(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176796
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】トランスチップおよび信号伝達装置
(51)【国際特許分類】
H01F 27/29 20060101AFI20241212BHJP
H01L 21/822 20060101ALI20241212BHJP
H01L 25/04 20230101ALI20241212BHJP
H01F 17/00 20060101ALI20241212BHJP
H01F 27/32 20060101ALI20241212BHJP
H01F 30/10 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
H01F27/29 123
H01L27/04 E
H01L25/04 Z
H01F27/29 P
H01F17/00 B
H01F27/32 130
H01F30/10 D
H01F30/10 F
【審査請求】未請求
【請求項の数】19
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095602
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】山下 宜久
【テーマコード(参考)】
5E044
5E070
5F038
【Fターム(参考)】
5E044CA02
5E070AA11
5E070AB08
5E070CB12
5E070CB17
5E070CB18
5E070EA01
5E070EB04
5F038AZ04
5F038AZ05
5F038BE07
5F038BE10
5F038CA10
(57)【要約】
【課題】第1コイルと第2コイルとの必要な絶縁耐圧を確保しつつも素子絶縁層の厚さを薄くすること。
【解決手段】トランスチップ50は、素子絶縁層52内において裏面寄りに配置された第1コイルと、素子絶縁層52内において表面52A寄りに配置され、Z方向において第1コイルと対向する第2コイル22と、表面52A上に形成された第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aと、第1コイルの第1内周端部と第1内周パッド57Aとを電気的に接続する第1内周接続部80Aと、第2コイル22の第2内周端部と第2内周パッド58Aとを電気的に接続する第2内周接続部90Aと、を備える。平面視において、第1内周パッド57A、第2内周パッド58A、第1内周接続部80A、および第2内周接続部90Aは、第1コイルおよび第2コイル22によって囲まれた内側領域23に配置されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の絶縁膜の積層構造によって構成され、厚さ方向において互いに反対側を向く表面および裏面を含む絶縁層と、
前記絶縁層内において前記裏面寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部を含む第1コイルと、
前記絶縁層内において前記表面寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部を含み、前記厚さ方向において前記第1コイルと対向する第2コイルと、
前記表面上に形成された第1内周パッドおよび第2内周パッドと、
前記第1コイルの前記第1内周端部と前記第1内周パッドとを電気的に接続する第1内周接続部と、
前記第2コイルの前記第2内周端部と前記第2内周パッドとを電気的に接続する第2内周接続部と、
を備え、
前記厚さ方向から視て、前記第1内周パッド、前記第2内周パッド、前記第1内周接続部、および前記第2内周接続部は、前記第1コイルおよび前記第2コイルによって囲まれた内側領域に配置されている
トランスチップ。
【請求項2】
前記絶縁層の前記裏面に接しており、前記絶縁層を支持する基板を備え、
前記第1コイルは、前記複数の絶縁膜のうち前記裏面を構成する最下層の絶縁膜上において前記最下層の絶縁膜に接するように形成されている
請求項1に記載のトランスチップ。
【請求項3】
前記第2コイルは、前記複数の絶縁膜のうち前記表面を構成する最上層の絶縁膜に接した状態で当該絶縁膜よって覆われている
請求項2に記載のトランスチップ。
【請求項4】
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、長手方向および短手方向を有する環状に形成されており、
前記第1内周パッドおよび前記第2内周パッドは、前記厚さ方向から視て前記長手方向に互いに離隔して配列されている
請求項1に記載のトランスチップ。
【請求項5】
前記第1内周パッドは、前記長手方向において前記内側領域の第1端部に配置されており、
前記第2内周パッドは、前記長手方向において前記内側領域の前記第1端部とは反対側の第2端部に配置されている
請求項4に記載のトランスチップ。
【請求項6】
前記第1内周接続部は、
前記厚さ方向において前記第1コイルと同じ位置に設けられ、前記第1内周端部から前記長手方向に延びる第1内周配線層と、
前記第1内周配線層と前記第1内周パッドとを電気的に接続する第1内周接続層と、
を含む
請求項4に記載のトランスチップ。
【請求項7】
前記第1内周接続層は、
前記厚さ方向において前記第2コイルと同じ位置に設けられ、前記厚さ方向において前記第1内周配線層および前記第1内周パッドの双方と対向する第1中間配線層と、
前記厚さ方向において前記第1内周配線層と前記第1中間配線層とを接続する第1内周ビアと、
前記厚さ方向において前記第1中間配線層と前記第1内周パッドとを接続する第2内周ビアと、
を含む
請求項6に記載のトランスチップ。
【請求項8】
前記第1内周接続部と前記第2コイルとの間の最短距離は、前記厚さ方向における前記第1コイルと前記第2コイルとの間の距離以上である
請求項6に記載のトランスチップ。
【請求項9】
前記第2内周接続部は、
前記厚さ方向において前記第2コイルと同じ位置に設けられ、前記第2内周端部から前記長手方向に延び、前記厚さ方向において前記第2内周パッドと対向する部分を含む第2内周配線層と、
前記第2内周パッドと前記第2内周配線層とを電気的に接続する第2内周接続層と、
を含む
請求項4に記載のトランスチップ。
【請求項10】
前記表面上において前記第1コイルおよび前記第2コイルよりも外方に形成された第1外周パッドおよび第2外周パッドと、
前記第1コイルの第1外周端部と前記第1外周パッドとを電気的に接続する第1外周接続部と、
前記第2コイルの第2外周端部と前記第2外周パッドとを電気的に接続する第2外周接続部と、
を備える
請求項1に記載のトランスチップ。
【請求項11】
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、長手方向および短手方向を有する環状に形成されており、
前記第1外周パッドは、前記厚さ方向から視て前記長手方向において前記第1内周パッドと同じ位置に配置されており、
前記第2外周パッドは、前記厚さ方向から視て前記長手方向において前記第2内周パッドと同じ位置に配置されている
請求項10に記載のトランスチップ。
【請求項12】
前記第1コイルおよび前記第2コイルは、長手方向および短手方向を有する環状に形成されており、
前記長手方向における前記第1外周パッドと前記第2外周パッドとの間の距離は、前記長手方向における前記第1内周パッドと前記第2内周パッドとの間の距離以上である
請求項10に記載のトランスチップ。
【請求項13】
前記第1外周接続部は、
前記厚さ方向において前記第1コイルと同じ位置に設けられ、前記第1外周端部から前記短手方向に延び、前記厚さ方向において前記第1外周パッドと対向する部分を含む第1外周配線層と、
前記第1外周配線層と前記第1外周パッドとを電気的に接続する第1外周接続層と、
を含む
請求項11に記載のトランスチップ。
【請求項14】
前記第1外周接続層は、
前記厚さ方向において前記第2コイルと同じ位置に設けられ、前記厚さ方向において前記第1外周配線層および前記第1外周パッドの双方と対向する第2中間配線層と、
前記厚さ方向において前記第1外周配線層と前記第2中間配線層とを接続する第1外周ビアと、
前記厚さ方向において前記第2中間配線層と前記第1外周パッドとを接続する第2外周ビアと、
を含む
請求項13に記載のトランスチップ。
【請求項15】
前記第2外周接続部は、
前記厚さ方向において前記第2コイルと同じ位置に設けられ、前記第2外周端部から前記短手方向に延び、前記厚さ方向において前記第2外周パッドと対向する部分を含む第2外周配線層と、
前記第2外周配線層と前記第2外周パッドとを電気的に接続する第2外周接続層と、
を含む
請求項11に記載のトランスチップ。
【請求項16】
前記第1内周パッドおよび前記第2内周パッドの各々は、複数設けられ、
複数の前記第1内周パッドは、前記厚さ方向から視て前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記長手方向に配列されており、
複数の前記第2内周パッドは、前記厚さ方向から視て前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記長手方向に配列されている
請求項4に記載のトランスチップ。
【請求項17】
前記第1内周パッドおよび前記第2内周パッドの各々は、複数設けられ、
複数の前記第1内周パッドは、前記厚さ方向から視て前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記短手方向に配列されており、
複数の前記第2内周パッドは、前記厚さ方向から視て前記第1コイルおよび前記第2コイルの前記短手方向に配列されている
請求項4に記載のトランスチップ。
【請求項18】
請求項1~17のいずれか一項に記載のトランスチップと、
第1回路と、
前記第1回路と前記トランスチップを介して接続された第2回路と、
を備え、
前記第1回路と前記第2回路とは、前記トランスチップを介して信号を伝達するように構成されている
信号伝達装置。
【請求項19】
前記第1回路を含む第1チップと、
前記第2回路を含む第2チップと、
を含む
請求項18に記載の信号伝達装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、トランスチップおよび信号伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
信号伝達装置の一例として、トランジスタ等のスイッチング素子のゲート電極にゲート電圧を印加する絶縁型のゲートドライバが知られている。このようなゲートドライバに用いられるトランスチップの一例として、素子絶縁層内において、素子絶縁層の厚さ方向に対向配置された第1コイルおよび第2コイルを含む構造が知られている(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記のように構成されるトランスチップでは、第1コイルと第2コイルとの必要な絶縁耐圧を確保しつつも素子絶縁層の厚さを薄くすることが好ましい。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するトランスチップは、複数の絶縁膜の積層構造によって構成され、厚さ方向において互いに反対側を向く表面および裏面を含む絶縁層と、前記絶縁層内において前記裏面寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部を含む第1コイルと、前記絶縁層内において前記表面寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部を含み、前記厚さ方向において前記第1コイルと対向する第2コイルと、前記表面上に形成された第1内周パッドおよび第2内周パッドと、前記第1コイルの前記第1内周端部と前記第1内周パッドとを電気的に接続する第1内周接続部と、前記第2コイルの前記第2内周端部と前記第2内周パッドとを電気的に接続する第2内周接続部と、を備え、前記厚さ方向から視て、前記第1内周パッド、前記第2内周パッド、前記第1内周接続部、および前記第2内周接続部は、前記第1コイルおよび前記第2コイルによって囲まれた内側領域に配置されている。
【0006】
上記課題を解決する信号伝達装置は、上記トランスチップと、第1回路と、前記第1回路と前記絶縁チップを介して接続された第2回路と、を備え、前記第1回路と前記第2回路とは、前記トランスチップを介して信号を伝達するように構成されている。
【発明の効果】
【0007】
上記トランスチップおよび信号伝達装置によれば、第1コイルと第2コイルとの必要な絶縁耐圧を確保しつつも素子絶縁層の厚さを薄くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態の信号伝達装置の回路構成を模式的に示す回路図である。
【
図2】
図2は、
図1の信号伝達装置を模式的に示す概略平面図である。
【
図3】
図3は、
図2の信号伝達装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図4】
図4は、信号伝達装置におけるトランスチップを模式的に示す概略平面図である。
【
図5】
図5は、
図3のF5-F5線でトランスチップを切断した概略断面図である。
【
図6】
図6は、
図3のF6-F6線でトランスチップを切断した概略断面図である。
【
図7】
図7は、
図4のF7-F7線でトランスチップを切断した概略断面図である。
【
図8】
図8は、
図7の第1内周接続部およびその周辺を拡大した概略断面図である。
【
図9】
図9は、
図7の第2内周接続部およびその周辺を拡大した概略断面図である。
【
図10】
図10は、
図4のF10-F10線でトランスチップを切断した概略断面図である。
【
図12】
図12は、
図4のF12-F12線でトランスチップを切断した概略断面図である。
【
図14】
図14は、比較例のトランスチップを模式的に示す概略平面図である。
【
図16】
図16は、変更例のトランスチップを模式的に示す概略平面図である。
【
図17】
図17は、変更例のトランスチップを模式的に示す概略平面図である。
【
図18】
図18は、変更例のトランスチップを模式的に示す概略平面図である。
【
図19】
図19は、変更例のトランスチップについて、1つのトランスを模式的に示す概略平面図である。
【
図20】
図20は、変更例の信号伝達装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図21】
図21は、変更例の信号伝達装置を模式的に示す概略断面図である。
【
図22】
図22は、変更例の信号伝達装置を模式的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示における絶縁チップおよび信号伝達装置のいくつかの実施形態について説明する。なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図していない。
【0011】
[信号伝達装置の構成]
図1~
図3を参照して、一実施形態の信号伝達装置10の概略構成について説明する。
図1は一実施形態の信号伝達装置10の回路構成の一例を簡略化して示している。
図2は一実施形態の信号伝達装置10内部の概略平面構造を示している。
図3は
図2の信号伝達装置10の一部の内部構造を簡略化して示している。なお、
図3では、図面の理解を容易にするため、ハッチング線を省略している。
【0012】
図1に示すように、信号伝達装置10は、1次側端子11と2次側端子12との間を電気的に絶縁しつつパルス信号を伝達するように構成されている。信号伝達装置10は、例えばデジタルアイソレータである。デジタルアイソレータの一例はDC/DCコンバータである。信号伝達装置10は、1次側端子11に電気的に接続された1次側回路13と、2次側端子12に電気的に接続された2次側回路14と、1次側回路13と2次側回路14とを電気的に絶縁するトランス15と、を有する信号伝達回路10Aを含む。ここで、本開示においては、1次側回路13は「第1回路」に対応し、2次側回路14は「第2回路」に対応している。
【0013】
1次側回路13は、第1電圧V1が印加されることによって動作するように構成されている。1次側回路13は、例えば外部の制御装置(図示略)に電気的に接続されている。
2次側回路14は、第1電圧V1とは異なる第2電圧V2が印加されることによって動作するように構成されている。第1電圧V1および第2電圧V2は直流電圧である。2次側回路14は、例えば制御装置の制御対象となる駆動回路(図示略)に電気的に接続されている。駆動回路の一例は、スイッチング素子を含むスイッチング回路である。スイッチング素子としては、例えばSiMOSFET、SiCMOSFET、IGBT等が挙げられる。2次側回路14は、スイッチング素子のゲートに電気的に接続されている。そして、2次側回路14は、スイッチング素子のゲートにゲート駆動信号を供給する。
【0014】
信号伝達回路10Aにおいては、制御装置からの制御信号が1次側端子11を介して1次側回路13に入力されると、1次側回路13からトランス15を介して2次側回路14に信号が伝達される。そして、2次側回路14に伝達された信号は、2次側回路14から2次側端子12を介して駆動回路に出力される。
【0015】
1次側回路13から2次側回路14に向けて伝達される信号、すなわち1次側回路13から出力される信号としては、例えばスイッチング素子を駆動させるための信号である。この信号の一例は、セット信号(SET)およびリセット信号(RESET)が挙げられる。セット信号は制御装置からの制御信号の立上りを伝達する信号であり、リセット信号は制御装置からの制御信号の立下りを伝達する信号である。セット信号およびリセット信号は、スイッチング素子のゲート駆動信号を生成するための信号であるといえる。
