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特開2024-176771反射防止フィルム、反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイ
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  • 特開-反射防止フィルム、反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイ 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176771
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】反射防止フィルム、反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイ
(51)【国際特許分類】
   G02B 1/111 20150101AFI20241212BHJP
   G02B 1/14 20150101ALI20241212BHJP
   G02B 5/30 20060101ALI20241212BHJP
   G02F 1/1335 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 1/00 20060101ALI20241212BHJP
   C08L 101/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
G02B1/111
G02B1/14
G02B5/30
G02F1/1335
C08L1/00
C08L101/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】8
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095562
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003193
【氏名又は名称】TOPPANホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149548
【弁理士】
【氏名又は名称】松沼 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100139686
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 史朗
(74)【代理人】
【識別番号】100169764
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 雄一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100147267
【弁理士】
【氏名又は名称】大槻 真紀子
(72)【発明者】
【氏名】薮原 靖史
【テーマコード(参考)】
2H149
2H291
2K009
4J002
【Fターム(参考)】
2H149AA14
2H149AB04
2H149AB15
2H149FC02
2H149FC03
2H149FD25
2H291FA22X
2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
2H291FA40X
2H291FA42Z
2H291FA81Z
2H291FA94X
2H291FB02
2H291FB22
2H291LA02
2H291LA40
2K009AA04
2K009AA15
2K009BB28
2K009CC38
2K009DD02
4J002AA002
4J002AB011
4J002BG042
4J002BG052
4J002CP183
4J002GF00
4J002GP00
(57)【要約】
【課題】透明性、耐擦傷性及び抗菌性に優れる反射防止フィルム、これを用いた反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイの提供。
【解決手段】透明基材の少なくとも一方の面上に、前記透明基材側より、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に備え、前記低屈折率層が、抗菌成分を有する微細化セルロースと、マトリックスとを含むことを特徴とする反射防止フィルム。偏光板と、前記反射防止フィルムと、を備えることを特徴とする反射防止フィルム付偏光板。観察者側から順に、前記反射防止フィルム、第1の偏光板、液晶セル、第2の偏光板及びバックライトユニットをこの順に備えることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材の少なくとも一方の面上に、前記透明基材側より、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に備え、
前記低屈折率層が、抗菌成分を有する微細化セルロースと、マトリックスとを含むことを特徴とする反射防止フィルム。
【請求項2】
前記微細化セルロースが、イオン性官能基を有する、請求項1に記載の反射防止フィルム。
【請求項3】
前記微細化セルロースの乾燥質量当たりの前記イオン性官能基の含有量が、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下である、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項4】
前記イオン性官能基が、カルボキシ基、リン酸基及びスルホ基から選ばれる1種以上である、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項5】
前記微細化セルロースが、前記イオン性官能基により前記抗菌成分を吸着している、請求項2に記載の反射防止フィルム。
【請求項6】
前記透明基材の一方の面上のみに前記ハードコート層及び前記低屈折率層を備える、請求項1から5のいずれか1項に記載の反射防止フィルム。
【請求項7】
偏光板と、請求項6に記載の反射防止フィルムとを備え、前記反射防止フィルムが、前記透明基材の他方の面側を前記偏光板に向けて配置されていることを特徴とする反射防止フィルム付偏光板。
【請求項8】
観察者側から順に、請求項6に記載の反射防止フィルム、第1の偏光板、液晶セル、第2の偏光板及びバックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止フィルムが、前記透明基材の他方の面側を前記第1の偏光板に向けて配置されていることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、反射防止フィルム、反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ、CRTディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等のディスプレイにおいては、視聴時にディスプレイ表面に外光が映りこむことによる視認性の低下を防ぐために、表面に反射防止フィルムを設けることが知られている。
反射防止フィルムは、光の干渉や散乱を利用し、ディスプレイの視認性を向上させる性能(反射防止性能)を有する。また、反射防止フィルムに、反射防止性能の他に、ディスプレイへの傷付きを防止する耐擦傷性能、ホコリ等の付着を抑制する帯電防止性能、指紋や汚れの付着を抑制する防汚性能、薬品等からの汚染を防ぐ耐薬品性能等の様々な性能を付与することがある。
【0003】
近年、ディスプレイの多くは、画像表示機能だけではなくタッチパネル式入力装置として、スマートフォンやノートパソコン、カーナビゲーション装置、ATM、プリンター等、ひとが触れて操作するデバイスに設置されている。
タッチパネル式入力装置としてのディスプレイの多くが接触式である。不特定多数のひとがディスプレイに触れる場合、手指からディスプレイ表面に雑菌やウイルスが移り、他者がディスプレイに触れることで、ディスプレイを介して雑菌やウイルスを拡散してしまう。また、ディスプレイ上で雑菌やウイルスが繁殖してしまう恐れがある。そのため、頻繁に除菌処理などを行う必要がある。従って、反射防止フィルムには、ディスプレイを介しての感染の対策として、抗菌、抗ウイルス性(合わせて本明細書では抗菌性と称する)が求められる。
【0004】
反射防止フィルムへの抗菌性能の付与のため、マトリックス及び抗菌剤を含む透明被膜を設けることが知られている。抗菌剤としては、有機系成分、銀等の抗菌性能を持つ金属微粒子、金属を担持させた多孔質粒子等が知られている(特許文献1)。
また、反射防止フィルムへの抗菌性能の付与のため、1以上の低屈折誘電体層及び1以上の高屈折率誘電体層を含む誘電体多層膜の最外層に、抗菌性能を有する金属イオン担持ゼオライトを含む誘電体層を蒸着により積層することが知られている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第2022/163397号
【特許文献2】特開2018-159860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
タッチパネル式入力装置としてのディスプレイは、指やスタイラス等で直接ディスプレイを擦る、突く等の入力操作を行ったときに、ディスプレイ表面が傷付きやすい。また、タッチパネル式入力装置としてのディスプレイは、ディスプレイ表面を清掃する頻度が多い。清掃のために布等で擦ると、ディスプレイ表面に付着したホコリや砂等の粒子によってディスプレイ表面が傷付きやすい。従って、このようなディスプレイに用いられる反射防止フィルムには、より優れた耐擦傷性が求められる。
