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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176824
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】車両用ドアの制御装置
(51)【国際特許分類】
   E05C 17/22 20060101AFI20241212BHJP
   B60J 5/04 20060101ALI20241212BHJP
【FI】
E05C17/22 A
B60J5/04 K
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095644
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】000241496
【氏名又は名称】豊田鉄工株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100106781
【弁理士】
【氏名又は名称】藤井 稔也
(72)【発明者】
【氏名】若尾 優志
(72)【発明者】
【氏名】竹腰 幸亮
(57)【要約】
【課題】利便性を保ちつつ、簡単な構成によりドアが障害物に衝突することを抑制できる車両用ドアの制御装置を提供する。
【解決手段】フロントドア10の制御装置97は、ドア本体部10aと、回動部材40と、接続部材50を介して回動部材40に連結されるロック機構30とを備える。回動部材40は、フランジ部13bに格納される第1位置と、フランジ部13bよりも外方に突出する第2位置と、第1位置に対して第2位置よりもさらに離れる側に回動した第3位置との間で回動可能である。ロック機構30は、回動部材40が第2位置から第3位置まで回動されることに伴って生じる接続部材50の引張荷重の作用によりドアヒンジ20に係合してドアヒンジの回動を制限する係合部35を有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両の開口の縁部にドアヒンジを介して連結されて前記開口を開閉可能なドア本体部と、
前記ドア本体部の先端部に回動可能に支持された回動部材と、
接続部材を介して前記回動部材に連結され、前記ドア本体部の開閉を制限するロック機構と、を備え、
前記回動部材は、前記ドア本体部が閉状態のときに前記先端部に格納される第1位置と、前記ドア本体部が開状態のときに前記先端部よりも外方に突出する第2位置と、前記第1位置に対して前記第2位置よりもさらに離れる側に回動した第3位置と、の間で回動可能であり、
前記ロック機構は、前記ドア本体部が前記開状態のときに前記回動部材が前記第2位置から前記第3位置まで回動されることに伴って生じる前記接続部材の引張荷重の作用により前記ドアヒンジに係合して前記ドアヒンジの回動を制限する係合部を有する、
車両用ドアの制御装置。
【請求項2】
前記ロック機構は、前記ドアヒンジの回動軸に平行な軸線と直交する軸線を中心に回動するレバーを備え、
前記レバーの一端には、前記接続部材が連結されており、前記レバーの他端には、前記係合部が連結されており、
前記レバーは、前記レバーの回動方向において、前記一端が前記ドアヒンジに近づくとともに、前記他端が前記ドアヒンジから離れる側に向かうように付勢されている、
請求項1に記載の車両用ドアの制御装置。
【請求項3】
前記ロック機構は、前記ドアヒンジを含んでおり、
前記ドアヒンジ及び前記係合部には、互いに嵌合し合うことで前記ドアヒンジの回動を制限する凹凸形状が形成されている、
請求項1または請求項2に記載の車両用ドアの制御装置。
【請求項4】
前記回動部材は、前記ドア本体部よりも軟質な樹脂材料により形成されている、
請求項1に記載の車両用ドアの制御装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアの制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、車両用ドアの開閉装置が開示されている。この開閉装置は、車両の乗降用のドアに設けられて、ドアの最大開閉角度を規制可能なドア開度規制手段と、乗員の乗降動作を検出可能な乗降動作検出手段とを備えている。
【0003】
また、開閉装置は、ドアの開閉状態を検出可能なドア開閉センサと、インナードアハンドルが操作されたことを検出可能なインナードアハンドルセンサと、アウタードアハンドルが操作されたことを検出可能なアウタードアハンドルセンサとを備えている。
【0004】
