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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176797
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】窒化物半導体モジュール
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/338 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
H01L29/80 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】12
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095603
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000116024
【氏名又は名称】ローム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】大嶽 浩隆
【テーマコード(参考)】
5F102
【Fターム(参考)】
5F102FA04
5F102GB01
5F102GC01
5F102GD01
5F102GJ04
5F102GL04
5F102GL07
5F102GQ01
(57)【要約】
【課題】窒化物半導体モジュールの放熱性を高める。
【解決手段】窒化物半導体モジュール100は、トランジスタ51を含むチップ101を備えている。チップ101は、半導体基板12と、半導体基板12の上に形成され、GaNによって構成された電子走行層と、電子走行層の上に形成され、GaNによって構成された電子供給層とを備えている。トランジスタは、電子供給層の上に形成されたゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極を含んで構成されている。半導体基板12は、100μm以下の厚さを有するGaN基板である。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
トランジスタを含むチップを備え、
前記チップは、
基板上面、および前記基板上面と反対側を向く基板下面を有する半導体基板と、
前記半導体基板の前記基板上面の上に形成され、GaNによって構成された電子走行層と、
前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有するGaNによって構成された電子供給層と、を備え、
前記トランジスタは、前記電子供給層の上に形成されたゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極を含み、
前記半導体基板は、100μm以下の厚さを有するGaN基板である、窒化物半導体モジュール。
【請求項2】
前記チップは、複数の前記トランジスタを含む、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項3】
前記チップを覆う封止部材を含み、
前記封止部材により形成され、前記基板上面と同じ側を向くモジュール上面と、前記基板下面と同じ側を向くモジュール下面とを有し、
前記半導体基板の厚さは、前記電子供給層の上面から前記モジュール上面までの距離よりも薄い、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項4】
前記チップを覆う封止部材を含み、
前記封止部材により形成され、前記基板上面と同じ側を向くモジュール上面と、前記基板下面と同じ側を向くモジュール下面とを有し、
前記半導体基板の厚さ方向において、前記チップのチップ下面は、前記モジュール上面よりも前記モジュール下面に近い位置に配置されている、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項5】
前記チップを覆う封止部材を含み、
前記封止部材により形成され、前記基板上面と同じ側を向くモジュール上面と、前記基板下面と同じ側を向くモジュール下面とを有し、
前記基板下面に取り付けられ、前記モジュール下面に露出する放熱部材を備える、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項6】
前記放熱部材は、150μm以下の厚さを有する、請求項5に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項7】
前記電子走行層は、GaN層であり、
前記電子供給層は、AlGaN層である、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項8】
前記トランジスタは、前記電子供給層上に形成され、アクセプタ型不純物を含むGaNによって構成されたゲート層を備え、
前記ゲート電極は、前記ゲート層の上に形成されている、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項9】
前記電子走行層は、GaN層であり、
前記電子供給層は、AlGaN層であり、
前記ゲート層は、前記アクセプタ型不純物を含むGaN層である、請求項8に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項10】
前記トランジスタをオンオフ制御する制御回路を備える、請求項1に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項11】
複数の前記トランジスタを用いて構成されているブリッジ回路を含む、請求項2に記載の窒化物半導体モジュール。
【請求項12】
前記複数のトランジスタは、互いに直列に接続されたハイサイドトランジスタとローサイドトランジスタを備えるハーフブリッジ回路を構成し、
前記ハイサイドトランジスタと前記ローサイドトランジスタをオンオフ制御する制御回路を含む、請求項11に記載の窒化物半導体モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、窒化物半導体モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、窒化ガリウム(GaN)等のIII族窒化物半導体(以下、単に「窒化物半導体」と言う場合がある)を用いた高電子移動度トランジスタ(HEMT)の製品化が進んでいる。HEMTは、半導体ヘテロ接合の界面付近に形成された二次元電子ガス(2DEG)を導電経路(チャネル)として使用する。HEMTを利用したパワーデバイスは、典型的なシリコン(Si)パワーデバイスと比較して低オン抵抗および高速・高周波動作を可能にしたデバイスとして認知されている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の窒化物半導体装置は、シリコン基板と、窒化ガリウム(GaN)層によって構成された電子走行層と、窒化アルミニウムガリウム(AlGaN)層によって構成された電子供給層とを含む。これら電子走行層と電子供給層とのヘテロ接合の界面付近において電子走行層中に2DEGが形成される。また、特許文献1の窒化物半導体装置では、アクセプタ型不純物を含むゲート層(例えばp型GaN層)が、電子供給層上であってゲート電極の直下の位置に設けられている。この構成では、ゲート層の直下の領域において、ゲート層が電子走行層と電子供給層との間のヘテロ接合界面付近における伝導帯のバンドエネルギーを持ち上げることによりゲート層の直下のチャネルが消失し、ノーマリーオフが実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017-73506号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
基板上に形成された窒化物半導体層を用いて構成される素子を備える窒化物半導体装置の場合、素子から発生した熱は、主に基板を経由して外部へ放熱される。そのため、窒化物半導体装置の温度上昇を抑制するためには、基板からの放熱性を高めることが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様である窒化物半導体モジュールは、トランジスタを含むチップを備え、前記チップは、基板上面、および前記基板上面と反対側を向く基板下面を有する半導体基板と、前記半導体基板の前記基板上面の上に形成され、GaNによって構成された電子走行層と、前記電子走行層の上に形成され、前記電子走行層よりも大きなバンドギャップを有するGaNによって構成された電子供給層と、を備え、前記トランジスタは、前記電子供給層の上に形成されたゲート電極、ソース電極、およびドレイン電極を含み、前記半導体基板は、100μm以下の厚さを有するGaN基板である。
【発明の効果】
【0007】
本開示の窒化物半導体モジュールによれば、放熱性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1図1は、第1実施形態に係る例示的な窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
図2図2は、図1の2-2線断面図である。
図3図3は、トランジスタの例示的な概略平面図である。
図4図4は、図3の4-4線断面図である。
図5図5は、第2実施形態に係る例示的な窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
