(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176834
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】体動訓練システム、訓練方法及び訓練アプリケーション
(51)【国際特許分類】
F41G 3/26 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
F41G3/26 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】15
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095656
(22)【出願日】2023-06-09
(71)【出願人】
【識別番号】523220927
【氏名又は名称】株式会社モダンビル管理
(74)【代理人】
【識別番号】100117514
【弁理士】
【氏名又は名称】佐々木 敦朗
(72)【発明者】
【氏名】井川 寛之
(57)【要約】
【課題】射撃競技その他のスポーツ競技において、極度の緊張感やストレスの下でも訓練どおりの動作の緩急やリズムを再現できるような技術を体得させ、実戦に即した訓練を可能にする。
【解決手段】 競技者P1の体動を訓練するためのシステムであって、競技者P1の身体の一部若しくは装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する装着センサー21と、装着センサー21が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて変化する音響信号を生成する音響信号生成部113と、音響信号生成部113で生成された音響信号に基づいて音響を出力する出力インターフェース102とを備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
装着者の体動を訓練するためのシステムであって、
前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて変化する音響信号を生成する音響信号生成部と、
前記音響信号生成部で生成された音響信号に基づいて、音響を出力する出力手段と
を備えることを特徴とする体動訓練システム。
【請求項2】
前記音響信号生成部は、前記検出手段による加速度若しくは角速度のそれぞれの変化に対応して、音量、音程、若しくは音色が変化するように前記音響信号を生成することを特徴とする請求項1に記載の体動訓練システム。
【請求項3】
前記音響信号生成部で生成された音響信号は、無線通信手段を通じて、前記出力手段に送出され、
前記無線通信手段は、アナログ信号を用いて前記音響信号を伝送する
ことを特徴とする請求項1に記載の体動訓練システム。
【請求項4】
前記検出手段は、
前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた発光体と、
前記発光体からの光が投影されるスクリーンと、
前記スクリーンに投影された光跡を記録し、その記録された光跡に基づいて、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する光跡解析手段と
を有することを特徴とする請求項1に記載の体動訓練システム。
【請求項5】
前記検出手段は、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられ、自機に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出するセンサー手段を含むことを特徴とする請求項1に記載の体動訓練システム。
【請求項6】
装着者の体動を訓練するための方法であって、
装着者の身体の一部、若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた検出手段が、前記身体の一部又は前記器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する検出ステップと、
前記検出手段が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて、変化する音響信号を、音響信号生成部が生成する音響信号生成ステップと、
前記音響信号生成部で生成された音響信号に基づいて、出力手段が音響を出力する出力ステップと
を含むことを特徴とする体動訓練方法。
【請求項7】
前記音響信号生成ステップにおいて前記音響信号生成部は、前記検出手段による加速度若しくは角速度のそれぞれの変化に対応して、音量、音程、若しくは音色が変化するように前記音響信号を生成することを特徴とする請求項6に記載の体動訓練方法。
【請求項8】
前記出力ステップにおいて、
前記音響信号生成部が生成した音響信号は、無線通信手段を通じて、前記出力手段に送出され、前記無線通信手段は、アナログ信号を用いて前記音響信号を伝送する
ことを特徴とする請求項6に記載の体動訓練方法。
【請求項9】
前記検出ステップでは、
前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた発光体からの光をスクリーンに投影し、そのスクリーンに投影された光跡を、光跡解析手段が、記録するとともに、その記録された光跡に基づいて前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する
ことを特徴とする請求項6に記載の体動訓練方法。
【請求項10】
前記検出ステップでは、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられたセンサー手段が、自機に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出することを特徴とする請求項9に記載の体動訓練方法。
【請求項11】
情報処理端末上で実行され、装着者の体動を訓練するためのプログラムであって、前記情報処理端末を、
前記装着者の身体の一部、若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられ、前記身体の一部又は前記器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて変化する音響信号を生成する音響信号生成部と、
前記音響信号生成部で生成された音響信号に基づいて、音響を出力する出力手段
として機能させることを特徴とする体動訓練アプリケーション。
【請求項12】
前記音響信号生成部は、前記検出手段による加速度若しくは角速度のそれぞれの変化に対応して、音量、音程、若しくは音色が変化するように前記音響信号を生成することを特徴とする請求項11に記載の体動訓練アプリケーション。