【0016】
より詳細には、1次側回路13は、制御装置から入力された制御信号に基づいてセット信号およびリセット信号を生成する。一例では、1次側回路13は、制御信号の立上りに応答することによってセット信号を生成する一方、制御信号の立下りに応答することによってリセット信号を生成する。そして、1次側回路13は、生成したセット信号およびリセット信号を2次側回路14に向けて送信する。
【0017】
2次側回路14は、1次側回路13から受信したセット信号およびリセット信号に基づいて、スイッチング素子を駆動するためのゲート駆動信号を生成する。そして、2次側回路14は、ゲート駆動信号をスイッチング素子のゲートに供給する。つまり、2次側回路14は、1次側回路13から出力された信号に基づいてスイッチング素子のゲートに供給するゲート駆動信号を生成するともいえる。より詳細には、2次側回路14は、セット信号に基づいてスイッチング素子をオンするゲート駆動信号を生成した後、そのゲート駆動信号をスイッチング素子のゲートに供給する。一方、2次側回路14は、リセット信号に基づいてスイッチング素子をオフするゲート駆動信号を生成した後、そのゲート駆動信号をスイッチング素子のゲートに供給する。このように、信号伝達装置10によってスイッチング素子のオンオフが制御される。
【0018】
2次側回路14は、例えばセット信号およびリセット信号が入力されるRS型フリップフロップ回路と、RS型フリップフロップ回路の出力信号に基づいてゲート駆動信号を生成するドライバ部と、を含む。ただし、2次側回路14の具体的な回路構成は任意に変更可能である。
【0019】
上述のとおり、1次側回路13と2次側回路14とは、トランス15によって電気的に絶縁されている。より詳細には、トランス15によって1次側回路13と2次側回路14との間で直流電圧が伝達されることが規制されている一方、セット信号およびリセット信号等の各種信号の伝達は可能となっている。
【0020】
すなわち、1次側回路13と2次側回路14とが絶縁されている状態とは、1次側回路13と2次側回路14との間において、直流電圧の伝達が遮断されている状態を意味し、1次側回路13と2次側回路14との間における信号の伝達については許容している。
【0021】
信号伝達装置10の絶縁耐圧は、例えば2500Vrms以上7500Vrms以下である。一例では、信号伝達装置10の絶縁耐圧は、5000Vrms程度である。ただし、信号伝達装置10の絶縁耐圧の具体的な数値はこれに限られず任意に変更可能である。
【0022】
図1に示す例では、1次側回路13のグランドGND1と2次側回路14のグランドGND2とが独立して設けられている。以下、1次側回路13のグランドGND1の電位を第1基準電位とし、2次側回路14のグランドGND2の電位を第2基準電位とする。この場合、第1電圧V1は第1基準電位からの電圧であり、第2電圧V2は第2基準電位からの電圧である。第1電圧V1は例えば4.5V以上5.5V以下であり、第2電圧V2は例えば9V以上24V以下である。
【0023】
次に、信号伝達装置10の詳細な構成について説明する。
信号伝達装置10は、1次側回路13から2次側回路14に向けてセット信号およびリセット信号の2種類の信号を伝達させることに対応させて、トランス15を2つ含む。より詳細には、信号伝達装置10は、1次側回路13から2次側回路14へのセット信号の伝達に用いられるトランス15と、1次側回路13から2次側回路14へのリセット信号の伝達に用いられるトランス15と、を含む。以下、説明の便宜上、セット信号の伝達に用いられるトランス15を「トランス15A」とし、リセット信号の伝達に用いられるトランス15を「トランス15B」とする。
【0024】
信号伝達装置10は、1次側回路13とトランス15Aとを接続する1次側信号線16Aと、1次側回路13とトランス15Bとを接続する1次側信号線16Bと、を含む。このため、1次側信号線16Aは、セット信号を1次側回路13からトランス15Aに伝達する。1次側信号線16Bは、リセット信号を1次側回路13からトランス15Bに伝達する。
【0025】
信号伝達装置10は、トランス15Aと2次側回路14とを接続する2次側信号線17Aと、トランス15Bと2次側回路14とを接続する2次側信号線17Bと、を含む。このため、2次側信号線17Aは、セット信号をトランス15Aから2次側回路14に伝達する。2次側信号線17Bは、リセット信号をトランス15Bから2次側回路14に伝達する。
【0026】
トランス15Aは、1次側回路13と2次側回路14とを電気的に絶縁する一方、1次側回路13から2次側回路14にセット信号を伝達するように構成されている。トランス15Bは、1次側回路13と2次側回路14とを電気的に絶縁する一方、1次側回路13から2次側回路14にリセット信号を伝達するように構成されている。
【0027】
トランス15A,15Bは、第1コイル21および第2コイル22を含む。第1コイル21と第2コイル22とは、互いに電気的に絶縁されており、かつ磁気結合可能に構成されている。
【0028】
トランス15A,15Bの第1コイル21は、1次側回路13に電気的に接続されている。一例では、トランス15Aの第1コイル21の第1端は1次側信号線16Aによって1次側回路13に電気的に接続され、トランス15Aの第1コイル21の第2端は1次側回路13のグランドGND1に電気的に接続されている。トランス15Bの第1コイル21の第1端は1次側信号線16Bによって1次側回路13に電気的に接続され、トランス15Bの第1コイル21の第2端は1次側回路13のグランドGND1に電気的に接続されている。したがって、トランス15A,15Bの第1コイル21の第2端の電位は、第1基準電位となる。第1基準電位は例えば0Vである。
【0029】
トランス15A,15Bの第2コイル22は、2次側回路14に電気的に接続されている。一例では、トランス15Aの第2コイル22の第1端は2次側信号線17Aによって2次側回路14に電気的に接続され、トランス15Aの第2コイル22の第2端は2次側回路14のグランドGND2に電気的に接続されている。トランス15Bの第2コイル22の第1端は2次側信号線17Bによって2次側回路14に電気的に接続され、トランス15Bの第2コイル22の第2端は2次側回路14のグランドGND2に電気的に接続されている。したがって、トランス15A,15Bの第2コイル22の第2端の電位は、第2基準電位となる。2次側回路14のグランドGND2は、例えば2次側回路14に電気的に接続されたスイッチング回路におけるスイッチング素子のソースに電気的に接続されている。
【0030】
ところで、スイッチング回路の使用態様によっては、スイッチング回路の動作にともないスイッチング素子のソースが変動する。この場合、スイッチング素子のソースは、例えば600V以上となる場合がある。したがって、2次側回路14のグランドGND2、つまり第2基準電位は、600V以上となる場合がある。このため、トランス15A,15Bは、第1基準電位および第2基準電位に応じた絶縁耐圧が求められる。
【0031】
このように、第2基準電位が600V以上となる場合、2次側回路14は1次側回路13よりも高い電位で動作するため、換言すると第2電圧V2が第1電圧V1よりも高くなるため、「高圧回路」と称することができる。一方、1次側回路13は2次側回路14よりも低い電位で動作するため、換言すると第1電圧V1が第2電圧V2よりも低くなるため、「低圧回路」と称することができる。このため、トランス15A,15Bのうち1次側回路13(低圧回路)に電気的に接続された第1コイル21は「低圧コイル」と称することができる。また、トランス15A,15Bのうち2次側回路14(高圧回路)に電気的に接続された第2コイル22は「高圧コイル」と称することができる。
【0032】
図2は、信号伝達装置10の内部構成を示す平面図の一例を示している。なお、
図1では、信号伝達装置10の回路構成を簡略化して示しているため、
図2の信号伝達装置10の外部端子(1次側端子11および2次側端子12)の数は、
図1の信号伝達装置10の外部端子の数よりも多い。また、
図2の信号伝達装置10における1次側回路13から2次側回路14に信号を伝達する信号線の数(後述するワイヤW1~W4の数)は、
図1の信号伝達装置10の信号線の数よりも多い。
【0033】
図3は、信号伝達装置10の内部構成を示す断面図の一例を示している。なお、
図3は、信号伝達装置10の内部構成を簡略化して示しているため、後述する第1チップ30、第2チップ40、およびトランスチップ50の断面構造は簡略化されている。このため、
図3に示すトランスチップ50の断面構造は、
図7~
図13のトランスチップ50の断面構造とは異なっている。
【0034】
図2に示すように、信号伝達装置10は、複数の半導体チップが1パッケージ化された半導体装置である。信号伝達装置10のパッケージ形式は、SO(Small Outline)系であり、
図2の例ではSOP(Small Outline Package)である。信号伝達装置10は、半導体チップとして、第1チップ30、第2チップ40、およびトランスチップ50を含む。また、信号伝達装置10は、第1チップ30が配置された第1リードフレーム60と、第2チップ40が配置された第2リードフレーム70と、各チップ30,40,50および各リードフレーム60,70の一部を封止する封止樹脂130と、を含む。なお、信号伝達装置10のパッケージ形式は任意に変更可能である。また、
図2において、封止樹脂130は、信号伝達装置10の内部構造を説明する都合上、二点鎖線で示されている。
【0035】
封止樹脂130は、電気絶縁性を有する材料によって形成されている。一例では、封止樹脂130は、例えばエポキシ樹脂を含む樹脂によって形成されている。封止樹脂130は、Z方向を厚さ方向とする矩形板状に形成されている。封止樹脂130は、4つの樹脂側面131~134を有する。樹脂側面131,132は、封止樹脂130のX方向の両端面を構成している。樹脂側面133,134は、封止樹脂130のY方向の両端面を構成している。なお、以降の説明において、Z方向から信号伝達装置10およびその構成要素を視ることを「平面視」という。またX方向およびY方向は、平面視においてZ方向と交差する方向であり、互いに直交している。一例では、X方向およびY方向の双方はZ方向と直交する方向である。
【0036】
第1リードフレーム60および第2リードフレーム70の各々は、導体であり、例えばCu(銅)、Fe(鉄)等を含む材料によって形成されている。各リードフレーム60,70は、封止樹脂130の内外に跨って設けられている。
【0037】
第1リードフレーム60は、封止樹脂130内に配置された第1ダイパッド61と、封止樹脂130の内外に跨って配置された複数の第1リード62と、を含む。各第1リード62は、1次側端子11(
図1参照)を構成している。
【0038】
図2の例では、第1ダイパッド61には、第1チップ30およびトランスチップ50の双方が配置されている。平面視において、第1ダイパッド61は、そのX方向の中央が封止樹脂130のX方向の中央よりも樹脂側面131の近くとなるように配置されている。一例では、第1ダイパッド61は、封止樹脂130から露出されていない。第1ダイパッド61は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視における第1ダイパッド61の形状は、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる矩形状である。
【0039】
複数の第1リード62は、Y方向において互いに離隔して配列されている。複数の第1リード62のうちY方向の両端に配置された第1リード62の各々は、第1ダイパッド61と一体化されている。各第1リード62の一部は、樹脂側面131から封止樹脂130の外方に向けて突出している。
【0040】
第2リードフレーム70は、封止樹脂130内に配置された第2ダイパッド71と、封止樹脂130の内外に跨って配置された複数の第2リード72と、を含む。各第2リード72は、2次側端子12(
図1参照)を構成している。
【0041】
図2の例では、第2ダイパッド71には、第2チップ40が配置されている。平面視において、第2ダイパッド71は、第1ダイパッド61よりも樹脂側面132寄りに第1ダイパッド61に対してX方向に離隔して配置されている。このように、X方向において第1ダイパッド61および第2ダイパッド71が配列されているため、X方向は第1ダイパッド61および第2ダイパッド71の配列方向であるといえる。
【0042】
一例では、第2ダイパッド71は、封止樹脂130から露出されていない。第2ダイパッド71は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視における第2ダイパッド71の形状は、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる矩形状である。第1ダイパッド61および第2ダイパッド71のX方向の寸法は、配置される半導体チップのサイズや数に応じて設定される。このため、第1チップ30およびトランスチップ50が配置された第1ダイパッド61のX方向の寸法は、第2チップ40が配置された第2ダイパッド71のX方向の寸法よりも大きい。
【0043】
複数の第2リード72は、Y方向において互いに離隔して配列されている。
図2に示す例では、複数の第2リード72のうち一対の第2リード72は、第2ダイパッド71と一体化されている。一対の第2リード72は、Y方向の両端に配置された第2リード72の各々とY方向に隣り合う第2リード72である。各第2リード72の一部は、樹脂側面132から封止樹脂130の外方に向けて突出している。
【0044】
一例では、第2リード72の数は、第1リード62の数と同じである。
図2に示すとおり、平面視において、複数の第1リード62は、第1ダイパッド61および第2ダイパッド71の配列方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に配列されている。複数の第2リード72も同様に、第1ダイパッド61および第2ダイパッド71の配列方向(X方向)と直交する方向(Y方向)に配列されている。なお、第1リード62の数および第2リード72の数はそれぞれ任意に変更可能である。
【0045】
図2の例では、第1ダイパッド61は、第1ダイパッド61と一体化された一対の第1リード62によって支持されている。第2ダイパッド71は、第2ダイパッド71と一体化された一対の第2リード72によって支持されている。このため、各ダイパッド61,71には、樹脂側面133,134から露出する吊りリードが設けられていない。このため、第1リードフレーム60と第2リードフレーム70との間の絶縁距離を大きくとることができる。
【0046】
第1チップ30およびトランスチップ50は、第1ダイパッド61上においてX方向に互いに離隔して配列されている。第2チップ40は、X方向においてトランスチップ50に対して第1チップ30とは反対側に配置されている。このように、第1チップ30、第2チップ40、およびトランスチップ50は、X方向において互いに離隔して配列されている。第1チップ30、第2チップ40、およびトランスチップ50は、第1ダイパッド61および第2ダイパッド71の配列方向と同じ方向に配列されているといえる。X方向において第1リード62から第2リード72に向けて、第1チップ30、トランスチップ50、および第2チップ40の順に配列されている。つまり、トランスチップ50は、X方向において第1チップ30と第2チップ40との間に配置されているといえる。
【0047】
第1チップ30は、
図1に示す1次側回路13を含む。第1チップ30は、Z方向が厚さ方向となる矩形板状に形成されている。平面視における第1チップ30の形状は、X方向が短手方向となり、Y方向が長手方向となる矩形状である。
図3に示すように、第1チップ30は、Z方向において互いに反対側を向くチップ表面31およびチップ裏面32を有する。第1チップ30のチップ裏面32は、導電性接合材SDによって第1ダイパッド61に接合されている。導電性接合材SDは、例えばはんだペーストやAg(銀)ペーストが用いられている。
【0048】
第1チップ30のチップ表面31には、複数の第1電極パッド33、複数の第2電極パッド34、および複数の第3電極パッド35が形成されている。第1電極パッド33、第2電極パッド34、および第3電極パッド35は、1次側回路13と電気的に接続されている。
【0049】
複数の第1電極パッド33は、チップ表面31のうちチップ表面31のX方向の中央よりも第1リード62寄りに配置されている。複数の第1電極パッド33はY方向において互いに離隔して配列されている。複数の第2電極パッド34は、チップ表面31のX方向の両端部のうちトランスチップ50に近い方の端部に配置されている。複数の第2電極パッド34はY方向において互いに離隔して配列されている。複数の第3電極パッド35は、チップ表面31のY方向の両端部に分散して配置されている。
【0050】
図3に示すように、第1チップ30は、1次側回路13が形成された基板36を含む。基板36は、例えば半導体基板である。半導体基板の一例は、Siを含む材料によって形成された基板である。基板36上には、配線層37が形成されている。基板36は、チップ裏面32を構成し、配線層37はチップ表面31を構成している。
【0051】
配線層37は、例えばZ方向に積層された複数の絶縁膜と、絶縁膜に埋め込まれた金属層と、を含む。金属層は、第1チップ30の配線パターンを構成している。金属層は、例えば1次側回路13と各電極パッド33~35とを電気的に接続している。つまり、各電極パッド33~35は、配線層37を介して1次側回路13に電気的に接続されている。金属層は、例えばTi(チタン)、TiN(窒化チタン)、Au(金)、Ag、Cu、Al(アルミニウム)、およびW(タングステン)のうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって形成されている。