乗降動作検出手段は、ドア開閉センサ及びインナードアハンドルセンサからの信号に基づいて乗員の降車動作が行われているかどうかを判断する。また、ドア開閉センサ及びアウタードアハンドルセンサからの信号に基づいて乗員の乗車動作が行われているかどうかを判断する。
【0005】
乗降動作検出手段において降車動作が行われていると判断された場合には、ドア開度規制手段によってドアの最大開閉角度がドアの全開角度よりも小さい第一の角度に規制される。また、乗降動作検出手段において乗車動作が行われていると判断された場合には、ドア開度規制手段によってドアの最大開閉角度が上記第一の角度よりも大きい第二の角度に規制される。
【0006】
こうした開閉装置によれば、ドアを障害物に衝突させる可能性が高い降車動作時において、ドアと障害物との衝突が抑制される。一方で、乗員が比較的車両周囲の状況を把握しやすい乗車動作時において、ドアと障害物との衝突を抑制しつつ車両の利便性が保たれる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2008-121196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、こうした装置においては、ドアが障害物に衝突しない場合であっても、乗降動作検出手段によって降車動作が行われていると判断されればドアの最大開閉角度が制限される。そのため、降車時の車両の利便性が低下するといった問題がある。また、乗員の乗車動作時においては未だにドアと障害物とが衝突するおそれがある点で改善の余地がある。さらに、上述した乗降動作検出手段が乗降動作を検出するためにはセンサからの信号を要するため、センサの分だけ装置の構造が複雑化するといった問題もある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための車両用ドアの制御装置は、車両の開口の縁部にドアヒンジを介して連結されて前記開口を開閉可能なドア本体部と、前記ドア本体部の先端部に回動可能に支持された回動部材と、接続部材を介して前記回動部材に連結され、前記ドア本体部の開閉を制限するロック機構と、を備え、前記回動部材は、前記ドア本体部が閉状態のときに前記先端部に格納される第1位置と、前記ドア本体部が開状態のときに前記先端部よりも外方に突出する第2位置と、前記第1位置に対して前記第2位置よりもさらに離れる側に回動した第3位置と、の間で回動可能であり、前記ロック機構は、前記ドア本体部が前記開状態のときに前記回動部材が前記第2位置から前記第3位置まで回動されることに伴って生じる前記接続部材の引張荷重の作用により前記ドアヒンジに係合して前記ドアヒンジの回動を制限する係合部を有する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、一実施形態の車両用ドアの制御装置が適用される車両を示す側面図である。
図2図2は、図1のドア本体部を示す部分断面図である。
図3図3は、図1のロック機構を示す斜視図である。
図4図4は、図1の回動部材を示す斜視図である。
図5図5は、ドア本体部が閉状態のときの車両を示す平面図である。
図6図6は、ドア本体部が開状態のときの車両を示す平面図である。
図7図7は、回動部材が障害物に衝突した状態の車両を示す平面図である。
図8図8は、図6の回動部材を拡大して示す斜視図である。
図9図9は、図7の回動部材を拡大して示す斜視図である。
図10図10は、図6のときのロック機構の状態を示す側面図である。
図11図11は、図10の要部を拡大して示す斜視図である。
図12図12は、図7のときのロック機構の状態を示す側面図である。
図13図13は、図12の要部を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図1図13を参照して、車両用ドアの制御装置の一実施形態について説明する。以降では、車両90の前後方向を単に前後方向Xとし、車両90の車幅方向を単に車幅方向Yとし、車両90の高さ方向を単に高さ方向Zとして説明する。また、車幅方向Yにおいて車室内側に近づく側を単に車内側とし、車外側に近づく側を車外側として説明する。なお、本実施形態では、車両90の前後方向Xにおいて後方から前方を見た時の右側に位置するフロントドア10の制御装置97として本発明を具体化している。
【0012】
<フロントドア10の制御装置97の基本構成>
図1及び図2に示すように、車両90には、車体91の側面に形成された乗員乗降用のドア開口92を開閉するフロントドア10と、フロントドア10の制御装置97が設けられている。
【0013】