【請求項13】
前記音響信号生成部で生成された音響信号は、無線通信手段を通じて、前記出力手段に送出され、
前記無線通信手段は、アナログ信号を用いて前記音響信号を伝送する
ことを特徴とする請求項11に記載の体動訓練アプリケーション。
【請求項14】
前記検出手段は、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた発光体からの光をスクリーンに投影し、そのスクリーンに投影された光跡を、光跡解析手段が、記録するとともに、その記録された光跡に基づいて前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出することを特徴とする請求項11に記載の体動訓練アプリケーション。
【請求項15】
前記検出手段は、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられ、自機に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出するセンサー手段を含むことを特徴とする請求項14に記載の体動訓練アプリケーション。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クレー射撃等の射撃訓練その他の競技のトレーニングにおいて、装着者の体動の再現性を向上させる訓練システム、訓練方法及び訓練アプリケーションに関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に再現性が要求される競技は種々あり、その一つとしてクレー射撃などの射撃競技が挙げられる。このクレー射撃は、散弾銃を用いて、空中に射出される標的(クレー)を撃ち壊していくスポーツ競技であり、正確な射撃技術と速い反射神経が求められる。射撃手は、クレーが射出される瞬間に反応して銃を構え、クレーを追いかけて正確に撃ち落とす必要があり、風向きや風速、標的の射出角度、高度などの条件が常に変化することから、射撃手は状況に応じて素早く反応し、適切な射撃技術を使い分ける必要がある。
【0003】
従来、射撃訓練のための装置として、レーザ光を発射するレーザ銃を用いて射撃のシミュレーションを行う装置がある。例えば、特許文献1には、レーザ光を発射するレーザ銃を用意し、レーザ光を検知する標的板を設け、その標的板にレーザ光線が命中すると、被弾状態を報告する標的装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、レーザー銃を使用した射撃訓練は、実際の銃を使用した実射訓練と比較して、環境や条件が異なるため、完全に実際の射撃シーンを再現すること困難である。また、レーザー銃は実弾を使用しないため、反動がなく、実際の射撃の感覚を完全には再現できず、正確な射撃技術を習得するには限界がある。
【0006】
したがって、射撃訓練では、銃に実弾を装填するとともに、静止標的或は飛翔標的等の標的に照準を合わせて実弾を発射するという、所謂、実射訓練を行うのが理想的である。このような実射訓練は、実射を繰り返すことによって実際に即したより正確で高度な射撃技法を修得することができるという利点がある。
【0007】
ところで、実際のクレー射撃競技では、極度の緊張感やストレスの下での射撃となることから、そのような状況下でも訓練どおりの動作を再現できるような技術を体得する必要がある。しかしながら、通常の単なる実射訓練では、極度の緊張感やストレス下でも動作の緩急やリズムを再現できるまでの技術は身につかないため、実戦に即した訓練を行うことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は、射撃競技その他のスポーツ競技において、極度の緊張感やストレスの下でも訓練どおりの動作の緩急やリズムを再現できるような技術を体得させ、実戦に即した訓練を可能にする体動訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、装着者の体動を訓練するためのシステムであって、
前記装着者の身体の一部、若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられ、前記身体の一部又は前記器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する検出手段と、
前記検出手段が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて変化する音響信号を生成する音響信号生成部と、
前記音響信号生成部で生成された音響信号に基づいて、音響を出力する出力手段と
を備える。
【0010】
また、本発明は、装着者の体動を訓練するための方法であって、
(1)装着者の身体の一部、若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた検出手段が、前記身体の一部又は前記器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出する検出ステップと、
(2)前記検出手段が検出した加速度若しくは角速度、又はこれらの変化に応じて、変化する音響信号を、音響信号生成部が生成する音響信号生成ステップと、
(3) 前記音響信号生成部で生成された音響信号に基づいて、出力手段が音響を出力する出力ステップと
を含む。
【0011】
そして、上述した本発明に係るシステムや方法は、所定の言語で記述された本発明のプログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して、本発明に係る方法を実施することができる。
【0012】
また、本発明のプログラムは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、またコンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。具体的にこの記録媒体としては、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0013】
上記発明において音響信号生成部は、前記検出手段による加速度若しくは角速度のそれぞれの変化に対応して、音量、音程、若しくは音色が変化するように前記音響信号を生成することが好ましい。また、上記発明において、前記音響信号生成部が生成した音響信号は、無線通信手段を通じて、前記出力手段に送出され、前記無線通信手段は、アナログ信号を用いて前記音響信号を伝送することが好ましい。
【0014】
