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特開2024-176769路面状態推定装置、路面状態推定方法、およびプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176769
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】路面状態推定装置、路面状態推定方法、およびプログラム
(51)【国際特許分類】
   B60W 40/06 20120101AFI20241212BHJP
   B60W 30/02 20120101ALI20241212BHJP
【FI】
B60W40/06
B60W30/02
【審査請求】未請求
【請求項の数】13
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095559
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000000011
【氏名又は名称】株式会社アイシン
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】加藤 隆志
(72)【発明者】
【氏名】平工 淳樹
(72)【発明者】
【氏名】山田 一二
【テーマコード(参考)】
3D241
【Fターム(参考)】
3D241BA50
3D241DA52Z
3D241DA61A
3D241DC45A
3D241DC47A
3D241DC49A
(57)【要約】
【課題】運動制御装置によって車両のばね上部の運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制する。
【解決手段】路面状態推定装置は、車両の走行状態を示す走行状態データと、車両に搭載され路面に対する車両のばね上部の運動を制御する又はばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得するデータ取得部と、走行状態データと動作データとに基づいて、路面の状態である路面状態を推定する路面状態推定部と、を備える。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得するデータ取得部と、
前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する路面状態推定部と、
を備えた路面状態推定装置。
【請求項2】
前記運動制御装置は、懸架装置に設けられ、入力される電流に応じて減衰力を変更可能なショックアブソーバであり、
前記物理量は、前記ショックアブソーバの伸縮の速度に関する物理量と前記ショックアブソーバに入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項3】
前記運動制御装置は、入力される電流に応じて捩じれ量を変更可能なスタビライザ装置であり、
前記物理量は、前記スタビライザ装置の動作量と前記スタビライザ装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項4】
前記運動制御装置は、入力される電流に応じて操舵角を変更可能な操舵装置であり、
前記物理量は、前記操舵装置の動作量と前記操舵装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項5】
前記運動制御装置は、入力される電流に応じて前記車両の車輪に対する駆動力を変更可能な電動駆動装置であり、
前記物理量は、前記電動駆動装置の動作量と前記電動駆動装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項6】
前記路面状態推定部は、前記走行状態データおよび前記動作データに対する前記路面状態の関係を示す関係情報に基づいて前記路面状態を推定する、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項7】
前記関係情報は、ニューラルネットワークと、線形判別を行う線形判別情報と、運動方程式とのうちのいずれか一つか複数の組み合わせである、
請求項6に記載の路面状態推定装置。
【請求項8】
前記路面状態推定部は、前記動作データに基づいて前記車両の姿勢変動を求め、前記走行状態データと前記姿勢変動とに基づいて前記路面状態を推定する、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項9】
前記路面状態は、前記路面の粗さである、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項10】
前記路面状態は、前記路面の摩擦係数である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項11】
前記路面状態は、前記路面の傾斜状態である、
請求項1に記載の路面状態推定装置。
【請求項12】
データ取得部が、車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得し、
路面状態推定部が、前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する、
路面状態推定方法。
【請求項13】
車両に搭載されるコンピュータを、
前記車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得するデータ取得部と、
前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する路面状態推定部と、
として機能させるプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、路面状態推定装置、路面状態推定方法、およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両が走行する路面状態を推定する技術がある。例えば、上下加速度センサの検出結果と、車速センサの検出結果と、車速に応じたショックアブソーバの伝達特性とを用いて、車両の上下加速度、ロール角度、又はピッチ角度を推定し、その推定量を用いて路面状態を推定する技術が知られている(例えば、特許文献1参照)。この技術では、上下加速度センサは、ばね上部の車体に固定されている。
【0003】
また、路面状況に応じて車両のばね上部の運動(姿勢)を運動制御装置によって制御して、車両の乗り心地を高める技術がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008-183971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のような路面状況に応じてばね上部の運動を運動制御装置によって制御する車両において、ばね上部に設けられた上下加速度センサ等を用いて路面状態を推定する場合には、以下の問題が生じる。すなわち、上下加速度センサは、ばね上部に固定されているため、運動制御装置がばね上部の上下加速度を低減させるように動作した場合には、上下加速度センサは、その低減された上下加速度を検出することになる。このため、上下加速度の出力値に基づいて路面状態を推定すると、路面状態の推定の精度が低下してしまう。
【0006】
そこで、本開示の課題の一つは、運動制御装置によって車両のばね上部の運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる路面状態推定装置、路面状態推定方法、およびプログラムを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一例としての路面状態推定装置は、車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得するデータ取得部と、前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する路面状態推定部と、を備える。
【0008】
このような路面状態推定装置によれば、路面状態推定部が、走行状態データと動作データとに基づいて、路面の状態である路面状態を推定するので、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0009】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記運動制御装置は、懸架装置に設けられ、入力される電流に応じて減衰力を変更可能なショックアブソーバであり、前記物理量は、前記ショックアブソーバの伸縮の速度に関する物理量と前記ショックアブソーバに入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0010】