【0007】
しかし、特許文献1の方法では、透明被膜に傷が付きやすく、耐擦傷性能が充分ではない。また、抗菌成分によっては、マトリックスに分散させることが難しく、透明性に問題が発生することがある。
特許文献2の方法では、蒸着により成膜するため、湿式成膜法と比較し、コストや製造スピードが劣る場合が多い。
【0008】
そこで本発明は、透明性、耐擦傷性及び抗菌性に優れる反射防止フィルム、これを用いた反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイの提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、鋭意検討した結果、反射防止フィルムの最表面の低屈折率層に、抗菌成分を有する微細化セルロースを含有させることで、低屈折率層の透明性を保ちつつ、強度を向上させ、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、以下の態様を有する。
[1]透明基材の少なくとも一方の面上に、前記透明基材側より、ハードコート層及び低屈折率層をこの順に備え、
前記低屈折率層が、抗菌成分を有する微細化セルロースと、マトリックスとを含むことを特徴とする反射防止フィルム。
[2]前記微細化セルロースが、イオン性官能基を有する、[1]に記載の反射防止フィルム。
[3]前記微細化セルロースの乾燥質量当たりの前記イオン性官能基の含有量が、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下である、[2]に記載の反射防止フィルム。
[4]前記イオン性官能基が、カルボキシ基、リン酸基及びスルホ基から選ばれる1種以上である、[2]又は[3]に記載の反射防止フィルム。
[5]前記微細化セルロースが、前記イオン性官能基により前記抗菌成分を吸着又している、[2]~[4]のいずれかに記載の反射防止フィルム。
[6]前記透明基材の一方の面上のみに前記ハードコート層及び前記低屈折率層を備える、[1]~[5]のいずれかに記載の反射防止フィルム。
[7]偏光板と、[6]に記載の反射防止フィルムとを備え、前記反射防止フィルムが、前記透明基材の他方の面側を前記偏光板に向けて配置されていることを特徴とする反射防止フィルム付偏光板。
[8]観察者側から順に、[6]に記載の反射防止フィルム、第1の偏光板、液晶セル、第2の偏光板及びバックライトユニットをこの順に備え、前記反射防止フィルムが、前記透明基材の他方の面側を前記第1の偏光板に向けて配置されていることを特徴とする透過型液晶ディスプレイ。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、透明性、耐擦傷性及び抗菌性に優れる反射防止フィルム、これを用いた反射防止フィルム付偏光板及び透過型液晶ディスプレイを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る反射防止フィルムの模式断面図である。
図2】一実施形態に係る反射防止フィルム付偏光板の模式断面図である。
図3】一実施形態に係る透過型ディスプレイの模式断面図である。
図4】一実施形態に係る透過型ディスプレイの模式断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。ただし、以下に説明する各図において相互に対応する部分には同一符号を付し、重複部分においては後述での説明を適宜省略する。また、本実施形態は、本発明の技術的思想を具体化するための構成を例示するものであって、各部の材質、形状、構造、配置、寸法等を下記のものに特定するものでない。本発明の技術的思想は、特許請求の範囲に記載された請求項が規定する技術的範囲内において、種々の変更を加えることができる。
【0014】
〔反射防止フィルム〕
図1に、一実施形態に係る反射防止フィルムの模式断面図を示す。
本実施形態の反射防止フィルム1は、図1に示すように、透明基材11の一方の面上に、透明基材11側より、ハードコート層12及び低屈折率層13をこの順に備えている。
なお、本実施形態では、透明基材11の一方の面上のみにハードコート層12及び低屈折率層13を備えているが、透明基材11の他方の面上にもハードコート層12及び低屈折率層13を備えることができる。
【0015】
<透明基材>
透明基材11としては、透光性を有するものであればよく、例えば反射防止フィルムの基材として公知のものを使用できる。
透明基材11としては、トリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムが好ましい。セルロース系フィルムは、複屈折が少なく、透明性、屈折率、分散等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性等の諸物性に優れている。また、溶剤によって容易に溶解又は膨潤させることができる。
【0016】
透明基材11は、安定剤、紫外線吸収剤、可塑剤、滑剤、着色剤、酸化防止剤、難燃剤等の各種の添加剤を含んでいてもよい。
透明基材11の厚さは特に限定されるものではないが、10μm以上200μm以下が好ましい。透明基材11がトリアセチルセルロースフィルム等のセルロース系フィルムである場合には、20μm以上80μm以下がより好ましい。
【0017】
<ハードコート層>
ハードコート層12としては、例えば、電離放射線硬化型材料を含むハードコート層形成用組成物の硬化物からなる層が挙げられる。
【0018】
電離放射線硬化型材料は、電離放射線の照射により硬化可能な材料である。
電離放射線硬化型材料としては、透明性、加工性、耐候性などの点から、アクリル系材料が好ましい。アクリル系材料は、(メタ)アクリロイル基を有する材料である。アクリル系材料としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルのような単官能又は多官能の(メタ)アクリレート化合物、多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの他にも、(メタ)アクリロイル基を有する各種の樹脂(ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等)を使用することができる。
【0019】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」のいずれか一方又は両方を示している。例えば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」のいずれか一方又は両方を示している。「(メタ)アクリル酸」とは「アクリル酸」と「メタクリル酸」のいずれか一方又は両方を示している。「(メタ)アクリロイル」とは「アクリロイル」と「メタクリロイル」のいずれか一方又は両方を示している。
【0020】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタン及びアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレート等のアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0021】
多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0022】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、グリセリンプロピレンオキサイド付加トリアクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の4官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0023】
多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物の例としては、共栄社化学社製のUA-306H、UA-306T、UA-306l等、日本合成化学社製のUV-1700B、UV-6300B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7640B、UV-7650B等、新中村化学社製のU-4HA、U-6HA、UA-100H、U-6LPA、U-15HA、UA-32P、U-324A等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl-1290、Ebecryl-1290K、Ebecryl-5129等、根上工業社製のUN-3220HA、UN-3220HB、UN-3220HC、UN-3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0024】
ハードコート層12に導電性を付与し、反射防止フィルムに帯電防止性能を持たせるために、四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含むアクリル系材料を用いてもよい。四級アンモニウムカチオン含有官能基は-Nの構造を有し、四級窒素原子(-N)とカチオン(X)を備えることで、ハードコート層12に導電性を発現させることができる。