さらに、上記発明において、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられた発光体からの光をスクリーンに投影し、そのスクリーンに投影された光跡を、光跡解析手段が、記録するとともに、その記録された光跡に基づいて前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出することが好ましい。若しくは、上記発明では、前記装着者の身体の一部若しくは前記装着者が携帯する器具に取り付けられたセンサー手段が、自機に作用する加速度若しくは角速度、又はこれらの変化を検出することが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、射撃競技その他のスポーツ競技において、極度の緊張感やストレスの下でも訓練どおりの動作の緩急やリズムを再現できるような技術を体得させ、実戦に即した訓練を実現できる。
【0016】
詳述すると、本発明では、装着者の身体の一部、または携帯する器具に取り付けられた加速度センサが、身体の動きや動作のリズム、緩急を検出し、音響信号に変換する。この音響信号を基に、出力手段から音響を出力することによって、装着者は自分の動きとリズム、緩急に合わせた音を聴くことができる。
【0017】
これにより、本発明を用いたトレーニングを通じて体動の緩急やリズムを、音響のパターンとして記憶・体得することができるため、実戦ではその音響を思い起こすことで再現すべき体動をイメージすることができる。体得したパターンの音響をイメージし、それに合わせた動作を行うことで、極度の緊張感やストレス下でも動作の緩急やリズムを再現できる。
【0018】
なお、この体動訓練システムは、射撃競技に限らず、他のスポーツ競技や運動競技においても応用することができる。例えば、体操競技において、ジャンプや回転のリズムに合わせた音を出力することによって、選手の動きを正確に調整することができ、ダンス競技においても、音楽に合わせたリズムを意識しながら、自分の動きを調整することができる。スポーツ競技や運動競技において、正確な技術やリズムを身につけたい競技者にとって、非常に有用な訓練ツールを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】実施形態に係る体動訓練システムを使用する実射訓練場の全体構成を示す斜視図である。
【
図2】実施形態に係る体動訓練システムにおいて、屋外訓練での仕様を示すブロック図である。
【
図3】実施形態に係る体動訓練システムにおいて、屋外訓練の手順を示すフロー図である。
【
図4】実施形態に係る体動訓練システムにおいて、屋内訓練での仕様を示すブロック図である。
【
図5】実施形態に係る体動訓練システムにおいて、屋内訓練の手順を示すフロー図である。
【
図6】実施形態に係る体動訓練システムにおける音響信号の生成処理の概要を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に添付図面を参照して、本発明に係る体動訓練システムの実施形態を詳細に説明する。
図1に、各実施形態において、体動訓練システムが導入される各種クレー射撃競技の実射訓練場の構成を示す。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置等を例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置等を下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0021】
(実弾射撃のスポーツとしての価値について)
先ず、本実施形態に係るシステムと、実弾射撃のスポーツとしての価値について述べると、本実施形態では実弾射撃におけるタイムラグという困難な課題への対策を提供することを技術的課題の一つとしている。このタイムラグは射撃スポーツの競技性を高める要素となっており、具体的には次の3つのタイムラグが挙げられる。
【0022】
意識的に引き金を引くと決断した瞬間から、実際に指が動き始めるまでのタイムラグ
(2) 引き金を引いてから撃鉄が雷管に触れ、発火して火薬が爆発するまでのタイムラグ。
【0023】
(3) 爆発によって散弾が発射されてから、標的に到達するまでのタイムラグ。
【0024】
仮に、実弾射撃においてこれらのタイムラグが存在しなければ、誰でも容易に目標に命中させることができると考えられる。しかし、これらのタイムラグを完全に訓練により排除することは不可能といえる。
【0025】
そこで、射手自身が感覚的に認識できないこれらのタイムラグに対する理解と、それに対応する心身の訓練が求められる。これらが必要となる理由こそ、射撃が単なるゲームではなく、スポーツ競技として認識され得るからであり、これらのタイムラグを管理し、適応する技術を身につけることが、射撃の技術向上、そして成績向上に繋がると考えられる。
【0026】
本実施形態に係るシステムでは、上述したようなタイムラグという困難な要素に対する独自のアプローチを提供する。このタイムラグは、飛翔体と「散弾の発射時の状態」に相対的に影響し、「散弾の発射時の状態」は、飛翔体を撃つために行う連続した銃の動作により、着弾点の移動や影響された動態によって変化する。
【0027】
それゆえ、この動態の理解と改良が練習の中心となるが、現状では、多くのクレー射撃の選手が感覚と経験に頼ってその動態を認識している。それには相当数の実射が必要であり、それがクレー射撃の発展の障害ともなっている。
【0028】
本実施系に係るシステムは、動態を視覚的、音響的なデータに変換することで、訓練者が容易にその動態を認識できるようにし、これにより、実際に弾を発射することなく室内で訓練することが可能となる。このような環境の変化は、クレー射撃の練習が現在の実射場での大量実射から、室内練習へと大きくシフトすることをも可能とすることから、射撃練習の新たな革命的な一歩と言える。
【0029】
(実射訓練場の構成)
次いで、本実施形態に係るシステムが前提とする実射訓練場の構成について説明する。なお、以下に説明する各実施形態において、クレー射撃は、散弾銃を用いて、空中に射出される標的(クレー)を撃ち壊していくスポーツ競技であり、射撃手は、クレーが射出される瞬間に反応して銃を構え、クレーを追いかけて正確に撃ち落とす。クレー射撃には、トラップ射撃とスキート射撃とがあり、トラップ射撃では、クレーが様々な角度と速度で射出され、スキート射撃では、クレーがある程度固定された位置や角度で放出され、射場の形式も、スキート射撃は半径25ヤードの円を描いた射場で行われ、地面に時計の文字盤のように区画した場所からクレーを撃つ。
【0030】
スキート射場は、
