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特開2024-176807ロータの製造装置及びロータの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176807
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】ロータの製造装置及びロータの製造方法
(51)【国際特許分類】
   H02K 15/02 20060101AFI20241212BHJP
   H02K 1/276 20220101ALI20241212BHJP
【FI】
H02K15/02 K
H02K1/276
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095617
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100105957
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100068755
【弁理士】
【氏名又は名称】恩田 博宣
(72)【発明者】
【氏名】竹本 雅昭
【テーマコード(参考)】
5H615
5H622
【Fターム(参考)】
5H615AA01
5H615BB07
5H615BB14
5H615PP01
5H615PP06
5H615SS10
5H615SS13
5H615SS16
5H615SS44
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA07
5H622CA10
5H622CB03
5H622CB05
5H622PP20
(57)【要約】
【課題】樹脂充填工程と溶接工程とで治具を共通化することができるロータの製造装置及びロータの製造方法を提供する。
【解決手段】ロータの製造装置は、ロータコア11の端面に当接するとともに、端面に開口する磁石収容孔13の第1開口部を塞ぐ積層治具20と、磁石収容孔13の第1開口部とは反対側の第2開口部13bを塞ぐように配置され、第2開口部13bに対して樹脂を供給する供給部を有するカルプレートとを備えている。積層治具20のうちロータコア11の軸線方向において鉄心片同士が溶接される溶接箇所Wに対向する部分には、ロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置する第1逃がし部24が設けられている。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の鉄心片が積層されてなるとともに、磁石が収容される複数の磁石収容孔を有する円筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に充填される樹脂と、を備え、前記鉄心片同士が溶接されて連結されているロータを製造する装置であって、
前記ロータコアの一方の端面に当接するとともに、前記端面に開口する前記磁石収容孔の第1開口部を塞ぐ第1部材と、
前記磁石収容孔の前記第1開口部とは反対側の第2開口部を塞ぐように配置され、前記第2開口部に対して前記樹脂を供給する供給部を有する第2部材と、を備え、
前記ロータコアの軸線が延びる方向を軸線方向とするとき、
前記第1部材のうち前記軸線方向において前記鉄心片同士が溶接される溶接箇所に対向する部分には、前記ロータコアの外周面よりも内周側に位置する逃がし部が設けられている、
ロータの製造装置。
【請求項2】
前記逃がし部を第1逃がし部とするとき、
前記第2部材のうち前記軸線方向において前記溶接箇所に対向する部分には、前記ロータコアの前記外周面よりも内周側に位置する第2逃がし部が設けられている、
請求項1に記載のロータの製造装置。
【請求項3】
請求項1に記載のロータの製造装置を用いて前記ロータを製造する方法であって、
前記第1部材、前記ロータコア、及び前記第2部材を、第1型と、前記第1型に対して接近及び離間可能に設けられた第2型と、の間に搬送する第1搬送工程と、
前記第2型から前記第2開口部に対して前記樹脂を、前記供給部を介して供給することで前記磁石収容孔に前記樹脂を充填する樹脂充填工程と、
前記第1型及び前記第2型の間から前記第1部材及び前記ロータコアを取り出して前記鉄心片同士を溶接する溶接ラインに搬送する第2搬送工程と、
前記溶接ラインにおいて、前記ロータコアが前記第1部材に当接された状態で前記ロータコアの前記溶接箇所を溶接する溶接工程と、を備える、
