(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176803
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤
(51)【国際特許分類】
A61K 8/49 20060101AFI20241212BHJP
A61P 1/02 20060101ALI20241212BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20241212BHJP
A61K 31/4425 20060101ALI20241212BHJP
A61K 47/12 20060101ALI20241212BHJP
A61K 8/365 20060101ALI20241212BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
A61K8/49
A61P1/02
A61P43/00 111
A61K31/4425
A61K47/12
A61K8/365
A61Q11/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095610
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000106324
【氏名又は名称】サンスター株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】森川 拓磨
(72)【発明者】
【氏名】浦川 李花
【テーマコード(参考)】
4C076
4C083
4C086
【Fターム(参考)】
4C076AA12
4C076BB22
4C076CC16
4C076DD43
4C076FF11
4C083AC301
4C083AC302
4C083AC691
4C083AC692
4C083CC41
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD38
4C083EE32
4C083EE33
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC17
4C086MA02
4C086MA05
4C086MA17
4C086MA57
4C086NA14
4C086ZA67
4C086ZC20
(57)【要約】
【課題】歯周病の予防に好適な口腔用組成物を提供する。
【解決手段】口腔用組成物は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、を含有している。(B)成分の含有量は、クエン酸換算で0.4質量%以上である。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、
(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、を含有し、
前記(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上である
口腔用組成物。
【請求項2】
前記(A)成分の含有量が0.05質量%以上である
請求項1に記載の口腔用組成物。
【請求項3】
歯周病予防用である
請求項1又は2に記載の口腔用組成物。
【請求項4】
(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、
(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、を含有し、
前記(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上である
プロテアーゼ活性阻害剤。
【請求項5】
ジンジパインのプロテアーゼ活性を阻害する
請求項4に記載のプロテアーゼ活性阻害剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に開示されているように、歯周病に関連する細菌として、Porphyromonas gingivalis(以下、「ジンジバリス」という。)が知られている。ジンジバリスは、プロテアーゼの一種であるジンジパインを産生する。ジンジパインのプロテアーゼ活性によって、歯周病の発症、及び歯周病の進行が引き起こされることが分かっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ジンジパインのプロテアーゼ活性を阻害することが、歯周病の予防、及び歯周病の進行抑制につながると考えられる。ジンジパインのプロテアーゼ活性を阻害する効果が得られる口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための口腔用組成物は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、を含有し、前記(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上であることを要旨とする。
【0006】
上記口腔用組成物は、前記(A)成分の含有量が0.05質量%以上であることが好ましい。
上記口腔用組成物の一例は、歯周病予防用である。
【0007】
上記課題を解決するためのプロテアーゼ活性阻害剤は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物と、(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種と、を含有し、前記(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上であることを要旨とする。
【0008】
上記プロテアーゼ活性阻害剤の一例は、ジンジパインのプロテアーゼ活性を阻害する。