このような路面状態推定装置によれば、ショックアブソーバによって車両のばね上部の運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0011】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記運動制御装置は、入力される電流に応じて捩じれ量を変更可能なスタビライザ装置であり、前記物理量は、前記スタビライザ装置の動作量と前記スタビライザ装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0012】
このような路面状態推定装置によれば、スタビライザ装置によって車両のばね上部の運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0013】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記運動制御装置は、入力される電流に応じて操舵角を変更可能な操舵装置であり、前記物理量は、前記操舵装置の動作量と前記操舵装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0014】
このような路面状態推定装置によれば、操舵装置が車両のばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0015】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記運動制御装置は、入力される電流に応じて前記車両の車輪に対する駆動力を変更可能な電動駆動装置であり、前記物理量は、前記電動駆動装置の動作量と前記電動駆動装置に入力される前記電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0016】
このような路面状態推定装置によれば、電動駆動装置が車両のばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0017】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記路面状態推定部は、前記走行状態データおよび前記動作データに対する前記路面状態の関係を示す関係情報に基づいて前記路面状態を推定する。
【0018】
このような路面状態推定装置によれば、走行状態データおよび動作データに対する路面状態の関係を示す関係情報に基づいて路面状態を推定することができる。
【0019】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記関係情報は、ニューラルネットワークと、線形判別を行う線形判別情報と、運動方程式とのうちのいずれか一つか複数の組み合わせである。
【0020】
このような路面状態推定装置によれば、ニューラルネットワークと、線形判別を行う線形判別情報と、運動方程式とのうちのいずれか一つか複数の組み合わせに基づいて路面状態を推定することができる。
【0021】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記路面状態推定部は、前記動作データに基づいて前記車両の姿勢変動を求め、前記走行状態データと前記姿勢変動とに基づいて前記路面状態を推定する。
このような路面状態推定装置によれば、走行状態データと車両の姿勢変動とに基づいて路面状態を推定することができる。
【0022】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記路面状態は、前記路面の粗さである。
【0023】
このような路面状態推定装置によれば、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面の粗さの推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0024】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記路面状態は、前記路面の摩擦係数である。
【0025】
このような路面状態推定装置によれば、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面の摩擦係数の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0026】
前記路面状態推定装置では、例えば、前記路面状態は、前記路面の傾斜状態である。
【0027】
このような路面状態推定装置によれば、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面の傾斜状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0028】
本開示の一例としての路面状態推定方法は、データ取得部が、車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得し、路面状態推定部が、前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する。
【0029】
このような路面状態推定方法によれば、路面状態推定部が、走行状態データと動作データとに基づいて、路面の状態である路面状態を推定するので、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0030】
本開示の一例としてのプログラムは、車両に搭載されるコンピュータを、前記車両の走行状態を示す走行状態データと、前記車両に搭載され路面に対する前記車両のばね上部の運動を制御する又は前記ばね上部の運動に影響を及ぼす運動制御装置、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得するデータ取得部と、前記走行状態データと前記動作データとに基づいて、前記路面の状態である路面状態を推定する路面状態推定部と、として機能させる。
【0031】
このようなプログラムによれば、路面状態推定部が、走行状態データと動作データとに基づいて、路面の状態である路面状態を推定するので、運動制御装置が車両のばね上部の運動の制御を行った場合やばね上部の運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
図1図1は、実施形態にかかる車両の車室内の構成を示した例示的かつ模式的な図である。
図2図2は、実施形態にかかる車両を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
図3図3は、実施形態にかかる車両のシステム構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図4図4は、実施形態にかかる乗り心地制御装置の機能構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
図5図5は、実施形態にかかる車両の乗り心地制御の一例を説明するための例示的かつ模式的な図である。
図6図6は、実施形態にかかる路面パターンの一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図7図7は、実施形態にかかる運動制御の有無によるばね上加速度の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図8図8は、実施形態にかかる技術および比較例にかかる技術のそれぞれの路面高さの推定結果の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図9図9は、実施形態にかかる路面パターンの一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図10図10は、実施形態にかかる運動制御の有無によるばね上加速度の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図11図11は、実施形態にかかる技術および比較例にかかる技術のそれぞれの路面高さの推定結果の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
