(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024017679
(43)【公開日】2024-02-08
(54)【発明の名称】立坑用吊降ろし装置、立坑用吊降ろし装置の設置方法
(51)【国際特許分類】
E21F 13/00 20060101AFI20240201BHJP
【FI】
E21F13/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2022120488
(22)【出願日】2022-07-28
(71)【出願人】
【識別番号】509328928
【氏名又は名称】株式会社日立プラントコンストラクション
(74)【代理人】
【識別番号】100091306
【弁理士】
【氏名又は名称】村上 友一
(74)【代理人】
【識別番号】100174609
【弁理士】
【氏名又は名称】関 博
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 耕二
(72)【発明者】
【氏名】正木 宗親
(72)【発明者】
【氏名】矢作 広勝
(57)【要約】
【課題】人的負担を軽減して安全かつ効率良く作業が行える立坑用吊降ろし装置を提供する。
【解決手段】本発明の立坑用吊降ろし装置10は、吊荷を積んで立坑14の内部にクレーン18で吊降ろす吊込用台座20と、
前記立坑14の内部で鉛直方向に沿って配置するガイドワイヤ12と、
前記立坑14の開口周辺に配置して前記ガイドワイヤ12に張力を付与する張力付与部32を有する吊込用架構30と、
を備え、
前記ガイドワイヤ12は、一端を前記立坑14の下部固定部40に固定し、他端を前記張力付与部32に接続して所定張力で前記立坑14の内部に配置され、
前記吊込用台座20は、吊降ろし中に前記ガイドワイヤ12に沿って案内するアーム22を有することを特徴としている。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
吊荷を積んで立坑の内部にクレーンで吊降ろす吊込用台座と、
前記立坑の内部で鉛直方向に沿って配置するガイドワイヤと、
前記立坑の開口周辺に配置して前記ガイドワイヤに張力を付与する張力付与部を有する吊込用架構と、
を備え、
前記ガイドワイヤは、一端を前記立坑の下部固定部に固定し、他端を前記張力付与部に接続して所定張力で前記立坑の内部に配置され、
前記吊込用台座は、吊降ろし中に前記ガイドワイヤに沿って案内するアームを有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置。
【請求項2】
請求項1に記載された立坑用吊降ろし装置であって、
前記アームは、前記ガイドワイヤを囲んで接触するU字形の先端を備え、前記先端を前記吊込用台座から斜め上方に延出して配置したことを特徴とする立坑用吊降ろし装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載された立坑用吊降ろし装置であって、
前記吊込用架構は、前記アームを前記ガイドワイヤの鉛直方向から接触させるアームガイドを備えたことを特徴とする立坑用吊降ろし装置。
【請求項4】
請求項1に記載された立坑用吊降ろし装置であって、
前記吊込用架構は、前記クレーンで搬送する直方体状のフレーム本体を有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置。
【請求項5】
請求項1に記載の立坑用吊降ろし装置の吊込用架構を立坑の開口周辺に配置する工程と、
前記吊込用架構からガイドワイヤの一端を前記立坑の内部へ繰り出して下部固定部に固定する工程と、
前記吊込用架構の張力付与部で前記ガイドワイヤに所定張力を与えて前記立坑の内部で鉛直方向に沿ってガイドワイヤを配置する工程と、
を有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置の設置方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、立坑内に吊荷を吊降ろす立坑用吊降ろし装置、立坑用吊降ろし装置の設置方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、立坑内へ吊荷を吊降ろす際、監視人を立坑内に配置して、吊荷の回転、荷振れを抑えるために介助ロープで誘導しながら吊降ろしていた。しかし激しい荷振れが発生したとき、狭隘な立坑内では監視人が避難できるスペースを十分に確保することは難しい。