【0052】
図2に示すように、第2チップ40は、
図1に示す2次側回路14を含む。第2チップ40は、Z方向が厚さ方向となる矩形板状に形成されている。平面視における第2チップ40の形状は、X方向が短手方向となり、Y方向が長手方向となる矩形状である。
図3に示すように、第2チップ40は、Z方向において互いに反対側を向くチップ表面41およびチップ裏面42を有する。第2チップ40のチップ裏面42は、導電性接合材SDによって第2ダイパッド71に接合されている。
【0053】
第2チップ40のチップ表面41には、複数の第1電極パッド43、複数の第2電極パッド44、および複数の第3電極パッド45が形成されている。第1電極パッド43、第2電極パッド44、および第3電極パッド45は、2次側回路14と電気的に接続されている。
【0054】
複数の第1電極パッド43は、チップ表面41のX方向の両端部のうちトランスチップ50に近い方の端部に形成されている。複数の第1電極パッド43は、Y方向において互いに離隔して配列されている。複数の第2電極パッド44は、チップ表面41のX方向の両端部のうち第2リード72に近い方の端部に形成されている。複数の第2電極パッド44は、Y方向において互いに離隔して配列されている。複数の第3電極パッド45は、チップ表面41のY方向の両端部に分散して配置されている。
【0055】
図3に示すように、第2チップ40は、2次側回路14が形成された基板46を含む。基板46は、例えば半導体基板である。半導体基板の一例は、Siを含む材料によって形成された基板である。基板46上には、配線層47が形成されている。基板46は、チップ裏面42を構成し、配線層47はチップ表面41を構成している。
【0056】
配線層47は、例えばZ方向に積層された複数の絶縁膜と、絶縁膜に埋め込まれた金属層と、を含む。金属層は、第2チップ40の配線パターンを構成している。金属層は、例えば2次側回路14と各電極パッド43~45とを電気的に接続している。つまり、各電極パッド43~45は、配線層47を介して2次側回路14に電気的に接続されている。金属層は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって形成されている。
【0057】
トランスチップ50は、
図1に示すトランス15A,15Bを含んで1チップ化されたものである。つまり、トランスチップ50は、第1チップ30および第2チップ40とは別のトランス15A,15B専用のチップである。トランスチップ50は、チップ表面50Aと、このチップ表面50Aとは反対側を向くチップ裏面50Bと、を有する。チップ表面50Aは例えば第1チップ30のチップ表面31と同じ側を向き、チップ裏面50Bは例えば第1チップ30のチップ裏面32と同じ側を向いている。トランスチップ50のチップ裏面50Bは、導電性接合材SDによって第1ダイパッド61に接合されている。
【0058】
図2および
図3に示すように、トランスチップ50のチップ表面50Aには、複数の第1電極パッド57が形成されている。複数の第1電極パッド57は、チップ表面50AのX方向の両端部のうち第1チップ30に近い方の端部に形成されている。複数の第1電極パッド57は、Y方向において互いに離隔して配列されている。トランスチップ50のチップ表面50Aには、複数の第2電極パッド58が形成されている。複数の第2電極パッド58は、Y方向において互いに離隔して配列されている。
【0059】
信号伝達装置10の絶縁耐圧を予め設定された絶縁耐圧とするため、各リードフレーム60,70が最も接近する第1ダイパッド61と第2ダイパッド71とを互いに離隔させる必要がある。このため、平面視においてトランスチップ50と第2チップ40とのX方向の間の距離は、トランスチップ50と第1チップ30とのX方向の間の距離よりも大きくなる。一方、トランスチップ50と第1チップ30とは第1ダイパッド61上に配置されているため、互いに近づけてもよい。このため、トランスチップ50は、第2チップ40よりも第1チップ30寄りに配置されているといえる。
【0060】
第1チップ30、トランスチップ50、および第2チップ40の各々には、複数のワイヤW1~W4が接続されている。各ワイヤW1~W4は、ワイヤボンディング装置によって形成されたボンディングワイヤであり、例えばAu、Al、Cu等を含む導体によって形成されている。
【0061】
第1チップ30は、ワイヤW1によって第1リードフレーム60と電気的に接続されている。より詳細には、第1チップ30の複数の第1電極パッド33および複数の第3電極パッド35と、複数の第1リード62とがワイヤW1によって個別に電気的に接続されている。複数の第3電極パッド35は、複数の第1リード62のうち第1ダイパッド61と一体化された一対の第1リード62とワイヤW1によって個別に電気的に接続されている。これにより、1次側回路13と複数の第1リード62(1次側端子11)とが電気的に接続されている。
図2の例では、第1ダイパッド61と一体化された一対の第1リード62がグランド端子を構成し、かつワイヤW1によって1次側回路13と第1ダイパッド61とが電気的に接続されている。このため、第1ダイパッド61が1次側回路13のグランドGND1と同じ電位となる。
【0062】
第2チップ40は、ワイヤW4によって第2リードフレーム70と電気的に接続されている。より詳細には、第2チップ40の複数の第2電極パッド44および複数の第3電極パッド45と、複数の第2リード72とがワイヤW4によって個別に電気的に接続されている。複数の第3電極パッド45は、複数の第2リード72のうち第2ダイパッド71と一体化された一対の第2リード72とワイヤW4によって個別に電気的に接続されている。これにより、2次側回路14と複数の第2リード72(2次側端子12)とが電気的に接続されている。
図2の例では、第2ダイパッド71と一体化された一対の第2リード72がグランド端子を構成し、かつワイヤW4によって2次側回路14と第2ダイパッド71とが電気的に接続されている。このため、第2ダイパッド71が2次側回路14のグランドGND2と同じ電位となる。
【0063】
トランスチップ50は、第1チップ30とワイヤW2によって電気的に接続されている。また、トランスチップ50は、第2チップ40とワイヤW3によって電気的に接続されている。より詳細には、トランスチップ50の複数の第1電極パッド57は、第1チップ30の複数の第2電極パッド34とワイヤW2によって個別に電気的に接続されている。トランスチップ50の複数の第2電極パッド58は、第2チップ40の複数の第1電極パッド33とワイヤW3によって個別に電気的に接続されている。
【0064】
なお、トランス15A,15Bの第1コイル21(
図3参照)は、ワイヤW2および第1チップ30等を介して1次側回路13のグランドGND1に電気的に接続されている。トランス15A,15Bの第2コイル22(
図3参照)は、ワイヤW3および第2チップ40等を介して2次側回路14のグランドGND2に電気的に接続されている。
【0065】
[トランスチップの構成]
図3~
図13を参照して、トランスチップ50の構成の一例について説明する。
図4は、トランスチップ50の平面構造の一例を模式的に示している。
図5は、
図3のF5-F5線でトランスチップ50を切断した断面構造であり、トランス15A,15Bの第1コイル21を主に示している。
図6は、
図3のF6-F6線でトランスチップ50を切断した断面構造であり、トランス15A,15Bの第2コイル22を主に示している。
図7は、
図4のF7-F7線でトランスチップ50を切断した断面構造であり、主に第1コイル21および第2コイル22の断面構造を示している。
図8は、
図7の第1電極パッド57およびその周辺を拡大した断面構造を示している。
図9は、
図7の第2電極パッド58およびその周辺を拡大した断面構造を示している。
図10は、
図4のF10-F10線でトランスチップ50を切断した断面構造であり、主に第1コイル21と第1電極パッド57との接続構造を示している。
図11は、
図10のY方向の中央部を拡大した断面構造を示している。
図12は、
図4のF12-F12線でトランスチップ50を切断した断面構造であり、主に第2コイル22と第2電極パッド58との接続構造を示している。
図13は、
図12のY方向の中央部を拡大した断面構造を示している。なお、図面を容易に理解するため、
図4では、後述する樹脂層56を省略している。
【0066】
図3に示すように、トランスチップ50は、基板51と、基板51上に形成された素子絶縁層52と、を含む。素子絶縁層52は、「絶縁層」の一例である。
基板51は、例えば半導体基板によって構成されている。基板51は、例えばSi(シリコン)を含む材料によって形成された基板である。基板51に用いられるSi基板としては、単結晶の真性半導体材料によって構成される半導体基板、アクセプタ型不純物を含むp型半導体基板、ドナー型不純物を含むn型半導体基板等が挙げられる。
【0067】
なお、基板51は、半導体基板として、ワイドバンドギャップ半導体または化合物半導体が用いられてもよい。また、基板51は、半導体基板に代えて、ガラスを含む材料で形成された絶縁基板が用いられてもよい。ワイドバンドギャップ半導体は、2.0eV以上のバンドギャップを有する半導体基板である。ワイドバンドギャップ半導体は、SiC(炭化シリコン)、GaN(窒化ガリウム)、Ga2O3(酸化ガリウム)等であってもよい。化合物半導体は、III-V族化合物半導体であってもよい。化合物半導体は、AlN(窒化アルミニウム)、InN(窒化インジウム)、GaN、およびGaAs(ヒ化ガリウム)のうち少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0068】
基板51は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。一例では、基板51は、平面視においてX方向が短手方向となり、Y方向が長手方向となる長方形状である。基板51は、Z方向において互いに反対側を向く基板表面51Aおよび基板裏面51Bを含む。基板裏面51Bは、トランスチップ50のチップ裏面50Bを構成している。基板表面51Aは、素子絶縁層52と接する面である。
【0069】
基板表面51A上に形成された素子絶縁層52は、Z方向において互いに反対側を向く表面52Aおよび裏面52Bを含む。裏面52Bは、基板表面51Aに接している。素子絶縁層52は、基板51によって支持されている。ここで、Z方向は「素子絶縁層の厚さ方向」の一例である。このため、平面視は、「素子絶縁層の厚さ方向から視て」と言い換えることができる。
【0070】
図4に示すように、素子絶縁層52は、素子側面52C~52Fを含む。素子側面52C~52Fは、素子絶縁層52の表面52Aと裏面52B(
図3参照)とのZ方向の間に設けられており、かつ表面52Aと裏面52Bとを繋いでいる。素子側面52Cおよび素子側面52Dは、素子絶縁層52のX方向の両端面を構成している。素子側面52Eおよび素子側面52Fは、素子絶縁層52のY方向の両端面を構成している。素子側面52Cは、素子絶縁層52に対して第1チップ30(
図3参照)寄りの素子側面を構成している。素子側面52Dは、素子絶縁層52に対して第2チップ40(
図3参照)寄りの素子側面を構成している。素子側面52Eは封止樹脂130の樹脂側面133(
図2参照)寄りの素子側面を構成している。素子側面52Fは封止樹脂130の樹脂側面134(
図2参照)寄りの素子側面を構成している。
【0071】
図7に示すように、素子絶縁層52は、複数の絶縁膜の積層構造によって構成されている。より詳細には、
図8に示すように、素子絶縁層52は、複数の第1絶縁膜52Pおよび複数の第2絶縁膜52Qを含む。複数の第1絶縁膜52Pおよび複数の第2絶縁膜52Qは、Z方向において1つずつ交互に積層されている。
【0072】
第1絶縁膜52Pは、エッチングストッパ膜であり、例えばSiN(窒化シリコン)、SiC、SiCN(窒素添加炭化シリコン)のうち少なくとも1つを含む材料によって形成されている。また、第1絶縁膜52Pは、例えばCuの拡散防止の機能を有してよい。つまり、第1絶縁膜52Pは、Cuの拡散防止膜であってよい。
【0073】
第2絶縁膜52Qは、層間絶縁膜であり、例えばSiO2(酸化シリコン)を含む材料によって形成された酸化膜である。第2絶縁膜52Qは、第1絶縁膜52Pよりも厚い膜厚を有する。第1絶縁膜52Pは、例えば50nm以上1000nm未満の膜厚を有する。第2絶縁膜52Qは、例えば500nm以上5000nm以下の膜厚を有する。この実施形態では、第1絶縁膜52Pは300nm程度の膜厚を有し、第2絶縁膜52Qは2000nm程度の膜厚を有する。なお、図面を容易に理解するため、図面における第1絶縁膜52Pの膜厚と第2絶縁膜52Qの膜厚との比率は、実際の第1絶縁膜52Pの膜厚と第2絶縁膜52Qの膜厚との比率とは異なる。
【0074】
素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最上層の絶縁膜は、例えば第1絶縁膜52Pによって形成されている。素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最下層の絶縁膜は、例えば第2絶縁膜52Qによって形成されている。このため、素子絶縁層52の表面52Aは第1絶縁膜52Pによって形成されており、素子絶縁層52の裏面52Bは第2絶縁膜52Qによって形成されている。
【0075】
図4~
図6に示すように、トランス15A,15Bの第1コイル21および第2コイル22の各々は、素子絶縁層52に設けられている。第1コイル21および第2コイル22の各々は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第1コイル21はCuを含む材料によって形成されていてよい。一例では、第2コイル22はCuを含む材料によって形成されていてよい。つまり、第1コイル21および第2コイル22は、同じ材料によって形成されていてよい。
【0076】
図3に示すように、トランス15A,15Bの第1コイル21は、素子絶縁層52内において裏面52B寄りに配置されている。
図5に示す例では、トランス15A,15Bの第1コイル21は、素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最下層の絶縁膜上においてその絶縁膜に接するように形成されている。
【0077】
トランス15A,15Bの第2コイル22は、素子絶縁層52内において表面52A寄りに配置されている。
図6に示す例では、トランス15A,15Bの第2コイル22は、素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最上層の絶縁膜の直下においてその絶縁膜に接するように形成されている。つまり、第2コイル22は、最上層の絶縁膜によって覆われている。トランス15A,15Bの第2コイル22は、Z方向においてトランス15A,15Bの第1コイル21と対向している。
【0078】
図5に示すように、平面視において、トランス15Aの第1コイル21とトランス15Bの第1コイル21とは、X方向において互いに同じ位置であってY方向において互いに離隔して配列されている。
図4および
図6に示すように、平面視において、トランス15Aの第2コイル22とトランス15Bの第2コイル22とは、X方向において互いに同じ位置であってY方向において互いに離隔して配列されている。トランス15A,15Bの第2コイル22とZ方向に対向配置されたトランス15Aの第1コイル21およびトランス15Bの第1コイル21は、平面視においてトランス15Aの第2コイル22とトランス15Bの第2コイル22と同じ位置に配置されている。
【0079】
図5および
図6に示すとおり、トランス15Bの第1コイル21および第2コイル22の各々の構成および配置態様は、トランス15Aの第1コイル21および第2コイル22と同じであるため、以降では、トランス15Aの第1コイル21および第2コイル22について詳細に説明し、トランス15Bの第1コイル21および第2コイル22について詳細な説明は省略する。
【0080】
図5に示すように、トランス15Aの第1コイル21は、環状に形成されている。一例では、第1コイル21は、平面視において導線を同心状に巻き回すことによって渦巻き状に形成されている。第1コイル21は、第1コイル21の内周側の端部を構成する第1内周端部21Aと、第1コイル21の外周側の端部を構成する第1外周端部21Bと、を含む。第1内周端部21Aは、第1コイル21を構成するように巻き回された導線の長さ方向の両端部のうち内周側の端部である。第1外周端部21Bは、第1コイル21を構成するように巻き回された導線の長さ方向の両端部のうち外周側の端部である。ここで、導線の長さ方向の両端部は、第1コイル21を構成するように巻き回された導線の巻き始めの端部および巻き終わりの端部である。
【0081】
一例では、第1コイル21は、平面視において長手方向および短手方向を有する環状に形成されている。
図5に示す例では、第1コイル21は、平面視においてX方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる環状(渦巻き状)に形成されている。
図5に示す例では、第1コイル21は、平面視においてトラック形状である。
【0082】
