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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176785
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】定着装置
(51)【国際特許分類】
   G03G 15/20 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
G03G15/20 535
G03G15/20 510
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095583
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003562
【氏名又は名称】東芝テック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001634
【氏名又は名称】弁理士法人志賀国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】遠藤 佐助
【テーマコード(参考)】
2H033
【Fターム(参考)】
2H033AA06
2H033AA23
2H033BA25
2H033BB03
2H033BB05
2H033BB06
2H033BB18
2H033BB21
2H033BB29
2H033BB30
2H033BB33
2H033BB35
2H033BB37
2H033BD03
2H033CA07
2H033CA28
2H033CA30
2H033CA44
(57)【要約】
【課題】高い耐久性を有する定着装置を提供することである。
【解決手段】実施形態の定着装置は、筒状体と、発熱摺動部材と、ホルダと、センサと、加圧ローラと、加圧機構と、移動機構と、を持つ。発熱摺動部材は、筒状体の内側に配置されている。発熱摺動部材は、筒状体の軸方向を長手方向とする。発熱摺動部材は、通電により発熱する発熱領域を有する。ホルダは、発熱摺動部材を保持する。センサは、発熱摺動部材に接触して発熱摺動部材の温度を検知する。加圧ローラは、筒状体の外周面に接触して筒状体との間にニップを形成する。加圧機構は、第1状態および第2状態を遷移可能である。第1状態は、筒状体および加圧ローラによりニップが形成される。第2状態は、筒状体および加圧ローラが相互に接触し、かつ第1状態よりも筒状体および加圧ローラに相互に掛かる力が小さい。移動機構は、加圧機構に第1状態および第2状態を遷移させる。
【選択図】図9
【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム状の筒状体と、
前記筒状体の内側に配置され、前記筒状体の軸方向を長手方向とし、通電により発熱する発熱領域を有する発熱摺動部材と、
前記発熱摺動部材を保持するホルダと、
前記発熱摺動部材に接触して前記発熱摺動部材の温度を検知するセンサと、
前記筒状体の外周面に接触して前記筒状体との間にニップを形成する加圧ローラと、
前記筒状体および前記加圧ローラにより前記ニップが形成される第1状態、並びに前記筒状体および前記加圧ローラが相互に接触し、かつ前記第1状態よりも前記筒状体および前記加圧ローラに相互に掛かる力が小さい第2状態を遷移可能な加圧機構と、
前記加圧機構に前記第1状態および前記第2状態を遷移させる移動機構と、
を備える定着装置。
【請求項2】
前記加圧機構は、前記加圧ローラを自転可能かつ前記軸方向の直交方向に沿って移動可能に支持し、
前記移動機構は、
前記加圧機構に配置されたカムフォロワと、
前記カムフォロワに当接するカム面を有するとともに自転可能に設けられ、前記カムフォロワと協働して前記加圧機構を介して前記加圧ローラを前記直交方向に移動させ、前記カム面のうち最も外径の小さい小径部が前記第2状態で前記カムフォロワに当接するカムと、
前記カムを一方向に回転させる駆動源と、
を有する、
請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記ホルダは、前記筒状体から前記加圧ローラを離した状態で、前記軸方向における前記発熱領域と重なる範囲で、前記発熱摺動部材と前記ホルダとの間に隙間ができるように、前記発熱摺動部材を保持している、
請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記発熱摺動部材は、ヒータユニットと伝熱部材とを含み、前記伝熱部材が前記ヒータユニットと前記ホルダとの間にある、
請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記発熱摺動部材は、前記軸方向における前記発熱領域の外側で前記ホルダに保持されている、
請求項3に記載の定着装置。
【請求項6】
前記センサは、前記ホルダに対して前記発熱摺動部材側に付勢され、
前記発熱摺動部材は、前記センサによって前記加圧ローラ側に押されている、
請求項5に記載の定着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、定着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像処理装置として、シートに画像を形成する画像形成装置が利用されている。画像形成装置は、トナーをシートに定着させる定着装置を有する。定着装置には、耐久性の向上が求められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008-304866号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明が解決しようとする課題は、高い耐久性を有する定着装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
第1の態様に係る定着装置は、筒状体と、発熱摺動部材と、ホルダと、センサと、加圧ローラと、加圧機構と、移動機構と、を持つ。筒状体は、フィルム状である。発熱摺動部材は、筒状体の内側に配置されている。発熱摺動部材は、筒状体の軸方向を長手方向とする。発熱摺動部材は、通電により発熱する発熱領域を有する。ホルダは、発熱摺動部材を保持する。センサは、発熱摺動部材に接触して発熱摺動部材の温度を検知する。加圧ローラは、筒状体の外周面に接触して筒状体との間にニップを形成する。加圧機構は、第1状態および第2状態を遷移可能である。第1状態は、筒状体および加圧ローラによりニップが形成される。第2状態は、筒状体および加圧ローラが相互に接触し、かつ第1状態よりも筒状体および加圧ローラに相互に掛かる力が小さい。移動機構は、加圧機構に第1状態および第2状態を遷移させる。
【0006】