【発明の効果】
【0009】
本発明の口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤によれば、ジンジパインのプロテアーゼ活性を阻害する優れた作用を発揮できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】
図1は、各組成物を添加した場合の、コラーゲンディスクの顕微鏡観察写真である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤の一実施形態について説明する。
本実施形態の口腔用組成物は、(A)セチルピリジニウム塩化物水和物を含有している。口腔用組成物は、(B)クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩からなる群より選択される少なくとも一種を含有している。口腔用組成物は、例えば、歯周病予防用である。
【0012】
本実施形態のプロテアーゼ活性阻害剤は、上記口腔用組成物と同様の成分を含有している。
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤が含有する上記成分について説明する。口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤は同様の成分を含有しているため、以下では、口腔用組成物について説明する。なお、本明細書において、口腔用組成物とは、主として口腔内で使用することを目的とするものを意味するものとする。使用後は口腔内から排出される口腔用製剤だけでなく、摂取可能な飲食品も含むものとする。プロテアーゼ活性阻害剤は、口腔内で使用することを目的とするものに限定されない。
【0013】
<(A)成分:セシルピリジニウム塩化物水和物>
セチルピリジニウム塩化物水和物は、塩化セシルピリジニウム又はCPCとよばれることもある。以下では、セチルピリジニウム塩化物水和物をCPCということもある。
【0014】
CPCは、一般にカチオン性殺菌剤として用いられる。CPCとしては、特に制限されず、公知のCPCを用いることができる。
CPCの含有量は、特に制限されないが、例えば、0.005質量%以上0.3質量%以下である。以下では、口腔用組成物における各成分の含有量について「質量%」を「%」に省略して表記する。CPCの含有量の下限値は、0.01%であることが好ましく、より好ましくは0.05%である。CPCの含有量の上限値は、0.2%であることが好ましく、より好ましくは0.1%である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.006、0.007、0.008、0.009、0.01、0.02、0.03、0.04、0.05、0.06、0.07、0.08、0.09、0.1、0.15、0.2又は0.25%であってもよい。
【0015】
<(B)成分:クエン酸>
(B)成分としては、クエン酸水和物、無水クエン酸及びクエン酸塩が挙げられる。
クエン酸水和物としては、クエン酸一水和物が挙げられる。
【0016】
クエン酸塩としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸アンモニウム等が挙げられる。
クエン酸ナトリウムの具体例としては、例えば、クエン酸ナトリウム、クエン酸三ナトリウム、クエン酸三ナトリウム一水和物、クエン酸三ナトリウム二水和物等が挙げられる。
【0017】
クエン酸カリウムの具体例としては、例えば、クエン酸一カリウム、クエン酸三カリウム、クエン酸三カリウム一水和物等が挙げられる。
クエン酸アンモニウムの具体例としては、例えば、クエン酸二アンモニウム、クエン酸水素二アンモニウム等が挙げられる。
【0018】
口腔用組成物が含有する(B)成分としては、無水クエン酸、クエン酸三ナトリウムが特に好ましい。
口腔用組成物は、(B)成分として、上記成分のうち一種のみを含有していてもよいし、上記成分のうち二種以上を組み合わせて含有していてもよい。
【0019】
上記成分の組み合わせ、及び各成分を配合する比率に応じて、口腔用組成物の酸味度を調整することができる。
一例として、クエン酸塩及び無水クエン酸からなる群より選択される少なくとも一種のクエン酸塩を含有している口腔用組成物において、口腔用組成物が含有する(B)成分の配合比〔クエン酸塩/(クエン酸塩+無水クエン酸)〕は、特に制限されないが、例えば、0.8以上である。上記配合比の下限値は、0.85であることが好ましく、より好ましくは0.9である。上記配合比の上限値は、1であることが好ましく、より好ましくは0.98である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.8、0.85、0.9、0.95、0.96、0.97、0.98、0.99又は1であってもよい。なお、上記配合比が1である場合とは、(B)成分として無水クエン酸を含有していないことを意味する。言い換えれば、上記配合比が1である場合の口腔用組成物は、クエン酸塩から選択される少なくとも一種を(B)成分として含有している。
【0020】
一例として、クエン酸塩と無水クエン酸とを組み合わせて含有している口腔用組成物において、無水クエン酸に対するクエン酸塩の質量比(クエン酸塩/無水クエン酸)は、特に制限されないが、例えば、5以上100以下である。無水クエン酸に対するクエン酸塩の質量比の下限値は、20であることが好ましく、より好ましくは30である。上記質量比の上限値は、50であることが好ましく、より好ましくは40である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、10、20、30、40、50、60、70、80又は90であってもよい。
【0021】
