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特開2024-176780縮約モデル作成システム、制御量決定システム、及び縮約モデル作成方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176780
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】縮約モデル作成システム、制御量決定システム、及び縮約モデル作成方法
(51)【国際特許分類】
   H02J 3/00 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02J3/00 170
【審査請求】未請求
【請求項の数】10
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095574
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000005108
【氏名又は名称】株式会社日立製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】村田 新治
(72)【発明者】
【氏名】多田 泰之
(72)【発明者】
【氏名】末永 晋也
(72)【発明者】
【氏名】友部 修
(72)【発明者】
【氏名】小野 哲嗣
【テーマコード(参考)】
5G066
【Fターム(参考)】
5G066AA03
(57)【要約】
【課題】電力系統に複数の外部系統が接続される場合にも対応可能な縮約モデル作成システム等を提供する。
【解決手段】縮約モデル作成システムは、複数の外部系統のそれぞれのモデルである外部系統モデルを縮約して、外部系統縮約モデル31a,31bを作成する処理部を備え、複数の外部系統は、それぞれ、連系点41,42を介して主系統に接続され、処理部は、連系点41,42における外部系統の所定の電気物理量の可制御範囲を示す制約条件と、電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報を外部系統縮約モデル31a,31bとして、連系点41,42に対応付けて表示装置に表示させる。
【選択図】図1C
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の外部系統のそれぞれのモデルである外部系統モデルを縮約して、外部系統縮約モデルを作成する処理部を備え、
複数の前記外部系統は、それぞれ、連系点を介して所定の電力系統に接続され、
前記処理部は、前記連系点における前記外部系統の所定の電気物理量の可制御範囲を示す制約条件と、前記電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報を前記外部系統縮約モデルとして、前記連系点に対応付けて表示装置に表示させる、縮約モデル作成システム。
【請求項2】
前記電気物理量には、有効電力及び無効電力が含まれること
を特徴とする請求項1に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項3】
前記処理部は、前記連系点における前記外部系統モデルの有効電力及び無効電力を含む所定の数式に基づいて、前記可制御範囲を作成する際、前記数式に含まれる前記有効電力及び前記無効電力のそれぞれに所定の重み係数を乗算すること
を特徴とする請求項2に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項4】
前記処理部は、前記可制御範囲において前記電気物理量の値が異なる複数の条件のそれぞれで所定の評価値を算出し、複数の前記条件に対応する前記電気物理量及び前記評価値に基づいて、前記目的関数を作成すること
を特徴とする請求項1に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項5】
複数の前記条件には、前記可制御範囲において前記評価値が最大又は最小になるものが含まれること
を特徴とする請求項4に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項6】
前記処理部は、前記目的関数を区分線形関数として作成すること
を特徴とする請求項4に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項7】
前記処理部は、所定の評価値が最大又は最小になるときの条件を示す点が前記可制御範囲に含まれるように、前記可制御範囲を作成すること
を特徴とする請求項1に記載の縮約モデル作成システム。
【請求項8】
請求項1から請求項7のいずれか一項に記載の縮約モデル作成システムを備えるとともに、
前記電力系統のモデルである主系統モデルの情報が入力される主系統情報入力部と、
前記外部系統縮約モデル及び前記主系統モデルに基づいて、前記電力系統の制御機器の制御量を決定する主系統制御量決定部と、
前記主系統制御量決定部で決定された前記制御量を前記表示装置に表示させる主系統制御量出力部と、を備える、制御量決定システム。
【請求項9】
前記外部系統モデルの情報が入力される外部系統情報入力部と、
前記外部系統の制御機器の制御量を決定する外部系統制御量決定部と、
前記外部系統制御量決定部で決定された前記制御量を前記表示装置に表示させる外部系統制御量出力部と、を備え、
前記主系統制御量決定部は、前記電力系統の前記制御機器の制御量を決定するとともに、前記連系点における前記電力系統の前記電気物理量を算出し、
前記外部系統制御量決定部は、前記連系点における前記電力系統の前記電気物理量と、前記外部系統モデルと、に基づいて、前記外部系統の前記制御機器の制御量を決定すること
を特徴とする請求項8に記載の制御量決定システム。
【請求項10】
複数の外部系統のそれぞれのモデルである外部系統モデルを縮約して、外部系統縮約モデルを作成する縮約モデル作成処理と、
複数の前記外部系統と所定の電力系統とのそれぞれの連系点に対応付けて、前記外部系統縮約モデルを表示装置に表示させる表示処理と、を含み、
前記縮約モデル作成処理では、前記連系点における前記外部系統の所定の電気物理量の可制御範囲を示す制約条件と、前記電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報を前記外部系統縮約モデルとして作成する、縮約モデル作成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、縮約モデル作成システム等に関する。
【背景技術】
【0002】
電力系統における制御量を演算する際の負荷を低減するための技術として、例えば、特許文献1に記載の技術が知られている。すなわち、特許文献1には、「送電系統の状態の評価値であって前記縮約電力量候補を含む送電系統評価値を目的関数として、前記縮約制御電力量範囲を満たすように前記縮約配電系統の有効電力量と無効電力量とを合わせた縮約電力量を演算する」ことが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第7040693号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載の技術では、送電系統に連系点を介して1つの配電系統が接続された構成になっている。特許文献1において、仮に、送電系統に連系点を介して第1の配電系統が接続されるとともに、別の連系点を介して第2の配電系統が接続されている場合、次の理由から対応が困難になる可能性がある。すなわち、一方の連系点における条件が変わると、その影響が他方の連系点にも及んで、送電系統評価値や配電系統評価値も変化するため、潮流計算を行う際の処理が複雑になる可能性がある。
【0005】
そこで、本開示は、電力系統に複数の外部系統が接続される場合にも対応可能な縮約モデル作成システム等を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記した課題を解決するために、本開示に係る縮約モデル作成システムは、複数の外部系統のそれぞれのモデルである外部系統モデルを縮約して、外部系統縮約モデルを作成する処理部を備え、複数の前記外部系統は、それぞれ、連系点を介して所定の電力系統に接続され、前記処理部は、前記連系点における前記外部系統の所定の電気物理量の可制御範囲を示す制約条件と、前記電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報を前記外部系統縮約モデルとして、前記連系点に対応付けて表示装置に表示させることとした。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、電力系統に複数の外部系統が接続される場合にも対応可能な縮約モデル作成システム等を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1A】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける、主系統及び外部系統を含む電力系統の説明図である。
図1B】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける、縮約前の外部系統モデルを含む模式的な系統モデルの説明図である。
図1C】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける、外部系統縮約モデルを含む模式的な系統モデルの説明図である。
図2】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムの構成を示す機能ブロック図である。
図3】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムの処理部が実行する処理のフローチャートである。
図4】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである。
図5】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する説明図である。
図6】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける評価値の算出に関する処理のフローチャートである。