図6図6は、第3実施形態に係る窒化物半導体モジュールの概略回路図である。
図7図7は、第3実施形態に係る例示的な窒化物半導体モジュールの概略平面図である。
図8図8は、第3実施形態に係る窒化物半導体モジュールが有する第1トランジスタおよび第2トランジスタの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本開示における半導体モジュールの実施形態を説明する。
なお、説明を簡単かつ明確にするために、図面に示される構成要素は必ずしも一定の縮尺で描かれていない。また、理解を容易にするために、断面図では、ハッチング線が省略されている場合がある。添付の図面は、本開示の実施形態を例示するに過ぎず、本開示を制限するものとみなされるべきではない。
【0010】
以下の詳細な記載は、本開示の例示的な実施形態を具体化する装置、システム、および方法を含む。この詳細な記載は本来説明のためのものに過ぎず、本開示の実施形態またはこのような実施形態の適用および使用を限定することを意図していない。
【0011】
<第1実施形態>
[半導体モジュールの概略構造]
図1は、第1実施形態に係る例示的な窒化物半導体モジュール(以下、半導体モジュールと記載する。)100の概略平面図である。図2は、図1の2-2線断面図である。
【0012】
図1及び図2に示すように、半導体モジュール100は、たとえば、面実装型のパッケージとすることができる。半導体モジュール100は、モジュール上面100sと、モジュール上面100sと反対側を向くモジュール下面100rとを含む。
【0013】
半導体モジュール100は、後述するトランジスタ51を含むチップ101と、チップ101に電気的に接続される第1導電端子102A、第2導電端子102B、および第3導電端子102Cと、放熱部材103と、チップ101を封止する封止部材104とを含む。理解を容易にするために、図1及び図2において、封止部材104は、その外形線のみを図示している。
【0014】
チップ101は、チップ上面101sと、チップ上面101sと反対側を向くチップ下面101rとを含む。チップ上面101sは、モジュール上面100sと同じ側を向く面である。チップ下面101rは、モジュール下面100rと同じ側を向く面である。チップ101の平面視における形状、換言すると平面視におけるチップ上面101sおよびチップ下面101rの形状は、たとえば、矩形状である。チップ101は、半導体基板12と、窒化物半導体層50と、トランジスタ51と、絶縁体層60と、電極パッド70と、下面電極80とを含む。図2では、電極パッド70および下面電極80の図示を省略している。
【0015】
半導体基板12は、GaNで形成されている基板である。半導体基板12は、たとえば、N空孔がドナーとして機能したn型GaNで形成されている基板である。キャリア密度は、たとえば1×1016cm-3以上とすることができる。
【0016】
半導体基板12は、基板上面12sと、基板上面12sと反対側を向く基板下面12rとを含む。基板上面12sは、チップ上面101sと同じ側を向く面である。基板下面12rは、チップ下面101rと同じ側を向く面である。
【0017】
図1および図2に示される互いに直交するXYZ軸のZ軸方向は、半導体基板12の厚さ方向である。なお、本明細書において使用される「平面視」という用語は、明示的に別段の記載がない限り、Z軸方向に沿って上方から半導体モジュール100を視ることをいう。半導体基板12の厚さの詳細は、後述する。
【0018】
窒化物半導体層50は、半導体基板12の基板上面12sの上に形成されている。トランジスタ51は、窒化物半導体層50を用いて構成されている。窒化物半導体層50およびトランジスタ51の詳細は、後述する。
【0019】
図4に示すように、下面電極80は、半導体基板12の基板下面12rに形成されている。下面電極80は、後述するソース電極28に電気的に接続されている。下面電極80は、たとえば、チタン(Ti)、ニッケル(Ni)、ニッケルバナジウム合金(NiV)、銀(Ag)、金(Au)のうち少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。下面電極80は、1つまたは複数の金属層によって構成されてよい。たとえば、下面電極80の一例は、半導体基板12の基板下面12r側から順にTi層/Ni層/Au層の3層が積層された電極である。また、下面電極80は、半導体基板12の基板下面12r側から順に、Ti層/Ni層/Au層/Ag層の4層が積層された電極、またはTi層/NiV層/Ag層の3層が積層された電極であってもよい。下面電極80は、チップ101のチップ下面101rを構成している。
【0020】
また、下面電極80は、省略されてもよい。この場合、半導体基板12は、後述するソース電極28に電気的に接続される。たとえば、半導体基板12とソース電極28との間に配置される窒化物半導体層50に、半導体基板12の基板上面12sとソース電極28とに接するビアを形成することにより、半導体基板12とソース電極28とを電気的に接続する。下面電極80が省略されている場合、チップ101のチップ下面101rは、たとえば、半導体基板12の基板下面12rにより構成されてよい。
【0021】
絶縁体層60は、窒化物半導体層50の上に形成されている。絶縁体層60は、たとえば窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちいずれか1つを含む材料によって構成され得る。一例では、絶縁体層60は、SiNを含む材料によって形成されている。
【0022】
電極パッド70は、絶縁体層60の上面に形成されている。電極パッド70は、単数又は複数のソースパッド71、単数又は複数のドレインパッド72、および単数又は複数のゲートパッド73を含む。
【0023】
図2においては、電極パッド70の図示を省略している。ソースパッド71は、後述するソース電極28に電気的に接続されている。ドレインパッド72は、後述するドレイン電極30に電気的に接続されている。ゲートパッド73は、後述するゲート電極24に電気的に接続されている。電極パッドの各々は、たとえば、Ti、窒化チタン(TiN)、アルミニウム(Al)、銅(Cu)、AlCu合金、Ni、Auのうち少なくとも1つを含む任意の導体材料によって構成することができる。電極パッド70の一例は、金属層と、金属層を被覆するめっき層とを含む。金属層は、たとえば、絶縁体層60の上面側から順にTi層/TiN層/AlCu層/TiN層の4層が積層された構造である。めっき層は、たとえば、金属層側から順にCu層/Ni層/Au層が積層された構造である。
【0024】
図2に示す一例では、チップ101は、複数のソースパッド71と、複数のドレインパッド72と、複数のゲートパッド73とを含む。複数のソースパッド71および複数のドレインパッド72の各々は、Y軸方向に延びる矩形状に形成されるとともに、間隔をあけてX軸方向に交互に並ぶように配置されている。ゲートパッド73は、複数のソースパッド71および複数のドレインパッド72のうちX軸方向の両側に配置されているパッド(図1では、共にドレインパッド72)のY軸方向に間隔をあけて並ぶように配置されている。
【0025】
第1導電端子102A、第2導電端子102B、および第3導電端子102Cは、チップ101の電極パッド70に電気的に接続されている。詳述すると、第1導電端子102Aは、導電性接合材(図示略)を介してソースパッド71の上面に接合されている。第2導電端子102Bは、導電性接合材(図示略)を介してドレインパッド72の上面に接合されている。第3導電端子102Cは、ワイヤ102Dを介してゲートパッド73の上面に接合されている。
【0026】
第1導電端子102A、第2導電端子102B、および第3導電端子102Cは、たとえば、CuまたはCuを含む合金により形成されている。上記導電性接合材には、はんだまたは導電性ペーストを用いることができる。はんだは、たとえば、錫(Sn)-銀(Ag)-銅(Cu)系等の鉛(Pb)フリーはんだであってもよいし、Sn-Pb-Ag系等の鉛含有はんだであってもよい。導電性ペーストの一例はAgペーストである。ワイヤ102Dは、ワイヤボンディング装置によって形成されるボンディングワイヤであり、たとえば金(Au),Al,Cu等の導体によって形成されている。
【0027】
第1導電端子102Aおよび第2導電端子102Bの各々は、たとえば、ブリッジ形状を有している。第1導電端子102A、第2導電端子102B、および第3導電端子102Cの各々は、封止部材104からモジュール下面100rに部分的に露出する外部接続面(それぞれの下面)を有している。第1導電端子102A、第2導電端子102B、および第3導電端子102Cの各々の外部接続面は、半導体モジュール100が図示しない実装基板に実装された際に、実装基板に電気的に接続される。
【0028】
放熱部材103は、チップ101のチップ下面101rに取り付けられている。チップ下面101rに対する放熱部材103の取り付け方法は、特に限定されない。一例では、放熱部材103は、接合材(図示略)を用いて取り付けられている。接合材としては、たとえば、はんだ、Agペースト等の金属材料、および熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂等の樹脂系材料が挙げられる。また、別の一例では、放熱部材103は、拡散接合または固相拡散接合によりチップ101のチップ下面101rに接合されている。
【0029】