ロータの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ロータの製造装置及びロータの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、磁石埋込型モータを構成するロータの製造方法が記載されている。この製造方法は、複数枚の金属板を積層して形成されるロータコアの磁石用孔に磁石を挿入した後に、磁石用孔を樹脂で封止する工程(以下、樹脂充填工程)と、金属板同士を溶接により結束する工程(以下、溶接工程)とを備えている。
【0003】
樹脂充填工程では、例えば特許文献2に記載の製造装置が用いられる。
この製造装置は、固定型と、カルプレートと、固定型に対して接離可能に設けられた可動型とを備えている。
【0004】
固定型は、型本体と、支持部材と、スペーサとを備えている。支持部材は、型本体の上面に固定されるベース部と、ベース部の中央から突出してロータコアの中心孔に挿入される円筒状のポスト部とを有している。スペーサは、支持部材の上面に配置されるとともに、ロータコアの下面に当接する。
【0005】
カルプレートは、ロータコアの上面に載置される。カルプレートには、ロータコアの各磁石収容孔に対して樹脂を充填するための複数の充填ポットが設けられている。
可動型は、型本体と、プレート部とを有している。プレート部は、型本体の下面に固定されるとともに、カルプレートの上面に当接する。プレート部には、充填ポットに接続される複数の第1樹脂供給通路が設けられている。型本体には、第1樹脂供給通路に連通する複数の第2樹脂供給通路が設けられている。
【0006】
こうした製造装置では、型本体の第2樹脂供給通路に樹脂を供給することで、第1樹脂供給通路及び充填ポットを介してロータコアの磁石収容孔に樹脂が充填される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2021-48674号公報
【特許文献2】特開2019-140842号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、特許文献2に記載の製造装置を含む従来の製造装置においては、部品点数削減の観点から、樹脂充填工程と、その後の溶接工程とで支持部材及びスペーサを有する治具を共通化することが望まれている。しかしながら、この場合、溶接時にロータコアとスペーサとが溶接されたり、溶接機が支持部材及びスペーサに干渉したりするといった問題が生じる。そのため、従来、樹脂充填工程の後にはロータコアから上記治具を取り外すとともに同ロータコアに上記治具とは別の溶接用の治具を取り付けるといった手間が生じる。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するためのロータの製造装置は、複数枚の鉄心片が積層されてなるとともに、磁石が収容される複数の磁石収容孔を有する円筒状のロータコアと、前記磁石収容孔に充填される樹脂と、を備え、前記鉄心片同士が溶接されて連結されているロータを製造する装置であって、前記ロータコアの一方の端面に当接するとともに、前記端面に開口する前記磁石収容孔の第1開口部を塞ぐ第1部材と、前記磁石収容孔の前記第1開口部とは反対側の第2開口部を塞ぐように配置され、前記第2開口部に対して前記樹脂を供給する供給部を有する第2部材と、を備え、前記ロータコアの軸線が延びる方向を軸線方向とするとき、前記第1部材のうち前記軸線方向において前記鉄心片同士が溶接される溶接箇所に対向する部分には、前記ロータコアの外周面よりも内周側に位置する逃がし部が設けられている。
【0010】
同構成によれば、第2部材の供給部を介して複数の磁石収容孔の第2開口部に樹脂が供給される。これにより、複数の磁石収容孔に樹脂が充填される。
また、上記構成によれば、第1部材が逃がし部を有している。そのため、溶接機が溶接箇所のうち軸線方向における上記端面側に位置する部分を溶接する際に、ロータコアと第1部材とが溶接されることが抑制される。また、上記部分を溶接する際に溶接機が第1部材に干渉する場合であっても、溶接機が逃がし部によって逃がされることにより溶接機と第1部材との干渉が抑制される。こうしたことから、第1部材を取り外すことなく、ロータコアの溶接箇所を溶接することが可能となる。したがって、樹脂充填工程と溶接工程とで第1部材を共通化することができる。
【0011】
