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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176827
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】農作業支援システム
(51)【国際特許分類】
   A01G 9/14 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
A01G9/14 W
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095647
(22)【出願日】2023-06-09
【新規性喪失の例外の表示】新規性喪失の例外適用申請有り
(71)【出願人】
【識別番号】000223285
【氏名又は名称】ユアサ商事株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】000133319
【氏名又は名称】株式会社ダイケン
(71)【出願人】
【識別番号】521181035
【氏名又は名称】株式会社くい丸
(74)【代理人】
【識別番号】100094536
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 隆二
(74)【代理人】
【識別番号】100129805
【弁理士】
【氏名又は名称】上野 晋
(74)【代理人】
【識別番号】100189315
【弁理士】
【氏名又は名称】杉原 誉胤
(72)【発明者】
【氏名】蓬田 克利
(72)【発明者】
【氏名】山田 悟朗
(72)【発明者】
【氏名】君岡 銀兵
【テーマコード(参考)】
2B029
【Fターム(参考)】
2B029GA07
(57)【要約】
【課題】農作業の際の作業者の負担を軽減する農作業支援システムを低コストで提供する。
【解決手段】ビニールハウス100の天井部・近傍の梁部に取り付けられ且つビニールハウス100の天井側部においてビニールハウス100の奥行方向に延びるハンガーレール3と、ハンガーレール3に移動自在に支持され且つハンガーレール3の長手方向に沿って往復移動可能な第1移動体5Aと、第1移動体5Aに垂設された第1吊りベルト10aと、第1吊りベルト10aの下端部に固定された収納箱30とを有し、第1移動体10Aに第1吊りベルト10aを介して取り付けられた収容箱30は、作業者が奥行方向の荷重をかけることにより、第1移動体10Aと共にハンガーレール3に沿って、奥行方向に往復自在に移動できるようになっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
農作物を収穫するビニールハウスの天井部・近傍の梁部に取り付けられ且つ該ビニールハウスの天井側部において該ビニールハウスの奥行方向に延びるハンガーレールと、
前記ハンガーレールに移動自在に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第1移動体と、
前記第1移動体に垂設された第1吊りベルトと、
前記第1吊りベルトの下端部に固定された農作物を収納するめの収納箱とを有し、
前記第1移動体に前記第1吊りベルトを介して取り付けられた前記収容箱は、作業者が前記奥行方向の荷重をかけることにより、前記第1移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、該ビニールハウスの該奥行方向に、往復自在に移動できるようになっていることを特徴とする農作業支援システム。
【請求項2】
前記ハンガーレールに移動可能に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第2移動体と、
前記第2移動体に垂設された第2吊りベルトと、
前記第2吊りベルトの下端部に固定された、作業者が座ることができる略板状のシートとを有し、
前記第2移動体に前記第2吊りベルトを介して取り付けられた前記シートは、作業者が前記奥行方向の荷重をかけることにより、前記第2移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、該ビニールハウスの該奥行方向に、往復自在に移動できるようになっていることを特徴とする請求項1に記載の農作業支援システム。
【請求項3】
農作物を栽培する屋外の畑に設置される農作業支援システムであって、
