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特開2024-176799車載ユニット用の制御装置及び車載ユニットの制御方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176799
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車載ユニット用の制御装置及び車載ユニットの制御方法
(51)【国際特許分類】
   B62D 6/00 20060101AFI20241212BHJP
   B62D 5/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
B62D6/00
B62D5/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095605
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000001247
【氏名又は名称】株式会社ジェイテクト
(71)【出願人】
【識別番号】000003207
【氏名又は名称】トヨタ自動車株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】▲高▼台 尭資
(72)【発明者】
【氏名】安部 健一
(72)【発明者】
【氏名】梶澤 祐太
(72)【発明者】
【氏名】長谷川 一馬
(72)【発明者】
【氏名】物部 魁士
(72)【発明者】
【氏名】池谷 美香
(72)【発明者】
【氏名】山下 正治
(72)【発明者】
【氏名】飯田 一鑑
(72)【発明者】
【氏名】高山 晋太郎
(72)【発明者】
【氏名】中島 信頼
【テーマコード(参考)】
3D232
3D333
【Fターム(参考)】
3D232CC26
3D232CC38
3D232CC39
3D232DA03
3D232DA15
3D232DA63
3D232DA64
3D232EC37
3D232GG01
3D333CB16
3D333CB30
3D333CB46
3D333CE39
3D333CE41
(57)【要約】
【課題】車載ユニットの異常であるにもかかわらず、警告灯が点灯できない状態の発生を低減することができる車載ユニット用の制御装置及び車載ユニットの制御方法を提供する。
【解決手段】操舵制御装置は、警告灯を有する車両に搭載された操舵装置に適用され、警告灯への点灯要求を出力するように構成されている。操舵制御装置は、CPUと、CPUが実行する処理で使用される情報を記憶するメモリとを含む。CPUは、該当フェールを検出する処理と、該当フェールを検出する場合に検出履歴を履歴情報に書き込みする処理と、点灯要求を出力する処理とを含む。記憶部は、電源オン及び電源オフされたとしても、履歴情報の内容を保持するように構成されている。CPUは、電源オンされるとき、記憶部から読み出した履歴情報の内容に検出履歴が書き込まれている場合、該当フェールを検出できなくても、点灯要求を出力するように構成されている。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
警告灯を有する車両に搭載された車載ユニットに適用され、前記車載ユニットの状態を運転者に通知するべく前記警告灯への点灯要求を出力するように構成された車載ユニット用の制御装置であって、
前記点灯要求の出力にかかる処理を少なくとも実行する制御部と、
前記制御部が実行する処理で使用される情報を少なくとも記憶する記憶部と、を含み、
前記制御部は、
前記車載ユニットの異常を検出するための異常検出処理と、
前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示す検出履歴を前記記憶部の履歴情報に書き込みするための検出結果書き込み処理と、
前記点灯要求を出力するための点灯要求出力処理と、を含み、
前記記憶部は、前記車載ユニットが電源オン及び電源オフされたとしても、前記履歴情報の内容を保持するように構成されており、
前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に前記検出履歴が書き込まれている場合、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出できなくても、前記点灯要求を出力するように構成されている車載ユニット用の制御装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるときの他、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出するとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に書き込まれている前記検出履歴に基づいて、前記点灯要求を出力するように構成されている請求項1に記載の車載ユニット用の制御装置。
【請求項3】
前記異常検出処理は、前記車載ユニットの異常からの復帰を検出する処理を含み、
前記検出結果書き込み処理は、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常からの復帰が検出される場合に前記検出履歴を前記記憶部の前記履歴情報から消去する処理を含み、
前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるときの他、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常からの復帰が検出されるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容から前記検出履歴が消去されている場合、前記点灯要求の出力を停止するように構成されている請求項2に記載の車載ユニット用の制御装置。
【請求項4】
前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、起動時処理を実行するように構成されており、
前記制御部は、前記起動時処理中において、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出すように構成されている請求項3に記載の車載ユニット用の制御装置。
【請求項5】
前記記憶部は、前記制御部が実行する処理で使用されない情報であって、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示すダイアグが書き込まれるダイアグ情報を記憶するように構成されており、
前記記憶部は、前記車両に対して外部から接続される診断ツールからの操作によって、前記ダイアグ情報及び前記履歴情報の内容を消去するように構成されている請求項1~請求項4のうちいずれか一項に記載の車載ユニット用の制御装置。
【請求項6】
警告灯を有する車両に搭載された車載ユニットの制御方法であって、
前記車載ユニットは、前記車載ユニットの状態を運転者に通知するべく前記警告灯への点灯要求の出力にかかる処理を少なくとも実行する制御部と、前記制御部が実行する処理で使用される情報を少なくとも記憶する記憶部とを含み、
前記制御部が実行する処理は、
前記車載ユニットの異常を検出することと、
前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示す検出履歴を前記記憶部の履歴情報に書き込みすることと、
前記点灯要求を出力することと、を含み、