また、上記課題を解決するためのロータの製造方法は、上記のロータの製造装置を用いて前記ロータを製造する方法であって、前記第1部材、前記ロータコア、及び前記第2部材を、第1型と、前記第1型に対して接近及び離間可能に設けられた第2型と、の間に搬送する第1搬送工程と、前記第2型から前記第2開口部に対して前記樹脂を、前記供給部を介して供給することで前記磁石収容孔に前記樹脂を充填する樹脂充填工程と、前記第1型及び前記第2型の間から前記第1部材及び前記ロータコアを取り出して前記鉄心片同士を溶接する溶接ラインに搬送する第2搬送工程と、前記溶接ラインにおいて、前記ロータコアが前記第1部材に当接された状態で前記ロータコアの前記溶接箇所を溶接する溶接工程と、を備える。
【0012】
同方法によれば、樹脂充填工程において複数の磁石収容孔に樹脂が充填される。
また、上記方法によれば、ロータコアが逃がし部を有する第1部材に取り付けられた状態で溶接工程を行うことが可能となる。したがって、樹脂充填工程と溶接工程とで第1部材を共通化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1図1は、一実施形態に係るロータの製造装置を用いて製造されるロータの斜視図である。
図2図2は、図1のロータの断面図である。
図3図3は、一実施形態に係るロータの製造装置と、ロータコアとを示す断面図である。
図4図4は、同実施形態における第1部材と、ロータコアとを示す平面図である。
図5図5は、図3の製造装置及びロータコアについて、逃がし部を中心に示す断面図である。
図6図6は、図5の製造装置及びロータコアの平面図である。
図7図7は、樹脂充填工程を示す図であって、図3に対応する断面図である。
図8図8は、樹脂充填工程を示す図であって、樹脂が磁石収容孔に充填された状態を示す断面図である。
図9図9は、溶接工程を示す図であって、図5に対応する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図1図9を参照して、ロータの製造装置及びロータの製造方法の一実施形態について説明する。
<ロータ10>
まず、図1及び図2を参照して、本実施形態の製造装置70を用いて製造される磁石埋込型モータのロータ10について説明する。
【0015】
図1及び図2に示すように、ロータ10は、ロータコア11、磁石14、及び樹脂15を備えている。
ロータコア11は、軸線Cを有する円筒状である。
【0016】
なお、以降において、ロータコア11の軸線方向を単に軸線方向とし、ロータコア11の径方向を単に径方向とし、ロータコア11の周方向を単に周方向として説明する。
ロータコア11は、電磁鋼板から打ち抜かれた複数の鉄心片12を軸線方向に積層することにより構成されている。
【0017】
ロータコア11は、中心孔11aと、複数の磁石収容孔13とを有している。
中心孔11aは、円形状であり、ロータコア11を軸線方向に貫通している。中心孔11aの内周面には、軸線Cを挟んで互いに対向する一対のキー部11bが突設されている。
【0018】
複数の磁石収容孔13は、中心孔11aの径方向の外側に位置するとともに周方向に互いに間隔をおいて設けられている。複数の磁石収容孔13の各々は、平面視長方形状であり、ロータコア11を軸線方向に貫通している。したがって、磁石収容孔13は、軸線方向におけるロータコア11の一方(図1の上下方向における下側)の端面11cに開口する第1開口部13aと、第1開口部13aとは反対側の第2開口部13bとを有している。
【0019】
図2に示すように、各磁石収容孔13には、磁石14が収容されている。磁石14は、軸線方向に延びる直方体状である。磁石14は、例えば永久磁石である。
図2に示すように、各磁石収容孔13の内部には、ロータコア11に対して磁石14を固定するための樹脂15が充填されている。樹脂15は、例えばエポキシ樹脂などの熱硬化性樹脂である。
【0020】
図1に示すように、ロータ10の鉄心片12同士は、樹脂15によりロータコア11の各磁石収容孔13に対して磁石14が固定された状態において、ロータコア11の外周面11eに設けられた複数の溶接箇所Wを溶接することで連結されている。
【0021】
図1に示すように、各溶接箇所Wは、軸線方向に沿って端面11cから、端面11cとは反対側の端面11dまで延びている。複数の溶接箇所Wは、周方向において互いに等間隔に設けられている。本実施形態では、溶接箇所Wは、周方向に隣り合う磁石収容孔同士の間の隙間と径方向において対応する位置に設けられている。
【0022】