前記畑の農作物が栽培されている所定方向に沿って、該農作物を跨ぐように、所定間隔を開けて並べて配置される、略コノ字状の鋼管を複数有する骨組み構造を備え、
前記略コノ字状の鋼管は、前記畑に対して垂直方向に立設する、1対の直管部と、1対の前記直管部の上端部同士を連結する横管部とを有し、
前記骨組み構造の前記横管部に取り付けられ且つ該農作物の上方側において前記所定方向に延びるハンガーレールと、
前記ハンガーレールに移動自在に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第1移動体及び第2移動体と、
前記第1移動体に垂設された第1吊りベルトと、
前記第2移動体に垂設された第2吊りベルトと、
前記第1吊りベルトの下端部に固定された農作物を収納するめの収納箱と、
前記第2吊りベルトの下端部に固定された、作業者が座ることができる略板状のシートとを有し、
前記第1移動体に前記第1吊りベルトを介して取り付けられた前記収容箱は、作業者が前記所定方向の荷重をかけることにより、前記第1移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、前記所定方向に往復自在に移動できるようになっており、
前記第2移動体に前記第2吊りベルトを介して取り付けられた前記シートは、作業者が前記所定方向の荷重をかけることにより、前記第2移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、前記所定方向に往復自在に移動できるようになっていることを特徴とする農作業支援システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、農作業支援システムに関し、例えば、ビニールハウスで栽培する野菜や果物等の農作物の収穫作業の労力を軽減させる農作業支援システムに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、ビニールハウスで栽培している農作物の収穫作業では、作業者が収穫した農作物を籠等に入れて、その籠を台車に積んでビニールハウスの外まで運ぶことが行われている。この収穫作業では、作業者がしゃがんだり立ったりを繰り返し行うため、足腰への負担が大きく、腰を痛めてしまうこともある。すなわち、従来技術の農作物の収穫業では、作業者に過度の負担がかかるという課題があった。
【0003】
また、農作物の収穫作業の労力を軽減する技術として、特許文献1には、自動走行により農作物の運搬を行う農作業補助ロボットが提案されている。
特許文献1に記載の農作業補助ロボットは、収穫物を載置する作物類載置部が設けられており、農作業者が携帯する発信機からの作業者側信号を受信する信号受信部と、信号受信部が受信した信号が入力される制御部と、制御部及び信号受信部に電力を供給する電力供給部とを備える本体部を有している。また、作物類載置部及び本体部の下側には、作物類載置部及び本体部を移動するための移動手段を備えている。
【0004】
また、上記の農作業補助ロボットは、本体部側面のうち少なくとも進行方向前面側及び進行方向に対し幅方向の両側面に、畝や作物の株等の障害物を検出して障害物検出信号を前記制御部に伝える障害物検出センサーが設けられ、制御部は、障害物検出信号に基づいて障害物を回避しつつ、作業者側信号に基づいて、移動手段を農作業者の方向へ移動するよう駆動制御するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005-66809号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、上述した農作業補助ロボットは、収穫物を自動走行で運んでくれるので、作業者が、収穫物を台車等で運ぶ労力から軽減される。
しかしながら、この農作業補助ロボットは、障害物を検知すると、それを回避して自動走行する等の高度な機能を有する制御部(専用のシフトウェアがインストールされたコンピュータや専用に開発された制御回路)を備えたものであり、コストがかかるという課題を有している。