前記記憶部が前記履歴情報を記憶することは、前記車載ユニットが電源オン及び電源オフされたとしても、内容を保持することであり、
前記制御部が実行する処理は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に前記検出履歴が書き込まれている場合、前記車載ユニットの異常を検出できなくても、前記点灯要求を出力することを含む車載ユニットの制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車載ユニット用の制御装置及び車載ユニットの制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、車載ユニット用の制御装置には、下記特許文献1に記載のように、車載ユニットの状態を運転者に通知するべく車両の警告灯への点灯要求を出力するように構成されたものがある。この車載ユニット用の制御装置は、車載ユニットが有するセンサについてのセンサ出力信号の異常を判断する場合に、警告灯への点灯要求を出力するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2015-58911号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記車載ユニット用の制御装置では、例えば、車載ユニットの電源オン直後、センサ出力信号自体が出力されない状態であると、センサ出力信号の異常の判断自体をすることができない。この場合、センサ出力信号が異常になる状態であっても、センサ出力信号が出力される状態となるまでの間は警告灯が点灯できない。つまり、センサ出力信号が異常になる状態であるにもかかわらず、警告灯が点灯できない状態がある一定程度発生する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決し得る車載ユニット用の制御装置は、警告灯を有する車両に搭載された車載ユニットに適用され、前記車載ユニットの状態を運転者に通知するべく前記警告灯への点灯要求を出力するように構成されている。上記車載ユニット用の制御装置は、前記点灯要求の出力にかかる処理を少なくとも実行する制御部と、前記制御部が実行する処理で使用される情報を少なくとも記憶する記憶部と、を含み、前記制御部は、前記車載ユニットの異常を検出するための異常検出処理と、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示す検出履歴を前記記憶部の履歴情報に書き込みするための検出結果書き込み処理と、前記点灯要求を出力するための点灯要求出力処理と、を含み、前記記憶部は、前記車載ユニットが電源オン及び電源オフされたとしても、前記履歴情報の内容を保持するように構成されており、前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に前記検出履歴が書き込まれている場合、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出できなくても、前記点灯要求を出力するように構成されている。
【0006】
上記構成によれば、制御部は、車載ユニットが電源オンされるとき、履歴情報の内容に検出履歴が書き込みされている場合、車載ユニットの異常を検出できなくても、車載ユニットの電源オン直後から点灯要求を出力することができる。例えば、点灯要求は、車載ユニットの異常を検出できなくても、前の電源オン中に出力されていたのであれば、今回の電源オンから、前の電源オン中の出力状態を引き継いで出力を開始させることができる。電源オン中に点灯要求が出力されていた後の電源オンでは、車載ユニットの異常を検出できなくても、前の電源オン中から車載ユニットの異常が引き継がれている蓋然性が高い。したがって、車載ユニットの異常であるにもかかわらず、警告灯が点灯できない状態の発生を低減することができる。
【0007】
上記車載ユニット用の制御装置において、前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるときの他、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出するとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に書き込まれている前記検出履歴に基づいて、前記点灯要求を出力するように構成されていることが好ましい。
【0008】
上記構成によれば、点灯要求と履歴情報との間で内容の相違が抑えられる。
上記車載ユニット用の制御装置において、前記異常検出処理は、前記車載ユニットの異常からの復帰を検出する処理を含み、前記検出結果書き込み処理は、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常からの復帰が検出される場合に前記検出履歴を前記記憶部の前記履歴情報から消去する処理を含み、前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるときの他、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常からの復帰が検出されるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容から前記検出履歴が消去されている場合、前記点灯要求の出力を停止するように構成されていることが好ましい。
【0009】
上記構成によれば、制御部は、車載ユニットの異常からの復帰が検出されるとき、検出履歴を履歴情報から消去するとともに、警告灯が点灯できないようにすることができる。これにより、警告灯が点灯できる状況の最適化を図ることができる。
【0010】
上記車載ユニット用の制御装置において、前記制御部は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、起動時処理を実行するように構成されており、前記制御部は、前記起動時処理中において、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出すように構成されていることが好ましい。
【0011】
上記構成によれば、制御部は、車載ユニットが電源オン後、起動時処理の実行を経由する構成であっても、履歴情報の内容が検出履歴であれば電源オン直後から点灯要求を出力することができる。これは、起動時処理の状況において異常検出処理によって検出できない車載ユニットの異常に対する対策として特に効果的である。
【0012】
上記車載ユニット用の制御装置において、前記記憶部は、前記制御部が実行する処理で使用されない情報であって、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示すダイアグが書き込まれるダイアグ情報を記憶するように構成されており、前記記憶部は、前記車両に対して外部から接続される診断ツールからの操作によって、前記ダイアグ情報及び前記履歴情報の内容を消去するように構成されていることが好ましい。
【0013】
上記構成によれば、診断ツールからの操作によっては、ダイアグ情報及び履歴情報の内容を同期させることができる。これにより、互いに役割と管理の方法とが異なるダイアグ情報及び履歴情報であるが、これらを適切に管理することができる。
【0014】
