%]の電源装置100の出力電圧Voは28[V]であり、寿命消費率が100[%]の電源装置100の出力電圧Voは27[V]である。これにより、本実施形態では、複数の電源装置100を並列に接続して稼働させた場合、寿命消費率が大きい電源装置100の出力電圧Voが低くなるので寿命部品の寿命の減少率が小さくなる。また、寿命消費率が小さい電源装置100の出力電圧Voは、高くなるので寿命部品の寿命の減少率が大きくなる。これにより、本実施形態は、複数の電源装置の寿命を均一化することができる。
【0075】
上述のとおり、本実施形態は、寿命部品の寿命消費率を電源装置の内部の温度に基づいて算出し、寿命消費率に基づいて出力電圧を調整する。これにより、本発明は、複数の電源装置を並列に接続して稼働させる際に、各電源装置の寿命を均一化することができる。
【0076】
[その他の実施形態]
なお、本実施形態では、寿命消費率に応じて、出力電圧を調整するものとして説明したが、本開示はこれに限定されない。本開示では、例えば、許容範囲内において、リップル電圧を寿命消費率に応じて小さくするように制御してもよい。具体的には、出力電圧制御部113は、寿命消費率が大きい電源装置100程、リップル電圧を小さくしてもよい。これにより、寿命消費率の大きい電源装置100の寿命の減少率を小さくすることができるので、複数の電源装置の寿命を均一化することができる。
【0077】
以上、本開示の実施形態を説明したが、これら実施形態の内容により本開示が限定されるものではない。また、前述した構成要素には、当業者が容易に想定できるもの、実質的に同一のもの、いわゆる均等の範囲のものが含まれる。さらに、前述した構成要素は適宜組み合わせることが可能である。さらに、前述した実施形態の要旨を逸脱しない範囲で構成要素の種々の省略、置換又は変更を行うことができる。
【符号の説明】
【0078】
1a,1b,1c 第1端子
2a,2b,2c 第2端子
100,100a,100b,100c 電源装置
110,110a,110b,110c 制御装置
111 取得部
112 算出部
113 出力電圧制御部
120,120a,120b,120c 記憶装置
130,130a,130b,130c センサ
200 負荷
1000 電源システム
R1,R2,R3 配線抵抗