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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176794
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】変調器
(51)【国際特許分類】
   H03M 3/02 20060101AFI20241212BHJP
   H03F 3/70 20060101ALI20241212BHJP
   H03F 3/38 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H03M3/02
H03F3/70
H03F3/38
【審査請求】未請求
【請求項の数】7
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095600
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】520124752
【氏名又は名称】株式会社ミライズテクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】弁理士法人サトー
(72)【発明者】
【氏名】和田 祥太郎
(72)【発明者】
【氏名】根塚 智裕
(72)【発明者】
【氏名】古田 善一
【テーマコード(参考)】
5J064
5J500
【Fターム(参考)】
5J064BA03
5J064BB14
5J064BC06
5J064BC07
5J064BC10
5J064BC15
5J064BC16
5J500AA01
5J500AA26
5J500AA48
5J500AC13
5J500AC14
5J500AF18
5J500AH25
5J500AH29
5J500AH39
5J500AK02
5J500AK31
5J500AK34
5J500AK56
5J500AT01
5J500AT06
5J500MU04
5J500MV14
(57)【要約】
【課題】積分容量の両端でチョッピングを行う構成において、スイッチのばらつきによるオフセットの影響を低減できる変調器を提供する。
【解決手段】差動アンプ1の入力端子と出力端子との間に第1スイッチφ1eを接続し、差動アンプ1の入力端子と出力端子との間に、第2スイッチφ2e、システムCHOPスイッチ2、積分容量Cint及びシステムCHOPスイッチ3の直列回路を接続して積分器4を構成する。スイッチ2、3は、それぞれm個、n個の単位スイッチCHL1、CHL2を備える。制御回路は、入力チョッピング用スイッチ14及び出力チョッピング用スイッチ15を周波数fchopでチョッピングし、スイッチ2の単位スイッチCHL1のそれぞれを周波数fchop/mでチョッピングし、スイッチ3のn個の単位スイッチCHL2のそれぞれを周波数fchop/nでチョッピングする。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
差動アンプ(1)の入力端子と出力端子との間に接続される第1スイッチ(φ1e)と、
前記差動アンプの入力端子と出力端子との間に接続される、第2スイッチ(φ2e)、容量チョッピング用入力スイッチ(CHL1)、積分容量(Cint)及び容量チョッピング用出力スイッチ(CHL2)の直列回路とを有する積分器(4)と、
前記積分器の入力側に配置された入力チョッピング用スイッチ(14)と、
前記積分器の出力側に配置された出力チョッピング用スイッチ(15)と、
前記各スイッチによるチョッピングを制御する制御回路と、を備え、
前記容量チョッピング用入力スイッチは、m個の単位スイッチを有し
前記容量チョッピング用出力スイッチは、n(m,nは、少なくとも何れか一方が2以上の自然数)個の単位スイッチを有し、
前記制御回路は、前記入力チョッピング用スイッチ及び出力チョッピング用スイッチを周波数fchopでチョッピングし、
前記容量チョッピング用入力スイッチのm個の単位スイッチのそれぞれを、周波数fchop/mでチョッピングし、
前記容量チョッピング用出力スイッチのn個の単位スイッチのそれぞれを、周波数fchop/nでチョッピングする変調器。
【請求項2】
(m≠n)に設定されている請求項1記載の変調器。
【請求項3】
m,nが、互いに素である請求項2記載の変調器。
【請求項4】
(m>n)に設定されている請求項2記載の変調器。
【請求項5】
前記積分器は、相関2重サンプリング型である請求項1から4の何れか一項に記載の変調器。
【請求項6】
前記差動アンプを中心に構成される積分器を第1積分器とすると、
前記第1積分器の後段に、第2積分器(23)を配置する請求項1から4の何れか一項に記載の変調器。
【請求項7】
前記第1積分器の前段に、入力信号を増幅するための増幅器(22)を備える請求項6記載の変調器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差動アンプ、積分容量及びチョッピング用スイッチを備えた変調器に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば非特許文献1には、図6及び図7に示すように、上記のような積分器にフィーバック系を加えた変調器を用いて構成した電流センサが開示されている。この構成では、差動アンプのオフセット電圧を低減するため、差動アンプの入力部のスイッチΦ2e、入出力間のスイッチΦ1e及び積分容量Cint1の両端のスイッチCHLでチョッピングを行っている。また、特許文献1,2にも同様の構成が開示されている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】Z. Tang, R. Zamparette, Y. Furuta, T. Nezuka and K. A. A. Makinwa, "A ±25A Versatile Shunt-Based Current Sensor with 10kHz Bandwidth and ±0.25% Gain Error from -40°C to 85°C Using 2-Current Calibration," 2022 IEEE International Solid- State Circuits Conference (ISSCC), 2022, pp. 66-68, doi: 10.1109/ISSCC42614.2022.9731777.