フロントドア10は、所謂ヒンジ式ドアであり、ドアヒンジ20を介してドア開口92の縁部92aに連結されている。詳しくは、フロントドア10は、縁部92aの一部を構成する車体91のフロントピラー93に連結されている。これにより、フロントドア10は、ドア開口92を閉鎖した閉状態(図1及び図5参照)と、ドア開口92を開放した開状態(図6及び図7参照)との間で水平回動可能にされている。
【0014】
フロントドア10は、ドアヒンジ20が取り付けられるドア本体部10aと、ドア本体部10aとともに窓開口94を形成する窓枠部10bとを有している。なお、以降では、フロントドア10の閉状態及び開状態をドア本体部10aの閉状態及び開状態として説明する。
【0015】
ドア本体部10aには、ロック機構30と、回動部材40と、ロック機構30と回動部材40とを接続する接続部材50と、が取り付けられている。本実施形態では、ドア本体部10aと、ドアヒンジ20と、ロック機構30と、回動部材40と、接続部材50とによって、フロントドア10の制御装置97が構成されている。
【0016】
以下、各構成について詳細に説明する。以降では、各構成についてドア本体部10aが閉状態のときを中心に説明する。なお、図2では、説明の便宜上、構成の一部についてドア本体部10aが開状態のときを二点鎖線で示している。
【0017】
<ドア本体部10a>
図1及び図2に示すように、ドア本体部10aは、ドアインナパネル11と、ドアインナパネル11よりも車外側に位置するドアアウタパネル14とを有している。ドアインナパネル11及びドアアウタパネル14は、例えば金属材料により形成されている。
【0018】
ドアインナパネル11は、車内側からドアトリム95が取り付けられるパネル本体部12と、パネル本体部12の外縁から立ち上がるフランジ部13とを有している。
フランジ部13は、パネル本体部12の外縁からドアアウタパネル14に向かって延びるとともに先端が前後方向Xにおいてパネル本体部12から離れる側に屈曲して延びている。フランジ部13の一部(以下、フランジ部13a)は、車体91のフロントピラー93に前後方向Xにおいて対向している。また、前後方向Xにおいてフランジ部13aとは反対側の部分(以下、フランジ部13b)は、車体91のセンターピラー96に対向している。
【0019】
フランジ部13bは、前後方向Xにおいてドア本体部10aの最も後方に位置している。すなわち、フランジ部13bは、ドアヒンジ20側から見た時のドア本体部10aの最も先端側に位置する。すなわち、フランジ部13bが、本発明に係る先端部に相当する。
【0020】
図2に示すように、フランジ部13bには、回動部材40が格納される凹形状としての格納部16が設けられている。
図1及び図2に示すように、ドアアウタパネル14は、車外側からドアインナパネル11の全体を覆っている。これにより、パネル本体部12と、フランジ部13と、ドアアウタパネル14とによって囲まれた空間S1が形成されている。空間S1には、例えば周知のパワーウィンドウ装置に関わるレギュレータやモータ、ウィンドウガラスの他、ドアロック装置等(いずれも図示略)が収容される。
【0021】
<ドアヒンジ20>
図2及び図3に示すように、ドアヒンジ20は、車体91に固定される車体側固定部21と、フロントドア10に固定されるドア側固定部25と、高さ方向Zに延びるヒンジ軸28とを有している。
【0022】
車体側固定部21は、車体91に締結固定するための締結孔22aを有する板状の基部22と、基部22から突出する一対の軸支持部23,24とを有している。
基部22は、例えば締結孔22aに挿通されたボルトにナット(いずれも図示略)を螺合することにより車体91のフロントピラー93に固定される。
【0023】
図3に示すように、一対の軸支持部23,24は、基部22の取付面22bとは反対側の面22cから同面22cに対して直交する方向に突出している。一対の軸支持部23,24は、高さ方向Zに並ぶとともに、互いに平行に延びている。一対の軸支持部23,24には、ヒンジ軸28が挿通される貫通孔(図示略)が設けられている。
【0024】
一対の軸支持部23,24の先端面23a,24aは、ヒンジ軸28を中心とする第1周方向C1に沿って湾曲する湾曲面である。
先端面23a,24aには、複数の歯23b,24bが第1周方向C1に並んで設けられている。
【0025】
図2及び図3に示すように、ドア側固定部25は、L字状に曲げられた板状であり、フロントドア10に締結固定するための締結孔26aを有する基部26と、基部26から突出する軸支持部27とを有している。
【0026】
基部26は、例えば締結孔26aに挿通されたボルトにナット(いずれも図示略)を螺合することによりドアインナパネル11のフランジ部13aに固定される。
軸支持部27は、基部26から屈曲して基部26と直交する方向に延びている。軸支持部27には、ヒンジ軸28が挿通される貫通孔(図示略)が設けられている。