次に、図3図6を参照してロータ10の製造装置70について説明する。なお、図4及び図6では、同一の構成が連続して並ぶものについては一部図示を省略して二点鎖線で示している。また、説明の便宜上、磁石14の図示を省略している。
【0023】
製造装置70は、ロータコア11を支持する積層治具20と、軸線方向においてロータコア11を挟んで積層治具20とは反対側に配置されるカルプレート30とを備えている。なお、本実施形態では、積層治具20が本発明に係る第1部材に相当し、カルプレート30が本発明に係る第2部材に相当する。
【0024】
また、以降では、軸線方向においてロータコア11に対して積層治具20側を「下」、「下側」などと称し、ロータコア11に対してカルプレート30側を「上」、「上側」などと称する。
【0025】
<積層治具20>
図3及び図4に示すように、積層治具20は、プレート部21と、ポスト部26とを有している。
【0026】
プレート部21は、下側プレート22と、下側プレート22の上面22aに配置された上側プレート23とを有している。
下側プレート22は、平板状である。
【0027】
上側プレート23は、略円板状である。上側プレート23の上面23aは、磁石収容孔13の第1開口部13aを塞ぐようにロータコア11の端面11cに当接している。
図4及び図5に示すように、上側プレート23は、上側プレート23の外周面23bに設けられた凹部としての第1逃がし部24を有している。第1逃がし部24の底面24aは、ロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置している。
【0028】
第1逃がし部24は、軸線方向において複数の溶接箇所Wの各々と対向する部分に設けられている。第1逃がし部24は、軸線方向において複数の磁石収容孔13とは重ならない位置に設けられている。
【0029】
上側プレート23は、ロータコア11の外周面11eよりも外周側に位置する部分25と、第1逃がし部24とが周方向において交互に並んだ形状を成している(図4参照)。
図3及び図5に示すように、ポスト部26は、円筒状であり、下側プレート22の中央部から上側に向けて突出している。ポスト部26は、上側プレート23を貫通している。ポスト部26は、ロータコア11の中心孔11aに挿入される。
【0030】
ポスト部26の外周面には、ロータコア11の各キー部11bが挿入される一対のキー溝部27が設けられている。ポスト部26のキー溝部27に対してロータコア11のキー部11bが挿入されることで、下側プレート22に対するロータコア11の位相、より詳しくはロータコア11を構成する各積層ブロックの位相が決められる。
【0031】
ポスト部26の上端26aには、上側に向かって突出する複数の位置決めピン28が設けられている。位置決めピン28は、周方向において互いに間隔をあけて設けられている。なお、図4では、位置決めピン28の図示を省略している。
【0032】
<カルプレート30>
図3及び図5に示すように、カルプレート30は、磁石収容孔13の第2開口部13bを塞ぐようにロータコア11の端面11d上に配置される。
【0033】
図3及び図6に示すように、カルプレート30は、複数の磁石収容孔13にそれぞれ樹脂15を充填する複数の供給部31を有している。複数の供給部31は、周方向において等間隔に設けられている。各供給部31は、一対の磁石収容孔13の間の部分に対応する位置に設けられている。
【0034】
各供給部31は、ランナー部32と、ランナー部32と磁石収容孔13とを連通する一対の連通孔33とを有している。
ランナー部32は、カルプレート30の上面30aに開口している。各連通孔33は、ランナー部32の底面に開口するとともにカルプレート30を軸線方向に貫通している。すなわち、各連通孔33は、カルプレート30の下面30bにも開口している。
【0035】
カルプレート30の中央部には、位置決めピン28が挿入される位置決め孔34が設けられている。
図5及び図6に示すように、カルプレート30は、カルプレート30の外周面30cに設けられた凹部としての第2逃がし部35を有している。第2逃がし部35の底面35aは、ロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置している。
【0036】
第2逃がし部35は、軸線方向において複数の溶接箇所Wの各々と対向する部分に設けられている。第2逃がし部35は、軸線方向において複数の磁石収容孔13と重ならない位置に設けられている。
【0037】