上記課題を解決し得る車載ユニットの制御方法は、警告灯を有する車両に搭載された車載ユニットの制御方法である。前記車載ユニットは、前記車載ユニットの状態を運転者に通知するべく前記警告灯への点灯要求の出力にかかる処理を少なくとも実行する制御部と、前記制御部が実行する処理で使用される情報を少なくとも記憶する記憶部とを含む。前記車載ユニットの制御方法において、前記制御部が実行する処理は、前記車載ユニットの異常を検出することと、前記車載ユニットの異常を検出する場合にその旨を示す検出履歴を前記記憶部の履歴情報に書き込みすることと、前記点灯要求を出力することと、を含み、前記記憶部が前記履歴情報を記憶することは、前記車載ユニットが電源オン及び電源オフされたとしても、内容を保持することであり、前記制御部が実行する処理は、前記車載ユニットが電源オンされるとき、前記記憶部から前記履歴情報の内容を読み出し、当該読み出した内容に前記検出履歴が書き込まれている場合、前記異常検出処理によって前記車載ユニットの異常を検出できなくても、前記点灯要求を出力することを含む。
【発明の効果】
【0015】
本発明の車載ユニット用の制御装置及び車載ユニットの制御方法によれば、車載ユニットの異常であるにもかかわらず、警告灯が点灯できない状態の発生を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】実施形態にかかるステバイワイヤ式の操舵装置の構成を示す図である。
図2図1の操舵制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
図3図2のCPUの状態遷移を説明する図である。
図4】各種異常について、点灯要求、及び、メモリへ書き込む内容の対応関係を説明する図である。
図5図2のCPUについて非該当フェールの検出にかかる処理手順を説明するフローチャートである。
図6図2のCPUについて該当フェールの検出にかかる処理手順を説明するフローチャートである。
図7】(a)は操舵装置の状態、(b)は該当フェールの検出状態、(c)は点灯要求の出力状態、(d)は履歴情報の内容についてそれぞれの一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
一実施形態に係る車載ユニット用の制御装置を説明する。
図1に示すように、操舵制御装置1は、警告灯9を有する車両VCに搭載された車載ユニットに適用される車載ユニット用の制御装置の一例である。操舵制御装置1は、操舵装置2を制御対象とする。操舵装置2は、車両VCに搭載された車載ユニットの一例である。操舵装置2は、ステアバイワイヤ式の車両用の操舵装置として構成されている。操舵装置2は、操舵ユニット4と、転舵ユニット6とを備えている。操舵ユニット4は、操舵部材である車両VCのステアリングホイール3を介して運転者により操舵される。転舵ユニット6は、運転者により操舵ユニット4に入力される操舵に応じて車両VCの左右の転舵輪5を転舵させる。本実施形態の操舵装置2は、例えば、操舵ユニット4と、転舵ユニット6との間の動力伝達路が機械的に常時分離した構造を有している。後述の操舵アクチュエータ12と、後述の転舵アクチュエータ31との間の動力伝達路は、機械的に常時分離した構造とされている。
【0018】
操舵ユニット4は、ステアリング軸11と、操舵アクチュエータ12とを備えている。ステアリング軸11は、ステアリングホイール3に連結されている。操舵アクチュエータ12は、操舵側モータ13と、操舵側減速機構14とを有している。操舵側モータ13は、ステアリング軸11を介してステアリングホイール3に対して操舵に抗する力である操舵反力を付与する反力モータである。操舵側モータ13は、例えば、ウォームアンドホイールからなる操舵側減速機構14を介してステアリング軸11に連結されている。本実施形態の操舵側モータ13には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0019】
転舵ユニット6は、ピニオン軸21と、ラック軸22と、ラックハウジング23とを備えている。ピニオン軸21とラック軸22とは、所定の交差角をもって連結されている。ピニオン軸21に形成されたピニオン歯21aとラック軸22に形成されたラック歯22aとを噛み合わせることによりラックアンドピニオン機構24が構成されている。ピニオン軸21は、転舵輪5の転舵位置である転舵角に換算可能な回転軸に相当する。ラックハウジング23は、ラックアンドピニオン機構24を収容している。
【0020】
ピニオン軸21のラック軸22と連結される側と反対側の一端は、ラックハウジング23から突出している。ラック軸22の両端は、ラックハウジング23の軸方向の両端から突出している。ラック軸22の両端には、ボールジョイントからなるラックエンド25を介してタイロッド26が連結されている。タイロッド26の先端は、それぞれ左右の転舵輪5が組み付けられた図示しないナックルに連結されている。
【0021】
転舵ユニット6は、転舵アクチュエータ31を備えている。転舵アクチュエータ31は、転舵側モータ32と、伝達機構33と、変換機構34とを備えている。転舵側モータ32は、伝達機構33及び変換機構34を介してラック軸22に対して転舵輪5を転舵させる転舵力を付与する転舵モータである。転舵側モータ32は、例えば、ベルト伝達機構からなる伝達機構33を介して変換機構34に対して回転を伝達する。伝達機構33は、例えば、ボールねじ機構からなる変換機構34を介して転舵側モータ32の回転をラック軸22の往復動に変換する。本実施形態の転舵側モータ32には、例えば、三相のブラシレスモータが採用されている。
【0022】
操舵装置2では、運転者によるステアリング操舵に応じて転舵アクチュエータ31からラック軸22にモータトルクが転舵力として付与されることで、転舵輪5の転舵角が変更される。このとき、操舵アクチュエータ12からは、運転者の操舵に抗する操舵反力がステアリングホイール3に付与される。これにより、操舵装置2では、操舵アクチュエータ12から付与されるモータトルクである操舵反力により、ステアリングホイール3の操舵に必要な操舵トルクThが変更される。
【0023】
なお、ピニオン軸21を設ける理由は、ピニオン軸21と共にラック軸22をラックハウジング23の内部に支持するためである。操舵装置2に設けられる図示しない支持機構によって、ラック軸22は、その軸方向に沿って移動可能に支持されるとともに、ピニオン軸21へ向けて押圧される。これにより、ラック軸22はラックハウジング23の内部に支持される。ただし、ピニオン軸21を使用せずにラック軸22をラックハウジング23に支持する他の支持機構を設けてもよい。
【0024】
<操舵装置の電気的構成>
図1に示すように、操舵側モータ13と転舵側モータ32とは、操舵制御装置1に接続されている。操舵制御装置1は、各モータ13,32の作動を制御する。
【0025】
操舵制御装置1には、各種のセンサの検出結果が入力される。各種のセンサには、例えば、トルクセンサ41、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、車速センサ44、及びピニオン絶対角センサ45が含まれる。
【0026】