図7】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける評価値の算出に関する説明図である。
図8】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける目的関数の作成に関する処理のフローチャートである。
図9A】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおいて有効電力を変数とする目的関数の説明図である。
図9B】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおいて無効電力を変数とする目的関数の説明図である。
図10A】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムの縮約前の外部系統モデルを含む表示例である。
図10B】第1実施形態に係る縮約モデル作成システムの外部系統縮約モデルを含む表示例である。
図11】第2実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである。
図12A】第3実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである。
図12B】第3実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである。
図13】第3実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する説明図である。
図14】第4実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける目的関数の作成に関する処理のフローチャートである。
図15A】第4実施形態に係る縮約モデル作成システムにおいて有効電力を変数とする目的関数の説明図である。
図15B】第4実施形態に係る縮約モデル作成システムにおいて無効電力を変数とする目的関数の説明図である。
図16】第5実施形態に係る制御量決定システムを含む機能ブロック図である。
図17】第6実施形態に係る制御量決定システムを含む機能ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
≪第1実施形態≫
以下では、まず、主系統20W(図1A参照)がモデル化された主系統モデル20(図1B参照)や、外部系統31W,32W(図1A参照)がモデル化された外部系統モデル31,32(図1B参照)について簡単に説明した後、縮約モデル作成システム10(図2参照)について詳細に説明する。
【0010】
図1Aは、第1実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける、主系統20W及び外部系統31W,32Wを含む電力系統W1の説明図である。
図1Aに示す電力系統W1は、発電設備(図示せず)の発電電力を送電線や配電線を介して、需要家(図示せず)に供給するシステムである。図1Aの例では、電力系統W1が主系統20W及び外部系統31W,32Wを含んで構成されている。
【0011】
主系統20W(所定の電力系統)は、制御機器の制御量が算出される際の対象となる電力系統である。例えば、送電事業者が管理する所定区域の送電系統が主系統20Wとして設定されてもよく、また、他の所定の電力系統が主系統20Wとして設定されてもよい。
外部系統31Wは、主系統20Wに連系点41Wを介して接続された電力系統である。他方の外部系統32Wは、主系統20Wに別の連系点42Wを介して接続された電力系統である。例えば、配電事業者が管理する所定区域の配電系統が外部系統31W,32Wとして設定されてもよく、また、他の所定の系統が外部系統31W,32Wとして設定されてもよい。図1Aでは、一例として、主系統20Wに2つの外部系統31W,32Wが接続される構成を示しているが、主系統20Wに接続される外部系統の数は3つ以上であってもよい。
【0012】
主系統20Wや外部系統31W,32Wは、それぞれ、発電設備や変圧器、調相設備、開閉器といった制御機器(図示せず)の他、送電線・配電線といった電力線や、負荷装置(図示せず)を含んで構成されている。なお、外部系統31W,32Wは、主系統20Wの下流側に存在してもよく、また、主系統20Wの上流側に存在していてもよい。
【0013】
連系点41Wは、主系統20Wと外部系統31Wとの間の電気的な接続箇所である。別の連系点42Wは、主系統20Wと他方の外部系統32Wとの間の電気的な接続箇所である。このように、複数の外部系統31W,32Wが、それぞれ、連系点41W,42Wを介して主系統20W(所定の電力系統)に接続されている。これらの連系点41W,42Wは、例えば、変圧器(図示せず)であってもよく、また、開閉器(図示せず)といった他の機器であってもよい。
【0014】
図1Bは、縮約前の外部系統モデル31,32を含む模式的な系統モデルM1の説明図である。
図1Bに示す系統モデルM1は、主系統20W(図1A参照)や外部系統31W,32W(図1A参照)を含む電力系統W1(図1A参照)が所定にモデル化されたものである。図1Bに示すように、系統モデルM1は、主系統モデル20と、外部系統モデル31,32と、連系点41,42と、を含んで構成されている。
【0015】
主系統モデル20は、主系統20W(図1A参照)が所定にモデル化されたものである。外部系統モデル31は、外部系統31W(図1A参照)が所定にモデル化されたものである。他方の外部系統モデル32は、外部系統32W(図1A参照)が所定にモデル化されたものである。これらの主系統モデル20や外部系統モデル31,32は、それぞれ、複数のノード(節点)と、ノード間を接続する複数のリンク(枝)と、を含む電力ネットワークとして構成されている。連系点41は、主系統モデル20と外部系統モデル31との間の接続箇所であり、図1Aの連系点41Wに対応している。他方の連系点42は、主系統モデル20と外部系統モデル32との間の接続箇所であり、図1Aの連系点42Wに対応している。
【0016】
例えば、系統モデルM1の全体を対象として、制御機器(図示せず)の制御量を算出しようとすると、系統モデルM1の規模が大きいほど計算量が膨大になり、計算時間が長くなる。そこで、第1実施形態では、後記する縮約モデル作成システム10(図2参照)が外部系統モデル31,32(図1B参照)を縮約して、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成するようにしている。ここで、「縮約」とは、規模を縮小して簡約にすることを意味している。このように、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成することで、主系統モデル20の制御機器(図示せず)の制御量を算出する際の計算量が少なくなるため、計算時間を大幅に短縮できる。
【0017】
図1Cは、外部系統縮約モデル31a,32aを含む模式的な系統モデルM2の説明図である。
図1Cに示す外部系統縮約モデル31aは、外部系統モデル31(図1B参照)が縮約されたモデルであり、連系点41における所定の制約条件及び目的関数で表されている。他方の外部系統縮約モデル32aは、外部系統モデル32(図1B参照)が縮約されたモデルであり、連系点42における所定の制約条件及び目的関数で表されている。このように、外部系統縮約モデル31a,32aを制約条件及び目的関数で表すようにしている点が、第1実施形態の主な特徴の一つである。
【0018】
なお、「制御条件」とは、有効電力Pや無効電力Qや電圧Vといった所定の変数(電気物理量)がとり得る範囲を示す条件である。また、「目的関数」とは、潮流計算において、その値の最大化又は最小化が図られる所定の関数である。
【0019】
外部系統縮約モデル31aの制約条件は、外部系統31W(図1A参照)を制御可能とするための、連系点41W(図1A参照)における電気物理量の範囲で表される。なお、他方の外部系統縮約モデル32aの制約条件についても同様である。このような電気物理量の範囲を「可制御範囲」という。第1実施形態では、前記した電気物理量として、有効電力Pや無効電力Qや電圧Vが用いられる場合について説明するが、これに限定されるものではない。例えば、電流Iや位相角θといった他の電気物理量が用いられてもよい。また、電気物理量の単位時間当たりの平均値の他、電気物理量の積算値や瞬時値が用いられてもよい。
【0020】
図1Cの例では、以下の式(1)~(3)に示すように、外部系統縮約モデル31aの制約条件として、連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の有効電力P、無効電力Q、及び電圧Vのそれぞれの可制御範囲が設定されている。なお、他方の外部系統縮約モデル32aについても同様である。
【0021】
a下限 ≦P≦Pa上限 ・・・(1)
a下限 ≦Q≦Qa上限 ・・・(2)
a下限 ≦V≦Va上限 ・・・(3)
【0022】
外部系統縮約モデル31aの目的関数は、連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の所定の電気物理量を変数とした関数で表される。このような目的関数として、燃料費や送電損失といった物理的なコストの他、電力調達コストや調整力調達コスト、デマンドレスポンス要請コスト、再エネ出力抑制コストといった金銭的なコストを示す関数が用いられてもよい。また、目的関数として、電圧の規定値に対する余裕量や設備利用率(例えば、送電容量に対する送電電力)、制御機器の制御余裕量といった安定性・安全性に関わる所定の関数が用いられてもよい。
【0023】
その他にも、例えば、電圧が規定値から逸脱した場合のペナルティや、設備利用率が規定値を超えた場合のペナルティ、逆潮流が生じた場合のペナルティといったものを含む関数が目的関数として用いられてもよい。また、外部系統縮約モデル31aの目的関数として、複数の関数が用いられてもよい。図1Cの例では、以下の式(4)に示すように、有効電力Pを含む関数fと、無効電力Qを含む関数gと、の和で外部系統縮約モデル31aの目的関数が表されている。なお、他方の外部系統縮約モデル32aの目的関数についても同様である。
【0024】
(P)+g(Q) ・・・(4)
【0025】