放熱部材103は、封止部材104からモジュール下面100rに部分的に露出する露出面を含む。放熱部材103の形状は、露出面を有する形状であれば特に限定されない。放熱部材103は、たとえば、板状の放熱板である。放熱部材103は、熱伝達性の良い材料により形成されている。放熱部材103は、たとえばセラミックス、金属から構成されている。セラミックスは、たとえばアルミナ(Al)を主成分として含む。
【0030】
封止部材104は、半導体モジュール100のパッケージ外形を画定し得る。封止部材104は、チップ101とともに、第1導電端子102Aの一部、第2導電端子102Bの一部、第3導電端子102Cの一部、および放熱部材103の一部を封止する。封止部材104は、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂等の絶縁性樹脂材料によって形成されていてよい。一例では、封止部材104は、絶縁性樹脂材料をモールドすることによって形成され得る。封止部材104は、半導体基板12を形成している材料(GaN)よりも熱伝導性が低い材料によって形成されている。なお、チップ101のチップ上面101sおよびチップ下面101rは、封止部材104により形成されている。
【0031】
[窒化物半導体層およびトランジスタの詳細]
(トランジスタの概略構造)
チップ101は、平面視において、トランジスタ51が形成されているアクティブ領域と、トランジスタ51が形成されていない非アクティブ領域とを含む。
【0032】
図3は、アクティブ領域に形成されているトランジスタ51の概略平面図である。図3では、絶縁体層60および電極パッド70が省略されている。図4は、トランジスタ51の概略断面図であり、図3の4-4線断面図である。一例では、トランジスタ51は、GaNを用いたHEMTであってよい。以下では、図4を参照して、トランジスタ51の断面構造について説明した後、図3を参照してトランジスタ51の平面構造について説明する。
【0033】
図4に示すように、トランジスタ51は、半導体基板12と、半導体基板12上に形成された窒化物半導体層50とを含む。窒化物半導体層50は、半導体基板12の基板上面12s上にエピタキシャル成長されている。窒化物半導体層50は、半導体基板12上に形成された電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とを含む。
【0034】
電子走行層16は、GaNによって構成されているGaN層である。電子走行層16の一例は、アンドープのGaN層である。電子走行層16の厚さの詳細は、後述する。電子走行層16におけるリーク電流を抑制するために、電子走行層16の一部に不純物を導入して電子走行層16の表層領域以外を半絶縁性にしてもよい。その場合、不純物は、例えばCであり、電子走行層16中の不純物のピーク濃度は、例えば1×1019cm-3以上である。
【0035】
電子供給層18は、電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する窒化物半導体によって構成されている。電子供給層18は、たとえばAlGaN層である。この場合、Al組成が大きいほどバンドギャップが大きくなるため、AlGaN層である電子供給層18は、GaN層である電子走行層16よりも大きなバンドギャップを有する。一例では、電子供給層18は、AlGa1-xNによって構成され、xは0.1<x<0.4であり、より好ましくは、0.2<x<0.3である。電子供給層18の厚さは、たとえば、5nm以上20nm以下である。
【0036】
電子走行層16と電子供給層18とは、互いに異なる格子定数を有する窒化物半導体によって構成されている。したがって、電子走行層16を構成するGaN層と電子供給層18を構成するGaN層(たとえば、AlGaN層)とは、格子不整合系のヘテロ接合を形成する。電子走行層16および電子供給層18の自発分極と、ヘテロ接合界面付近の電子供給層18が受ける応力に起因するピエゾ分極とによって、ヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルはフェルミ準位よりも低くなる。これにより、電子走行層16と電子供給層18とのヘテロ接合界面に近い位置(例えば、界面から数nm程度の範囲内)において電子走行層16内には二次元電子ガス(2DEG)20が広がっている。
【0037】
窒化物半導体層50は、電子走行層16および電子供給層18以外のその他の層を有していてもよい。たとえば、窒化物半導体層50は、半導体基板12と電子走行層16との間に配置される中間層を有していてもよい。中間層の一例は、電子走行層16のエピタキシャル成長を容易にするために設けられるバッファ層であって、電子走行層16のエピタキシャル成長を容易にすることができる任意の材料によって構成され得る。中間層の別の一例は、上下方向のリーク電流、すなわち、半導体基板12と後述するドレイン電極30との間のリーク電流を抑制するために設けられる高抵抗層であって、電子走行層16のエピタキシャル成長が可能な任意の材料によって構成され得る。高抵抗層は、たとえば、電子走行層16よりも抵抗が高い層である。
【0038】
トランジスタ51は、電子供給層18の上に形成されたゲート層22と、ゲート層22上に形成されたゲート電極24と、パッシベーション層26とを含む。パッシベーション層26は、電子供給層18、ゲート層22、およびゲート電極24の上に形成されるとともに、第1開口部26Aおよび第2開口部26Bを含む。また、トランジスタ51は、第1開口部26Aを介して電子供給層18の上面18Aに接するソース電極28と、第2開口部26Bを介して電子供給層18の上面18Aに接するドレイン電極30とを含む。
【0039】
ゲート層22は、パッシベーション層26の第1開口部26Aと第2開口部26Bとの間に位置しており、第1開口部26Aおよび第2開口部26Bの各々から離間している。ゲート層22は、第2開口部26Bよりも第1開口部26Aの近くに位置している。ゲート層22の厚さは、たとえば、50nm以上200nm以下である。
【0040】
ゲート層22は、電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有するとともに、アクセプタ型不純物を含む窒化物半導体によって構成されている。ゲート層22は、たとえばAlGaN層である電子供給層18よりも小さなバンドギャップを有する任意の材料によって構成され得る。一例では、ゲート層22は、アクセプタ型不純物がドーピングされたGaN層(p型GaN層)である。
【0041】
アクセプタ型不純物は、マグネシウム(Mg)、亜鉛(Zn)、およびCのうち少なくとも1つを含むことができる。アクセプタ型不純物の一例は、Mgである。ゲート層22中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、たとえば1×1018cm-3以上、または1×1019cm-3以上である。ゲート層22中のアクセプタ型不純物の最大濃度は、たとえば1×1020cm-3以下である。
【0042】
上記のように、ゲート層22にアクセプタ型不純物が含まれることによって、電子走行層16および電子供給層18のエネルギーレベルが引き上げられる。このため、ゲート層22の直下の領域において、電子走行層16と電子供給層18との間のヘテロ接合界面付近における電子走行層16の伝導帯のエネルギーレベルは、フェルミ準位とほぼ同じか、またはそれよりも大きくなる。したがって、ゲート電極24に電圧を印加していないゼロバイアス時において、ゲート層22の直下の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されない。一方、ゲート層22の直下の領域以外の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されている。
【0043】
このように、アクセプタ型不純物がドーピングされたゲート層22の存在によってゲート層22の直下の領域で2DEG20が消滅している。その結果、トランジスタのノーマリーオフ動作が実現される。ゲート電極24に適切なオン電圧が印加されると、ゲート電極24の直下の領域における電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成されるため、ソース-ドレイン間が導通する。
【0044】
ゲート電極24は、1つまたは複数の金属層によって構成されている。ゲート電極24は、一例では窒化チタン(TiN)層である。あるいは、ゲート電極24は、Tiを含む材料によって形成された第1金属層と、第1金属層上に積層され、TiNを含む材料によって形成された第2金属層とによって構成されていてもよい。ゲート電極24は、ゲート層22とショットキー接合を形成することができる。ゲート電極24は、平面視でゲート層22よりも小さい領域に形成され得る。ゲート電極24の厚さは、たとえば、50nm以上200nm以下である。
【0045】
パッシベーション層26は、電子供給層18上に形成されている。パッシベーション層26は、電子供給層18の上面18Aを覆っているともいえる。パッシベーション層26は、たとえば窒化シリコン(SiN)、二酸化シリコン(SiO)、酸窒化シリコン(SiON)、アルミナ(Al)、AlN、および酸窒化アルミニウム(AlON)のうちいずれか1つを含む材料によって構成され得る。一例では、パッシベーション層26は、SiNを含む材料によって形成されている。パッシベーション層26のうちゲート層22およびゲート電極24を覆う部分は、ゲート層22およびゲート電極24の上面に沿って形成されているため、非平坦な上面を有する。パッシベーション層26は、たとえば、200nm以下の厚さを有する。ここで、パッシベーション層26の厚さは、たとえば、電子供給層18に接する部分の厚さであってよいし、ゲート電極24の上面に接する部分の厚さであってもよい。
