(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】P2024176836
(43)【公開日】2024-12-19
(54)【発明の名称】情報処理装置およびプログラム
(51)【国際特許分類】
B29C 45/76 20060101AFI20241212BHJP
【FI】
B29C45/76
【審査請求】未請求
【請求項の数】14
【出願形態】OL
(21)【出願番号】P 2023095660
(22)【出願日】2023-06-09
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.JAVASCRIPT
(71)【出願人】
【識別番号】000002107
【氏名又は名称】住友重機械工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100104880
【弁理士】
【氏名又は名称】古部 次郎
(74)【代理人】
【識別番号】100125346
【弁理士】
【氏名又は名称】尾形 文雄
(72)【発明者】
【氏名】中園 真修
【テーマコード(参考)】
4F206
【Fターム(参考)】
4F206AM23
4F206JA07
4F206JL02
4F206JP01
4F206JP13
4F206JP14
4F206JP22
4F206JP25
4F206JP27
4F206JP30
(57)【要約】
【課題】成形品の品質に関する情報の入力作業におけるユーザの負担を軽減するユーザインターフェイスを提供する。
【解決手段】射出成形機により製造される成形品の品質に関する情報を入力するための入力画面310を表示装置に表示させる表示制御手段と、入力画面310に対する操作を受け付ける受け付け手段と、受け付け手段により受け付けた操作に応じて成形品の品質に関する情報を生成する生成手段と、を備え、入力画面310は、成形品の品質に関する情報であって、予め定められた項目を有し、この項目ごとの内容をグラフ311で表示した画面であり、受け付け手段により受け付けた操作に応じてグラフ311の表示内容が変更される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
射出成形機により製造される成形品の品質に関する情報を入力するための入力画面を表示装置に表示させる表示制御手段と、
前記入力画面に対する操作を受け付ける受け付け手段と、
前記受け付け手段により受け付けた前記操作に応じて前記成形品の品質に関する情報を生成する生成手段と、を備え、
前記入力画面は、
前記成形品の品質に関する情報であって、予め定められた項目を有し、当該項目ごとの内容をグラフで表示した画面であり、
前記受け付け手段により受け付けた前記操作に応じて前記グラフの表示内容が変更されること
を特徴とする、情報処理装置。
【請求項2】
前記入力画面のグラフに示される前記項目は、前記成形品の品質に関する情報から当該品質を得るために必要な成形条件を推定する推定手段に入力される入力情報として予め定められた項目であることを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項3】
前記表示制御手段は、前記入力画面のグラフに、前記項目ごとに当該項目において成形品が良品と判定される基準を表す基準画像を表示することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項4】
前記入力画面のグラフに表示される前記基準画像には、成形品が良品と判定される範囲が特定される前記項目に関して当該範囲を示す画像が含まれることを特徴とする、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項5】
前記表示制御手段は、前記入力画面のグラフに表示された前記範囲が特定される前記項目のうち、前記受け付け手段により受け付けた前記操作により特定された値が良品と判定される前記範囲に含まれる項目と他の項目とを識別可能に表示することを特徴とする、請求項4に記載の情報処理装置。
【請求項6】
前記入力画面のグラフに表示される前記基準画像には、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される前記項目に関して当該境界を示す画像が含まれることを特徴とする、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項7】
前記表示制御手段は、前記入力画面のグラフに表示された前記境界が特定される前記項目に関して、前記境界に対して成形品が良品と判定される側の領域と不良品と判定される側の領域とを識別可能に表示することを特徴とする、請求項6に記載の情報処理装置。
【請求項8】
前記表示制御手段は、前記基準画像として、成形品が良品と判定される範囲が特定される前記項目に関して当該範囲を示す画像を表示し、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される前記項目に関して当該境界を示す画像を表示することを特徴とする、請求項3に記載の情報処理装置。
【請求項9】
前記表示制御手段は、前記グラフを表示する前記入力画面においてまたは当該入力画面とは別の入力画面において、前記項目の少なくとも一部に対する値を入力するための文字入力欄を表示することを特徴とする、請求項1に記載の情報処理装置。
【請求項10】
前記表示制御手段は、前記入力画面のグラフに表示された前記項目を指定する操作に応じて、指定された当該項目に対する前記文字入力欄を当該入力画面に表示することを特徴とする、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項11】
前記表示制御手段は、前記入力画面のグラフに表示された前記項目を指定する操作に応じて、指定された当該項目に対する前記文字入力欄を有する前記別の入力画面に表示を切り替えることを特徴とする、請求項9に記載の情報処理装置。
【請求項12】
前記表示制御手段は、前記文字入力欄に入力された値に応じて前記グラフの表示内容を変更することを特徴とする、請求項9乃至請求項11の何れかに記載の情報処理装置。
【請求項13】
前記入力画面のグラフに表示された前記項目の少なくとも一部に関して音声による入力を受け付ける音声入力手段をさらに備えることを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の情報処理装置。
【請求項14】
コンピュータに、
射出成形機により製造される成形品の品質に関する情報を入力するための入力画面を表示装置に表示させる機能と、
前記入力画面に対する操作を受け付ける機能と、
前記受け付ける機能により受け付けた前記操作に応じて前記成形品の品質に関する情報を生成する機能と、を実現させ、
前記入力画面を表示装置に表示させる機能において、
前記成形品の品質に関する情報であって、予め定められた項目を有し、当該項目ごとの内容をグラフで表示した画面を表示させ、
前記入力画面に対して行われた操作に応じて前記グラフの表示内容を変更すること