なお、外部系統縮約モデル31a,32aの目的関数は、式(4)の形式に限定されるものではなく、例えば、以下の式(5)のように、有効電力P、無効電力Q、及び電圧Vを含む所定の関数hで表されてもよい。
【0026】
h(P,Q,V) ・・・(5)
【0027】
図2は、縮約モデル作成システム10の構成を示す機能ブロック図である。
図2に示す縮約モデル作成システム10は、外部系統モデル31,32(図1B参照)を縮約して、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成するシステムである。図2に示すように、縮約モデル作成システム10は、記憶部11と、処理部12と、を含んで構成されている。記憶部11は、図示はしないが、ROM(Read Only Memory)等の不揮発性メモリと、RAM(Random Access Memory)やレジスタ等の揮発性メモリと、を含んで構成されている。記憶部11には、所定のプログラムやパラメータが予め格納されている他、情報入力部121を介して取得されるデータや、所定の演算結果が格納される。
【0028】
処理部12は、例えば、CPU(Central Processing Unit)であり、記憶部11に格納されたプログラムを読み出して展開し、所定の処理を実行する。すなわち、処理部12は、複数の外部系統31W,32W(図1A参照)のそれぞれのモデルである外部系統モデル31,32(図1B参照)を縮約して、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成する。図2に示すように、処理部12は、情報入力部121と、可制御範囲作成部122と、評価値算出部123と、目的関数作成部124と、縮約モデル出力部125と、を備えている。
【0029】
情報入力部121は、外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報を外部から入力するためのインタフェースであり、入力装置51に接続されている。入力装置51は、例えば、キーボードやマウスや携帯端末である。このように、入力装置51を介した操作で外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報が入力されるようにしてもよいが、これに限定されるものではない。例えば、所定のデータベース(図示せず)から情報入力部121を介して情報が取得されるようにしてもよい。また、外部系統31W,32W(図1A参照)に設置された計測器(図示せず)や制御機器(図示せず)から、情報入力部121を介して情報が収集されるようにしてもよい。
【0030】
可制御範囲作成部122は、情報入力部121を介して入力される外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報に基づいて、所定の電気物理量の可制御範囲を作成する。前記した電気物理量とは、連系点41W,42W(図1A参照)における外部系統31W,32W(図1A参照)の有効電力や無効出力や電圧である。
【0031】
評価値算出部123は、情報入力部121を介して入力される外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報と、可制御範囲作成部122で作成される可制御範囲と、に基づいて、電気物理量の大きさが異なる複数の条件のそれぞれについて所定の評価値を算出する。ここで、「評価値」とは、燃料費や送電損失といった物理的なコストや金銭的なコストであり、前記した目的関数の値に対応している。
【0032】
目的関数作成部124は、評価値算出部123の算出結果に基づいて、所定の電気物理量を変数とする目的関数を作成する。
縮約モデル出力部125は、可制御範囲作成部122で作成された可制御範囲と、目的関数作成部124で作成された目的関数と、を連系点41,42(図1C参照)に対応付けることで、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成する。そして、縮約モデル出力部125は、外部系統縮約モデル31a,32aを含む情報を表示装置52に所定に表示させる。表示装置52は、所定の情報が表示されるディスプレイである。
【0033】
図3は、縮約モデル作成システムの処理部が実行する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
ステップS1において処理部12は、情報入力部121によって、外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報を取得する。
ステップS2において処理部12は、可制御範囲作成部122によって、連系点41,42(図1B参照)における所定の電気物理量の可制御範囲を作成する。
ステップS3において処理部12は、評価値算出部123によって、連系点41,42(図1B参照)における所定の評価値を複数の条件のそれぞれで算出する。
ステップS4において処理部12は、目的関数作成部124によって、所定の電気物理量を変数とする目的関数を作成する。
【0034】
なお、複数の外部系統31W,32W(図1A参照)のそれぞれのモデルである外部系統モデル31,32(図1B参照)を縮約して、外部系統縮約モデル31a,32aを作成する「縮約モデル作成処理」は、図3のステップS2~S4を含んで構成される。この「縮約モデル作成処理」では、連系点41W,42W(図1A参照)における外部系統31W,32W(図1参照)の所定の電気物理量(有効電力や無効電力や電圧)の可制御範囲を示す制約条件と、電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報が外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)として作成される。
【0035】
ステップS5において処理部12は、縮約モデル出力部125によって、可制御範囲及び目的関数が連系点41,42(図1C参照)に対応付けられた情報である外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を表示装置52に出力する。なお、外部系統縮約モデル31a,32aを連系点41,42に対応付けて表示装置52に表示させる「表示処理」は、ステップS5を含んで構成される。ステップS5の処理を行った後、処理部12は、一連の処理を終了する(END)。
【0036】
次に、図3のステップS2、S3、S4のそれぞれについて順に説明する。以下では、主に外部系統縮約モデル31a(図1C参照)が作成される場合について説明するが、他方の外部系統縮約モデル31b(図1C参照)の作成についても同様である。
【0037】
図4は、可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、前記したステップS2(図3参照)の処理の詳細を示したものが図4である。また、図4の「START」時には、外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報が記憶部11に格納されているものとする。
ステップS201において処理部12は、連系点41(図1B参照)で外部系統モデル31(図1B参照)の(有効電力P+無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P31及び無効電力Q31を算出する。例えば、連系点41において外部系統モデル31の(有効電力P+無効電力Q)を目的関数とした最適潮流計算を処理部12が実行するようにしてもよい。また、連系点41において外部系統モデル31の(有効電力P+無効電力Q)が最大となるように、処理部12が外部系統モデル31の制御機器(図示せず)の制御量を設定した上で所定の潮流計算を行うようにしてもよい。次に、ステップS201で算出される有効電力P31及び無効電力Q31について、図5を用いて説明する。
【0038】
図5は、可制御範囲の作成に関する説明図である。
なお、図5の横軸は、連系点41(図1B参照)における外部系統モデル31(図1B参照)の無効電力Qである。また、図5の縦軸は、連系点41における外部系統モデル31の有効電力Pである。図5に示す楕円状の破線Rの内部領域は、連系点41において外部系統モデル31の有効電力P及び無効電力Qが実際にとり得る範囲を示している。以下では、連系点41における可制御範囲の作成について説明するが、他方の連系点42(図1B参照)における可制御範囲についても同様である。
【0039】
ステップS201で算出される有効電力P31及び無効電力Q31は、(有効電力P+無効電力Q)の値が最大となる点Aに対応している。なお、点Aの座標(P31,Q31)は、カッコ内において縦軸の有効電力Pの値を先に記載し、横軸の無効電力Qの値を後に記載するようにしている(他の点B、点C、点D等も同様)。
【0040】
次に、図4のステップS202において処理部12は、連系点41(図1B参照)で外部系統モデル31(図1B参照)の(有効電力P-無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P32及び無効電力Q32を算出する。なお、有効電力P32及び無効電力Q32は、(有効電力P-無効電力Q)の値が最大となる点B(図5参照)に対応している。
【0041】
次に、図4のステップS203において処理部12は、連系点41(図1B参照)で外部系統モデル31(図1B参照)の(-有効電力P+無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P33及び無効電力Q33を算出する。なお、有効電力P33及び無効電力Q33は、(-有効電力P+無効電力Q)の値が最大となる点C(図5参照)に対応している。
【0042】
次に、図4のステップS204において処理部12は、連系点41(図1B参照)で外部系統モデル31(図1B参照)の(-有効電力P-無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P34及び無効電力Q34を算出する。なお、有効電力P34及び無効電力Q34は、(-有効電力P-無効電力Q)の値が最大となる点D(図5参照)に対応している。
【0043】