【0046】
ソース電極28およびドレイン電極30は、電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22を挟むように配置されている。電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22、ソース電極28およびドレイン電極30は、X軸方向に並んでいる。
【0047】
ソース電極28およびドレイン電極30は、1つまたは複数の金属層によって構成され得る。たとえば、ソース電極28およびドレイン電極30は、Ti層、TiN層、Al層、AlSiCu層、およびAlCu層等を含む群から選択された2つ以上の金属層の組み合わせによって構成され得る。ソース電極28の少なくとも一部は、第1開口部26A内に充填されており、第1開口部26Aを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触している。同様に、ドレイン電極30の少なくとも一部は、第2開口部26B内に充填されており、第2開口部26Bを介して電子供給層18直下の2DEG20とオーミック接触している。
【0048】
上で述べたとおり、ソース電極28は、絶縁体層60内に形成された配線(図示略)を介して、ソースパッド71に電気的に接続されている。ドレイン電極30は、絶縁体層60内に形成された配線(図示略)を介して、ドレインパッド72に電気的に接続されている。ゲート電極24は、絶縁体層60内に形成された配線(図示略)を介して、ゲートパッド73に電気的に接続されている。また、絶縁体層60は、パッシベーション層26、ソース電極28、およびドレイン電極30の上に形成されている。絶縁体層60は、パッシベーション層26、ソース電極28、およびドレイン電極30を覆っているともいえる。
【0049】
(トランジスタの平面構造)
次に、図3を参照して、トランジスタ51の平面構造について説明する。図3では、パッシベーション層26、ソース電極28の図示は省略されており、パッシベーション層26の第1開口部26Aおよび第2開口部26Bが破線で描かれている。
【0050】
トランジスタ51は、アクティブ領域内において、トランジスタ動作に寄与する第1アクティブ領域と、トランジスタ動作に寄与しない第2アクティブ領域(図示略)を有する。一例では、第1アクティブ領域と第2アクティブ領域とは、Y軸方向に交互に配置されている。
【0051】
トランジスタ51の第1アクティブ領域において、ソース電極28(図4参照)と、ゲート電極24と、ドレイン電極30とは電子供給層18(図4参照)上でX軸方向に隣り合って配置されている。X軸方向に隣り合うソース電極28、ゲート電極24、およびドレイン電極30の組み合わせは、1つのHEMTセル51HCを構成する。図3の例では、アクティブ領域において、X方向に2つのHEMTセル51HCが配置されている。なお、実際には、より多くのHEMTセル51HCが各アクティブ領域に配置され得る。HEMTセル51HCの数は特に限定されるものでなく、単数であってもよいし、複数であってもよい。チップ101は、同一基板上に形成された複数のトランジスタ51(HEMTセル51HC)を有していてもよい。
【0052】
[半導体モジュールの各部位の厚さの詳細]
図2および図4を参照して、半導体モジュール100の各部位の厚さについて記載する。
【0053】
図2に示すように、半導体モジュール100の厚さT1は、たとえば、900μm以上である。半導体モジュール100の厚さT1は、たとえば、1500μm以下である。
チップ101の厚さT2は、たとえば、80μm以上である。チップ101の厚さT2は、たとえば、140μm以下である。
【0054】
窒化物半導体層50の上面(電子供給層18の上面18A)からモジュール上面100sまでの距離を厚さT3とする。厚さT3は、たとえば、400μm以上である。厚さT3は、たとえば、550μm以下である。
【0055】
図4に示すように、チップ101の半導体基板12の厚さT4は、100μm以下である。半導体基板12の厚さT4は、80μm以下であってもよい。また、半導体基板12の厚さT4は、たとえば、60μm以上である。
【0056】
半導体基板12の厚さT4の一例は、窒化物半導体層50の上面(電子供給層18の上面18A)からモジュール上面100sまでの距離である厚さT3よりも薄い。厚さT3に対する半導体基板12の厚さT4の比率(T4/T3)は、たとえば、0.25以下である。また、厚さT3と半導体基板12の厚さT4との差(T3-T4)は、たとえば、480μm以上である。
【0057】
図4に示すように、窒化物半導体層50を構成する電子走行層16の厚さT5は、たとえば、1.2μm以上である。電子走行層16の厚さT5は、たとえば、6μm以下である。窒化物半導体層50の一例は、n型GaNで形成されている半導体基板12の上に電子走行層16が形成されるとともに、半導体基板12と電子走行層16との間にバッファ層等の中間層が介在していない。この場合、電子走行層16を厚く形成すること、たとえば、厚さT5を1200μm以上にすることにより、電子走行層16に発生している2DEG20と半導体基板12との間の絶縁性を確保できる。これにより、電子走行層16を通過して半導体基板12へと流れるリーク電流を抑制できる。
【0058】
半導体基板12と窒化物半導体層50の合計厚さ、すなわち、半導体基板12の基板下面12rから電子供給層18の上面18Aまでの距離D1は、たとえば、106μm以下である。また、距離D1は、たとえば、61μm以上である。
【0059】
図2に示すように、放熱部材103の厚さT6は、たとえば、150μm以下である。放熱部材103の厚さは、たとえば、100μm以上である。放熱部材103の厚さT6を薄くすること、たとえば、150μm以下にすることにより、放熱部材103の放熱性が向上する。一例の放熱部材103の厚さT6は、半導体基板12の厚さT4よりも厚い。また、別の一例の放熱部材103の厚さT6は、半導体基板12の厚さT4よりも薄い。
【0060】
半導体モジュール100の厚さ方向において、チップ101のチップ下面101rは、半導体モジュール100のモジュール上面100sよりもモジュール下面100rに近い位置に配置されている。換言すると、チップ下面101rとモジュール下面100rとの間の距離D2は、チップ下面101rとモジュール上面100sとの間の距離D3よりも短い。
【0061】
[作用]
次に、実施形態の半導体モジュール100の作用を説明する。
半導体モジュール100は、トランジスタ51を含むチップ101を備えている。チップ101は、基板上面12sおよび基板下面12rを有する半導体基板12と、基板上面12sの上に形成されるとともにGaNにより形成されている電子走行層16および電子供給層18とを備える。トランジスタ51は、電子走行層16および電子供給層18と、電子供給層18の上に形成されているゲート電極24、ソース電極28、およびドレイン電極30とを含んで構成されている。
【0062】
上記構成のチップ101の場合、トランジスタ51から発生した熱は、半導体基板12を経由して外部へ放熱される。詳述すると、半導体モジュール100は、半導体基板12の基板下面12rに接合されるとともに、モジュール下面100rに露出する放熱部材103を備えている。トランジスタ51から発生した熱は、半導体基板12および放熱部材103を経由して半導体モジュール100のモジュール下面100rから外部へ放熱される。したがって、半導体モジュール100は、片面放熱型のモジュールといえる。
【0063】
ここで、チップ101は、半導体基板12として、GaN基板、すなわち、半導体基板12の上に形成される電子走行層16および電子供給層18と同種の材料により構成される基板を用いている。これにより、その他の基板を用いた従来構造と比較して、半導体基板12の厚さを薄くできる。具体的には、半導体基板12の厚さを100μm以下にできる。
【0064】
詳述すると、半導体基板12を構成する材料と、その上に形成される電子走行層16および電子供給層18を構成する材料とが異種材料である場合、両材料の線膨張係数の差に起因して、チップ101を反らせようとする応力が発生する。そのため、半導体基板には、上記応力に抗する強度を確保できる厚さが必要になる。たとえば、Si基板を用いた場合には、Si基板の厚さを200μm以上にする必要がある。
【0065】
一方、半導体基板12を構成する材料と、その上に形成される電子走行層16を構成する材料とが共に同種材料(GaN系材料)である場合、両材料の線膨張係数の差が小さくなる、または線膨張係数の差が無くなる。そのため、線膨張係数の差に起因する、チップ101を反らせようとする応力が小さくなる、または当該応力が発生しなくなる。これにより、半導体基板12に要求される強度を低くできる。その結果、相対的に強度の低い半導体基板12、すなわち、厚さが100μm以下である半導体基板12を用いることが可能になる。
【0066】
そして、厚さが100μm以下である薄い半導体基板12を用いることにより、半導体基板12の厚さ方向に熱が流れる際の熱抵抗を小さくできる。これにより、チップ101において、トランジスタ51から発生した熱が半導体基板12を経由して外部へ放熱される際の熱抵抗が小さくなる。その結果、半導体モジュール100の放熱性が向上する。
【0067】