トルクセンサ41は、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3と操舵側減速機構14との間の部分に設けられている。トルクセンサ41は、運転者のステアリング操舵によりステアリング軸11に付与されたトルクを示す値である操舵トルクThを検出する。操舵トルクThは、ステアリング軸11の途中であって、ステアリング軸11におけるステアリングホイール3と操舵側減速機構14との間に設けられたトーションバー41aの捩じれに関わって検出される。操舵側回転角センサ42は、操舵側モータ13に設けられている。操舵側回転角センサ42は、操舵側モータ13の回転軸の角度である回転角θaを360度の範囲内で検出する。転舵側回転角センサ43は、転舵側モータ32に設けられている。転舵側回転角センサ43は、転舵側モータ32の回転軸の角度である回転角θbを360度の範囲内で検出する。車速センサ44は、車両VCの走行速度である車速Vを検出する。ピニオン絶対角センサ45は、ピニオン軸21の回転軸の角度の実測値であるピニオン絶対回転角θabpを360°を超える範囲で検出する。
【0027】
操舵制御装置1には、電源システム46が接続されている。電源システム46は、バッテリ47を有している。バッテリ47は、車両VCに搭載された二次電池であり、操舵側モータ13及び転舵側モータ32が動作するべく供給される電力の電力源になる。また、バッテリ47は、操舵制御装置1が動作するべく供給される電力の電力源になる。
【0028】
操舵制御装置1とバッテリ47との間には、イグニッションスイッチ等の車両VCの起動スイッチ48(図1中「SW」)が設けられている。起動スイッチ48は、操舵制御装置1とバッテリ47との間を接続する2つの給電線L1,L2のうちの給電線L1から分岐している給電線L2の途中に設けられている。起動スイッチ48は、エンジン等の車両VCの走行用駆動源を作動させて車両VCの動作が可能になるように各種の機能を起動する際に操作される。起動スイッチ48の操作を通じて給電線L2の導通がオンオフされる。本実施形態において、操舵装置2の動作の状態は、車両VCの動作の状態と関連付けられている。なお、給電線L1については基本的に導通が常時オンとされているが、操舵装置2の動作の状態に応じて給電線L1の導通が操舵装置2の機能として間接的にオンオフされる。操舵装置2の動作の状態は、バッテリ47の電力の供給の状態である給電線L1,L2の導通のオンオフと関連付けられている。操舵装置2の動作の状態は、起動スイッチ48の操作に基づいて、給電線L1,L2の導通がオンされる場合に電源オンとなる。操舵装置2の動作の状態は、起動スイッチ48の操作に基づいて、給電線L1,L2の導通がオフされる場合に電源オフとなる。
【0029】
操舵制御装置1には、診断ツール49を接続することができる。診断ツール49は、例えば、ディーラー等の車両VCを整備する整備工場にて使用される。診断ツール49は、車両VCに対して外部から接続される。本実施形態の操舵制御装置1は、コネクタ49aを有している。診断ツール49は、操舵制御装置1のコネクタ49aを介して車両VCに対して外部から接続される。なお、コネクタ49aは、操舵制御装置1とは別に車両VCに搭載される制御装置が有していてもよいし、専用のコネクタとして車両VCに搭載されていてもよい。診断ツール49は、車両VCについての異常状態を診断するためのツールである。
【0030】
診断ツール49は、操舵制御装置1に接続された状態で、整備の作業者の操作を通じて車両VC、すなわち操舵制御装置1に対して診断状態である工場モードの設定を指示する。作業者は、診断ツール49の操作を通じて、車両VC、すなわち操舵制御装置1についての処置を施すことができる。
【0031】
操舵制御装置1には、CAN等の車載ネットワーク8を介してメータ制御装置7が接続されている。メータ制御装置7は、操舵装置2が搭載される車両VCに操舵制御装置1とは別に設けられている。メータ制御装置7は、車載される警告灯9の動作を制御する。警告灯9は、例えば、情報を運転者の視覚に訴えて通知する表示装置である。表示装置は、HUD(Head Up Display)、メーターパネル、ナビゲーションシステムのディスプレイ、LED(Light Emitting Diode)を含む。メータ制御装置7は、警告灯9に対する通知制御信号Sを生成する。
【0032】
<操舵制御装置の機能>
操舵制御装置1は、中央処理装置(以下「CPU」という。)50aやメモリ50bを備えている。操舵制御装置1は、メモリ50bに記憶されたプログラムを所定の演算周期毎にCPU50aが実行することにより、各種の処理を実行する。CPU50a及びメモリ50bは、処理回路であるマイクロコンピュータを構成する。メモリ50bは、RAM(Random Access Memory)及びROM(Read Only Memory)のようなコンピュータ可読媒体を含む。ただし、各種処理がソフトウェアによって実現されることは一例である。操舵制御装置1が有する処理回路は、少なくとも一部の処理をロジック回路などのハードウェア回路によって実現するように構成されてもよい。本実施形態において、CPU50aは、制御部の一例である。メモリ50bは、記憶部の一例である。
【0033】
<CPUの機能について>
図2に示すように、CPU50aは、各種情報を入力する。各種情報は、例えば、上記各種センサの検出結果を含む。これらの他、各種情報は、バッテリ47のバッテリ電圧Vb、起動スイッチ48のオンオフ状態、操舵側電流センサ51の検出結果、転舵側電流センサ52の検出結果、及びメモリ50bから読み出す情報を含む。バッテリ電圧Vbは、バッテリ47の電圧値であって、例えば、給電線L1の電圧値である。起動スイッチ48のオンオフ状態は、IG信号Sgの入力の有無によって判断される。操舵側電流センサ51は、図示しない駆動回路と、操舵側モータ13の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる操舵側モータ13の操舵側実電流値Iaを検出する。転舵側電流センサ52は、図示しない駆動回路と、転舵側モータ32の各相のモータコイルとの間の接続線を流れる転舵側モータ32の転舵側実電流値Ibを検出する。
【0034】
メモリ50bは、記憶部501及び記憶部502を含む複数の記憶領域を有する。記憶部501及び記憶部502は、互いに異なる記憶領域である。記憶部501は、履歴情報Bsを書き込んで記憶するための記憶領域である。記憶部502は、ダイアグ情報Dnを書き込んで記憶するための記憶領域である。
【0035】
メモリ50bの情報は、書き込み可能な情報については、電源オン及び電源オフに応じて内容が消去して初期化される情報と、電源オン及び電源オフに関係なく内容が保持される情報とを含む。記憶部501及び記憶部502に記憶される情報は、電源オン及び電源オフに関係なく内容が保持される情報に相当する。記憶部501に記憶される情報は、CPU50aによって読み出されることによって、当該CPU50aが実行する処理で使用される情報である。記憶部502に記憶される情報は、CPU50aによって読み出されることなく、当該CPU50aが実行する処理で使用されない情報である。記憶部502に記憶される情報は、診断ツール49によって読み出されることによって、整備工場にて使用される情報である。また、記憶部501及び記憶部502に記憶される情報は、診断ツール49によって消去可能な情報である。
【0036】
図3に示すように、電源オフ中において、CPU50aは、起動スイッチ48がオン状態にされて電源オンされた後(ステップ100)、起動時状態(ステップ102)を経て通常制御状態へと状態遷移する処理(ステップ104)を含む。電源オン中、通常制御状態への状態遷移後、通常制御状態は、電源オフされるまでの間、継続する。起動時状態は、各種情報を読み出す等して、運転者によるステアリング操舵に応じて操舵装置2を動作せるためのステアリング制御にかかる通常処理を実行することができるようにするための起動時処理を実行する状態である。起動時状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行しない。起動時状態のとき、例えば、車両VCは、停車中である。通常制御状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行する。通常制御状態のとき、例えば、車両VCは、停車中又は走行中である。