四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含むアクリル系材料としては、例えば、四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含む多官能又は多官能の(メタ)アクリレート化合物、四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含む多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの他にも、(メタ)アクリロイル基及び四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含む各種の樹脂(ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等)を使用することができる。
【0025】
四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含むアクリル系材料を用いることにより、ハードコート層12上に安定して低屈折率層13を形成することができる。
四級アンモニウムカチオン含有官能基を有し(メタ)アクリロイル基を有さない材料と四級アンモニウムカチオン含有官能基を有さないアクリル系材料を用いてハードコート層12を形成することでハードコート層12に導電性を発現させることもできるが、この場合、四級アンモニウムカチオン含有官能基を含む材料が表面に偏析するおそれがある。四級アンモニウムカチオン含有官能基を含む材料が表面に偏析すると、ハードコート層上に低屈折率層形成用塗液を塗布した際に低屈折率層形成用塗液をはじいてしまうことがある。また、形成される低屈折率層13が白化してしまうことがある。
四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含むアクリル系材料を用いることにより、四級アンモニウムカチオン含有官能基を分子内に含むアクリル系材料がマトリックスを形成し、表面偏析を防ぐことができる。
【0026】
ハードコート層形成用組成物は、典型的には、電離放射線硬化型材料に加えて、光重合開始剤を含む。
光重合開始剤としては、例えば、2,2-エトキシアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ジベンゾイル、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、p-クロロベンゾフェノン、p-メトキシベンゾフェノン、ミヒラーケトン、アセトフェノン、2-クロロチオキサントン等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ハードコート層形成用組成物は、電離放射線硬化型材料及び光重合開始剤以外の他の成分をさらに含んでいてもよい。他の成分としては、例えば光増感剤、熱可塑性樹脂等が挙げられる。
光増感剤としては、例えば、トリエチルアミン、トリエタノールアミン、2-ジメチルアミノエタノール等の3級アミン、トリフェニルホスフィン等のアルキルフォスフィン系、β-チオジグリコール等のチオエーテル系等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0028】
熱可塑性樹脂としては、例えば、アセチルセルロース、ニトロセルロース、アセチルブチルセルロース、エチルセルロース、メチルセルロース等のセルロース誘導体、酢酸ビニル及びその共重合体、塩化ビニル及びその共重合体、塩化ビニリデン及びその共重合体等のビニル系樹脂、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール等のアセタール樹脂、アクリル樹脂及びその共重合体、メタクリル樹脂及びその共重合体等のアクリル系樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリアミド樹脂、線状ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂等が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
【0029】
ハードコート層12の厚さは、3μm以上が好ましく、5μm以上がより好ましく、また、10μm以下が好ましく、7μm以下がより好ましい。厚さが上記下限値以上であれば、十分な強度がより優れ、上記上限値以下であれば、塗工精度、取扱い性に優れる。厚さが10μmを超えると、硬化収縮による基材の反り、ゆがみ、基材折れが発生するおそれがある。
上記下限値及び上記上限値は適宜組み合わせることができる。例えば、3μm以上10μm以下であってよく、5μm以上7μm以下であってよい。
【0030】
(ハードコート層の形成方法)
ハードコート層12は、例えば、透明基材11上に、ハードコート層形成用組成物の塗膜を形成し、前記塗膜に電離放射線を照射して硬化する方法により形成できる。
塗膜の形成方法としては、透明基材11上に、ハードコート層形成用組成物及び液状媒体を含むハードコート層形成用塗液を湿式成膜法により塗布し、乾燥する方法が好ましい。
【0031】
ハードコート層形成用塗液は液状媒体として、透明基材11の表面を溶解又は膨潤させる溶剤を含むことが好ましい。例えば透明基材11がセルロース系フィルムである場合には、ハードコート層形成用塗液は、セルロース系フィルム表面を溶解又は膨潤させる溶剤を含むことが好ましい。
透明基材11の表面を溶解又は膨潤させる溶剤を含む塗液を用いてハードコート層12を形成することにより、透明基材11とハードコート層12の密着性を向上させることができる。また、透明基材成分とハードコート層成分が混在したハードコート層12を形成することができ、得られる反射防止フィルムが、干渉ムラが発生しにくいものとなる。
【0032】
セルロース系フィルム表面を溶解又は膨潤させる溶剤としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、1,4-ジオキサン、1,3-ジオキソラン、1,3,5-トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類;蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n-ペンチル、γ-プチロラクトン等のエステル類;メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種を単独で、又は2種類以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、酢酸メチル、酢酸エチル、メチルエチルケトン、アセチルアセトン、アセトン、シクロヘキサノンからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0033】
湿式成膜法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。特に薄い層を均一に形成できる点で、マイクログラビアコーティング法が好ましい。厚い層を形成する場合には、ダイコーティング法を用いることも好ましい。
【0034】
塗膜を硬化させるために照射する電離放射線としては、例えば、紫外線が挙げられる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100mJ/cm以上800mJ/cm以下である。
塗膜を硬化させる際に、電離放射線の照射に加え、加熱を施してもよい。
【0035】
<低屈折率層>
低屈折率層13は、ハードコート層12よりも低屈折率の層である。ハードコート層12上に低屈折率層13が積層されていることで、反射防止性能が発現する。
好ましくはハードコート層12の屈折率が1.5~1.7であり、低屈折率層13の屈折率が1.3~1.5未満である。低屈折率層13の屈折率が高いとハードコート層12との屈折率差が小さくなってしまうため、低屈折率層13の屈折率は低い方が望ましい。
ハードコート層12、低屈折率層13それぞれの屈折率は、臨界角法により測定される。
【0036】
低屈折率層13は、抗菌成分133を有する微細化セルロース132と、マトリックス134とを含む。低屈折率層13においてマトリックス134は連続相を構成している。抗菌成分133を有する微細化セルロース132は、マトリックス134に分散している。
低屈折率層13が抗菌成分133を有する微細化セルロース132を含むことで、透明性を損なうことなく、優れた耐擦傷性及び抗菌性を付与することができる。
【0037】
また、本実施形態の低屈折率層13は、低屈折率粒子131を含む。低屈折率粒子131は、マトリックス134に分散している。
低屈折率粒子131は、低屈折率層13の屈折率を調整する。低屈折率粒子131を含むことで、低屈折率粒子131を含まない場合に比べ、層の屈折率が低くなる。
なお、低屈折率層13は必ずしも低屈折率粒子131を含まなくてもよい。例えばマトリックス134を形成する材料によって屈折率を調整することもできる。
【0038】
低屈折率層13中、抗菌成分133を有する微細化セルロース132の含有量は、100質量部のマトリックス134に対して、0.1質量部以上200質量部以下が好ましく、10質量部以上100質量部以下がより好ましい。0.1質量部以上であると、微細化セルロース132により低屈折率層13に優れた耐擦傷性を付与することができる。また、200質量部以下であると、微細化セルロース132の屈折率による低屈折率層13の屈折率の上昇を抑制でき、低屈折率層13の屈折率を低くできる。
【0039】
低屈折率層13中、低屈折率粒子131の含有量は、100質量部のマトリックス134に対して、0.1質量部以上500質量部以下が好ましく、10質量部以上200質量部以下がより好ましい。0.1質量部以上であると、低屈折率粒子131による低屈折率層13の屈折率低減効果が得られやすい。また、500質量部以下であると、マトリックス134によって低屈折率粒子131を充分に固定化することができ、低屈折率層13を形成しやすい。
【0040】
(低屈折率粒子)
