(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176775
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】空調システム
(51)【国際特許分類】
F24F 11/79 20180101AFI20241212BHJP
F24F 11/74 20180101ALI20241212BHJP
【FI】
F24F11/79
F24F11/74
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095566
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099759
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 篤
(74)【代理人】
【識別番号】100123582
【弁理士】
【氏名又は名称】三橋 真二
(74)【代理人】
【識別番号】100092624
【弁理士】
【氏名又は名称】鶴田 準一
(74)【代理人】
【識別番号】100147555
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 公一
(74)【代理人】
【識別番号】100123593
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 宣夫
(74)【代理人】
【識別番号】100133835
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 努
(74)【代理人】
【識別番号】100120499
【弁理士】
【氏名又は名称】平山 淳
(72)【発明者】
【氏名】田村 慎一郎
(72)【発明者】
【氏名】細野 賢人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 茂徳
【テーマコード(参考)】
3L260
【Fターム(参考)】
3L260AA05
3L260AB07
3L260BA19
3L260CA02
3L260FA07
3L260FA08
(57)【要約】 (修正有)
【課題】人が存在し得る複数のエリアにおいて、人の位置に応じて空調を最適に行い、省エネルギー化と快適性を向上する。
【解決手段】空調システム1000は、作業者40が存在し得る複数の作業エリア(A)~(D)のそれぞれに設けられ、空調機200から送られた空気を複数の作業エリアのそれぞれに送風する複数のノズル300,310,320,330と、複数のノズルのそれぞれについて、空気流量制御弁の開閉と送風方向を制御する制御装置100と、を備え、制御装置100は、複数の作業エリアにおける作業者40の位置を検知する位置検知部と、作業者40の位置に基づいて、複数のノズルのうち作業者40が位置する作業エリアのノズルのダンパを開き、作業者40の位置に基づいて、作業者40が位置する作業エリアのノズルの送風方向が該作業エリア内の作業者40に向かうように制御するノズル方向制御部と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
人が存在し得る複数のエリアのそれぞれに設けられ、空調機から送られた空気を複数のエリアのそれぞれに送風する複数のノズルと、
前記複数のノズルのそれぞれについて、空気流量制御弁の開閉と送風方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数のエリアにおける人の位置を検知する位置検知部と、
前記位置検知部により検知された人の位置に基づいて、前記複数のノズルのうち人が位置するエリアのノズルの空気流量制御弁を開き、人が位置していないエリアのノズルの空気流量制御弁を閉じる開閉制御部と、
前記位置検知部により検知された人の位置に基づいて、人が位置する前記エリアのノズルの送風方向が該エリア内の人に向かうように制御する方向制御部と、を有する、
空調システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空調システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、2以上の空調ゾーンからなる空調領域に各空調ゾーン毎に設置された空調部と、少なくとも空調領域内を通行する個人の位置を検出することができる人検知部と、人検知部の出力に応じて個人の周囲に局所的なパーソナル空調を行うように空調部を制御することが可能な制御部とを備えた空調システムが公知である(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上記特許文献1に記載された技術では、空調部は、床に開口する吹出し口と吹出し口の上流側(床下側)に配した空気弁とで構成され、制御部からの指令により空気弁を開閉し、或いは吹出し量を調整するように構成されている。このため、各空調ゾーン内の個人の位置に向けて送風方向を変えることは想定しておらず、各空調ゾーン内の個人の位置に向けて空調を行う観点からは、改善の余地がある。