図12図12は、実施形態にかかる技術による路面粗さの推定方法を説明するための例示的かつ模式的な図である。
図13図13は、実施形態にかかる技術による路面粗さの推定方法を説明するための例示的かつ模式的な図である。
図14図14は、実施形態にかかる乗り心地制御装置が実行する路面状態推定方法の一例が示されたフローチャートである。
図15図15は、実施形態にかかる車両における懸架装置を含む部分と運動方程式のパラメータとの関係の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、本開示の実施形態を図面に基づいて説明する。以下に記載する実施形態の構成、ならびに当該構成によってもたらされる作用および効果は、あくまで一例であって、以下の記載内容に限られるものではない。
【0034】
<実施形態>
まず、図1および図2を用いて、実施形態にかかる車両1の概略的な構成について説明する。
【0035】
図1は、実施形態にかかる車両1の車室2a内の構成を示した例示的かつ模式的な図であり、図2は、実施形態にかかる車両1を上方から見た外観を示した例示的かつ模式的な図である。
【0036】
図1に示されるように、実施形態にかかる車両1は、ユーザとしての運転者を含む乗員が乗車する車室2aを有する。車室2a内には、ユーザが座席2bから操作可能な状態で、制動操作部4、加速操作部5、操舵操作部6、および変速操作部7などが設けられている。
【0037】
制動操作部4は、車両1に制動力を発生させるための制動機構に対するドライバの操作入力を受け付ける操作入力デバイスである。また、加速操作部5は、車両1に加速力を発生させるための加速機構に対するドライバの操作入力を受け付ける操作入力デバイスである。また、操舵操作部6は、車両1の転舵輪を転舵させるための転舵機構に対するドライバの操作入力を受け付ける操作入力デバイスである。また、変速操作部7は、車両1の変速比を切り替える変速機構に対するドライバの操作入力を受け付ける操作入力デバイスである。
【0038】
例えば、図1に示される例において、制動操作部4は、運転者の足下に設けられたブレーキペダルである。また、加速操作部5は、運転者の足下に設けられたアクセルペダルである。また、操舵操作部6は、ダッシュボード(インストルメントパネル)から突出したステアリングホイールである。また、変速操作部7は、センターコンソールから突出したシフトレバーである。
【0039】
車室2a内には、各種の画像を出力可能な表示部8と、各種の音を出力可能な音声出力部9と、を有するモニタ装置11が設けられている。モニタ装置11は、例えば、車室2a内のダッシュボードの幅方向(左右方向)の中央部に設けられる。なお、表示部8は、例えばLCD(液晶ディスプレイ)やOELD(有機エレクトロルミネセンスディスプレイ)などで構成されている。
【0040】
ここで、表示部8において画像が表示される領域としての表示画面には、操作入力部10が設けられている。操作入力部10は、例えば、指やスタイラスなどの指示体が近接(接触を含む)した位置の座標を検出可能なタッチパネルとして構成されている。これにより、ユーザ(運転者)は、表示部8の表示画面に表示される画像を視認することができるとともに、操作入力部10上で指示体を用いたタッチ(又はタップ)操作などを行うことで、各種の操作入力を実行することができる。
【0041】
なお、実施形態では、操作入力部10が、スイッチや、ダイヤル、ジョイスティック、押しボタンなどといった、各種の物理的なインターフェースであってもよい。また、実施形態では、車室2a内におけるモニタ装置11の位置とは異なる位置に、他の音声出力装置が設けられていてもよい。この場合、音声出力部9および他の音声出力装置の両方から、各種の音情報を出力することができる。また、実施形態では、モニタ装置11が、ナビゲーションシステムやオーディオシステムなどの各種システムに関する情報を表示可能に構成されていてもよい。
【0042】
また、図1および図2に示されるように、実施形態にかかる車両1は、左右2つの前輪3Fと、左右2つの後輪3Rと、を有した四輪の自動車として構成されている。以下では、簡単化のため、前輪3Fおよび後輪3Rを、総称して車輪3と記載することがある。実施形態では、4つの車輪3の一部又は全部の横滑り角が、操舵部303aの操作などに応じて変化(転舵)する。
【0043】
また、車両1には、周辺監視用の撮像部としての複数(図1および図2に示される例では4つ)の車載カメラ15a~15dが搭載されている。車載カメラ15aは、車体2の後側の端部2e(例えば、リヤトランクのドア2hの下方)に設けられ、車両1の後方の領域を撮像する。また、車載カメラ15bは、車体2の右側の端部2fのドアミラー2gに設けられ、車両1の右側方の領域を撮像する。また、車載カメラ15cは、車体2の前側の端部2c(例えば、フロントバンパ)に設けられ、車両1の前方の領域を撮像する。また、車載カメラ15dは、車体2の左側の端部2dのドアミラー2gに設けられ、車両1の左側方の領域を撮像する。以下では、特に区別する必要が無い場合、車載カメラ15a~15dを単に車載カメラ15と記載することがある。
【0044】
車載カメラ15は、例えば、CCD(電荷結合素子)やCIS(CMOS(相補性金属酸化膜半導体)イメージセンサ)などといった撮像素子を有したいわゆるデジタルカメラである。車載カメラ15は、所定のフレームレートで車両1の周囲の撮像を行い、当該撮像によって得られた撮像画像の画像データを出力する。車載カメラ15により得られる画像データは、フレーム画像として動画像を構成することも可能である。
【0045】
また、車体2には、車両1の周辺に存在する人および物(路面を含む)などのオブジェクトまでの距離を検出するための測距センサとして利用可能な測距部16および17が設けられている。測距部16および17は、波動の送受信に基づいてオブジェクトまでの距離を検出するソナー又はレーザレーダなどとして構成されている。図2に示される例において、測距部16は、4つの測距部16a~16dにより構成されており、測距部17は、8つの測距部17a~17hにより構成されている。
【0046】
測距部16は、車両1の側方のオブジェクトを検出するように設けられており、測距部17は、車両1の前方および後方のオブジェクトを検出するように設けられている。また、測距部16は、例えば車両1に対して比較的遠い位置のオブジェクトを検出するように構成されており、測距部17は、例えば車両1に対して比較的近い距離にあるオブジェクトを検出するように構成されている。
【0047】
次に、図3を用いて、実施形態にかかる車両1において各種の制御を実現するために設けられるシステム構成について説明する。なお、図3に示されるシステム構成は、あくまで一例であるので、様々に変更可能である。
【0048】
図3は、実施形態にかかる車両1のシステム構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。
【0049】
図3に示されるように、実施形態にかかる車両1は、制動システム301と、加速システム302と、操舵システム303と、変速システム304と、障害物センサ305と、走行状態センサ部306と、車載カメラ15と、モニタ装置11と、車両制御装置310と、車載ネットワーク350と、を有する。さらに、車両1は、懸架システム401と、後輪操舵システム402と、スタビライザシステム403と、電動駆動システム404と、乗り心地制御装置410と、を有する。懸架システム401、およびスタビライザシステム403は、それぞれ、車両1のばね上部1aの運動を制御する運動制御装置の一例である。後輪操舵システム402および電動駆動システム404は、それぞれ、車両1のばね上部1aの運動に影響を及ぼす運動制御装置の一例である。
【0050】
制動システム301は、車両1の減速を制御する。制動システム301は、制動部301aと、制動制御部301bと、制動部センサ301cと、を有する。
【0051】
制動部301aは、車両1の制動機構を駆動するための例えばアクチュエータである。制動部301aは、制動操作部4に対する操作をアシストする形で作動してもよいし、制動操作部4に対する操作とは別個に作動してもよい。
【0052】
制動制御部301bは、例えば、CPU(中央演算処理装置)などのようなハードウェアプロセッサを有したマイクロコンピュータとして構成される。制動制御部301bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいて制動部301aを作動させることで、車両1の減速度合を制御する。