【0037】
<操舵装置の異常について>
CPU50aは、起動時処理及び通常処理として、操舵装置2における各種異常を検出する処理を実行する。
【0038】
図4に示すように、各種異常は、例えば、電気系異常、メカ系異常、センサ系異常、及び通信系異常を含む。より詳しくは、電気系異常は、CPU50a及びメモリ50bの動作異常、及びバッテリ47の電源異常を含む。CPU50aは、例えば、バッテリ電圧Vbの低下により、正常動作できない等の場合に電気系異常を検出する。電気系異常を検出する場合、CPU50aは、正常動作できないので動作停止等する操舵装置2のフェール状態を設定する。
【0039】
メカ系異常は、操舵側モータ13を操舵ユニット4の機械的な異常、及び転舵側モータ32を含む転舵ユニット6の機械的な異常を含む。CPU50aは、例えば、転舵側回転角センサ43及びピニオン絶対角センサ45の検出結果を比較する等して、伝達機構33及び変換機構34における歯飛び及びベルト破断を判断できる等の場合にメカ系異常を検出する。メカ系異常を検出する場合、CPU50aは、状況に応じて、車両VCを安全な場所に退避させる等する操舵装置2のフェール状態を設定する。
【0040】
センサ系異常は、トルクセンサ41、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、ピニオン絶対角センサ45、操舵側電流センサ51、及び転舵側電流センサ52の異常を含む。CPU50aは、例えば、トルクセンサ41の操舵トルクThに基づいて、入力が無いこと、及び操舵トルクThの値が妥当でないことを判断できる等の場合にトルクセンサ41についてのセンサ系異常を検出する。これは、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、ピニオン絶対角センサ45、操舵側電流センサ51、及び転舵側電流センサ52についても同様である。センサ系異常を検出する場合、CPU50aは、状況に応じて、一部の機能を制限等する操舵装置2のフェール状態を設定する。
【0041】
通信系異常は、車載ネットワーク8の通信異常を含む。CPU50aは、例えば、車載ネットワーク8から受信する信号に基づいて、受信が無いこと、及び妥当でない信号を受信することを判断できる等の場合に通信系異常を検出する。通信系異常を検出する場合、CPU50aは、状況に応じて、一部の機能を制限等する操舵装置2のフェール状態に移行する。
【0042】
起動時状態のとき、CPU50aは、例えば、電気系異常及び通信系異常を検出することができる。起動時状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行しないが電源オンであるので、バッテリ47のバッテリ電圧Vbを検出することができる。この場合、CPU50aは、電気系異常を検出することができる。これと同様、起動時状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行しないが車両VCが動作しているので、車載ネットワーク8から信号を受信することができる。この場合、CPU50aは、通信系異常を検出することができる。
【0043】
これに対して、起動時状態のとき、CPU50aは、例えば、メカ系異常及びセンサ系異常が生じていたとしても、これら異常を検出できない可能性がある。起動時状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行しないので、伝達機構33及び変換機構34における歯飛び及びベルト破断を判断するできない可能性がある。この場合、CPU50aは、メカ系異常が生じていたとしても検出できない可能性がある。これと同様、起動時状態のとき、CPU50aは、通常処理を実行しないので、トルクセンサ41の操舵トルクThの値が妥当でないことを判断できない可能性がある。この場合、CPU50aは、トルクセンサ41についてのセンサ系異常を検出できない可能性がある。こうしたセンサ系異常を検出できない可能性があることは、通常制御状態への状態遷移後、車両VCが走行するまでの停車中のときにも当て嵌まる。これは、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、ピニオン絶対角センサ45、操舵側電流センサ51、及び転舵側電流センサ52についてのセンサ系異常の検出についても同様である。
【0044】
以上のように、操舵装置2における各種異常は、起動時状態のときに検出することができるフェールと、起動時状態のときに検出することができない可能性があるフェールとに分類される。以下の説明では、起動時状態のときに検出することができる電気系異常及び通信系異常を「非該当フェール」と記載するとともに、起動時状態のときに検出することができない可能性があるメカ系異常及びセンサ系異常を「該当フェール」と記載する。
【0045】
<操舵装置の異常の検出にかかる処理について>
図5及び図6に示すように、CPU50aは、起動時処理及び通常処理として、各種異常を検出するための処理を実行する。非該当フェールの検出にかかる処理手順は、起動時状態及び通常制御状態の状態に関係なく検出可能な異常である点を考慮して規定されている。これに対して、該当フェールの検出かかる処理手順は、起動時状態のときに検出することができない可能性がある点を考慮して規定されている。
【0046】
<非該当フェールの検出にかかる処理について>
図5は、非該当フェールの検出にかかる処理手順の一例を示す。当該処理において、CPU50aは、非該当フェールを検出したか否かを判断する(ステップ200)。ステップ200において、CPU50aは、非該当フェールを直前まで検出していない状態からの検出である場合に、ステップ200:YESを判断する。それ以外の場合、CPU50aは、非該当フェールを検出しないとして、ステップ200:NOを判断する。それ以外の場合は、非該当フェールを検出しない場合、又は、非該当フェールの検出中の場合を含む。
【0047】
続いて、CPU50aは、非該当フェールを検出する場合(ステップ200:YES)、メモリ50bへの書き込みを実施する(ステップ202)。ステップ202において、CPU50aは、記憶部502のダイアグ情報Dnに非該当フェールの検出を示す情報を書き込みする。この場合、CPU50aは、非該当フェールの種類も合わせて書き込みする。なお、非該当フェールを検出する場合、CPU50aは、記憶部501の履歴情報Bsに書き込みしない。
【0048】
続いて、CPU50aは、ステップ200で検出した非該当フェールに対応する点灯要求WLを出力し(ステップ204)、当該処理を終了して他の処理に移行する。ステップ204において、CPU50aは、点灯要求WLを車載ネットワーク8に対して出力する。ステップ204の処理は、操舵装置2の状態を運転者に通知するべく警告灯9への点灯要求WLを出力するための処理である。運転者に通知する操舵装置2の状態は、各種異常に関する状態である。
【0049】