一例では、第1コイル21のX方向の寸法LX1は、第1コイル21のY方向の寸法LY1の2倍以上であってよい。第1コイル21のX方向の寸法LX1は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の1/2よりも大きくてよい。第1コイル21のX方向の寸法LX1は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の3/4よりも小さくてよい。
図5に示す例では、第1コイル21のX方向の寸法LX1は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の2/3程度である。
【0083】
第1コイル21は、X方向に沿って延びる一対の直線部21C,21Dと、一対の直線部21C,21Dを接続する一対の湾曲部21E,21Fと、を含む。一対の直線部21C,21Dは、X方向において互いに揃った状態でY方向において離隔して配列されている。直線部21Cは、直線部21Dよりも素子側面52E寄りに配置されている。湾曲部21E,21Fの各々は、例えば平面視において半円環状に形成されている。湾曲部21Eは、一対の直線部21C,21DのX方向の両端部のうち素子側面52Cに近い方の端部に接続されている。湾曲部21Fは、一対の直線部21C,21DのX方向の両端部のうち素子側面52Dに近い方の端部に接続されている。
【0084】
図6に示すように、トランス15Aの第2コイル22は、環状に形成されている。一例では、第2コイル22は、平面視において導線を同心状に巻き回すことによって渦巻き状に形成されている。第2コイル22は、第2コイル22の内周側の端部を構成する第2内周端部22Aと、第2コイル22の外周側の端部を構成する第2外周端部22Bと、を含む。第2内周端部22Aは、第2コイル22を構成するように巻き回された導線の長さ方向の両端部のうち内周側の端部である。第2外周端部22Bは、第2コイル22を構成するように巻き回された導線の長さ方向の両端部のうち外周側の端部である。ここで、導線の長さ方向の両端部は、第2コイル22を構成するように巻き回された導線の巻き始めの端部および巻き終わりの端部である。
【0085】
一例では、第2コイル22は、平面視において長手方向および短手方向を有する環状に形成されている。
図6に示す例では、第2コイル22は、平面視においてX方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる環状(渦巻き状)に形成されている。
図6に示す例では、第2コイル22は、平面視においてトラック形状である。
【0086】
一例では、第2コイル22のX方向の寸法LX2は、第2コイル22のY方向の寸法LY2の2倍以上である。第2コイル22のX方向の寸法LX2は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の1/2よりも大きい。第2コイル22のX方向の寸法LX2は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の2/3よりも大きい。第2コイル22のX方向の寸法LX2は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の4/5よりも小さい。一例では、第2コイル22のX方向の寸法LX2は、例えば素子絶縁層52のX方向の寸法LX3の3/4程度である。
【0087】
一例では、第2コイル22の導線による巻回数は、例えば第1コイル21の導線による巻回数よりも多い。このため、第2コイル22のX方向の寸法LX2は、第1コイル21のX方向の寸法LX1よりも大きい。第2コイル22のY方向の寸法LY2は、第1コイル21のY方向の寸法LY1よりも大きい。なお、平面視における第2コイル22のサイズは任意に変更可能である。一例では、平面視における第2コイル22のサイズは第1コイル21と同じであってもよい。つまり、第2コイル22の導線による巻回数は、第1コイル21の導線による巻回数と同じであってもよい。
【0088】
第2コイル22は、X方向に延びる一対の直線部22C,22Dと、一対の直線部22C,22Dを接続する一対の湾曲部22E,22Fと、を含む。一対の直線部22C,22Dは、X方向において互いに揃った状態でY方向において離隔して配列されている。直線部22Cは、直線部22Dよりも素子側面52E寄りに配置されている。湾曲部22E,22Fの各々は、例えば平面視において半円環状に形成されている。湾曲部22Eは、一対の直線部22C,22DのX方向の両端部のうち素子側面52Cに近い方の端部に接続されている。湾曲部22Fは、一対の直線部22C,22DのX方向の両端部のうち素子側面52Dに近い方の端部に接続されている。
【0089】
図4に示すように、素子絶縁層52は、平面視において第1コイル21および第2コイル22によって囲まれた領域である内側領域23を含む。内側領域23は、平面視において長手方向および短手方向を有する長円状に形成されている。
図4の例では、内側領域23は、X方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる長円状に形成されている。つまり、内側領域23の長手方向は第2コイル22(第1コイル21)の長手方向と一致し、内側領域23の短手方向は第2コイル22(第1コイル21)の短手方向と一致している。内側領域23は、第1端部23Aおよび第2端部23Bを含む。第1端部23Aは、内側領域23のX方向(長手方向)の両端部のうち湾曲部22E(湾曲部21E)に近い方の端部である。第2端部23Bは、内側領域23のX方向の両端部のうち湾曲部22F(湾曲部21F)に近い方の端部である。つまり、第2端部23Bは、第2コイル22(第1コイル21)の長手方向(X方向)において内側領域23の第1端部23Aとは反対側の端部である。
【0090】
図4に示すように、複数の第1電極パッド57は、平面視においてトランス15A,15Bの内側領域23に形成された第1内周パッド57A,57Bと、第1コイル21および第2コイル22よりも外方に形成された第1外周パッド57Cと、を含む。第1内周パッド57A,57Bおよび第1外周パッド57Cは、素子絶縁層52の表面52A上に形成されている。
【0091】
第1内周パッド57Aは、トランス15Aの内側領域23に形成されている。第1内周パッド57Bは、トランス15Bの内側領域23に形成されている。第1外周パッド57Cは、平面視においてトランス15Aの第1コイル21(第2コイル22)とトランス15Bの第1コイル21(第2コイル22)とのY方向の間に配置されている。
【0092】
複数の第2電極パッド58は、平面視においてトランス15A,15Bの内側領域23に形成された第2内周パッド58A,58Bと、第1コイル21および第2コイル22よりも外方に形成された第2外周パッド58Cと、を含む。第2内周パッド58A,58Bおよび第2外周パッド58Cは、素子絶縁層52の表面52A上に形成されている。
【0093】
第2内周パッド58Aは、トランス15Aの内側領域23に形成されている。第2内周パッド58Bは、トランス15Bの内側領域23に形成されている。第2外周パッド58Cは、平面視においてトランス15Aの第1コイル21(第2コイル22)とトランス15Bの第1コイル21(第2コイル22)とのY方向の間に配置されている。
【0094】
このように、平面視において、トランス15Aの内側領域23には、第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aが配置されている。
図4の例では、第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aは、Y方向において同じ位置であってX方向において互いに離隔して配列されている。つまり、第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aは、平面視において第2コイル22(第1コイル21)の長手方向に互いに離隔して配列されているといえる。
【0095】
第1内周パッド57Aは、内側領域23のX方向の中央よりも第1端部23A寄りに配置されている。一例では、第1内周パッド57Aは、第2コイル22の一対の直線部22C,22Dに対して湾曲部22E寄りに配置されている。
図4の例では、第1内周パッド57Aは、内側領域23の第1端部23Aに配置されている。
【0096】
第2内周パッド58Aは、内側領域23のX方向の中央よりも第2端部23B寄りに配置されている。一例では、第2内周パッド58Aは、第2コイル22の一対の直線部22C,22Dに対して湾曲部22F寄りに配置されている。
図4の例では、第2内周パッド58Aは、内側領域23の第2端部23Bに配置されている。このため、第1内周パッド57Aと第2内周パッド58AとのX方向の間の距離DPは、第2コイル22のX方向の寸法LX2の1/3以上である。また一例では、距離DPは、寸法LX2の1/2よりも小さい。
【0097】
なお、第1内周パッド57Bおよび第2内周パッド58Bの配置態様は、第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aの配置態様と同様であるため、その詳細な説明を省略する。
【0098】
第1外周パッド57Cおよび第2外周パッド58Cは、Y方向において互いに同じ位置であってX方向において互いに離隔して配列されている。一例では、第1外周パッド57Cは、平面視において第1内周パッド57A,57BとX方向において同じ位置に形成されている。一例では、第2外周パッド58Cは、平面視において第2内周パッド58A,58BとX方向において同じ位置に配置されている。このため、この実施形態では、X方向における第1外周パッド57Cと第2外周パッド58Cとの間の距離DQは、X方向における第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離DPと等しい。ここで、距離DQと距離DPとの差が例えば距離DQの10%以内であれば、距離DQが距離DPと等しいといえる。なお、距離DQおよび距離DPはそれぞれ任意に変更可能である。一例では、距離DQは、距離DPよりも大きくてもよい。
【0099】
図8に示すように、トランスチップ50は、素子絶縁層52上に形成された表面側絶縁層53を含む。表面側絶縁層53は、保護層54およびパッシベーション層55を含む。
保護層54は、素子絶縁層52を保護する膜である。保護層54は、素子絶縁層52上に形成されている。一例では、保護層54は、平面視において素子絶縁層52よりも一回り小さく形成されている。保護層54は、素子絶縁層52の表面52Aに接している。保護層54は、例えばSiO
2を含む材料によって形成されている。保護層54は、例えば複数の保護膜の積層構造によって形成されている。
図9に示す例では、保護層54は、素子絶縁層52の表面52A上に形成された第1保護膜54Aと、第1保護膜54A上に積層された第2保護膜54Bと、を含む。
図4に示す第1内周パッド57A,57B、第2内周パッド58A,58B、第1外周パッド57C、および第2外周パッド58Cの各々は、第1保護膜54A上に形成されている。
【0100】
パッシベーション層55は、トランスチップ50の表面保護膜である。パッシベーション層55は、保護層54上に形成されている。一例では、パッシベーション層55は、平面視において保護層54の全面にわたり形成されている。パッシベーション層55は、保護層54の表面に接している。パッシベーション層55は、例えばSiN、SiO2のうち少なくとも1つを含む材料によって形成されている。一例では、パッシベーション層55は、SiNを含む材料によって形成されている。
【0101】
図7、
図10、および
図12に示すように、表面側絶縁層53は、複数の第1開口部53A、複数の第2開口部53B、および複数の第3開口部53Cを含む。この実施形態では、第1内周パッド57A,57B、第2内周パッド58A,58B、第1外周パッド57Cおよび第2外周パッド58Cの数に応じて、第1~第3開口部53A~53Cの各々が2つ形成されている。第1~第3開口部53A~53Cは、パッシベーション層55および保護層54のうち第2保護膜54Bの双方をその厚さ方向に貫通する貫通孔である。
【0102】
2つの第1開口部53Aのうち1つの第1開口部53Aは、トランス15Aに対応する第1内周パッド57Aを露出するように形成されている。図示していないが、2つの第1開口部53Aのうち別の1つの第1開口部53Aは、トランス15Bに対応する第1内周パッド57Bを露出するように形成されている。
【0103】
2つの第2開口部53Bのうち1つの第2開口部53Bは、トランス15Aに対応する第2内周パッド58Aを露出するように形成されている。図示していないが、2つの第2開口部53Bのうち別の1つの第2開口部53Bは、トランス15Bに対応する第2内周パッド58Bを露出するように形成されている。
【0104】
2つの第3開口部53Cのうち1つの第3開口部53Cは、第1外周パッド57Cを露出するように形成されている。図示していないが、2つの第3開口部53Cのうち別の1つの第3開口部53Cは、第2外周パッド58Cを露出するように形成されている。
【0105】
トランスチップ50は、パッシベーション層55上に形成された樹脂層56を含む。樹脂層56は、パッシベーション層55の上面に対して部分的に形成されている。一例では、樹脂層56は、平面視において第2コイル22と重なる位置に形成されている。このため、樹脂層56は、平面視において内側領域23の大部分を露出するように形成されている。より詳細には、樹脂層56は、平面視において内側領域23の外周縁と重なる一方、内側領域23の外周縁よりも内方は露出するように形成されている。樹脂層56は、例えばポリイミド(PI)を含む材料によって形成されている。
【0106】
図4に示すように、トランスチップ50は、第1内周接続部80A,80Bおよび第2内周接続部90A,90Bを備える。
図7および
図8に示すように、第1内周接続部80Aは、トランス15Aの第1コイル21の第1内周端部21Aと第1内周パッド57Aとを電気的に接続している。第1内周接続部80Aは、平面視においてトランス15Aの内側領域23に設けられている。第1内周接続部80Aは、素子絶縁層52および表面側絶縁層53内に設けられている。つまり、トランス15Aの第1コイル21と第1内周パッド57Aとは、トランスチップ50内において互いに電気的に接続されている。
【0107】
図8に示すように、第1内周接続部80Aは、第1内周配線層81および第1内周接続層82を含む。
第1内周配線層81は、第1コイル21の第1内周端部21Aに接続されている。第1内周配線層81は、第1内周端部21AからX方向に延びている。第1内周配線層81は、Z方向において第1コイル21と同じ位置に形成されている。一例では、第1内周配線層81は、Z方向において第1コイル21と同じ位置に形成されている。第1内周配線層81は、平面視において第1内周パッド57Aと重なる位置まで延びている。第1内周配線層81は、平面視においてX方向が長さ方向となり、Y方向が幅方向となる帯状に形成されている。このため、第1内周配線層81のX方向の長さは、第1内周配線層81のY方向の長さよりも長い。第1内周配線層81は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第1内周配線層81は、第1コイル21と同じ材料によって形成されていてよい。
【0108】
第1内周接続層82は、第1内周配線層81と第1内周パッド57Aとを電気的に接続している。第1内周接続層82は、Z方向に延びている。第1内周接続層82は、平面視において第1内周パッド57Aと第1内周配線層81との双方と重なる位置に配置されている。第1内周接続層82は、第1ビア83、中間配線層84、および第2ビア85を含む。中間配線層84は「第1中間配線層」の一例であり、第1ビア83は「第1内周ビア」の一例であり、第2ビア85は「第2内周ビア」の一例である。
【0109】
中間配線層84は、Z方向において第2コイル22と同じ位置に形成されている。中間配線層84は、平面視において第1内周パッド57Aよりも一回り小さい矩形状に形成されている。中間配線層84は、Z方向において第1内周配線層81および第1内周パッド57Aの双方と対向している。第1内周接続部80Aと第2コイル22との最短距離DM1は、第1コイル21と第2コイル22とのZ方向の間の距離DC以上である。一例では、最短距離DM1は、距離DCよりも大きくてよい。ここで、最短距離DM1は、中間配線層84と第2コイル22との間の最短距離である。
【0110】
第1ビア83は、第1内周配線層81と中間配線層84とをZ方向に接続している。第1ビア83は、第1内周配線層81と中間配線層84とのZ方向の間の素子絶縁層52をZ方向に貫通している。第1ビア83は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。
【0111】
第2ビア85は、中間配線層84と第1内周パッド57AとをZ方向に接続している。第2ビア85は、中間配線層84と第1内周パッド57AとのZ方向の間に介在する絶縁層をZ方向に貫通している。具体的には、第2ビア85は、素子絶縁層52のうち最上層の絶縁膜および保護層54の第1保護膜54AをZ方向に貫通している。第2ビア85は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。平面視における各第2ビア85のX方向の寸法およびY方向の寸法はそれぞれ、各第1ビア83のX方向の寸法およびY方向の寸法よりも小さい。第2ビア85の数は、第1ビア83の数よりも多い。なお、第1ビア83および第2ビア85の各々のサイズおよび数は任意に変更可能である。
【0112】