前記したように、図5に示す楕円状の破線Rは、外部系統31W(図1A参照)が制御可能となる場合の最大限の領域である。この破線Rの内部領域で可制御範囲X1をなるべく広くとるために、処理部12がステップS201~S204の処理を行い、図5の点A,B,C,Dを特定するようにしている。図5の例では、破線R上に点A,B,C,Dが存在している。なお、図4のステップS201~S204の処理の順序は、適宜に変更することが可能である。また、ステップS201~S204の処理が並行して行われるようにしてもよい。
【0044】
次に、図4のステップS205において処理部12は、有効電力P及び無効電力Qの可制御範囲を作成する。具体的に説明すると、処理部12は、ステップS201で算出した有効電力P31、及びステップS202で算出した有効電力P32のうち、その値が小さい方を連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の有効電力Pの上限値とする。図5の例では、P31>P32の関係になっているため、有効電力P32の値が有効電力Pの上限値として設定される。
【0045】
仮に、小さい方の有効電力P32ではなく、大きい方の有効電力P31を上限値にした場合、矩形状の可制御範囲X1を設定する際、この可制御範囲X1の角部(例えば、点B付近の角部)が破線Rの範囲から外れる可能性がある。そこで、有効電力P31,P32のうち、その大きさが相対的に小さい方を有効電力Pの上限値として設定するようにしている。なお、有効電力P31,P32の値が同一である場合には、その値が有効電力Pの上限値として設定される。
【0046】
同様にして、処理部12は、ステップS205の処理として、図5の有効電力P33,P34のうち、その値が大きい方を連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の有効電力Pの下限値とする。図5の例では、P33>P34の関係になっているため、有効電力P34の値が有効電力Pの下限値として設定される。
【0047】
また、処理部12は、図5の無効電力Q31,Q33のうち、その値が小さい方を連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の無効電力Qの上限値とする。図5の例では、Q31<Q33の関係になっているため、無効電力Q31の値が無効電力Qの上限値として設定される。
また、処理部12は、図5の無効電力Q32,Q34のうち、その値が大きい方を連系点41W(図1A参照)における外部系統31W(図1A参照)の無効電力Qの下限値とする。図5の例では、Q32<Q34の関係になっているため、無効電力Q34の値が無効電力Qの下限値として設定される。
【0048】
そして、処理部12は、有効電力Pの上限値・下限値、及び、無効電力Qの上限値・下限値で特定される範囲を可制御範囲X1として設定する。図5の例では、楕円状の破線Rの内部に矩形状の可制御範囲X1が設定されている。同様に、他方の連系点42W(図1A参照)における外部系統32W(図1A参照)の有効電力P及び無効電力Qについても、その可制御範囲が設定される。
【0049】
図6は、評価値の算出に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、前記したステップS3(図3参照)の処理の詳細を示したものが図6である。また、図6の「START」時には、連系点41W,42W(図1A参照)のそれぞれにおける有効電力P及び無効電力Qの可制御範囲が設定され、この可制御範囲のデータが記憶部11に格納されているものとする。
【0050】
ステップS301において処理部12は、連系点41(図1B参照)において基準となる所定の有効電力P40及び無効電力Q40の条件で評価値を算出する。ステップS301の具体例を挙げると、処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)を用いて、所定の評価値を最大化(例えば、効率を最大化)又は最小化(例えば、コストを最小化)するように最適潮流計算を行う。そして、処理部12は、最適潮流計算を行った場合の連系点41(図1B参照)における外部系統モデル31(図1B参照)の有効電力P及び無効電力Qの値を、基準となる有効電力P40及び無効電力Q40として設定する。
【0051】
外部系統31W(図1A参照)の実際の運用では、連系点41W(図1A参照)における有効電力Pや無効電力Qが、最適潮流計算に基づく有効電力P40や無効電力Q40の値に近くなる可能性が高い。そこで、有効電力P40や無効電力Q40を基準として、処理部12が複数の条件のそれぞれで評価値を算出するようにしている(S302~S306)。なお、外部系統31W(図1A参照)の制御機器(図示せず)の直近の制御量(又は想定される制御量)を用いた場合の連系点41W(図1A参照)における有効電力P及び無効電力Qの値が、ステップS301の有効電力P40及び無効電力Q40として用いられてもよい。
【0052】
図7は、評価値の算出に関する説明図である。
なお、図7に示す可制御範囲X1は、図5に示したものと同一であるものとする。
図7では、有効電力P40及び無効電力Q40で特定される基準点Eが、矩形状の可制御範囲X1の内部に存在している。基準点Eにおける有効電力P40や無効電力Q40の値は、次に説明するように、ステップS302~S305(図6参照)の処理で用いられる。
【0053】
図6のステップS302において処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)に基づいて、連系点41(図1B参照)における有効電力Pの上限値、及び、基準となる無効電力Q40の条件で評価値を算出する。なお、有効電力Pの上限値は、図4のステップS205で作成された可制御範囲X1(図7参照)に基づいて特定される。図7の例では、基準点Eを通るP軸方向の破線L1と、矩形状の可制御範囲X1の上辺と、の交点である点Fでの評価値が算出される。
【0054】
図6のステップS303において処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)に基づいて、連系点41(図1B参照)における有効電力Pの下限値、及び、基準となる無効電力Q40の条件で評価値を算出する。なお、有効電力Pの下限値は、可制御範囲X1(図7参照)に基づいて特定される。図7の例では、基準点Eを通るP軸方向の破線L1と、矩形状の可制御範囲X1の下辺と、の交点である点Gでの評価値が算出される。
【0055】
図6のステップS304において処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)に基づき、連系点41(図1B参照)において基準となる有効電力P40、及び、無効電力Qの上限値の条件で評価値を算出する。なお、無効電力Qの上限値は、可制御範囲X1(図7参照)に基づいて特定される。図7の例では、基準点Eを通るQ軸方向の破線L2と、矩形状の可制御範囲X1の右辺と、の交点である点Hでの評価値が算出される。
【0056】
図6のステップS305において処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)に基づき、連系点41(図1B参照)において基準となる有効電力P40、及び、無効電力Qの下限値の条件で評価値を算出する。なお、無効電力Qの下限値は、可制御範囲X1(図7参照)に基づいて特定される。図7の例では、基準点Eを通るQ軸方向の破線L2と、矩形状の可制御範囲X1の左辺と、の交点である点Kでの評価値が算出される。
【0057】
なお、図6のステップS302~S305の処理の順序は、適宜に変更することが可能である。また、ステップS302~S305の処理が並行して行われるようにしてもよい。このように、連系点41(図1B参照)に関して、図7に示す基準点Eの他、4つの点F,G,H,Kのそれぞれの評価値が算出される。また、他方の連系点42(図1B参照)についても同様にして、複数の条件のそれぞれについて評価値が算出される。
【0058】
図8は、目的関数の作成に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、前記したステップS4(図3参照)の処理の詳細を示したものが図8である。また、図8の「START」時には、有効電力P及び無効電力Qの可制御範囲の他、基準点E(図7参照)や点F,G,H,K(図7参照)における各評価値のデータが記憶部11に格納されているものとする。
【0059】
ステップS401において処理部12は、連系点41(図1B参照)における無効電力Q、及び複数条件の有効電力Pにおける評価値に基づいて、有効電力Pを変数とする目的関数を作成する。有効電力Pと評価値との関係に着目すると、図7に示す基準点Eにおける評価値の他、有効電力Pが上限値(点F)や下限値(点G)になるときの評価値が算出されている。これらの基準点Eや点F,Gのそれぞれの有効電力P及び評価値に基づいて、有効電力Pを変数とする目的関数が導出される。
【0060】
図9Aは、有効電力Pを変数とする目的関数の説明図である。
なお、図9Aの横軸は有効電力Pであり、縦軸は所定の評価値である。図9Aに示す点Ec1は、基準点E(図7参照)の有効電力P40と評価値とで特定される点である。点Fc1は、上限値の有効電力P32(図5の点F)と評価値とで特定される点である。また、点Gc1は、下限値の有効電力P33(図5の点G)と評価値とで特定される点である。
【0061】
図9Aに示す点Ec1,Fc1,Gc1のそれぞれの有効電力Pと評価値とに基づいて、以下の式(6)に示すような、有効電力Pを変数とする目的関数が近似的に導かれる。目的関数を近似的に導出する方法として、例えば、最小二乗法が用いられる。なお、式(6)に含まれるa4,b4は所定の値である。
【0062】
a4×(有効電力P)+b4 ・・・(6)
【0063】
図9Aには、有効電力Pを変数とする1次関数(式(6))の直線L3を目的関数として示している。なお、目的関数が1次関数である必要は特になく、2次関数や他の所定の関数であってもよい。
【0064】
次に、図8のステップS402において処理部12は、連系点41(図1B参照)における有効電力P、及び複数条件の無効電力Qにおける評価値に基づいて、無効電力Qを変数とする別の目的関数を作成する。無効電力Qと評価値との関係に着目すると、図7に示す基準点Eでの評価値の他、無効電力Qが上限値(点H)や下限値(点K)になるときの評価値が算出されている。これらの基準点Eや点H,Kのそれぞれの無効電力Q及び評価値に基づいて、無効電力Qを変数とする目的関数が導出される。