低屈折率粒子131の屈折率は、通常、低屈折率層13の屈折率よりも低い。低屈折率粒子131の屈折率は、1.4以下が好ましく、1.35以下がより好ましい。屈折率の下限は特に限定されないが、例えば1.25である。
低屈折率粒子131の屈折率は、臨界角法により測定される。
【0041】
低屈折率粒子131としては、低屈折材料からなる粒子、粒子内部に空隙を有する粒子等が挙げられる。
低屈折材料からなる粒子における低屈折材料としては、例えばLiF、MgF、3NaF・AlF及びAlF(いずれも、屈折率1.4)、NaAlF(氷晶石、屈折率1.33)等が挙げられる。低屈折材料からなる粒子は、粒子内部に空隙を有していても有していなくてもよい。
粒子内部に空隙を有する粒子にあっては、空隙の部分を空気の屈折率(≒1)とすることができるため、非常に低い屈折率を有する。粒子内部に空隙を有する粒子としては、例えば多孔質粒子、中空粒子等が挙げられる。粒子を構成する材料としては、例えばシリカが挙げられる。
【0042】
低屈折率粒子131の平均粒子径は、1nm以上100nm以下であることが好ましい。平均粒子径が100nm以下であると、レイリー散乱による光の反射、それに伴う低屈折率層13の白化が抑制され、反射防止フィルムの透明性が向上する傾向にある。一方、平均粒子径が1nm以上であると、低屈折率粒子131の凝集が抑制され、低屈折率層13における低屈折率粒子131の分散均一性が向上する傾向にある。
平均粒子径は、動的光散乱法により測定される。
【0043】
(抗菌成分を有する微細化セルロース)
「微細化セルロース」は、液状媒体に分散させた状態において、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースである。
微細化セルロースは、高強度、高弾性率、高結晶性、低熱線膨張係数といったセルロースの特徴に加え、微細化されていることにより、高い透明性を有する。
【0044】
微細化セルロース132としては、マトリックス134の補強の点から、繊維状のものが好ましい。繊維状の微細化セルロースは、セルロースナノファイバーとも称される。
【0045】
繊維状の微細化セルロース132の数平均短軸径は、1nm以上1000nm以下が好ましく、2nm以上500nm以下がより好ましい。数平均短軸径が1nm以上であると、高結晶性の剛直な微細化セルロース繊維構造をとることができ、低屈折率層13の強度が向上する。一方、短軸径において数平均短軸径が1000nm以下であると、低屈折率層13の表面平滑性が向上し、反射防止フィルムの透明性を損ないにくい。
【0046】
繊維状の微細化セルロース132の数平均長軸径は、数平均短軸径の5倍以上が好ましい。数平均長軸径が数平均短軸径の5倍以上であると、マトリックス134内で微細化セルロース132同士の絡み合いによるネットワーク構造が形成されやすくなり、補強効果が向上する。数平均長軸径の上限に特に制限はないが、例えば、数平均短軸径の1000倍以下である。
【0047】
繊維状の微細化セルロースの数平均短軸径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察及び原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の短軸径(最小径)を測定し、その平均値として求められる。
繊維状の微細化セルロースの数平均長軸径は、例えば、透過型電子顕微鏡観察及び原子間力顕微鏡観察により100本の繊維の長軸径(最大径)を測定し、その平均値として求められる。
【0048】
微細化セルロース132は、イオン性官能基を有することが好ましい。抗菌成分133としては、イオン性のものが多い。微細化セルロース132がイオン性官能基を有することにより、微細化セルロース132が抗菌成分133を吸着しやすくなる。
イオン性官能基は、化学改質によりセルロース結晶表面に導入される。
【0049】
イオン性官能基としては、カチオン性官能基、アニオン性官能基等が挙げられる。微細化セルロース132はイオン性官能基として、カチオン性官能基のみを有してもよく、アニオン性官能基のみを有してもよく、これらの両方を有してもよい。抗菌成分133のイオン性に応じて適宜選定できる。抗菌成分133がカチオン性の抗菌成分を含む場合は、アニオン性官能基を有することが好ましい。抗菌成分133がアニオン性の抗菌成分を含む場合は、カチオン性官能基を有することが好ましい。
【0050】
イオン性官能基としては、カチオン性の抗菌成分を吸着しやすい点から、アニオン性官能基が好ましい。カチオン性の抗菌成分は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなど、炭素鎖を持つ界面活性剤が多い。かかる抗菌成分をセルロース表面に吸着させることで、微細化セルロースに抗菌性能を付与するとともに、微細化セルロースの有機溶剤中での分散性が向上する。
【0051】
アニオン性官能基としては、例えば、カルボキシ基、リン酸基及びスルホ基から選ばれる1種以上が挙げられる。中でも、セルロース結晶表面への選択的な導入のしやすさから、カルボキシ基が好ましい。
【0052】
微細化セルロース132の乾燥質量当たりのイオン性官能基の含有量は、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。イオン性官能基の含有量が上記下限値以上であると、抗菌成分133の吸着量が増え、抗菌性をより高められる。イオン性官能基の含有量が上記上限値以下であると、高結晶性の剛直な繊維構造を保つことができ、低屈折率層13の強度が向上し、耐擦傷性をより高められる。
ここで、微細化セルロース132の乾燥質量は、微細化セルロース132を120℃で2時間乾燥させた後の質量を意味する。
イオン性官能基の含有量は、電気伝導度滴定により求められる。
【0053】
抗菌成分133としては、特に限定されないが、微細化セルロース132がイオン性官能基を有する場合、イオン性官能基により吸着可能な抗菌成分が好ましい。
アニオン性官能基により吸着可能な抗菌成分133としては、例えばカチオン性であるアンモニウム塩基、ホスホニウム塩基、スルホニウム塩基等のオニウム塩、フェニルアミド基、ビグアニド基等の抗菌活性基を有する化合物が挙げられる。
【0054】
抗菌成分133を有する微細化セルロース132の製造方法は特に限定されない。
例えば、イオン性官能基としてカルボキシ基を有し、カルボキシ基により抗菌成分133を吸着した微細化セルロース132は、以下のようにして製造することができる。
【0055】
まず、セルロース原料を酸化処理してカルボキシ基を導入する(酸化工程)。
セルロース原料の種類や結晶構造は特に限定されない。具体的には、セルロースI型結晶からなる原料としては、例えば、木材系天然セルロースや非木材系天然セルロースを用いることができる。非木材系天然セルロースとしては、コットンリンター、竹、麻、バガス、ケナフ、バクテリアセルロース、ホヤセルロース、バロニアセルロース等が挙げられる。セルロースII型結晶からなる原料としては、例えば、レーヨン繊維、キュプラ繊維に代表される再生セルロースが挙げられる。
材料調達の容易さから、木材系天然セルロースを原料とすることが好ましい。木材系天然セルロースとしては、特に限定されず、例えば、針葉樹パルプや広葉樹パルプ、古紙パルプなど、一般的にセルロースナノファイバーの製造に用いられるものを用いることができる。精製及び微細化のしやすさから、針葉樹パルプが好ましい。
【0056】
酸化処理の方法は特に限定されず、公知の方法を適宜採用できる。例えば、高濃度アルカリ水溶液中でセルロース原料をモノクロロ酢酸又はモノクロロ酢酸ナトリウムと反応させることによりカルボキシメチル化を行う方法を用いてもよい。オートクレーブ中でガス化したマレイン酸やフタル酸等の無水カルボン酸系化合物とセルロース原料とを直接反応させてカルボキシ基を導入する方法を用いてもよい。水系の比較的温和な条件で、可能な限り構造を保ちながら、アルコール性一級炭素の酸化に対する選択性が高い、TEMPOをはじめとするN-オキシル化合物を用いてセルロース原料を酸化する方法を用いてもよい。カルボキシ基導入部位の選択性及び環境負荷低減の観点から、N-オキシル化合物を用いた酸化が好ましい。
【0057】
N-オキシル化合物としては、例えば、TEMPO(2,2,6,6-テトラメチルピペリジニル-1-オキシラジカル)、2,2,6,6-テトラメチル-4-ヒドロキシピペリジン-1-オキシル、4-メトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-エトキシ-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル、4-アセトアミド-2,2,6,6-テトラメチルピペリジン-N-オキシル等が挙げられる。そのなかでも、反応性が高い点で、TEMPOが好ましい。
N-オキシル化合物の使用量は、触媒としての量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して0.01~5.0質量%程度である。
【0058】
N-オキシル化合物を用いた酸化方法としては、例えばセルロース原料を水中に分散させ、N-オキシル化合物の共存下で酸化処理する方法が挙げられる。
このとき、N-オキシル化合物とともに、共酸化剤を併用することが好ましい。この場合、反応系内において、N-オキシル化合物が順次共酸化剤により酸化されてオキソアンモニウム塩が生成し、上記オキソアンモニウム塩によりセルロースが酸化される。この酸化処理によれば、温和な条件でも酸化反応が円滑に進行し、カルボキシ基の導入効率が向上する。酸化処理を温和な条件で行うと、セルロースの結晶構造を維持しやすい。
【0059】