第2の態様に係る定着装置は、上記第1の態様に係る定着装置において、加圧機構は、加圧ローラを自転可能かつ軸方向の直交方向に沿って移動可能に支持し、移動機構は、加圧機構に配置されたカムフォロワと、カムフォロワに当接するカム面を有するとともに自転可能に設けられ、カムフォロワと協働して加圧機構を介して加圧ローラを直交方向に移動させ、カム面のうち最も外径の小さい小径部が第2状態でカムフォロワに当接するカムと、カムを一方向に回転させる駆動源と、を有していてもよい。
【0007】
第3の態様に係る定着装置は、上記第1の態様または第2の態様に係る定着装置において、ホルダは、筒状体から加圧ローラを離した状態で、軸方向における発熱領域と重なる範囲で、発熱摺動部材とホルダとの間に隙間ができるように、発熱摺動部材を保持していてもよい。
【0008】
第4の態様に係る定着装置は、上記第1の態様から第3の態様のいずれかの態様に係る定着装置において、ヒータユニットと伝熱部材とを含み、前記伝熱部材が前記ヒータユニットと前記ホルダとの間にあってもよい。
【0009】
第5の態様に係る定着装置は、上記第3の態様または第4の態様に係る定着装置において、発熱摺動部材は、軸方向における発熱領域の外側でホルダに保持されていてもよい。
【0010】
第6の態様に係る定着装置は、上記第5の態様に係る定着装置において、センサは、ホルダに対して発熱摺動部材側に付勢され、発熱摺動部材は、センサによって加圧ローラ側に押されていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施形態の画像処理装置の概略構成図。
図2】実施形態の画像形成装置のハードウエア構成図。
図3】第1の実施形態の定着装置の正面断面図。
図4図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図。
図5】第1の実施形態のヒータユニットの底面図。
図6】ヒータ温度計およびサーモスタットの平面図。
図7図3のVII-VII線におけるフィルムユニットの断面図。
図8】定着装置の正面図。
図9】加圧機構の動作説明図。
図10図3のVII-VII線における定着装置の断面図。
図11】制御部の機能構成を示すブロック図。
図12】第2の実施形態のヒータユニットの底面図。
図13】第3の実施形態のヒータユニットの底面図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態の定着装置を、図面を参照して説明する。なお以下の説明では、同一または類似の機能を有する構成に同一の符号を付して、それら構成の重複する説明は省略する場合がある。
【0013】
図1は、実施形態の画像処理装置の概略構成図である。
本実施形態に係る画像処理装置は、例えば、複合機(MFP:Multi Function Peripheral)プリンタ、複写機等の画像形成装置1である。例えば、画像形成装置1は、ワークプレイスに設置される。画像形成装置1は、シートSに画像を形成する処理を行う。シートSは、用紙でもよい。画像形成装置1は、ハウジング10と、スキャナ部2と、画像形成ユニット3と、シート供給部4と、搬送部5と、排紙トレイ7と、反転ユニット9と、コントロールパネル8と、制御部6と、を有する。
【0014】
ハウジング10は、画像形成装置1の外形を形成する。
スキャナ部2は、複写対象物の画像情報を光の明暗として読み取り、画像信号を生成する。スキャナ部2は、生成した画像信号を画像形成ユニット3に出力する。
画像形成ユニット3は、スキャナ部2から受信した画像信号または外部から受信した画像信号に基づいて、トナー等の記録剤によりトナー像を形成する。画像形成ユニット3は、トナー像をシートSの表面上に転写する。画像形成ユニット3は、シートSの表面上のトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。画像形成ユニット3の詳細は後述される。
【0015】
シート供給部4は、画像形成ユニット3がトナー像を形成するタイミングに合わせて、シートSを1枚ずつ搬送部5に供給する。シート供給部4は、シート収容部20と、ピックアップローラ21と、を有する。
シート収容部20は、所定のサイズおよび種類のシートSを収納する。
ピックアップローラ21は、シート収容部20からシートSを1枚ずつ取り出す。ピックアップローラ21は、取り出したシートSを搬送部5へ供給する。
【0016】
搬送部5は、シート供給部4から供給されるシートSを画像形成ユニット3に搬送する。搬送部5は、搬送ローラ23と、レジストローラ24と、を有する。
搬送ローラ23は、ピックアップローラ21から供給されるシートSをレジストローラ24へ搬送する。搬送ローラ23は、シートSの搬送方向の先端をレジストローラ24のニップNに突き当てる。
レジストローラ24は、ニップNにおいてシートSを撓ませることにより、搬送方向でのシートSの先端の位置を整える。レジストローラ24は、画像形成ユニット3がトナー像をシートSに転写するタイミングに応じてシートSを搬送する。
【0017】
画像形成ユニット3について説明する。
画像形成ユニット3は、複数の画像形成部25と、レーザ走査ユニット26と、中間転写ベルト27と、転写部28と、定着装置30と、を有する。
画像形成部25は、感光体ドラム29を有する。画像形成部25は、スキャナ部2または外部からの画像信号に応じたトナー像を感光体ドラム29に形成する。複数の画像形成部25は、それぞれイエロー、マゼンタ、シアン、ブラックのトナーによるトナー像を形成する。
【0018】
感光体ドラム29の周囲には、帯電器、現像器などが配置される。帯電器は、感光体ドラム29の表面を帯電させる。現像器は、イエロー、マゼンタ、シアン、およびブラックのトナーを含む現像剤を収容する。現像器は、感光体ドラム29上の静電潜像を現像する。この結果、感光体ドラム29上には、各色のトナーによるトナー像が形成される。
【0019】
レーザ走査ユニット26は、帯電した感光体ドラム29にレーザ光Lを走査して感光体ドラム29を露光する。レーザ走査ユニット26は、各色の画像形成部25の感光体ドラム29を、各別のレーザ光LY,LM,LC,LKで露光する。これによりレーザ走査ユニット26は、感光体ドラム29に静電潜像を形成する。
【0020】
中間転写ベルト27には、感光体ドラム29の表面のトナー像が1次転写される。
転写部28は、中間転写ベルト27上に1次転写されたトナー像を2次転写位置においてシートSの表面上に転写する。
定着装置30は、シートSに転写されたトナー像を加熱および加圧して、トナー像をシートSに定着させる。定着装置30の詳細は後述される。
【0021】
反転ユニット9は、シートSの裏面に画像を形成するためシートSを反転させる。反転ユニット9は、定着装置30から排出されるシートSを、スイッチバックにより表裏反転させる。反転ユニット9は、反転したシートSをレジストローラ24に向けて搬送する。
排紙トレイ7は、画像が形成されて排出されたシートSを載置する。