より詳しくは、図4に示すように、非該当フェールのうち、電気系異常の通知は、点灯要求WL(R)によって要求される。点灯要求WL(R)は、例えば、操舵装置2の状態が、より早い対処が必要である重度の異常の検出中であることを通知するための情報である。また、非該当フェールのうち、通信系異常の通知は、点灯要求WL(Y)によって要求される。点灯要求WL(Y)は、例えば、操舵装置2の状態が、車両VCの走行に支障はない軽度の異常の検出中であることを通知するための情報である。
【0050】
ステップ204において、CPU50aは、点灯要求WL(R)及び点灯要求WL(Y)のいずれも出力できる状態の場合、点灯要求WL(R)を優先して出力する。例えば、いずれも出力できる状態は、既にいずれかの点灯要求WLを出力中の場合である。ステップ204において、CPU50aは、点灯要求WLを一旦出力すると、出力停止条件が成立するまでの間、継続的に出力する。非該当フェールの検出にかかる処理において、出力停止条件は、車両VCの電源オフ、又は、後述のステップ206:YESの判断である。こうして出力された点灯要求WLは、メータ制御装置7に入力される。メータ制御装置7は、点灯要求WLを入力すると、対応する色で点灯するように警告灯9の動作を制御する。例えば、メータ制御装置7は、点灯要求WL(R)を入力すると、赤点灯するように警告灯9の動作を制御するとともに、点灯要求WL(Y)を入力すると、黄点灯するように警告灯9の動作を制御する。
【0051】
一方、ステップ200において、CPU50aは、非該当フェールを検出しない場合(ステップ200:NO)、非該当フェールからの復帰であるか否かを判断する(ステップ206)。ステップ206において、CPU50aは、非該当フェールの検出中であった場合に、非該当フェールの解消を検出するか否かを判断する。CPU50aは、非該当フェールからの復帰でない場合(ステップ206:NO)、当該処理を終了して他の処理に移行する。
【0052】
一方、CPU50aは、非該当フェールからの復帰である場合(ステップ206:YES)、点灯要求WLの出力を停止し(ステップ208)、当該処理を終了して他の処理に移行する。
【0053】
<該当フェールの検出にかかる処理について>
図6は、該当フェールの検出にかかる処理手順の一例を示す。当該処理において、CPU50aは、該当フェールを検出したか否かを判断する(ステップ300)。ステップ300において、CPU50aは、該当フェールを直前まで検出していない状態からの検出である場合に、ステップ300:YESを判断する。それ以外の場合、CPU50aは、該当フェールを検出しないとして、ステップ300:NOを判断する。それ以外の場合は、該当フェールを検出しない場合、又は、該当フェールの検出中の場合を含む。本実施形態において、ステップ300の処理は、異常検出処理の一例である。
【0054】
続いて、CPU50aは、該当フェールを検出する場合(ステップ300:YES)、メモリ50bへの書き込みを実施する(ステップ302)。ステップ302において、CPU50aは、記憶部501の履歴情報Bsに該当フェールの検出を示す情報である検出履歴Lgを書き込んで内容を更新する。また、CPU50aは、記憶部502のダイアグ情報Dnに該当フェールの検出を示す情報を書き込みする。この場合、CPU50aは、該当フェールの種類も合わせて書き込みする。本実施形態において、ステップ302の処理は、検出結果書き込み処理の一例である。
【0055】
より詳しくは、図4に示すように、該当フェールのうち、メカ系異常の検出は、検出履歴Lg(R)の書き込みによって示される。検出履歴Lg(R)は、例えば、操舵装置2の状態が、より早い対処が必要である重度の異常の検出がされた履歴を示す情報である。また、該当フェールのうち、センサ系異常の検出は、検出履歴Lg(Y)の書き込みによって示される。検出履歴Lg(Y)は、例えば、操舵装置2の状態が、車両VCの走行に支障はない軽度の異常の検出がされた履歴を示す情報である。
【0056】
ステップ302において、CPU50aは、検出履歴Lg(R)及び検出履歴Lg(Y)のいずれも書き込みできる状態の場合、検出履歴Lg(R)を優先して書き込むように更新する。例えば、いずれも書き込みできる状態は、既にいずれかの検出履歴Lgを書き込み済の場合である。ステップ302において、CPU50aは、既にいずれかの検出履歴Lgを書き済である結果、履歴情報Bsの内容を更新する必要がないとき、ステップ304の処理を実行しないで、当該処理を終了して他の処理に移行する。履歴情報Bsの内容を更新する必要がないときは、既に同じ種類の検出履歴Lgを書き込み済の場合、又は、既に優先して書き込みする検出履歴Lg(R)を書き込み済の場合である。
【0057】
続いて、CPU50aは、履歴情報Bsの内容を読み出す(ステップ304)。ステップ304において、CPU50aは、ステップ304で書き込みした検出履歴Lg、すなわちステップ300で検出した該当フェールに対応する検出履歴Lgを読み出すことになる。
【0058】
続いて、CPU50aは、ステップ304で読み出した検出履歴Lgに対応する点灯要求WLを出力し(ステップ306)、当該処理を終了して他の処理に移行する。ステップ306の処理は、ステップ204と同様の処理である。該当フェールの検出にかかる処理において、出力停止条件は、車両VCの電源オフ、又は、後述の312:YESの判断である。本実施形態において、ステップ306の処理は、点灯要求出力処理の一例である。
【0059】
より詳しくは、図4に示すように、該当フェールのうち、メカ系異常の通知は、検出履歴Lg(R)が読み出されることによって特定される。この場合、該当フェールのうち、メカ系異常の通知は、点灯要求WL(R)によって要求される。また、該当フェールのうち、センサ系異常の通知は、検出履歴Lg(Y)が読み出されることによって特定される。この場合、該当フェールのうち、センサ系異常の通知は、点灯要求WL(Y)によって要求される。
【0060】
一方、ステップ300において、CPU50aは、該当フェールを検出しない場合(ステップ300:NO)、履歴情報Bsの内容を読み出したか否かを判断する(ステップ308)。ステップ308において、CPU50aは、上記ステップ102における起動時状態のとき、すなわち各種情報を読み出す等する起動時処理の開始時に、ステップ308:YESを判断する。一方、ステップ308において、CPU50aは、各種情報を読み出す等する起動時処理の開始時でないときに、ステップ308:NOを判断する。
【0061】
続いて、CPU50aは、履歴情報Bsの内容を読み出した場合(ステップ308:YES)、すなわち起動状態のとき、履歴情報Bsの内容に検出履歴Lgが書き込みされているか否かを判断する(ステップ310)。ステップ310において、検出履歴Lgが書き込まれていることは、今回の電源オンよりも前の電源オン中において、該当フェールが検出されていたことを示す。これは、今回の電源オンよりも前の電源オン中において、警告灯9による通知がなされていたことを示す。つまり、今回の電源オンは、警告灯9による通知がなされた状態で電源オフされた次の電源オンであることを示す。これに対して、検出履歴Lgが書き込まれていないことは、今回の電源オンよりも前の電源オン中において、警告灯9による通知がなされていなかったことを示す。
【0062】
続いて、CPU50aは、検出履歴Lgが書き込みされている場合(ステップ310:YES)、ステップ310に移行して点灯要求WLの出力にかかる処理を実行する。ステップ310:YESを判断する場合、CPU50aは、ステップ300で該当フェールを検出していないなかで、点灯要求WLを出力することになる。これにより、今回の電源オン中では、警告灯9による通知について、当該通知がなされた状態で電源オフされた前の電源オン中の状態を引き継ぐことになる。