【0005】
上記課題に鑑みて、本開示の目的は、人が存在し得る複数のエリアにおいて、人の位置に応じて空調を最適に行い、省エネルギー化と快適性を向上することが可能な空調システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の要旨は以下のとおりである。
【0007】
(1)人が存在し得る複数のエリアのそれぞれに設けられ、空調機から送られた空気を複数のエリアのそれぞれに送風する複数のノズルと、
前記複数のノズルのそれぞれについて、空気流量制御弁の開閉と送風方向を制御する制御装置と、を備え、
前記制御装置は、
前記複数のエリアにおける人の位置を検知する位置検知部と、
前記位置検知部により検知された人の位置に基づいて、前記複数のノズルのうち人が位置するエリアのノズルの空気流量制御弁を開き、人が位置していないエリアのノズルの空気流量制御弁を閉じる開閉制御部と、
前記位置検知部により検知された人の位置に基づいて、人が位置するエリアのノズルの送風方向が該エリア内の人に向かうように制御する方向制御部と、を有する、
空調システム。
【発明の効果】
【0008】
本開示によれば、人が存在し得る複数のエリアにおいて、人の位置に応じて空調を最適に行い、省エネルギー化と快適性を向上することが可能な空調システムを提供することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】一つの実施形態による空調システムの構成を示す模式図である。
【
図2】建物を水平方向から見た状態を示す模式図である。
【
図3】制御装置と、制御装置に接続されたノズルおよびアンカーを示すブロック図である。
【
図4】制御装置のプロセッサの機能ブロックを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に係る幾つかの実施形態について図を参照しながら説明する。しかしながら、これらの説明は、本発明の好ましい実施形態の単なる例示を意図するものであって、本発明をこのような特定の実施形態に限定することを意図するものではない。なお、以下の説明では、同様な構成要素には同一の参照番号を付す。
【0011】
図1は、一つの実施形態による空調システム1000の構成を示す模式図である。空調システム1000は、例えば工場などの建物10に備えられ、建物10の内部の温度を調整する。空調システム1000は、制御装置100と、空調機200と、複数のノズル300,310,320,330を備える。
【0012】
図1では、建物10の内部を上方から見た状態が模式的に示されている。建物10の内部には、作業者(人)40が作業する複数の作業エリア(A)20、作業エリア(B)22、作業エリア(C)24、作業エリア(D)26が設けられている。
【0013】
空調機200は、建物10の内部の温度に応じて各ノズル300,310,320,330に温度を調整した空気を送る。空調機200は、出力(送風量)を制御するインバータ等を備え、空調機200の出力は制御装置100からの指令に基づき増減される。
【0014】
ノズル300,310,320,330は、作業者40が存在し得る複数の作業エリアのそれぞれに設けられ、空調機200から送られた空気を複数の作業エリアのそれぞれに送風する。具体的には、ノズル300は作業エリア(A)20に設けられ、ノズル310は作業エリア(B)22に設けられている。また、ノズル320は作業エリア(C)24に設けられ、ノズル330は作業エリア(D)26に設けられている。ノズル300,310,320,330は空気の流量を変化させるダンパ(空気流量制御弁)を備え、ダンパが開いた状態とダンパが閉じた状態に設定可能とされている。また、ノズル300,310,320,330は、ノズル先端の向きを変えて送風方向を可変できるように構成されている。
【0015】
制御装置100は、複数のノズル300,310,320,330のそれぞれについて、ダンパの開閉と送風方向を制御する。作業者40が
図1に破線の矢印で示す経路に沿って作業エリア(A)20→作業エリア(B)22→作業エリア(C)24→作業エリア(D)26の順で移動すると、制御装置100は、作業者40の移動に伴って、作業者40が位置する作業エリアのノズルのダンパのみを開き、また該ノズルの送風方向が作業者40に向くように制御する。なお、