第1ビア83、中間配線層84、および第2ビア85は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第1ビア83は、第1コイル21と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、中間配線層84は、第1コイル21と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、第2ビア85は、第1コイル21とは異なる材料によって形成されていてよい。第2ビア85は、例えばWを含む材料によって形成されていてよい。
【0113】
図10に示すように、第1内周接続部80Bは、トランス15Bの第1コイル21と第1内周パッド57Bとを電気的に接続している。第1内周接続部80Bは、平面視においてトランス15Bの内側領域23に設けられている。第1内周接続部80Bは、素子絶縁層52および表面側絶縁層53内に設けられている。つまり、トランス15Bの第1コイル21と第1内周パッド57Bとは、トランスチップ50内において電気的に接続されている。第1内周接続部80Bの構成は、第1内周接続部80Aの構成と同じである。このため、第1内周接続部80Bの各構成要素は、第1内周接続部80Aの各構成要素と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0114】
第2内周接続部90Aは、トランス15Aの第2コイル22の第2内周端部22Aと第2内周パッド58Aとを電気的に接続している。第2内周接続部90Aは、平面視においてトランス15Aの内側領域23に配置されている。
図4に示すように、第2内周接続部90Aは、平面視において第1内周接続部80Aに対して湾曲部22F寄りに第1内周接続部80AからX方向に離隔して設けられている。第2内周接続部90Aは、素子絶縁層52および表面側絶縁層53内に設けられている。つまり、トランス15Aの第2コイル22と第2内周パッド58Aとは、トランスチップ50内において電気的に接続されている。
【0115】
第2内周接続部90Aは、第2内周配線層91および第2内周接続層92を含む。
第2内周配線層91は、第2コイル22の第2内周端部22Aに接続されている。第2内周配線層91は、第2内周端部22AからX方向に延びている。
図9に示すように、第2内周配線層91は、Z方向において第2コイル22と同じ位置に形成されている。つまり、第2内周配線層91は、Z方向において中間配線層84と同じ位置に形成されている。第2内周配線層91は、平面視において第2内周パッド58Aと重なる位置まで延びている。つまり、第2内周配線層91は、Z方向において第2内周パッド58Aと対向する部分を含む。図示していないが、第2内周配線層91のうち平面視において第2内周パッド58Aと重なる部分である重なり部のY方向の寸法は、第2内周配線層91のうち重なり部以外の部分のY方向の寸法よりも大きい。つまり、重なり部は、平面視において第2内周接続層92が形成されるスペースを確保している。
【0116】
第2内周接続層92は、第2内周配線層91と第2内周パッド58Aとを電気的に接続している。第2内周接続層92は、平面視において第2内周配線層91と第2内周パッド58Aとの双方と重なる位置に形成されている。第2内周接続層92は、素子絶縁層52のうち最上層の絶縁膜および保護層54の第1保護膜54AをZ方向に貫通している。一例では、第2内周接続層92は、Z方向に延びるビアである。第2内周接続層92は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。一例では、第2内周接続層92の数は、第2ビア85の数と同じである。なお、第2内周接続層92の数は任意に変更可能である。
【0117】
第2内周配線層91および第2内周接続層92は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第2内周配線層91は、第2コイル22と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、第2内周接続層92は、第2コイル22とは異なる材料によって形成されていてよい。第2内周接続層92は、例えばWを含む材料によって形成されていてよい。
【0118】
第2内周接続部90Bは、トランス15Bの第2コイル22と第2内周パッド58Bとを電気的に接続している。第2内周接続部90Bは、平面視においてトランス15Bの内側領域23に設けられている。第2内周接続部90Bは、平面視において第1内周接続部80Bに対して湾曲部22F寄りに第1内周接続部80BからX方向に離隔して設けられている。第2内周接続部90Bは、素子絶縁層52および表面側絶縁層53内に設けられている。つまり、トランス15Bの第2コイル22と第2内周パッド58Bとは、トランスチップ50内において電気的に接続されている。第2内周接続部90Bの構成は、第2内周接続部90Aの構成と同じである。このため、第2内周接続部90Bの各構成要素は、第2内周接続部90Aの各構成要素と同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0119】
図10および
図12に示すように、トランスチップ50は、第1外周接続部100および第2外周接続部110を備える。
図10に示すように、第1外周接続部100は、トランス15A,15Bの第1コイル21の各々と第1外周パッド57Cとを電気的に接続している。第1外周接続部100は、平面視において第1コイル21および第2コイル22よりも外方に設けられている。
【0120】
図11に示すように、第1外周接続部100は、第1外周配線層101および第1外周接続層102を含む。
第1外周配線層101は、Z方向において第1コイル21と同じ位置に形成されている。第1外周配線層101は、トランス15Aの第1コイル21の第1外周端部21Bと、トランス15Bの第1コイル21の第1外周端部21Bとを接続している。第1外周配線層101は、Y方向に延びている。第1外周配線層101は、Z方向において第1外周パッド57Cと対向する部分を含む。
【0121】
第1外周接続層102は、第1外周配線層101と第1外周パッド57Cとを電気的に接続している。第1外周接続層102は、平面視において第1外周パッド57Cと第1外周配線層101との双方と重なる位置に形成されている。第1外周接続層102は、第1ビア103、中間配線層104、および第2ビア105を含む。ここで、中間配線層104は「第2中間配線層」の一例であり、第1ビア103は「第1外周ビア」の一例であり、第2ビア105は「第2外周ビア」の一例である。
【0122】
中間配線層104は、Z方向において第2コイル22と同じ位置に形成されている。中間配線層104は、平面視において第1外周パッド57Cよりも一回り小さい矩形状に形成されている。中間配線層104は、Z方向において第1外周配線層101および第1外周パッド57Cの双方と対向している。中間配線層104と第2コイル22との最短距離DM2は、第1コイル21と第2コイル22とのZ方向の間の距離DC以上である。一例では、最短距離DM2は、距離DCよりも大きくてよい。
【0123】
第1ビア103は、第1外周配線層101と中間配線層104とをZ方向に接続している。第1ビア103は、第1外周配線層101と中間配線層104とのZ方向の間の素子絶縁層52をZ方向に貫通している。第1ビア103は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。
【0124】
第2ビア105は、中間配線層104と第1外周パッド57CとをZ方向に接続している。第2ビア105は、中間配線層104と第1外周パッド57CとのZ方向の間に介在する絶縁層をZ方向に貫通している。具体的には、第2ビア105は、素子絶縁層52のうち最上層の絶縁膜および保護層54の第1保護膜54AをZ方向に貫通している。第2ビア105は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。平面視における各第2ビア105のX方向の寸法およびY方向の寸法はそれぞれ、各第1ビア103のX方向の寸法およびY方向の寸法よりも小さい。第2ビア105の数は、第1ビア103の数よりも多い。なお、第1ビア103および第2ビア105の各々のサイズおよび数は任意に変更可能である。
【0125】
素子絶縁層52には、第1外周接続部100と基板51とを電気的に接続するビア106が設けられている。ビア106は、平面視において第1外周パッド57Cと重なる位置に配置されている。ビア106は、基板51と第1外周配線層101とを接続している。
【0126】
第1ビア103、中間配線層104、第2ビア105、およびビア106は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第1ビア103は、第1コイル21と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、中間配線層104は、第1コイル21と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、第2ビア105およびビア106は、第1コイル21とは異なる材料によって形成されていてよい。第2ビア105およびビア106は、例えばWを含む材料によって形成されていてよい。
【0127】
図12に示すように、第2外周接続部110は、トランス15A,15Bの第2コイル22の各々と第2外周パッド58Cとを電気的に接続している。第2外周接続部110は、平面視において第1コイル21および第2コイル22よりも外方に設けられている。
【0128】
図13に示すように、第2外周接続部110は、第2外周配線層111および第2外周接続層112を含む。
第2外周配線層111は、Z方向において第2コイル22と同じ位置に形成されている。第2外周配線層111は、トランス15Aの第2コイル22の第2外周端部22Bと、トランス15Bの第2コイル22の第2外周端部22Bとを接続している。第2外周配線層111は、第2外周端部22BからY方向に延びている。第2外周配線層111は、平面視において第2外周パッド58Cと重なる部分を含む。
【0129】
第2外周接続層112は、第2外周配線層111と第2外周パッド58Cとを電気的に接続している。第2外周接続層112は、平面視において第2外周配線層111と第2外周パッド58Cとの双方と重なる位置に形成されている。第2外周接続層112は、素子絶縁層52のうち最上層の絶縁膜および保護層54の第1保護膜54AをZ方向に貫通している。一例では、第2外周接続層112は、Z方向に延びるビアである。第2外周接続層112は、X方向およびY方向において互いに離隔して複数設けられている。一例では、第2外周接続層112の数は、第2ビア105の数と同じである。なお、第2外周接続層112の数は任意に変更可能である。
【0130】
第2外周配線層111および第2外周接続層112は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、第2外周配線層111は、第2コイル22と同じ材料によって形成されていてよい。一例では、第2外周接続層112は、第2コイル22とは異なる材料によって形成されていてよい。第2外周接続層112は、例えばWを含む材料によって形成されていてよい。
【0131】
図4~
図13に示すように、トランスチップ50は、素子絶縁層52に設けられた導電性のシールリング59を備える。シールリング59は、平面視において素子絶縁層52の外周部に設けられている。シールリング59は、平面視においてトランス15A,15B、第1内周接続部80A,80B、第2内周接続部90A,90B、第1外周接続部100、第2外周接続部110、複数の第1電極パッド57、および複数の第2電極パッド58を囲む環状に形成されている。一例では、シールリング59は、平面視においてY方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長方形状に形成されている。シールリング59は、トランスチップ50の外部から素子絶縁層52内に進入した異物がトランス15A,15B、第1内周接続部80A,80B、第2内周接続部90A,90B、第1外周接続部100、および第2外周接続部110に付着することを抑制するように構成されている。シールリング59は、例えばTi、TiN、Au、Ag、Cu、Al、およびWのうち1つまたは複数が適宜選択されたものを含む材料によって構成されている。一例では、シールリング59は、第1コイル21および第2コイル22と同じ材料によって形成されている。
【0132】
図8および
図9に示すように、シールリング59は、素子絶縁層52のうち最上層の絶縁膜および最下層の絶縁膜を除く絶縁膜をZ方向に貫通している。このため、シールリング59は、基板51からZ方向に離隔して設けられているといえる。シールリング59と基板51とのZ方向の間には、複数のビア59Aが設けられている。各ビア59Aは、シールリング59と基板51とをZ方向において接続している。これにより、シールリング59と基板51とが電気的に接続されている。
【0133】
[作用]
この実施形態のトランスチップ50の作用について説明する。
図14は、比較例のトランスチップ50Xの平面構造を模式的に示している。
図15は、
図14のF15-F15線でトランスチップ50Xを切断した断面構造であって、トランス15Aおよびその周辺の断面構造を模式的に示している。比較例のトランスチップ50Xでは、トランスチップ50と比較して、第1電極パッド57の位置と、第1コイル21および第2コイル22の形状とが主に異なる。以下のトランスチップ50Xの説明において、トランスチップ50と共通する構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する場合がある。
【0134】
図14に示すように、比較例のトランスチップ50Xでは、平面視における第2コイル22Xの形状はY方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる環状に形成されている。なお、図示していないが、平面視における第1コイル21Xの形状は第2コイル22Xと同じである。このため、内側領域23Xは、Y方向が長手方向となり、X方向が短手方向となる長円状に形成されている。
【0135】
1つの第2電極パッド58は平面視においてトランス15Aの内側領域23X内に配置されており、別の1つの第2電極パッド58は平面視においてトランス15Bの内側領域23X内に配置されている。一方、第1電極パッド57は、平面視において第1コイル21Xおよび第2コイル22Xよりも素子側面52C寄りに配置されている。
【0136】
図15に示すように、第1コイル21Xの第1内周端部21Aと第1電極パッド57とを電気的に接続する第1内周接続部80AXは、第1内周配線層81X、第1内周接続層82X、および第1外周接続部86Xを含む。なお、第1内周接続部80BXも第1内周接続部80AXと同じ構成である。
【0137】
第1電極パッド57が第1コイル21Xよりも素子側面52C寄りに配置されているため、第1内周配線層81Xは、平面視において第1コイル21Xと交差するように設けられる必要がある。このため、第1内周配線層81Xは、第1コイル21Xよりも素子絶縁層52の裏面52B寄りに配置する必要がある。その結果、第1内周配線層81Xのための専用の絶縁膜を素子絶縁層52に設ける必要があるため、素子絶縁層52の絶縁膜の積層数が増加する。
【0138】
この実施形態のトランスチップ50は、
図4に示すように、第1電極パッド57としての第1内周パッド57Aおよび第2電極パッド58としての第2内周パッド58Aの双方が内側領域23に配置されている。このため、
図7に示すように、第1内周パッド57Aと第1コイル21の第1内周端部21Aとを電気的に接続する第1内周接続部80Aの第1内周配線層81が平面視において第1コイル21と交差するように設ける必要がない。また、第2内周パッド58Aと第2コイル22の第2内周端部22Aとを電気的に接続する第2内周接続部90Aの第2内周配線層91が平面視において第2コイル22を跨ぐ必要がない。つまり、第1内周配線層81はZ方向において第1コイル21と同じ位置に配置することができ、第2内周配線層91はZ方向において第2コイル22と同じ位置に配置することができる。したがって、素子絶縁層52の絶縁膜の積層数の増加を抑制することができる。
【0139】
[効果]
この実施形態のトランスチップ50によれば、以下の効果が得られる。
(1)トランスチップ50は、複数の絶縁膜の積層構造によって構成され、Z方向において互いに反対側を向く表面52Aおよび裏面52Bを含む素子絶縁層52と、素子絶縁層52内において裏面52B寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部21Aを含む第1コイル21と、素子絶縁層52内において表面52A寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部22Aを含み、Z方向において第1コイル21と対向する第2コイル22と、表面52A上に形成された第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aと、第1コイル21の第1内周端部21Aと第1内周パッド57Aとを電気的に接続する第1内周接続部80Aと、第2コイル22の第2内周端部22Aと第2内周パッド58Aとを電気的に接続する第2内周接続部90Aと、を備える。平面視において、第1内周パッド57A、第2内周パッド58A、第1内周接続部80A、および第2内周接続部90Aは、第1コイル21および第2コイル22によって囲まれた内側領域23に配置されている。
【0140】