【0027】
ドア側固定部25は、車体側固定部21を挟んで高さ方向Zに並ぶ一対のドア側固定部25a,25bから構成されている。一対のドア側固定部25a,25bは、車体側固定部21を挟んで上下対称に配置されている。
【0028】
一対の軸支持部23,24の貫通孔(図示略)と、軸支持部27の貫通孔(図示略)とにヒンジ軸28が挿通された状態でヒンジ軸28の両端がカシメられることで、車体側固定部21に対してドア側固定部25が第1周方向C1に回動可能に連結されている。なお、ヒンジ軸28が、本発明に係るドアヒンジの回動軸に相当する。
【0029】
<ロック機構30>
図2及び図3に示すように、ロック機構30は、取付部31と、レバー34と、係合部35と、付勢部材38とを有している。
【0030】
取付部31は、フロントドア10に締結固定するための締結孔32aを有する板状の基部32と、基部32から突出する支持軸33とを有している。
基部32は、例えば締結孔32aに挿通されたボルトにナット(いずれも図示略)を螺合することによりドアインナパネル11のパネル本体部12に固定される。基部32は、パネル本体部12のうち空間S1を構成する車外側の面12aに固定されている。
【0031】
支持軸33は、基部32の取付面32bとは反対側の面32cから同面32cに対して直交する方向に突出している。ここで、面32cに対して直交する方向とは、ヒンジ軸28に平行な軸線と直交する方向である。
【0032】
図2及び図3に示すように、支持軸33の先端には、レバー34が支持軸33を中心に第2周方向C2に回動可能に連結されている。
レバー34は、長尺板状である。レバー34の延在方向の一端34aには、レバー34を板厚方向に貫通する貫通孔34cが設けられている。レバー34の延在方向の他端34bには、レバー34を板厚方向に貫通する貫通孔34dが設けられている。
【0033】
図3に示すように、レバー34の延在方向において、支持軸33から貫通孔34dまでの距離D1は、支持軸33から貫通孔34cまでの距離D2よりも小さく設定されている。
【0034】
レバー34は、支持軸33に取り付けられたコイルばね等の付勢部材38により、第2周方向C2において一端34aがドアヒンジ20に近づく側に向かうとともに、他端34bがドアヒンジ20から離れる側に向かうように付勢されている。
【0035】
図2及び図3に示すように、係合部35は、長尺状のアーム部36と、平板状のヘッド部37とを有する。
図3に示すように、アーム部36の延在方向の一端36aには、アーム部36を貫通する貫通孔36bが設けられている。
【0036】
アーム部36の貫通孔36bと、レバー34の貫通孔34dとに軸となるピン(図示略)を挿通した状態でピンの両端がカシメられることで、レバー34の他端34bに対してアーム部36が第2周方向C2に回動可能に連結されている。
【0037】
図2に示すように、アーム部36は、ドアインナパネル11のフランジ部13aを板厚方向に貫通する貫通孔15に挿通されている。なお、本実施形態におけるフランジ部13aの板厚方向は、ヒンジ軸28の径方向Rに一致するとともに、ドア本体部10aが閉状態のときは前後方向Xに一致する。貫通孔15の形状は、アーム部36が貫通孔15に対して上記板厚方向に摺動することを許容する一方で、上記板厚方向と交差する方向へ移動することは規制するように構成されている。
【0038】
図3に示すように、ヘッド部37は、アーム部36の延在方向において一端36aとは反対側に取り付けられている。
図2及び図3に示すように、ヘッド部37は、高さ方向Zにおいてドア側固定部25a,25bによって挟持されている。これにより、ヘッド部37は、高さ方向Zにおける移動が規制されている。
【0039】
係合部35は、貫通孔15と、ドア側固定部25a,25bとによって、ヒンジ軸28の径方向R(図2では前後方向X)においてレバー34の他端34bからヒンジ軸28に向かって直線状に延びる姿勢が維持されている。
【0040】
図3に示すように、ヘッド部37のうち前後方向Xにおいて車体側固定部21の軸支持部23,24と間隔S2をあけて対向する対向面37aには、車体側固定部21の複数の歯23b,24bに噛合する複数の歯37bが設けられている。
【0041】
図3図10、及び図12に示すように、ロック機構30は、レバー34が第2周方向C2において他端34bがドアヒンジ20に近づく側に回動されることで、径方向Rにおいて係合部35がスライド移動するように構成されている。より詳しくは、図3図11、及び図13に示すように、ロック機構30は、係合部35のヘッド部37がドア側固定部25a,25bの間を径方向Rにおいて車体側固定部21に近づく側にスライド移動するように構成されている。