図1では一人の作業者40が示されているが、作業者40は複数であってもよい。
【0016】
図2は、建物10を水平方向から見た状態を示す模式図であって、作業エリア(A)20と作業エリア(B)22を示している。建物10の天井30には複数のアンカー400が備えられている。アンカー400は、建屋柱、梁などに固定されていてもよい。また、作業者40にはタグ42が付けられている。タグ42は、例えば作業者40の帽子、上着の襟元などに付けられており、作業者40が移動すると作業者40とともに移動する。アンカー400は、タグ42との間でUWB(Ultra Wide Band)電波を送受信することにより、タグ42までの距離を検出する。UWB電波を用いることにより、作業者40がどの作業エリアに位置しているか常時測位することができ、またアンカー400からタグ42までの距離を高精度に検出できる。なお、赤外線や画像データを利用して作業者40を検知する場合、UWB電波を用いる場合に比べて、作業者40の検出精度が低下する。また、赤外線や画像データを利用して作業者40を検知する場合、生産設備、付帯設備などの障害物が多く存在する工場等においては、作業者40を検知できないことも想定される。UWB電波を利用することで、作業者40までの距離をより正確に測ることができ、且つ障害物が存在しても作業者までの距離を測ることができる。
【0017】
図2では、作業者40が作業エリア(A)20内に位置しているため、作業エリア(A)20のノズル300のダンパは開かれ、作業エリア(B)22のノズル320のダンパは閉じられている。また、
図2では、作業者40が作業エリア(A)20内で移動する様子が示されており、ノズル300の3つの送風方向(矢印a,b,c)が示されている。作業者40が位置aに位置しているときは、ノズル300の送風方向が作業者40に向かう矢印aの方向とされる。同様に、作業者40が位置bに位置しているときは、ノズル300の送風方向が作業者40に向かう矢印bの方向とされ、作業者40が位置cに位置しているときは、ノズル300の送付方向が作業者40に向かう矢印cの方向とされる。UWB電波を用いることで、作業者40までの距離を高精度に測ることができるため、赤外線や画像データを利用する場合に比べて作業者40の位置検出精度が向上する。したがって、作業者40の位置に応じてノズル300の送風方向を作業者40の位置にピンポイントで向けることができ、作業者40の快適性が向上する。
【0018】
以上のようにして、制御装置100が作業者40の位置に応じて各ノズル300,310,320,330のダンパの開閉と送風方向を制御することで、空調システム1000の全体として消費エネルギーが低減されるとともに、作業者40に風が直接当たることによる快適性の向上が実現される。
【0019】
図3は、制御装置100と、制御装置100に接続された空調機200、ノズル300,310,320,330およびアンカー400を示すブロック図である。制御装置100と、空調機200と、ノズル300,310,320,330と、アンカー400とは、例えばイーサネットなどのネットワークを介して接続される。
【0020】
制御装置100は、プロセッサ102と、メモリ104と、通信インターフェース106とを有する。プロセッサ102は、1個または複数個のCPU及びその周辺回路を有し、メモリ104の作業領域に実行可能に展開されたコンピュータプログラムの実行により所定の機能を提供する。メモリ104は、例えば、揮発性の半導体メモリ及び不揮発性の半導体メモリを有する。通信インターフェース106は、制御装置100をネットワークに接続するためのインターフェース回路を有する。
【0021】
ノズル300,310,320,330は、ダンパの開閉を制御するためのアクチュエータ、および送風方向を制御するためのアクチュエータを備える。制御装置100からの指令に応じてこれらのアクチュエータが制御されることで、ノズル300,310,320,330のダンパの開閉と送風方向が制御される。
【0022】
図4は、以上のような処理を実現するための、制御装置100のプロセッサ102の機能ブロックを示す模式図である。プロセッサ102は、位置検知部102aと、ノズル開閉制御部102bと、ノズル方向制御部102cと、空調出力制御部102dと、を有する。プロセッサ102が有するこれらの各部は、例えば、プロセッサ102上で動作するコンピュータプログラムにより実現される機能モジュールである。つまり、プロセッサ102が有するこれらの各部は、プロセッサ102とこれを機能させるためのプログラム(ソフトウェア)から構成される。
【0023】