図1(a)に示すように、クレー射撃の一種であるスキート射撃を行うための射撃場であり、半円状の競技場5の周囲に複数の射台53が設置されている。半円状の競技場の円弧部分中央にはプーラーハウス54が配置されている。また、スキート射撃では、左側から飛ぶクレーをプールと呼び、右側から飛ぶクレーをマークと呼び、それぞれのクレーを射出する射出機が設置されたハイハウス51及びローハウス52が、競技場5の両側に配置されている。クレーT1は、ハイハウス51及びローハウス52から、中央のセンターポール55に向けて射出される。競技者P1は、各射台53を順番に移動しながら、一定方向に射出され飛行するクレーT1を射撃する。このときクレーT1は常に同じところから射出されるが、競技者P1の立ち位置が変わることでクレーT1の飛行角度が変わって見えるようになっている。
【0031】
他方、
図1(b)に示すように、トラップ射場6は、クレー射撃の一種であるトラップ射撃を行うための射撃場であり、トラップ射撃では、トラップハウス63の異なる位置に設置された射出機から飛び出すクレーT1を、競技者P1が射台62aから撃ち落とす。トラップハウス63では、クレーT1を射出する射出機が中央線64に対応する位置に設置されており、トラップハウス63は、競技者P1の前方に配置され、プーラーハウス61からの制御に応じて、クレーT1はこのトラップハウス63からランダムな角度と速度で射出される。
【0032】
競技者P1は、最初の射台62aから順番に移動し、各射台62aで1枚のクレーT1を撃ち落とす。全てのステーションで射撃が終わると、次の射手が同じプロセスを繰り返す。トラップ射撃では、競技者がコマンドを発声することでクレーを放出することから、各射台62aのそれぞれにはマイク62bが設置されている。マイク62bは音声を検出し、トラップハウス63に信号を送り、クレーが飛び出すタイミングを制御する。マイク62bを使用することで、競技者P1が自分のペースで射撃を行うことができる。
【0033】
(体動訓練システムの構成)
具体的に、本実施形態では、情報処理端末100を用いて、クレー射撃競技に本発明を適用し、クレー射撃競技についての体動訓練を可能とするシステムを提供する。なお、以下に示す実施の形態は、この発明の技術的思想を具体化するための装置などを例示するものであって、この発明の技術的思想は、各構成部品の材質、形状、構造、配置などを下記のものに特定するものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えることができる。
【0034】
図2は、本実施形態に係る情報処理端末100を用いた体動訓練システムの内部構成を示すブロック図である。
図2に示すように、本実施形態に係る体動訓練システムは、競技者P1に装着され、或いは競技者P1の周囲に設置される情報処理端末100と、競技者P1の身体若しくは競技者P1が使用する散弾銃2に装着され、情報処理端末100に対して無線接続される装着センサー21とから概略構成されている。なお、本実施形態では、基本的に情報処理端末100と装着センサー21との間における近距離無線通信が接続可能な範囲でシステムが構築可能となっている。
【0035】
(各装置の構成)
上述したような体動訓練システムを構成する各装置について説明する。
【0036】
(1)着用センサー
装着センサー21は、競技者P1の運動が行われる部位、或いは散弾銃2に取り付けられるか若しくは内蔵されて装着される装置であり、装着対象部位の三次元的な変位又は加速度を検出するセンサーである。本実施形態において装着センサー21は、散弾銃2に内蔵されている。装着センサー21は、物体の加速度を計測する3軸加速度計と、物体の角速度を検出する3軸ジャイロスコープ、磁場の大きさ・方向を計測する3軸磁気センサーが搭載され、9軸の動きを検知可能となっている。なお、各装着センサー21は、クリップ等の部材などによって装着者の靴やベルト、衣服などに着脱可能であり、容易に各センサーを着脱して測定を行うことができ、装着者に負担を与えずに継続的な測定を行うことが容易である。
【0037】
そして、この装着センサー21は無線通信部を有しており、この無線通信部は、内部にアンテナを有し、BTLE(Bluetooth(登録商標) Low Energy,Bluetooth(登録商標) 4.0)等による近距離無線通信のデータ通信用プロトコルを実行する機能によって、情報処理端末100との通信処理が可能となっている。なお、本実施形態において、装着センサー21の無線通信部は、低消費電力通信用のプロトコルとしてBTLEを採用したが、例えば、ANT、ANT+等を採用することもできる。また、通常のBluetooth(登録商標)を採用することもできる。
【0038】
(2)情報端末装置
本実施形態に係る情報処理端末100は、
図2に示すように、スマートフォンなどの小型の端末装置であって、各種アプリケーションソフトをインストールすることにより様々な機能が実装可能であり、本実施形態では、電波試験用アプリケーションをインストールして、当該スマートフォンを体動訓練用の端末装置として機能させる。この情報処理端末としては、スマートフォンの他、例えば、パーソナルコンピュータ等の汎用コンピュータや、機能を特化させた専用装置により実現することができ、タブレットPCやモバイルコンピュータ、携帯電話機が含まれる。
【0039】
具体的に、情報処理端末100は、演算処理装置であるアプリケーション実行部110と、メモリ120と、出力インターフェース102と、入力インターフェース101とを備えている。また、情報処理端末100は、装着センサー21によって検出された検出結果を収集する機能を有し、無線インターフェース101a及び102aによって装着センサー21と相互に通信処理を行って、装着センサー21による検出結果を取得できるようになっている。情報処理端末100のメモリ120は、装着センサー21による検出結果を体動データとして記録する体動記録部としての機能を果たしている。ここで、体動データとは、各種センサーが検出した生データであり、この体動データを記録し解析し、必要な情報を抽出したり、補正したりなどのデータ処理に供される。
【0040】
なお、装着センサー21から送信される検出結果には、装着センサー21を識別するセンサー識別情報が付加されており、いずれの装着センサー21から取得した検出結果であるかが判別可能となっている。なお、この識別情報には、各装着センサー21から検出結果を取得した際の時刻情報も含まれている。
【0041】
無線インターフェース101a又は102aは、通信ネットワークを介した各種情報の送受信や、wifiやBluetooth(登録商標)等の近距離無線通信を制御するモジュールであり、種々のプロトコルにより、各装着センサー21と通信をしたり、3G通信により上記サーバー装置等との間でデータの送受信を行う。