【0042】
図3、及び図10図13に示すように、ロック機構30においては、係合部35の上記スライド移動によって係合部35のヘッド部37に設けられた複数の歯37bが車体側固定部21の複数の歯23b,24bに噛合する。これにより、ロック機構30は、ドアヒンジ20の回動を規制するように構成されている。より詳しくは、車体側固定部21に対するドア側固定部25の回動が規制されるように構成されている。すなわち、本実施形態では、ドアヒンジ20の車体側固定部21と、取付部31と、レバー34と、係合部35と、付勢部材38とによって、本発明に係るロック機構が構成されている。
【0043】
なお、間隔S2は、レバー34が図4の位置から図10及び図11に示す位置まで回動した際には、ヘッド部37を車体側固定部21に当接させないように設定されている。一方で、間隔S2は、レバー34が図12及び図13の位置まで回動した際には、ヘッド部37を車体側固定部21に当接させるように設定されている。
【0044】
<回動部材40>
図4に示すように、回動部材40は、板状の本体部41と、高さ方向Zに延びる支持軸42とを有している。
【0045】
本体部41は、ドア本体部10aよりも軟質な樹脂材料により形成されている。
本体部41は、一対の長辺41a,41bと、一対の短辺41c,41dとを有する平面視長方形状である。
【0046】
短辺41c,41dのうち長辺41a側の部分が支持軸42を介してフランジ部13bの格納部16内に支持されている。本体部41は、支持軸42を中心に第1周方向C1に回動可能に連結されている。
【0047】
図4及び図8に示すように、本体部41は、コイルばね等の付勢部材(図示略)により、第1周方向C1において格納部16内に格納された位置(以下、第1位置)から車内側に向けて回動した位置(以下、第2位置)まで回動するように付勢されている。本実施形態では、第2位置は、本体部41が第1周方向C1において第1位置から90度回動した位置である。
【0048】
図9に示すように、付勢部材及び格納部16は、第1周方向C1において本体部41が第2位置からさらに車内側に回動された位置(以下、第3位置)まで回動することを許容するように構成されている。本実施形態では、第3位置は、本体部41が第1周方向C1において第1位置から90度よりもさらに回動した位置である。
【0049】
図2にて二点鎖線で示すように、本体部41が第2位置にあるとき、長辺41bがドア本体部10aのフランジ部13bよりも外方に突出している。すなわち、本体部41の長辺41bは、ドアヒンジ20側から見た時のドア本体部10aの先端部であるフランジ部13bよりもさらに先端側に突出している。
【0050】
図1に示すように、本体部41は、センターピラー96とフランジ部13bとによって前後方向Xに挟まれることで、ドア本体部10aが閉状態のときに第1位置に維持されている。すなわち、ドア本体部10aが閉状態のとき、本体部41は第1位置から第2位置に回動することをセンターピラー96により規制されている。
【0051】
図1及び図2に示すように、本体部41のうちセンターピラー96と対向する第1面41Aとは反対側の第2面41Bには、接続部材50が取り付けられている。
<接続部材50>
図2に示すように、接続部材50は、例えば金属製のワイヤであり、ドア本体部10aの空間S1内に配索されている。
【0052】
図2及び図3に示すように、接続部材50の一端51は、レバー34の一端34aに連結部材53を介して連結されている。連結部材53に形成された貫通孔(図示略)と、一端34aの貫通孔34cとに軸としてのピン(図示略)を挿通した状態でピンの両端がカシメられることで、レバー34の一端34aに対して連結部材53が第2周方向C2に回動可能に連結されている。
【0053】
図2に示すように、接続部材50の他端52は、格納部16を貫通して回動部材40の本体部41の第2面41Bに連結されている。
接続部材50の長さは、回動部材40が第1位置から第2位置まで回動されることで他端52が前後方向Xの後方に引っ張られた際、引張荷重の作用により一端51を前後方向Xの後方に引っ張る程度に設定されている。すなわち、ロック機構30は、回動部材40が第1位置から第2位置まで回動された際には、接続部材50の引張荷重の作用により一端51に連結されたレバー34を一端34aがドアヒンジ20から離れる側へ回動させるように構成されている。また、ロック機構30は、回動部材40が第2位置から第3位置まで回動された際には、接続部材50の引張荷重の作用により一端51に連結されたレバー34を一端34aがドアヒンジ20からさらに離れる側へ回動させるように構成されている。
【0054】
次に、本実施形態の作用について説明する。