プロセッサ102の位置検知部102aは、複数の作業エリア(A)~(D)における作業者40の位置を検知する。具体的には、位置検知部102aは、複数のアンカー400が検出した特定のタグ42までの距離に基づいて、そのタグ42の位置(座標)、すなわちタグ42を付けている作業者40の位置を算出する。この際、各アンカー400の位置(X軸、Y軸、Z軸の空間座標で規定される)は、予め制御装置100のメモリ104に格納されている。特定のタグ42について、3つのアンカー400からの距離L1,L2,L3が検出されると、これら3つのアンカー400を中心として距離L1,L2,L3を半径とする球面が交わる点がこのタグ42の位置として算出される。
【0024】
プロセッサ102のノズル開閉制御部102bは、位置検知部102aによって検知された作業者40の位置に基づいて、複数のノズル300,310,320,330のうち作業者40が位置する作業エリアのノズルのダンパを開き、作業者40が位置していない作業エリアのノズルのダンパを閉じる。ここで、作業エリア(A)20、作業エリア(B)22、作業エリア(C)24、および作業エリア(D)26のそれぞれの範囲を示す座標は、予め制御装置100のメモリ104に格納されている。ノズル開閉制御部102bは、位置検知部102aによって検知された作業者40の位置に基づいて、作業者40が作業エリア(A)20の範囲内のみに位置していれば、作業エリア(A)20のノズル300のダンパを開き、他の作業エリア(B)22、作業エリア(C)24、および作業エリア(D)26のノズル310,320,330のダンパを閉じる。なお、作業エリア(A)20の範囲は、作業エリア(A)20のノズル300からの送風が作業者40に到達可能な範囲であってもよい。他の作業エリアの範囲についても同様である。
【0025】
これにより、工場の建物内のような広い範囲においても、空調機200を1つ設けるだけで、一作業者に対して一のノズルで空調を実現することができるため、省エネルギー化を実現できる。
【0026】
ノズル開閉制御部102bは、作業者40が将来的に位置すると見込まれる作業エリアのノズルを開いてもよい。例えば、
図1において、作業者40が作業エリア(A)20内で作業エリア(B)22側に位置しており、作業エリア(A)20から作業エリア(B)22に作業者40が移動することが見込まれる場合、ノズル開閉制御部102bは、作業者40が作業エリア(B)22に移動する前に作業エリア(B)22のノズル310を開いてもよい。これにより、作業者40が作業エリア(B)22に移動した時点では作業エリア(B)22に既に空調が行われているため、作業者40の快適性を向上することができる。
【0027】
また、ノズル開閉制御部102bは、作業者40が位置する作業エリアのノズルのダンパを開く場合に、ダンパの開度を制御してもよい。例えば、ノズル開閉制御部102bは、ノズルから作業者40までの距離が離れているほどダンパの開度を大きくしてもよい。
【0028】
プロセッサ102のノズル方向制御部102cは、位置検知部102aによって検知された作業者40の位置に基づいて、作業者が位置する作業エリアのノズルの送風方向が作業者に向かうように制御する。
【0029】
ノズル方向制御部102cは、作業者40が将来的に位置すると見込まれる方向に送風方向を制御してもよい。例えば、
図1において、作業者40が作業エリア(A)20内で作業エリア(B)22側に位置しており、作業エリア(A)20から作業エリア(B)22に作業者40が移動することが見込まれる場合、ノズル方向制御部102cは、作業者40が作業エリア(B)22に移動する前に作業エリア(B)22のノズル310の送風方向を作業者40に向けてもよい。
【0030】
プロセッサ102の空調出力制御部102dは、ダンパが開いているノズルの数に応じて空調機200の出力を制御する。空調出力制御部102dは、ダンパが開いているノズルの数が少ないほど出力が小さくなるように空調機200を制御する。ダンパが開いているノズル数を絞るだけでは、他のノズルからの風量が増えるだけで十分な省エネルギー効果を得ることはできないが、ダンパが開いているノズルの数が少ないほど空調機200の出力が小さくなるように制御することで省エネルギー化を実現できる。
【0031】
以上説明したように本実施形態によれば、作業者40の位置に応じて各ノズル300,310,320,330のダンパの開閉と送風方向が制御されるので、空調システム1000の全体として消費エネルギーが低減されるとともに、作業者40に風が直接当たることによる快適性の向上が実現される。
【符号の説明】
【0032】
20,22,24,26 作業エリア
40 作業者
100 制御装置
102 プロセッサ
102a 位置検知部
102b ノズル開閉制御部
102c ノズル方向制御部
300,310,320,330 ノズル
1000 空調システム