【0063】
一方、CPU50aは、履歴情報Bsの内容を読み出していない場合(ステップ308:NO)、すなわち起動時状態でないとき、該当フェールからの復帰であるか否かを判断する(ステップ312)。ステップ312において、CPU50aは、該当フェールの検出中であった場合に、該当フェールの解消を検出するか否か判断する。本実施形態において、ステップ300の処理は、異常検出処理の一例である。
【0064】
続いて、CPU50aは、該当フェールからの復帰でない場合(ステップ312:NO)、当該処理を終了して他の処理に移行する。一方、CPU50aは、該当フェールからの復帰である場合(ステップ312:YES)、履歴情報Bsの内容を消去する(ステップ314)。ステップ314において、CPU50aは、記憶部501の履歴情報Bsから検出履歴Lgを消去するように内容を更新する。本実施形態において、ステップ314の処理は、検出結果書き込み処理の一例である。
【0065】
続いて、CPU50aは、履歴情報Bsの内容を読み出す(ステップ316)。ステップ316において、CPU50aは、ステップ314で検出履歴Lgを消去しているので、検出履歴Lgが書き込みされていないことを判断する。
【0066】
続いて、CPU50aは、履歴情報Bsの内容に検出履歴Lgが書き込まれていないことに基づいて、点灯要求WLの出力を停止し(ステップ318)、当該処理を終了して他の処理に移行する。
【0067】
<本実施形態の作用>
図7(a)は、電源オン及び電源オフに関連して変化する操舵装置2の状態の一例を示す。図7(b)~(c)は、該当フェールの検出に関連して変化するCPU50aの状態の一例を示す。図7(b)は、当該一例における該当フェールの検出状態を示す。図7(c)は、当該一例における点灯要求WLの出力状態を示す。図7(d)は、当該一例における履歴情報Bsの内容を示す。
【0068】
例えば、操舵装置2の状態は、電源オン中の通常制御状態(図中「通常」)から電源オフされるように変化する。この最初の電源オン中の状況を、以下では「前トリップ」と記載する。続いて、操舵装置2の状態は、電源オフを経由して、電源オンされて起動時状態(図中「起動」)へと状態遷移してから通常制御状態へと状態遷移するように変化する。この後の電源オン中の状況を、以下では「後トリップ」と記載する。
【0069】
例えば、前トリップ中において、CPU50aは該当フェールを検出する。該当フェールが検出されることによって、履歴情報Bsの内容は、検出履歴Lgが書き込みされた状態に更新される。こうして書き込みされた検出履歴Lgが読み出されることによって、点灯要求WLは出力が開始される。これにより、警告灯9が点灯される。
【0070】
続いて、前トリップ中において、電源オフされることによって、CPU50aは動作停止する。電源オフされる出力停止条件が成立することによって、点灯要求WLは停止される。これにより、警告灯9の点灯が停止される。履歴情報Bsに書き込みされた検出履歴Lgは、電源オフでも消去されずに電源オフ中も保持される。
【0071】
その後、電源オフを経由して、電源オンされることによって、CPU50aは起動時処理を開始する。起動時処理が開始されることによって、電源オフでも消去されずに電源オフ中も保持される検出履歴Lgが読み出される。こうして電源オフでも消去されずに電源オフ中も保持された検出履歴Lgが読み出されることによって、点灯要求WLは出力が開始される。これにより、警告灯9が点灯される。
【0072】
その後、通常制御状態への状態遷移することによって、CPU50aは該当フェールを検出する。ただし、履歴情報Bsの内容は、検出履歴Lgが書き込み済のため更新されない。つまり、履歴情報Bsの内容の更新なしのため、履歴情報Bsの内容及び点灯要求WLの出力状態は共に維持される。これにより、警告灯9の点灯状態が維持される。
【0073】
本実施形態によれば、CPU50aは、電源オンされるとき、履歴情報Bsの内容に検出履歴Lgが書き込みされている場合、該当フェールを検出できなくても、電源オン直後から点灯要求WLを出力することができる。これにより、点灯要求WLは、該当フェールを検出できなくても、前トリップ中に出力されていたのであれば、後トリップの開始時である起動時状態のときから、前トリップ中の出力状態を引き継いで出力を開始させることができる。
【0074】
<実施形態の効果>
(1-1)CPU50aは、該当フェールを検出できなくても、後トリップの開始時である起動時状態のときから、前トリップ中の出力状態を引き継いで点灯要求WLの出力を開始させることができるように構成している。これにより、警告灯9は、前トリップ中に点灯していたのであれば、後トリップの開始時である起動時状態のときから、前トリップ中の点灯状態を引き継いで点灯することができる。例えば、前トリップ中に点灯要求WLが出力されていた後の後トリップでは、該当フェールを検出できなくても、前トリップ中から該当フェールが引き継がれている蓋然性が高い。したがって、該当フェールを生じているにもかかわらず、警告灯9が点灯できない状態の発生を低減することができる。
【0075】
(1-2)CPU50aは、該当フェールを検出する場合、履歴情報Bsの内容を読み出すように構成している。これにより、点灯要求WLと履歴情報Bsとの間で内容の相違が抑えられる。
【0076】
(1-3)CPU50aは、該当フェールからの復帰を検出する場合、履歴情報Bsの内容から検出履歴Lgを消去するように構成されている。加えて、CPU50aは、履歴情報Bsの内容を読み出し、当該読み出した内容に検出履歴Lgが書き込まれていないことに基づいて、点灯要求WLの出力を停止するように構成されている。
【0077】
例えば、図7(a)~(d)に示すように、後トリップ中において、CPU50aは該当フェールからの復帰を判断する。該当フェールからの復帰が判断されることによって、履歴情報Bsの内容は、検出履歴Lgが消去された状態に更新される。こうして検出履歴Lgが消去されることによって、点灯要求WLは出力が停止される。これにより、警告灯9の点灯が停止される。このように、警告灯9が点灯できる状況の最適化を図ることができる。
【0078】
(1-4)CPU50aは、電源オン後、起動時処理の実行を経由する構成であっても、履歴情報Bsの内容に検出履歴Lgが書き込まれていれば、電源オン直後から点灯要求WLを出力することができる。これは、起動時処理の状況において検出できない該当フェールに対する対策として特に効果的である。
【0079】
(1-5)ダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsの内容は、診断ツール49からの操作によって消去されるように構成している。つまり、診断ツール49からの操作によっては、ダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsの内容を同期させることができる。したがって、互いに役割と管理の方法とが異なるダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsであるが、これらを適切に管理することができる。
【0080】
(1-6)例えば、検出履歴Lgの種類は、センサ系異常であれば、異常の種類に関係なく同じにしている。これにより、検出履歴Lgの種類を、異常の種類毎に用意する場合と比べて、必要なデータ量を減らすことができる。したがって、メモリ50bの容量の増大を抑えることができる。
【0081】
<他の実施形態>