また、従来構成の半導体基板に用いられているSiの熱伝導率は、1.5W/cm・Kである。これに対して、GaNの熱伝導率は、2W/cm・Kであり、Siの熱伝導率よりも高い。そのため、GaN基板を用いた場合には、Si基板を用いた場合と比較して、半導体基板12を構成する材料の熱伝導率が高くなることに基づく放熱性の向上効果も得られる。
【0068】
参考として、半導体基板12としてGaN基板を用いたチップ101の熱抵抗と、Si基板を用いたチップ101の熱抵抗をシミュレートにより比較した。熱抵抗は、電子供給層18の上面18Aにおける特定の第1点と、半導体基板12の基板下面12rにおける特定の第2点との間の熱抵抗を求めた。まず、厚さ200μmのSi基板を用いるとともに、平面視における面積が10mmであるチップ101を含む半導体モジュールの第1モデルを構築し、その熱抵抗を算出した。次に、厚さ80μmのGaN基板を用いた点を除いて第1モデルと同じ構成である第2モデルを構築し、その熱抵抗を算出した。その結果、Si基板を用いた第1モデルの熱抵抗は、0.13℃/Wであった。これに対して、GaN基板を用いた第2モデルの熱抵抗は、0.04℃/Wであり、第1モデルの熱抵抗の1/3以下になった。
【0069】
[効果]
第1実施形態の半導体モジュール100によれば、以下の効果が得られる。
(1-1)
半導体モジュール100は、トランジスタ51を含むチップ101を備えている。チップ101は、半導体基板12と、半導体基板12の上に形成され、GaNによって構成された電子走行層16と、電子走行層16の上に形成され、GaNによって構成された電子供給層18とを備えている。トランジスタ51は、電子供給層18の上に形成されたゲート電極24、ソース電極28、およびドレイン電極30を含んで構成されている。半導体基板12は、100μm以下の厚さを有するGaN基板である。
【0070】
上記構成によれば、半導体基板12として、GaN基板を用いたことにより、半導体基板12の厚さを100μm以下にできる。これにより、トランジスタ51から発生した熱が半導体基板12を経由して外部へ放熱される際の熱抵抗が小さくなる。その結果、半導体モジュール100の放熱性が向上する。半導体モジュール100の放熱性が向上することにより、チップ101の発熱量が小さくなる。これにより、トランジスタ51に流すことのできるドレイン電流の上限(許容電流)を大きくすることが可能になる。
【0071】
(1-2)
また、半導体基板12がGaN基板である場合、バッファ層を介することなく、半導体基板12の上に、GaN層である電子走行層16および電子供給層18をエピタキシャル成長により形成できる。たとえば、半導体基板12の基板上面12sに接して電子供給層18が形成されている。
【0072】
この場合、バッファ層が省略されることにより、電子供給層18の上面18Aから半導体基板12までの距離を短くできる。これにより、トランジスタ51から発生した熱が電子走行層16、および半導体基板12を経由して外部へ放熱される放熱経路を短くできる。この点においても、トランジスタ51から発生した熱が上記放熱経路を通じて外部へ放熱される際の熱抵抗が小さくなる。その結果、半導体モジュール100の放熱性が更に向上する。
【0073】
なお、n型GaNで形成されている半導体基板12の上に、バッファ層を介することなく電子走行層16を配置する場合、2DEG20と半導体基板12との間の絶縁性を確保するために、アンドープのGaNで形成されている電子走行層16を厚く形成することがある。この場合においても、電子走行層16の厚さの増加分よりも、バッファ層が省略されることによる厚さの減少分の方が大きいため、バッファ層を有する構成と比較して、電子供給層18の上面18Aから半導体基板12までの距離を短くできる。
【0074】
(1-3)
チップ101は、複数のトランジスタ51(HEMTセル51HC)を備えている。トランジスタ51の各々は、ゲート電極24、ソース電極28、およびドレイン電極30が電子供給層18の上に形成されている横型トランジスタである。横型トランジスタであるトランジスタ51は、複数を密集させて配置することによるチップ101の小型化を図ることができるが、隣接するトランジスタ51の各々から発生する熱が互いに干渉することによりチップ101の発熱量が大きくなりやすい。そのため、複数のトランジスタ51を備えるチップ101に、100μm以下の厚さを有するGaN基板を用いることは特に有効である。
【0075】
(1-4)
半導体モジュール100は、チップ101を覆う封止部材104を含む。半導体モジュール100は、基板上面12sと同じ側を向くモジュール上面100sと、基板下面12rと同じ側を向くモジュール下面100rとを有する。半導体基板12の厚さT4は、電子供給層18の上面18Aからモジュール上面100sまでの距離である厚さT3よりも薄い。この場合、半導体基板12の厚さT4が薄いことにより、トランジスタ51、特に、電子供給層18の付近から発生した熱が半導体基板12を経由して外部へ放熱される際の熱抵抗が更に小さくなる。
【0076】
(1-5)
半導体基板12の厚さ方向において、チップ101のチップ下面101rは、半導体モジュール100のモジュール上面100sよりもモジュール下面100rに近い位置に配置されている。この場合、トランジスタ51から発生した熱を、半導体基板12を経由してモジュール下面100rから放熱する片面放熱の経路を短くできる。これにより、トランジスタ51から発生した熱が半導体基板12を経由して外部へ放熱される際の熱抵抗が更に小さくなる。
【0077】
(1-6)
トランジスタ51は、電子供給層18上に形成され、アクセプタ型不純物を含むGaNによって構成されたゲート層22を備える。ゲート電極24は、ゲート層22の上に形成されている。すなわち、トランジスタ51は、ノーマリーオフ型である。この場合、ゲート電極24に電圧を印加していないゼロバイアス時において、ゲート層22の直下の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されない。一方、ゲート層22の直下の領域以外の領域における電子走行層16には、2DEG20が形成されている。ゲート電極24にオン電圧が印加されると、ゲート電極24の直下の領域における電子走行層16に2DEG20によるチャネルが形成される。
【0078】
ここで、ゲート電極24にオン電圧が印加された場合に、電子走行層16におけるゲート層22の直下の領域に発生する2DEG20は、ゲート層22の直下の領域以外の領域に発生する2DEG20よりも少なくなる。そのため、電子走行層16におけるゲート層22の直下の領域は、ゲート層22の直下の領域以外の領域と比較して、抵抗が大きくなる結果、発熱量が大きくなる。したがって、チップ101が備えるトランジスタ51が、ゲート層22を有するノーマリーオフ型である場合、ゲート層22を有さないノーマリーオン型である場合と比較して、チップ101の発熱量が大きくなりやすい。そのため、ノーマリーオフ型のトランジスタ51を備えるチップ101に、100μm以下の厚さを有するGaN基板を用いることは特に有効である。
【0079】
<第2実施形態>
第2実施形態の半導体モジュール200は、制御回路を含む点が第1実施形態と異なる。その他の構成については、第1実施形態と同様である。以下では、第1実施形態と同様な構成要素については説明を省略し、第1実施形態と異なる構成要素について説明する。
【0080】
図5は、第2実施形態に係る例示的な半導体モジュール100の概略平面図である。
[半導体モジュールの概略構造]
図5に示すように、半導体モジュール200は、モジュール上面200sと、モジュール上面200sと反対側を向くモジュール下面(図示略)とを含む。
【0081】
半導体モジュール200は、トランジスタ51を含むチップ101と、チップ101に電気的に接続される第1導電端子102Aおよび第2導電端子102Bと、放熱部材103とを含む。これらの各構成は、第1実施形態と同様である。
【0082】
半導体モジュール200は、制御回路を含む制御チップ201と、制御チップ201に電気的に接続される複数の第4導電端子102Eと、制御用放熱部材202と、チップ101および制御チップ201を封止する封止部材203とを更に含む。
【0083】
第4導電端子102Eは、封止部材203からモジュール下面に部分的に露出する外部接続面(それぞれの下面)を有している。第4導電端子102Eを形成する材料としては、第1導電端子102Aを形成する材料と同様の材料が挙げられる。
【0084】
制御チップ201は、モジュール上面200sと同じ側を向くチップ上面201sを含む。制御チップ201は、チップ上面201sに形成されている第1電極パッド81および複数の第2電極パッド82を備えている。第1電極パッド81は、ワイヤ81Aを介してチップ101のゲートパッド73の上面に接合されている。複数の第2電極パッド82の各々は、ワイヤ82Aを介してそれぞれ異なる第4導電端子102Eに接合されている。第1電極パッド81および第2電極パッド82を形成する材料としては、電極パッド70を形成する材料と同様の材料が挙げられる。ワイヤ81A,82Aを形成する材料としては、ワイヤ102Dを形成する材料と同様の材料が挙げられる。
【0085】
制御用放熱部材202は、制御チップ201のチップ下面に対して取り付けられている。チップ下面に対する制御用放熱部材202の取り付け方法は、特に限定されない。制御用放熱部材202の取り付け方法としては、放熱部材103について記載した方法と同様の方法が挙げられる。制御用放熱部材202は、封止部材203からモジュール下面に部分的に露出する露出面(図示略)を含む。制御用放熱部材202を形成する材料としては、放熱部材103を形成する材料と同様の材料が挙げられる。