【0053】
制動部センサ301cは、制動部301a(および制動操作部4)の状態を検出するためのセンシングデバイスである。制動部センサ301cによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用される。
【0054】
加速システム302は、車両1の加速を制御する。加速システム302は、加速部302aと、加速制御部302bと、加速部センサ302cと、を有する。
【0055】
加速部302aは、車両1の加速機構を駆動するための例えばアクチュエータである。制動部301aは、加速操作部5に対する操作をアシストする形で作動してもよいし、加速操作部5に対する操作とは別個に作動してもよい。
【0056】
加速制御部302bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したマイクロコンピュータとして構成される。加速制御部302bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいて加速部302aを作動させることで、車両1の加速度合を制御する。
【0057】
加速部センサ302cは、加速部302a(および加速操作部5)の状態を検出するためのセンシングデバイスである。加速部センサ302cによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用される。
【0058】
操舵システム303は、車両1の進行方向を制御する。操舵システム303は、操舵部303aと、操舵制御部303bと、操舵部センサ303cと、を有する。
【0059】
操舵部303aは、車両1の転舵機構を駆動するための例えばアクチュエータである。操舵部303aは、操舵操作部6に対する操作をアシストする形で作動してもよいし、操舵操作部6に対する操作とは別個に作動してもよい。
【0060】
操舵制御部303bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したマイクロコンピュータとして構成される。操舵制御部303bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいて操舵部303aを作動させることで、車両1の進行方向を制御する。
【0061】
操舵部センサ303cは、操舵部303a(および操舵操作部6)の状態を検出するためのセンシングデバイスである。操舵部センサ303cによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用される。
【0062】
変速システム304は、車両1の変速比を制御する。変速システム304は、変速部304aと、変速制御部304bと、変速部センサ304cと、を有する。
【0063】
変速部304aは、車両1の変速機構を駆動するための例えばアクチュエータである。変速部304aは、変速操作部7に対する操作をアシストする形で作動してもよいし、変速操作部7に対する操作とは別個に作動してもよい。
【0064】
変速制御部304bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したコンピュータとして構成される。変速制御部304bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいて変速部304aを作動させることで、車両1の変速比を制御する。
【0065】
変速部センサ304cは、変速部304a(および変速操作部7)の状態を検出するためのセンシングデバイスである。変速部センサ304cによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0066】
懸架システム401は、車体2の姿勢や車体2への力の入力を制御可能である。懸架システム401は、懸架装置401dと、懸架制御部401bと、電流センサ401cと、を有する。
【0067】
懸架装置401dは、車体2と車輪3とを連結している。車両1において、懸架装置401dに対して車体2側の部分がばね上部1aであり、懸架装置401dに対して車輪3側の部分がばね下部1bである。懸架装置401dは、ショックアブソーバ401aと、スプリング(不図示)と、を有する。ショックアブソーバ401aは、減衰力(減衰特性)を電気的に制御(調整)可能である。具体的には、ショックアブソーバ401aは、入力される電流に応じて動作するアクチュエータ401aaと、伸縮可能なショックアブソーバ本体401abと、を有する。アクチュエータ401aaは、ショックアブソーバ本体401abのピストンに設けられるオリフィスの開口度を変更したり、弁体と弁座との間の開口度を変更したりすることができる。これにより、ショックアブソーバ本体401ab内でピストンにより仕切られた2つの油室の間を流通する潤滑油の流通量を制御して、ショックアブソーバ401aの減衰力が調整される。懸架装置401dは、四つの車輪3(二つの前輪3Fおよび二つの後輪3R)のそれぞれに設けられており、四つの車輪3のそれぞれの減衰力が独立して制御されうる。ショックアブソーバ401aは、ダンパとも称される。
【0068】
懸架制御部401bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したコンピュータとして構成される。懸架制御部401bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいてアクチュエータ401aaを作動させることで、ショックアブソーバ401aの減衰力を制御する。
【0069】
電流センサ401cは、アクチュエータ401aaに入力される電流の値を示す電流値を検出するためのセンシングデバイスである。電流センサ401cによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。また、ショックアブソーバ本体401abの伸縮の速度に関する物理量(速度、加速度、変位等)は、加速度センサ306Bの検出結果を用いて推定することができる。
【0070】
後輪操舵システム402は、後輪3Rを操舵する。後輪操舵システム402は、後輪操舵装置402aと、後輪操舵制御部402bと、電流センサ402cと、角度センサ402dと、を有する。後輪操舵装置402aは、操舵装置の一例である。
【0071】
後輪操舵装置402aは、入力される電流に応じて後輪3Rを操舵する。後輪操舵装置402aは、電流が入力されるアクチュエータ402aaと、アクチュエータ402aaの駆動力によって後輪3Rの転舵角度を変更する後輪操舵機構402abと、有する。アクチュエータ402aaは、モータである。
【0072】
後輪操舵制御部402bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したコンピュータとして構成される。後輪操舵制御部402bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいてアクチュエータ402aaを作動させることで、後輪3Rの転舵角度を制御する。
【0073】
電流センサ402cは、アクチュエータ402aaに入力される電流の値を示す電流値を検出するためのセンシングデバイスである。角度センサ402dは、後輪操舵装置402aの動作として、アクチュエータ402aaの回転角度(回転量、制御量)を検出するためのセンシングデバイスである。電流センサ402cおよび角度センサ402dによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0074】
スタビライザシステム403は、車両1に発生するロールを制御する。スタビライザシステム403は、スタビライザ装置403aと、スタビライザ制御部403bと、電流センサ403cと、角度センサ403dと、を有する。スタビライザ装置403aは、車両1の前後の懸架装置401dごとに設けられている。前側のスタビライザ装置403aは、前側の左右二つの懸架装置401dを連結し、後側のスタビライザ装置403aは、後側の左右二つの懸架装置401dを連結している。スタビライザ制御部403bと、電流センサ403cと、角度センサ403dとは、それぞれ、スタビライザ装置403aごとに設けられている。
【0075】