【0065】
図9Bは、無効電力Qを変数とする目的関数の説明図である。
なお、図9Bの横軸は無効電力Qであり、縦軸は所定の評価値である。図9Bに示す点Ec2は、基準点E(図7参照)の無効電力Q40と評価値とで特定される点である。点Hc2は、上限値の無効電力Q31(図5の点H)と評価値とで特定される点である。また、点Kc1は、下限値の無効電力Q34(図5の点K)と評価値とで特定される点である。
【0066】
図9Bに示す点Ec2,Hc2,Kc2の無効電力Qと評価値とに基づいて、以下の式(7)に示すような、無効電力Qを変数とする目的関数が近似的に導出される。なお、式(6)に含まれるa5,b5は所定の値である。
【0067】
a5×(無効電力Q)+b5 ・・・(7)
【0068】
図9Bには、無効電力Qを変数とする1次関数(式(7))の直線L4を目的関数として示している。このように、処理部12は、連系点41,42(図1B参照)のそれぞれについて、有効電力Pを変数とする目的関数(図8のS401)と、無効電力Qを変数とする別の目的関数(図8のS402)と、を作成する。
【0069】
すなわち、処理部12は、可制御範囲X1(図7参照)において電気物理量(有効電力Pや無効電力Q)の値が異なる複数の条件(基準点Eや点F,G,H,K:図7参照)のそれぞれで所定の評価値を算出し、複数の条件に対応する電気物理量及び評価値に基づいて、目的関数を作成する。前記した複数の条件には、可制御範囲X1において評価値が最大又は最小になるもの(図7の基準点E)が含まれている。これによって、外部系統31W,32W(図1A参照)が最適な評価値をとるように運用されるときの有効電力Pや無効電力Qに基づいて、所定の目的関数を作成できる。したがって、目的関数の誤差を小さくすることができる。
【0070】
なお、図8のステップS401,S402の処理の順序は、適宜に変更することが可能である。また、ステップS401,S402の処理が並行して行われるようにしてもよい。その他にも、例えば、以下の式(8)に示すように、複数条件(つまり、複数の点)での評価値に基づいて、有効電力P及び無効電力Qを変数とする目的関数が導出されるようにしてもよい。なお、式(8)に含まれるa6,b6,c6,d6,e6は、それぞれ、所定の値である。
【0071】
a6×(有効電力P)+b6×(有効電力P)+c6×(無効電力Q)+d6×(無効電力Q)+e6 ・・・式(8)
【0072】
また、目的関数が1次式や2次式で表される必要は特になく、3次式や他の所定の形式で表されてもよい。次に、図3のステップS5の処理の表示例について説明する。
【0073】
図10Aは、縮約前の外部系統モデル31,32を含む表示例である。
図10Aの例では、主系統モデル20の各構成要素の接続関係が表示装置52(図2参照)に表示されている他、外部系統モデル31,32の各構成要素の接続関係が表示されている。また、それぞれの連系点41,42が線分で示されているが、丸印や星印といった所定のマークが表示されてもよい。また、連系点41,42の識別番号が表示されるようにしてもよい。
【0074】
図10Bは、外部系統縮約モデル31a,32aを含む表示例である。
図10Bの例では、連系点41において吹出しで囲った部分に所定の制約条件や目的関数が外部系統縮約モデル31aとして表示されている。なお、連系点42における外部系統縮約モデル32aも同様である。このように、処理部12は、連系点41,42における外部系統31W,32W(図1A参照)の所定の電気物理量(有効電力や無効電力や電圧)の可制御範囲を示す制約条件と、電気物理量を変数とする目的関数と、を含む情報を外部系統縮約モデル31a,32aとして、連系点41,42に対応付けて表示装置52(図2参照)に表示させる。
【0075】
これによって、それぞれの外部系統縮約モデル31a,32aの具体的な内容をユーザが一目で把握できる。なお、表示画面上のタブ等(図示せず)の選択によって、図10Aの表示画面と、図10Bの表示画面と、が切り替えられるようにしてもよい。これによって、外部系統モデル31,32の縮約前と縮約後の状態をユーザが把握しやすくなる。
【0076】
また、主系統20W(図1A参照)を管理している事業者や、この事業者から制御量の計算の委託を受けた他の事業者に外部系統縮約モデル31a,32aのデータが提供されるようにしてもよい。主系統20Wの制御機器(図示せず)の制御量は、主系統20Wにおける所定の制約条件及び目的関数と、外部系統縮約モデル31a,32aに含まれる制約条件及び目的関数と、に基づいて、周知の方法で算出される。
【0077】
<効果>
第1実施形態によれば、連系点41(図1C参照)のノードに外部系統縮約モデル31aが対応付けられるとともに、別の連系点42(図1C参照)のノードに外部系統縮約モデル32aが対応付けられる。また、外部系統縮約モデル31a,32aは、それぞれ、所定の可制御範囲で表される制約条件と、目的関数と、を含んでいる。
【0078】
これによって、例えば、処理部12が主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量が算出する際、主系統モデル20の所定の制約条件や目的関数に、外部系統縮約モデル31a,32aの制約条件や目的関数を追加した上で最適潮流計算を行えばよいため、処理の簡素化を図ることができる。このように、第1実施形態によれば、主系統20W(所定の電力系統)に複数の外部系統31W,32W(図1A参照)が接続される場合にも適切に対応できる。また、縮約前の外部系統モデル31,32を用いる場合に比べて、最適潮流計算を行う際の計算量が少なくなるため、計算時間を大幅に短縮できる。
【0079】
≪第2実施形態≫
第2実施形態は、可制御範囲が作成される際、有効電力Pや無効電力Qに所定の重み係数が乗算される点が第1実施形態とは異なっている。なお、縮約モデル作成システム10の構成(図2参照)や、可制御範囲の設定以外の処理(図3図6図9A図9B参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分の説明を省略する。
【0080】
図11は、第2実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、図11に示す一連の処理は、図3のステップS2に対応している。
ステップS201aにおいて処理部12は、連系点41(図1B参照)において外部系統モデル31(図1B参照)の(α×有効電力P+β×無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P61及び無効電力Q61を算出する。なお、α及びβは所定の重み係数であり、ユーザによる入力装置51(図2参照)を介した操作で設定される。
【0081】
例えば、有効電力Pよりも無効電力Qの方が評価値への影響度が高い場合には、有効電力Pの重み係数αよりも無効電力Qの重み係数βの方が大きな値に設定される。前記した影響度(つまり、重み係数α,βの大小関係)については、定性的な判断や所定のシミュレーション結果に基づいて、ユーザが事前に把握しているものとする。具体例を挙げると、評価値として送電損失が用いられる場合において、有効電力Pよりも無効電力Qの方が送電損失の低減に与える影響度が高い場合には、重み係数αよりも重み係数βの方が大きな値に設定される。このように、評価値への影響度が高い変数の可制御範囲を大きめに設定することが可能になる他、可制御範囲を設定する際のユーザの自由度が高められる。
【0082】
次に、ステップS202aにおいて処理部12は、連系点41(図1B参照)において外部系統モデル31(図1B参照)の(α×有効電力P-β×無効電力Q)の値が最大になるといの有効電力P62及び無効電力Q62を算出する。
ステップS203aにおいて処理部12は、連系点41(図1B参照)において外部系統モデル31(図1B参照)の(-α×有効電力P+β×無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P63及び無効電力Q63を算出する。
【0083】
ステップS204aにおいて処理部12は、連系点41(図1B参照)において外部系統モデル31(図1B参照)の(-α×有効電力P-β×無効電力Q)の値が最大になるときの有効電力P64及び無効電力Q64を算出する。このように、処理部12は、連系点41における外部系統モデル31の有効電力P及び無効電力Qを含む所定の数式(S201a~S204aの数式)に基づいて、可制御範囲を作成する際、この数式に含まれる有効電力P及び無効電力Qのそれぞれに所定の重み係数α,βを乗算する。
【0084】
次に、ステップS205aにおいて処理部12は、有効電力Pと無効電力Qの可制御範囲を作成する。なお、他方の連系点42(図1B参照)における有効電力P及び無効電力Qの可制御範囲も同様にして作成される。可制御範囲の作成については、第1実施形態で説明したステップS205の処理(図4参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0085】
<効果>
第2実施形態によれば、外部系統モデル31,32(図1B参照)において評価値への影響度の大きい電気物理量の可制御範囲をユーザが大きめの値に設定できる。したがって、比較的高い評価値を含む情報に基づいて、それぞれの目的関数を適切に設定できる。
【0086】
≪第3実施形態≫
第3実施形態は、評価値を最適化した場合の有効電力P及び無効電力Qを含むように可制御範囲が設定される点が、第1実施形態とは異なっている。なお、縮約モデル作成システム10の構成(図2参照)や、可制御範囲の設定以外の処理(図3図6図9A図9B参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分の説明を省略する。
【0087】
図12A図12Bは、第3実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける可制御範囲の作成に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、図12A図12Bに示す一連の処理は、図3のステップS2に対応している。また、図12Aに示すステップS201a~S204aの処理は、第2実施形態で説明したステップS201a~S204a(図11参照)の処理と同様であるから、説明を省略する。