を特徴とする、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、情報処理装置およびプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、設定された成形条件に従って、射出成形により成形品を製造する。射出成形機の成形条件を最適化するための種々の従来技術がある。一例として、製造された成形品の品質に関する情報を入力し、機械学習を利用して、入力された成形品質を得るのに必要な成形条件を推定する技術がある。
【0003】
特許文献1には、射出成形を実行して得られた物理量データと予め設定された報酬条件とに基づいて報酬を計算する報酬計算部と、報酬計算部が計算した報酬と操作条件調整と物理量データに基づいて成形条件を含む操作条件の調整を機械学習する操作条件調整学習部と、操作条件調整学習部が行った機械学習に基づいて操作条件調整の対象と調整量を決定して出力する操作条件調整量出力部と、を備える射出成形システムが開示されている。
【0004】
特許文献2には、成形機に係る操作量を決定する操作量決定装置であって、成形機による成形が実行されたときに成形に係る物理量を観測して得られる観測データに基づいて、成形機の状態を表現する状態表現マップを生成し、この状態表現マップに基づいて、操作量を出力する装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2017-30152号公報
【特許文献2】特開2021-59045号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
射出成形を実行して得られたデータを用いて成形条件を推定する場合、射出成形の実行に伴ってデータを取得するために検査装置を設けたりデータの解析処理を行ったりするのにコストを要する。また、成形品に対して目視による官能評価の結果やノギス等の計測器具を使って得られた計測値をユーザが手動操作により入力することが考えられる。しかし、このような手法は、入力作業に手間を要し、ユーザの負担となる。
【0007】
本発明は、成形品の品質に関する情報の入力作業におけるユーザの負担を軽減するユーザインターフェイスを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は、射出成形機により製造される成形品の品質に関する情報を入力するための入力画面を表示装置に表示させる表示制御手段と、入力画面に対する操作を受け付ける受け付け手段と、受け付け手段により受け付けた操作に応じて成形品の品質に関する情報を生成する生成手段と、を備え、入力画面は、成形品の品質に関する情報であって、予め定められた項目を有し、この項目ごとの内容をグラフで表示した画面であり、受け付け手段により受け付けた操作に応じてグラフの表示内容が変更されることを特徴とする、情報処理装置である。
【発明の効果】
【0009】
本発明の一態様によれば、成形品の品質に関する情報の入力作業におけるユーザの負担を軽減するユーザインターフェイスを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図である。
【
図4】制御装置およびデータ処理装置のハードウェア構成例を示す図である。
【
図5】成形品質を特定する際に用いられる入力画面の構成例を示す図である。
【
図6】レーダーチャートを用いた入力画面の変形例を示す図である。
【
図7】レーダーチャートを用いた入力画面の他の変形例を示す図である。
【
図8】成形品質を特定する際に用いられる入力画面の他の構成例を示す図である。
【
図9】棒グラフを用いた入力画面の変形例を示す図である。
【
図10】棒グラフを用いた入力画面の他の変形例を示す図である。
【
図11】文字入力を受け付ける入力画面の構成例を示す図である。
【
図12】文字入力を受け付ける入力画面の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について詳細に説明する。
<装置構成>
図1は、本実施形態が適用される射出成形機の構成を示す図である。射出成形機10は、射出装置20と、型締装置30と、制御装置100と、データ処理装置200と、表示装置300とを備える。
【0012】
射出装置20は、成形材料を加熱するシリンダ、このシリンダ内で回転可能であると共に軸方向に進退可能に設けられているスクリュー、このスクリューを回転方向に駆動する回転モータ、このスクリューを軸方向に駆動するモータ等を備えて構成される。成形材料は、例えば、樹脂等である。射出装置20は、スクリューを回転させながら射出装置20から型締装置30へ向かう方向(前方)へ進出させることにより、シリンダ内で加熱されて液状となった成形材料を射出し、射出装置20の前方に配置された型締装置30の金型内へ充填する。射出装置20は、成形品の製造工程において、例えば、計量工程、充填工程、保圧工程などを行う。充填工程と保圧工程とをまとめて射出工程とも呼ぶ。
【0013】
型締装置30は、金型と、金型を締め付ける締め付け機構、この締め付け機構を駆動するモータ等を備えて構成される。型締装置30は、金型を閉じて射出装置20から射出された成形材料を金型内部へ受ける。このとき、型締装置30は、成形材料が充填されることによって金型が開かないように締め付け機構により金型を締め付ける(型締め)。金型に充填された成形材料が固化することにより成形品が生成される。この後、型締装置30は、金型を開いて、生成された成形品を送り出す。型締装置30は、成形品の製造工程において、例えば、型閉工程、昇圧工程、型締工程、脱圧工程、型開工程などを行う。
【0014】
制御装置100は、射出装置20および型締装置30の動作を制御する装置である。データ処理装置200は、射出装置20および型締装置30が動作するのに伴って得られるデータを処理する装置である。また、データ処理装置200は、ユーザによる情報の入力を受け付けるための入力画面を生成し、入力画面により受け付けたデータを処理する。表示装置300は、制御装置100による射出装置20および型締装置30の制御に関する情報、データ処理装置200が取得したデータやデータ処理装置200の処理結果等を表示する。また、表示装置300は、制御装置100やデータ処理装置200に命令やデータを入力する操作を行うための入力画面やその他の操作画面、ユーザに情報を提示する画面等を表示する。
【0015】
<制御装置100の構成>
図2は、制御装置100の構成を示す図である。制御装置100は、射出装置20および型締装置30の動作を制御する。制御装置100は、例えば、コンピュータにより実現される。制御装置100は、制御部110と、成形条件設定部120と、記憶部130とを備える。制御装置100は、射出装置20および型締装置30を制御して、成形品の製造に係る工程を繰り返し行うことにより、成形品を繰り返し製造する。成形品の製造に係る工程には、計量工程、型閉工程、昇圧工程、型締工程、充填工程、保圧工程、冷却工程、脱圧工程、型開工程、突き出し工程などが含まれる。以下、これらの製造に係る工程をまとめて「製造工程」と呼ぶことがある。また、成形品を得るための一連の動作、例えば、上記の製造工程における計量工程の開始から次の計量工程の開始までの動作を「ショット」、「成形サイクル」等と呼ぶ。なお、成形品を製造する上記の各工程は例示に過ぎない。例えば、1ショットで実行される工程として、上記に含まれない、他の工程を含んでも良い。