共酸化剤としては、例えば、ハロゲン、次亜ハロゲン酸、亜ハロゲン酸や過ハロゲン酸、又はそれらの塩、ハロゲン酸化物、窒素酸化物、過酸化物など、酸化反応を推進することが可能であれば、いずれの酸化剤も用いることができる。入手の容易さや反応性から、次亜塩素酸ナトリウムが好ましい。
共酸化剤の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して1~200質量%程度である。
【0060】
N-オキシル化合物及び共酸化剤とともに、臭化物及びヨウ化物からなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに併用してもよい。これにより、酸化反応を円滑に進行させることができ、カルボキシ基の導入効率を改善することができる。かかる化合物としては、臭化ナトリウム又は臭化リチウムが好ましく、コストや安定性から、臭化ナトリウムがより好ましい。
かかる化合物の使用量は、酸化反応を促進することができる量でよく、特に限定されない。通常、酸化処理するセルロース原料の固形分に対して1~50質量%程度である。
【0061】
酸化反応の反応温度は、4℃以上80℃以下が好ましく、10℃以上70℃以下がより好ましい。酸化反応の反応温度が4℃未満であると、試薬の反応性が低下し反応時間が長くなってしまう傾向がある。酸化反応の反応温度が80℃を超えると、副反応が促進して試料であるセルロースが低分子化し、高結晶性の剛直な構造が崩壊するおそれがある。
【0062】
酸化処理の反応時間は、反応温度、所望のカルボキシ基量等を考慮して適宜設定でき、特に限定されないが、通常、10分~5時間程度である。
【0063】
酸化反応時の反応系のpHは特に限定されないが、9~11が好ましい。pHが9以上であると反応を効率良く進めることができる。pHが11を超えると副反応が進行し、試料であるセルロースの分解が促進されてしまうおそれがある。また、酸化処理においては、酸化が進行するにつれて、カルボキシ基が生成することにより系内のpHが低下してしまうため、酸化処理中、反応系のpHを9~11に保つことが好ましい。反応系のpHを9~11に保つ方法としては、例えば、pHの低下に応じてアルカリ水溶液を添加する方法が挙げられる。
【0064】
アルカリ水溶液としては、例えば、水酸化ナトリウム水溶液、水酸化リチウム水溶液、水酸化カリウム水溶液、アンモニア水溶液、水酸化テトラメチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラエチルアンモニウム水溶液、水酸化テトラブチルアンモニウム水溶液、水酸化ベンジルトリメチルアンモニウム水溶液などの有機アルカリなどが挙げられる。コストなどの面から、水酸化ナトリウム水溶液が好ましい。
【0065】
N-オキシル化合物による酸化反応は、例えば、反応系にアルコールを添加することにより停止させることができる。このとき、反応系のpHは上記の範囲内に保つことが好ましい。
添加するアルコールとしては、例えば、反応をすばやく終了させるため、メタノール、エタノール、プロパノールなどの低分子量のアルコールが好ましく、反応により生成される副産物の安全性などから、エタノールが特に好ましい。
【0066】
セルロースに導入するカルボキシ基の量としては、0.1mmol/g以上5.0mmol/g以下が好ましく、0.5mmol/g以上2.0mmol/g以下がより好ましい。ここで、カルボキシ基量が0.1mmol/g以上であると、セルロースミクロフィブリル間に浸透圧効果による溶媒進入作用が働き、セルロースを微細化して均一に分散させやすくなる。また、微細化セルロース132に付与することのできる抗菌成分が多くなり、抗菌性を発現させやすくなる。一方、5.0mmol/g以下であると、化学処理に伴う副反応によるセルロースミクロフィブリルの低分子化を抑制でき、高結晶性の剛直な構造を維持でき、マトリックス134に含有させた際に強度の向上効果が得られやすい。
【0067】
酸化反応の停止により酸化工程を終了した後、生成物をろ過により反応液中から回収する。反応の停止時、セルロースに導入されたカルボキシ基は、反応液中に存在するカチオンに由来する金属イオンを対イオンとした塩を形成している。
酸化処理後のセルロースの回収方法としては、
(a)カルボキシ基が塩を形成したままろ別する方法、
(b)反応液に酸を添加して系内を酸性下に調整し、カルボン酸としてろ別する方法、
(c)有機溶媒を添加して凝集させた後にろ別する方法、
が挙げられる。その中でも、ハンドリング性や回収効率、廃液処理の観点から、(b)のカルボン酸として回収する方法が好ましい。また、後述する対イオン置換工程において、対イオンとして金属イオンを有しないほうが、副生成物の生成を抑制でき、置換効率に優れる点でも、(b)のカルボン酸として回収する方法が好ましい。
【0068】
塩を形成したままろ別する方法を用いて回収した場合、金属イオンの含有率が5質量%以上であるのに対し、カルボン酸としてからろ別する方法により回収した場合、1質量%以下となる。
なお、酸化反応後のセルロース中の金属イオン含有量は、様々な分析方法で調べることができる。例えば、電子線マイクロアナライザーを用いたEPMA法、蛍光X線分析法の元素分析によって簡易的に調べることができる。
【0069】
さらに回収したセルロースは洗浄を繰り返すことにより精製でき、触媒や副生成物を除去することができる。このとき、塩酸等を用いてpH3以下の酸性条件に調製した洗浄液で洗浄を繰り返した後に、純水で洗浄を繰り返すことにより、残存する金属イオン及び塩類の量を低減することができる。
【0070】
次に、カルボキシ基を導入したセルロースの懸濁液にカチオン性の抗菌成分133を添加することにより、セルロース表面のカルボキシ基の対イオンをカチオン性の抗菌成分133に置換する(対イオン置換工程)。
【0071】
抗菌成分133の添加量としては、セルロースに導入されたカルボキシ基に対して0.8当量以上2当量以下が好ましく、1当量以上1.8当量以下がより好ましい。添加量が上記範囲内であると、過剰量の抗菌成分を添加することなく対イオン交換できる。0.8当量未満でもセルロースをある程度分散させることは可能だが、分散処理により長時間・高エネルギーを要し、得られる繊維の繊維径も本発明のものより大きくなり、分散体の均質性が低下するおそれがある。一方、2当量を超えると、過剰量の抗菌成分により分解や分散媒への親和性が低下するおそれがある。
【0072】
カチオン性の抗菌成分133でセルロース表面のカルボキシ基の対イオンを置換することで、セルロースに抗菌性能を付与するとともに、セルロースの有機溶剤中での分散性を高められる。具体的には、カルボキシ基の対イオンを抗菌成分133で置換したセルロース修飾体は、金属イオンを対イオンとするセルロース修飾体に比べ、低エネルギー、短時間で分散処理を行うことができ、かつ最終的に得られる分散体の均質性も高い。これは、抗菌成分133の方が、金属イオンよりもイオン径が大きいため、分散媒中で微細セルロース繊維同士をより引き離す効果が大きいためと考えられる。
【0073】
カルボキシ基の対イオンを抗菌成分133で置換することによって、本来親水性の高いセルロースを、水を含まない有機溶剤中で微細化繊維状として分散し分散性を維持することができる。その原理としては、以下のように考えられる。
まず、抗菌成分133の解離性が極めて高いことが挙げられる。さらに、カチオン性の抗菌成分133は、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム、塩化ジアルキルジメチルアンモニウムなど炭素鎖を持つ界面活性剤が多い。抗菌成分133が有する炭化水素基が、有機溶剤に対し、疎水的な相互作用を有する。これらの効果により、有機溶剤中でもイオンが解離し、酸化セルロースのカルボキシ基の電離と炭化水素基の浸透圧効果が働き、有機溶剤中での分散を可能としていると考えられる。
【0074】
酸化処理にてカルボキシ基を導入したセルロースを分散体とする場合には、セルロースと分散媒を混合させて後述の方法を用いて分散処理する(分散工程)。これにより、微細化セルロース132の分散体が調製される。
分散工程の前に、必要に応じて、酸化処理にてカルボキシ基を導入したセルロースを溶媒置換する(溶媒置換工程)。セルロースの酸化工程において反応媒体が水であること、反応後の洗浄に用いる洗浄剤が主に水であることから、酸化処理後のセルロースは水を包含した湿潤状態として回収される。そのため、分散媒として水以外の有機溶剤を含む場合において、分散媒中に不純物となる水を除去する目的や、セルロースと分散媒を予め親和させ分散性を向上させる目的、或いは分散媒不溶成分を除去する目的により、溶媒置換を行うことが好ましい。
【0075】
対イオン置換工程の前に酸化セルロースを有機溶剤にて溶媒置換することも可能であるが、包含された水が排除されることによりカルボキシ基の荷電反発が遮蔽されることや、カルボン酸の場合に荷電反発を生じないことから、セルロースが凝集してしまい、その後の分散工程に悪影響が出る場合がある。
そこで、有機溶剤にて溶媒置換する場合は、セルロースのカルボキシ基の対イオンを抗菌成分133とする対イオン置換を行ったセルロース修飾体を用いることが好ましい。これにより、溶媒置換後においてもカルボキシ基による荷電反発を維持出来るため、セルロースの繊維の凝集を抑制することができる。さらに、抗菌成分133を吸着することにより有機溶媒との親和性が向上し、水を排出しやすく溶媒置換を効率的に行うことができる。
【0076】
溶媒置換する方法としては、溶媒置換する有機溶剤や、用いる抗菌成分133の特性、その他所望の特性に応じて適宜選択される。酸化処理し洗浄したセルロースを抗菌成分133により対イオン置換した後に脱水或いは乾燥したものを用いてもよく、酸化処理し洗浄したセルロースを脱水或いは乾燥した後に抗菌成分133を用いてもよい。