コントロールパネル8は、操作者が画像形成装置1を操作するための情報を入力する入力部の一部である。コントロールパネル8は、タッチパネルや各種ハードキーを有する。
制御部6は、画像形成装置1の各部の制御を行う。
【0022】
図2は、実施形態の画像形成装置のハードウエア構成図である。
図2に示すように、画像形成装置1は、バスで接続されたCPU(Central Processing Unit)91、メモリ92、補助記憶装置93などを備え、プログラムを実行する。画像形成装置1は、プログラムの実行によってスキャナ部2、画像形成ユニット3、シート供給部4、搬送部5、反転ユニット9、コントロールパネル8、通信部90を備える装置として機能する。
【0023】
CPU91は、メモリ92および補助記憶装置93に記憶されたプログラムを実行することによって制御部6として機能する。制御部6は、画像形成装置1の各機能部の動作を制御する。制御部6の機能構成については後述される。
補助記憶装置93は、磁気ハードディスク装置や半導体記憶装置などの記憶装置を用いて構成される。補助記憶装置93は、情報を記憶する。
通信部90は、自装置を外部装置に接続するための通信インタフェースを含む。通信部90は、通信インタフェースを介して外部装置と通信する。
【0024】
(第1の実施形態)
第1の実施形態の定着装置30について説明する。
図3は、第1の実施形態の定着装置の正面断面図である。
図3に示すように、定着装置30は、加圧ローラ31と、フィルムユニット35と、加圧機構70と、移動機構80と、フレーム34と、を有する。加圧ローラ31とフィルムユニット35との間には、定着ニップFNが形成される。加圧ローラ31は、定着ニップFNに進入したシートSのトナー像を加圧する。加圧ローラ31は、自転してシートSを搬送する。フィルムユニット35は、定着ニップFNに進入したシートSのトナー像を加熱する。フレーム34は、画像形成装置1のハウジング10に固定されている。フレーム34は、加圧ローラ31、フィルムユニット35および移動機構80を支持している。
【0025】
本願において、z方向、x方向およびy方向が以下のように定義される。z方向は、加圧ローラ31とフィルムユニット35とが並ぶ方向である。+z方向は、フィルムユニット35から加圧ローラ31に向かう方向である。x方向は、定着ニップFNにおけるシートSの搬送方向であり、+x方向はシートSの搬送方向の下流側である。y方向は、z方向およびx方向に直交する方向であり、加圧ローラ31の軸方向である。
【0026】
加圧ローラ31は、加圧ローラ回転中心rcの周りを回転可能である。加圧ローラ31は、芯金32と、弾性層33と、離型層と、を有する。
【0027】
芯金32は、ステンレス等の金属材料により円柱状に形成される。芯金32の軸方向の両端部は、回転可能に支持される。芯金32は、モータにより回転駆動される。芯金32は、カム部材に当接する。カム部材は、回転することにより、芯金32をフィルムユニット35に対して接近および離反させる。
【0028】
弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。弾性層33は、芯金32の外周面上に一定の厚さで形成される。
離型層は、PFA(テトラフルオロエチレン・パーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体)などの樹脂材料で形成される。離型層は、弾性層33の外周面上に形成される。
加圧ローラ31の外周面の硬度は、ASKER-C硬度計で9.8Nの荷重において、40°~70°であることが望ましい。これにより、定着ニップFNの面積と加圧ローラ31の耐久性が確保される。
【0029】
加圧ローラ31は、モータにより回転駆動されて自転する。定着ニップFNが形成された状態で加圧ローラ31が自転すると、フィルムユニット35の筒状体37が従動回転する。加圧ローラ31は、定着ニップFNにシートSが配置された状態で自転することにより、シートSを搬送方向Wに搬送する。
【0030】
フィルムユニット35は、筒状体37と、発熱摺動部材36と、ホルダ38と、ステイ39と、感温素子60と、フィルム温度計64と、を有する。
【0031】
筒状体37は、定着ベルトである。筒状体37は、y方向に沿って延びる筒状のフィルムである。筒状体37は、内周側から順に、基層と、弾性層33と、離型層と、を有する。基層は、ポリイミド等の材料により筒状に形成される。弾性層33は、基層の外周面上に積層配置される。弾性層33は、シリコーンゴム等の弾性材料で形成される。離型層は、弾性層33の外周面上に積層配置される。離型層は、PFA樹脂などの材料で形成される。
【0032】
発熱摺動部材36は、筒状体37の内側にある。発熱摺動部材36は、ヒータユニット40と、伝熱部材65と、を備える。
【0033】
ヒータユニット40は、y方向を長手方向としx方向を短手方向とする長方形の板状に形成される。x方向およびy方向において、ヒータユニット40の中央に近づく方向を内側といい、ヒータユニット40の中央から離れる方向を外側という場合がある。ヒータユニット40は、+z方向の第1面41と、第1面41とは反対側を向く第2面42と、を有する。ヒータユニット40の第1面41は、筒状体37を加熱する。第1面41は、グリース47を介して筒状体37の内面に接触する。
【0034】
図4は、図5のIV-IV線におけるヒータユニットの正面断面図である。図5は、第1の実施形態のヒータユニットの底面図(+z方向から見た図)である。
図4および図5に示すように、ヒータユニット40は、基板43と、発熱領域45と、配線セット55と、を有する。
【0035】
基板43は、ステンレス等の金属材料や、窒化アルミニウム等のセラミック材料などで形成される。基板43は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形の板状である。基板43の+z方向の面には、ガラス材料等により絶縁層44が形成される。基板43の-z方向の面は、ヒータユニット40の第2面42である。ヒータユニット40の第2面42は、z方向に直交する平面状に形成されている。
【0036】
図5に示すように、発熱領域45は、基板43に配置される。発熱領域45は、少なくとも1つの発熱体50を有する。発熱体50は、銀・パラジウム合金等の材料をスクリーン印刷により基板43に配置することで形成される。発熱領域45は、全ての発熱体50のy方向の両端間、かつx方向の両端間で定義される。発熱領域45全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。発熱領域45は、基板43の両端よりも内側に配置されている。
【0037】
本実施形態の発熱領域45は、複数の発熱体50を有する。複数の発熱体50は、y方向に並んで配置された、第1端部発熱体51と、中央部発熱体52と、第2端部発熱体53と、を有する。中央部発熱体52は、発熱領域45のy方向の中央部に配置される。中央部発熱体52は、y方向に並んで配置される複数の小発熱体を組み合わせて構成されてもよい。第1端部発熱体51は、中央部発熱体52の+y方向であって、発熱領域45の+y方向の端部に配置される。第2端部発熱体53は、中央部発熱体52の-y方向であって、発熱領域45の-y方向の端部に配置される。