【0042】
さらに、情報処理端末100は、出力インターフェース102と入力インターフェース101とを備えている。入力インターフェース101は、装着センサー21の他、外部カメラ131などの外部機器と接続するデバイスであり、リモコン等の遠隔操作デバイスなども接続可能となっている。また、出力インターフェース102には、ディスプレイやスピーカーなど、映像や音響を出力するデバイスが接続可能となっている。特に、この出力インターフェース102には、液晶ディスプレイなどの表示部が含まれるとともに、この表示部は、入力インターフェースであるタッチパネルに重畳されて構成されている。
【0043】
特に、出力インターフェース102には、スピーカーやヘッドホン、イヤホン等の音響出力デバイスが接続可能であり、これらの音響出力デバイスは、競技者P1の体動を音響として出力する機能が備えられている。
【0044】
一方、入力インターフェース101は、外部カメラ131などの動画取得手段が接続可能となっている。この外部カメラ131は、後述する屋内訓練においてスクリーンに投影されたレーザー銃のレーザーポインターの光跡を撮影した動画データを取得する機能も備えている。この外部カメラ131が取得する動画データには、映像が記録された映像データと、その映像とともに録音された音声データ、撮影時刻、終了時刻、時間経過などのタイムスタンプ等のメタデータが含まれる。
【0045】
また、入力インターフェース101に接続される動画取得手段としては、情報処理端末100に内蔵された内蔵カメラも含まれ、これら動画取得手段で撮影された動画データが画像解析部117によって取得され、メモリ120に動画ファイル120aとして蓄積されたり、体動解析部112における体動解析処理に供される。なお、外部カメラ131から取得される動画データには、撮影時に逐次リアルタイムで取得されるストリーミングデータの他、外部カメラ131で撮影され外部に蓄積されたファイル形式の動画データを、撮影後にダウンロードして取得されるものも含まれる。
【0046】
また、情報処理端末100は、本実施形態において、センサーから取得した検出結果に基づいて、装着者の体動を解析し、体動データを生成する機能を有している。なお、情報処理端末100の各機能モジュールは、このアプリケーション実行部110において、本発明の体動訓練プログラムを実行することにより、CPU上に仮想的に構築される。詳述すると、アプリケーション実行部110は、体動訓練アプリケーションが実行されることによって、検出信号取得部111と、画像解析部117と、体動解析部112と、音響信号生成部113と、出力信号制御部114と、トレーニング管理部116と、データ制御部115が仮想的に構築される。
【0047】
検出信号取得部111は、入力インターフェース101を介して、装着センサー21から検出信号を取得するモジュールであり、本実施形態では、装着センサー21と無線通信を行って、その検出結果である各種センサーの検出信号をリアルタイムで取得する。この検出信号は、本実施形態ではアナログ信号であり、体動解析部112を通じて、リアルタイムに競技者P1の体動を音響に変換して出力できるようになっている。また、検出信号取得部111で取得された検出信号は、一時的にメモリ120内に蓄積され、その後、必要に応じてトレーニング管理部116に送出される。
【0048】
体動解析部112は、検出信号取得部111若しくは画像解析部117が取得したセンサーの検出信号や、動画データに基づいて、解析対象となっている競技者P1や散弾銃2の変位や回転、それらの加速度を算出し、競技者P1の体動を体動データとして生成するモジュールである。ここで、装着センサー21による各検出結果とは、いわゆる9軸センサーで測定される値であり、本実施形態では、物体に作用する加速度(重力加速度を含む。)の方向と大きさ、物体の角速度(大きさ、方向、中心位置)、磁場の大きさ・方向(方角)である。
【0049】
ここで、算出される体動としては、例えばクレー射撃競技における、待機状態から銃を構えるポーズへの変化、飛行中のクレーに追従させた競技者P1若しくは散弾銃2の変位、角速度、これらの時間的変化、及びその変化の滑らかさ等が含まれる。
【0050】
なお、本実施形態において、体動解析部112は、装着センサー21による各検出結果と、これら装着センサー21の周回運動の変化特性に基づいて、装着者の体動を体動データとして算出する。このとき、体動解析部112は、各装着センサー21の三次元的な回転動作、及びその変位速度、加速度、角速度、角加速度、方位を算出する。そして、体動解析部112は、算出した回転動作の特性変化を、体動データとして音響信号生成部113へ送出する。
【0051】
音響信号生成部113は、体動解析部112で生成された体動データに基づいて、競技者P1の体動の各要素、すなわち競技者P1の動作に含まれる三次元的な回転動作の変化特性を、音響に変換するモジュールである。本実施形態では、音響信号は、体動解析部112が解析した立体的な回転運動に含まれる、及びその変位速度、加速度、角速度、角加速度、方位の時間的変化を、音響の音程、音量、音色により表現した音響信号として生成される。このようにして生成された音響信号は、出力インターフェース102を介して出力デバイスで表示又は出力され、競技者が自身の動作を音響としてフィードバックを受けることができる。
【0052】
具体的に、体動解析部112による解析では、射撃に係る動作、待機状態から構えの態勢、クレイの飛行を追跡して発砲するまでの動作を、三次元的な回転運動の組み合わせを水平・鉛直成分ごとに分解して、体動データとして生成し、音響信号生成部113に入力する。音響信号生成部113では、これらの各回転運動の角速度、角加速度、その他の加速度、水平移動などを、各種の音程や音色の変化で表したり、強弱を音量で表現したり等の変換が行われる。
【0053】
例えば、
図6に示すように、音響信号生成部113は、散弾銃2の上下・左右の角加速度を取得し、その垂直成分AaVと水平成分AaHとに分解して、これらの各角加速度成分を、二種の波形成分の所定のパラメーター、ここでは各波形の波長(周波数)に一定の割合で割り当てて合成することにより、音響信号Ss1を生成する。なお、この体動解析部112による他の解析方法としては、競技者P1を3次元的に表示させた立体的なデータを生成するものであってもよく、また、立体的な動作を、XY平面、YZ平面、XZ平面に投影した2次元的なデータとして生成するものであってもよい。
【0054】