このような人的負担及び危険性を回避するために特許文献1に開示の技術では、立坑内に沿って延びるガイドレールと、ガイドレールに沿って移動する移動体と、ガイドレールと対向して立坑内に沿って設けたワイヤロープと、横抗内を走行する台車を備え、長尺物を移動体に吊り下げてガイドレール及びワイヤロープに沿って案内している。
【0003】
しかしながら、特許文献1に開示の技術では、立抗内にガイドレールを取り付け又は撤去するための作業用足場を設置する必要があり、作業工程及び作業時間が増大してしまう。またガイドレールを設置する壁は、レールの取り付け及び吊降ろし中の吊荷の負荷に耐える十分な強度が必要となるが、現場により必ずしも十分な強度が得られるとは限らない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、上記従来技術の問題点に鑑み、人的負担を軽減して安全かつ効率良く作業が行える立坑用吊降ろし装置、立坑用吊降ろし装置の設置方法を提供することにある。
また、ガイドワイヤの設置及び撤去が容易な立坑用吊降ろし装置、立坑用吊降ろし装置の設置方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するための第1の手段として、吊荷を積んで立坑の内部にクレーンで吊降ろす吊込用台座と、
前記立坑の内部で鉛直方向に沿って配置するガイドワイヤと、
前記立坑の開口周辺に配置して前記ガイドワイヤに張力を付与する張力付与部を有する吊込用架構を備え、
前記ガイドワイヤは、一端を前記立坑の下部固定部に固定し、他端を前記張力付与部に接続して所定張力で前記立坑の内部に配置され、
前記吊込用台座は、吊降ろし中に前記ガイドワイヤに沿って案内するアームを有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置を提供することにある。
上記第1の手段によれば、立坑内への吊荷作業の人的負荷を軽減して安全かつ効率良く吊荷を吊降ろすことができる。
また作業用足場を用いることなく容易にガイドワイヤの設置及び撤去を行うことができる。
【0007】
本発明は、上記課題を解決するための第2の手段として、第1の手段において、前記アームは、前記ガイドワイヤを囲んで接触するU字形の先端を備え、前記先端を前記吊込用台座から斜め上方に延出して配置したことを特徴とする立坑用吊降ろし装置を提供することにある。
上記第2の手段によれば、吊降ろし中にガイドワイヤに接触して、吊込用台座の回転及び荷振れを回避しながらガイドワイヤに沿って吊降ろすことができる。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するための第3の手段として、第1又は第2の手段において、前記吊込用架構は、前記アームを前記ガイドワイヤの鉛直方向から接触させるアームガイドを備えたことを特徴とする立坑用吊降ろし装置を提供することにある。
上記第3の手段によれば、吊降ろし中の吊込用台座のアームを立坑の開口から内部のガイドワイヤへ容易に案内することができる。
【0009】
本発明は、上記課題を解決するための第4の手段として、第1の手段において、前記吊込用架構は、前記クレーンで搬送できる直方体状のフレーム本体を有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置を提供することにある。
上記第4の手段によれば、ガイドワイヤを設置又は撤去する吊込用架構をモジュール化して持ち運びが容易となる。
【0010】
本発明は、上記課題を解決するための第5の手段として、第1の手段に記載の立坑用吊降ろし装置の吊込用架構を立坑の開口周辺に配置する工程と、
前記吊込用架構からガイドワイヤの一端を前記立坑の内部へ繰り出して下部固定部に固定する工程と、
前記吊込用架構の張力付与部で前記ガイドワイヤに所定張力を与えて前記立坑の内部で鉛直方向に沿ってガイドワイヤを配置する工程と、
を有することを特徴とする立坑用吊降ろし装置の設置方法を提供することにある。
上記第5の手段によれば、立坑内へ作業用足場を用いることなく容易にガイドワイヤを配置することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、狭隘な立坑内に監視人を配置することなく、安全かつ効率良く吊降ろし作業を行うことができる。
また、作業用足場を用いることなくガイドワイヤの設置及び撤去を容易に行うことができ、工期の短縮化が図れる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明の立坑用吊降ろし装置の構成概略を示す斜視図である。