図5及び図6に示すように、乗員がフロントドア10を操作してドア本体部10aが閉状態から開状態にされる。これにより、回動部材40の本体部41が第1位置(図4参照)から第2位置(図8参照)まで回動する。
【0055】
これにより、図3及び図10に示すように、接続部材50を介した引張荷重が作用することによって、レバー34が第2周方向C2において一端34aがドアヒンジ20から離れる側、すなわち他端34bがドアヒンジ20に近づく側に回動する。その結果、径方向Rにおいて係合部35がドアヒンジ20の車体側固定部21に近づくようにドア側固定部25a,25bの間をスライド移動する。このとき、係合部35のヘッド部37と、車体側固定部21の軸支持部23,24とは間隔S2をあけて対向している。すなわち、ヘッド部37と車体側固定部21とは当接していない。そのため、ドアヒンジ20の回動は制限されない。
【0056】
ここで、図2に示すように、第2位置のときの本体部41は、ドア本体部10aのフランジ部13bよりもドアヒンジ20側から見て先端側に突出している。そのため、ドア本体部10aが図6の位置から図7の位置までさらに回動されると、ドア本体部10aが閉位置から全開位置まで回動する軌道L上に例えば障害物Oが存在する場合、ドア本体部10aよりも回動部材40の方が障害物Oに衝突しやすくなる。
【0057】
図7に示すように、回動部材40が障害物Oに衝突すると、本体部41が第2位置(図8参照)から第3位置(図9参照)まで回動される。
これにより、図10及び図12に示すように、接続部材50を介した引張荷重が作用することによって、レバー34が第2周方向C2において他端34bがドアヒンジ20に近づく側にさらに回動する。その結果、径方向Rにおいて係合部35がドアヒンジ20の車体側固定部21に近づくようにドア側固定部25a,25bの間をさらにスライド移動する。そして、ヘッド部37に設けられた複数の歯37bが車体側固定部21の複数の歯23b,24bに噛合するようになる(図13参照)。
【0058】
したがって、車体側固定部21に対するドア側固定部25の回動が規制される。
次に、本実施形態の効果について説明する。
(1)ロック機構30は、ドア本体部10aが開状態のときに回動部材40が第2位置から第3位置まで回動されることに伴って生じる接続部材50の引張荷重の作用によりドアヒンジ20に係合してドアヒンジ20の回動を制限する係合部35を有する。
【0059】
こうした構成によれば、上述した作用を奏する。一方で、回動部材40が障害物Oに衝突しない限りは、上述した作用によりドア本体部10aの開閉が制限されることはない。
したがって、利便性を保ちつつ、簡単な構成によりドア本体部10aが障害物Oに衝突することを抑制できる。
【0060】
(2)ロック機構30は、支持軸33を中心に回動するレバー34を備えている。レバー34は、第2周方向C2において、一端34aがドアヒンジ20に近づくとともに、他端34bがドアヒンジ20から離れる側に向かうように付勢部材38により付勢されている。
【0061】
こうした構成によれば、レバー34は、レバー34の他端34bがドアヒンジ20から離れる側に向かうように付勢されている。そのため、回動部材40が第1位置または第2位置にあるとき、係合部35はドアヒンジ20の車体側固定部21から間隔S2だけ離れた状態が維持される。
【0062】
一方で、回動部材40が障害物Oに衝突することにより第2位置から第3位置まで回動されると、接続部材50を介した引張荷重がレバー34の一端34aに作用する。これにより、レバー34が第2周方向C2において他端34bがドアヒンジ20に近づく側に回動する。その結果、他端34bに連結された係合部35の複数の歯37bがドアヒンジ20に近づくとともに、軸支持部23,24の複数の歯23b,24bに噛合するようになる。したがって、レバー34と係合部35とによりロック機構30を簡単に具体化できる。
【0063】
(3)ドアヒンジ20の軸支持部23,24には、凹凸形状としての複数の歯23b,24bが形成されている。係合部35のヘッド部37には、複数の歯23b,24bに噛合することでドアヒンジ20の回動を制限する凹凸形状としての複数の歯37bが形成されている。
【0064】
こうした構成によれば、ドアヒンジ20の回動を制限することが、ドアヒンジ20に形成された複数の歯23b,24bと、係合部35に形成された複数の歯37bとが噛合することにより実現される。したがって、ドアヒンジ20に複数の歯23b,24bを設けるとともに係合部35に複数の歯37bを設けるといった簡単な構成により、ロック機構30を具体化することができる。
【0065】