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許公開第2022/0263520号公報
【特許文献2】米国特許第8665130号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、積分容量の入力側と出力側とでそれぞれチョッピングを行うスイッチの特性、例えばオン抵抗等にばらつきがあると、それがオフセットを発生させる要因となってしまう。
本発明は上記事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、積分容量の両端でチョッピングを行う構成において、スイッチのばらつきによるオフセットの影響を低減できる変調器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の変調器によれば、差動アンプの入力端子と出力端子との間に第1スイッチを接続し、差動アンプの入力端子と出力端子との間に、第2スイッチ、容量チョッピング用入力スイッチ、積分容量及び容量チョッピング用出力スイッチの直列回路を接続して積分器を構成する。容量チョッピング用入力スイッチ、容量チョッピング用出力スイッチは、それぞれm個、n個の単位スイッチを備える。
【0007】
制御回路は、入力チョッピング用スイッチ及び出力チョッピング用スイッチを周波数fchopでチョッピングし、容量チョッピング用入力スイッチのm個の単位スイッチのそれぞれを周波数fchop/mでチョッピングし、容量チョッピング用出力スイッチのn個の単位スイッチのそれぞれを周波数fchop/nでチョッピングする。このように、容量チョッピング用入力及び出力スイッチの少なくとも何れか一方の単位スイッチを複数にすることで、単位スイッチの特性のばらつきを平準化させることができる。したがって、入力側、出力側の単位スイッチ間に生じている、特性のばらつきに起因して発生するオフセットを低減できる。
【0008】
請求項2記載の変調器によれば、(m≠n)に設定することで、チョッピングを行う毎に、容量チョッピング用入力及び出力スイッチの単位スイッチの組合せが変化するので、特性のばらつきを、より平準化させることができる。
【0009】
請求項4記載の変調器によれば、(m>n)に設定する。第2スイッチがオンすると、積分容量には、容量チョッピング用入力スイッチを介して電荷が流入する。このため、容量チョッピング用入力スイッチの単位スイッチ数を多くした方が、オフセットを低減する効果がより高くなる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態において、図2に示す積分器の構成を簡略化して示す変調器の構成を示す図
図2】差動アンプを差動入出力として、積分器の構成を示す図
図3】システムCHOPスイッチのシンボルと、複数のスイッチの組合せとの対応を示す図
図4】周波数fchopに基づいて、システムCHOPスイッチ3の各単位スイッチCHLがチョッピングされるタイミングを示す図
図5】第2実施形態において、変調器の構成を示す図
図6】非特許文献1に開示されている変調器の構成を示す図
図7】同変調器の動作を示すタイミングチャート
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1実施形態)
以降の各実施形態で扱うアンプは、図2に示すように差動アンプであるが、説明を容易にするため、図1に示すように、シングルエンドタイプで正側、負側のスイッチ等を一纏めにして示す。図2に示すように、差動アンプ1の反転側、非反転側の構成は対称である。反転側、負側の構成の符号には(-)、非反転側、正側の構成の符号には(+)を付しているが、両者を特に区別する必要がない場合には、符号に(-)、(+)を付さない場合もある。
【0012】
図2に示すように、差動アンプ1の各入力端子には、入力電圧が、カップリングコンデンサCinを介して与えられる。入力端子と出力端子との間には、第1スイッチΦ1eが接続されていると共に、第2スイッチΦ2e、システムCHOPスイッチ2、積分容量Cint、システムCHOPスイッチ3の直列回路が接続されている。
【0013】