なお、上述した農作業補助ロボットは、収穫物の運搬のみに特化したものであり、農作物の収穫作業をしている際の作業者の身体の負担を軽減するものではない。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、農作業の際の作業者の負担を軽減する農作業支援システムを低コストで提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するためになされた本発明は、農作業支援システムであって、農作物を収穫するビニールハウスの天井部・近傍の梁部に取り付けられ且つ該ビニールハウスの天井側部において該ビニールハウスの奥行方向に延びるハンガーレールと、前記ハンガーレールに移動自在に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第1移動体と、前記第1移動体に垂設された第1吊りベルトと、前記第1吊りベルトの下端部に固定された農作物を収納するめの収納箱とを有し、前記第1移動体に前記第1吊りベルトを介して取り付けられた前記収容箱は、作業者が前記奥行方向の荷重をかけることにより、前記第1移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、該ビニールハウスの該奥行方向に、往復自在に移動できるようになっていることを特徴とする。
【0009】
上記の構成によれば、ビニールハウスの作業者は、収納箱が農作物で一杯になると、立ち上がって、ビニールハウスの出入り口の近傍まで、農作物が一杯の収容箱を引っ張ることで、ハンガーレールに移動自在に支持された第1移動体に吊り下げられた状態の収納箱を簡単に運搬することができる。すなわち、本発明によれば、収穫した農作物が入った籠(収納箱)を台車等に搭載してビニールハウスの出入り口まで運んだり、或いは、作業者自身に農作物が入った籠を手で持って運んだりする必要がないため、作業者の運搬作業の労力が大幅に軽減される。
【0010】
また、本発明の農作業支援システムは、ビニールハウスの天井部・近傍の梁部に取り付けられたハンガーレールと、ハンガーレールに移動自在に支持された第1移動体と、第1移動体に第1吊りベルトを介して取り付けられた収納箱とを備えた簡単な構成であり、上述した特許文献1に記載の農作業補助ロボットのような、電力供給部(電源)やコンピュータ(或いは専用の制御回路)を設けたものではない。
すなわち、本発明の農作業支援システムは、上述した特許文献1に記載の農作業補助ロボットと比べて、部品点数が少なく、コストをかけずに導入することができるとともに、構造が単純であるため、メンテナンスのコストも抑えることができる。
【0011】
また、前記ハンガーレールに移動可能に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第2移動体と、前記第2移動体に垂設された第2吊りベルトと、前記第2吊りベルトの下端部に固定された、作業者が座ることができる略板状のシートとを有し、前記第2移動体に前記第2吊りベルトを介して取り付けられた前記シートは、作業者が前記奥行方向の荷重をかけることにより、前記第2移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、該ビニールハウスの該奥行方向に、往復自在に移動できるようになっていることが望ましい。
【0012】
上記の構成によれば、ビニールハウスの作業者は、収穫対象となる農作物の近傍の位置まで、シート及び収容箱を移動させてから、シートに座りながら農作物を収穫し、座った姿勢のままで、収穫した農作物を収納箱の中に収納することができる。また、作業者は、シートの前方の農作物を収穫したら、座った状態のままで、横方向に、シート及び収容箱をずらして移動させることで、未収穫の「隣りの農作物」の位置に移動することができる。
このように、本発明によれば、シートに座った状態で、農作物を収穫することができるため、ビニールハウスのなかで作業者がしゃがんだり立ったりを繰り返す回数を減少させることができ、農作物の収穫作業の際の作業者の身体の負担が軽減される。
【0013】
また、農作物を栽培する屋外の畑に設置される農作業支援システムであって、前記畑の農作物が栽培されている所定方向に沿って、該農作物を跨ぐように、所定間隔を開けて並べて配置される、略コノ字状の鋼管を複数有する骨組み構造を備え、前記略コノ字状の鋼管は、前記畑に対して垂直方向に立設する、1対の直管部と、1対の前記直管部の上端部同士を連結する横管部とを有し、前記骨組み構造の前記横管部に取り付けられ且つ該農作物の上方側において前記所定方向に延びるハンガーレールと、前記ハンガーレールに移動自在に支持され且つ該ハンガーレールの長手方向に沿って往復移動可能な第1移動体及び第2移動体と、前記第1移動体に垂設された第1吊りベルトと