【
図2】本発明の立坑用吊降ろし装置の構成概略を示す平面図である。
【
図11】ガイドワイヤに張力を付与する説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の立坑用吊降ろし装置、立坑用吊降ろし装置の設置方法の実施形態について、図面を参照しながら、以下詳細に説明する。
【0014】
[立坑用吊降ろし装置10]
図1は、本発明の立坑用吊降ろし装置の構成概略を示す斜視図である。
図2は本発明の立坑用吊降ろし装置の構成概略を示す平面図である。図示のように本発明の立坑用吊降ろし装置10は、吊荷11を積んで立坑14の内部にクレーン(一例としてラフタクレーンなど)18で吊降ろす吊込用台座20と、立坑14の内部で鉛直方向に沿って配置するガイドワイヤ12と、立坑14の開口周辺に配置してガイドワイヤ12に張力を付与する張力付与部32を有する吊込用架構30を備え、ガイドワイヤ12は、一端を立坑14の下部固定部40に固定し、他端を張力付与部32に接続して所定張力で立坑14の内部に配置され、吊込用台座20は、吊降ろし中にガイドワイヤ12に沿って案内するアーム22を有している。
【0015】
(吊込用台座20)
図3は吊込用台座の説明図である。
図4は吊込用台座の側面図である。吊込用台座20は、吊荷11を搭載して、クレーンで搬送できる平面視で矩形の台座である。吊込用台座20は、一例としてH形鋼を枠型に接続し、内部に鉄板を配置して形成した台座本体21を有し、対向する角部(対角線上の角)に一対のアーム22を配置している。
アーム22は、所定の剛性を備えた金属製の棒部材である。アーム22の先端(一端)は、ガイドワイヤ12を囲んで接触するU字形に形成し、他端を吊込用台座20に固定している。このときアーム22の先端(U字形側)が斜め上方の外側へ傾く、換言すると斜め上方に延出する(一例として斜め45°)ように配置している。U字形の先端にはローラ24を配置している。このようなアーム22の先端で外側に向いたローラ24は後述するアームガイド38に沿って吊降ろすときにアームガイド38の側面を摺動できる。このようなアーム22の構成によれば、台座よりも外側に拡がっているため、吊降ろし中の吊込用台座20が立坑14の壁面と接触することを防止できる。またアーム22が斜め上方に延出しているため、吊込用台座20が立坑14の底面に達したときに、底面の周囲にある物品との接触を回避できる。
【0016】
(吊込用架構30)
図5は吊込用架構の説明図である。
図6は吊込用架構の平面図である。
図7は下部固定部の説明図である。
図8は荷下ろし中の吊込用台座の説明図である。吊込用架構30は、クレーン18で搬送する直方体状のフレーム本体31を有している。吊込用架構30は、ガイドワイヤ12と、ガイドワイヤ12に張力を付与する張力付与部32を配置している。
ガイドワイヤ12は、立坑14の内部に鉛直方向に配置する索状である。ガイドワイヤ12は、吊降ろし中の吊荷11の回転又は荷振れを抑えて支持できるような所定強度を有する金属製の部材である。このようなガイドワイヤ12は、所定の張力で立坑14の内部に配置するため、上端が張力付与部32に接続し(
図5参照)、下端が立坑14の下部(例えば底面など)に配置した下部固定部40に接続している(
図7参照)。下部固定部40は、ガイドワイヤ12の下端に接続できるものであれば良く、例えば、留め金具、シャックル、クリップ等を適用することができる。
また本発明のガイドワイヤ12は、立坑14の内部に2本配置している。具体的な配置箇所は、立坑14の中心を通る直線上(中心を挟んで対向)に配置し、クレーンで吊降ろした吊荷11の中心から最も離れた吊込用台座20の四隅のうち、対向する角部に近い位置となるようにしている。
【0017】
張力付与部32は、ガイドワイヤ12の上端に接続して、立坑内に配置したガイドワイヤ12に所定の張力を与えるものである。このような張力付与部32は、ガイドワイヤ12に所定の張力を与えることができれば良く、本実施形態では、一例として、所定の張力に相当する重量を有する錘33を用いている。錘33はフレーム本体31の下部桁35に配置している。下部桁35に錘33を支持するプレート42と、プレート42を上下移動するジャッキ44を取り付けている(
図9-11参照)。錘33に接続したガイドワイヤ12はフレーム本体31の上部滑車36と側部滑車37を介して下方の立坑14の内部へと吊り下げることができる。ガイドワイヤ12へ張力を付与する場合には、ガイドワイヤ12の下端を下部固定部40に固定した後、ジャッキ44を操作してプレート42を下げるとフレーム本体31内で錘33が宙づりとなり、ガイドワイヤ12に所定の張力を付与することができる。