出力信号制御部114は、出力インターフェース102で出力若しくは表示される音響情報や表示情報を生成するモジュールであり、体動解析部112が解析した体動データを、音響信号として出力したり、撮影された動画と同期させて表示又は出力する表示情報を生成する。この表示情報は、例えば内蔵カメラや外部カメラ131で撮影した動画を、情報処理端末100などのスマートフォンの画面に表示するとともに、体動解析部112が解析した体動データを、角加速度、加速度、角速度等の各種センサーの検知結果に含まれる各成分である運動パラメータを、平面的な図形などのグラフィックで表し、体動データを時系列で表示するタイムラインとを、対比可能に同期させて表示するようにしてもよい。なお、この表示情報には表示データとともに、音響信号やその他の出力制御信号が含まれる。
【0055】
トレーニング管理部116は、射撃訓練全般の管理を行う機能モジュールであり、体動訓練プログラムを実行することによって仮想的に構築され、検出信号取得部111や画像解析部117から取得されたデータを適切に処理し、体動解析部112で解析された体動データを記録し、トレーニング全体を管理する。
【0056】
具体的には、体動解析部112が装着センサー21や動画データから競技者P1の体動を解析し、音響信号生成部113がこれらの体動データに基づいて生成された音響信号を音響ファイルとして、トレーニングの実施日時や位置情報とともに記録する。別途カメラ等で撮影された映像を、この音響ファイルと関連づけて記録してもよい。
【0057】
記録された音響ファイルは、選択して適宜再生可能であり、再生データを聴くことにより、競技者の体動解析の結果を、音響として記憶し、イメージすることができ、競技者が自分の動作を客観的に把握し、改善することができる。また、本システムを稼働させながら、競技者が自身の動作を音響とともに再現することができ、競技者は自分の動作の再現性を、より効果的に身につけることができる。
【0058】
なお、トレーニング管理部116には、例えば、模範となる体動データや音響信号をメモリ120に蓄積し、模範となる音響データを再生し、装着者の体動データと比較することで、正常な体動とのズレなどを示した改善データを生成してもよい。さらには、予め、性別、身長、体重、年齢などユーザー情報を登録しておくことで、各ユーザー情報に基づいた解析を行ってもよい。そして、トレーニング管理部116は、この立体画像データや改善データなどの解析結果を情報処理端末100から、映像や音声等で出力する機能を備えている。
【0059】
前記メモリ120は、各種のデータを記録する記憶装置であり、各情報処理端末100を識別する識別情報や、各装着センサー21の装着部位情報、各部位に装着された装着センサー21の相対位置関係、及び上述したユーザー情報や模範となる体動データなどが蓄積されている。
【0060】
(体動訓練方法)
(1)屋外訓練
以上の構成を有する体動訓練システムを動作させることによって、本実施形態に係る体動訓練方法を実施することができる。
図3に屋外における体動訓練の各ステップを示す。
【0061】
先ず、競技者P1は、射撃に係る身体の部位、例えば腕などの任意の部位や、銃に装着センサー21を装着して、体動訓練を実行する。そして、情報処理端末100側で本発明のプログラムであるアプリケーションを起動し、各装着センサー21から検出結果を取得すべくアプリケーションに対して計測開始操作を入力するとともに、外部カメラ131の撮影開始操作を行う(S101)。この計測開始操作を受けて、情報処理端末100の出力信号制御部114は、各装着センサー21と接続処理を行う。接続処理された後、装着センサー21では、競技者P1の動作の検出を開始する(S102)。具体的には、装着者の身体や銃に取り付けられた装着センサー21により、各部位の三次元的な変位、又は加速度を検出する。
【0062】
取得された各検出結果は、装着センサー21の無線通信部を介して、微弱電波により情報処理端末100の無線インターフェース101a,102aへと送信される。情報処理端末100の無線インターフェース101a,102aが各検出結果の取得が開始されると、体動記録部であるメモリ120は、装着センサー21による検出結果を体動データとして順次記録してゆく。
【0063】
次いで、射撃の射的となるクレーが射出される(S103)と、競技者P1は射出され飛行しているクレーを追尾する動作を行い、その動作に合わせて音響信号が生成され(S104)、リアルタイムにその音響が出力されるとともに、音響ファイルとして記録される(S105)。また、競技者が発砲した場合には、その発砲による動作も、発砲音の録画や、振動検出、映像撮影により記録する(S106)。
【0064】
このように競技中は継続して装着センサー21の検出値の取得、及び録画処理が継続して実行され、メモリ120等に記録される(S107における「N」)。この間、情報処理端末100に内蔵された外部カメラ131や、外部に接続された外部カメラ131で撮影された動画データが体動解析部112によって取得され、メモリ120に蓄積されたり、出力信号制御部114における体動解析処理に供される。このとき、装着センサー21による検出データや録画された映像を、リアルタイムで解析して情報処理端末100の表示部に表示するようにしてもよい。その後、競技が終了次第計測を終了するとともに(S107における「Y」)、必要に応じて録画処理の停止や、センサーとの通信切断などの終了処理を実行する(S108)。
【0065】
(2)屋内訓練
以上の構成を有する体動訓練システムを動作させることによって、本実施形態に係る体動訓練方法を実施することができる。
図4に実施形態に係る体動訓練システムにおける屋内訓練での仕様を示し、
図5に屋外における体動訓練の各ステップを示す。
【0066】
上述したように、屋外訓練において記録された動画及び体動データは、
図4に示すような、記録動画をスクリーンに映した設備と、レーザー銃20とを組み合わせた屋内訓練で利用することができる。
図4に示すように、上述した情報処理端末100にプロジェクター132を接続し、撮影したクレーの動画を再生するとともに、外部カメラ131でレーザー銃20が照射したレーザーのスクリーン133上のポインタ20aを撮影し、情報処理端末100に入力する。
【0067】
このシステムでは、上記同様に、レーザー銃20に内蔵されたセンサーで、競技者P1の体動を検知するほか、ポインタ20aのスクリーン133上における挙動を、外部カメラ131で撮影し、それを体動解析部112で解析することにより、競技者P1の体動をトレース若しくはキャプチャーすることもできる。
【0068】
そして、センサーや、検出信号取得部111により体動データが取得され、画像解析部117及び体動解析部112により動画データが取得されると、体動算出処理、及び体動解析処理が実行され、競技者P1の体動を音響化した音響信号が生成される。具体的な手順としては、実射訓練が開始されると(S201)、屋外訓練で記録したクレイが飛翔する映像のスクリーン133への投影を開始する(S202)とともに、レーザー銃20から照射されるレーザーポインター20aの光跡を撮影する(S203)。