この構成によれば、平面視において第1内周接続部80Aおよび第2内周接続部90Aの双方が内側領域23に配置されているため、平面視において第1内周接続部80Aおよび第2内周接続部90Aが第1コイル21および第2コイル22と交差するように設けられる必要がなくなる。これにより、第1内周接続部80Aおよび第2内周接続部90Aのための専用の絶縁膜を素子絶縁層52に設ける必要がなくなるため、素子絶縁層52の絶縁膜の積層数の増加を抑制することができる。したがって、第1コイル21と第2コイル22との必要な絶縁耐圧を確保しつつも素子絶縁層52の厚さを薄くすることができる。
【0141】
(2)第1コイル21および第2コイル22は、長手方向および短手方向を有する環状に形成されている。第1内周パッド57Aおよび第2内周パッド58Aは、平面視において長手方向に互いに離隔して配列されている。
【0142】
この構成によれば、長手方向における第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離を大きくとることができる。したがって、第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離に起因してトランスチップ50の耐圧が低下することを抑制することができる。
【0143】
(3)第1内周パッド57Aは、長手方向において内側領域23の第1端部23Aに配置されている。第2内周パッド58Aは、長手方向において内側領域23の第2端部23Bに配置されている。
【0144】
この構成によれば、長手方向における第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離をさらに大きくとることができる。したがって、第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離に起因したトランスチップ50の耐圧低下の抑制効果を高めることができる。
【0145】
(4)トランスチップ50は、素子絶縁層52を支持する基板51を備える。基板51は、素子絶縁層52の裏面52Bに接している。第1コイル21は、複数の絶縁膜のうち裏面52Bを構成する最下層の絶縁膜上において最下層の絶縁膜に接するように形成されている。
【0146】
この構成によれば、素子絶縁層52内に設けられた第1コイル21と第2コイル22とのZ方向の間の距離を大きくとることができる。したがって、トランスチップ50の耐圧の向上を図ることができる。
【0147】
(5)第2コイル22は、複数の絶縁膜のうち表面52Aを構成する最上層の絶縁膜に接した状態で当該絶縁膜によって覆われている。
この構成によれば、素子絶縁層52内に設けられた第1コイル21と第2コイル22とのZ方向の間の距離を大きくとることができる。したがって、トランスチップ50の耐圧の向上を図ることができる。
【0148】
(6)第1内周接続部80Aは、Z方向において第1コイル21と同じ位置に設けられ、第1内周端部21Aから第1コイル21の長手方向(X方向)に延びる第1内周配線層81と、Z方向において第1内周配線層81と第1内周パッド57Aとを電気的に接続する第1内周接続層82と、を含む。
【0149】
この構成によれば、トランスチップ50内において第1コイル21の第1内周端部21Aと第1内周パッド57Aとが電気的に接続されている。このため、トランスチップ50の外部において第1コイル21の第1内周端部21Aと第1内周パッド57Aとが電気的に接続される構成と比較して、第1コイル21の第1内周端部21Aと第1内周パッド57Aとの間の導電経路を短くすることができる。
【0150】
(7)第1内周接続部80Aと第2コイル22との間の最短距離DM1は、Z方向における第1コイル21と第2コイル22との間の距離DC以上である。
この構成によれば、第1内周接続部80Aと第2コイル22との間の距離に起因するトランスチップ50の耐圧の低下を抑制することができる。
【0151】
(8)第2内周接続部90Aは、Z方向において第2コイル22と同じ位置に設けられ、第2内周端部22Aから第2コイル22の長手方向(X方向)に延び、Z方向において第2内周パッド58Aと対向する部分を含む第2内周配線層91と、第2内周パッド58Aと第2内周配線層91とを接続する第2内周接続層92と、を含む。
【0152】
この構成によれば、トランスチップ50内において第2コイル22の第2内周端部22Aと第2内周パッド58Aとが電気的に接続されている。このため、トランスチップ50の外部において第2コイル22の第2内周端部22Aと第2内周パッド58Aとが電気的に接続される構成と比較して、第2コイル22の第2内周端部22Aと第2内周パッド58Aとの間の導電経路を短くすることができる。
【0153】
(10)トランスチップ50は、素子絶縁層52の表面52A上において第1コイル21および第2コイル22よりも外方に形成された第1外周パッド57Cおよび第2外周パッド58Cと、第1コイル21の第1外周端部21Bと第1外周パッド57Cとを電気的に接続する第1外周接続部100と、第2コイル22の第2外周端部22Bと第2外周パッド58Cとを電気的に接続する第2外周接続部110と、を備える。第1外周接続部100は、Z方向において第1コイル21と同じ位置に設けられ、第1外周端部21Bから第1コイル21の短手方向(Y方向)に延び、Z方向において第1外周パッド57Cと対向する部分を含む第1外周配線層101と、Z方向において第1外周配線層101と第1外周パッド57Cとを接続する第1外周接続層102と、を含む。
【0154】
この構成によれば、トランスチップ50内において第1コイル21の第1外周端部21Bと第1外周パッド57Cとが電気的に接続されている。このため、トランスチップ50の外部において第1コイル21の第1外周端部21Bと第1外周パッド57Cとが電気的に接続される構成と比較して、第1コイル21の第1外周端部21Bと第1外周パッド57Cとの間の導電経路を短くすることができる。
【0155】
(11)第2外周接続部110は、Z方向において第2コイル22と同じ位置に設けられ、第2コイル22の第2外周端部22Bから第2コイル22の短手方向(Y方向)に延び、Z方向において第2外周パッド58Cと対向する部分を含む第2外周配線層111と、Z方向において第2外周配線層111と第2外周パッド58Cとを接続する第2外周接続層112と、を含む。
【0156】
この構成によれば、トランスチップ50内において第2コイル22の第2外周端部22Bと第2外周パッド58Cとが電気的に接続されている。このため、トランスチップ50の外部において第2コイル22の第2外周端部22Bと第2外周パッド58Cとが電気的に接続される構成と比較して、第2コイル22の第2外周端部22Bと第2外周パッド58Cとの間の導電経路を短くすることができる。
【0157】
<変更例>
上記各実施形態は例えば以下のように変更することができる。上記各実施形態と以下の各変更例は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合わせることができる。なお、以下の変更例において、上記各実施形態と共通する部分については、上記各実施形態と同一符号を付し、その説明を省略する。
【0158】
[トランスチップの変更例]
・第1内周パッド57A,57B、第2内周パッド58A,58B、第1外周パッド57C、および第2外周パッド58Cの数はそれぞれ任意に変更可能である。一例では、第1内周パッド57Aは複数設けられていてよい。第1内周パッド57Bは複数設けられていてよい。第2内周パッド58Aは複数設けられていてよい。第2内周パッド58Bは複数設けられていてよい。第1外周パッド57Cは複数設けられていてよい。第2外周パッド58Cは複数設けられていてよい。
【0159】
複数の第1内周パッド57A,57B、複数の第2内周パッド58A,58B、複数の第1外周パッド57C、および複数の第2外周パッド58Cの配置態様は任意に変更可能である。例えば
図16に示す第1例、
図17に示す第2例、および
図18に示す第3例が挙げられる。
【0160】
図16に示すように、第1例では、トランスチップ50は、2つの第1内周パッド57Aを構成する第1内周電極層121を含む。第1内周電極層121は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視において第1内周電極層121は、X方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる長方形状に形成されている。第1内周電極層121は、素子絶縁層52上に設けられている。第1内周電極層121は、表面側絶縁層53によって覆われている。表面側絶縁層53は、第1内周電極層121を露出するように設けられた2つの第1開口部53Aを含む。2つの第1開口部53Aは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。このように、第1内周電極層121のうち2つの第1開口部53Aから露出した部分がそれぞれ第1内周パッド57Aを構成している。つまり、2つの第1内周パッド57Aは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。
【0161】
トランスチップ50は、2つの第2内周パッド58Aを構成する第2内周電極層122を含む。第2内周電極層122は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視において第2内周電極層122は、X方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる長方形状に形成されている。第2内周電極層122は、素子絶縁層52上に設けられている。第2内周電極層122は、表面側絶縁層53によって覆われている。表面側絶縁層53は、第2内周電極層122を露出するように設けられた2つの第2開口部53Bを含む。2つの第2開口部53Bは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。このように、第2内周電極層122のうち2つの第2開口部53Bから露出した部分がそれぞれ第2内周パッド58Aを構成している。つまり、2つの第2内周パッド58Aは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。
【0162】
トランスチップ50は、2つの第1外周パッド57Cを構成する第1外周電極層123を含む。第1外周電極層123は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視において第1外周電極層123は、X方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる長方形状に形成されている。第1外周電極層123は、素子絶縁層52上に設けられている。第1外周電極層123は、表面側絶縁層53によって覆われている。表面側絶縁層53は、第1外周電極層123が露出するように設けられた2つの第3開口部53Cを含む。2つの第3開口部53Cは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。このように、第1外周電極層123のうち2つの第3開口部53Cから露出した部分がそれぞれ第1外周パッド57Cを構成している。つまり、2つの第1外周パッド57Cは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。
【0163】
トランスチップ50は、2つの第2外周パッド58Cを構成する第2外周電極層124を含む。第2外周電極層124は、Z方向を厚さ方向とする矩形平板状に形成されている。平面視において第2外周電極層124は、X方向が長手方向となり、Y方向が短手方向となる長方形状に形成されている。第2外周電極層124は、素子絶縁層52上に設けられている。第2外周電極層124は、表面側絶縁層53によって覆われている。表面側絶縁層53は、第2外周電極層124が露出するように設けられた2つの第3開口部53Cを含む。2つの第3開口部53Cは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。このように、第2外周電極層124のうち2つの第3開口部53Cから露出した部分がそれぞれ第2外周パッド58Cを構成している。つまり、2つの第2外周パッド58Cは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。なお、2つの第1内周パッド57Bおよび2つの第2内周パッド58Bの構成は、2つの第1内周パッド57Aおよび2つの第2内周パッド58Aの構成と同じである。
【0164】
図17に示すように、第2例では、第1例と比較して、2つの第1内周パッド57A、2つの第1内周パッド57B、2つの第2内周パッド58A、2つの第2内周パッド58B、2つの第1外周パッド57C、および2つの第2外周パッド58Cの配置態様が異なる。
【0165】
2つの第1内周パッド57Aは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。2つの第2内周パッド58Aは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。このため、第1内周パッド57Aと第2内周パッド58AとのX方向の間の距離DPは、第1例の距離DP(
図16参照)よりも大きい。
【0166】
2つの第1内周パッド57Bは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。2つの第2内周パッド58Bは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。このため、第1内周パッド57Bと第2内周パッド58BとのX方向の間の距離DPは、第1例の距離DP(
図16参照)よりも大きい。
【0167】
2つの第1外周パッド57Cは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。2つの第2外周パッド58Cは、X方向において互いに揃った位置でY方向において互いに離隔して形成されている。
【0168】
図18に示すように、第3例では、2つの第1内周パッド57Aおよび2つの第1内周パッド57Bの配置態様が第2例とは異なる。
2つの第1内周パッド57Aは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。2つの第1内周パッド57Bは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。
【0169】
なお、第3例において、2つの第1内周パッド57Aおよび2つの第1内周パッド57Bに代えて、2つの第2内周パッド58Aおよび2つの第2内周パッド58Bの配置態様が第2例とは異なっていてもよい。この場合、2つの第2内周パッド58Aは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。2つの第2内周パッド58Bは、Y方向において互いに揃った位置でX方向において互いに離隔して形成されている。また、第1例~第3例において、第1外周パッド57Cは1つであってもよい。第2外周パッド58Cは1つであってもよい。
【0170】
・
図19に示すように、平面視において、第2内周パッド58Aと第2コイル22との最短距離DM3は、第1内周パッド57Aと第2コイル22との最短距離よりも小さくてもよい。ここで、第1内周パッド57Aと第2コイル22との最短距離は、第2コイル22と中間配線層84との間の最短距離DM1(
図8参照)によって定義できる。この場合、最短距離DM3は、第1コイル21と第2コイル22との間の距離DC(
図8参照)よりも小さくてもよい。
【0171】
・第1コイル21は、X方向が短手方向となり、Y方向が長手方向となる環状に形成されていてもよい。
・第2コイル22は、X方向が短手方向となり、Y方向が長手方向となる環状に形成されていてもよい。
【0172】
・平面視における第1コイル21および第2コイル22の形状は任意に変更可能である。一例では、第1コイル21は、平面視において円環状に形成されていてもよい。第2コイル22は、平面視において円環状に形成されていてもよい。また別の例では、第1コイル21は、平面視において矩形環状に形成されていてもよい。第2コイル22は、平面視において矩形環状に形成されていてもよい。
【0173】
・Z方向における第2コイル22の配置位置は任意に変更可能である。一例では、第2コイル22は、素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最上層の絶縁膜を貫通するように設けられていてもよい。この場合、第2コイル22は、表面側絶縁層53によって覆われている。より詳細には、第2コイル22は、保護層54によって覆われている。
【0174】
・Z方向における第1コイル21の配置位置は任意に変更可能である。一例では、第1コイル21は、素子絶縁層52の複数の絶縁膜のうち最下層の絶縁膜からZ方向に離隔した位置に配置されていてもよい。
【0175】
・X方向における第1外周パッド57Cの配置位置は任意に変更可能である。一例では、第1外周パッド57Cは、X方向において第1内周パッド57A,57Bと異なる位置に配置されていてもよい。
【0176】
・X方向における第2外周パッド58Cの配置位置は任意に変更可能である。一例では、第2外周パッド58Cは、X方向において第2内周パッド58A,58Bと異なる位置に配置されていてもよい。
【0177】
・X方向における第1外周パッド57Cと第2外周パッド58Cとの間の距離DQ(
図4参照)は、任意に変更可能である。一例では、距離DQは、X方向における第1内周パッド57Aと第2内周パッド58Aとの間の距離DPよりも大きくてもよい。また、距離DQは、X方向における第1内周パッド57Bと第2内周パッド58Bとの間の距離DPよりも大きくてもよい。
【0178】