【0086】
封止部材203は、半導体モジュール200のパッケージ外形を画定し得る。封止部材203は、チップ101および制御チップ201とともに、第1導電端子102Aの一部、第2導電端子102Bの一部、第4導電端子102Eの一部、放熱部材103の一部、および制御用放熱部材202の一部を封止する。封止部材203を形成する材料としては、封止部材104を形成する材料と同様の材料が挙げられる。
【0087】
制御チップ201の制御回路は、トランジスタ51を駆動する駆動信号を生成する。駆動信号は、トランジスタ51のゲート電極24に印加される。制御回路は、トランジスタ51をオンオフ制御する。
【0088】
[効果]
第2実施形態の半導体モジュール200は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様の効果を奏する。
【0089】
<第3実施形態>
第3実施形態の半導体モジュール300は、ブリッジ回路を有するブリッジモジュールとして具体化されている点が第2実施形態と異なる。本実施形態では、一例として、ハーフブリッジ回路を有するハーフブリッジモジュールとして具体化された半導体モジュール300について説明する。
【0090】
[半導体モジュールの回路構成]
図6は、半導体モジュール300の概略回路図である。半導体モジュール300は、ハーフブリッジ回路301と制御回路Cとを含む。ハーフブリッジ回路301は、第1トランジスタ302と、第2トランジスタ303とを含む。制御回路Cは、第1トランジスタ302および第2トランジスタ303の駆動を制御する。
【0091】
第1トランジスタ302と第2トランジスタ303とは互いに直列に接続されている。第1トランジスタ302は、ハーフブリッジ回路301のハイサイドトランジスタ(制御用トランジスタ)として機能し、第2トランジスタ303は、ハーフブリッジ回路301のローサイドトランジスタ(同期整流用トランジスタ)として機能する。
【0092】
ハイサイドトランジスタとして設けられた第1トランジスタ302は、ソース端子302S、ドレイン端子302D、およびゲート端子302Gを含み、ドレイン端子302Dは入力端子T10に接続され、ソース端子302Sは出力端子T20に接続されている。入力端子T10には、入力電圧VINが印加される。
【0093】
ローサイドトランジスタとして設けられた第2トランジスタ303は、ソース端子303S、ドレイン端子303D、およびゲート端子303Gを含み、ドレイン端子303Dは出力端子T20に接続され、ソース端子303SはグランドGNDに接続されている。したがって、第1トランジスタ302と第2トランジスタ303とは、入力端子T10とグランドGNDとの間に直列に接続されており、第1トランジスタ302と第2トランジスタ303との間の接続ノードが出力端子T20に接続されている。
【0094】
制御回路Cは、ハイサイドドライバ310およびローサイドドライバ320を含む。ハイサイドドライバ310は、第1トランジスタ302を駆動するハイサイド制御信号VGHを生成する。ハイサイド制御信号VGHは、第1トランジスタ302のゲート端子302Gに印加される。ローサイドドライバ320は、第2トランジスタ303を駆動するローサイド制御信号VGLを生成する。ローサイド制御信号VGLは、第2トランジスタ303のゲート端子303Gに印加される。
【0095】
制御回路Cは、ハイサイド制御信号VGHとローサイド制御信号VGLとに基づいて第1トランジスタ302と第2トランジスタ303とを相補にオンオフ制御して出力端子T20にスイッチ電圧VSWを生成する。なお、出力端子T20には、たとえばコイルおよびインダクタなどを含む図示しない負荷回路が接続されている。
【0096】
第1トランジスタ302がオン状態、第2トランジスタ303がオフ状態にあるとき、第1トランジスタ302を介して入力端子T10から負荷回路(出力端子T20)に向けてスイッチ電流ISWが流れ、入力電圧VINに基づくスイッチ電圧VSWが出力端子T20に出力される。第1トランジスタ302がオフ状態、第2トランジスタ303がオン状態にあるとき、第2トランジスタ303を介して負荷回路(出力端子T20)からグランドGNDに向けてスイッチ電流ISWが流れ、スイッチ電圧VSWが0Vに引き下げられる。
【0097】
[半導体モジュールの概略構造]
図7に示すように、半導体モジュール300は、モジュール上面300sと、モジュール上面300sと反対側を向くモジュール下面(図示略)とを含む。
【0098】
半導体モジュール300は、第1トランジスタ302および第2トランジスタ303を含むチップ331と、チップ331に電気的に接続される第5導電端子332A、第6導電端子332B、および第7導電端子332Cと、チップ331に接合される放熱部材335とを含む。半導体モジュール300は、制御回路Cを含む制御チップ333と、制御チップ333に電気的に接続される複数の第8導電端子332Dと、制御用放熱部材202と、チップ331および制御チップ333を封止する封止部材337とを更に含む。理解を容易にするために、図7において、封止部材337は、その外形線のみを図示している。
【0099】
チップ331は、モジュール上面300sと同じ側を向くチップ上面331sを含む。チップ331の平面視における形状、換言すると平面視におけるチップ上面331sの形状は、たとえば、矩形状である。チップ331は、半導体基板12と、窒化物半導体層50(図8参照)と、第1トランジスタ302(図8参照)および第2トランジスタ303(図8参照)と、絶縁体層60(図示略)と、電極パッド370と、下面電極80とを含む。半導体基板12、下面電極80(図8参照)、および絶縁体層60は、第1実施形態と同様である。窒化物半導体層50の詳細は、後述する。
【0100】
電極パッド370は、チップ上面331sに形成されている。電極パッド370は、単数又は複数のソースパッド371H、単数又は複数のドレインパッド372H、および単数又は複数のゲートパッド373Hを含む。ソースパッド371Hは、第1トランジスタ302の後述するソース電極28Hに電気的に接続されている。ドレインパッド372Hは、第1トランジスタ302の後述するドレイン電極30Hに電気的に接続されている。ゲートパッド373Hは、第1トランジスタ302の後述するゲート電極24Hに電気的に接続されている。
【0101】
また、電極パッド370は、単数又は複数のソースパッド371L、単数又は複数のドレインパッド372L、および単数又は複数のゲートパッド373Lを含む。ソースパッド371Lは、第2トランジスタ303の後述するソース電極28Lに電気的に接続されている。ドレインパッド372Lは、第2トランジスタ303の後述するドレイン電極30Lに電気的に接続されている。ゲートパッド373Lは、第2トランジスタ303の後述するゲート電極24Lに電気的に接続されている。電極パッド370を形成する材料は、第1実施形態の電極パッド70を形成する材料と同様である。
【0102】
図7に示す一例では、チップ331は、複数のソースパッド371Hと、複数のドレインパッド372Hと、ゲートパッド373Hと、複数のソースパッド371Lと、複数のドレインパッド372Lと、ゲートパッド373Lとを含む。
【0103】
複数のソースパッド371Hおよび複数のドレインパッド372Hの各々は、Y軸方向に延びる矩形状に形成されるとともに、チップ上面331sにおける+Y軸方向側の領域において、X軸方向に交互に並ぶように配置されている。ゲートパッド373Hは、複数のソースパッド371Hおよび複数のドレインパッド372Hよりもチップ上面331sの外周に近い位置に配置されている。詳述すると、ゲートパッド373Hは、-X軸方向の端に配置されているパッド(図7では、ソースパッド371H)の+Y軸方向に間隔をあけて並ぶように配置されている。
【0104】
複数のソースパッド371Lおよび複数のドレインパッド372Lの各々は、Y軸方向に延びる矩形状に形成されるとともに、チップ上面331sにおける-Y軸方向側の領域において、間隔をあけてX軸方向に交互に並ぶように配置されている。また、ソースパッド371Lの各々は、ドレインパッド372Hの-Y軸方向側に間隔をあけて並ぶように配置されている。ドレインパッド372Lの各々は、ソースパッド371Hの-Y軸方向側に間隔をあけて並ぶように配置されている。ゲートパッド373Lは、複数のソースパッド371Lおよび複数のドレインパッド372Lよりもチップ上面331sの外周に近い位置に配置されている。詳述すると、ゲートパッド373Lは、-X軸方向の端に配置されているパッド(図7では、ドレインパッド372L)の-Y軸方向に間隔をあけて並ぶように配置されている。
【0105】
第5導電端子332A、第6導電端子332B、および第7導電端子332Cは、チップ331の電極パッド370に電気的に接続されている。詳述すると、第5導電端子332Aは、導電性接合材(図示略)を介してドレインパッド372Hの上面に接合されている。第6導電端子332Bは、導電性接合材(図示略)を介してソースパッド371Lの上面に接合されている。第7導電端子332Cは、導電性接合材(図示略)を介してソースパッド371Hの上面およびドレインパッド372Lの上面の両方に接合されている。
【0106】