口腔用組成物は、クエン酸含有成分である(B)成分を、一般的なpH調整剤として用いられる酸成分の含有量と比較して、下記のようにクエン酸換算で0.4質量%以上となる高濃度で含有している。
【0022】
本明細書においては、口腔用組成物における(B)成分の含有量として、口腔用組成物が含有している(B)成分の成分量をクエン酸換算した値である「クエン酸換算量」を用いる。クエン酸換算量は、クエン酸含有成分である(B)成分の成分量を無水クエン酸の量に換算した値である。口腔用組成物が二種以上の(B)成分を組み合わせて含有している場合には、各成分の成分量をクエン酸換算した値の合計がクエン酸換算量である。
【0023】
口腔用組成物が含有する(B)成分のクエン酸換算量は、0.4%以上である。クエン酸換算量は、0.6%以上であることが好ましく、より好ましくは0.8%以上である。クエン酸換算量は、特に制限されないが、例えば、10%以下であり、好ましくは5%以下であり、より好ましくは2%以下である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、0.45、0.5、0.55、0.6、0.65、0.7、0.75、0.8、0.85、0.9、0.95、1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4、5、6、7、8、又は9%であってもよい。
【0024】
口腔用組成物において、CPCに対するクエン酸換算量の質量比、例えば質量比(クエン酸換算量/CPC)は、特に制限されないが、例えば、1.3以上1000以下である。CPCに対するクエン酸換算量の質量比の下限値は、5であることが好ましく、より好ましくは8である。上記質量比の上限値は、100であることが好ましく、より好ましくは50である。また、当該範囲の上限値又は下限値は、例えば、2、3、4、10、20、30、40、50、60、70、80又は90であってもよい。
【0025】
<その他成分>
口腔用組成物は、適用目的、形態、用途等に応じて、前述した成分以外のその他成分を含有してもよい。その他成分としては、例えば、界面活性剤、香味剤、甘味剤、湿潤剤、粘結剤、防腐剤、着色剤、キレート剤、薬効成分、基剤、研磨剤、安定化剤等が挙げられる。その他成分は、口腔用組成物に配合される公知のものを使用することができる。口腔用組成物は、上記のその他成分のそれぞれについて、一種のみを単独で含有するものであってもよいし、二種以上を組み合わせて含有するものであってもよい。
【0026】
界面活性剤としては、例えば、ノニオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤、両性界面活性剤が挙げられる。
ノニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ショ糖脂肪酸エステル、マルトース脂肪酸エステル、ラクトース脂肪酸エステル等の糖脂肪酸エステル;脂肪酸アルカノールアミド類;グリセリン脂肪酸エステル;ソルビタン脂肪酸エステル;脂肪酸モノグリセライド;ポリオキシエチレン付加係数が8~10、アルキル基の炭素数が13~15であるポリオキシエチレンアルキルエーテル;ポリオキシエチレン付加係数が10~18、アルキル基の炭素数が9であるポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル;セバシン酸ジエチル;ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油;脂肪酸ポリオキシエチレンソルビタン等が挙げられる。
【0027】
アニオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、ポリオキシエチレンラウリルエーテル硫酸ナトリウム等の硫酸エステル塩;ラウリルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンラウリルエーテルスルホコハク酸ナトリウム等のスルホコハク酸塩;ココイルサルコシンナトリウム、ラウロイルメチルアラニンナトリウム等のアシルアミノ酸塩;ココイルメチルタウリンナトリウム等が挙げられる。
【0028】
カチオン系界面活性剤の具体例としては、例えば、塩化ジステアリルジメチルアンモニウム、塩化ステアリルジメチルベンジルアンモニウム、N-ヤシ油脂肪酸アシル-L-アルギニンエチル・DL-ピロリドンカルボン酸塩等が挙げられる。
【0029】
両性界面活性剤の具体例としては、例えば、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、ヤシ油脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等の酢酸ベタイン型活性剤;N-ココイル-N-カルボキシメチル-N-ヒドロキシエチルエチレンジアミンナトリウム等のイミダゾリン型活性剤;N-ラウリルジアミノエチルグリシン等のアミノ酸型活性剤等が挙げられる。
【0030】
香味剤の具体例としては、例えば、メントール、カルボン酸、アネトール、オイゲノール、サリチル酸メチル、リモネン、オシメン、n-デシルアルコール、シトロネロール、α-テルピネオール、メチルアセタート、シトロネニルアセタート、メチルオイゲノール、シネオール、チモール、スペアミント油、ペパーミント油、レモン油、オレンジ油、セージ油、ローズマリー油、シソ油、冬緑油、丁子油、ユーカリ油、ピメント油、d-カンフル、d-ボルネオール、ウイキョウ油、ケイヒ油、アニス油、シンナムアルデヒド、ハッカ油、バニリン等が挙げられる。
【0031】
甘味剤の具体例としては、例えば、サッカリンナトリウム、アセスルファームカリウム、ステビオサイド、ネオヘスペリジルジヒドロカルコン、ペリラルチン、タウマチン、アスパラチルフェニルアラニルメチルエステル、p-メトキシシンナミックアルデヒド等が挙げられる。
【0032】