脱水方法についての限定はなく、遠心分離機や各種フィルタなど適宜選択することができる。
乾燥方法についても限定はなく、熱風乾燥、赤外線乾燥、真空乾燥、凍結乾燥など適宜選択することができる。乾燥に伴う凝集や熱によるセルロースの劣化等を抑制する目的で、各種溶剤や添加剤を適宜添加することができる。
対イオン置換したセルロース修飾体は、溶媒置換する有機溶剤中に直接投入してもよく、水を含む有機溶剤中に投入して順次溶媒置換してもよい。
溶媒置換に用いる有機溶剤としては、セルロースの凝集や変性を生じない範囲において、目的に応じて適宜選択することができる。また、分散工程で使用される分散媒と同一であっても構わない。
【0077】
分散工程により、カルボキシ基を導入したセルロースやセルロース修飾体が微細化セルロース132へと調製される。言い換えると、本実施形態においては、カルボキシ基を導入したセルロースやセルロース修飾体は微細化セルロース132に調製される段階より以前のセルロースの一形態として記載している。
【0078】
分散処理において、セルロースに導入されたカルボキシ基の対イオンを抗菌成分133に置換したセルロース修飾体を用いると、有機溶媒に対する親和性が高いため、分散媒としてアルコール等の有機溶媒を用いた際にも、微細化セルロース分散体を調製することができる。さらに、必要に応じて、セルロース修飾体を有機溶媒中で分散処理した微細化セルロース分散体に、分散処理後に水を添加することも可能である。また、予め溶媒置換することによってセルロース修飾体と分散媒との親和性を向上することができるため、水を含まない有機溶媒単体中でも凝集することなく均質な微細化セルロース分散体を得ることができる。
【0079】
分散媒として用いる有機溶剤としては、例えばメタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、アセトン、酢酸エチル、N、N-ジメチルホルムアミド(DMF)、N、N-ジメチルアセトアミド(DMAc)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチル-2-ピロリドン(NMP)等が挙げられ、何れか1種、またはこれらの内何れかの2種類以上を混ぜたものが挙げられる。
なお、水酸化ナトリウム等の無機アルカリを用いると、溶媒中での分散処理や分散処理後の溶媒との混合は困難である。無機アルカリによる金属イオンを含んだ微細化セルロース分散体では、有機溶媒を添加するとセルロース繊維が凝集し、分散液の凝集白濁、不均一化を起してしまう。さらに、溶媒置換工程を経ずに水を含まない有機溶媒単体を分散媒として用いると、セルロースの繊維の凝集がより強く働き均質な分散体を得にくくなる。
【0080】
分散媒として用いる有機溶剤の誘電率は25℃において15ε以上80ε以下であることが好ましい。誘電率が80ε(20℃)の水よりも、誘電率が高い物質は一般的利用において現実的ではない。また、誘電率が15εより低い場合には、セルロースが分散体として分散状態を保持できずに凝集してしまう。この一因として、セルロースのカルボキシ基の対イオンとして存在する抗菌成分133とカルボン酸のクーロン力が強くなり過ぎて、分散媒中での荷電反発が働かなくなることが挙げられる。
【0081】
分散工程における分散処理の方法としては、既に知られている各種分散処理が可能である。例えば、ホモミキサー処理、回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理、ナノジナイザー処理、ディスク型レファイナー処理、コニカル型レファイナー処理、ダブルディスク型レファイナー処理、グラインダー処理、ボールミル処理、ニ軸混練機による混練処理、水中対向処理等がある。この中でも、微細化効率の面から回転刃つきミキサー処理、高圧ホモジナイザー処理、超高圧ホモジナイザー処理、超音波ホモジナイザー処理が好適である。なお、これらの処理のうち、二つ以上の処理方法を組み合わせて分散を行うことも可能である。
【0082】
分散工程における分散媒に対するセルロースの固形分濃度は、分散処理において支障がない範囲において適宜調整することができる。
分散処理後に濃縮処理を行っても構わない。濃縮方法については特に限定はないが、セルロースの乾燥による凝集や分解反応による特性低下が問題にならない範囲において、遠心分離や減圧、真空蒸発等の方法を適宜選択することができる。
【0083】
上記のようにして、表面に抗菌成分133が吸着し、有機溶媒中において均一に分散し、その構造の少なくとも一辺がナノメートルオーダーになるまで微細化されたセルロースの分散体(微細化セルロース分散液)が得られる。
【0084】
(マトリックス)
マトリックス134としては、例えば、電離放射線硬化型材料の硬化物、熱硬化型材料の硬化物が挙げられる。
マトリックス134が離放射線硬化型材料の硬化物又は熱硬化型材料の硬化物である場合、低屈折率層13は、抗菌成分133を有する微細化セルロース132と、電離放射線硬化型材料又は熱硬化型材料とを含む低屈折率層形成用組成物の硬化物からなる層であり得る。
【0085】
マトリックス134を形成する電離放射線硬化型材料としては、透明性、加工性、耐候性などの点から、アクリル系材料が好ましい。アクリル系材料としては、例えば、多価アルコールの(メタ)アクリル酸エステルのような単官能又は多官能の(メタ)アクリレート化合物、多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。これらの他にも、(メタ)アクリロイル基を有する各種の樹脂(ポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等)を使用することができる。
【0086】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N-ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、3-メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチル-2-ヒドロキシプロピルフタレート、2-ヒドロキシ-3-フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2-(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2-アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0087】
多官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2官能の(メタ)アクリレート化合物、3官能以上の(メタ)アクリレート化合物が挙げられる。
2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート等のジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0088】
3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2-ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物;これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε-カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0089】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層12の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能のウレタン(メタ)アクリレートが好ましい。
多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物は、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有(メタ)アクリレートを反応させることによって得られる。
多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物の例としては、共栄社化学社製のUA-306H、UA-306T、UA-306l等、日本合成化学社製のUV-1700B、UV-6300B、UV-7600B、UV-7605B、UV-7640B、UV-7650B等、新中村化学社製のU-4HA、U-6HA、UA-100H、U-6LPA、U-15HA、UA-32P、U-324A等、ダイセルユーシービー社製のEbecryl-1290、Ebecryl-1290K、Ebecryl-5129等、根上工業社製のUN-3220HA、UN-3220HB、UN-3220HC、UN-3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0090】
マトリックス134を形成する熱硬化型材料としては、例えば、ケイ素アルコキシドの加水分解物が挙げられる。
ケイ素アルコキシドの加水分解物は、ケイ素アルコキシドを原料として得られるものであればよく、例えばケイ素アルコキシドを塩酸にて加水分解することで得られる。
【0091】
ケイ素アルコキシドとしては、例えば、下記式(1)で示される化合物が挙げられる。
Si(OR4-x ・・・式(1)
式中、Rはアルキル基を示し、Rはアルキル基、フルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基を示し、xは0~3の整数である。