【0069】
このとき、センサーや検出信号取得部111によるデータの取得と、画像解析部117および体動解析部112による動画データの取得とが同時に行われる(S201)。これらのプロセスは互いに連携し、競技者P1の体動を音響信号として具現化するための基盤を形成する。具体的には、実射訓練の開始(S201)と共に、屋外での訓練中に記録されたクレイの飛翔シーンの映像がスクリーン133に投影される(S202)。この映像によって、競技者P1に対し、実際の屋外訓練のときの状況が再現される。同時に、レーザー銃20から照射されるレーザーポインター20aの光跡が外部カメラ131やその他の適切なセンサーで撮影される(S203)。この光跡は、競技者P1の銃の指向性や動きを詳細に追跡するためのデータとして用いられる。
【0070】
撮影された光跡の映像は、検出信号取得部111によって取得され、体動解析部112に送信される。ここで、競技者P1の銃の動きや角度、加速度などの具体的な体動データが生成される。また、画像解析部117は、投影されたクレイの映像を解析し、その動きと競技者P1の体動データを比較・照合を行う。この解析結果は、音響信号生成部113に送信される。
【0071】
ここで、競技者P1の体動の各要素が音響に変換される。具体的には、競技者P1の動作に含まれる三次元的な回転動作の変化特性が、音響の音程、音量、音色により表現される。そして、生成された音響信号は、出力インターフェース102を通じて出力デバイスで表示または出力される(S204、S205)。これにより、競技者P1は自身の体動を音響として直接聞くことが可能となり、自身の動作とその結果をリアルタイムで理解することが可能となる。このように、競技者は自身の動作を音響として具体的なフィードバックを受け、より具体的な改善策を見つけることが可能になる。
【0072】
このように、屋外訓練を再現し、そのときに得られた音響信号と、この屋内訓練設備において出力された音響信号とを聞き比べることにより、本システムによれば、屋内外それぞれのフィードバックに基づいて競技者P1が自身の動作を修正することができる。具体的に競技者P1は、フィードバックである音響信号に変換された体動を音響としてイメージし、どの動作が音響信号の変化に対応するかを理解することにより、競技者P1は自身の動作の修正点を特定し、それを改善するための新たな動作パターンを形成することが可能になる。
【0073】
そして、本発明のシステムは、競技者P1の改善された動作を再度センサーや検出信号取得部111で取得し、これを体動解析部112で解析する。この新たな動作データは、再度音響信号生成部113に送られ、音響信号に変換される。その結果、競技者P1は自身の改善された動作に対応する新たな音響信号を得ることができる。
【0074】
このようなフィードバックループ(ステップS208における「N」)が繰り返されることにより、この間、競技者P1が自身の動作を継続的に改善し、より高いパフォーマンスを達成するための手段を提供する。最終的に、本発明のシステムは、競技者P1がクレイ射撃のスキルを向上させることができる。このフィードバックループの間に、射的であるクレイが射出された映像がスクリーン133に映し出される。この映像は、実際のクレイ射撃の状況を再現したもので、競技者P1が飛んでくるクレイを追尾し、適切なタイミングで照準を合わせるという実際の射撃状況を模倣することが可能となる。この射的射出に反応して競技者P1がその映像を追尾するように動作すると、その動作に合わせてレーザーポインター20aの光跡が変化する。
【0075】
このレーザーポインター20aを追尾する動作についても、上記フィードバックループの一環として音響信号に変換され、出力及び記録される。競技者P1は、スクリーン上に映し出されたクレイの映像を視認し、それを追尾するようにレーザー銃20を操作する。この操作動作は、レーザーポインター20aによって追跡され、競技者P1が銃を動かす速度や角度、銃の位置の変化等、体動の各要素がレーザーポインター20aの光跡として捉えられる。そして、競技者P1が引き金を引くことにより生成される発砲信号が取得され(S206における「Y」)、記録される(S207)。
【0076】
さらに、出力された音響信号は、情報処理端末100内部のメモリ120によって記録される(S205)。これにより、競技者P1は、訓練後でも自身のパフォーマンスを再評価するために、過去の音響信号を参照することが可能となる。これは、自己評価及び自己改善のための重要な手段となる。
【0077】
このように競技中は継続して装着センサー21の検出値の取得、及び録画処理が継続して実行されメモリ120等に記録される(S208における「N」)。その後、競技が終了次第計測を終了するとともに(S209における「Y」)、トレーニング管理部116及びデータ制御部115により一連の音響信号や体動データ、画像データがトレーニング結果として記録管理され、必要に応じて録画処理の停止や、センサーとの通信切断などの終了処理を実行する(S209)。
【0078】
(体動訓練プログラム)
なお、上述した本実施形態に係る体動訓練システム及び体動訓練方法は、上述した体動訓練アプリケーションのように、所定の言語で記述された本発明の体動訓練プログラムをコンピューター上で実行することにより実現することができる。すなわち、本発明のプログラムを、携帯端末装置やスマートフォン、ウェアラブル端末、モバイルPCその他の情報処理端末、パーソナルコンピューターやサーバーコンピューター等の汎用コンピューターのICチップ、メモリ装置にインストールし、CPU上で実行することにより、上述した各機能を有するシステムを構築して体動訓練方法を実施することができる。
【0079】
(作用・効果)
このような本実施形態によれば、射撃競技その他のスポーツ競技において、極度の緊張感やストレスの下でも訓練どおりの動作の緩急やリズムを再現できるような技術を体得させ、実戦に即した訓練を実現できる。詳述すると、本発明では、装着者の身体の一部、または携帯する器具に取り付けられた加速度センサが、身体の動きや動作のリズム、緩急を検出し、音響信号に変換する。この音響信号を基に、出力手段から音響を出力することによって、装着者は自分の動きとリズム、緩急に合わせた音を聴くことができる。
【0080】
このように、本実施形態によれば、競技者P1がクレイ射撃の訓練を効果的に行うことを可能にする。映像表示、動作解析、音響信号生成、そして記録という一連のプロセスを通じて、競技者P1は自身の動作とその結果を詳細に理解し、改善することが可能となる。また、本システムでは、リアルな射撃経験を模倣しつつ、競技者P1が自身の動作を音響として直接聞くことにより、自分の動きとその結果をリアルタイムで理解することができ、これが競技者P1の射撃技術の向上に寄与することとなる。