カルプレート30は、ロータコア11の外周面11eよりも外周側に位置する部分36と、第2逃がし部35とが周方向において交互に並んだ形状を成している(図6参照)。本実施形態では、カルプレート30は、平面視において上側プレート23と同一の形状を有している。
【0038】
<ロータ10の製造方法>
次に、図3、及び図7図9を参照して、ロータ10の製造方法について説明する。
ロータ10の製造方法は、第1搬送工程、樹脂充填工程、第2搬送工程、及び溶接工程を備えている。
【0039】
まず、図3に示すように、積層治具20の上側プレート23の上面23aにロータコア11が配置される。次に、第2開口部13bから磁石収容孔13に磁石14が挿入されて収容される。次に、ロータコア11の端面11d上にカルプレート30が配置される。このとき、位置決め孔34に位置決めピン28が挿入されることでポスト部26、すなわち積層治具20に対するカルプレート30の位置決めがなされる。
【0040】
そして、積層治具20、ロータコア11、磁石14、及びカルプレート30が、第1型40と第1型40に対して接近及び離間可能に設けられた第2型50との間に搬送される(以上、第1搬送工程)。
【0041】
次に、図7に示すように、第2型50を第1型40に接近させて第2型50の下面50aをカルプレート30の上面30aに当接させる。第2型50には、複数の供給部31の各々に樹脂15を供給する複数の供給路51が設けられている。供給路51には、熱硬化性樹脂からなる樹脂ペレットPが配置される。樹脂ペレットPは、例えば、第2型50の内部に設けられた図示しないヒータにより所定の温度まで加熱されることにより、供給路51の内部において溶融する。第2型50には、供給路51に対して挿抜可能に構成された複数のプランジャ52が設けられている。各プランジャ52は、供給路51の内部において溶融した樹脂15を磁石収容孔13に充填すべく、当該樹脂15に圧力を付与する。これにより、図8に示すように、樹脂15が供給部31を介して磁石収容孔13の内部に充填される。なお、磁石収容孔13に充填された樹脂15は、図示しない加熱装置に製造装置70とともに投入されることにより固化する(以上、樹脂充填工程)。
【0042】
次に、第1型40及び第2型50の間から積層治具20、樹脂15により各磁石収容孔13に磁石14が固定されたロータコア11、及びカルプレート30が取り出されて、溶接ラインに搬送される(以上、第2搬送工程)。
【0043】
その後、図9に示すように、溶接ラインにはロータコア11の各鉄心片12を溶接する複数の溶接トーチ61を備える溶接機60が設けられている。溶接方法としては、例えばレーザ溶接である。
【0044】
各溶接トーチ61は、ロータコア11の軸線方向に昇降可能に設けられている。溶接トーチ61は、図9に二点鎖線にて示すように軸線方向に移動しながら溶接箇所Wの溶接を行う。これにより鉄心片12同士が溶接される(以上、溶接工程)。
【0045】
以上のようにして、ロータ10が製造される。
次に、本実施形態の作用効果について説明する。
(1)製造装置70は、ロータコア11の端面11cに当接するとともに、端面11cに開口する磁石収容孔13の第1開口部13aを塞ぐ積層治具20を備える。また、製造装置70は、磁石収容孔13の第2開口部13bを塞ぐように配置され、第2開口部13bに対して樹脂15を供給する供給部31を有するカルプレート30を備えている。
【0046】
こうした構成によれば、カルプレート30の供給部31を介して複数の磁石収容孔13の第2開口部13bに樹脂15が供給される。これにより、複数の磁石収容孔13に樹脂15が充填される。
【0047】
(2)積層治具20の上側プレート23のうち軸線方向において鉄心片12同士が溶接される溶接箇所Wに対向する部分には、ロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置する第1逃がし部24が設けられている。
【0048】
こうした構成によれば、溶接機60の溶接トーチ61が溶接箇所Wのうち軸線方向における端面11c側に位置する部分を溶接する際に、ロータコア11と上側プレート23とが溶接されることが抑制される。また、上記部分を溶接する際に溶接トーチ61が上側プレート23に干渉する場合であっても、溶接トーチ61が第1逃がし部24によって逃がされることにより溶接トーチ61と上側プレート23との干渉が抑制される。こうしたことから、上側プレート23、ひいては積層治具20を取り外すことなく、ロータコア11の溶接箇所Wを溶接することが可能となる。したがって、樹脂充填工程と溶接工程とで積層治具20を共通化することができる。