【0038】
各発熱体50には、配線セット55の配線が接続される。発熱領域45は、配線セット55を介して通電されることにより発熱する。y方向の幅が小さいシートSは、定着装置30のy方向の中央部を通過する。この場合に制御部6は、複数の発熱体50のうち内側に位置する中央部発熱体52のみを発熱させる。一方で制御部6は、y方向の幅が大きいシートSの場合に、全ての発熱体50を発熱させる。
【0039】
図4に示すように、絶縁層44の+z方向の面に、発熱体50および配線セット55が形成される。発熱体50および配線セット55を覆うように、ガラス材料等により保護層46が形成される。保護層46は、ヒータユニット40の第1面41を形成する。ヒータユニット40が発熱すると、保護層46と筒状体37との間のグリース47の粘度が低下するので、ヒータユニット40と筒状体37との摺動性が確保される。
【0040】
基板43の+z方向に形成される絶縁層44と同様に、基板43の-z方向に絶縁層44が形成されてもよい。基板43の+z方向に形成される保護層46と同様に、基板43の-z方向に保護層46が形成されてもよい。これにより、基板43の反りが抑制される。
【0041】
図3に示すように、発熱領域45の全体は、定着ニップFNの領域内に含まれて、定着ニップFNの中心に配置される。これにより、定着ニップFNの熱分布が均等になり、定着ニップFNを通過するシートSが均等に加熱される。
【0042】
伝熱部材65は、基板43よりも熱伝導率の高い材料により形成される。例えば、伝熱部材65は、銅やアルミニウム等の金属材料や、グラファイトシート等により形成される。伝熱部材65は、ヒータユニット40に重なる。伝熱部材65は、ヒータユニット40の基板43の外形に対応する長方形の板状である。伝熱部材65は、z方向から見た平面視で全ての発熱体50に重なる(図5参照)。伝熱部材65は、ヒータユニット40の第2面42の少なくとも一部に接触する。伝熱部材65は、ヒータユニット40の温度分布を均す。
【0043】
ホルダ38は、液晶ポリマーなどの樹脂材料により形成される。ホルダ38は、y方向に長さを持つ。ホルダ38は、ヒータユニット40の-z方向と、x方向の両側とを覆うように配置される。ホルダ38は、発熱摺動部材36を保持する。ホルダ38は、ホルダ38とヒータユニット40との間に伝熱部材65を挟んだ状態で、ヒータユニット40の基板43のy方向の両端のみを+z方向に離脱不能に保持している。ホルダ38のx方向の両端部には丸面取りが形成される。ホルダ38は、ヒータユニット40のx方向の両端部において、筒状体37の内周面を支持する。
【0044】
ホルダ38は、基部381と、上流側壁部382と、下流側壁部383と、を備える。基部381は、発熱摺動部材36をヒータユニット40の第2面42側から支持する。ホルダ38は、基部381と伝熱部材65との間に絶縁性のシートを挟む。例えば、絶縁性のシートは、ポリイミドシートである。上流側壁部382は、基部381の-x方向の端部から加圧ローラ31側に突出している。下流側壁部383は、基部381の+x方向の端部から加圧ローラ31側に突出している。上流側壁部382と下流側壁部383との間に、発熱摺動部材36が配置される。上流側壁部382および下流側壁部383の+z方向の端縁は、それぞれy方向に延在している。上流側壁部382および下流側壁部383の+z方向の端縁は、それぞれz方向においてヒータユニット40の第1面41と略同じ位置にある。
【0045】
ステイ39は、鋼板材料等により形成される。ステイ39は、y方向に長さを有する。ステイ39のy方向に垂直な断面はU字状である。ステイ39は、U字の開口部をホルダ38の基部381で塞ぐように、ホルダ38の-z方向に装着される。ステイ39のy方向の両端部は、フレーム34に固定される。ステイ39は、フィルムユニット35の曲げ剛性を向上させる。
【0046】
感温素子60は、ヒータユニット40の-z方向に配置される。感温素子60は、y方向における発熱領域45と重なる範囲内に配置されている。感温素子60は、ホルダ38の基部381と伝熱部材65との間に介在する絶縁性のシートを介して、伝熱部材65の-z方向の表面に接する。感温素子60は、ホルダ38の基部381をz方向に貫通する孔384の内側に配置される。感温素子60の配線は、ホルダ38の孔384から-z方向に引き出される。感温素子60は、ヒータ温度計61およびサーモスタット62である。ヒータ温度計61はサーミスタである。
【0047】
図6は、ヒータ温度計およびサーモスタットの平面図(-z方向から見た図)である。図6では、ホルダ38の記載が省略されている。
図6に示すように、ヒータ温度計61は、発熱摺動部材36の温度を検知する。ヒータ温度計61は、伝熱部材65を介してヒータユニット40の温度を検知する。ヒータ温度計61は、中央部ヒータ温度計611と、端部ヒータ温度計612と、を有する。サーモスタット62は、中央部サーモスタット621と、端部サーモスタット622と、を有する。中央部発熱体52の-z方向に、中央部ヒータ温度計611および中央部サーモスタット621が配置される。一方、第1端部発熱体51および第2端部発熱体53の-z方向に、端部サーモスタット622および端部ヒータ温度計612が配置される。
【0048】
感温素子60のそれぞれは、ホルダ38の孔384からヒータユニット40側に突出するように付勢部材により+z方向に付勢されている。感温素子60のそれぞれは、ホルダ38に対して発熱摺動部材36を+z方向に押圧している。感温素子60は、伝熱部材65を+z方向に押圧することで、ホルダ38に対してヒータユニット40を間接的に+z方向に押圧している。
【0049】
図7は、図3のVII-VII線におけるフィルムユニットの断面図である。
図7に示すように、フィルムユニット35から加圧ローラ31を離した状態で、発熱摺動部材36は、感温素子60に押圧されることでホルダ38の基部381から離れる。ヒータユニット40のy方向の両端がホルダ38に保持されたことで、発熱摺動部材36は、y方向における発熱領域45と重なる範囲の全体がホルダ38の基部381との間に隙間ができるように撓んでいる。筒状体37は、発熱摺動部材36のy方向の中央部に接触する接触部371を有する。筒状体37は、発熱摺動部材36のy方向の中央部に押されて、ヒータユニット40との間に隙間を形成する。筒状体37とヒータユニット40との間の隙間は、接触部371からy方向の外側に向かうに従い拡大する。
【0050】
図6に示すように、サーモスタット62は、伝熱部材65を介して検知したヒータユニット40の温度が所定温度を超えた場合に、発熱体50への通電を遮断する。その結果、ヒータユニット40による筒状体37の過剰な加熱が抑制される。