【0016】
制御部110は、制御情報に基づいて、射出装置20および型締装置30を制御する。制御情報は、ユーザが設定する条件であり、例えば、図示しない入力装置を用いてユーザが入力した情報に基づいて生成される。制御情報には、例えば、樹脂温度、金型温度(シリンダ温度)、射出保圧時間、計量値、V-P切り替え位置、保圧圧力、射出速度(充填速度)、スクリュー回転数、スクリュー背圧、型締力等の成形条件が含まれる。これらの成形条件は、成形品や金型に応じて複数の組み合わせが決められる。この成形条件の組み合わせデータを、以下、成形条件データセットとも呼ぶ。成形条件データセットは、成形品や金型の種類等に応じて用意され、記憶部130に格納されている。
【0017】
制御部110は、上記の成形条件データセットを用いて射出装置20および型締装置30を制御し、上記の各工程等を含む成形品の製造(ショット)に係る工程を実施する。制御部110は、成形品の製造開始時などに、製造しようとする成形品に対応する成形条件データセットを記憶部130から読み出す。そして、制御部110は、読み出した成形条件データセットを含む制御情報に基づいて射出装置20および型締装置30の動作を制御する。具体的には、制御部110は、製造工程において射出装置20および型締装置30から得られるデータが、成形条件データセットの設定値と一致するように、射出装置20および型締装置30を制御する。また、制御部110は、記憶部130から読み込んだ成形条件データセットを表示装置300に表示させても良い。ユーザは、表示装置300に表示された成形条件のデータを参照し、必要に応じて値の修正等の操作を行っても良い。
【0018】
成形条件設定部120は、制御部110による射出装置20および型締装置30の制御において用いられる成形条件を設定する。成形条件の設定は、成形条件設定部120が、記憶部130に保持される制御情報に成形条件データセットを書き込むことにより行われる。また、成形条件の設定は、後述する入力画面を用いてユーザにより入力された情報に基づいて行われる。成形品の製造工程が繰り返されると、射出装置20および型締装置30の状態が変化し、この装置20、30の状態変化が成形品の品質(以下、「成形品質」と呼ぶ)に影響する。そこで、成形品を量産する際の動作において成形品質を維持するため、成形条件設定部120が成形条件を自動調整しても良い。
【0019】
記憶部130は、制御部110による射出装置20および型締装置30の制御に用いられる制御情報131を保持する。制御情報131には、成形条件設定部120により設定された成形条件データセットが含まれる。成形条件データセットは、製造対象の成形品や金型に対応付けられて用意されている。記憶部130は、製造対象の成形品や金型ごとの成形条件データセットを保持する。また、記憶部130は、ユーザの入力により生成された成形条件の情報(以下、「設定情報」と呼ぶ)132を保持する。成形条件設定部120は、設定情報132に基づいて、制御情報131に成形条件データセットを書き込む。
【0020】
また、図示しないが、記憶部130は、制御部110が射出装置20および型締装置30を制御するためのプログラム、成形条件設定部120が成形条件を設定するためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、制御装置100においてプロセッサが記憶部130に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、制御部110および成形条件設定部120の機能が実現される。
【0021】
<データ処理装置200の構成>
図3は、データ処理装置200の構成を示す図である。データ処理装置200は、射出装置20および型締装置30が上記の成形品の製造に係る工程における動作を実行するのに伴って得られるデータを取得し、処理する。また、データ処理装置200は、ユーザの操作に応じて、制御装置100の成形条件設定部120が成形条件の設定に用いる情報(設定情報132)を生成し、制御装置100に送る。データ処理装置200は、例えば、コンピュータにより実現される。データ処理装置200は、データ取得部210と、処理部220と、成形品質生成部230と、成形条件推定部240と、記憶部250と、表示制御部260と、受け付け部270とを備える。
【0022】
本実施形態のデータ処理装置200は、入力画面上で行われるユーザによる操作を受け付けて、目標とする成形品質のデータを生成し、この成形品質のデータに基づき、目標とする成形品質を得るために必要な成形条件を推定する。そして、データ処理装置200は推定した成形条件を制御装置100へ送信し、制御装置100は受信した成形条件を設定情報132として記憶部130に保持する。なお、目標とする成形品質は、成形品が良品とされる成形品質である。
【0023】
データ取得部210は、射出装置20および型締装置30から処理対象のデータを取得する。射出装置20および型締装置30には、種々のセンサ、検出器などが取り付けられている。また、射出装置20や型締装置30に種々の計測機器が接続される場合もある。これらのセンサ、検出器、計測機器などを用いて取得されるデータ(以下、「取得データ」と呼ぶ)は、射出装置20および型締装置30による成形結果を表す情報であり、成形品の品質管理に用いられる。具体的には、例えば、成形品の重量、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量などが含まれる。これらの取得データは、成形品の製造工程において得られる実績値である。データ取得部210は、センサや検出器や計測機器から送信された取得データを受信し、記憶部250に格納する。データ取得部210は、受け付け手段の一例である。
【0024】
処理部220は、記憶部250に格納された取得データを処理する。具体的には、処理部220は、各工程における取得データの代表値の抽出、各工程における取得データを時系列化した時系列データの生成等の処理を行う。処理部220は、代表値の抽出において、取得データに対し、平均値の算出、値の取り得る範囲の特定、最大値や最小値の特定等の統計処理を行う。
【0025】
成形品質生成部230は、ユーザによる入力画面上の操作に応じて成形品質のデータを生成する。ユーザは、GUI(Graphical User Interface)である入力画面において、成形品質の情報を表す画像を操作する。これに応じて、成形品質生成部230は、入力画面における操作内容を反映させた成形品質のデータを生成する。より具体的には、製造された成形品における成形品質と目標とする成形品質との差分を表すデータを算出する。生成される成形品質のデータは、上記の成形品の重量、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量などの成形品質を表すデータのうち、入力画面において操作対象として表示される項目のデータである。入力画面およびその操作方法、成形品質の生成方法等の詳細については後述する。成形品質生成部230は、生成手段の一例である。