、前記第2移動体に垂設された第2吊りベルトと、前記第1吊りベルトの下端部に固定された農作物を収納するめの収納箱と、前記第2吊りベルトの下端部に固定された、作業者が座ることができる略板状のシートとを有し、前記第1移動体に前記第1吊りベルトを介して取り付けられた前記収容箱は、作業者が前記所定方向の荷重をかけることにより、前記第1移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、前記所定方向に往復自在に移動できるようになっており、前記第2移動体に前記第2吊りベルトを介して取り付けられた前記シートは、作業者が前記所定方向の荷重をかけることにより、前記第2移動体と共に前記ハンガーレールに沿って、前記所定方向に往復自在に移動できるようになっていることを特徴とする。
【0014】
上記の構成によれば、屋外の畑における農作業の作業者は、収穫対象となる農作物の近傍の位置まで、シート及び収容箱を移動させてから、シートに座りながら農作物を収穫し、座った姿勢のままで、収穫した農作物を収納箱の中に収納することができる。また、作業者は、シートの前方の農作物を収穫したら、座った状態のままで、横方向に、シート及び収容箱をずらして移動させることで、未収穫の「隣りの農作物」の位置に移動することができる。
このように、本発明によれば、屋外の畑における農作業において、シートに座った状態で農作物を収穫することができるため、作業者がしゃがんだり立ったりを繰り返す回数を減少させることができ、屋外における農作物の収穫作業の際の作業者の身体の負担が軽減される。
【0015】
本発明によれば、農作業の際の作業者の負担を軽減する農作業支援システムを低コストで提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムの全体構成を説明するための模式図である。
図2】本発明の実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムの動作を説明するための模式図である。
図3】本発明の実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムのうち、吊りベルト、シート、及び収納箱を取り除いた状態を示した模式図である。
図4】本発明の実施形態の農作業支援システムを構成する単管下ブラケットを示した模式図である。
図5】本発明の実施形態の農作業支援システムを構成するハンガーレールを示した模式図である。
図6】本発明の実施形態の農作業支援システムを構成するツール複車を示した模式図である。
図7】本発明の実施形態の農作業支援システムを構成する戸当りを示した模式図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態の農作業支援システムWについて図面を用いて説明する。
【0018】
《農作業支援システムWの概略構成》
先ず、本実施形態の農作業支援システムWの概略構成について、図1及び図2を用いて説明する。
ここで、図1は、本実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムの全体構成を説明するための模式図である。図2は、本実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムの動作を説明するための模式図である。
【0019】
本実施形態の農作業支援システムWは、例えば、農作物200を栽培するビニールハウス100の室内に設置され、農作物200を収穫する際の作業者(農業作業者)の身体の負担を軽減するとともに、収穫した農作物の搬送の労力を軽減させるためのものである。
【0020】
図1に示すように、農作業支援システムWは、ビニールハウス100の天井部・近傍の梁部(図示する例では横梁105)に取り付けられ且つビニールハウス100の天井側部(上方側)において奥行方向(Y方向)に延びるハンガーレール3と、ハンガーレール3に移動自在に支持され且つハンガーレール3の長手方向に沿って往復移動可能な「ツール複車(第1移動体)5A(5)、ツール複車(第2移動体)5B(5)」とを備えている。
なお、ツール複車(第1移動体)5A(5)と、ツール複車(第2移動体)5B(5)は、同じものである。
【0021】
また、ハンガーレール3は、ビニールハウス100の出入り口が設けられた表面の近傍位置から、ビニールハウス100の裏面の近傍位置まで、奥行き方向(Y方向)に延設されている。