スタビライザ装置403aは、入力される電流に応じて捩じれ量を変更可能である。スタビライザ装置403aは、所謂アクティブスタビライザ装置である。スタビライザ装置403aは、電流が入力されるアクチュエータ403aaと、左右二つの懸架装置401dを連結し、アクチュエータ403aaによって捩じられるスタビライザバー403abと、を有する。アクチュエータ403aaは、モータである。
【0076】
スタビライザ制御部403bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したコンピュータとして構成される。スタビライザ制御部403bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいてアクチュエータ403aaを作動させることで、スタビライザバー403abの捩じれ量を制御する。
【0077】
電流センサ403cは、アクチュエータ403aaに入力される電流の値を示す電流値を検出するためのセンシングデバイスである。角度センサ403dは、スタビライザ装置403aの動作として、アクチュエータ403aaの回転角度(回転量、制御量)を検出するためのセンシングデバイスである。電流センサ403cおよび角度センサ403dによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0078】
電動駆動システム404は、車輪3を駆動する。電動駆動システム404は、電動駆動装置404aと、電動駆動制御部404bと、電流センサ404cと、角度センサ404dと、を有する。
【0079】
電動駆動装置404aは、入力される電流に応じて車輪3に出力する駆動力を変更可能である。電動駆動装置404aは、電流が入力されるモータ404aaと、モータ404aaの回転を減速して車輪3に伝達する減速機404abと、有する。電動駆動装置404aは、例えばアクスル(不図示)に一体に設けられている。
【0080】
電動駆動制御部404bは、例えば、CPUなどのようなハードウェアプロセッサを有したコンピュータとして構成される。電動駆動制御部404bは、例えば車載ネットワーク350経由で入力される指示に基づいてモータ404aaを作動させることで、駆動力を制御する。
【0081】
電流センサ404cは、モータ404aaに入力される電流の値を示す電流値を検出するためのセンシングデバイスである。角度センサ404dは、電動駆動装置404aの動作として、モータ404aaの回転角度(回転量、制御量)を検出するためのセンシングデバイスである。電流センサ404cおよび角度センサ404dによる検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0082】
障害物センサ305は、車両1の周囲に存在しうる物体(障害物)に関するデータを検出するためのセンシングデバイスである。障害物センサ305は、車両1の周囲に存在する物体までの距離を取得する測距センサとしての測距部16および17を含んでいる。なお、障害物センサ305は、車両1の周囲の状況を画像として取得する車載カメラ15を含んでいてもよい。障害物センサ305による検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0083】
走行状態センサ部306は、車両1の走行状態を検出するための装置である。走行状態センサ部306は、例えば、車両1の速度である車速を検出する車速センサ306Aや、車両1の上下方向や前後方向、左右方向の加速度を検出する加速度センサ306B、車両1の車輪速を検出する車輪速センサ、車両1の旋回速度(角速度)を検出するジャイロセンサなどを含んでいる。車速センサ306Aおよび加速度センサ306Bは、例えば、車体2に固定されている。走行状態センサ部306による検出結果は、車載ネットワーク350に出力され、当該車載ネットワーク350上の各装置において利用されうる。
【0084】
加速度センサ306Bは、二つの前輪3Fおよび二つの後輪3Rのそれぞれに対応して設けられている。すなわち、加速度センサ306Bは、四つの車輪3および懸架装置401dのそれぞれに対応して車体2に設けられている。加速度センサ306Bは、車両1における車体2の加速度を検出する。詳細には、各加速度センサ306Bは、車体2における各車輪3の真上(ホイールの真上位置)に位置する加速度検知対象箇所に設けられている。すなわち、本実施形態では、加速度検知対象箇所は、四つである。本実施形態では、一例として、加速度センサ306Bは、車体2(ばね上部1a)の上下方向の加速度と、車体2(ばね上部1a)の前後方向(長手方向)の加速度と、車体2(ばね上部1a)の幅方向(車幅方向、短手方向、左右方向)の加速度とを取得することができる。
【0085】
車両制御装置310は、例えば、車両1に設けられる各種のシステムを統括的に制御することで各種の機能を実現するECU(電子制御装置)として構成されている。
【0086】
車両制御装置310は、CPU310aと、ROM(リードオンリーメモリ)310bと、RAM(ランダムアクセスメモリ)310cと、SSD(ソリッドステートドライブ)310dと、表示制御部310eと、音声制御部310fと、を有する。
【0087】
CPU310aは、車両制御装置310を統括的に制御するハードウェアプロセッサである。CPU310aは、ROM310bなどに記憶された各種の制御プログラム(コンピュータプログラム)を読み出し、当該各種の制御プログラムに規定されたインストラクションにしたがって各種の機能を実現する。
【0088】
ROM310bは、上述した各種の制御プログラムの実行に必要なパラメータなどを記憶する不揮発性の主記憶装置である。
【0089】
RAM310cは、CPU310aの作業領域を提供する揮発性の主記憶装置である。
【0090】
SSD310dは、書き換え可能な不揮発性の補助記憶装置である。なお、実施形態にかかる車両制御装置310においては、補助記憶装置として、SSD310dに替えて(又はSSD310dに加えて)、HDD(ハードディスクドライブ)が設けられてもよい。
【0091】
表示制御部310eは、車両制御装置310で実行されうる各種の処理のうち、主として、車載カメラ15から取得される撮像画像に対する画像処理や、モニタ装置11の表示部8に出力する画像データの生成などを司る。
【0092】
音声制御部310fは、車両制御装置310で実行されうる各種の処理のうち、主として、モニタ装置11の音声出力部9に出力する音声データの生成などを司る。
【0093】
乗り心地制御装置410は、車両1の乗り心地を制御するものである。乗り心地制御装置410は、例えば、懸架システム401、後輪操舵システム402、スタビライザシステム403、および電動駆動システム404等を統括的に制御することで各種の機能を実現するECU(電子制御装置)として構成されている。詳細は後述するが、実施形態にかかる乗り心地制御装置410は、路面状態を推定する路面状態推定処理および車両1の乗り心地を制御する乗り心地制御処理を実行可能に構成されている。
【0094】
乗り心地制御装置410は、CPU410aと、ROM410bと、RAM410cと、SSD410dと、を有する。
【0095】
CPU410aは、乗り心地制御装置410を統括的に制御するハードウェアプロセッサである。CPU410aは、ROM410bなどに記憶された各種の制御プログラム(コンピュータプログラム)を読み出し、当該各種の制御プログラムに規定されたインストラクションにしたがって各種の機能を実現する。なお、ここで言及している制御プログラムには、上述した路面状態推定処理および乗り心地制御処理を実行するための路面状態推定プログラムおよび乗り心地制御処理プログラムが含まれる。
【0096】
ROM410bは、上述した各種の制御プログラムの実行に必要なパラメータなどを記憶する不揮発性の主記憶装置である。
【0097】
RAM410cは、CPU410aの作業領域を提供する揮発性の主記憶装置である。
【0098】
SSD410dは、書き換え可能な不揮発性の補助記憶装置である。なお、実施形態にかかる乗り心地制御装置410においては、補助記憶装置として、SSD410dに替えて(又はSSD410dに加えて)、HDDが設けられてもよい。
【0099】
車載ネットワーク350は、制動システム301と、加速システム302と、操舵システム303と、変速システム304と、障害物センサ305と、走行状態センサ部306と、モニタ装置11の操作入力部10と、車両制御装置310と、を通信可能に接続する。
【0100】