湿潤剤の具体例としては、例えば、ソルビット、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、1,3-ブチレングリコール、ポリプロピレングリコール、キシリット、マルチット、ラクチット、ポリオキシエチレングリコール等が挙げられる。
【0033】
粘結剤の具体例としては、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カルボキシメチルエチルセルロース塩、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、メチルセルロース、エチルセルロース、結晶セルロース、結晶セルロース・カルメロースナトリウム等のセルロース誘導体、キサンタンガム等の微生物産生高分子、トラガントガム、カラヤガム、アラビヤガム、グアーガム、カラギーナン、デキストリン、寒天、ペクチン、プルラン、ジェランガム、ローカストビーンガム、アルギン酸ナトリウム等の天然高分子又は天然ゴム類、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、ポリアクリル酸ナトリウム等の合成高分子、増粘性シリカ、ビーガム等の無機粘結剤、塩化O-[2-ヒドロキシ-3-(トリメチルアンモニオ)プロピル]ヒドロキシエチルセルロース等のカチオン性粘結剤等が挙げられる。
【0034】
防腐剤の具体例としては、例えば、メチルパラベン、エチルパラベン、プロピルパラベン、ブチルパラベン等のパラベン類、安息香酸ナトリウム、フェノキシエタノール、塩酸アルキルジアミノエチルグリシン等が挙げられる。
【0035】
着色剤の具体例としては、例えば、青色1号、黄色4号、赤色202号、緑3号等の法定色素、群青、強化群青、紺青等の鉱物系色素、酸化チタン等が挙げられる。
キレート剤の具体例としては、例えば、エデト酸、エデト酸ナトリウム塩、エデト酸カリウム塩、フィチン酸、ピロリン酸、ポリリン酸、リンゴ酸等が挙げられる。
【0036】
薬効成分の具体例としては、セチルピリジニウム塩化物水和物以外にも、例えば、酢酸d1-α-トコフェロール、コハク酸トコフェロール、又はニコチン酸トコフェロール等のビタミンE類、アスコルビン酸、アスコルビン酸ナトリウム、又はリン酸アスコルビルマグネシウム等のビタミンC類、ピリドキシン塩酸塩等のビタミンB6類、グリチルリチン酸塩、グリチルレチン酸、ドデシルジアミノエチルグリシン等の両性殺菌剤、トリクロサン、イソプロピルメチルフェノール、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ヒノキチオール等の非イオン性殺菌剤、ソルビン酸等のアニオン系殺菌剤、塩酸クロルヘキシジン、塩化ベンザルコニウム、塩化ベンゼトニウム等のカチオン系殺菌剤、デキストラナーゼ、アミラーゼ、プロテアーゼ、ムタナーゼ、リゾチーム、溶菌酵素(リテックエンザイム)等の酵素、モノフルオロリン酸ナトリウム、モノフルオロリン酸カリウム等のアルカリ金属モノフルオロフォスフェート、フッ化ナトリウム、フッ化第一錫等のフッ化物、トラネキサム酸やイプシロンアミノカプロン酸、アルミニウムクロルヒドロキシルアラントイン、ジヒドロコレステロール、銅クロロフィリンナトリウム、クロロフィル、塩化ナトリウム、カロペプタイド、アラントイン、カルバゾクロム、硝酸カリウム、パラチニット等が挙げられる。
【0037】
基剤の具体例としては、例えば、アルコール類、シリコン、アパタイト、白色ワセリン、パラフィン、流動パラフィン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、プラスチベース等が挙げられる。
【0038】
アルコール類の具体例としては、例えば、エチルアルコール、ラウリルアルコール、ミリスチルアルコール等が挙げられる。
研磨剤の具体例としては、例えば、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、第二リン酸カルシウム、第三リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、シリカ、ゼオライト、メタリン酸ナトリウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ピロリン酸カルシウム、ベンガラ、硫酸カルシウム、無水ケイ酸等が挙げられる。
【0039】
安定化剤の具体例としては、例えば、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、乳酸カルシウム、ラノリン、トリアセチン、ヒマシ油、硫酸マグネシウム等が挙げられる。
<適用形態、用途、及び剤形>
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤の適用形態は、特に限定されず、例えば、医薬品、医薬部外品、化粧品として使用することができる。口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤の用途としては、公知の用途を適宜採用することができる。例えば、咀嚼剤、口腔内溶解剤、口腔内崩壊剤、舌ケア剤、口中清涼剤、練歯磨剤、洗口剤、含漱剤、液体歯磨剤、バイオフィルム分散剤、口臭予防剤、歯茎マッサージ剤、口腔用湿潤付与剤、舌苔除去剤、口腔内塗布剤、口腔殺菌剤、咽喉殺菌剤、口腔咽喉剤、歯周病予防剤、歯周病治療剤、義歯装着剤、義歯コーティング剤、義歯安定化剤、義歯保存剤、義歯洗浄剤、インプラントケア剤等が用途として挙げられる。
【0040】
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤の剤形は、特に限定されず、例えば、水、アルコール等の溶媒を含有することにより、軟膏剤、ペースト剤、パスタ剤、スプレー剤、ジェル剤、液剤、懸濁剤、ガム剤、タブレット、ドロップ等の形態(剤形)等に適用することができる。