・表面側絶縁層53から保護層54およびパッシベーション層55のいずれかを省略してもよい。一例では、表面側絶縁層53から保護層54が省略された場合、パッシベーション層55は素子絶縁層52と接するように素子絶縁層52上に形成される。一例では、表面側絶縁層53からパッシベーション層55が省略された場合、樹脂層56は保護層54と接するように保護層54上に形成される。
【0179】
・第1内周パッド57A,57Bの構成は任意に変更可能である。一例では、第1内周パッド57A,57Bは、第1内周接続部80A,80Bの中間配線層84と接するように形成されていてもよい。この場合、第1内周接続部80A,80Bから第2ビア85が省略される。
【0180】
・第2内周パッド58A,58Bの構成は任意に変更可能である。一例では、第2内周パッド58A,58Bは、第2内周接続部90A,90Bの第2内周配線層91と接するように形成されていてもよい。この場合、第2内周接続部90A,90Bの第2内周接続層92が省略される。
【0181】
・第1外周パッド57Cの構成は任意に変更可能である。一例では、第1外周パッド57Cは、第1外周接続部100の中間配線層104と接するように形成されていてもよい。この場合、第1外周接続部100から第2ビア105が省略される。
【0182】
・第2外周パッド58Cの構成は任意に変更可能である。一例では、第2外周パッド58Cは、第2外周接続部110の第2外周配線層111と接するように形成されていてもよい。この場合、第2外周接続層112が省略される。
【0183】
・シールリング59と基板51とを電気的に接続するビア59Aを省略してもよい。この場合、シールリング59は、例えば電気的にフローティング状態となる。
・第1外周接続部100と基板51とを電気的に接続するビア106を省略してもよい。
【0184】
・トランスチップ50から表面側絶縁層53を省略してもよい。
・トランスチップ50から樹脂層56を省略してもよい。
・トランスチップ50からシールリング59を省略してもよい。
【0185】
[信号伝達装置の変更例]
・トランスチップ50の配置構成は任意に変更可能である。一例では、トランスチップ50は、第2ダイパッド71に配置されていてもよい。この場合、第2ダイパッド71には、トランスチップ50および第2チップ40の双方が配置されている。
【0186】
・
図20に示すように、トランスチップ50が1次側回路13を含んでいてもよい。より詳細には、1次側回路13は、例えば基板51に設けられている。
図20に示すトランスチップ50は、第1内周接続部80A(
図7参照)に代えて、第1回路接続部140および第2回路接続部150を含む。第1回路接続部140は、第1内周パッド57Aと1次側回路13とを電気的に接続している。第2回路接続部150は、トランス15Aの第1コイル21の第1内周端部21A(
図5参照)と1次側回路13とを電気的に接続している。
【0187】
図示していないが、トランスチップ50は、第1内周接続部80B(
図4参照)に代えて、第1回路接続部140および第2回路接続部150を含む。第1回路接続部140は、第1内周パッド57B(
図4参照)と1次側回路13とを電気的に接続している。第2回路接続部150は、トランス15Bの第1コイル21の第1内周端部21A(
図5参照)と1次側回路13とを電気的に接続している。
【0188】
2つの第1回路接続部140および2つの第2回路接続部150は、例えば素子絶縁層52に設けられている。トランス15Aに対応する第1回路接続部140および第2回路接続部150は、平面視においてトランス15Aの内側領域23に配置されている。トランス15Bに対応する第1回路接続部140および第2回路接続部150は、平面視においてトランス15Bの内側領域23に配置されている。各第1回路接続部140および各第2回路接続部150は、例えば配線層およびビアを含む。この場合、複数の第1電極パッド57は、第1リードフレーム60の複数の第1リード62(
図2参照)に複数のワイヤW5によって個別に電気的に接続されている。
【0189】
・
図21に示すように、トランスチップ50が2次側回路14を含んでいてもよい。より詳細には、2次側回路14は、例えば基板51に設けられている。
図21に示すトランスチップ50は、第1内周接続部80A(
図7参照)に代えて、第3回路接続部160および第4回路接続部170を含む。第3回路接続部160は、第1内周パッド57Aと2次側回路14とを電気的に接続している。第4回路接続部170は、トランス15Aの第1コイル21の第1内周端部21A(
図5参照)と2次側回路14とを電気的に接続している。つまり、
図21に示すトランスチップ50は、上記実施形態とは異なり、トランス15Aの第2コイル22が1次側回路13と電気的に接続されており、トランス15Aの第1コイル21が2次側回路14と電気的に接続されている。
【0190】
図示していないが、トランスチップ50は、第1内周接続部80B(
図4参照)に代えて、第3回路接続部160および第4回路接続部170を含む。第3回路接続部160は、第1内周パッド57B(
図4参照)と2次側回路14とを電気的に接続している。第4回路接続部170は、トランス15Bの第1コイル21の第1内周端部21A(
図5参照)と2次側回路14とを電気的に接続している。このため、トランスチップ50は、トランス15Bの第2コイル22が1次側回路13と電気的に接続されており、トランス15Bの第1コイル21が2次側回路14と電気的に接続されている。
【0191】
2つの第3回路接続部160および2つの第4回路接続部170は、例えば素子絶縁層52に設けられている。トランス15Aに対応する第3回路接続部160および第4回路接続部170は、平面視においてトランス15Aの内側領域23に配置されている。トランス15Bに対応する第3回路接続部160および第4回路接続部170は、平面視においてトランス15Bの内側領域23に配置されている。この場合、複数の第1電極パッド57は、第2リードフレーム70の複数の第2リード72(
図2参照)に複数のワイヤW6によって個別に電気的に接続されている。複数の第2電極パッド58は、第1チップ30の複数の第2電極パッド34に複数のワイヤW2によって個別に電気的に接続されている。
【0192】
・信号伝達装置10は、例えば複数のトランスチップを備えていてよい。一例では、
図22に示すように、信号伝達装置10は、2つのトランスチップ50を備えていてよい。ここで、便宜上、2つのトランスチップ50を「第1トランスチップ50P」および「第2トランスチップ50Q」とする。第1トランスチップ50Pは、第1リードフレーム60の第1ダイパッド61に配置されている。第2トランスチップ50Qは、第2リードフレーム70の第2ダイパッド71に配置されている。このように、第1ダイパッド61には第1トランスチップ50Pおよび第1チップ30の双方が配置され、第2ダイパッド71には第2トランスチップ50Qおよび第2チップ40の双方が配置されている。
【0193】
第1トランスチップ50Pは、第1チップ30に対して第2チップ40寄りに配置されている。第2トランスチップ50Qは、第2チップ40に対して第1チップ30寄りに配置されている。このため、第1リードフレーム60の第1リード62から第2リードフレーム70の第2リード72に向けて、第1チップ30、第1トランスチップ50P、第2トランスチップ50Q、および第2チップ40の順に配置されている。
【0194】
第1チップ30と第1トランスチップ50Pとは複数のワイヤW2によって電気的に接続されている。第2チップ40と第2トランスチップ50Qとは複数のワイヤW3によって電気的に接続されている。複数のワイヤW2による第1チップ30と第1トランスチップ50Pとの接続態様は上記実施形態の複数のワイヤW2による第1チップ30とトランスチップ50の接続態様と同じである。複数のワイヤW3は、第2トランスチップ50Qの複数の第1電極パッド57と第2チップ40の複数の第1電極パッド43とを個別に電気的に接続している。このため、第2トランスチップ50Qの第1コイル21は、第2チップ40の2次側回路14と電気的に接続されている。
【0195】
第1トランスチップ50Pと第2トランスチップ50Qとは、複数のワイヤW7によって電気的に接続されている。より詳細には、第1トランスチップ50Pの複数の第2電極パッド58は、第2トランスチップ50Qの複数の第2電極パッド58と複数のワイヤW7によって個別に接続されている。これにより、第1トランスチップ50Pの第2コイル22と第2トランスチップ50Qの第2コイル22とが電気的に接続されている。
【0196】
この構成によれば、第1チップ30と第2チップ40との間を、第1トランスチップ50Pおよび第2トランスチップ50Qによる二重絶縁構造によって絶縁しているため、1つのトランスチップによって第1チップ30と第2チップ40とを絶縁する構成と比較して、信号伝達装置10の絶縁耐圧の向上を図ることができる。
【0197】
加えて、第1チップ30および第2チップ40とは別に第1トランスチップ50Pおよび第2トランスチップ50Qがそれぞれ設けられているため、異なる第1チップ30および第2チップ40に対して共通のトランスチップを用いることができる。これにより、第1チップ30および第2チップ40の少なくとも一方が異なる複数種類の信号伝達装置10を製造する場合に製造コストを低減することができる。
【0198】
・トランスチップ50は、各実施形態の信号伝達装置10以外にも適用可能である。
第1例では、トランスチップ50は、例えば1次側回路モジュールに適用されてもよい。1次側回路モジュールは、第1チップ30と、トランスチップ50と、これらチップ30,50を封止する封止樹脂と、を備える。また1次側回路モジュールは、第1チップ30およびトランスチップ50の双方が配置された第1ダイパッド61を備える。この場合、1次側回路モジュールは「絶縁モジュール」に対応している。なお、
図20に示すように、トランスチップ50が1次側回路13を含む構成であってもよい。この場合、第1チップ30は省略される。
【0199】
第2例では、トランスチップ50は、例えば2次側回路モジュールに適用されてもよい。2次側回路モジュールは、第2チップ40と、トランスチップ50と、これらチップ40,50を封止する封止樹脂と、を備える。また2次側回路モジュールは、第2チップ40およびトランスチップ50が配置された第2ダイパッド71を備える。この場合、2次側回路モジュールは「絶縁モジュール」に対応している。
【0200】
第3例では、トランスチップ50がモジュール化されてもよい。つまり、絶縁モジュールは、トランスチップ50と、トランスチップ50を封止する封止樹脂と、を備える。また、絶縁モジュールは、トランスチップ50が配置されたダイパッドを備える。
【0201】
・上記第1例~第3例に基づいて、信号伝達装置10の構成は以下のように変更してもよい。
一例では、信号伝達装置10は、上記1次側回路モジュールと第2チップ40とを備えていてもよい。この場合、第2チップ40が第2ダイパッド71に配置され、第2ダイパッド71および第2チップ40の双方が封止樹脂によって封止されたモジュールによって構成されていてもよい。つまり、このモジュールは、1次側回路モジュールとは別に設けられている。信号伝達装置10は、1次側回路モジュールと上記モジュールとを備える。
【0202】
また一例では、信号伝達装置10は、上記2次側回路モジュールと第1チップ30とを備えていてもよい。この場合、第1チップ30が第1ダイパッド61に配置され、第1ダイパッド61および第1チップ30の双方が封止樹脂によって封止されたモジュールによって構成されていてもよい。つまり、このモジュールは、2次側回路モジュールとは別に設けられている。信号伝達装置10は、2次側回路モジュールと上記モジュールとを備える。
【0203】
また一例では、信号伝達装置10は、絶縁モジュールと、第1チップ30と、第2チップ40と、を備えていてもよい。この場合、第1チップ30が第1ダイパッド61に配置され、第1ダイパッド61および第1チップ30の双方が封止樹脂によって封止された第1モジュールによって構成されていてもよい。第2チップ40が第2ダイパッド71に配置され、第2ダイパッド71および第2チップ40の双方が封止樹脂によって封止された第2モジュールによって構成されていてもよい。つまり、第1モジュール、第2モジュール、および絶縁モジュールは、互いに個別に設けられている。信号伝達装置10は、第1モジュール、第2モジュール、および絶縁モジュールを備える。
【0204】
・上記各実施形態では、信号伝達装置10は、1次側回路13から2次側回路14にセット信号およびリセット信号が伝達されたが、これに限られない。一例では、信号伝達装置10は、2次側回路14から1次側回路13に信号が伝達されてもよい。一例では、信号伝達装置10は、1次側回路13から2次側回路14に信号が伝達され、2次側回路14から1次側回路13から信号が伝達されるような双方向に信号が伝達されてもよい。
【0205】
本明細書に記載の様々な例のうち1つまたは複数を、技術的に矛盾しない範囲で組み合わせることができる。
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。
【0206】
本明細書において、「AおよびBのうち少なくとも1つ」とは、「Aのみ、または、Bのみ、またはAおよびBの両方」を意味するものとして理解されるべきである。
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」の意味を含む。したがって、例えば「第1要素が第2要素上に配置される」という表現は、或る実施形態では第1要素が第2要素に接触して第2要素上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1要素が第2要素に接触することなく第2要素の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1要素と第2要素との間に他の要素が形成される構造を排除しない。
【0207】
本開示で使用されるZ方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造は、本明細書で説明されるZ方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。例えばX方向が鉛直方向であってもよく、またはY方向が鉛直方向であってもよい。
【0208】
<付記>
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のため、付記に記載される構成要素には、上記実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0209】
[付記1]
複数の絶縁膜(52P,52Q)の積層構造によって構成され、厚さ方向(Z方向)において互いに反対側を向く表面(52A)および裏面(52B)を含む絶縁層(52)と、
前記絶縁層(52)内において前記裏面(52B)寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部(21A)を含む第1コイル(21)と、
前記絶縁層(52)内において前記表面(52A)寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部(22A)を含み、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1コイル(21)と対向する第2コイル(22)と、
前記表面(52A)上に形成された第1内周パッド(57A)および第2内周パッド(58A)と、
前記第1コイル(21)の前記第1内周端部(21A)と前記第1内周パッド(57A)とを電気的に接続する第1内周接続部(80A)と、
前記第2コイル(22)の前記第2内周端部(22A)と前記第2内周パッド(58A)とを電気的に接続する第2内周接続部(90A)と、
を備え、
前記厚さ方向(Z方向)から視て、前記第1内周パッド(57A)、前記第2内周パッド(58A)、前記第1内周接続部(80A)、および前記第2内周接続部(90A)は、前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)によって囲まれた内側領域(23)に配置されている
トランスチップ(50)。
【0210】
[付記2]
前記絶縁層(52)の前記裏面(52B)に接しており、前記絶縁層(52)を支持する基板(51)を備え、
前記第1コイル(21)は、前記複数の絶縁膜(52P,52Q)のうち前記裏面(52B)を構成する最下層の絶縁膜(52Q)上において前記最下層の絶縁膜(52Q)に接するように形成されている
付記1に記載のトランスチップ。
【0211】
[付記3]
前記第2コイル(22)は、前記複数の絶縁膜(52P,52Q)のうち前記表面(52A)を構成する最上層の絶縁膜(52P)に接した状態で当該絶縁膜(52P)によって覆われている
付記2に記載のトランスチップ。
【0212】
[付記4]
前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)は、長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)を有する環状に形成されており、
前記第1内周パッド(57A)および前記第2内周パッド(58A)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記長手方向(X方向)に互いに離隔して配列されている
付記1~3のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0213】
[付記5]
