(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176788
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】コイルの捻り成形装置
(51)【国際特許分類】
H02K 15/04 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H02K15/04 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】1
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095590
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山田 貴志
(72)【発明者】
【氏名】中川 修
【テーマコード(参考)】
5H615
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB01
5H615BB05
5H615BB14
5H615PP14
5H615QQ03
5H615QQ06
5H615QQ12
5H615QQ27
5H615SS04
5H615SS10
5H615SS13
(57)【要約】
【課題】コイルの捻り成形精度を向上させることができるコイルの捻り成形装置を提供すること。
【解決手段】コイルの捻り成形装置は、ステータコアの周方向に配置されるコイルの先端を把持し、ステータコアの軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部と、ステータコアの上面においてコイルの間に挿入され、把持成形部の駆動時にステータコアの周方向に駆動可能な治具カフサと、を備える。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ステータコアの周方向に配置されるコイルの先端を把持し、前記ステータコアの軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部と、
前記ステータコアの上面において前記コイルの間に挿入され、前記把持成形部の駆動時に前記ステータコアの周方向に駆動可能な治具カフサと、
を備えるコイルの捻り成形装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、コイルの捻り成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、コイルの先端を把持する爪部を径方向に駆動させてコイルを成形する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1で開示された技術では、例えばコイルの成形時に治具カフサをガイド部材として用いる場合、成形精度向上の観点で改善の余地がある。
【0005】
本開示は、上記に鑑みてなされたものであって、コイルの捻り成形精度を向上させることができるコイルの捻り成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示に係るコイルの捻り成形装置は、ステータコアの周方向に配置されるコイルの先端を把持し、前記ステータコアの軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部と、前記ステータコアの上面において前記コイルの間に挿入され、前記把持成形部の駆動時に前記ステータコアの周方向に駆動可能な治具カフサと、を備える。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部と、周方向に駆動可能な治具カフサとを備えることにより、捻り成形精度を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、実施形態に係るコイルの捻り成形装置の構成を示す概略図である。
【
図2】
図2は、実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いたコイルの捻り成形方法の第一工程を説明するための図である。
【
図3】
図3は、実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いたコイルの捻り成形方法の第二工程を説明するための図である。
【
図4】
図4は、実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いたコイルの捻り成形方法の第三工程を説明するための図である。
【
図5】
図5は、実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いた動力線の成形方法を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の実施形態に係るコイルの捻り成形装置について、図面を参照しながら説明する。なお、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0010】
(捻り成形装置)
実施形態に係るコイルの捻り成形装置について、
図1および
図2を参照しながら説明する。捻り成形装置1は、ステータコア2の周方向に配置されるコイル(ステータコイル)3の捻り成形を行うためのものである。捻り成形装置1は、複数の把持成形部11と、複数の治具カフサ12と、を備えている。なお、本実施形態では、ステータコア2の中心軸に平行な方向を「軸方向」とし、ステータコア2の径方向のことを「径方向」とし、ステータコア2の円周方向のことを「周方向」とする。
【0011】
把持成形部11は、軸方向に延びる棒状の部材から構成されている。また、把持成形部11は、コイル3の本数と同じ数だけ設けられる。例えばステータコア2に配置されるコイル3が48本である場合、これに合わせて把持成形部11も48個設けられる。そして、これらの把持成形部11が周方向に配置されることにより、
図1に示すように、全体として円筒形を呈する。また、把持成形部11の先端(軸方向下側の先端)には、
図2に示すように、コイル3の先端を把持するための断面凹状の把持部111が設けられている。なお、把持部111は、コイル3の先端を把持できれば、断面凹状以外の形状であってもよい。
【0012】
把持成形部11は、後記するように、コイル3の捻り成形を行う際に、ステータコア2の周方向に配置されるコイル3の先端を把持する(後記する
図2~
図4参照)。また、把持成形部11は、ステータコア2の軸方向および径方向に駆動可能に構成されている。すなわち、把持成形部11の動作軸は、ステータコア2の軸方向および径方向となる。なお、把持成形部11を軸方向および径方向に駆動させる具体的な方法は特に限定されない。