第5導電端子332A、第6導電端子332B、および第7導電端子332Cの各々は、たとえば、ブリッジ形状を有している。第5導電端子332A、第6導電端子332B、および第7導電端子332Cの各々は、封止部材337からモジュール下面に部分的に露出する外部接続面(それぞれの下面)を有している。第5導電端子332Aの外部接続面は、図6における入力端子T10に相当する。第6導電端子332Bの外部接続面は、図6におけるグランドGNDに相当する。第7導電端子332Cの外部接続面は、図6における出力端子T20に相当する。
【0107】
制御チップ333は、モジュール上面300sと同じ側を向くチップ上面333sを含む。制御チップ333の平面視における形状、換言すると平面視におけるチップ上面333sの形状は、たとえば、矩形状である。
【0108】
制御チップ333は、チップ上面333sに形成されている第3電極パッド335A、第4電極パッド335B、および複数の第5電極パッド335Cを備えている。第3電極パッド335Aは、ワイヤ336Aを介してチップ331のゲートパッド373Hの上面に接合されている。第4電極パッド335Bは、ワイヤ336Bを介してチップ331のゲートパッド373Lの上面に接合されている。複数の第5電極パッド335Cの各々は、ワイヤ336Cを介してそれぞれ異なる複数の第8導電端子332Dに接合されている。複数の第8導電端子332Dの各々は、封止部材337からモジュール下面に部分的に露出する外部接続面(それぞれの下面)を有している。
【0109】
(第1トランジスタおよび第2トランジスタの概略構造)
図8は、第1トランジスタ302および第2トランジスタ303の概略断面図である。
第1トランジスタ302および第2トランジスタ303は、共通の半導体基板12と、半導体基板12上に形成された共通の窒化物半導体層50とを含む。窒化物半導体層50は、半導体基板12の基板上面12s上にエピタキシャル成長されている。窒化物半導体層50は、半導体基板12上に形成された電子走行層16と、電子走行層16上に形成された電子供給層18とを含む。半導体基板12および窒化物半導体層50は、第1実施形態と同様である。
【0110】
第1トランジスタ302は、電子供給層18の上に形成されたゲート層22Hと、ゲート層22H上に形成されたゲート電極24Hとを含む。第2トランジスタ303は、電子供給層18の上に形成されたゲート層22Lと、ゲート層22L上に形成されたゲート電極24Lとを含む。
【0111】
第1トランジスタ302および第2トランジスタ303は、パッシベーション層26を含む。パッシベーション層26は、電子供給層18、ゲート層22H,22L、およびゲート電極24H,24Lの上に形成されるとともに、第1開口部26AH、26ALおよび第2開口部26BH,26BLを含む。
【0112】
第1開口部26AH、26ALおよび第2開口部26BH,26BLは、+X方向に向かって、第1開口部26AL、第2開口部26BL、第1開口部26AH、第2開口部26BHの順で間隔をあけて配置されている。一例では、X方向において、第1開口部26ALと第2開口部26BLとの間の距離は、第1開口部26AHと第2開口部26BHとの間の距離と等しい。第2開口部26BLと第1開口部26AHとの間の距離は、第1開口部26ALと第2開口部26BLとの間の距離および第1開口部26AHと第2開口部26BHとの間の距離よりも短い。
【0113】
第1トランジスタ302は、第1開口部26AHを介して電子供給層18の上面18Aに接するソース電極28Hと、第2開口部26BHを介して電子供給層18の上面18Aに接するドレイン電極30Hとを含む。第1トランジスタ302のゲート層22Hは、パッシベーション層26の第1開口部26AHと第2開口部26BHとの間に位置しており、第1開口部26AHおよび第2開口部26BHの各々から離間している。ソース電極28Hおよびドレイン電極30Hは、電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22Hを挟むように配置されている。電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22H、ソース電極28Hおよびドレイン電極30Hは、X軸方向に並んでいる。第1トランジスタ302の構成の詳細は、第1実施形態のトランジスタ51と同様である。ソース電極28Hは、ソースパッド371Hに電気的に接続されている。ドレイン電極30Hは、ドレインパッド372Hに電気的に接続されている。ゲート電極24Hは、ゲートパッド373Hに電気的に接続されている。
【0114】
第2トランジスタ303は、第1開口部26ALを介して電子供給層18の上面18Aに接するソース電極28Lと、第2開口部26BLを介して電子供給層18の上面18Aに接するドレイン電極30Lとを含む。第2トランジスタ303のゲート層22Lは、パッシベーション層26の第1開口部26ALと第2開口部26BLとの間に位置しており、第1開口部26ALおよび第2開口部26BLの各々から離間している。ソース電極28Lおよびドレイン電極30Lは、電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22Lを挟むように配置されている。電子供給層18の上面18Aにおいて、ゲート層22L、ソース電極28Lおよびドレイン電極30Lは、X軸方向に並んでいる。ソース電極28Lは、ソースパッド371Lに電気的に接続されている。ドレイン電極30Lは、ドレインパッド372Lに電気的に接続されている。ゲート電極24Lは、ゲートパッド373Lに電気的に接続されている。
【0115】
[効果]
第3実施形態の半導体モジュール300は、第1実施形態の半導体モジュール100と同様の効果を奏する。また、第3実施形態の半導体モジュール300によれば、以下の効果が得られる。
【0116】
(3-1)
チップ331は、複数のトランジスタ(第1トランジスタ302および第2トランジスタ303)を用いて構成されているブリッジ回路を含む。ブリッジ回路の一例は、互いに直列に接続された第1トランジスタ302(ハイサイドトランジスタ)と第2トランジスタ303(ローサイドトランジスタ)を備えるハーフブリッジ回路301である。半導体モジュール300は、複数のトランジスタ(第1トランジスタ302および第2トランジスタ303)をオンオフ制御する制御回路Cを含む。
【0117】
ブリッジ回路の場合、高周波動作させるため、およびチップ331の小型化のために、複数のトランジスタを近接させて配置することになる。そのため、隣接する複数のトランジスタの各々から発生する熱が互いに干渉することによりチップ331の発熱量が大きくなりやすい。そのため、ブリッジ回路を備えるチップ101に、100μm以下の厚さを有するGaN基板を用いることは特に有効である。
【0118】
<変更例>
上記各実施形態は例えば以下のように変更できる。上記各実施形態と以下の各変更例は、技術的な矛盾が生じない限り、互いに組み合せることができる。なお、以下の変更例において、上記各実施形態と共通する部分については、上記各実施形態と同一の符号を付してその説明を省略する。
【0119】
・トランジスタ51は、ゲート層22を有さないノーマリーオン型であってもよい。第1トランジスタ302および第2トランジスタ303についても同様である。
本開示で使用される「~上に」という用語は、文脈によって明らかにそうでないことが示されない限り、「~上に」と「~の上方に」との双方の意味を含む。したがって、「第1層が第2層上に形成される」という表現は、或る実施形態では第1層が第2層に接触して第2層上に直接配置され得るが、他の実施形態では第1層が第2層に接触することなく第2層の上方に配置され得ることが意図される。すなわち、「~上に」という用語は、第1層と第2層との間に他の層が形成される構造を排除しない。
【0120】
本開示で使用されるZ方向は必ずしも鉛直方向である必要はなく、鉛直方向に完全に一致している必要もない。したがって、本開示による種々の構造は、本明細書で説明されるZ方向の「上」および「下」が鉛直方向の「上」および「下」であることに限定されない。たとえば、X軸方向が鉛直方向であってもよく、またはY軸方向が鉛直方向であってもよい。
【0121】
本開示における「第1」、「第2」、「第3」等の用語は、単に対象物を区別するために用いられており、対象物を順位づけするものではない。
<付記>
本開示から把握できる技術的思想を以下に記載する。なお、限定する意図ではなく理解の補助のために、付記に記載される構成要素には、実施形態中の対応する構成要素の参照符号が付されている。参照符号は、理解の補助のために例として示すものであり、各付記に記載された構成要素は、参照符号で示される構成要素に限定されるべきではない。
【0122】
[付記1]
トランジスタ(51,302、303)を含むチップ(101、331)を備え、
前記チップ(101、331)は、
基板上面(12s)、および前記基板上面(12s)と反対側を向く基板下面(12r)を有する半導体基板(12)と、
前記半導体基板(12)の前記基板上面(12s)の上に形成され、GaNによって構成された電子走行層(16)と、
前記電子走行層(16)の上に形成され、前記電子走行層(16)よりも大きなバンドギャップを有するGaNによって構成された電子供給層(18)と、を備え、
前記トランジスタ(51,302、303)は、前記電子供給層(18)の上に形成されたゲート電極(24)、ソース電極(28)、およびドレイン電極(30)を含み、
前記半導体基板(12)は、100μm以下の厚さを有するGaN基板である、窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0123】
[付記2]