図4は、実施形態にかかる乗り心地制御装置410の機能構成を示した例示的かつ模式的なブロック図である。図4に示されるように、本実施形態では、一例として、乗り心地制御装置410は、ハードウェアとソフトウェア(プログラム)との協働により、図4に示されるような、データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等として機能(動作)することができる。すなわち、プログラムには、一例としては、図3に示される記憶部430を除く各ブロックに対応したモジュールが含まれうる。記憶部430は、例えば、ROM410b、SSD410d等が該当する。
【0101】
データ取得部421は、走行状態データと、動作データと、各種のセンサから取得する。走行状態データは、車両1の走行状態を示す。例えば、走行状態データは、車速センサ306Aが検出する車速と、加速度センサ306Bが検出する車両1の上下方向の加速度(上下加速度)とである。データ取得部421は、上記の車速と上下加速度とのうち少なくとも一方を取得する。動作データは、車両1に搭載され路面F1(図5)に対する車両1のばね上部1aの運動を制御可能な運動制御装置、又はばね上部1aの運動に影響を及ぼす運動制御装置の動作に関する物理量を示す。運動制御装置は、例えば、ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404aである。
【0102】
データ取得部421が取得する動作データの物理量は、ショックアブソーバ401aの伸縮の速度に関する物理量(速度、加速度、変位等)と、ショックアブソーバ401aのアクチュエータ401aaに入力される電流の値を示す電流値と、後輪操舵装置402aのアクチュエータ402aaの回転角度(動作量)と、アクチュエータ402aaに入力される電流の値を示す電流値と、スタビライザ装置403aのアクチュエータ403aaの回転量(動作量)とアクチュエータ403aaに入力される電流の値を示す電流値と、電動駆動装置404aのモータ404aaの回転角度(動作量)と、モータ404aaに入力される電流の値を示す電流値とを含む物理量群のうちの一つ以上の物理量である。データ取得部421が取得する物理量は、上記物理量群のうち一つであってもよいし、複数であってもよいし、全部であってもよい。
【0103】
路面状態推定部422は、一例として、データ取得部421によって取得された所定のデータ(以後、入力データとも称する)が入力される。入力データは、走行状態データの少なくとも一つと上記の動作データ(物理量群)の少なくとも一つであり、一例としてそれらの全てである。なお、入力データは、走行状態データの一つと上記の動作データ(物理量群)の一つが含まれていればよい。路面状態推定部422は、走行状態データおよび動作データに対する路面状態の関係を示す関係情報に基づいて路面状態を推定する。例えば、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440を用いて、入力データに応じた、車両1が走行する路面F1の高さの変化量(以後、路面高さ変化量とも称する)を推定する。ニューラルネットワーク440は、走行状態データおよび動作データに対する路面状態の関係を示す関係情報に含まれる。路面高さの変化量は、路面F1の形状である凹凸を表す。ニューラルネットワーク440は、記憶部430に予め記憶されている。
【0104】
ニューラルネットワーク440は、入力データの入力に応じて車両1が走行する路面F1の高さの変化量を推定するように予め学習を行ったリカレントニューラルネットワーク(RNN)として構成される。ニューラルネットワーク440の学習時において、入力データは、データ取得部421によって取得される上記の入力データであり、教師データとしての出力データは、たとえば、路面高さ検出センサ(不図示)で計測された路面F1の高さの変化量の実測値(真値)である。実施形態にかかるニューラルネットワーク440は、例えば、Seq2Seq(Sequence to Sequence)モデルとして構成されている。
【0105】
そして、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440を用いて推定した路面高さ変化量に基づいて、路面F1の粗さを推定する。例えば、路面状態推定部422は、路面高さ変化量と路面粗さとの関係を示す情報と、推定した路面高さ変化量とに基づいて、路面粗さを推定する。ここで、路面粗さは、例えば、ISO規格のISO8608に規定された粗さである。路面F1の粗さは、路面F1の形状を表す。路面粗さおよび路面高さ変化量は、路面状態の一例である。なお、ニューラルネットワーク440が路面F1の粗さを推定するように構成してもよい。
【0106】
乗り心地制御部423は、路面状態推定部422によって推定された路面粗さ(路面状態)に基づいて、車両1の乗り心地に関する物理量が目標値に近づくように、乗り心地運動制御装置(ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404a)を制御する。
【0107】
次に、図5図13を参照して、乗り心地制御部423によって運動制御装置(例えば、ショックアブソーバ401a)の制御が行われた場合の路面状態の推定について説明する。
【0108】
図5は、実施形態にかかる車両1の乗り心地制御の一例を説明するための例示的かつ模式的な図である。図5に示されるように、車両1が路面F1の段差Dを乗り越える場合、乗り心地制御部423は、車体2(ばね上部1a)の傾きが少なくなるように、ショックアブソーバ401aを制御する。
【0109】
図6は、実施形態にかかる路面パターンの一例を示す例示的かつ模式的な図である。図7は、実施形態にかかる加速度センサおよび比較例にかかる加速度センサのそれぞれの検出結果の一例を示す例示的かつ模式的な図である。図8は、実施形態にかかる技術および比較例にかかる技術のそれぞれの路面高さの推定結果の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
【0110】
図5の路面F1において走行する車両1の車輪3が接する路面F1の高さの変化のデータが、一例として図6に示されている。このような路面F1に対して、運動制御の有無によるばね上加速度の違いが図7に示されている。図7から分かるように、運動制御を実施すると、加速度センサ306Bが検出するばね上加速度は、段差Dの乗り越えの際にほとんど変化しない。よって、加速度センサ306Bの出力値だけで路面状態を検出すると、路面状態の検出精度が低くなってしまう。
【0111】
図8には、路面F1の高さの変化を本実施形態の上記技術と比較例の技術で推定するシミュレーションの結果が図8に示されている。比較例は、路面F1の高さの変化を車両1の上下加速度の計測結果だけで推定するものである。図8から分かるように、本実施形態の技術では、路面F1の高さの変化を精度よく推定できる。これに対して、比較例では、路面F1の段差Dの高さの変化を確認できないため、路面F1の高さの変化の推定精度が低い。
【0112】
図9は、実施形態にかかる路面パターンの一例を示す例示的かつ模式的な図である。図10は、実施形態にかかる運動制御の有無によるばね上加速度の一例を示す例示的かつ模式的な図である。図11は、実施形態にかかる技術および比較例にかかる技術のそれぞれの路面高さの推定結果の一例を示す例示的かつ模式的な図である。
【0113】
図9図11は、図6図8に対応する図であって、路面F1のパターンが図6図8の例とは異なるものである。
【0114】
図12および図13は、実施形態にかかる技術による路面粗さの推定方法を説明するための例示的かつ模式的な図である。具体的には、図12は、ISO8608に規定された路面の粗さを表す図である。路面粗さは、路面の変化(周波数特性)に応じて設定されている。また、図13は、図12に基づいた線形判別方法を説明するための図である。図12および図13の横軸は、路面変位に対する空間周波数を示し、図12および図13の縦軸は、路面変位に関するパワースペクトル密度を示す。また、図13の線L1は、判別式(Z=W1×X1+W2×X2)を示す。X1は、パワースペクトル密度であり、X2は、空間周波数である。また、W1,W2は、係数である。また、図13の線B~線B(nは自然数)は、路面クラスの判別境界を示す。線B~線Bの総称として線Bを用いる。
【0115】