また、ビニールハウス100の内部は、奥行き方向(Y方向)に沿って、農作物200が栽培されている。
【0022】
また、ツール複車(第1移動体)5Aには、吊りベルト(第1吊りベルト)10aが垂設され、この吊りベルト10aの下端に、収穫した農作物を収納するめの収納箱30が取り付けられている(固定されている)。
また、ツール複車(第2移動体)5Bには、吊りベルト(第2吊リベト)10bが垂設され、吊りベルト10bの下端に、作業者が座ることができる略板状のシート20が取り付けられている(固定されている)。
【0023】
そして、図2に示すように、ツール複車5Aに吊りベルト10aを介して垂設された収容箱30(吊り下げられた状態の収容箱30)は、作業者が手で引っ張ることにより(奥行方向(Y方向)の荷重をかけることにより)、ツール複車5Aと共に、ハンガーレール3に沿って、ビニールハウス100の奥行方向(Y方向)に、往復自在に移動できるようになっている。
また、ハンガーレール3に摺動自在に支持されたツール複車5Bに吊りベルト10bを介して垂設されたシート20(吊り下げられた状態のシート20)は、作業者が手で引っ張ることにより(奥行方向(Y方向)の荷重をかけることにより)、ツール複車5Bとともに、ハンガーレール3に沿って、ビニールハウス100の奥行方向(Y方向)に、往復自在に移動できるようになっている。
【0024】
この構成によれば、ビニールハウス100における作業者は、収穫対象となる農作物200の近傍の位置まで、シート20及び収容箱30を移動させてから、シート20に座りながら農作物200を収穫し、座った姿勢のままで、収穫した農作物200を収納箱300の中に収納することができる。
また、作業者は、シート20の前方の農作物を収穫したら、座った状態のままで、横方向(Y方向)に、シート20及び収容箱30をずらして移動させることで、未収穫の「隣りの農作物300」の前方の位置に移動することができる。
このように、本実施形態によれば、シート20に座った状態で、農作物200を収穫することができるため、農作物の収穫作業の際の作業者の身体の負担が軽減される。
【0025】
また、作業者は、収納箱300が収納した農作物200で一杯になると、立ち上がって、ビニールハウス100の出入り口が設けられた表面の近傍まで、農作物200が一杯の収容箱30を引っ張り移動させることで、ハンガーレール3に移動自在に支持されたツール複車5Aに吊り下げられた状態の収納箱30を簡単に運搬することができる。すなわち、本実施形態によれば、収穫した農作物が入った収納箱300を台車等に搭載してビニールハウス100の出入り口まで運んだり、或いは、作業者自身に農作物が入った収容箱300を手で持って運んだりする必要がないため、作業者の運搬作業の労力が大幅に軽減される。
【0026】
また、本実施形態の農作業支援システムWは、ビニールハウス100の天井部・近傍の梁部(図示する例では横梁103)に取り付けられたハンガーレール3と、ハンガーレール3に移動自在に支持されたツール複車(第1、第2移動体)5A、5Bと、ツール複車5A、5Bに、吊りベルト10a、10bを介して垂設されたシート20、収納箱30とを有する構成であり、上述した特許文献1に記載の農作業補助ロボットのような、電源やコンピュータ(或いは専用の制御回路)を設けたものではない。
すなわち、本実施形態の農作業支援システムWは、上述した特許文献1に記載の農作業補助ロボットと比べて、部品点数が少なく、コストをかけずに導入することができるとともに、構造が単純であるため、メンテナンスのコストも抑えることができる。
【0027】
《農作業支援システムWの各構成部》
以下、本実施形態の農作業支援システムWが取り付けられるビニールハウス100と、農作業支援システムWの各構成部について、上述した図1、2と、図3~6を用いて説明する。
ここで、図3は、本実施形態のビニールハウスに設置された農作業支援システムのうち、吊りベルト、シート、及び収納箱を取り除いた状態を示した模式図である。
また、図4は、本実施形態の農作業支援システムを構成する単管下ブラケットを示した模式図であり、図5は、本実施形態の農作業支援システムを構成するハンガーレールを示した模式図である。
また、図6は、本実施形態の農作業支援システムを構成するツール複車を示した模式図であり、図7は、本実施形態の農作業支援システムを構成する戸当りを示した模式図である。
【0028】
《ビニールハウス100》