xが0~2の整数である場合、(4-x)個のRは互いに異なっていてもよい。xが2又は3である場合、x個のRは互いに異なっていてもよい。
【0092】
式(1)で表されるケイ素アルコキシドとしては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ-iso-プロポキシシラン、テトラ-n-プロポキシシラン、テトラ-n-ブトキシシラン、テトラ-sec-ブトキシシラン、テトラ-tert-ブトキシシラン、テトラペンタエトキシシラン、テトラペンタ-iso-プロポキシシラン、テトラペンタ-n-プロキシシラン、テトラペンタ-n-ブトキシシラン、テトラペンタ-sec-ブトキシシラン、テトラペンタ-tert-ブトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジプロポキシシラン、ジメチルジブトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、1H,1H,2H,2H-パーフルオロオクチルトリメトキシシラン等が挙げられる。
【0093】
これらのケイ素アルコキシドは1種を単独で用いてもよく2種以上を併用してもよい。
ケイ素アルコキシドとしては、式(1)中のxが0~2の整数であり、Rがアルキル基である化合物(以下、化合物(1a)ともいう)が好ましい。
化合物(1a)と、式(1)中のxが1~3の整数であり、Rがフルオロアルキル基又はフルオロアルキレンオキサイド基を有する非反応性官能基である化合物(以下、化合物(1b)ともいう)とを併用することも好ましい。化合物(1b)をさらに含有することにより、反射防止フィルムの低屈折率層表面に防汚性を付与することができ、さらに、低屈折率層13の屈折率をさらに低下することができる。
【0094】
低屈折率層13は、必要に応じて、各種の添加剤を含んでいてもよい。
添加剤としては、例えば表面調整剤、レベリング剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、光重合開始剤、光増感剤等が挙げられる。
【0095】
マトリックス134に電離放射線硬化型材料を用いる場合には、通常、光重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、例えば、アセトフェノン類、ベンゾイン類、ベンゾフェノン類、ホスフィンオキシド類、ケタール類、アントラキノン類、チオキサントン類等が挙げられる。
【0096】
低屈折率層は、フッ素系材料、シリコーン系材料又はこれらに由来する構造を含むことが好ましい。これにより、低屈折率層13の表面に防汚性を付与することができ、反射防止フィルムをディスプレイ表面に好適に用いることができる。
フッ素系材料としては、例えば前記した化合物(1b)の加水分解物が挙げられる。
シリコーン系材料としては、例えばアルキルポリエーテル変性シリコーンオイル、アミノ変性シリコーンオイル、エポキシ変性シリコーンオイル等が挙げられる。
【0097】
低屈折率層13の膜厚(d)は、その膜厚(d)に低屈折率層13の屈折率(n)をかけることによって得られる光学膜厚(nd)が可視光の波長の1/4と等しくなるように設計される。
【0098】
(低屈折率層の形成方法)
低屈折率層13は、例えば、ハードコート層12上に、低屈折率層形成用組成物の塗膜を形成し、前記塗膜を硬化する方法により形成できる。
【0099】
低屈折率層形成用組成物は、抗菌成分133を有する微細化セルロース132と、電離放射線硬化型材料又は熱硬化型材料とを含む。
低屈折率層形成用組成物は、低屈折率粒子131、各種の添加剤を含んでいてもよい。
【0100】
塗膜の形成方法としては、ハードコート層12上に、低屈折率層形成用組成物及び液状媒体を含む低屈折率層形成用塗液を湿式成膜法により塗布し、乾燥する方法が好ましい。
低屈折率層を形成する方法としては、湿式成膜法による方法と、真空蒸着法やスパッタリング法やCVD法といった真空中で反射防止層を形成する真空成膜法による方法に分けられる。真空成膜法は、湿式成膜法と比較し、コストや製造スピードが劣る場合が多い。低屈折率層を湿式成膜法により形成することにより、安価に反射防止フィルムを製造することができる。
【0101】
低屈折率層形成用塗液の液状媒体は、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼン等の芳香族炭化水素類、n-ヘキサン等の炭化水素類、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等のエーテル類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトン、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン等のケトン類、蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n-ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酢酸n-ペンチル、γ-プチロラクトン等のエステル類、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール類、水等の中から塗工適正等を考慮して適宜選択される。
【0102】
低屈折率層形成用塗液は、例えば、抗菌成分133を有する微細化セルロース132が液状媒体に分散した分散体と、電離放射線硬化型材料又は熱硬化型材料とを混合することにより調製できる。このとき、必要に応じて、さらなる液状媒体、低屈折率粒子131、各種の添加剤を混合してもよい。
【0103】
湿式成膜法としては、ディップコーティング法、スピンコーティング法、フローコーティング法、スプレーコーティング法、ロールコーティング法、グラビアロールコーティング法、エアドクターコーティング法、プレードコーティング法、ワイヤードクターコーティング法、ナイフコーティング法、リバースコーティング法、トランスファロールコーティング法、マイクログラビアコーティング法、キスコーティング法、キャストコーティング法、スロットオリフィスコーティング法、カレンダーコーティング法、ダイコーティング法等が挙げられる。特に薄い層を均一に形成できる点で、マイクログラビアコーティング法が好ましい。厚い層を形成する場合には、ダイコーティング法を用いることも好ましい。
【0104】
低屈折率層形成用組成物が電離放射線硬化型材料を含む場合、塗膜に電離放射線を照射することにより塗膜を硬化させることができる。塗膜を硬化させる際に、電離放射線の照射に加え、加熱を施してもよい。
塗膜を硬化させるために照射する電離放射線としては、例えば、紫外線が挙げられる。紫外線照射の場合、高圧水銀ランプ、ハロゲンランプ、キセノンランプ、フュージョンランプ等を使用することができる。紫外線照射量は、通常100mJ/cm以上800mJ/cm以下である。
低屈折率層形成用組成物が熱硬化型材料を含む場合、塗膜は、塗膜を加熱することにより塗膜を硬化させることができる。
【0105】
〔反射防止フィルム付偏光板〕
図2に、一実施形態に係る反射防止フィルム付偏光板の模式断面図を示す。なお、図2においては、低屈折率層13中の抗菌成分133を有する微細化セルロース132、マトリックス134、低屈折率粒子131等の記載は省略している(以下同様)。
本実施形態の反射防止フィルム付偏光板200は、図2に示すように、偏光板2と、反射防止フィルム1とを備えている。反射防止フィルム1は、透明基材11の他方の面側、つまりハードコート層12及び低屈折率層13が積層されていない面側を偏光板2に向けて配置されている。
偏光板2は、透明基材21の一方の面側に偏光層23を備えている。したがって、透明基材21と反射防止フィルム1の透明基材11との間に偏光層23が挟持されている。
本実施形態の反射防止フィルム付偏光板200は、ディスプレイ部材、画像装置の一部として用いることができる。
【0106】
〔透過型液晶ディスプレイ〕
図3に、一実施形態に係る透過型液晶ディスプレイの模式断面図を示す。
図3の透過型液晶ディスプレイは、観察側(図3中の上側)から、反射防止フィルム付偏光板200、液晶セル3、第2の偏光板4及びバックライトユニット5をこの順に備えている。
反射防止フィルム付偏光板200は、反射防止フィルム1側を観察者側に向けて配置されている。
図3の透過型液晶ディスプレイは、反射防止フィルム1の低屈折率層13側がディスプレイ表面となる。
【0107】
液晶セル3は、例えば、一方の透明基材に電極を備え、もう一方の透明基材に電極及びカラーフィルターを備え、両電極間に液晶が封入された構造となっている。
第2の偏光板4は、一対の透明基材41,42と、それらの間に挟持された偏光層43とを備えている。
バックライトユニット5は、例えば、光源と光拡散板とを備えている。
【0108】
図4に、他の一実施形態に係る透過型液晶ディスプレイの模式断面図を示す。
図4の透過型液晶ディスプレイは、観察側(図4中の上側)から、反射防止フィルム1、第1の偏光板6、液晶セル3、第2の偏光板4及びバックライトユニット5をこの順に備えている。
反射防止フィルム1は、透明基材11の他方の面側、つまりハードコート層12及び低屈折率層13が積層されていない面側を第1の偏光板6に向けて配置されている。
図4の透過型液晶ディスプレイは、反射防止フィルム1の低屈折率層13側がディスプレイ表面となる。
【0109】
第1の偏光板6は、一対の透明基材61,62と、それらの間に挟持された偏光層63とを備えている。
図3の透過型液晶ディスプレイでは、反射防止フィルム1の透明基材11が、第1の偏光板(偏光板2)の観察者側の透明基材を兼ねているが、図4の透過型液晶ディスプレイでは、反射防止フィルム1の透明基材11とは別に、第1の偏光板の観察者側の透明基材を備えている。