図2ではシンボル的に示しているシステムCHOPスイッチ2,3は、4つの単位スイッチを備えている。図3に示すように、反転側、非反転側にそれぞれ直列に接続される2つのスイッチCHL(+)、CHL1(-)と、反転側、非反転側間にたすき掛け状態で接続される2つのスイッチCHL(+)、CHL1(-)とからなる。システムCHOPスイッチ2は容量チョッピング用入力スイッチに相当し、システムCHOPスイッチ3は容量チョッピング用出力スイッチに相当する。尚、各スイッチは、例えばNチャネルMOSFET等で構成される。
【0014】
図1では、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチをCHL1,システムCHOPスイッチ3の単位スイッチをCHL2として、一纏めで示している。システムCHOPスイッチ2は、m個の単位スイッチCHL1(1)~CHL1(m)を並列に接続した構成であり、システムCHOPスイッチ3は、n個の単位スイッチCHL2(1)~CHL1(n)を並列に接続した構成である。以上の構成において、差動アンプ1、その入出力端子間に接続されている積分容量Cint、システムCHOPスイッチ2及び3等を加えたものが積分器4を構成している。積分器4は、相関2重サンプリング型である。
【0015】
尚、相関2重サンプリング型の積分器は、例えば特開2018‐109647号公報の図30や、特願2021-209475号の図1等にも示されている。変調器11をこのように構成することで、差動アンプ1のオフセット電圧や、フリッカノイズ等の影響を低減できる。
【0016】
本実施形態の変調器11は、積分器4にフィードバック系を加えて構成されている。差動アンプ1の出力端子には、量子化器12が接続されており、量子化器12の出力端子には、D/A変換器13が接続されている。D/A変換器13の出力端子は、図示しないスイッチやコンデンサCin2を介して、差動アンプ1の非反転入力端子に接続されている。コンデンサCin1の前段には、入力チョッピング用スイッチ14が接続され、量子化器12の出力端子には、出力チョッピング用スイッチ15が接続されている。
【0017】
次に、本実施形態の作用について説明する。変調器11の図示しない制御回路は、スイッチΦ1e及びΦ2eを動作周波数fsで動作させる。また、図1に示すように、入力チョッピング用スイッチ14、及び出力チョッピング用スイッチ15は、周波数fchopでチョッピングする。そして、システムCHOPスイッチ2については、m個の単位スイッチCHL1(1)~CHL1(m)のそれぞれを、周波数fchop/mで順次切り替えてチョッピングする。また、システムCHOPスイッチ3については、n個の単位スイッチCHL2(1)~CHL1(n)のそれぞれを、周波数fchop/nで順次切り替えてチョッピングする。周波数fchopは、周波数fsに対して十分低い周波数であり、例えば、fchop=fs/256程度に設定する。
【0018】
図4は、周波数fchopに従い、システムCHOPスイッチ3におけるn個の単位スイッチCHL2(1)~CHL1(n)が順次チョッピングされるタイミングを示している。例えば(n≧5)であり、(m=n+1)であるとする。この場合、システムCHOPスイッチ2、3を、上述したようにそれぞれ周波数fchop/m、周波数fchop/nで順次切り替えてチョッピングすると、最初はシステムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1(1)と、システムCHOPスイッチ3の単位スイッチはCHL2(1)とが同時にチョッピングされる。
【0019】
その後、周波数fchop毎にそれぞれの単位スイッチCHL1、CHL2が切り替わり、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1(m)をチョッピングする際に、同時にチョッピングされるシステムCHOPスイッチ3の単位スイッチはCHL2(1)となる。その次に、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1(1)と、同時にチョッピングされるシステムCHOPスイッチ3の単位スイッチはCHL2(2)となる。
【0020】
このように、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1(1)~CHL1(m)が全てチョッピングされる入力側チョッピング周期と、システムCHOPスイッチ3の単位スイッチCHL2(1)~CHL2(n)が全てチョッピングされる出力側チョッピング周期とには、周波数fchopの1周期分のずれがある。これにより、入力側チョッピング周期が繰り返される毎に、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1とシステムCHOPスイッチ3の単位スイッチCHL2との組み合わせが変化する。