【0051】
図3に示すように、フィルム温度計64は、筒状体37の一部の内周面に接する。フィルム温度計64は、y方向に間隔をあけて並んでいる。フィルム温度計64は、筒状体37におけるy方向で互いに異なる部分の温度を検知する。
【0052】
図8は、定着装置の正面図である。
図8に示すように、加圧機構70は、加圧ローラ31を筒状体37に向けて加圧する。加圧機構70は、加圧ローラ31が筒状体37に当接した状態で、加圧ローラ回転中心rcが筒状体37に接近および遠ざかるように加圧ローラ31を筒状体37に対して変位させる。加圧機構70は、加圧ローラ31と筒状体37との間に定着ニップFNが形成される第1状態と、第1状態よりも筒状体37および加圧ローラ31に相互に掛かる力が小さい第2状態とを遷移可能である。図8に示す加圧機構70は、第1状態にある。定着ニップFNは、定着装置30によるシートSへのトナー像の定着動作を実行可能な状態で定義される。第2状態は、省エネモードまたはスリープ状態に対応する。例えば、スリープ状態とは、メモリ92には通電されているけれどもヒータユニット40には通電されていない状態である。第2状態では、筒状体37への加圧ローラ31の押し付けを緩和することで、筒状体37の塑性変形が防止される。
【0053】
加圧機構70は、アーム71と、プッシャ72と、ピン73と、弾性部材74と、を有する。加圧機構70の構成部材は、加圧ローラ31のy方向の両端部にそれぞれある。加圧機構70は、加圧ローラ31のy方向の中心点を通るxz平面を対称面として、面対称である。以下には、加圧ローラ31の+y方向にある加圧機構70の構成部材について説明する。
【0054】
アーム71は、x方向に長さを有する。アーム71は鋼板材料等により形成されてもよい。アーム71は、アーム回動中心acの周りを回動可能である。アーム回動中心acは、アーム71の-x方向の端部付近にあり、y方向と平行である。
【0055】
アーム71は、アーム本体板711と、アーム連結部712と、を有する。
アーム本体板711は、xz平面と平行である。一対のアーム本体板711が、y方向に間隔を有する。-y方向にあるアーム本体板711には、加圧ローラ31を回転可能に支持する半円状の切り欠きがある。
アーム連結部712は、一対のアーム本体板711の-z方向の端部を相互に連結する。アーム連結部712は、アーム71のx方向の両端部にある。
【0056】
プッシャ72は、鋼板材料等により形成されてもよい。プッシャ72は、アーム回動中心acの周りを回動可能である。アーム回動中心acは、プッシャ72のx方向の中間部にある。プッシャ72の一方側は、アーム回動中心acから+x方向に長さを有する。プッシャ72の他方側は、アーム回動中心acから-x方向および-z方向に長さを有する。
【0057】
プッシャ72は、プッシャ本体板721と、プッシャ連結部722と、を有する。
プッシャ本体板721は、xz平面と平行である。一対のプッシャ本体板721が、y方向に間隔を有する。一対のプッシャ本体板721は、一対のアーム本体板711のy方向の内側にある。
プッシャ連結部722は、一対のプッシャ本体板721の+z方向の端部を相互に連結する。
【0058】
ピン73は、アーム71およびプッシャ72の+x方向の端部にある。ピン73は、z方向に沿う。ピン73は、胴部731と、頭部732と、を有する。
胴部731は、丸棒状である。胴部731の-z方向の第1端部は、ねじ込み等によりアーム連結部712に固定される。胴部731は、アーム連結部712からプッシャ連結部722に向かって+z方向に長さを有する。胴部731は、プッシャ連結部722に形成された貫通孔に挿通されて、プッシャ連結部722の+z方向まで長さを有する。
頭部732は、胴部731の+z方向の第2端部にある。頭部732は、プッシャ連結部722の貫通孔より大径である。
【0059】
弾性部材74は、ピン73に支持されている。弾性部材74は、アーム回動中心acに対して、加圧ローラ回転中心rcと同じ側(+x方向)にある。弾性部材74は、アーム71とプッシャ72との間にある。弾性部材74は、圧縮された状態で、アーム連結部712とプッシャ連結部722との間にある。弾性部材74は、加圧ローラ31が筒状体37に当接する方向にアーム71を付勢する。弾性部材74は、コイルバネである。弾性部材74は、ピン73の胴部731に外挿されている。
【0060】
移動機構80は、加圧機構70に第1状態および第2状態を遷移させる。加圧機構70は、移動機構80の作動によって第1状態および第2状態の間の状態のみを取り得る。移動機構80は、カムフォロワ81と、カム82と、駆動源83と、を備える。カムフォロワ81およびカム82は、加圧ローラ31のy方向の両端部にそれぞれある。カムフォロワ81は、加圧ローラ31のy方向の中心点を通るxz平面を対称面として、面対称である。カム82は、加圧ローラ31のy方向の中心点を通るxz平面を対称面として、面対称である。以下には、加圧ローラ31の+y方向にあるカムフォロワ81およびカム82について説明する。
【0061】
カムフォロワ81は、プッシャ72の-x方向および-z方向の端部にある。カムフォロワ81は、円柱状で、一対のプッシャ本体板721の間にある。カムフォロワ81は、y方向と平行なカムフォロワ回転中心fcの周りを回転可能なローラである。
【0062】
カム82は、カムフォロワ81に隣接して、カムフォロワ81の+x方向にある。カム82は、カム回転中心ccの周りを回転可能である。カム82の輪郭を構成するカム面84は、カムフォロワ81の外周面に当接可能である。加圧ローラ31のy方向の両端部にある一対のカム82は、y方向に長さを持つカムシャフトにより連結される。カム回転中心ccは、アーム回動中心acを挟んで、加圧ローラ回転中心rcの反対側にある。カム82は、駆動源83の出力を受けて、カム回転中心ccの周りを矢印Cの方向のみに回転する。カム82の回転角度は、センサにより検出される。
【0063】
カム面84は、カム82の回転角度に応じてカム回転中心ccまでの距離が変化するように形成されている。以下、カム回転中心ccからカム面84までの距離を外径と称する。カム面84は、カム面84のうち最も外径の大きい大径部841と、カム面84のうち最も外径の小さい小径部842と、を備える。カム面84は、大径部841から小径部842までカム82の回転方向とは反対方向に連続して延びている。カム面84の外径は、大径部841から小径部842にわたって、カム82の回転方向とは反対方向に向かうに従い漸次小さくなる。カム面84は、カム82の回転に伴ってカムフォロワ81が全周にわたって連続して転動可能とされている。
【0064】
駆動源83は、一対のカム82を連結するカムシャフトを、ウォームギア等を介して回転駆動する。駆動源83は、カムシャフトを回転駆動することで、一対のカム82を回転させる。駆動源83は、カム82を、カム回転中心ccの周りを一方向のみに回転させる。駆動源83は、制御部6に制御される。