【0041】
溶媒として用いられる水の種類は特に限定されず、例えば蒸留水、純水、超純水、精製水、水道水等を用いることができる。溶媒として用いられるアルコールの種類は特に限定されず、例えばエタノールを用いることができる。水とアルコールを混合して用いることもできる。
【0042】
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤は、歯周病予防用に用いられることが好ましい。口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤は、ペースト剤であることが特に好ましい。
【0043】
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤が液状に構成されている場合において、水等の溶媒の含有量は、特に制限されないが、60質量%以上99.8質量%以下であることが好ましく、65質量%以上90質量%以下であることがより好ましい。
【0044】
<作用及び効果>
本実施形態の作用について説明する。
口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤は、上述した(A)成分と(B)成分とを含有していること、及び(B)成分を高濃度で含有していることによって、プロテアーゼ活性阻害作用を発揮する。例えば、ジンジパインのプロテアーゼ活性阻害作用を発揮する。以下では、ジンジパインのプロテアーゼ活性をジンジパイン活性ということもある。ジンジパイン活性阻害作用は、クエン酸換算量が多いほど、強く作用する。
【0045】
ジンジパイン活性を阻害することによって、歯周病を予防することができる。ジンジパイン活性を阻害することによって、歯周病の進行を抑制することができる。
本実施形態の効果について説明する。
【0046】
(1)本実施形態の口腔用組成物及びプロテアーゼ活性阻害剤は、(A)成分と(B)成分とを含有している。クエン酸含有成分である(B)成分を高濃度で含有していることによって、ジンジパイン活性阻害作用が好適に発揮される。
【0047】
(2)ジンジパイン活性を阻害することによって、歯周病を予防する効果、歯周病の進行を抑制する効果、及び歯周組織の破壊を抑制する効果が期待できる。
なお、上記実施形態は以下のように変更して実施できる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施できる。
【0048】
・ヒト以外のペット、家畜等の飼養動物に適用してもよい。
【実施例0049】
本実施形態の口腔用組成物について、以下の実施例に基づいてさらに詳細に説明する。なお、口腔用組成物は、実施例欄に記載の構成に限定されるものではない。
<サンプル溶液の調製>
実施例1、2及び比較例1~3のサンプル溶液をそれぞれ調製した。実施例1、2及び比較例1~3の各サンプル溶液が含有する成分の含有量は、表1に示すとおりである。各サンプル溶液の残部は水である。
【0050】
【表1】
<菌液の準備>
10
6個/mLのPorphyromonas gingivalis W83株(以下、「P.g」と表記することがある。)を解凍し、10mL変法GAM培地を含む試験管に播種した。その後、試験管を37℃嫌気条件下で1日培養し、前培養とした。前培養で得られた菌液1mLを新しい10mL変法GAM培地を含む試験管に移し、37℃嫌気条件下で1日培養し、本培養とした。本培養で得られたP.gを変法GAM培地にてO.D600=1.0の濃度に調整し、培養液とした。
【0051】
<プロテアーゼ活性阻害試験>
96ウェルプレートを用いて、サンプル溶液100μLと培養液100μLとを混合した。各ウェルにコラーゲンディスク(AteloCell ハニカムディスク96、高研社製)を入れて、コラーゲンディスクを混合液に浸漬させた。水200μLのみを添加したウェルにコラーゲンディスクを入れてコントロールとした。37℃嫌気条件下でインキュベートした。2日後及び5日後に顕微鏡を用いてコラーゲンディスクを観察した。
【0052】
<評価>
5日後に観察した結果に基づいて、ジンジパイン活性阻害作用を評価した。
図1は、5日後に観察した際に撮影した写真である。
【0053】
図1に示すように、コントロールでは、孔が明確であり、コラーゲンディスクの構造が崩れていない。観察したコラーゲンディスクの構造が崩れていないほど、ジンジパイン活性が阻害されたことを示す。評価基準を以下に示す。結果を表1に示す。
【0054】
・評価基準
○(優):コントロールと比較して、コラーゲンディスクの構造が崩れていない。
×(不可):コントロールと比較して、コラーゲンディスクの構造が崩れている。
【0055】
図1及び表1に示すように、比較例1~3では、コラーゲンが細かく分解されており、コラーゲンディスクの構造が崩れていた。比較例1~3では、ジンジパイン活性阻害作用を確認できなかった。
【0056】
これに対して、実施例1及び2は、コラーゲンディスクの構造が崩れていなかった。実施例1及び2は、優れたジンジパイン活性阻害作用を発揮することが確認された。
実施例1及び2は、(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4%以上である。これに対して比較例1~3は、(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4%未満である。実施例1、2及び比較例1~3の結果から、ジンジパイン活性阻害作用は、(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上である場合に発揮されることがわかる。
【0057】
すなわち、ジンジパイン活性阻害作用は、(A)成分及び(B)成分を含有しており、(B)成分の含有量がクエン酸換算で0.4質量%以上である場合に発揮されることがわかる。