【0026】
成形条件推定部240は、成形品質生成部230により生成された成形品質のデータに基づき、この成形品質を得るために必要な成形条件を推定する。すなわち、入力画面において入力された成形品質と目標とする成形品質との差分を埋め、目標とする成形品質を得るために必要となる成形条件を算出する。成形条件の推定は、多変量の入出力に対応する既知の推定手法を用いて行われる。例えば、過去の実際の製造において用いた成形条件と、その成形条件で製造された成形品の成形品質の実績値を用いて予め機械学習等により学習させた、成形品質と成形条件との関係を表す数理モデルにより、成形品質から成形条件を推定することができる。成形条件推定部240は、推定手段の一例である。
【0027】
記憶部250は、データ取得部210により取得された取得データを保持する。記憶部250に保持される取得データのデータ形式として、例えば、バイナリ、テキスト、CSV(Comma Separated Values)、INI、YAML(“YAML Ain’t Markup Language)、JSON(JavaScript Object Notation)等を用いても良い。これらの汎用的なデータ形式によるデータファイルとすることで、記憶部250に保持されているデータファイルを他の情報処理装置とデータ交換したり、外部装置から取得したデータファイルを編集したりすることが可能となる。また、記憶部250は、成形品質生成部230により生成された成形品質のデータおよび成形条件推定部240により推定された成形条件のデータを保持しても良い。
【0028】
また、図示しないが、記憶部250は、処理部220、成形品質生成部230および成形条件推定部240がデータ処理を実行するためのプログラム、表示制御部260が表示装置300に画面を表示させるためのプログラム、受け付け部270が操作画面に対して行われたユーザの操作を受け付けるためのプログラムを保持している。詳しくは後述するが、データ処理装置200においてプロセッサが記憶部250に保持されたプログラムを読み込んで実行することにより、処理部220、成形品質生成部230、成形条件推定部240、表示制御部260および受け付け部270の機能が実現される。
【0029】
表示制御部260は、ユーザが種々の操作を行うための操作画面を生成し、表示装置300に表示させる。一例として、表示制御部260は、ユーザが成形条件を入力するための入力画面を表示する。受け付け部270は、表示装置300に表示された操作画面に対してユーザが行った操作を受け付ける。具体的には、例えば、入力画面の入力欄に対して行われたデータの入力や、画面の切り替え操作等を受け付ける。
【0030】
<制御装置100およびデータ処理装置200のハードウェア構成>
図4は、制御装置100およびデータ処理装置200を実現するコンピュータ400のハードウェア構成例を示す図である。
図4に示すコンピュータ400は、演算手段であるプロセッサ401と、記憶手段である主記憶装置(メイン・メモリ)402および補助記憶装置403を備える。プロセッサ401としては、例えば、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、その他の種々の演算回路を用い得る。プロセッサ401は、補助記憶装置403に格納されたプログラムを主記憶装置402に読み込んで実行する。主記憶装置402としては、例えば、RAM(Random Access Memory)が用いられる。補助記憶装置403としては、例えば、磁気ディスク装置やSSD(Solid State Drive)等が用いられる。また、コンピュータ400は、表示装置(ディスプレイ)300に画像を表示するための表示機構404と、コンピュータのユーザによる入力操作が行われる入力手段としての入力デバイス405とを備える。入力デバイス405としては、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル等が用いられる。なお、
図4に示すコンピュータ400の構成は一例に過ぎず、本実施形態で用いられるコンピュータ400は
図4の構成例に限定されるものではない。例えば、記憶装置としてフラッシュ・メモリ等の不揮発性メモリやROM(Read Only Memory)を備える構成としても良い。
【0031】
制御装置100が
図4に示すコンピュータにより実現される場合、制御部110および成形条件設定部120の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部130は、例えば、補助記憶装置403により実現される。
【0032】
データ処理装置200が
図4に示すコンピュータにより実現される場合、データ取得部210、処理部220、成形品質生成部230および成形条件推定部240の機能は、例えば、プロセッサ401がプログラムを読み込んで実行することにより実現される。記憶部250は、例えば、補助記憶装置403により実現される。表示制御部260は、例えば、プログラムを読み込んで実行するプロセッサ401および表示機構404により実現される。受け付け部270は、例えば、プログラムを読み込んで実行するプロセッサ401および入力デバイス405により実現される。
【0033】
<成形条件を設定するための成形品質の入力>
次に、本実施形態による成形条件の設定方法について説明する。ユーザが新たに成形条件を設定する場合を考える。成形条件が新たに設定される場面としては、例えば、成形品質の向上を図るための条件出しを行う場合や、新しい成形品を製造するための成形条件を設定する場合などがある。このような場合、ユーザが射出成形機による成形品の製造の経験が少ない者であると、成形条件のどの項目をどのように設定するかを判断することが困難な場合がある。一方、そのような経験の少ないユーザであっても、要求される成形品質は特定できる場合がある。そこで、本実施形態では、ユーザによる成形品質の情報の入力を受け付け、入力された成形品質の情報から必要な成形条件を推定し、この推定された成形条件を、制御装置100において射出装置20および型締装置30の制御に用いる。
【0034】
また、本実施形態では、成形品質の情報の入力において、グラフィカルなユーザインターフェイスを提供する。詳しくは後述するが、本実施形態では、表示装置300に表示される入力画面において、成形品質の内容を表す画像を表示し、この画像に対する操作を受け付ける。ユーザは画像を操作することにより、所望する成形品質を特定する。このようなインターフェイスを採用することにより、成形品質の情報を入力する際のユーザの負担を軽減することができる。
【0035】
<入力画面の構成例>