【0110】
上記実施形態の透過型液晶ディスプレイにあっては、他の機能性部材を備えていてもよい。他の機能性部材としては、例えば、バックライトから発せられる光を有効に使うための、拡散フィルム、プリズムシート、輝度向上フィルムや、液晶セルや偏光板の位相差を補償するための位相差フィルムが挙げられる。ただし、本発明の透過型液晶ディスプレイはこれらに限定されるものではない。
【実施例0111】
以下、実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。「部」は「質量部」を意味する。
【0112】
<実施例1>
以下の手順で、実施例1に係る反射防止フィルムを作製した。
【0113】
(ハードコート層形成用塗液の調製)
ジペンタエリスリトールトリアクリレート(DPEA)10部、ペンタエリスリトールテトラアクリレート(PETA)10部、ウレタンアクリレート(商品名:UA-306T、共栄社化学株式会社製)30部、光重合開始剤(商品名:Omnirad184(Omn.184)、IGM Resins B.V.製)2.5部、溶剤としてメチルエチルケトン(MEK)50部、酢酸ブチル50部を混合してハードコート層形成用塗液を調製した。
【0114】
(低屈折率層形成用塗液の調製)
以下の製造方法により微細化セルロース分散体を作製した。
【0115】
「セルロース原料の酸化」
乾燥質量10gの漂白クラフトパルプを2Lのガラスビーカー中イオン交換水500mL中で一晩静置し、パルプを膨潤させた。ここに0.1gのTEMPOと1gの臭化ナトリウムを添加して攪拌し、パルプ懸濁液とした。さらに攪拌しながらセルロース重量当たり5mmol/gの次亜塩素酸ナトリウムを添加した。この際、約1Nの水酸化ナトリウム水溶液を添加してパルプ懸濁液のpHを約10.5に保持した。その後、2時間反応させ、エタノール10gを添加して反応を停止し、セルロースにカルボキシ基が導入された酸化セルロースを得た。なお、この際導入されたカルボキシ基は反応媒中に残存する反応試薬に由来するナトリウムイオンを対イオンとした塩を形成する。
続いて0.5Nの塩酸を滴下してpHを2まで低下させた。ガラスフィルターを用いてセルロースをろ別し、さらに0.05Nの塩酸で3回洗浄してカルボキシ基をカルボン酸とした後に純水で5回洗浄し、固形分濃度20%の湿潤状態の酸化セルロースを得た。得られた酸化セルロースは、水酸化ナトリウムによる中和滴定から、セルロースの乾燥質量当たりのカルボキシ基量が1.6mmol/gと算出された。
【0116】
「カルボキシ基の対イオン置換」
上記により調製した酸化セルロースに、固形分濃度5質量%となるよう水を加えて懸濁液とし、ここに抗菌成分として塩化ベンザルコニウム(BAC)を酸化セルロースのカルボキシ基量に対して1.2当量加えた。2時間攪拌した後ガラスフィルターを用いて酸化セルロースをろ別し、対イオン置換酸化セルロースを得た。
【0117】
「溶剤置換」
上記により対イオン置換した酸化セルロースを、置換溶剤となる有機溶剤としてエタノールを用いて溶剤置換した。すなわち体積分率において水と有機溶剤が2対1となるように混合した有機溶剤の水溶液に投入し、30分間攪拌した後にガラスフィルターを用いて酸化セルロースをろ別し回収した。続いて、同様にして水と有機溶剤が1対1とした有機溶剤の水溶液に投入して30分間攪拌してろ別し回収した後、有機溶剤にて3回洗浄・回収を繰り返すことにより有機溶剤を包含した状態の酸化セルロースを得た。
【0118】
「分散工程」
溶剤置換した酸化セルロースを分散媒となる有機溶剤であるエタノールに加え、ミキサー(大阪ケミカル(株)、アブソルートミル、14,000rpm)を用いて1時間処理することにより固形分濃度3.0質量%の微細化セルロース分散体を得た。
【0119】
得られた微細化セルロース分散体30部、EO変性ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(商品名:DPEA-12、日本化薬株式会社製)2.0部、多孔質シリカ微粒子分散液(平均粒子径60nm、固形分20%、溶剤:メチルイソブチルケトン)15部、光重合開始剤(商品名:Omnirad184(Omn.184)、IGM Resins B.V.製)0.1部、アルキルポリエーテル変性シリコーンオイル(商品名:TSF4460、GE東芝シリコーン株式会社製:)0.2部を、溶剤であるメチルイソブチルケトン80部で希釈して低屈折率層形成用塗液を調製した。
【0120】
(ハードコート層の形成)
トリアセチルセルロースフィルム(富士フィルム株式会社製:膜厚60μm)の片面にハードコート層形成用塗液をアプリケーターにより塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥した。乾燥後、形成された塗膜に対し、紫外線照射装置(フュージョンUVシステムズ・ジャパン株式会社製、光源Hバルブ)を用いて照射線量200mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚5μmの透明なハードコート層を形成した。
【0121】
(低屈折率層の形成)
上記方法にて形成したハードコート層上に低屈折率層形成用塗液をアプリケーターにより塗布し、80℃のオーブンで60秒間乾燥した。乾燥後、形成された塗膜に対し、紫外線照射装置を用いて照射線量200mJ/mで紫外線照射を行うことにより乾燥膜厚100nmの低屈折率層を形成した。
【0122】
<実施例2>
BACの代わりに塩化ジデシルジメチルアンモニウム(DDAC)を用いたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る反射防止フィルムを作製した。
【0123】
<比較例1>
ハードコート層形成用塗液にBACを0.2部加えたことと、低屈折率層形成用塗液に微細化セルロース分散体を加えなかったこと以外は、実施例1と同様にして比較例1に係る反射防止フィルムを作製した。
【0124】
<比較例2>
酸化セルロースのカルボキシ基の対イオン置換を行わず、対イオンをナトリウムイオンのままとしたこと以外は、実施例1と同様にして比較例2に係る反射防止フィルムの作製を試みた。しかし、カルボキシ基の対イオンがナトリウムである酸化セルロースはエタノール中に均一に分散させることができず、微細化セルロース分散体を作製することができなかった。
【0125】
<比較例3>
低屈折率層形成用塗液に微細化セルロース分散体を加えず、BAC単体を0.2部加えたこと以外は、実施例1と同様の条件で、比較例3に係る反射防止フィルムを作製した。
【0126】
表1に、実施例1~2、比較例1~3でハードコート層形成用塗液、低屈折率層形成用塗液それぞれの調製に用いた材料を示す。
【0127】
実施例1~2、比較例1、比較例3で作製した反射防止フィルムについて以下の測定、評価を行った。結果を表2に示す。
【0128】
「ヘイズ値」
写像性測定器(日本電色工業社製、NDH-2000)を用い、JIS-K7105-1981に準拠して、反射防止フィルムのヘイズ値を測定した。ヘイズ値が低いほど透明性に優れる。
【0129】
「平均視感反射率」
反射防止フィルムの低屈折率層側の表面について、自動分光光度計(日立製作所製、U-4000)を用い、入射角5°における分光反射率を測定した。得られた分光反射率曲線から平均視感反射率を求めた。平均視感反射率が低いほど反射防止性能に優れる。なお、測定の際には透明基材であるトリアセチルセルロースフィルムのうち低屈折率層の形成されていない面につや消し黒色塗料を塗布し、反射防止の処置を行った。
【0130】
「耐擦傷性」
スチールウール(#0000)を用い、500g荷重で反射防止フィルムの低屈折率層側の表面を10往復擦り、傷の有無を目視評価した。傷が確認されなかったものを丸印(〇)、傷が確認されたものをバツ印(×)とした。
【0131】
「抗菌性」
JIS Z 2801に基づき、フィルム密着法に従い、検体試料(50×50mm)、培地(1/500NB培地)を準備し、試験菌に大腸菌(Escherichia coli NBRC 3972)を用いて抗菌試験を行った。試験においては、検体試料上に試験菌液0.4mLを接種し、その上に検体試料(40×40mmの反射防止フィルム)を被せた後、35±1℃、相対湿度90%以上で24時間静置後、生菌数を測定した。
対象試料として、抗菌剤を含有せず抗菌性のないポリエチレンフィルムを用いて同様の試験を行った。
対象試料の24時間後の生菌数の対数値(Ut)と、検体試料の24時間後の生菌数の対数値(At)とから、抗菌活性値R=Ut-Atにより抗菌活性値Rを算出し、抗菌性を評価した。抗菌活性値Rが2以上の場合を丸印(〇)、2未満の場合はバツ印(×)とした。
【0132】
【表1】
【0133】
【表2】
【0134】
表2に示すように、実施例1~2の反射防止フィルムは、透明性、耐擦傷性、抗菌性に優れていた。
一方、比較例1の反射防止フィルムは、耐擦傷性及び抗菌性に劣っていた。
比較例3の反射防止フィルムは、耐擦傷性に劣っていた。
【符号の説明】
【0135】
1 ・・・反射防止フィルム
11 ・・・透明基材
12 ・・・ハードコート層
13 ・・・低屈折率層
131 ・・・低屈折率粒子
132 ・・・微細化セルロース
133 ・・・抗菌成分
134 ・・・マトリックス
2 ・・・偏光板(第1の偏光板)
21 ・・・透明基材
22 ・・・透明基材
23 ・・・偏光層
200 ・・・反射防止フィルム付偏光板
3 ・・・液晶セル
4 ・・・第2の偏光板
41 ・・・透明基材
42 ・・・透明基材
43 ・・・偏光層
5 ・・・バックライトユニット
6 ・・・第1の偏光板
61 ・・・透明基材
62 ・・・透明基材
63 ・・・偏光層
図1
図2
図3
図4