先ず、本実施形態の農作業支援システムWが取り付けられるビニールハウス100について簡単に説明する。
図3に示すように、ビニールハウス100は、奥行き方向(Y方向)に所定間隔を開けて並べて配置される、複数のアーチパイプ(鋼管)101と、複数のアーチパイプ101を連結する、奥行方向(Y方向)に延設された「棟パイプ(鋼管)102及び母屋パイプ(鋼管)103、104」とを有している。
なお、「棟パイプ102及び母屋パイプ103、104」は、直管で構成されている。
【0029】
また、アーチパイプ101は、設置面(地面)に対して垂直方向(Z方向)に立設する、1対の直管部101a、101aと、1対の直管部101a、101aの上端部同士を連結するアーチ状のアーチ部101bとを有している。
各アーチパイプ101では、一方の直管部101aの上部と、他方の直管部101aの上部とが、横方向(X方向)に延びる直管で構成される横梁(梁部)105により連結されている。
【0030】
そして、ビニールハウス100は、複数のアーチパイプ101と、複数の「棟パイプ102及び母屋パイプ103、104」と、複数の横梁105とにより骨組み構造が形成され、この骨組み構造に、図示しないビニールシートが被覆された構成になっている。
【0031】
そして、ビニールハウス100の骨組み構造を形成する横梁105には、ハンガーレール3を支持するための単管下ブラケット1が取り付けられ(複数の単管下ブラケット1が取り付けられ)、ハンガーレール3が、複数の単管下ブラケット1を介して、横梁3に取り付けられている。
図3に示す例では、3本の横梁105に、それぞれ、単管下ブラケット1が取り付けられ、3つの単管下ブラケット1により、ビニールハウス200の奥行方向(Y方向)に延設するように、ハンガーレール3が設置されている。
以下、農作業支援システムWの各構成部について、順番に説明していく。
【0032】
《単管下ブラケット1》
単管下ブラケット1は、図4に示すように、略平板状の上面部1a1と、上面部1a1の左右・両側から下方に略直角に延設された1対の側面部1a2、1a2とを備えた断面・略コノ字状の本体部1aを有している。また、1対の側面部1a2、1a2の下端部には、互いに近接する方向(内側方向)に略直角に屈曲する内側フランジ部1a3が形成されている。
また、上面部1には、本体部1aの内側部分に、ハンガーレール3を固定するための締結部1cが設けられてる。
【0033】
また、上面部1aには、円柱部1eが凸設されており、円柱部1eの上端部に、略C字形状の直管把持部1fが設けられている。また、略C字状の直管把持部1fの端部には、ボルト及びナットにより構成される締結部1gが設けられている。
【0034】
そして、略C字形状の直管把持部1fの内側に横梁103を挿入し、締結部1gを締めることにより。直管把持部1fにより横梁3が挟持され、単管下ブラケット1が横梁3に垂下した状態で固定される。
また、単管下ブラケット1が横梁3に垂下した状態で固定されると、本体部1aの内側部分、すなわち、上面部1a1と、1対の側面部1a2、1a2と、内側フランジ部1a3とにより形成される空隙部分に、ハンガーレール3の外周部を挿入して、締結部1cを締結することで、ハンガーレール3が、単管下ブラケット1を介して、横梁105に取り付けられる。
【0035】
《ハンガーレール3》
ハンガーレール3は、図5に示すように、上面部3aと、上面部3aの左右・両側から下方に略直角に延設された1対の側面部3b、3bとを備えた断面・略コノ字状に形成され、1対の側面部3b、3bの下端部には、互いに近接する方向(内側方向)に屈曲する内側フランジ部3c、3cが形成されている。
また、内側フランジ部3c、3cの端部には、上方側に直角に屈曲する折り返し部3d、3dが形成されている。
また、内側フランジ部3c、3c(折り返し部3d、3d)同士の間が空隙部3sになっている。
【0036】
そして、ハンガーレール3の内側フランジ部3cの部分に、ツール複車5(5A、5B)の車輪部5bが載置されると、折り返し部3dが車輪部3bの側面部に擦動自在に当接した状態になり、ツール複車5がハンガーレール3の長手方向(Y方向)に沿って自在に往復移動できるようになっている。
【0037】
《ツール複車5》
ツール複車5(5A、5B)は、図6に示すように、逆向きの略各丸三角形をした板状の本体部5aと、本体部5aの上方・左右両側に回転自在に挿入されている軸部5b、5bと、それぞれの軸部5bの両端部に取り付けられた車輪部5c、5cとを備えている。