図5は、成形品質を特定する際に用いられる入力画面の構成例を示す図である。入力画面310は、データ処理装置200の表示制御部260の制御により表示装置300に表示される。入力画面310には、ショットの識別情報と共に、成形品質を表すグラフ311が表示される。
図5に示す例では、グラフ311としてレーダーチャートが用いられている。以下、グラフ311の一例としてのレーダーチャートに対しても同じ符号311を付して記載する。
図5に示す例において、ショットの識別情報は、入力画面310の右上隅に「Shot ID:123」と表示されている。
【0036】
図5に示すレーダーチャート311は、成形品質を表す項目として、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」、「内径」、「重量」の5項目を有する五角形のチャートとなっている。「バリ」、「ヒケ」、「ショート」は、成形品の不良の種類であり、定性指標である。「内径」、「重量」は、成形品の状態を示す要素であり、定量指標である。なお、
図5に示すレーダーチャート311の項目は例示に過ぎず、成形品質を表す情報は図示の項目に限定されない。レーダーチャート311の項目としては、製造対象の成形品や金型の種類、射出成形機10の仕様等に応じて、図示の項目の他、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量等の種々の成形品質を表す情報を用い得る。
【0037】
レーダーチャート311には、基準線312と、品質画像313とが表示される。基準線312は、成形品質の各項目において、成形品が良品とされる基準(以下、「良品基準」と呼ぶ)を示す画像である。基準の内容は、項目ごとに個別に設定される。
図5に示す例では、項目ごとの良品基準をレーダーチャート311の中心から等しい距離に設定し、各項目の良品基準をつないだ破線の五角形の基準線312が表示されている。この基準線312により示される成形品質は、製造される成形品において目標とする成形品質である。ユーザは、この基準線312に基づいて、得られた成形品の成形品質を入力することができる。
【0038】
品質画像313は、入力される成形品質を表す画像である。
図5に示す例では、項目ごとの成形品質の内容をレーダーチャート311の中心からの距離で表した五角形の品質画像313が表示されている。例えば、入力デバイス405としてマウスが用いられる場合、ユーザは、マウス操作により品質画像313の所望の項目に該当する頂点を選択してドラッグすることにより、入力する成形品質の内容を変更することができる。また、入力デバイス405としてタッチパネルが用いられる場合、ユーザは、品質画像313の所望の項目に該当する頂点に指でタッチしてスライドさせることにより、入力する成形品質の内容を変更することができる。
【0039】
レーダーチャート311は、実際に成形品を製造して得られた実績データに基づいて作成される。各項目の成形品質の情報は、ユーザにより入力される。ユーザは、製造された成形品を観察したり、計測機器により計測したりすることにより、成形品における各項目の成形品質を評価する。そして、評価結果に基づき入力デバイス405を操作して品質画像313を作成する。また、レーダーチャート311により示される項目の種類によっては、ユーザの操作によらずに、射出装置20および型締装置30に設けられたセンサや検出器などから得られた情報に基づいて品質画像313を作成しても良い。
【0040】
図5に示すような入力画面310を用いたユーザの操作により品質画像313が特定されると、データ処理装置200の成形品質生成部230が、品質画像313により示される成形品質と基準線312に示される目標とする成形品質との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240が、生成された成形品質の差分のデータに基づき、目標とする成形品質を得るのに必要な成形条件を推定する。データ処理装置200は、成形条件推定部240により推定した成形条件を制御装置100へ送信する。制御装置100は、受信した成形条件を設定情報132として記憶部130に保持し、成形条件設定部120により、制御部110の制御に用いる成形条件として設定する。
【0041】
図6は、レーダーチャート311を用いた入力画面310の変形例を示す図である。
図6に示すレーダーチャート311では、ユーザによるレーダーチャート311の操作において、成形品が良品と判定されるような成形品質を示唆する示唆画像314(314a、314b)を表示する。レーダーチャート311に示される基準線312および示唆画像314は、基準画像の一例である。
【0042】
成形品質を表す項目には、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される項目と、成形品が良品と判定される範囲が特定される項目とが含まれる。前者の項目に対しては、良品と不良品との境界を示す示唆画像314aが表示され、後者の項目に対しては、成形品が良品と判定される範囲を示す示唆画像314bが表示される。
【0043】
図6に示す例では、成形品質を表す5つの項目のうち、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」は、良品と不良品との境界が特定される項目であり、良品と不良品との境界を示す示唆画像314aが表示されている。示唆画像314aは、境界を示す線分と、良品と判定される側を示す矢印とからなる画像である。
図6に示す例では、示唆画像314aは、基準線312の各項目に該当する頂点の位置に線分が配置され、この線分から内側(レーダーチャート311の中心方向)へ向かう矢印が表示されている。
【0044】
図6に示す例において、品質画像313を参照すると、「ヒケ」は、示唆画像314aにより示される境界に対して矢印の向かう側(内側)であるため良品と判定される内容である。一方、「バリ」および「ショート」は、示唆画像314aにより示される境界に対して矢印の反対側(外側)であるため不良品と判定される内容である。したがって、成形品質生成部230は、少なくとも「バリ」および「ショート」に関して、品質画像313と基準線312との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240は、少なくとも「バリ」および「ショート」の原因となる成形条件の項目に関して、成形品質生成部230により生成されたデータにより示される差分以上に良好な品質が得られる条件を推定する。これは、
図6に示すレーダーチャート311において、定性指標である「バリ」、「ヒケ」、「ショート」の各項目が、示唆画像314aに示されるように、基準線312よりも内側であり、より中心に近づくような成形条件が推定されることを意味する。
【0045】
また、
図6に示すレーダーチャート311における成形品質を表す5つの項目のうち、「内径」、「重量」は、良品と判定される範囲が特定される項目であり、良品と判定される範囲を示す示唆画像314bが表示されている。示唆画像314bは、範囲を示す平行な2本の線分と、この2本の線分の間で各線分を指す両方向矢印とからなる画像である。