【0018】
吊込用架構30の側部滑車37が配置されている側面にはアームガイド38も取り付けている。アームガイド38は、アーム22のU字形先端のローラ24が嵌る2本の溝を鉛直方向に配置した部材である。アームガイド38は上端及び下端が水平方向に扇状に拡張した形状であり、中間はU字形先端とほぼ同じ幅となる直線状に形成している。そして中間部分には側部滑車37が取り付けられている。このような側部滑車37とアームガイド38は鉛直方向に沿って配置している。
吊込用架構30の下部桁35の下側にはロッド46及びプレート48を取り付けて立坑14から取り外して巻き取ったガイドワイヤ12を保管している。このような吊込用架構30は、フレーム本体31に張力付与部32と、アームガイド38を配置し、巻き取ったガイドワイヤ12を収容でき、全体としてコンパクトなモジュールに形成しているため、クレーン18により持ち運び、移動が容易となる。
【0019】
[立坑用吊降ろし装置の設置方法]
上記構成の立坑用吊降ろし装置10の設置方法について、以下、説明する。
図9は吊込用架構の据付の説明図である。
図10はガイドワイヤの降下の説明図である。
図11はガイドワイヤに張力を付与する説明図である。
(ステップ1)吊込用架構の据付
クレーン18で立坑用吊降ろし装置10の吊込用架構30を吊り上げて、立坑14の開口周辺に2つ配置する。2つの吊込用架構30は、立坑14の中心を通る直線上で、中心を挟んで対向するように配置する。
(ステップ2)ガイドワイヤの固定
吊込用架構30からガイドワイヤ12の一端を立坑14の内部へ繰り出して下部固定部40に固定する。ガイドワイヤ12の繰り出しは、例えば、クレーン18を用いて繰り出すことができる。
(ステップ3)ガイドワイヤに張力付与
吊込用架構30の張力付与部32を用いてガイドワイヤ12に所定の張力を与えて立坑14の内部で鉛直方向に沿ってガイドワイヤ12を2つ配置する。具体的には吊込用架構30内で張力付与部32の錘33を載せていたプレート42に接続するジャッキ44を下げてフレーム本体31の内部で錘33を宙づりにしてガイドワイヤ12に所定の張力を与えることができる。
【0020】
このような本発明の立坑用吊降ろし装置の設置方法によれば、立坑内へ作業用足場を用いることなく容易にガイドワイヤ12を配置することができる。
立坑14の内部に吊荷11を吊降ろす場合には、クレーン18で吊込用台座20を立坑14の開口上部まで移動させる。立坑14の開口上部から吊込用台座20を吊降ろすときにアーム22のU字形先端を吊込用台座30のアームガイド38の拡張した上部に誘導する。アーム22がアームガイド38を通過する際に、U字形先端のローラ24がアームガイド38の溝を摺動する(
図6参照)。アームガイド38の中間部分で側部滑車37のガイドワイヤ12を跨ぐようにアーム22が移動して、アーム22のU字形先端の内部にガイドワイヤ12を囲むように配置することができる。アームガイド38を通過したアーム22は、立坑14の内部では、鉛直方向に張ったガイドワイヤ12に沿って、U字形先端の根本部分に接触又は離間を繰り返しながら吊込用台座20と共に吊降ろされる(
図8参照)。吊降ろし中に吊込用台座20が回転又は荷振れしようとしても、2つのガイドワイヤ12を囲むアーム22のU字形先端内で吊込用台座20の動き(回転又は荷振れ)が制限されて回避することができる。
このような本発明によれば、狭隘な立坑内に監視人を配置することなく、安全かつ効率良く吊降ろし作業を行うことができる。
【0021】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明した。しかしながら、本発明は、上記実施形態に何ら制限されることなく、本発明の主旨を逸脱しない範囲において、種々の変更が可能である。
また、本発明は、実施形態において示された組み合わせに限定されることなく、種々の組み合わせによって実施可能である。
【符号の説明】
【0022】
10 立坑用吊降ろし装置
11 吊荷
12 ガイドワイヤ
14 立坑
16 下部固定部
18 クレーン
20 吊込用台座
22 アーム
24 ローラ
30 吊込用架構
31 フレーム本体
32 張力付与部
33 錘
35 下部桁
36 上部滑車
37 側部滑車
38 アームガイド
40 下部固定部
42 プレート
44 ジャッキ
46 ロッド
48 プレート