【0088】
ステップS204aの処理を行った後、ステップS210において処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)の評価値を最適化する処理を行った場合の連系点41(図1B参照)における有効電力P71及び無効電力Q71を算出する。つまり、処理部12は、評価値の最大化(例えば、効率の最大化)又は最小化(例えば、コストの最小化)を図った場合の連系点41(図1B参照)での有効電力P及び無効電力Qを特定する。
【0089】
次に、図12BのステップS211において処理部12は、評価値が最適になるような有効電力P71が、有効電力P61又は有効電力P62のうちのいずれかよりも大きいか否かを判定する。なお、有効電力P61,P62は、図12AのステップS201a,S202aで算出された値である。ここで、ステップS211の処理の技術的な意味について、図13を用いて説明する。
【0090】
図13は、可制御範囲X3の作成に関する説明図である。
なお、図13の横軸は、連系点41(図1B参照)における外部系統モデル31(図1B参照)の無効電力Qである。また、図13の縦軸は、連系点41における外部系統モデル31の有効電力Pである。また、楕円状の破線Rの内部領域は、連系点41において有効電力P及び無効電力Qが実際にとり得る範囲を示している。図13に示す可制御範囲X2は、ステップS201a~S204aの算出結果に基づいて、点A,B,C,Dで特定される仮の可制御範囲である。また、図13に示す可制御範囲X3は、最終的に設定される可制御範囲である。
【0091】
例えば、外部系統モデル31(図1B参照)に基づく所定の評価値が最大又は最小になるような最適点M(有効電力P71及び無効電力Q71で特定される点)は、可制御範囲X2の内部に存在することもあるが、場合によっては、可制御範囲X2の外側に存在することもある。外部系統31W(図1A参照)では、評価値が最適となるように制御が行われることが多いため、前記した最適点Mが可制御範囲に含まれることが望ましい。そこで、第3実施形態では、最適点Mを含むように処理部12が可制御範囲X3を作成するようにしている。
【0092】
図12BのステップS211において有効電力P71が有効電力P61又は有効電力P62のうちのいずれかよりも大きい場合(S211:Yes)、処理部12の処理はステップS212に進む。つまり、有効電力P61及び有効電力P62のうちの小さい方よりも有効電力P71が大きい場合、処理部12の処理はステップS212に進む。
ステップS212において処理部12は、有効電力P61,P62及び無効電力Q61,Q62の上書き処理を行う。すなわち、処理部12は、可制御範囲X3(図13参照)が最適点Mを含むように、有効電力P61,P62及び無効電力Q61,Q62の値を変更する。
【0093】
図13の例では、最適点Mの有効電力P71が、有効電力P61,P62よりも大きくなっている(S211:Yes)。つまり、仮の可制御範囲X2よりもP軸方向の正側(紙面上側)に最適点M(P71,Q71)が存在している。このような場合には、有効電力P61,P62のそれぞれについて、その値の大きさが最適点Mの有効電力P71の値に等しくなるように上書き処理が行われる。
【0094】
無効電力Q61については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(α×有効電力P71+β×無効電力Q)が最大になるときの無効電力Qの値に上書きする処理が行われる。図13では、上書き後の(P61m,Q61m)で特定される点Amを示している。他方の無効電力Q62については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(α×有効電力P71-β×無効電力Q)が最大になるときの無効電力Qの値に上書きする処理が行われる。図13では、上書き処理後の(P62m,Q62m)で特定される点Bmを示している。
【0095】
なお、ステップS211の判定条件が満たされた場合、点C(P63,Q63)や点D(P64,Q64)の位置を変更する必要は特にない。点C,Dの位置を変更せずとも、次のステップS213の処理で、図13の点Cm、点Dmを含むような矩形状の可制御範囲X3が作成されるからである。
【0096】
次に、図12BのステップS213において処理部12は、有効電力P及び無効電力Qの可制御範囲を作成する。図13の例では、点Am,Bm,C,Dのそれぞれの有効電力P及び無効電力Qに基づいて、可制御範囲X3が作成される。このように、処理部12は、所定の評価値が最大又は最小になるときの条件を示す点(図13の最適点M)が可制御範囲X3に含まれるように、可制御範囲X3を作成する。なお、有効電力Pや無効電力Qの上限値・下限値に基づいて可制御範囲X3を作成する処理については、第1実施形態のステップS205の処理(図4図5参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0097】
また、図12BのステップS211において最適点Mの有効電力P71が、有効電力P61又は有効電力P62のうちのいずれかよりも大きくない場合(S211:No)、処理部12の処理はステップS214に進む。つまり、最適点Mの有効電力P71が、有効電力P61以下であり、かつ、有効電力P62以下である場合、処理部12の処理はステップS214に進む。
【0098】
ステップS214において処理部12は、評価値が最適になるような有効電力P71が、有効電力P63又はP64のうちのいずれかよりも小さいか否かを判定する。なお、有効電力P63,P64は、図12AのステップS203a,S204aで算出された値である。ステップS214において有効電力P71が有効電力P63,P64のうちのいずれかよりも小さい場合(S214:Yes)、処理部12の処理はステップS215に進む。つまり、有効電力P63及び有効電力P63のうちの大きい方よりも有効電力P71が小さい場合、処理部12の処理はステップS215に進む。この場合には、図示はしないが、仮の可制御範囲X2(図13参照)よりもP軸方向の負側(紙面下側)に最適点M(P71,Q71)が存在している。
【0099】
ステップS215において処理部12は、有効電力P63,P64及び無効電力Q63,Q64の上書き処理を行う。つまり、処理部12は、可制御範囲X3が最適点Mを含むように、有効電力P63,P64及び無効電力Q63,Q64を変更する。具体的には、有効電力P63,P64の値が最適点Mの有効電力P71の値に等しくなるように上書き処理が行われる。
また、無効電力Q63については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(-α×有効電力P71+β×無効電力Q)が最大になるときの無効電力Qの値に上書きする処理が行われる。他方の無効電力Q64については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(-α×有効電力P71-β×無効電力Q)が最大になるときの無効電力Qの値に上書きする処理が行われる。ステップS215の処理を行った後、ステップS213において処理部12は、可制御範囲を設定する。
【0100】
また、ステップS214において最適点Mの有効電力P71が、有効電力P63又は有効電力P64のうちのいずれかよりも小さくない場合(S214:No)、処理部12の処理はステップS216に進む。つまり、最適点Mの有効電力P71が、有効電力P63以上であり、かつ、有効電力P64以上である場合、処理部12の処理はステップS216に進む。
【0101】
ステップS216において処理部12は、評価値が最適になるような無効電力Q71が、無効電力Q61,Q63のうちのいずれかよりも大きいか否かを判定する。なお、無効電力Q61,Q63は、図12AのステップS201a,S203aで算出された値である。ステップS216において無効電力Q71が無効電力Q61,Q63のうちのいずれかよりも大きい場合(S216:Yes)、処理部12の処理はステップS217に進む。この場合には、図示はしないが、可制御範囲X2(図13参照)よりもQ軸方向の正側(紙面右側)に最適点M(P71,Q71)が存在している。
【0102】
ステップS217において処理部12は、有効電力P61,P63及び無効電力Q61,Q63の上書き処理を行う。つまり、処理部12は、可制御範囲X3が最適点Mを含むように、有効電力P61,P63及び無効電力Q61,Q63を変更する。具体的には、無効電力Q61,Q63の値が最適点Mの無効電力Q71の値に等しくなるように上書き処理が行われる。
また、有効電力P61については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(α×有効電力P+β×無効電力Q71)が最大になるときの有効電力Pの値に上書きする処理が行われる。他方の有効電力P63については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(-α×有効電力P+β×無効電力Q71)が最大になるときの有効電力Pの値に上書きする処理が行われる。ステップS217の処理を行った後、ステップS213において処理部12は、可制御範囲を設定する。
【0103】
また、ステップS216において最適点Mの無効電力Q71が、無効電力Q61又は無効電力Q63のうちのいずれかよりも大きくない場合(S216:No)、処理部12の処理はステップS218に進む。
ステップS218において処理部12は、評価値が最適になるような無効電力Q71が、無効電力Q62又は無効電力Q64のうちのいずれかよりも小さいか否かを判定する。なお、無効電力Q62,Q64は、図12AのステップS202a,S204aで算出された値である。ステップS218において無効電力Q71が無効電力Q62又は無効電力Q64のうちのいずれかよりも小さい場合(S218:Yes)、処理部12の処理はステップS219に進む。この場合には、図示はしないが、可制御範囲X2(図13参照)よりもQ軸方向の負側(紙面左側)に最適点M(P71,Q71)が存在している。
【0104】