【0065】
加圧機構70の動作について説明する。
定着装置30で定着作業を実施する場合に、移動機構80は、加圧ローラ31を筒状体37に当接させる。図8には、加圧ローラ31を筒状体37に当接させた第1状態が示されている。カム82は、第1状態でカムフォロワ81の大径部841に当接している。第1状態で、筒状体37および加圧ローラ31により定着ニップFNが形成される。第1状態で、加圧ローラ31は弾性変形している。
【0066】
図9は、加圧機構の動作説明図である。図9に示す加圧機構70は、第2状態にある。カム82は、第2状態でカムフォロワ81の小径部842に当接している。第2状態で、筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触し、かつ第1状態よりも筒状体37および加圧ローラ31に相互に掛かる力が小さい。第2状態で、筒状体37および加圧ローラ31により形成されるニップのx方向の幅は、定着ニップFNのx方向の幅よりも小さい。第2状態で、加圧ローラ31は弾性変形していてもよい。
【0067】
移動機構80による第1状態および第2状態の遷移動作について説明する。
図8に示す第1状態では、加圧ローラ31は、加圧ローラ31とヒータユニット40との間にある筒状体37を押圧する反力を受けて弾性変形している。加圧ローラ31には、弾性変形の復元力により+z方向の力が掛かる。加圧ローラ31に+z方向の力が掛かることで、加圧ローラ31がアーム71をアーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に押す。加圧ローラ31に押されたアーム71は、圧縮した弾性部材74を介してプッシャ72をアーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に押し、カムフォロワ81をカム82に押し付ける。プッシャ72は、カムフォロワ81をカム82に押し付けた反力により、弾性部材74およびアーム71を介して加圧ローラ31を筒状体37に押し付けている。
【0068】
第1状態から、カム82はカム回転中心ccの周りを矢印Cの方向に回転する。カムフォロワ81は、カム82のカム面84に沿って大径部841から小径部842に向けて相対移動しながら、カム回転中心ccに接近する。プッシャ72は、アーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動することを許容される。プッシャ72は、弾性部材74の復元力により、アーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動する。プッシャ72の回動と同時に、アーム71は、弾性部材74の復元力と加圧ローラ31の復元力とが釣り合うように、アーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動する。アーム71がアーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動することで、加圧ローラ31が加圧ローラ回転中心rcをフィルムユニット35から遠ざけるように+z方向に変位する。
【0069】
さらにカム82がカム回転中心ccの周りを矢印Cの方向に回転すると、プッシャ72は、アーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動する。カムフォロワ81がカム82のカム面84の小径部842に当接し、プッシャ72がアーム回動中心acの周りを矢印Aの方向に回動しきった第2状態になる。第2状態で、加圧ローラ31は、筒状体37のy方向の全長にわたって接触している。加圧ローラ31は、第1状態と比較して、筒状体37に加える力を小さくする。第2状態で、加圧ローラ31は、伝熱部材65がホルダ38の基部381との間に隙間を形成しないように、筒状体37を介してヒータユニット40および伝熱部材65を-z方向に押し付けている。
【0070】
第2状態から、カム82はカム回転中心cccの周りを矢印Cの方向に回転する。カムフォロワ81は、カム82のカム面84に沿って小径部842から大径部841に向けて相対移動しながら、カム回転中心ccから遠ざかる。プッシャ72は、弾性部材74を圧縮しつつ、アーム回動中心acの周りを矢印Bの方向に回動する。プッシャ72の回動と同時に、アーム71は、弾性部材74の復元力を受けてアーム回動中心acの周りを矢印Bの方向に回動する。アーム71は、アーム回動中心acの周りを矢印Bの方向に回動することで、加圧ローラ31を筒状体37に押し付ける。加圧ローラ31は、筒状体37に押し付けられることで、加圧ローラ回転中心rcをフィルムユニット35に近付けるように-z方向に変位する。
【0071】
さらにカム82がカム回転中心ccの周りを矢印Cの方向に回転すると、プッシャ72は、アーム回動中心acの周りを矢印Bの方向に回動する。カムフォロワ81がカム82のカム面84の大径部841に当接し、プッシャ72がアーム回動中心acの周りを矢印Bの方向に回動しきった第1状態になる。以上により、移動機構80は、加圧機構70に第1状態および第2状態の間の状態のみを遷移させる。
【0072】
図10は、図3のVII-VII線における定着装置の断面図であって、加圧機構が第2状態にある様子を示す。
図10に示すように、第2状態で、加圧ローラ31は、伝熱部材65がホルダ38の基部381から浮かないように、筒状体37およびヒータユニット40を介して伝熱部材65を基部381に押し付けている。この状態で、感温素子60は、ホルダ38の孔384からヒータユニット40側に突出することを、伝熱部材65により規制されている。第1状態で、第2状態よりも筒状体37および加圧ローラ31に相互に掛かる力が大きいので、加圧ローラ31は、伝熱部材65がホルダ38の基部381から浮かないように、筒状体37およびヒータユニット40を介して伝熱部材65を基部381に押し付ける。移動機構80の作動によって遷移可能な全ての状態で、伝熱部材65、ヒータユニット40および感温素子60は、加圧ローラ31によってホルダ38側に押し付けられて、ホルダ38に対して不動である。
【0073】
制御部6の機能構成について説明する。
図11は、制御部の機能構成を示すブロック図である。
図11に示すように、制御部6は、加熱制御部94と、加圧制御部95とカウント部96と、駆動制御部97と、を備える。
【0074】
加熱制御部94は、加熱モードでヒータユニット40に通電するとともに、停止モードでヒータユニット40の通電を停止する。加熱制御部94は、定着装置30の始動時に、ヒータ温度計61により発熱領域45の温度を計測する。発熱領域45の温度が所定温度より低い場合に、加熱制御部94は、加圧ローラ31の回転が開始される前に、発熱領域45を短時間だけ発熱させる。発熱領域45の発熱により、筒状体37の内周面に塗布されたグリース47の粘度が低下する。これにより、加圧ローラ31の回転開始時におけるヒータユニット40と筒状体37との摺動性が確保される。