【0081】
これらの結果、本発明を用いたトレーニングを通じて体動の緩急やリズムを、音響のパターンとして記憶・体得することができるため、実戦ではその音響を思い起こすことで再現すべき体動をイメージすることができる。体得したパターンの音響をイメージし、それに合わせた動作を行うことで、極度の緊張感やストレス下でも動作の緩急やリズムを再現できる。
【0082】
ここで、本実施形態に係るシステムのレーザー銃20と、従来技術であるレーザー銃との差異について詳述すると、従来技術のレーザー銃では、レーザー照射は着弾点を示し、引き金を引いた瞬間に照射することで「当たった」「はずれた」を判定することが主な用途である。それに対して、本実施形態に係るシステムのレーザー銃20では、レーザー照射は引き金を引く以前から銃を構えた瞬間から常に照射を続ける。
【0083】
具体的には、飛翔体(クレーT1)を撃つまでの連続した銃の動作によって、着弾点がどのように移動したか、またはどのように影響を受けたかの動態を表現し、記録する。また、本実施形態のシステムでは、この記録された着弾点の動態データをグラフなどの形で可視化したり、音響化したりでき、これによって競技者P1はその動態を容易に把握することができる。
【0084】
したがって、本実施形態によれば、射撃競技その他のスポーツ競技において、極度の緊張感やストレスの下でも訓練どおりの動作の緩急やリズムを再現できるような技術を体得させ、実戦に即した訓練を実現できるだけでなく、訓練者が自身の行動と結果を客観的に理解し、改善することも可能となる。
【0085】
なお、射撃訓練においては、飛翔体を撃つための連続した銃の動作を研究する際、現在の銃の向き、すなわち着弾点がどこにあるかを意識することが重要である。通常、この着弾点は銃身の先端に取り付けられた「照星」という突起物を目安にしている。しかし、この方法は相当に大雑把であり、特に一瞬の動作による着弾点の変化を射手に認識させることは困難であった。それに対して、本実施形態に係るシステムでは、レーザー照射とハイスピード映像によるデータの分析を用いて、射手が着弾点の動態をより正確に認識できるようになっている。
【0086】
また、本実施形態に係るシステムはその着弾点の動態を視覚データとして変換し、さらに音響化することも可能である。視覚データとしての表示はグラフ等を用い、音響化には着弾点の動態を音程などの聴覚データに変換する。こうした情報は、適切な出力手段(例えばイヤホン)を通じて射手に提供され、射手は自身の動作による着弾点の動きを即時に理解することができる。
【0087】
これらの特性により、本実施形態に係るシステムは、射撃訓練の効率と正確性を大幅に向上させることができる。極度の緊張感やストレスの下でも訓練通りの動作の緩急やリズムを再現する技術を射手が習得し、より現実的な訓練を行うことが可能になると同時に、射手は自身の行動とその結果を客観的に理解し、改善することが可能となる。
【0088】
タイムラグによる影響度合は、飛翔体と「散弾の発射時の状態」に相対的に変化する。その「散弾の発射時の状態」は、飛翔体を撃つために行う連続した銃の動作により、着弾点がどのように移動あるいは影響されたかの動態により決まる。
【0089】
これらの動態の研究と改良は練習の主要な要素である。しかし、現状のクレー射撃の選手は、その動態の認識を感覚と経験に頼っており、大量の実射を必要としている。このため、訓練に要する費用がクレー射撃の発展にとって大きな障害となっている。
【0090】
本発明により、この問題に対応するための手法が提供される。本発明は、動態を視覚と音響に変換することで、訓練者が容易に動態を認識することが可能となる。加えて、訓練者が実際に弾を撃つことなく室内で訓練を行うことができるため、クレー射撃の練習の重点は大量実射を必要とする射撃場から室内練習へと大きく変わることになる。
【0091】
なお、この体動訓練システムは、射撃競技に限らず、他のスポーツ競技や運動競技においても応用することができる。例えば、体操競技において、ジャンプや回転のリズムに合わせた音を出力することによって、選手の動きを正確に調整することができ、ダンス競技においても、音楽に合わせたリズムを意識しながら、自分の動きを調整することができる。スポーツ競技や運動競技において、正確な技術やリズムを身につけたい競技者にとって、非常に有用な訓練ツールを提供できる。
【0092】
また、本実施形態に係る体動訓練プログラムでは、例えば、通信回線を通じて配布することが可能であり、また、コンピューターで読み取り可能な記録媒体に記録することにより、スタンドアローンの計算機上で動作するパッケージアプリケーションとして譲渡することができる。
【0093】
この記録媒体として、具体的には、フレキシブルディスクやカセットテープ等の磁気記録媒体、若しくはCD-ROMやDVD-ROM等の光ディスクの他、RAMカードなど、種々の記録媒体に記録することができる。そして、このプログラムを記録したコンピューター読み取り可能な記録媒体によれば、汎用のコンピューターや専用コンピューターを用いて、上述したシステム及び方法を簡便に実施することが可能となるとともに、プログラムの保存、運搬及びインストールを容易に行うことができる。
【0094】
なお、本発明は、上記した各実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、上記実施の形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合せにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。
【符号の説明】
【0095】
P1…競技者
T1…クレー
2…散弾銃
5…競技場
6…トラップ射場
20…レーザー銃
20a…ポインタ
21…装着センサー
51…ハイハウス
52…ローハウス
53…射台
54…プーラーハウス
55…センターポール
61…プーラーハウス
62a…射台
62b…マイク
63…トラップハウス
64…中央線
100…情報処理端末
101…入力インターフェース
101a,102a…無線インターフェース
102…出力インターフェース
110…アプリケーション実行部
111…検出信号取得部
112…体動解析部
113…音響信号生成部
114…出力信号制御部
115…データ制御部
116…トレーニング管理部
117…画像解析部
120…メモリ
120a…動画ファイル
131…外部カメラ
132…プロジェクター
133…スクリーン