ステップS219において処理部12は、有効電力P62,P64及び無効電力Q62,Q64の上書き処理を行う。つまり、処理部12は、可制御範囲X3が最適点Mを含むように、有効電力P62,P64及び無効電力Q62,Q64を変更する。具体的には、無効電力Q62,Q64の値が最適点Mの無効電力Q71の値に等しくなるように上書き処理が行われる。
また、有効電力P62については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(α×有効電力P-β×無効電力Q71)が最大になるときの有効電力Pの値に上書きする処理が行われる。他方の有効電力P64については、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)において、(-α×有効電力P-β×無効電力Q71)が最大になるときの有効電力Pの値に上書きする処理が行われる。ステップS219の処理を行った後、ステップS213において処理部12は、可制御範囲を設定する。
【0105】
また、ステップS218において無効電力Q71が無効電力Q62又は無効電力Q64のうちのいずれかよりも小さくない場合(S218:No)、処理部12は、有効電力Pや無効電力Qの上書き処理を特に行うことなく、ステップS213において可制御範囲を設定する。この場合には、上書き処理を行わずとも、有効電力P61~P64及び無効電力Q61~64で特定される可制御範囲X2(図13参照)の中に最適点Mが含まれているからである。
なお、ステップS211,S214,S216,S218の判定処理については、順序が適宜に変更されてもよい。また、他方の連系点42(図1B参照)における可制御範囲の設定についても、同様の処理が行われる。
【0106】
<効果>
第3実施形態によれば、外部系統モデル31,32(図1B参照)において評価値が最適化されるときの電気物理量の変数値(有効電力P71及び無効電力Q71)を含むように可制御範囲X3が設定される。したがって、比較的高い評価値を含む情報に基づいて、目的関数を作成できる。これによって、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を適切に設定できる。
【0107】
≪第4実施形態≫
第4実施形態は、目的関数が区分線形関数である点が第1実施形態とは異なっている。なお、縮約モデル作成システム10の構成(図2参照)や、目的関数の作成以外の処理(図3図7参照)については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分の説明を省略する。
【0108】
図14は、第4実施形態に係る縮約モデル作成システムにおける目的関数の作成に関する処理のフローチャートである(適宜、図2も参照)。
なお、図14に示す一連の処理は、図3のステップS4に対応している。また、図14の「START」時には、図7の基準点Eの他、点F,G,H,Kのそれぞれにおける評価値が算出されているものとする。
ステップS401aにおいて処理部12は、有効電力Pを変数とする、区分された目的関数を作成する。すなわち、処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)における所定の無効電力Qと、大きさが異なる複数の有効電力Pと、で特定される各評価値に基づいて、有効電力Pを変数とする目的関数を作成する。図7の例では、有効電力Pの値が異なる基準点E及び点F,Gのそれぞれにおいて、評価値が算出される。これらの評価値と有効電力Pとに基づいて、有効電力Pを変数とする目的関数が区分線形関数として作成される。
【0109】
図15Aは、有効電力Pを変数とする目的関数の説明図である。
なお、図15Aに示す点Ec1,Gc1,Fc1は、第1実施形態で説明した図9Aのものと同様である。第1実施形態では直線L3(図9A参照)のグラフで表される目的関数が作成されたが、第4実施形態では、図15Aに示すように、折れ線状のグラフで表される区分線形関数が目的関数として作成される。
【0110】
具体的には、下限値の有効電力P33以上であり、かつ、基準点E(図7参照)の有効電力P40以下の範囲では、点Gc1と点Ec1とを結ぶ線分L5のグラフの目的関数が作成される。線分L5のグラフの目的関数は、例えば、以下の式(9)の1次関数で表される。なお、式(9)に含まれる「有効電力P下限」は、有効電力Pの下限値であり、図15Aの有効電力P33に対応している。また、式(9)に含まれるa7,b7は、所定の値である。
【0111】
a7×(有効電力P)+b7 [有効電力P下限≦有効電力P≦有効電力P40]
・・・(式9)
【0112】
また、基準点E(図7参照)の有効電力P40よりも大きく、かつ、上限値の有効電力P32以下の範囲では、点Ec1と点Fc1とを結ぶ線分L6のグラフの目的関数が作成される。線分L6のグラフの目的関数は、以下の式(10)の1次関数で表される。なお、式(10)に含まれる「有効電力P上限」は、有効電力Pの上限値であり、図15Aの有効電力P32に対応している。また、式(10)に含まれるc7,d7は、所定の値である。
【0113】
c7×(有効電力P)+d7 [有効電力P40<有効電力P≦有効電力P上限
・・・(式10)
【0114】
次に、図14のステップS402aにおいて処理部12は、無効電力Qを変数とする、区分された目的関数を作成する。すなわち、処理部12は、外部系統モデル31(図1B参照)の連系点41(図1B参照)における所定の有効電力Pと、大きさが異なる無効電力Qと、で特定される各評価値に基づいて、無効電力Qを変数とする目的関数を作成する。図7の例では、無効電力Qの値が異なる基準点E及び点H,Kのそれぞれにおいて、評価値が算出される。これらの評価値と無効電力Qとに基づいて、無効電力Qを変数とする目的関数が区分線形関数として作成される。
【0115】
図15Bは、無効電力Qを変数とする目的関数の説明図である。
なお、図15Bに示す点Ec2,Kc2,Hc2は、第1実施形態で説明した図9Bのものと同様である。第1実施形態では直線L4(図9B参照)のグラフで表される目的関数が作成されたが、第4実施形態では、図15Bに示すように、折れ線状のグラフで表される区分線形関数が目的関数として作成される。
【0116】
具体的には、下限値の無効電力Q34以上であり、かつ、基準点E(図7参照)の無効電力Q40以下の範囲では、点Kc2と点Ec2とを結ぶ線分L7のグラフの目的関数が作成される。線分L7のグラフの目的関数は、例えば、以下の式(11)の1次関数で表される。なお、式(11)に含まれる「無効電力Q下限」は、無効電力Qの下限値であり、図15Bの無効電力Q34に対応している。また、式(11)に含まれるa8,b8は、所定の値である。
【0117】
a8×(無効電力Q)+b8 [無効電力Q下限≦無効電力Q≦無効電力Q40]
・・・(式11)
【0118】
また、基準点E(図7参照)の無効電力Q40よりも大きく、かつ、上限値の無効電力Q31以下の範囲では、点Ec2と点Hc2とを結ぶ線分L8のグラフの目的関数が作成される。線分L8のグラフの目的関数は、以下の式(12)の1次関数で表される。なお、式(12)に含まれる「無効電力Q上限」は、無効電力Qの上限値であり、図15Bの無効電力Q31に対応している。また、式(11)に含まれるc8,d8は、所定の値である。
【0119】
c8×(無効電力Q)+d8 [無効電力Q40<無効電力Q≦無効電力Q上限
・・・(式12)
【0120】
このようにして、処理部12は、有効電力Pや無効電力Qを変数とする目的関数を区分線形関数として作成する。
【0121】
<効果>
第4実施形態によれば、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)の目的関数が、区分線形関数として作成される。これによって、目的関数が直線のグラフで表される場合(図9A図9B参照)に比べて、目的関数の誤差(最適な所定の目的関数に対する誤差)を低減し、高精度化を図ることができる。
【0122】
≪第5実施形態≫
第5実施形態では、第1実施形態で説明した外部系統縮約モデル31a,31b(図1C参照)を用いて、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定する制御量決定システム100(図16参照)について説明する。なお、外部系統縮約モデル31a,31bの算出に関する構成や処理については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0123】
図16は、第5実施形態に係る制御量決定システム100を含む機能ブロック図である。
図16に示す制御量決定システム100は、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定するシステムである。前記したように、主系統20Wは、主系統モデル20(図1C参照)としてモデル化されている。図16に示すように、制御量決定システム100は、縮約モデル作成システム10と、主系統情報入力部61と、主系統制御量決定部62と、主系統制御量出力部63と、を備えている。
【0124】
縮約モデル作成システム10は、外部系統モデル31,32(図1B参照)を縮約して、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)を作成するシステムである。縮約モデル作成システム10の構成や処理については、第1実施形態(図2参照)と同様であるから、説明を省略する。
【0125】
主系統情報入力部61は、主系統モデル20(図1C参照)の情報を入力するためのインタフェースである。すなわち、主系統情報入力部61には、主系統20W(電力系統:図1A参照)のモデルである主系統モデル20(図1C参照)の情報が入力される。図16の例では、情報入力部121が入力装置51に接続される例を示しているが、これに限定されるものではない。例えば、情報入力部121が所定のデータベース(図示せず)や計測器(図示せず)から情報を取得するようにしてもよい。
【0126】
主系統制御量決定部62は、縮約モデル作成システム10によって作成される外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)と、主系統情報入力部61を介して入力される主系統モデル20(図1C参照)と、に基づいて、主系統20W(電力系統:図1A参照)の制御機器の制御量を決定する。
【0127】