【0075】
加熱制御部94は、定着装置30の運転時に、ヒータ温度計61により伝熱部材65の温度を計測する。加熱制御部94は、伝熱部材65の温度計測結果に基づいて、発熱領域45への通電を制御する。これにより、ホルダ38に接触する伝熱部材65の温度が、ホルダ38の耐熱温度未満に維持される。
【0076】
加熱制御部94は、定着装置30の運転時に、フィルム温度計64により筒状体37のy方向の各部の温度を計測する。加熱制御部94は、筒状体37のy方向の各部の温度計測結果に基づいて、発熱領域45への通電を制御する。
【0077】
加圧制御部95は、移動機構80を制御する。加圧制御部95は、移動機構80の駆動源83を制御することで、加圧機構70に第1状態および第2状態を遷移させる。加圧制御部95は、カム82の回転角度を検出するセンサの検知結果に基づいて第1状態および第2状態を判定し、カム82を回転させる駆動源83の駆動を停止する。加圧制御部95は、加熱制御部94の停止モードで、ヒータ温度計61の検知温度が所定値以下の場合に、移動機構80の駆動源83を制御して加圧機構70を第2状態にする。
【0078】
カウント部96は、第1状態から第2状態への遷移、および第2状態から第1状態への遷移のうち少なくともいずれか一方をカウントする。
駆動制御部97は、カウント部96のカウントが所定値以上の場合に第2状態への遷移を制限する。
【0079】
本実施形態では、加圧機構70が筒状体37および加圧ローラ31により定着ニップFNが形成される第1状態、並びに筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触し、かつ第1状態よりも筒状体37および加圧ローラ31に相互に掛かる力が小さい第2状態を遷移可能である。この構成により、第1状態および第2状態を遷移するときに、ホルダ38に保持された発熱摺動部材36が変位しない。発熱摺動部材36が変位しないので、発熱摺動部材36に接触するヒータ温度計61に加わる荷重の変動を抑えることができる。したがって、ヒータ温度計61の内部素子の劣化を抑制して、定着装置30の耐久性を向上させることができる。上記の効果は、ヒータ温度計61がサーミスタである場合に顕著に得られる。
【0080】
移動機構80は、カム面84のうち最も外径の小さい小径部842が第2状態でカムフォロワ81に当接するカム82を持つ。この構成により、第2状態でカムフォロワ81がカム82のカム回転中心ccに最も接近する。このため、カム82が一方向にしか回転しない場合でも、カム82を回転させたときにカム82の回転角度によらず加圧機構70が第1状態および第2状態の間の状態しか取り得ない。したがって、カム82を回転させた際に発熱摺動部材36が変位することを確実に防止できる。
【0081】
ホルダ38は、筒状体37から加圧ローラ31を離した状態で、発熱摺動部材36とホルダ38との間に隙間ができるように発熱摺動部材36を保持している。この構成によれば、筒状体37から加圧ローラ31を離すと、発熱摺動部材36が変位してヒータ温度計61に荷重の変動が生じる。したがって、本実施形態の定着装置30は、第2状態でも筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触して発熱摺動部材36の変位を規制するので、上記の作用効果を得るのに好適である。
【0082】
ホルダ38の基部381とヒータユニット40との間に伝熱部材65が配置されている。この構成により、伝熱部材を持たない構成と比較して、フィルムユニット35に対する加圧ローラ31の加圧力変化によって変形または変位する部品が増える。このため、ヒータ温度計61に荷重の変動を発生させる要素が増えて、ヒータ温度計61の内部素子の劣化が促進され得る。したがって、本実施形態の定着装置30は、発熱摺動部材36の変位が規制されるので、上記の作用効果を得るのに好適である。
【0083】
発熱摺動部材36は、第1状態および第2状態の間を遷移するときに加圧ローラ31に変位を規制される。この構成により、ヒータ温度計61に加わる荷重の変動を抑えることができる。したがって、上記の作用効果を奏することができる。
【0084】
発熱摺動部材36は、軸方向における発熱領域45の外側でホルダ38に保持されている。この構成によれば、加圧ローラ31をフィルムユニット35から離した状態では、発熱摺動部材36がヒータ温度計61に押されて撓み得るとともに、発熱摺動部材36が撓むことでヒータ温度計61に加わる荷重が変動する。したがって、本実施形態の定着装置30は、第2状態でも筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触して発熱摺動部材36の変位を規制するので、上記の作用効果を得るのに好適である。
【0085】
発熱摺動部材36は、ヒータ温度計61によって加圧ローラ31側に押されている。この構成によれば、発熱摺動部材36が変位すると、発熱摺動部材36を押すヒータ温度計61に加わる荷重が変動する。したがって、本実施形態の定着装置30は、第2状態でも筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触して発熱摺動部材36の変位を規制するので、上記の作用効果を得るのに好適である。
【0086】
筒状体37は、加圧ローラ31から離れた状態で発熱摺動部材36に接触する接触部371を有する。筒状体37は、加圧ローラ31から離れた状態で発熱摺動部材36との間に接触部371からy方向の外側に向かうに従い拡大する隙間を形成する。この構成によれば、筒状体37から加圧ローラ31を離すと、筒状体37が発熱摺動部材36に押され、発熱摺動部材36に対して隙間を形成するように変形する。このため、本実施形態の定着装置30は、第2状態でも筒状体37および加圧ローラ31が相互に接触して、発熱摺動部材36の変位とともに筒状体37の変形も規制するので、筒状体37の繰り返しの変形による劣化を抑制できる。
【0087】
加圧制御部95は、ヒータ温度計61の検知温度が所定値以下の場合に、移動機構80の駆動源83を制御して加圧機構70を第2状態にする。この構成により、ヒータ温度計61の検知温度が所定値よりも高く、直ぐに定着装置30が使用される可能性が高い状況で第2状態に遷移することを抑制できる。したがって、頻繁な移動機構80の作動を抑制して、ヒータ温度計61の内部素子の劣化をより効果的に抑制できる。
【0088】
カウント部96は、第1状態から第2状態への遷移、および第2状態から第1状態への遷移のうち少なくともいずれか一方をカウントする。駆動制御部97は、移動機構80を制御する。駆動制御部97は、カウント部96のカウントが所定値以上の場合に第2状態への遷移を制限する。この構成により、ヒータ温度計61の内部素子の劣化の度合いが一定の基準を超えることを抑制できる。したがって、ヒータ温度計61が寿命により故障することを回避できる。