【0013】
例えば、
図1のように周方向に配置された各把持成形部11の上端を、円柱状の部材等で押圧することにより、把持成形部11を軸方向(軸方向下側)に駆動させてもよい。また、把持成形部11の内面(内周面)をテーパ状に形成し、同図のように周方向に配置された各把持成形部11の筒内に、円柱状の部材等を挿入して押圧することにより、把持成形部11を径方向(径方向外側)に駆動させてもよい。
【0014】
治具カフサ12は、径方向に延びる棒状の部材から構成されている。また、治具カフサ12は、コイル3の本数と同じ数だけ設けられる。例えばステータコア2に配置されるコイル3が48本である場合、これに合わせて治具カフサ12も48個設けられる。そして、これらの治具カフサ12が周方向に(放射状に)配置されることにより、
図1に示すように、全体として円盤状を呈する。また、治具カフサ12の先端(径方向内側の先端)は、各コイル3の間に挿入可能なように、例えば二股状に形成されている。
【0015】
治具カフサ12は、後記するように、コイル3の捻り成形を行う際に、ステータコア2の周方向に配置される各コイル3の間に挿入される。また、治具カフサ12は、ステータコア2の周方向に駆動可能に構成されている。すなわち、治具カフサ12の動作軸は、ステータコア2の周方向となる。なお、治具カフサ12を周方向に駆動させる具体的な方法は特に限定されない。
【0016】
例えば、
図1のように周方向に配置された各治具カフサ12の先端(径方向外側の先端)を、円筒状の部材等によって固定し、当該円筒状の部材を周方向に回転させることにより、治具カフサ12を周方向に駆動させてもよい。
【0017】
ここで、従来は、例えば治具カフサを各コイルの間に挿入して各コイルを固定した後に、王冠と呼ばれる円環状の部材によって各コイルの先端を把持し、当該王冠を周方向に駆動させることにより、コイルの捻り成形を行っていた。この方法で用いる王冠は、円環状の一体的な部材である。そのため、従来の方法では以下のような問題があった。
【0018】
(1)一つの王冠によって同一の径のコイルしか捻ることができない。すなわち、円環状の王冠をコイルに嵌合させて捻るため、径の異なるコイルを捻る場合は、別の王冠に入れ替える必要があった。
(2)太線と細線とで段替えが必要である。すなわち、太線のコイルと細線のコイルとでは、全体の径が異なってくるため、コイルの種類に応じて異なる厚みの王冠を用いる必要があった。
(3)コイルを捻る前に径方向の拡張が必要であった。すなわち、王冠は周方向にのみ駆動可能であるため、捻った後の径方向位置と同じになるように、予め前工程で各コイルを径方向に拡張しておく必要があった。
【0019】
そこで、実施形態に係るコイルの捻り成形装置では、ステータコア2の軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部11と、ステータコア2の周方向に駆動可能な治具カフサ12を備えることにより、上記の(1)~(3)の問題を解決した。
【0020】
すなわち、捻り成形装置1では、把持成形部11が径方向に駆動可能であるため、
図1に示すような一組の把持成形部11によって、異なる径のコイル3を捻ることが可能である。また、捻り成形装置1では、把持成形部11が径方向に駆動可能であるため、一組の把持成形部11によって、異なる種類(太線、細線)のコイル3を捻ることが可能である。また、捻り成形装置1では、把持成形部11が径方向に駆動可能であるため、予め前工程で各コイル3を径方向に拡張しておく必要がなくなる。このように、実施形態に係るコイルの捻り成形装置では、前工程の拡張成形を実施することなく、径/積層厚違いのコイル3を捻ることが可能となる。
【0021】
このように、実施形態に係るコイルの捻り成形装置では、軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部11と、周方向に駆動可能な治具カフサ12とを備えることにより、コイル3の捻り成形精度を向上させることができる。
【0022】
(捻り成形方法)
実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いたコイルの捻り成形方法について、
図2~
図4を参照しながら説明する。同図は、捻り成形装置1を、ステータコア2の中心軸に沿って切断した場合の断面を示す模式図である。実施形態に係るコイルの捻り成形方法には、第一工程、第二工程および第三工程が含まれる。
【0023】
第一工程では、
図2に示すように、把持成形部11を成形対象のコイル3の先端に取り付けるとともに、治具カフサ12を各コイル3の間に全周挿入する。続いて、第二工程では、
図3に示すように、径方向の移動と軸方向の移動とを同期させながら、コイル3の線長を変えない経路で把持成形部11を移動させる。またその際、治具カフサ12は周方向に旋回させずに静止させた状態とする。
【0024】
続いて、第三工程では、治具カフサ12を周方向に旋回させながら、把持成形部11を軸方向下側に移動させる。これにより、周方向の動きと軸方向の動きとを同期させて捻りの軌道を形成し、コイル3の捻り成形を行うことができる。
【0025】
このように、実施形態に係るコイルの捻り成形方法では、軸方向および径方向に駆動可能な把持成形部11と、周方向に駆動可能な治具カフサ12とを用いることにより、コイル3の捻り成形精度を向上させることができる。
【0026】
(動力線の成形方法)
実施形態に係るコイルの捻り成形装置を用いた動力線の成形方法について、
図5を参照しながら説明する。
【0027】
動力線の成形方法では、まず治具カフサ12をコイル3の側面に当接させることにより、コイル3の曲げの起点を作る。続いて、把持成形部11を成形対象のコイル3の先端に取り付け、治具カフサ12を周方向に旋回させずに把持成形部11を軸方向下側に移動させることにより、動力線を成形する。
【0028】
ここで、従来は、王冠や治具カフサとは別の治具を用いて動力線を成形していた。一方、実施形態に係る動力線の成形方法では、
図5に示すように、同じ捻り成形装置1を用いて動力線を成形することも可能である。これにより、動力線を成形する際のコストアップを抑制することができる。
【0029】
更なる効果や変形例は、当業者によって容易に導き出すことができる。よって、本発明のより広範な態様は、以上のように表わし、かつ記述した特定の詳細および代表的な実施形態に限定されるものではない。従って、添付のクレームおよびその均等物によって定義される総括的な発明の概念の精神または範囲から逸脱することなく、様々な変更が可能である。
【符号の説明】
【0030】
1 捻り成形装置
11 把持成形部(倒し爪)
111 把持部
12 治具カフサ
2 ステータコア
3 コイル(ステータコイル)