例えば、主系統制御量決定部62は、主系統モデル20(図1C参照)の制約条件と、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)の制約条件と、で規定される範囲内で、主系統モデル20及び外部系統縮約モデル31a,32aのそれぞれの目的関数を用いて最適化を行うことで、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定する。主系統制御量出力部63は、主系統制御量決定部62で決定された制御量を表示装置52に所定に表示させる。
【0128】
<効果>
第5実施形態によれば、外部系統縮約モデル31a,32a(図1C参照)の制約条件や目的関数の他、主系統モデル20(図1C参照)の制約条件や目的関数に基づいて、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定できる。これによって、主系統20Wで周波数や電圧を許容範囲におさめつつ、需要家に電力を安定的に供給できる。
【0129】
≪第6実施形態≫
第6実施形態では、第1実施形態で説明した外部系統縮約モデル31a,31b(図1C参照)を用いて、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定するとともに、外部系統31W,32W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定する制御量決定システム100A(図17参照)について説明する。なお、外部系統縮約モデル31a,31bの算出に関する構成や処理については、第1実施形態と同様である。したがって、第1実施形態とは異なる部分について説明し、重複する部分については説明を省略する。
【0130】
図17は、第6実施形態に係る制御量決定システム100Aを含む機能ブロック図である。
図17に示す制御量決定システム100Aは、主系統20W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定するとともに、外部系統31W,32W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定するシステムである。図17に示すように、制御量決定システム100Aは、縮約モデル作成システム10と、主系統情報入力部61と、主系統制御量決定部62と、主系統制御量出力部63と、を備えている。また、制御量決定システム100Aは、前記した構成の他に、外部系統情報入力部71と、外部系統制御量決定部72と、外部系統制御量出力部73と、を備えている。なお、縮約モデル作成システム10や主系統情報入力部61や主系統制御量出力部63については、第5実施形態(図16参照)で説明したものと同様であるから、その説明を省略する。
【0131】
主系統制御量決定部62は、主系統20W(電力系統:図1A参照)の制御機器の制御量を決定するとともに、連系点41W,42W(図1A参照)における主系統20Wの有効電力(電気物理量)や無効電力(電気物理量)を算出する。外部系統情報入力部71は、外部系統モデル31,32(図1B参照)の情報を入力するためのインタフェースである。
【0132】
外部系統制御量決定部72は、外部系統31W,32W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定する。すなわち、外部系統制御量決定部72は、連系点41W,42W(図1A参照)における主系統20W(電力系統:図1A参照)の有効電力(電気物理量)や無効電力(電気物理量)と、外部系統モデル31,32(図1B参照)と、に基づいて、外部系統31W,32Wの制御機器の制御量を決定する。
【0133】
例えば、外部系統制御量決定部72は、連系点41(図1B参照)における主系統モデル20(図1B参照)の制約条件、及び外部系統縮約モデル31a(図1C参照)の制約条件で規定される有効電力・無効電力の範囲内で、主系統モデル20及び外部系統モデル31(図1B参照)のそれぞれの目的関数を最適化することで、外部系統31W(図1A参照)の制御機器の制御量を決定する。同様にして、外部系統制御量決定部72は、他方の外部系統32W(図1A参照)の制御機器の制御量も決定する。外部系統制御量出力部73は、外部系統制御量決定部72で決定された制御量を表示装置52に表示させる。
【0134】
<効果>
第6実施形態によれば、主系統モデル20及び外部系統モデル31,32の目的関数を最適化することで、主系統20Wの制御機器の制御量を決定できるとともに、外部系統31W、32Wの制御機器の制御量を決定できる。
【0135】
≪変形例≫
以上、本開示に係る縮約モデル作成システム10や縮約モデル作成方法の他、制御量決定システム100,100Aについて各実施形態で説明したが、これらの記載に限定されるものではなく、種々の変更を行うことができる。
例えば、各実施形態では、主系統20W(図1A参照)に2つの外部系統31W,32W(図1A参照)が接続される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、主系統20Wに接続される外部系統の数は1つであってもよく、また、3つ以上であってもよい。この場合において、外部系統と連系点とは1対1で対応しているものとする。
【0136】
また、第1実施形態では、図6のステップS301~305において、異なる条件で計5つの評価値が計算される場合について説明したが、これに限らない。すなわち、評価値が算出される際の条件の数は、2つ以上であればよい。なお、他の各実施形態についても同様のことがいえる。
【0137】
また、第1実施形態で説明した可制御範囲X1(図5参照)を含む情報の他、可制御範囲X1において評価値が算出される際の複数の条件(図7参照)を含む情報が表示装置52(図2参照)に表示されるようにしてもよい。また、図9A図9Bに示す目的関数のグラフや数式が表示装置52に表示されるようにしてもよい。その他、図13に示す仮の可制御範囲X2と、最終的な可制御範囲X3と、が重なった状態で表示装置52に表示されるようにしてもよい。これによって、ユーザが可制御範囲や評価値の情報を把握しやすくなる。
【0138】
また、最適化の方法は、各実施形態で説明したものに限定されない。例えば、連系点41,42における評価値の最適化の他、有効電力Pの最大化や、無効電力Qの最大化、有効電力Pの最小化や、無効電力Qの最小化といった多目的最適化が行われるようにしてもよい。
また、第4実施形態では、目的関数として区分線形関数が用いられる場合について説明したが、これに限らない。例えば、目的関数として、グラフが曲線になるような所定の関数が用いられてもよい。
【0139】
また、各実施形態では、電気物理量として有効電力Pや無効電力Qが用いられる場合について説明したが、これに限らない。すなわち、有効電力P、無効電力Q、電圧V、電流I、及び位相角θのうちの少なくとも一つが電気物理量として用いられてもよい。
【0140】
また、各実施形態は、適宜に組み合わせることが可能である。例えば、第2実施形態と第4実施形態とを組み合わせて、処理部12が可制御範囲を設定する際に有効電力Pや無効電力Qに所定の重み係数を乗算し(第2実施形態)、さらに、目的関数として区分線形関数を用いるようにしてもよい(第4実施形態)。その他にも、例えば、第3実施形態と第5実施形態との組合せや、第3実施形態と第6実施形態との組合せも可能である。また、第4実施形態と第5実施形態との組合せや、第4実施形態と第6実施形態との組合せの他、3つ以上の実施形態の組合せといったさまざまな組合せが可能である。
【0141】
また、縮約モデル作成システム10の処理(縮約モデル作成方法)が、コンピュータの所定のプログラムとして実行されるようにしてもよい。前記したプログラムは、通信線を介して提供できる他、所定の記録媒体に書き込んで配布することも可能である。
【0142】
また、本開示は、各実施形態に限定されるものではなく、様々な変形例が含まれる。例えば、各実施形態は、本開示を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明したすべての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることが可能であり、また、ある実施形態の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施形態の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることが可能である。
【0143】
また、前記の各構成、機能、処理部、処理手段等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等によりハードウェアで実現してもよい。また、前記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。各機能を実現するプログラム、テーブル、ファイル等の情報は、メモリや、ハードディスク、SSD(Solid State Drive)等の記録装置、又は、ICカード、SDカード、DVD等の記録媒体に格納することができる。
また、制御線や情報線は説明上必要と考えられるものを示しており、製品上必ずしも全ての制御線や情報線を示しているとは限らない。実際には、ほとんどすべての構成が相互に接続されていると考えてもよい。
【符号の説明】
【0144】
10 縮約モデル作成システム
11 記憶部
12 処理部
121 情報入力部
122 可制御範囲作成部
123 評価値算出部
124 目的関数作成部
125 縮約モデル出力部
20 主系統モデル
31,32 外部系統モデル
31a,32a 外部系統縮約モデル
41,42 連系点
51 入力装置
52 表示装置
61 主系統情報入力部
62 主系統制御量決定部
63 主系統制御量出力部
71 外部系統情報入力部
72 外部系統制御量決定部
73 外部系統制御量出力部
100,100A 制御量決定システム
41W,42W 連系点
X1,X2,X3 可制御範囲
20W 主系統(所定の電力系統)
31W,32W 外部系統
図1A
図1B
図1C
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図10A
図10B
図11
図12A
図12B
図13
図14
図15A
図15B
図16
図17