【0089】
制御部6は、画像形成装置1の各部を制御して、第2状態でシートSに画像を形成する処理を制限してもよい。この構成により、定着ニップFNが形成されていない状態で定着装置30にシートSが搬送されることを抑制できる。
【0090】
第1の実施形態では、発熱摺動部材36が伝熱部材65を有しているが、発熱摺動部材は伝熱部材を有していなくてもよい。この場合、感温素子60はヒータユニット40に接するように設けられる。この構成により、第1状態および第2状態の間のいずれの状態でも、ヒータユニット40がホルダ38の基部381との間に隙間を形成しないように構成されるので、上記の作用効果を奏する。
【0091】
(第2の実施形態)
第2の実施形態のヒータユニット240について、図12を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図12は、第2の実施形態のヒータユニットの底面図である。
【0092】
第2の実施形態では、ヒータユニット240の発熱体250の配置が第1の実施形態とは異なる。ヒータユニット240は、第1の実施形態の発熱領域45および配線セット55に代えて、発熱領域245および配線セット255を有する。
【0093】
発熱領域245は、基板43に配置される。発熱領域245全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
発熱領域245は、複数の発熱体250を有する。複数の発熱体250は、一対の第1発熱体251と、第2発熱体252と、第3発熱体253と、を有する。複数の発熱体250は、x方向において、一方の第1発熱体251、第2発熱体252、第3発熱体253、他方の第1発熱体251、の順に配置されている。各発熱体250は、y方向を長手方向とする。各発熱体250は、種々のシート幅に対応した長さを持つ。第2発熱体252は、第1発熱体251よりもy方向で短い。第2発熱体252のy方向の両端は、第1発熱体251のy方向の両端よりも内側にある。第3発熱体253は、第2発熱体252よりもy方向で短い。第3発熱体253のy方向の両端は、第2発熱体252のy方向の両端よりも内側にある。各発熱体250には、配線セット255の配線が接続される。発熱領域245は、配線セット255を介して通電されることにより発熱する。制御部6は、通過するシートSの幅に合わせて、対応する発熱体250を発熱させる。
【0094】
以上に説明した第2の実施形態においても、ヒータユニット240を含む発熱摺動部材36の変位が規制されるので、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0095】
(第3の実施形態)
第3の実施形態のヒータユニット340について、図13を参照して説明する。以下で説明する以外の構成は、第1の実施形態と同様である。図13は、第3の実施形態のヒータユニットの底面図である。
【0096】
第3の実施形態では、ヒータユニット340の発熱体350の配置が第1の実施形態とは異なる。ヒータユニット340は、第1の実施形態の発熱領域45および配線セット55に代えて、発熱領域345および配線セット355を有する。
【0097】
発熱領域345は、基板43に配置される。発熱領域345全体の外形は、y方向を長手方向とし、x方向を短手方向とする長方形状に形成される。
発熱領域345は、複数の発熱体350を有する。複数の発熱体350は、一対の第1発熱体351と、第2発熱体352と、を有する。複数の発熱体350は、x方向において、一方の第1発熱体351、第2発熱体352、他方の第1発熱体351、の順に配置されている。各発熱体350は、y方向を長手方向とする。第1発熱体351は、y方向の中央から端部に向かうに従い太くなっている。y方向において一対の第1発熱体351の両端は、互いに略同じ位置にある。第2発熱体352は、y方向の中央から端部に向かうに従い細くなっている。y方向において第2発熱体352の両端は、各第1発熱体351の両端と略同じ位置にある。
【0098】
各発熱体350には、配線セット355の配線が接続される。発熱領域345は、配線セット355を介して通電されることにより発熱する。制御部6は、通過するシートSの幅に合わせて、対応する発熱体350を発熱させる。第1発熱体351のみを発熱させた場合、発熱領域345の発熱量は、y方向の中央から端部に向かうに従い小さくなる。一方で、一対の第1発熱体351および第2発熱体352を同時に発熱させた場合、発熱領域345の発熱量は、第1発熱体351のみを発熱させた場合よりも、y方向の全長にわたって平均化される。したがって、制御部6は、小さめの幅のシートSが通過する場合に、第1発熱体351のみに通電する。制御部6は、大きめの幅のシートSが通過する場合に、第1発熱体351および第2発熱体352に通電する。
【0099】
以上に説明した第3の実施形態においても、ヒータユニット340を含む発熱摺動部材36の変位が規制されるので、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0100】
上記実施形態では、加圧機構70が加圧ローラ31を筒状体37に向けて加圧しているが、この構成に限定されない。加圧機構は、筒状体を有するフィルムユニットを加圧ローラに向けて加圧するように構成されていてもよい。
【0101】
上記実施形態では、ヒータユニット40の第1面41が筒状体37の内面に接触しているが、この構成に限定されない。発熱摺動部材は、ヒータユニットの第1面と筒状体の内周面との間に介在する均熱部材を有していてもよい。この場合、発熱摺動部材は、ヒータユニットとホルダとの間に介在する伝熱部材を有していなくてもよい。
【0102】
以上説明した少なくともひとつの実施形態によれば、加圧機構が筒状体および加圧ローラにより定着ニップが形成される第1状態、並びに筒状体および加圧ローラが相互に接触し、かつ第1状態よりも筒状体および加圧ローラに相互に掛かる力が小さい第2状態を遷移可能である。この構成により、第1状態および第2状態を遷移するときに、ホルダに保持された発熱摺動部材が変位しない。発熱摺動部材36変位しないので、ヒータ温度計に加わる荷重の変動を抑えることができる。したがって、ヒータ温度計の内部素子の劣化を抑制して、定着装置の耐久性を向上させることができる。
【0103】
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0104】
30…定着装置、31…加圧ローラ、36…発熱摺動部材、37…筒状体、38…ホルダ、45,245,345…発熱領域、61…ヒータ温度計(センサ)、70…加圧機構、80…移動機構、81…カムフォロワ、82…カム、83…駆動源、84…カム面、371…接触部、842…小径部、FN…定着ニップ(ニップ)
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