上記実施形態は次のように変更してもよい。また、以下の他の実施形態は、技術的に矛盾しない範囲において、互いに組み合わせることができる。
【0082】
・ダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsの内容の消去の方法は、例えば、整備工場の作業者の特定の操作によって可能にする等、診断ツール49を使用しない方法であってもよい。その他、ダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsの内容は、メモリ50b自体を交換しなければ消去不能にしてもよい。つまり、ダイアグ情報Dn及び履歴情報Bsの内容は、バッテリ交換によっても保持されるようにしてもよい。ただし、履歴情報Bsの内容についてはCPU50aによる消去可能にする。
【0083】
・起動時処理は、通常処理の一部の処理として規定することもできる。この場合、通常処理のうち、起動時処理に相当する処理を実行する間が、上記本実施形態の起動時状態に相当する。
【0084】
・履歴情報Bsを読み出す処理は、電源オン後、常時実施する処理として規定することもできる。
図6の処理は、ステップ300:YESの判断後の、ステップ304及びステップ306の処理を削除する一方で、ステップ204の処理と同様、ステップ300で検出した該当フェールに対応する点灯要求WLを出力する処理を含むようにしてもよい。これにより、該当フェールについて、点灯要求WLを出力するための条件は、該当フェールを検出する場合、又は、履歴情報Bsの内容に検出履歴Lgが書き込みされている場合とすることができる。ここに記載した他の実施形態は、ステップ312:YESの判断後のステップ316及びステップ318の処理についても同様に適用できる。この場合、図6の処理は、ステップ208の処理と同様、ステップ312:YESの判断を条件として、点灯要求WLの出力を停止する処理を含むようにすればよい。
【0085】
図6の処理は、ステップ312以後の処理を削除してもよい。この場合、履歴情報Bsの内容に書き込まれた検出履歴Lgは、診断ツール49の操作によらなければ、消去できないことになる。
【0086】
図6の処理は、ステップ316及びステップ318の処理を削除してもよい。この場合、ステップ314によって検出履歴Lgが消去されたとしても、電源オン中の間は点灯要求WLの出力状態、すなわち警告灯9の点灯状態がそれぞれ維持されるようになる。その後、次の電源オン以後から、点灯要求WLの出力が停止されるとともに、警告灯9の点灯が停止されるようになる。
【0087】
図6において、ステップ302の処理は、履歴情報Bsの内容を更新しない場合であっても、ステップ304以後の処理を実行するようにしてもよい。
図6の処理手順は、同図の手順に限らず、適宜変更可能である。例えば、図6のステップ308及びステップ310の処理は、ステップ300の処理の前に実行するように処理手順を変更してもよい。この場合、ステップ308:NOの判断後、及び、ステップ310:NOの判断後は、ステップ300の処理に移行すればよい。また、ステップ300:NOの判断後は、ステップ312の処理に移行すればよい。
【0088】
・非該当フェールの検出は、該当フェールにかかる処理手順を同様に適用してもよい。これにより、非該当フェールを生じているにもかかわらず、警告灯9が点灯できない状態の発生をより好適に低減することができる。この場合、図5の処理は、削除すればよい。
【0089】
・該当フェールに分類される異常は、上記実施形態の分類に限らず、適宜変更可能である。例えば、センサ系異常のうち、トルクセンサ41の異常は、非該当フェールに分類してもよい。また、通信系異常は、該当フェールに分類してもよい。
【0090】
・検出履歴Lgの種類は、2種類に限らず、適宜変更可能である。例えば、1種類又は3種類以上に変更してもよい。
・該当フェールの種類と、検出履歴Lgの種類との対応関係は、上記実施形態の関係に限らず、適宜変更可能である。例えば、メカ系異常を検出する際に使用する、操舵側回転角センサ42、転舵側回転角センサ43、及びピニオン絶対角センサ45の異常は、重度の異常として、検出履歴Lg(R)を対応付けるようにしてもよい。その他、該当フェールの種類と、検出履歴Lgの種類との対応関係は、設定するフェール状態の内容の種類に応じて分類してもよい。つまり、検出履歴Lgの種類は、センサ系異常の種類に応じて異なっていてもよい。
【0091】
・警告灯9は、操舵装置2の構成の一部として実現してもよい。例えば、警告灯9は、ステアリングホイール3に備え付けてもよい。
・操舵装置2の状態を運転者に通知する方法は、上記実施形態の警告灯9の点灯に限らず、適宜変更可能である。例えば、情報を運転者の聴覚に訴えて報知する警報装置、あるいは情報を運転者に対して体感的に報知する体感発生装置であってもよい。警報装置は、スピーカあるいはブザーを含む。体感発生装置は、シートなどの運転者に接触する車両装備品を振動させる振動装置を含む。
【0092】
・操舵制御装置1は、操舵側モータ13を動作させる機能と転舵側モータ32を動作させる機能とを分割した、複数のCPUを有していてもよい。この場合、各CPUは、制御対象に基づいて検出可能な異常を適宜検出に構成されていればよい。
【0093】
・運転者が車両VCを操舵するために操作する操作部材としては、ステアリングホイール3に限らない。例えば、ジョイスティックであってもよい。
・ステアリングホイール3に機械的に連結される操舵側モータ13としては、3相のブラシレスモータに限らない。例えば、ブラシ付きの直流モータであってもよい。
【0094】
・転舵ユニット6は、転舵側モータ32の回転を伝達機構33を介して変換機構34に伝達したが、これに限らず、例えば、転舵側モータ32の回転を歯車機構を介して変換機構34に伝達するように構成してもよい。また、転舵側モータ32が変換機構34を直接回転させるように転舵ユニット6を構成してもよい。さらに、転舵ユニット6が第2のラックアンドピニオン機構を備える構成とし、転舵側モータ32の回転を第2のラックアンドピニオン機構にてラック軸22の往復動に変換するように転舵ユニット6を構成してもよい。
【0095】
・転舵ユニット6としては、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とが連動している構成に限らない。換言すれば、右側の転舵輪5と左側の転舵輪5とを独立に制御できるものであってもよい。
【0096】
・操舵装置2は、操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に常時分離したリンクレスの構造としたが、これに限らず、例えば、クラッチにより操舵ユニット4と転舵ユニット6との間が機械的に分離可能な構造としてもよい。また、操舵装置2は、ステアバイワイヤ式の操舵装置に限らず、モータのトルクをステアリング軸11又はラック軸22に付与する電動パワーステアリング装置であってもよい。
【0097】
・上記実施形態の適用先は、操舵装置2としたが、これに限らず、例えば、ブレーキ装置、車両VCのパワートレインに関わる装置等、他の車載ユニットであってもよい。
【符号の説明】
【0098】
1…操舵制御装置(車載ユニット用の制御装置)
2…操舵装置(車載ユニット)
9…警告灯
47…起動スイッチ
49…診断ツール
50a…CPU(制御部)
50b…メモリ
501,502…記憶部
VC…車両
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7