(4)回動部材40の本体部41は、ドア本体部10aのドアインナパネル11及びドアアウタパネル14よりも軟質な樹脂材料により形成されている。
こうした構成によれば、回動部材40の本体部41が障害物Oに衝突した場合であっても、障害物Oが回動部材40の本体部41によって傷つきにくくなる。
【0066】
<変更例>
本実施形態は、以下のように変更して実施することができる。本実施形態及び以下の変更例は、技術的に矛盾しない範囲で互いに組み合わせて実施することができる。
【0067】
・回動部材40の本体部41は、ドア本体部10aよりも軟質の樹脂材料により形成されていなくてもよい。例えば、回動部材40は、本体部41を金属材料により形成することもできる。
【0068】
・回動部材40の本体部41の形状は、本実施形態で例示した平面視長方形状に限定されない。本体部41が、ドアヒンジ20側から見た時にフランジ部13bよりもさらに先端側に位置するものであれば、矩形状や楕円形状など任意の形状にしてもよい。
【0069】
・第2位置は、回動部材40の本体部41が第1周方向C1において第1位置から90度回動した位置でなくてもよい。第1位置から第2位置までの本体部41の回動する角度は、本体部41がドアヒンジ20側から見た時のドア本体部10aのフランジ部13bよりもさらに先端側に位置することを条件として、90度より小さくしてもよいし、90度より大きくしてもよい。
【0070】
・ロック機構30は、車体側固定部の複数の歯23b,24bと、係合部35の複数の歯37bとによってドアヒンジ20の回動の制限が実現されるものに限定されない。係合部35のヘッド部37の形状並びに車体側固定部21の軸支持部23,24の形状は、ドアヒンジ20の回動を制限するものであれば、適宜変更してもよい。例えば、互いの複数の歯23b,24b,37bを省略して、係合部35のヘッド部37と車体側固定部21の軸支持部23,24との摩擦の作用によりドアヒンジ20の回動を制限するようにしてもよい。
【0071】
・ドアヒンジ20の車体側固定部21は、2つの軸支持部23,24を有するものに限定されない。車体側固定部21は、係合部35と係合する軸支持部を1つだけ有するものであってもよい。
【0072】
・本発明に係る車両用ドアの制御装置は、車両90の前後方向Xにおいて後方から前方を見た時の右側に位置するフロントドア10の制御装置97に限定されない。ドアヒンジ20を介して車体91に連結されるヒンジドアであれば、本発明を適用してもよい。上記ヒンジドアとしては、例えば後部座席側のリアドアやバックドアが挙げられる。
【0073】
<付記>
上記各実施形態は、以下の付記に記載する構成を含む。
[付記1]車両の開口の縁部にドアヒンジを介して連結されて前記開口を開閉可能なドア本体部と、前記ドア本体部の先端部に回動可能に支持された回動部材と、接続部材を介して前記回動部材に連結され、前記ドア本体部の開閉を制限するロック機構と、を備え、前記回動部材は、前記ドア本体部が閉状態のときに前記先端部に格納される第1位置と、前記ドア本体部が開状態のときに前記先端部よりも外方に突出する第2位置と、前記第1位置に対して前記第2位置よりもさらに離れる側に回動した第3位置と、の間で回動可能であり、前記ロック機構は、前記ドア本体部が前記開状態のときに前記回動部材が前記第2位置から前記第3位置まで回動されることに伴って生じる前記接続部材の引張荷重の作用により前記ドアヒンジに係合して前記ドアヒンジの回動を制限する係合部を有する、車両用ドアの制御装置。
【0074】
[付記2]前記ロック機構は、前記ドアヒンジの回動軸に平行な軸線と直交する軸線を中心に回動するレバーを備え、前記レバーの一端には、前記接続部材が連結されており、前記レバーの他端には、前記係合部が連結されており、前記レバーは、前記レバーの回動方向において、前記一端が前記ドアヒンジに近づくとともに、前記他端が前記ドアヒンジから離れる側に向かうように付勢されている、[付記1]に記載の車両用ドアの制御装置。
【0075】
[付記3]前記ロック機構は、前記ドアヒンジを含んでおり、前記ドアヒンジ及び前記係合部には、互いに嵌合し合うことで前記ドアヒンジの回動を制限する凹凸形状が形成されている、[付記1]または[付記2]に記載の車両用ドアの制御装置。
【0076】
[付記4]前記回動部材は、前記ドア本体部よりも軟質な樹脂材料により形成されている、[付記1]~[付記3]いずれか一つに記載の車両用ドアの制御装置。
【符号の説明】
【0077】
10a…ドア本体部
20…ドアヒンジ
30…ロック機構
34…レバー
35…係合部
40…回動部材
50…接続部材
90…車両
92a…縁部
97…制御装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13