【0021】
すなわち、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1がm並列、システムCHOPスイッチ3の単位スイッチCHL2がn並列になることで、NチャネルMOSFETにおけるオン抵抗等の特性のばらつきは、統計的に1/(√m)又は1/(√n)に低減される。加えて、m,nが互いに素である場合、上述のように、入力側チョッピング周期が繰り返される毎に、システムCHOPスイッチ2、3における単位スイッチCHL1、CHL2の組合せが変化することで、特性のばらつきは更に低減される。したがって、そのばらつきに起因して発生するオフセットの影響も低減される。
【0022】
以上のように本実施形態によれば、差動アンプ1の入力端子と出力端子との間に第1スイッチφ1eを接続し、差動アンプ1の入力端子と出力端子との間に、第2スイッチφ2e、システムCHOPスイッチ2、積分容量Cint及びシステムCHOPスイッチ3の直列回路を接続して積分器4を構成する。システムCHOPスイッチ2、3は、それぞれm個、n個の単位スイッチCHL1、CHL2を備える。
【0023】
制御回路は、入力チョッピング用スイッチ14及び出力チョッピング用スイッチ15を周波数fchopでチョッピングし、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチCHL1のそれぞれを周波数fchop/mでチョッピングし、システムCHOPスイッチ3のn個の単位スイッチCHL2のそれぞれを周波数fchop/nでチョッピングする。
【0024】
このように、システムCHOPスイッチ2、3の単位スイッチCHL1、CHL2をそれぞれ複数にすることで、単位スイッチCHL1、CHL2の特性のばらつきを平準化させることができる。したがって、特性のばらつきに起因して発生するオフセットを低減できる。また、第2スイッチφ2eがオンした際に、積分容量CintにはシステムCHOPスイッチ2を介して電荷が流入するので、(m>n)に設定し、システムCHOPスイッチ2の単位スイッチ数CHL1の数を多くすることで、オフセットの低減効果をより高めることができる。
【0025】
(第2実施形態)
図5に示すように、第2実施形態の変調器21は、第1実施形態の変調器11において、入力チョッピング用スイッチ14とコンデンサCin1との間に入力信号を増幅するためのアンプ22を接続し、差動アンプ1の出力端子と量子化器12との間に2次積分器23を接続したものである。アンプ22の入力端子と、2次積分器23の図示しないコンデンサには、D/A変換器13と同様に、量子化器12の出力信号をD/A変換するD/A変換器24,25を介してアナログ信号が与えられている。変調器11を第1積分器とすると、2次積分器23は第2積分器に相当する。変調器21をこのように構成することで量子化雑音をより高い周波数領域にシフトさせて、その影響を除去することができる。
【0026】
(その他の実施形態)
必ずしも(m>n)に設定する必要はない。少なくとも何れか一方は「1」でも良く、例えば(m=2,n=1)に設定しても良い。
(m=n)に設定しても良いが、この場合m,nは共に「2」以上である。(m=n)に設定した場合も、単位スイッチのばらつきを平準化する効果は生じる。
【0027】
各スイッチは、NチャネルMOSFETに限ることなく、その他の半導体素子で構成しても良い。
第2実施形態で、アンプ22を削除しても良い。
また第2実施形態で、2次積分器23を削除しても良い。
本開示は、実施例に準拠して記述されたが、本開示は当該実施例や構造に限定されるものではないと理解される。本開示は、様々な変形例や均等範囲内の変形をも包含する。加えて、様々な組み合わせや形態、さらには、それらに一要素のみ、それ以上、あるいはそれ以下、を含む他の組み合わせや形態をも、本開示の範疇や思想範囲に入るものである。
【符号の説明】
【0028】
図面中、1は差動アンプ、2及び3はシステムCHOPスイッチ、4は積分器、CHL1及びCHL2はチョッピング用スイッチ、φ1eは第1スイッチ、φ2eは第2スイッチ、Cintは積分容量、CHL1,CHL2は単位スイッチを示す。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7