図6に示す例では、示唆画像314bは、基準線312の各項目に該当する頂点を跨ぎ、両方向矢印が各頂点からレーダーチャート311の中心へ向かう方向に沿うように表示されている。
【0046】
図6に示す例において、品質画像313を参照すると、「重量」は、示唆画像314bにより示される範囲内であるため良品と判定される内容である。一方、「内径」は、示唆画像314bにより示される範囲外であるため不良品と判定される内容である。したがって、成形品質生成部230は、少なくとも「内径」に関して、品質画像313と基準線312との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240は、少なくとも「内径」に影響を及ぼす成形条件の項目に関して、成形品質生成部230により生成されたデータにより示される差分を解消する条件を推定する。これは、
図6において、定量指標である「重量」および「内径」の各項目が、示唆画像314bに示される範囲内となるような成形条件が推定されることを意味する。
【0047】
なお、
図6に示す例では、レーダーチャート311において、良品と判定される項目と不良品と判定される項目とを区別していないが、これらを識別可能に表示しても良い。具体的には、例えば、良品と判定される項目の表示(図示の例では、「ヒケ」、「重量」の表示)と、不良品と判定される項目の表示(図示の例では、「バリ」、「ショート」、「内径」の表示)とを、表示色や表示フォント等の表示態様を異ならせて表示することができる。このようにすれば、ユーザは、レーダーチャート311において成形品質を変更すべき項目を視覚的に容易に判別することができる。
【0048】
図7は、レーダーチャート311を用いた入力画面310の他の変形例を示す図である。
図7に示すレーダーチャート311では、成形品質を表す5つの項目のうち、良品と不良品との境界が特定される項目(「バリ」、「ヒケ」、「ショート」)と、良品と判定される範囲が特定される項目(「内径」、「重量」)とが、識別可能に表示されている。
図7に示す例では、品質画像313において、良品と不良品との境界が特定される項目を含む領域は白抜きで表示し、良品と判定される範囲が特定される項目を含む領域は網掛けで表示している。このようにすれば、ユーザは、レーダーチャート311において、良品と不良品との境界が特定される項目と、良品と判定される範囲が特定される項目を視覚的に容易に判別することができる。
【0049】
<入力画面の他の構成例>
図8は、成形品質を特定する際に用いられる入力画面の他の構成例を示す図である。入力画面320は、データ処理装置200の表示制御部260の制御により表示装置300に表示される。入力画面320には、ショットの識別情報と共に、成形品質を表すグラフ321が表示される。
図8に示す例では、グラフ321として棒グラフが用いられている。以下、グラフ321の一例としての棒グラフに対しても同じ符号321を付して記載する。
図8に示す例において、ショットの識別情報は、入力画面320の右上隅に「Shot ID:123」と表示されている。
【0050】
図8に示す棒グラフ321は、成形品質を表す項目として、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」、「内径」、「重量」の5項目を有するグラフとなっている。「バリ」、「ヒケ」、「ショート」は、成形品の不良の種類である。「内径」、「重量」は、成形品の状態を示す要素である。なお、
図8に示す棒グラフ321の項目は例示に過ぎず、成形品質を表す情報は図示の項目に限定されない。棒グラフ321の項目としては、製造対象の成形品や金型の種類、射出成形機10の仕様等に応じて、図示の項目の他、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量等の種々の成形品質を表す情報を用い得る。
【0051】
棒グラフ321には、基準線322が表示される。基準線322は、成形品質の各項目において、成形品が良品とされる基準(以下、「良品基準」と呼ぶ)を示す画像である。基準の内容は、項目ごとに個別に設定される。
図8に示す例では、項目ごとの良品基準を棒グラフ321の原点(左端)から等しい距離に設定し、各項目の良品基準をつないだ破線の直線による基準線322が表示されている。ユーザは、この基準線322に基づいて、得られた成形品の成形品質を入力することができる。
【0052】
棒グラフ321は、実際に成形品を製造して得られた実績データに基づいて作成される。各項目の成形品質の情報は、ユーザにより入力される。ユーザは、成形品における各項目の成形品質を評価し、入力デバイス405を操作してグラフを作成する。また、棒グラフ321により示される項目の種類によっては、ユーザの操作によらずに、射出装置20および型締装置30に設けられたセンサや検出器などから得られた情報に基づいてグラフを作成しても良い。
【0053】
図8に示すような入力画面320を用いたユーザの操作により成形品質を表すグラフが特定されると、データ処理装置200の成形品質生成部230が、棒グラフ321により示される成形品質と基準線322に示される目標とする成形品質との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240が、生成された成形品質の差分のデータに基づき、目標とする成形品質を得るのに必要な成形条件を推定する。データ処理装置200は、成形条件推定部240により推定した成形条件を制御装置100へ送信する。制御装置100は、受信した成形条件を設定情報132として記憶部130に保持し、成形条件設定部120により、制御部110の制御に用いる成形条件として設定する。
【0054】
図9は、棒グラフ321を用いた入力画面320の変形例を示す図である。
図9に示す棒グラフ321では、ユーザによる棒グラフ321の操作において、成形品が良品と判定されるような成形品質を示唆する示唆画像323(323a、323b)を表示する。棒グラフ321に示される基準線322および示唆画像323は、基準画像の一例である。
【0055】
成形品質を表す項目には、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される項目と、成形品が良品と判定される範囲が特定される項目とが含まれる。前者の項目に対しては、良品と不良品との境界を示す示唆画像323aが表示され、後者の項目に対しては、成形品が良品と判定される範囲を示す示唆画像323bが表示される。
【0056】
図9に示す例では、成形品質を表す5つの項目のうち、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」は、良品と不良品との境界が特定される項目であり、良品と不良品との境界を示す示唆画像323aが表示されている。示唆画像323aは、境界を示す線分と、良品と判定される側を示す矢印とからなる画像である。
図9に示す例では、示唆画像323aは、各項目の基準線322の位置に線分が配置され、この線分から棒グラフ321の原点(左端)側へ向かう矢印が表示されている。