【0049】
また、上記構成によれば、樹脂充填工程と溶接工程との間で積層治具20をロータコア11から取り外す工程が省略される。したがって、積層治具20をロータコア11から取り外す際にロータコア11に傷が生じることを低減できる。
【0050】
(3)カルプレート30のうち軸線方向において溶接箇所Wに対向する部分には、ロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置する第2逃がし部35が設けられている。
こうした構成によれば、カルプレート30においても効果(2)と同様の作用を奏する。したがって、樹脂充填工程と溶接工程とで積層治具20及びカルプレート30を共通化することができる。
【0051】
また、上記構成によれば、樹脂充填工程と溶接工程との間でカルプレート30をロータコア11から取り外す工程が省略される。したがって、カルプレート30をロータコア11から取り外す際にロータコア11に傷が生じることを低減できる。
【0052】
(4)ロータ10の製造方法は、第1搬送工程と、樹脂充填工程と、第2搬送工程と、溶接工程とを備える。
こうした方法によれば、効果(1)~(3)と同様の作用効果を奏することができる。
【0053】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0054】
・カルプレート30は、ロータコア11の外周面11eよりも外周側に位置する部分36と、第2逃がし部35とが周方向において交互に並んだ形状となるものに限定されない。カルプレート30は、外周面30cのうち第2逃がし部35以外の部分がロータコア11の外周面11eと面一となるようにしてもよい。また、複数の磁石収容孔13の第2開口部13bを塞ぐものであれば、外周面30cが周方向全体にわたってロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置するような形状としてもよい。
【0055】
・カルプレート30は、第2逃がし部35を複数有する形状に限定されず、例えば、平面視円形状としてもよい。すなわち、カルプレート30の外周面30cが周方向の全体にわたって第2逃がし部となるものであってもよい。
【0056】
・樹脂15は、本実施形態で例示した熱硬化性樹脂に限定されず、例えば液晶ポリマー(Liquid Crystal Polymer(LCP))等の熱可塑性樹脂を用いるようにしてもよい。この場合、カルプレート30にかえて各磁石収容孔13に溶融した熱可塑性樹脂を供給するランナ及びゲートを備えたランナプレートを用いるようにすればよい。この場合であっても、ランナプレートに対して第2逃がし部を設けるようにすればよい。
【0057】
・カルプレート30から第2逃がし部35を省略してもよい。この場合、溶接工程にてカルプレート30をロータコア11から取り外すとともにロータコア11の端面11d上に溶接用の治具を配置するようにすればよい。
【0058】
・上側プレート23は、ロータコア11の外周面11eよりも外周側に位置する部分25と、第1逃がし24とが周方向において交互に並んだ形状となるものに限定されない。上側プレート23は、外周面23bのうち第1逃がし部24以外の部分がロータコア11の外周面11eと面一となるようにしてもよい。また、複数の磁石収容孔13の第1開口部13aを塞ぐものであれば、外周面23bが周方向全体にわたってロータコア11の外周面11eよりも内周側に位置するような形状としてもよい。
【0059】
・上側プレート23は、第1逃がし部24を複数有する形状に限定されず、例えば、平面視円形状としてもよい。すなわち、上側プレート23の外周面23bが周方向の全体にわたって第1逃がし部となるものであってもよい。
【符号の説明】
【0060】
C…軸線
W…溶接箇所
10…ロータ
11…ロータコア
11a…中心孔
11b…キー部
11c…端面
11d…端面
11e…外周面
12…鉄心片
13…磁石収容孔
13a…第1開口部
13b…第2開口部
14…磁石
15…樹脂
20…積層治具
21…プレート部
22…下側プレート
23…上側プレート
24…第1逃がし部
30…カルプレート
31…供給部
35…第2逃がし部
40…第1型
50…第2型
60…溶接機
70…製造装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9