前記第1内周パッド(57A)は、前記長手方向(X方向)において前記内側領域(23)の第1端部(23A)に配置されており、
前記第2内周パッド(58A)は、前記長手方向(X方向)において前記内側領域(23)の前記第1端部(23A)とは反対側の第2端部(23B)に配置されている
付記4に記載のトランスチップ。
【0214】
[付記6]
前記第1内周接続部(80A)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第1コイル(21)と同じ位置に設けられ、前記第1内周端部(21A)から前記長手方向(X方向)に延びる第1内周配線層(81)と、
前記第1内周配線層(81)と前記第1内周パッド(57A)とを電気的に接続する第1内周接続層(82)と、
を含む、付記4または5に記載のトランスチップ。
【0215】
[付記7]
前記第1内周接続層(82)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2コイル(22)と同じ位置に設けられ、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1内周配線層(81)および前記第1内周パッド(57A)の双方と対向する第1中間配線層(84)と、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第1内周配線層(81)と前記第1中間配線層(84)とを接続する第1内周ビア(83)と、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第1中間配線層(84)と前記第1内周パッド(57A)とを接続する第2内周ビア(85)と、
を含む、付記6に記載のトランスチップ。
【0216】
[付記8]
前記第1内周接続部(80A)と前記第2コイル(22)との間の最短距離(DM1)は、前記厚さ方向(Z方向)における前記第1コイル(21)と前記第2コイル(22)との間の距離(DC)以上である
付記6または7に記載のトランスチップ。
【0217】
[付記9]
前記第2内周接続部(90A)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2コイル(22)と同じ位置に設けられ、前記第2内周端部(22A)から前記長手方向(X方向)に延び、前記厚さ方向(Z方向)において前記第2内周パッド(58A)と対向する部分を含む第2内周配線層(91)と、
前記第2内周パッド(58A)と前記第2内周配線層(91)とを電気的に接続する第2内周接続層(92)と、
を含む、付記4~8のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0218】
[付記10]
前記表面(52A)上において前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)よりも外方に形成された第1外周パッド(57C)および第2外周パッド(58C)と、
前記第1コイル(21)の第1外周端部(21B)と前記第1外周パッド(57C)とを電気的に接続する第1外周接続部(100)と、
前記第2コイル(22)の第2外周端部(22B)と前記第2外周パッド(58C)とを電気的に接続する第2外周接続部(110)と、
を備える、付記1~9のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0219】
[付記11]
前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)は、長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)を有する環状に形成されており、
前記第1外周パッド(57C)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記長手方向(X方向)において前記第1内周パッド(57A)と同じ位置に配置されており、
前記第2外周パッド(58C)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記長手方向(X方向)において前記第2内周パッド(58A)と同じ位置に配置されている
付記10に記載のトランスチップ。
【0220】
[付記12]
前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)は、長手方向(X方向)および短手方向(Y方向)を有する環状に形成されており、
前記長手方向(X方向)における前記第1外周パッド(57C)と前記第2外周パッド(58C)との間の距離(DQ)は、前記長手方向(X方向)における前記第1内周パッド(57A)と前記第2内周パッド(58A)との間の距離(DP)以上である
付記10に記載のトランスチップ。
【0221】
[付記13]
前記第1外周接続部(100)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第1コイル(21)と同じ位置に設けられ、前記第1外周端部(21B)から前記短手方向(Y方向)に延び、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1外周パッド(57C)と対向する部分を含む第1外周配線層(101)と、
前記第1外周配線層(101)と前記第1外周パッド(57C)とを電気的に接続する第1外周接続層(102)と、
を含む、付記11または12に記載のトランスチップ。
【0222】
[付記14]
前記第1外周接続層(102)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2コイル(22)と同じ位置に設けられ、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1外周配線層(101)および前記第1外周パッド(57C)の双方と対向する第2中間配線層(104)と、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第1外周配線層(101)と前記第2中間配線層(104)とを接続する第1外周ビア(103)と、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2中間配線層(104)と前記第1外周パッド(57C)とを接続する第2外周ビア(105)と、
を含む、付記13に記載のトランスチップ。
【0223】
[付記15]
前記第2外周接続部(110)は、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2コイル(22)と同じ位置に設けられ、前記第2外周端部(22B)から前記短手方向(Y方向)に延び、前記厚さ方向(Z方向)において前記第2外周パッド(58C)と対向する部分を含む第2外周配線層(111)と、
前記厚さ方向(Z方向)において前記第2外周配線層(111)と前記第2外周パッド(58C)とを電気的に接続する第2外周接続層(112)と、
を含む、付記11~14のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0224】
[付記16]
前記第1内周パッド(57A)および前記第2内周パッド(58A)の各々は、複数設けられ、
複数の前記第1内周パッド(57A)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)の前記長手方向(X方向)に配列されており、
複数の前記第2内周パッド(58A)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)の前記長手方向(X方向)に配列されている
付記4~9のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0225】
[付記17]
前記第1内周パッド(57A)および前記第2内周パッド(58A)の各々は、複数設けられ、
複数の前記第1内周パッド(57A)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)の前記短手方向(Y方向)に配列されており、
複数の前記第2内周パッド(58A)は、前記厚さ方向(Z方向)から視て前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)の前記短手方向(Y方向)に配列されている
付記4~9のいずれか1つに記載のトランスチップ。
【0226】
[付記18]
付記1~17のいずれか1つに記載のトランスチップ(50)と、
第1回路(13)と、
前記第1回路(13)と前記トランスチップ(50)を介して接続された第2回路(14)と、
を備え、
前記第1回路(13)と前記第2回路(14)とは、前記トランスチップ(50)を介して信号を伝達するように構成されている
信号伝達装置(10)。
【0227】
[付記19]
前記第1回路(13)を含む第1チップ(30)と、
前記第2回路(14)を含む第2チップ(40)と、
を含む、付記18に記載の信号伝達装置(10)。
【0228】
[付記20]
前記トランスチップ(50)は、第1トランスチップ(50A)および第2トランスチップ(50B)を含み、
前記第1トランスチップ(50A)の前記第2コイル(22)は、前記第2トランスチップ(50B)の前記第1コイル(21)と電気的に接続されている
付記18に記載の信号伝達装置。
【0229】
[付記21]
前記第1回路(13)を含む第1チップ(30)と、
前記第2回路(14)を含む第2チップ(40)と、
前記第1チップ(30)および前記第1トランスチップ(50A)の双方が配置された第1ダイパッド(61)と、
前記第2チップ(40)および前記第2トランスチップ(50B)の双方が配置された第2ダイパッド(71)と、
を備える、付記20に記載の信号伝達装置。
【0230】
[付記22]
トランスチップ(50)と、
第1回路(13)と、
前記第1回路(13)と前記トランスチップ(50)を介して接続された第2回路(14)と、
を備え、
前記第1回路(13)と前記第2回路(14)とは、前記トランスチップ(50)を介して信号を伝達するように構成されており、
前記トランスチップ(50)は、前記第1回路(13)を含み、
前記第2回路(14)は、前記トランスチップ(50)とは別に設けられており、
前記トランスチップ(50)は、
複数の絶縁膜(52P,52Q)の積層構造によって構成され、厚さ方向(Z方向)において互いに反対側を向く表面(52A)および裏面(52B)を含む絶縁層(52)と、
前記絶縁層(52)内において前記裏面(52B)寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部(21A)を含む第1コイル(21)と、
前記絶縁層(52)内において前記表面(52A)寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部(22A)を含み、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1コイル(21)と対向する第2コイル(22)と、
前記表面(52A)上に形成された第1内周パッド(57A)および第2内周パッド(58A)と、
前記第1回路(13)と前記第1内周パッド(57A)とを電気的に接続する第1回路接続部(140)と、
前記第2コイル(22)の前記第2内周端部(22A)と前記第2内周パッド(58A)とを電気的に接続する第2内周接続部(90A)と、
を備え、
前記厚さ方向(Z方向)から視て、前記第1内周パッド(57A)、前記第2内周パッド(58A)、前記第1回路接続部(140)、および前記第2内周接続部(90A)は、前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)によって囲まれた内側領域(23)に配置されている
信号伝達装置(10)。
【0231】
[付記23]
前記トランスチップ(50)は、前記第1コイル(21)の前記第1内周端部(21A)と前記第1回路(13)とを電気的に接続する第2回路接続部(150)を含み、
前記厚さ方向(Z方向)から視て、前記第2回路接続部(150)は、前記内側領域(23)に配置されている
付記22に記載の信号伝達装置。
【0232】
[付記24]
トランスチップ(50)と、
第1回路(13)と、
前記第1回路(13)と前記トランスチップ(50)を介して接続された第2回路(14)と、
を備え、
前記第1回路(13)と前記第2回路(14)とは、前記トランスチップ(50)を介して信号を伝達するように構成されており、
前記トランスチップ(50)は、前記第2回路(14)を含み、
前記第1回路(13)は、前記トランスチップ(50)とは別に設けられており、
前記トランスチップ(50)は、
複数の絶縁膜(52P,52Q)の積層構造によって構成され、厚さ方向(Z方向)において互いに反対側を向く表面(52A)および裏面(52B)を含む絶縁層(52)と、
前記絶縁層(52)内において前記裏面(52B)寄りに配置され、環状に形成され、第1内周端部(21A)を含む第1コイル(21)と、
前記絶縁層(52)内において前記表面(52A)寄りに配置され、環状に形成され、第2内周端部(22A)を含み、前記厚さ方向(Z方向)において前記第1コイル(21)と対向する第2コイル(22)と、
前記表面(52A)上に形成された第1内周パッド(57A)および第2内周パッド(58A)と、
前記第2回路(14)と前記第1内周パッド(57A)とを電気的に接続する第3回路接続部(160)と、
前記第2コイル(22)の前記第2内周端部(22A)と前記第2内周パッド(58A)とを電気的に接続する第2内周接続部(90A)と、
を備え、
前記厚さ方向(Z方向)から視て、前記第1内周パッド(57A)、前記第2内周パッド(58A)、前記第2内周接続部(90A)、および前記第3回路接続部(160)は、前記第1コイル(21)および前記第2コイル(22)によって囲まれた内側領域(23)に配置されている
信号伝達装置(10)。
【0233】
[付記25]
前記トランスチップ(50)は、前記第1コイル(21)の前記第1内周端部(21A)と前記第2回路(14)とを電気的に接続する第4回路接続部(170)を含み、
前記厚さ方向(Z方向)から視て、前記第4回路接続部(170)は、前記内側領域(23)に配置されている
付記25に記載の信号伝達装置。
【0234】
以上の説明は単に例示である。本開示の技術を説明する目的のために列挙された構成要素および方法(製造プロセス)以外に、より多くの考えられる組み合わせおよび置換が可能であることを当業者は認識し得る。本開示は、特許請求の範囲を含む本開示の範囲内に含まれる全ての代替、変形、および変更を包含することが意図される。
【符号の説明】
【0235】
10…信号伝達装置
10A…信号伝達回路
11…1次側端子
12…2次側端子
13…1次側回路(第1回路)
14…2次側回路(第2回路)
15,15A,15B…トランス
16A,16B…1次側信号線
17A,17B…2次側信号線
21…第1コイル
21A…第1内周端部
21B…第1外周端部
21C,21D…直線部
21E,21F…湾曲部
22…第2コイル
22A…第2内周端部
22B…第2外周端部
22C,22D…直線部
22E,22F…湾曲部
23…内側領域
23A…第1端部
23B…第2端部
30…第1チップ
31…チップ表面
32…チップ裏面
33…第1電極パッド
34…第2電極パッド
35…第3電極パッド
36…基板
37…配線層
40…第2チップ
41…チップ表面
42…チップ裏面
43…第1電極パッド
44…第2電極パッド
45…第3電極パッド
46…基板
47…配線層
50…トランスチップ
50A…チップ表面
50B…チップ裏面
50P…第1トランスチップ
50Q…第2トランスチップ
51…基板
51A…基板表面
51B…基板裏面
52…素子絶縁層
52A…表面
52B…裏面
52C~52F…素子側面
52P…第1絶縁膜
52Q…第2絶縁膜
53…表面側絶縁層
53A…第1開口部
53B…第2開口部
53C…第3開口部
54…保護層
54A…第1保護膜
54B…第2保護膜
55…パッシベーション層
56…樹脂層
57…第1電極パッド
57A,57B…第1内周パッド
57C…第1外周パッド
58…第2電極パッド
58A,58B…第2内周パッド
58C…第2外周パッド
59…シールリング
59A…ビア
60…第1リードフレーム
61…第1ダイパッド
62…第1リード
70…第2リードフレーム
71…第2ダイパッド
72…第2リード
80A,80B…第1内周接続部
81…第1内周配線層
82…第1内周接続層
83…第1ビア
84…中間配線層
85…第2ビア
90A,90B…第2内周接続部
91…第2内周配線層
92…第2内周接続層
100…第1外周接続部
101…第1外周配線層
102…第1外周接続層
103…第1ビア
104…中間配線層
105…第2ビア
106…ビア
110…第2外周接続部
111…第2外周配線層
112…第2外周接続層
121…第1内周電極層
122…第2内周電極層
123…第1外周電極層
124…第2外周電極層
130…封止樹脂
131~134…樹脂側面
140…第1回路接続部
150…第2回路接続部
160…第3回路接続部
170…第4回路接続部
W1~W7…ワイヤ
SD…導電性接合材
LX1…第1コイルのX方向の寸法
LY1…第1コイルのY方向の寸法
LX2…第2コイルのX方向の寸法
LY2…第2コイルのY方向の寸法
LX3…素子絶縁層のX方向の寸法
DC…第1コイルと第2コイルとの間の距離
DM1,DM2…第2コイルと中間配線層との間の最短距離
DM3…第2内周パッドと第2コイルとの間の最短距離
DP…第1内周パッドと第2内周パッドとのX方向の間の距離
DQ…第1外周パッドと第2外周パッドとのX方向の間の距離