路面状態推定部422は、走行状態データおよび動作データとして図10の加速度データから図11の路面変位を推定し、図11の路面変位の信号を周波数解析することで図12に線D1で示される第1データを算出する。路面状態推定部422は、この第1データに対して図13に示される線形判別を行うことで、路面粗さがどの路面クラスであるかを算出する。線形判別は、上記判別式(線L1)と判別境界(線B)とに基づいて、判別境界に対する第1データの位置を判別式によってどのクラスの範囲にあるかを判別する一般的な線形判別分析が行われる。このとき、例えば、線B1に対するクラス分けには、判別式(Z1=W11×X1+W12×X2)を用い、線B2に対するクラス分けには、判別式(Z2=W21×X1+W22×X2)を用い、線Bnに対するクラス分けには、判別式(Zn=Wn1×X1+Wn2×X2)を用いることができる。判別式および判別境界は、判別情報の一例であり、関係情報に含まれる。
【0116】
次に、乗り心地制御装置410が実行する路面状態推定方法の一例を図14を参照して説明する。図14は、実施形態にかかる乗り心地制御装置410が実行する路面状態推定方法の一例が示されたフローチャートである。
【0117】
図14に示されるように、まずは、データ取得部421が、上述の入力データ(データ)を取得する(S101)。次に、路面状態推定部422が、データ取得部421によって取得された入力データと、ニューラルネットワーク440とに基づいて、路面変化量を推定する(S102)。そして、路面状態推定部422が、推定した路面変化量に基づいて路面状態(一例として路面粗さ)を推定する(S103)。
【0118】
このように、本実施形態の路面状態推定方法は、データ取得部421が、車両1の走行状態を示す走行状態データと、車両1に搭載され路面F1に対する車両1のばね上部1aの運動を制御する運動制御装置(ショックアブソーバ401a、スタビライザ装置403aの一つ以上)、ばね上部1aの運動に影響を及ぼす運動制御装置(後輪操舵装置402a、電動駆動装置404aの一つ以上)、の動作に関する物理量を示す動作データと、を取得する。路面状態推定部422が、走行状態データと動作データとに基づいて、路面F1の状態である路面状態を推定する。
【0119】
以上のように、実施形態にかかる乗り心地制御装置410(路面状態推定装置)は、データ取得部421と、路面状態推定部422と、を備える。データ取得部421は、走行状態データと、動作データと、を取得する。走行状態データは、車両1の走行状態を示す。動作データは、車両1に搭載され路面F1に対する車両1のばね上部1aの運動を制御する運動制御装置(ショックアブソーバ401a、スタビライザ装置403aの一つ以上)、ばね上部1aの運動に影響を及ぼす運動制御装置(後輪操舵装置402a、電動駆動装置404aの一つ以上)、の動作に関する物理量を示す。路面状態推定部422は、走行状態データと動作データとに基づいて、路面F1の状態である路面状態を推定する。
【0120】
このような乗り心地制御装置410によれば、路面状態推定部422が、走行状態データと動作データとに基づいて、路面F1の状態である路面状態を推定するので、運動制御装置(ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404a)によって車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0121】
また、運動制御装置は、懸架装置401dに設けられ、入力される電流に応じて減衰力を変更可能なショックアブソーバ401aである。上記物理量は、ショックアブソーバ401aの伸縮の速度に関する物理量(速度、加速度、変位等)とショックアブソーバ401aに入力される電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0122】
このような乗り心地制御装置410によれば、ショックアブソーバ401aによって車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0123】
また、運動制御装置は、入力される電流に応じて操舵角を変更可能な後輪操舵装置402a(操舵装置)である。上記物理量は、後輪操舵装置402aの動作量と後輪操舵装置402aに入力される電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0124】
このような乗り心地制御装置410によれば、後輪操舵装置402aが車両1のばね上部1aの運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0125】
また、運動制御装置は、入力される電流に応じて捩じれ量を変更可能なスタビライザ装置403aである。上記物理量は、スタビライザ装置403aの動作量とスタビライザ装置403aに入力される電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0126】
このような乗り心地制御装置410によれば、スタビライザ装置403aによって車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0127】
また、運動制御装置は、入力される電流に応じて車両1の後輪3R(車輪3)に対する駆動力を変更可能な電動駆動装置404aである。上記物理量は、電動駆動装置404aの動作量と電動駆動装置404aに入力される電流の値を示す電流値との少なくとも一方である。
【0128】
このような乗り心地制御装置410によれば、電動駆動装置404aが車両1のばね上部1aの運動に影響を及ぼした場合でも路面状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0129】
また、乗り心地制御装置410では、路面状態は、路面F1の粗さである。
【0130】
このような乗り心地制御装置410によれば、運動制御装置(ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404a)が車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合やばね上部1aの運動に影響を及ぼした場合でも路面F1の粗さの推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0131】
<変形例>
次に変形例について説明する。
【0132】
第1の変形例では、路面状態推定部422が推定する路面状態は、路面F1の摩擦係数である。この例では、例えば、ニューラルネットワーク440の学習時において、入力データは、データ取得部421によって取得される上記の入力データであり、教師データとしての出力データは、たとえば、路面F1の摩擦係数を検出する摩擦係数センサ(不図示)で計測された路面F1の摩擦係数の実測値(真値)である。よって、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440に走行状態データを入力することにより、路面F1の摩擦係数を推定することができる。
【0133】
路面F1の摩擦係数の具体的な算出方法の一例を説明する。走行状態データの車速およびハンドル(不図示)の操舵量を使用し、走行時の車速とハンドルの操舵量とから車両1のヨーレートおよび横加速度を推定する。すなわち、車両1のヨーレートおよび横加速度の推定値を求める。現実世界では、路面F1の摩擦係数により車両1の走行に抵抗が発生している中、走行状態データとして、ヨーレートおよび横加速度をセンサから取得することができる。すなわち、ヨーレートおよび横加速度の計測値を取得することができる。上記の推定値と計測値とに、乖離が発生している。この乖離量と路面F1の摩擦係数との関係を用いることで、摩擦係数を算出できる。しかしながら、後輪操舵装置402aによって後輪3Rの操舵による運動制御が行われていると、車両1の運動特性が変化し、車両1のヨーレート、横加速度の推定値を精度よく算出することができない。そこで、後輪操舵装置402aの操舵による運動制御量を加味する事で、精度よく路面F1の摩擦係数を算出することが可能になる。
【0134】
このような乗り心地制御装置410によれば、運動制御装置(ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404a)によって車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合でも路面F1の摩擦係数の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0135】