また、本体部5aの下端側には、吊りベルト10a、10bを取り付けるためのリング状部材Rを係止するための係止孔5a1が設けられている。
【0038】
そして、ツール複車5は、車輪部5b、5bが、ハンガーレール3の両側の内側フランジ部3cの上に載置され、本体部5aの下端側が、ハンガーレール3の内側フランジ部3c。3c同士の空隙部3sから下方に突出した状態で、ハンガーレール3の内部に移動自在に支持される。
この構成により、ツール複車5は、ハンガーレール3の長手方向(Y方向)に沿って往復移動できる。
【0039】
なお、ハンガーレール3から突出するツール複車5の本体部5aの下端側の部分に形成された係止孔5a1には、図1、2に示すように、リング状部材Rが取り付けられる。このリンク状部材Rに、吊りベルト10a、10bが垂設され、吊りベルト10a、10bの下端部に、収穫した農作物を収納するめの収納箱30や作業者が座ることができる略板状のシート20が取り付けられるようになっている。
吊りベルト10a、10bは、一端がリンク状部材Rに固定されて、他端がシート20や収納箱30を固定でき、作業者がシート20に座ったり、収納箱30に農作物が収容されても、シート20や収容箱30を吊り下げた状態で保持できる強度を有するものであれば良く、その形状や材質については特に限定されるものではない。
【0040】
また、シート20は、矩形の平板状に形成されており、作業者が座ることができるものであれば良く、合成樹脂や木製のものを用いることができる。
また、収容箱は、例えば、上方が開口している矩形箱状のものを用いることができる。
【0041】
《ストッパー》
ストッパー6は、ハンガーレール3の両端部に、それぞれ、取り付けられ、ハンガーレール3に摺動自在に支持されているツール複車5が、ハンガーレール3から抜け落ちないようにするためのストッパー部材としての機能を果たしている。
【0042】
具体的には、図7に示すように、ストッパー6は、コノ字状の本体部6aと、、本体部6aの上面を貫通するとともに、本体部6aの下端よりも下方に軸部が突出するボルト6bと、ボルト6bの軸部に挿入されたワッシャー6cと、ボルト6aの軸部に螺合するナット6dとを備えている。
また、本体部6aの両側には、ゴム等で形成された弾性部6e、6eが設けられている。
そして、ストッパー6は、ハンガーレール3の内部に挿入されて、ボルト6b及びナット6dを締め付けることにより、ハンガーレール3の内部の両端部に固定される。
【0043】
このように、本実施形態の農作業支援システムWによれば、収穫した農作物が入った籠を台車等に搭載してビニールハウス100の出入り口まで運んだり、或いは、作業者自身に農作物が入った籠を持ち上げて運んだりする必要がないため、作業者の運搬作業の労力が大幅に軽減される。
また、本実施形態の農作業支援システムWによれば、作業者がシート20に座った状態で、農作物200を収穫して、座ったままで、収納箱30に農作物を入れることができるため農作物の収穫作業の際の作業者の身体の負担が軽減される。
【0044】
また、本実施形態の農作業支援システムWは、上述した特許文献1に記載の農作業補助ロボットと比べて、部品点数が少なく、コストをかけずに導入することができるとともに、構造が単純であるため、メンテナンスのコストも抑えることができる。
【0045】
以上説明したように、本実施形態によれば、農作業の際の作業者の負担を軽減する農作業支援システムを低コストで提供することができる。
【0046】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内において種々の変更が可能である。
【0047】
上述した実施形態の農作業支援システムWは、ビニールハウス100の内部に設置されているが、本発明は、特にこれに限定されるものではない。
屋外の農作物を栽培する畑に、農作業支援システムWを設置するための、鋼管で構成される骨組み構造を設置し、その骨組み構造の上方側の部分に、上述した農作業支援システムWを設置するようにしても良い。
【0048】
上記の骨組み構造は、上述した図3のビニールハウス100の骨組み構造と同様の物でも良いし、ビニールハウス100のものと比べて簡素化した構造のものでよ良い。
簡素化した骨組み構造は、例えば、屋外の畑の農作物が栽培されている所定方向に沿って、農作物を跨ぐように、所定間隔を開けて並べて配置される、略コノ字状の鋼管を複数有している。略コノ字状の鋼管は、畑に対して垂直方向に立設する、1対の直管部と、1対の直管部の上端部同士を連結する横管部とを有している。