前記チップ(101、331)は、複数の前記トランジスタ(51,302、303)を含む、付記1に記載の窒化物半導体モジュール。
【0124】
[付記3]
前記チップ(101、331)を覆う封止部材(26,203)を含み、
前記封止部材(26,203)により形成され、前記基板上面(12s)と同じ側を向くモジュール上面(100s,200s,300s)と、前記基板下面(12r)と同じ側を向くモジュール下面(100r,200r,300r)とを有し、
前記半導体基板(12)の厚さ(T4)は、前記電子供給層(18)の上面(18A)から前記モジュール上面(100s,200s,300s)までの距離(T3)よりも薄い、付記1または付記2に記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0125】
[付記4]
前記チップ(101、331)を覆う封止部材(26,203)を含み、
前記封止部材(26,203)により形成され、前記基板上面(12s)と同じ側を向くモジュール上面(100s,200s,300s)と、前記基板下面(12r)と同じ側を向くモジュール下面(100r,200r,300r)とを有し、
前記半導体基板(12)の厚さ方向において、前記チップ(101、331)のチップ下面(101r、331r)は、前記モジュール上面(100s,200s,300s)よりも前記モジュール下面(100r,200r,300r)に近い位置に配置されている、付記1~3のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0126】
[付記5]
前記チップ(101、331)を覆う封止部材(26,203)を含み、
前記封止部材(26,203)により形成され、前記基板上面(12s)と同じ側を向くモジュール上面(100s,200s,300s)と、前記基板下面(12r)と同じ側を向くモジュール下面(100r,200r,300r)とを有し、
前記基板下面(12r)に取り付けられ、前記モジュール下面(100r,200r,300r)に露出する放熱部材(103)を備える、付記1~4のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0127】
[付記6]
前記放熱部材(26,203)は、150μm以下の厚さを有する、付記5に記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0128】
[付記7]
前記電子走行層(16)は、GaN層であり、
前記電子供給層(18)は、AlGaN層である、付記1~6のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール。
【0129】
[付記8]
前記トランジスタ(51,302、303)は、前記電子供給層(18)上に形成され、アクセプタ型不純物を含むGaNによって構成されたゲート層(22)を備え、
前記ゲート電極(24)は、前記ゲート層(22)の上に形成されている、付記1~7のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0130】
[付記9]
前記電子走行層(16)は、GaN層であり、
前記電子供給層(18)は、AlGaN層であり、
前記ゲート層(22)は、前記アクセプタ型不純物を含むGaN層である、付記8に記載の窒化物半導体モジュール(100,200,300)。
【0131】
[付記10]
前記トランジスタ(51,302、303)をオンオフ制御する制御回路(C1,C2)を備える、付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール(200,300)。
【0132】
[付記11]
前記チップ(101、331)は、複数の前記トランジスタ(51,302、303)を含み、
複数の前記トランジスタ(302、303)を用いて構成されているブリッジ回路(301)を含む、付記1~9のいずれか1つに記載の窒化物半導体モジュール(300)。
【0133】
[付記12]
前記複数のトランジスタ(302、303)は、互いに直列に接続されたハイサイドトランジスタ(302)とローサイドトランジスタ(303)を備えるハーフブリッジ回路(301)を構成し、
前記ハイサイドトランジスタ(302)と前記ローサイドトランジスタ(303)をオンオフ制御する制御回路(C2)を含む、付記11に記載の窒化物半導体モジュール(300)。
【0134】
[付記13]
前記半導体基板(12)の上に形成された窒化物半導体層(50)と、
前記窒化物半導体層(50)を含んで構成された複数のトランジスタ(302、303)と、を備えるチップであって、
複数の前記トランジスタ(302、303)は、互いに直列に接続されたハイサイドトランジスタ(302)とローサイドトランジスタ(303)を備えるハーフブリッジ回路(301)を構成し、
前記半導体基板(12)の厚さ方向に直交するチップ上面(101s)に形成され、前記ハイサイドトランジスタ(302)のソース電極(28H)に電気的に接続されている単数又は複数のソースパッド(371H)、前記ハイサイドトランジスタ(302)のドレイン電極(30H)に電気的に接続されている単数又は複数のドレインパッド(372H)、および前記ハイサイドトランジスタ(302)のゲート電極(24H)に電気的に接続されている単数又は複数のゲートパッド(373H)と、
前記チップ上面(101s)に形成され、前記ローサイドトランジスタ(303)のソース電極(28L)に電気的に接続されている複数のソースパッド(371L)、ローサイドトランジスタ(303)のドレイン電極(30L)に電気的に接続されている複数のドレインパッド(372L)、およびローサイドトランジスタ(303)のゲート電極(24L)に電気的に接続されているゲートパッド(373L)と、を含み、
複数の前記ソースパッド(371H)および複数のドレインパッド(372H)の各々は、前記チップ上面(101s)における第1方向一方側(+Y軸方向側)の領域において、前記チップ上面(101s)における前記第1方向に直交する第2方向(X軸方向)に交互に並ぶように配置され、
複数の前記ソースパッド(371H)および複数の前記ドレインパッド(372H)の各々は、前記チップ上面(101s)における前記第1方向他方側(-Y軸方向側)の領域において、前記チップ上面(101s)における前記第2方向(X軸方向)に交互に並ぶように配置され、
複数の前記ソースパッド(371H)の各々は、前記ドレインパッド(372H)の前記第1方向他方側(-Y軸方向側)に間隔をあけて並ぶように配置され、複数の前記ドレインパッド(372L)の各々は、前記ソースパッド(371H)の前記第1方向他方側(-Y軸方向側)に間隔をあけて並ぶように配置されている、チップ。
【0135】
[付記14]
前記ゲートパッド(373H)は、複数の前記ソースパッド(371H)および複数の前記ドレインパッド(372H)よりも外周に近い位置に配置され、
前記ゲートパッド(373L)は、複数の前記ソースパッド(371L)および複数の前記ドレインパッド(372L)よりも外周に近い位置に配置されている、付記13に記載のチップ。
【0136】
なお、付記13および付記14に記載のチップが備える半導体基板(12)の厚さおよび半導体基板(12)を形成する材料は特に限定されない。
【符号の説明】
【0137】
C…制御回路
D1,D2,D3…距離
T1~T6…厚さ
T10…入力端子
T20…出力端子
12…半導体基板
12r…基板下面
12s…基板上面
16…電子走行層
18…電子供給層
18A…上面
20…二次元電子ガス
22,22H,22L…ゲート層
24,24H,24L…ゲート電極
26…パッシベーション層
26A,26AH,26AL…第1開口部
26B,26BH,26BL…第2開口部
28,28H,28L…ソース電極
30,30H,30L…ドレイン電極
50…窒化物半導体層
51…トランジスタ
51HC…HEMTセル
60…絶縁体層
70…電極パッド
71…ソースパッド
72…ドレインパッド
73…ゲートパッド
80…下面電極
81…第1電極パッド
81A,82A…ワイヤ
82…第2電極パッド
100…半導体モジュール
100r…モジュール下面
100s…モジュール上面
101…チップ
101r…チップ下面
101s…チップ上面
102A…第1導電端子
102B…第2導電端子
102C…第3導電端子
102D…ワイヤ
102E…第4導電端子
103…放熱部材
104…封止部材
200…半導体モジュール
200s…モジュール上面
201…制御チップ
201s…チップ上面
202…制御用放熱部材
203…封止部材
300…半導体モジュール
300s…モジュール上面
301…ハーフブリッジ回路
302…第1トランジスタ
302D,303D…ドレイン端子
302G,303G…ゲート端子
302S,303S…ソース端子
310…ハイサイドドライバ
320…ローサイドドライバ
331…チップ
331s…チップ上面
332A…第5導電端子
332B…第6導電端子
332C…第7導電端子
332D…第8導電端子
333…制御チップ
333s…チップ上面
335…放熱部材
335A…第3電極パッド
335B…第4電極パッド
335C…第5電極パッド
336A,336B,336C…ワイヤ
337…封止部材
370…電極パッド
371H,371L…ソースパッド
372H,372L…ドレインパッド
373H,373L…ゲートパッド
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8