第2の変形例では、路面状態推定部422が推定する路面状態は、路面F1の傾斜状態である。この例では、例えば、ニューラルネットワーク440の学習時において、入力データは、データ取得部421によって取得される上記の入力データであり、教師データとしての出力データは、たとえば、路面F1の傾斜状態(傾斜角度)を検出する角度センサ(不図示)で計測された路面F1の傾斜状態(傾斜角度)の実測値(真値)である。よって、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440に走行状態データを入力することにより、路面F1の傾斜状態(傾斜角度)を推定することができる。
【0136】
このような乗り心地制御装置410によれば、運動制御装置(ショックアブソーバ401a、後輪操舵装置402a、スタビライザ装置403a、電動駆動装置404a)によって車両1のばね上部1aの運動の制御を行った場合でも路面F1の傾斜状態の推定の精度が低下するのを抑制することができる。
【0137】
第3の変形例は、路面状態推定部422が、動作データに基づいて車両1の姿勢変動を求め、走行状態データと姿勢変動とに基づいて路面状態を推定する。例えば、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440に替えて、予め求めた推定用情報を用いて、路面状態を推定する。推定用情報は、走行状態データおよび動作データと、路面状態との関係を示す情報であり、例えば、方程式(運動方程式)である。方程式に、変数(入力データ)として、走行状態データおよび動作データを入力することにより、路面状態を示す結果(路面の高さの変化量や、摩擦係数、傾斜角度)が求められる。
【0138】
例えば、路面状態推定部422は、方程式を用いて、スタビライザ装置403aのアクチュエータ403aaの回転量(動作量)又はアクチュエータ403aaに入力される電流の値を示す電流値から、車両1のロールの変化の量(以後、ロール変化量とも称する)を推定する。また、路面状態推定部422は、方程式を用いて、電動駆動装置404aのモータ404aaの回転角度(動作量)又はモータ404aaに入力される電流の値を示す電流値から、車両1のピッチの変化の量(以後、ピッチ変化量とも称する)を推定する。そして、路面状態推定部422は、方程式を用いて、スタビライザ装置403aのアクチュエータ403aaの回転量(動作量)又はアクチュエータ403aaに入力される電流の値を示す電流値から、車両1のロール量の変化を推定する。また、路面状態推定部422は、方程式を用いて、走行状態データ(車速、上下加速度)と、ロール変化量と、ピッチ変化量とから、路面の高さの変化量を推定する。そして、路面状態推定部422は、方程式を用いて、路面の高さの変化量から、路面粗さを推定する。ロールの変化とピッチの変化は、車両1の姿勢変化の一例であり、ロール変化量とピッチ変化量とは、車両1の姿勢変化量の一例である。
【0139】
図15は、実施形態にかかる車両1における懸架装置401dを含む部分と運動方程式のパラメータとの関係の一例を示す模式図である。第4の変形例では、路面状態推定部422が、ニューラルネットワーク440と運動方程式とを用いて、路面状態を推定する。また、本変形例では、走行状態データは、一例として、ばね上部1aの加速度であるばね上加速度が用いられる。ニューラルネットワーク440は、入力データとしてのばね上加速度の入力に応じて、ばね下部1bの加速度であるばね下加速度を推定するように予め学習を行ったリカレントニューラルネットワーク(RNN)として構成される。また、運動方程式は、一例として、懸架装置401dの下記の運動方程式(1),(2)が用いられる。下記運動方程式(1),(2)のパラメータと車両1における懸架装置401dを含む部分と運動方程式のパラメータとの関係は、図15に示されている。運動方程式(1),(2)は、関係情報の一例である。
【数1】
【0140】
例えば、路面状態推定部422は、ニューラルネットワーク440を用いて、ばね上加速度からばね下加速度を推定する。次に、路面状態推定部422は、運動方程式(1),(2)を用いて、ばね上加速度とばね下加速度(推定値)とから、路面F1の高さの変化量(路面変位)を算出する。
【0141】
このような構成によれば、走行状態データおよび動作データに基づく路面F1の推定の関係において、物理法則で車両1の挙動が明らかな部分を運動方程式(1),(2)で補うことにより、路面F1の状態の推定の精度の向上を図ることができる。
【0142】
なお、路面F1の状態の推定の方法は、上記に限定されない。路面F1の状態の推定は、ニューラルネットワーク440と、線形判別を行う線形判別情報と、運動方程式とのうちのいずれか一つだけを用いてもよい。また、路面F1の状態の推定は、ニューラルネットワーク440と、線形判別を行う線形判別情報と、運動方程式とのうちの複数の組み合わせであってもよい。
【0143】
上述の実施形態および変形例では、CPU410aが、ROM410bやSSD410d等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより、データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等の各種の機能モジュールを実現する。
【0144】
上記実施形態および変形例では、データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等の各種の機能モジュールは、CPU410a等のプロセッサが、ROM410bやSSD410d等の記憶装置に記憶されるプログラムを読み出して実行することにより実現される。ただし、これに限定するものではない。例えば、データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等の各種の機能モジュールは、独立したハードウェアにより実現することも可能である。
【0145】
なお、上記実施形態および変形例の車両制御装置310および乗り心地制御装置410で実行される車両制御プログラムは、ROM等に予め組み込まれて提供される。
【0146】
上記実施形態および変形例の車両制御装置310および乗り心地制御装置410で実行されるプログラムは、インストール可能な形式又は実行可能な形式のファイルでCD-ROM、フレキシブルディスク(FD)、CD-R、DVD(Digital Versatile Disk)等のコンピュータで読み取り可能な記録媒体に記録して提供するように構成してもよい。
【0147】
さらに、上記実施形態および変形例の車両制御装置310および乗り心地制御装置410で実行されるプログラムを、インターネット等のネットワークに接続されたコンピュータ上に格納し、ネットワーク経由でダウンロードさせることにより提供するように構成しても良い。また、上記実施形態および変形例の車両制御装置310および乗り心地制御装置410で実行されるプログラムをインターネット等のネットワーク経由で提供又は配布するように構成しても良い。
【0148】
上記実施形態および変形例の乗り心地制御装置410で実行されるプログラムは、上述した各部(データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等)を含むモジュール構成となっており、実際のハードウェアとしてはCPUが上記ROMから車両制御プログラムを読み出して実行することにより上記各部が主記憶装置上にロードされ、データ取得部421や、路面状態推定部422、乗り心地制御部423等が主記憶装置上に生成されるようになっている。
【0149】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0150】
1…車両
1a…ばね上部
3…車輪
3F…前輪
3R…後輪
401a…ショックアブソーバ(運動制御装置)
401d…懸架装置
402a…後輪操舵装置(運動制御装置、操舵装置)
403a…スタビライザ装置(運動制御装置)
404a…電動駆動装置(運動制御装置)
410…乗り心地制御装置(路面状態推定装置)
421…データ取得部
422…路面状態推定部
F1…路面
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
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図10
図11
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図15