なお、簡素化した骨組み構造は、所定方向に沿って延びる直管(鋼管)により、複数の「略コノ字状の鋼管」が連結することが望ましい。
そして、所定方向に沿って、所定間隔を開けて並べて配置される、略コノ字状の鋼管を構成する横管部に、それぞれ、クランプ部材を取り付け、そのクランプ部材に、所定方向に延設されるレール敷材(直管(鋼管)により形成されるレール敷材)を取り付ける。このレール敷材(直管(鋼管))に、ハンガーレール3を支持するための単管下ブラケット1が取り付けられ(複数の単管下ブラケット1が取り付けられ)、ハンガーレール3が、複数の単管下ブラケットに取り付けられる。
すなわち、ハンガーレール3は、単管下ブラケット1及びレール敷材を介して、横管部に取り付けられる。
【0049】
なお、上記の説明では、横管部にクランプ部材を介してレール敷材を取り付け、レール敷材に単管下ブラケット1を取り付け、単管下ブラケット1にハンガーレール3を取り付けているが、これは一例である。例えば、略コノ字状の鋼管を構成する横管部に、直接、単管下ブラケット1を取り付け、単管下ブラケット1にハンガーレール3を取り付けるようにしても良い。この場合、レール敷材(及びクランプ部材)が不要になる。
【0050】
具体的には、屋外の農作物を栽培する畑に設置される農作業支援システムは、畑の農作物が栽培されている所定方向に沿って、該農作物を跨ぐように、所定間隔を開けて並べて配置される、略コノ字状の鋼管を複数有する骨組み構造を備えている。また、略コノ字状の鋼管は、前記畑に対して垂直方向に立設する、1対の直管部と、1対の直管部の上端部同士を連結する横管部とを有している。
また、屋外の農作物を栽培する畑に設置される農作業支援システムは、骨組み構造の前記横管部に単管下ブラケット1(或いは、単管下ブラケット及びレール敷材1)を介して取り付けられ且つ該農作物の上方側において前記所定方向に延びるハンガーレール3と、ハンガーレール3に移動自在に支持され且つハンガーレール3の長手方向に沿って往復移動可能なツール複車5(5A、5B)と、ツール複車5Aに垂設された第1吊りベルト10aと、ツール複車5Bに垂設された第2吊りベルト10bと、第1吊りベルト10aの下端部に固定された農作物を収納するめの収納箱30と、第2吊りベルト10bの下端部に固定された、作業者が座ることができるシート20とを有している。
そして、収容箱30は、作業者が所定方向の荷重をかけることにより、ツール複車5Aと共にハンガーレール3に沿って、所定方向に往復自在に移動できるようになっている。また、シート20は、作業者が所定方向の荷重をかけることにより、ツール複車5Bと共にハンガーレール3に沿って、所定方向に往復自在に移動できるようになっている。
【0051】
この構成によれば、屋外の畑における農作業において、シート20に座った状態で農作物を収穫することができるため、作業者がしゃがんだり立ったりを繰り返す回数を減少させることができ、屋外における農作物の収穫作業の際の作業者の身体の負担が軽減される。
【0052】
また、上述した実施形態では、ビニールハウス100の骨組み構造の横梁(鋼管)105に、単管下ブラケット1を介してハンガーレール3が取り付けられているが、あくまでも一例である。また、図3に示すビニールハウス100の骨組み構造についても一例に過ぎない。
本発明は、ビニールハウス100を構成する骨組み構造のなかの天井部・近傍の部分(鋼管)に、単管下ブラケット1を介してハンガーレール3が取り付けられていれば良い。
【符号の説明】
【0053】
W…農作業支援システム
1…単管下ブラケット
1a…本体部
1a1…上面部
1a2…側面部
1a3…内側フランジ部
1c…締結部
1e…円柱部
1f…直管把持部
1g…締結部
3…ハンガーレール
3a…上面部
3b…側面部
3c…内側フランジ部
3d…折り返し部
3s…空隙部
5、5A、5B…ツール複車(移動体)
5a…本体部
5a1…係止孔
5b…軸部
5c…車輪部
6…ストッパー
6a…本体部
6b…ボルト
6c…ワッシャー
6d…ナット
6e…弾性部
10a、10b…吊りベルト
20…シート
30…収納箱
100…ビニールハウス
101…アーチパイプ
101a…直管部
101b…アーチ部
102…棟パイプ
103、104…母屋パイプ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7