【0057】
図9に示す例において、棒グラフ321を参照すると、「ヒケ」は、示唆画像323aにより示される境界に対して矢印の向かう側(左側)であるため良品と判定される内容である。一方、「バリ」および「ショート」は、示唆画像323aにより示される境界に対して矢印の反対側(右側)であるため不良品と判定される内容である。したがって、成形品質生成部230は、少なくとも「バリ」および「ショート」に関して、棒グラフ321と基準線322との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240は、少なくとも「バリ」および「ショート」の原因となる成形条件の項目に関して、成形品質生成部230により生成されたデータにより示される差分を解消する条件を推定する。
【0058】
また、
図9に示す棒グラフ321における成形品質を表す5つの項目のうち、「内径」、「重量」は、良品と判定される範囲が特定される項目であり、良品と判定される範囲を示す示唆画像323bが表示されている。示唆画像323bは、範囲を示す平行な2本の線分と、この2本の線分の間で各線分を指す両方向矢印とからなる画像である。
図9に示す例では、示唆画像323bは、各項目の基準線322の位置を跨ぎ、両方向矢印が各頂点から棒グラフ321の伸びる方向に沿うように表示されている。
【0059】
図9に示す例において、棒グラフ321を参照すると、「重量」は、示唆画像323bにより示される範囲内であるため良品と判定される内容である。一方、「内径」は、示唆画像323bにより示される範囲外であるため不良品と判定される内容である。したがって、成形品質生成部230は、少なくとも「内径」に関して、棒グラフ321と基準線322との差分を表すデータを生成する。そして、成形条件推定部240は、少なくとも「内径」に影響を及ぼす成形条件の項目に関して、成形品質生成部230により生成されたデータにより示される差分を解消する条件を推定する。
【0060】
なお、
図9に示す例では、棒グラフ321において、良品と判定される項目と不良品と判定される項目とを区別していないが、これらを識別可能に表示しても良い。具体的には、例えば、良品と判定される項目の表示(図示の例では、「ヒケ」、「重量」の表示)と、不良品と判定される項目の表示(図示の例では、「バリ」、「ショート」、「内径」の表示)とを、表示色や表示フォント等の表示態様を異ならせて表示することができる。このようにすれば、ユーザは、棒グラフ321において成形品質を変更すべき項目を視覚的に容易に判別することができる。
【0061】
図10は、棒グラフ321を用いた入力画面320の他の変形例を示す図である。
図10に示す棒グラフ321では、成形品質を表す5つの項目のうち、良品と不良品との境界が特定される項目(「バリ」、「ヒケ」、「ショート」)と、良品と判定される範囲が特定される項目(「内径」、「重量」)とが、識別可能に表示されている。
図10に示す例では、棒グラフ321において、良品と不良品との境界が特定される項目を含むグラフ324aは白抜きで表示し、良品と判定される範囲が特定される項目を含むグラフ324bは網掛けで表示している。このようにすれば、ユーザは、棒グラフ321において、良品と不良品との境界が特定される項目と、良品と判定される範囲が特定される項目を視覚的に容易に判別することができる。
【0062】
<他の入力手段の併用>
以上、
図5乃至
図10を参照して2種類の入力画面310、320について説明した。本実施形態では、上記の入力画面310、320と共に、異なる入力手段を用いた成形品質の情報の入力を受け付けても良い。例えば、データ処理装置200が、入力デバイス405としてのキーボードを用いて入力された成形品質の内容や値を受け付けても良い。また、データ処理装置200が音声入力手段を備え、ユーザの音声によるコマンドや値の入力を受け付けても良い。
【0063】
図5乃至
図10に示した入力画面310、320を用いたGUIによる入力は、ユーザの直感的な操作が可能であるが、具体的な数値等を入力する場合は、キーボードを用いた文字入力の方が容易な場合がある。そこで、入力画面310、320に代えて、キーボードによる文字入力を受け付ける入力画面を表示しても良い。
【0064】
図11は、文字入力を受け付ける入力画面の構成例を示す図である。入力画面330は、データ処理装置200の表示制御部260の制御により表示装置300に表示される。入力画面330には、ユーザによる入力を受け付け、入力された成形品質の情報を表示する入力欄331が表示される。また、入力画面330の右上隅には、ショットの識別情報「Shot ID:123」が表示されている。
【0065】
図6および
図9において、成形品質を表す項目には、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される項目と、成形品が良品と判定される範囲が特定される項目とが含まれることを述べた。前者の項目では、該当する事象の有無や程度に応じて良品か不良品かが特定される。後者の項目では、該当する項目の状態を表す数値により良品か不良品かが特定される。
図11に示す入力画面330では、前者の項目に対してチェックボックスが設けられ、後者の項目に対して数値を入力するための文字入力欄が設けられる。
【0066】
図11に示す入力欄331には、成形品質を表す項目として、
図5乃至
図10に示した入力画面310、320と同様の「バリ」、「ヒケ」、「ショート」、「内径」、「重量」の5項目が示されている。ここで、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」の3項目は、成形品に関して良品と不良品との境界が特定される項目であり、「内径」、「重量」の2項目は、成形品が良品と判定される範囲が特定される項目である。したがって、
図11の入力欄331において、「バリ」、「ヒケ」、「ショート」の3項目にはチェックボックスが設けられており、「内径」、「重量」の2項目には文字入力欄が設けられている。
【0067】
図11に示す入力画面330では、「バリ」の項目のチェックボックスにチェックが入れられており、成形品においてバリが存在していることが示されている。また、「内径」の項目の文字入力欄には数値「10」が入力され、「重量」の項目の文字入力欄には数値「3」が入力されている。図では、数値のみを示しているが、各々、成形品のサイズとして適当な単位(mm、g等)が設定されている。なお、
図11に示す入力欄331の項目は例示に過ぎない。入力欄331の項目としては、製造対象の成形品や金型の種類、射出成形機10の仕様等に応じて、図示の項目の他、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量等の種々の成形品質を表す情報を用い得る。
【0068】
図12は、文字入力を受け付ける入力画面の他の構成例を示す図である。入力画面340は、データ処理装置200の表示制御部260の制御により表示装置300に表示される。入力画面340には、入力対象としての成形品質の項目を指定するための項目選択欄341と、キーボードによる文字入力を受け付ける文字入力欄342とが表示される。また、入力画面340の右上隅には、ショットの識別情報「Shot ID:123」が表示されている。
【0069】
図12に示す項目選択欄341には、成形品質を表す項目として、「ヒケ」と「バリ」が示されている。ユーザは、チェックボックスにチェックすることにより、何れの項目に対する入力を行うかを選択する。図示の例では、「ヒケ」のチェックボックスがチェックされており、項目「ヒケ」が選択されている。なお、
図12に示す項目選択欄341の項目は例示に過ぎない。項目選択欄341の項目としては、製造対象の成形品や金型の種類、射出成形機10の仕様等に応じて、図示の項目の他、成形品の寸法、型内圧、最小クッション位置、充填圧力の波形の特徴量等の種々の成形品質を表す情報のうち、文字入力に適した入力が行われる項目を適宜用いて良い。
【0070】
文字入力欄342に入力される内容は、項目選択欄341で選択された成形品質の項目の種類に応じて異なって良い。
図12に示す例では、成形品に生じた「ヒケ」の大きさを表す値「1.5」が入力されている。また、
図12に示す例では、既に入力されている「バリ」の大きさを表す値「0.1」も表示されている。これらの値は、各項目に該当する事象の程度を表す相対的な値として、ユーザ等により予め設定された値として良い。これらの値に関して、良品と不良品との境界を示す閾値を設定しても良い。例えば、「ヒケ」に関して閾値を「1.0」とし、
図12に示すように文字入力欄342に入力された値が閾値「1.0」よりも大きい「1.5」である場合に、成形品を不良品と判断するようにしても良い。
【0071】
図11、12に示す入力画面330、340は、
図5乃至
図10を参照して説明した入力画面310、320とは別に構成されている。入力画面330、340の表示は、例えば、入力画面310、320において画面の切り替え操作が行われたことを条件として、データ処理装置200の表示制御部260の制御により行われる。切り替え操作としては、例えば、入力画面310、320において、入力デバイス405としてのマウスを操作し、文字入力を行う項目に対してマウスポインタを重ねてマウスボタンをクリックする等の操作により行われる。
【0072】
また、上記の例では、文字入力を受け付ける入力画面330、340を、
図5乃至
図10を参照して説明した入力画面310、320とは別に構成したが、入力画面310、320において文字入力を受け付ける構成としても良い。この場合、例えば、文字入力を行う項目に対する選択操作が行われたことを条件として、選択された項目の近傍に、文字入力を行うためのテキストボックスを表示することができる。項目の選択操作は、例えば、入力デバイス405としてのマウスを操作し、文字入力を行う項目に対してマウスポインタを重ねてマウスボタンをクリックする等の操作とすることができる。
【0073】
ユーザの音声によるコマンドや値の入力は、例えば、データ処理装置200に音声による入力の受け付け機能を設け、音声の取得手段としてのマイクロフォンを接続して実現される。音声による入力の受け付けは、例えば、処理部220において、プログラム制御により音声解析を実行することで実現される。音声によりコマンドや値を入力する場合、予め定められた形式にしたがって、情報やコマンドを発音する構成としても良いし、自由な発話によって入力する構成としても良い。後者の場合、自然言語解析によって発話音声から情報やコマンドを抽出することができる。コマンドや値の音声による入力を受け付け可能とすれば、ユーザは、成形品の成形品質を得るために測定器の操作等を行いながら、測定器から手を離すことなく、測定器によって得られた成形品質の情報を入力することができる。
【0074】
なお、本実施形態では、入力画面310、320を含む各入力手段に関して、成形条件を得るための成形品質の情報の入力に用いることを想定して説明した。しかしながら、これらの入力手段は、制御装置100やデータ処理装置200において、種々の処理における処理対象として成形品質の情報を入力する手段として用い得る。例えば、成形品の製造に係る実績データから成形品質を予測するための実績データと成形品質との関係を表す数理モデルを生成するため、学習用のデータとして成形品質の情報を入力するのに用いても良い。この実績データには、制御装置100において設定されている成形条件や、製造工程において射出装置20および型締装置30から得られる圧力波形等の観測データが含まれる。この場合、ユーザが、製造された成形品における成形品質の情報を、入力画面310、320等を用いて入力すると、入力された成形品質の情報と成形品の製造時に取得される実績データとが対応付けられて、学習用のデータとして保持される。このような構成とすることで、成形品が得られると直ちに成形品質の情報を入力して学習用のデータを得ることができる。このため、成形作業の終了後に、成形時に得られたショットごとのログデータと該当するショットの成形品の品質の情報とを対応付けて学習用のデータを生成する場合のように、学習用のデータを生成するためにショットを管理する必要がなく、成形終了後に学習用のデータが生成されるまでの時間が短縮される。さらにまた、入力画面310、320を含む各入力手段は、成形条件推定部240において成形条件を推定するために用いられる成形品質と成形条件との関係を表す数理モデルを生成するため、学習用のデータとして成形品質の情報を入力するのに用いても良い。
【0075】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施形態には限定されない。例えば、上記の実施形態では、データ処理装置200が表示制御部260により入力画面310、320、330、340を生成し、データ処理装置200に接続された表示装置300に表示することとしたが、データ処理装置200とは別に設けられた情報処理装置により入力画面310、320、330、340の表示制御を行い、入力を受け付ける構成としても良い。具体的には、パーソナルコンピュータ、タブレット型情報端末、スマートフォン、その他の表示手段を備えた情報機器に表示装置300および表示制御部260の機能を持たせて、入力画面310、320、330、340の表示および入力の受け付けを実現しても良い。その他、本発明の技術思想の範囲から逸脱しない様々な変更や構成の代替は、本発明に含まれる。
【符号の説明】
【0076】
10…射出成形機、20…射出装置、30…型締装置、100…制御装置、110…制御部、120…成形条件設定部、130……記憶部、131…制御情報、132…設定情報、200…データ処理装置、210…データ取得部、220…処理部、230…成形品質生成部、240…成形条件推定部、250…記憶部、260…表示制御部、270…受け付け部、300…表示装置、310…入力画面、311…レーダーチャート(グラフ)、312…基準線、313…品質画像、314a、314b…示唆画像、320…入力画面、321…棒グラフ(グラフ)、322…基準線、323a、323b…示唆画像、330…入力画面、331…文字入力欄、332…項目選択欄